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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1207439
審判番号 不服2007-3851  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2009-11-19 
事件の表示 平成10年特許願第152174号「遊技機の入賞報知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月24日出願公開、特開平11-319189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月16日の出願であって、平成18年4月20日付け拒絶理由通知に対し、同年7月7日付けで手続補正がなされ、同年10月17日付け(平成19年1月9日発送)で拒絶査定され、これに対し、平成19年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年3月2日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成19年3月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年3月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成19年3月2日付けの手続補正(以下「本願補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
特定の入賞役の入賞確率が、通常確率テーブル又は通常確率テーブルよりも高い確率値を有する高確率テーブルにより決定され、前記通常確率テーブル又は高確率テーブルが抽選結果に基いて選択されて、それぞれに対応した通常確率遊技又は高確率遊技が実行される遊技機の入賞報知装置に於て、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞を検出する高確率遊技成立時特定入賞検出手段と、該高確率遊技成立時特定入賞検出手段の出力に応動して、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する文字をその文字の書き順通りに点灯させることにより、該入賞を報知する報知手段と、前記報知手段を作動する作動制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機の入賞報知装置。
【請求項2】
特定の入賞役の入賞確率が、通常確率テーブル又は通常確率テーブルよりも高い確率値を有する高確率テーブルにより決定され、前記通常確率テーブル又は高確率テーブルが抽選結果に基いて選択されて、それぞれに対応した通常確率遊技又は高確率遊技が実行される遊技機の入賞報知装置に於て、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞を検出する高確率遊技成立時特定入賞検出手段と、該高確率遊技成立時特定入賞検出手段の出力に応動して、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する文字をその文字の書き順通りに点灯させることにより、該入賞を報知するとともに前記高確率遊技成立状態でない場合の前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する文字をその文字の書き順通りに点灯させることにより、該入賞を報知する報知手段と、前記報知手段を作動する作動制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機の入賞報知装置。
【請求項3】
可変表示部を光輝させる手段が前記報知手段として使用されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遊技機の入賞報知装置。」
に補正された。

本願補正について検討する。
補正後の請求項1は、補正前(平成18年7月7日付け手続補正)の請求項1における高確率遊技成立状態での特定の入賞役の入賞であることを示唆する「報知手段」について、「文字の表示により」該入賞を報知するものから、「文字をその文字の書き順通りに点灯させることにより」該入賞を報知するものに補正した。
また、補正後の請求項2は、補正前の請求項2における高確率遊技成立状態での特定の入賞役の入賞であることを示唆するとともに、高確率遊技成立状態でない場合の特定の入賞役の入賞であることを示唆する「報知手段」について、「文字の表示により」該入賞を報知するものから、「文字をその文字の書き順通りに点灯させることにより」該入賞を報知するものに補正した。
上記請求項1及び請求項2に係る補正は、共に入賞の報知態様が「文字の表示」であったものを、文字を「その文字の書き順通りに点灯させる」表示に限定するものであるから、当該補正に関しては、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認める。
そこで、以下、本願補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開平8-280872号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
【従来の技術】従来、上記のような可変表示部を備えた遊技機においては、乱数抽選(乱数サンプリング)により入賞判定を行い、その結果に応じて遊技者に与えられる入賞には種々の入賞態様がある。例えばスロットマシンの場合、ビッグボーナスゲーム(以下「B・Bゲーム」という)と呼ばれる所定の入賞図柄が揃ったとき、所定回数(例えば30回)以内の一連のゲームで遊技者が大量のコインを獲得できる入賞態様がある。
【0003】また、B・Bゲームの他に、シングルボーナスゲーム(以下「S・Bゲーム」という)と呼ばれ、所定図柄が揃った後もう一回のゲーム(ボーナスゲーム)を行うことが可能なゲーム態様がある。そして、このS・Bゲームが高確率で発生することにより、長いゲーム回数の内に遊技者の獲得するコインが漸増していく入賞態様(以下「S・B高確率ゲーム状態」という)も知られている。
【0004】上記の「B・Bゲーム」と「S・B高確率ゲーム状態」の両方を備えた遊技機においては、S・B高確率ゲーム状態がどこまで継続するかは乱数抽選に基づく入賞判定によって決定されるので、S・B高確率ゲーム状態において獲得されるコインの枚数がどれくらいになるかは、S・B高確率ゲーム状態が終了するまで見当がつかないようになっている。また、S・B高確率ゲーム状態の発生から終了までに得られるコイン数の方が、B・Bゲームの発生から終了までに得られるコイン数より多い場合もある。このため、遊技者にとっては、S・B高確率ゲーム状態が発生するか否か、更に、S・B高確率ゲーム状態が発生したときはこれがどれだけ長く継続するかが、大きな興味の対象となっている。」
(イ)「【0038】次に、図4の表において[B]の区分に属する4つの組合せは、「S・Bゲーム」発生のシンボル組合せであり、これらの組合せのいずれかが入賞ライン上に並ぶと、遊技者に4枚の配当コインが与えられ、その後1回のボーナスゲーム(S・Bゲーム)を行うことができる。
【0039】この「S・Bゲーム」の場合の動作は、次のようになる(詳細は、図22のフローチャートを参照して後述する)。
【0040】(1)所定のシンボル組合せ(図4の区分[B]の4つのシンボル組合せのいずれか。すなわち、“黄7-任意の色の7-黄7”)が発生すると、4枚のコインが払い出される。その発生確率は、通常時(低確率時)は約1/20、高確率時は約1/2で、それぞれ「S・B高確率ゲーム状態」用の入賞判定テーブル(図19のステップ51で設定される)、「S・B通常確率ゲーム」用の入賞判定テーブル(図19のステップ53で設定される)から決まる。この発生確率が通常時と高確率時のいずれかに切り替わる抽選は、図18のステップ41で行われる。
【0041】(2)ボーナスゲームを1回のみ実行する。このとき、1枚賭けで所定のシンボル(例えば、図4の区分[D]の“JAC-JAC-JAC”)が揃うと(その発生の確率は約9/10。図18のステップ32及び34)、15枚のコインが払い出される。」
(ウ)「【0043】次に、この実施例においては、上記「S・B高確率ゲーム状態」の発生時及び消滅時(図17のステップ16?17及びステップ13?14)には、それぞれ下記の表1及び図7,図8に示すデモンストレーションが実行されると共に、図7,図8に示す音が発生する。また、「S・B高確率ゲーム状態」の継続中(図17のステップ15)は、一定のジングル音が発生する。
【0044】
【表1】(略)
詳細には、図7及び図8は前述のリールランプ41(W1?W9)の点滅パターンを示している。図7に示す「S・B高確率ゲーム状態」発生時のデモンストレーションは、段階1?14の点滅パターンを順次、所定の点灯時間にて1回だけ実施するものであり、同時に各段階に対応した音を発生する。図8に示す「S・B高確率ゲーム状態」消滅時のデモンストレーションは、段階1?9の点滅パターンを順次、所定の点灯時間にて1回だけ実施するものであり、同時に各段階に対応した音を発生する。
【0045】一方、「S・Bゲーム」の発生時には、まず入賞の発生を報知するために、下記の表2に示すように、図9(A)?図10(E)の入賞図柄が並んだラインを示すリールランプ(W1?W9)によるデモンストレーションが行われ、その後、下記の表3に示すように、後述のCPU31(図5)内に設定されるR-レジスタの乱数値(これは、後述する図18?図20の入賞判定のための乱数サンプリングとは別で、この例では0?3のいずれか)に応じて、図11(A)?図12(D)に示すリールランプ(W1?W9)による「S・Bゲーム」入賞発生用のデモンストレーション及び音の発生が実行される。
【0046】詳細には、入賞ライン上に各入賞図柄が並んだ時、下記の表2及び図9(A)?図10(E)に示すように、リールランプ(W1?W9)により、入賞図柄が並んだ入賞ラインに対応したデモンストレーションが行われ(図16のステップ9)、その後、入賞図柄が並んだ3つのリールランプ(例えばW1-W2-W3)のみが、点灯と消灯を所定時間(例えば、120 msec)間隔で繰り返す。
【0047】」
【表2】(略)
そして、「S・Bゲーム」そのものの入賞発生を示すものとして、下記の表3及び図11(A)?図12(D)に示す4つの場合のファンファーレ音の発生及びリールランプ(W1?W9)によるデモンストレーションが実行される。その後、次のボーナスゲームで前述の“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には、図10(F)のデモンストレーションが実行される。
(エ)「【0070】次に、図17において、今回までのゲームが「S・B高確率ゲーム状態」であったか否かを判定し(ST12)、“YES”のときは、「S・B高確率ゲーム消滅デモ」のフラグがセットされている(後述の図18のST44及び図20のST61)か否かを判定し(ST13)、このフラグがセットされている場合はランプ20L,20C,20R及び21を消灯し、前掲の表1に示したように、高確率ゲーム消滅音をスピーカ43から発生すると共に、図8に示す高確率ゲーム消滅デモ(点滅パターン1?9を1回だけ表示)を行う(ST14)。上記の消滅デモフラグがセットされていない場合は、ランプ20L,20C,20R及び21を継続して点滅させ、継続音(ジングル)を発生する(ST15)。
【0071】一方、上記ステップ12で、今回までのゲームが「S・B高確率ゲーム状態」でなかった場合は、「S・B高確率ゲーム発生デモ」のフラグがセットされている(後述の図18のST46)か否かを判定し(ST16)、セットされているときは、ランプ20L,20C,20R及び21を点滅させると共に、表1に示すように、スピーカ43から高確率ゲーム発生音を発生させ、且つ、図7に示すS・B高確率ゲーム発生デモ(点滅パターン1?14を1回だけ表示)を行う(ST17)。
【0072】その後、今回発生した入賞がリプレイゲームか否かを判定し(ST18)、“YES”のときは、前述のリール回転駆動(ST3)に戻り、“NO”であれば次に「B・Bゲーム」か否かを判定し(ST19)、B・Bゲームのときは、図21に示す「B・Bゲーム」のフローチャートへ進む。B・Bゲームでないときは、次に「S・Bゲーム」か否かを判定し(ST20)、“YES”のとき、前掲の表3に示したように、Rレジスタの乱数値に基づいて図11?図12に示す「S・Bゲーム」発生デモ及び入賞音を発生し(ST21)、図22に示す「S・Bゲーム」のフローチャートへ進む。」
(オ)「【0095】次に、図22に示す「S・Bゲーム」の動作手順について説明する。
【0096】まず、前記と同様にコインBETがなされたかどうかを判別し(ST90)、“NO”であればそのままで待機し、“YES”のとき、スタートレバー操作によりスタート信号があるか否かを判別し(ST91)。この判別が“YES”のとき、全リールを回転駆動する(ST92)。その後、入賞判定を行う(ST93)。これは、図18のST32の判定による。
【0097】この入賞判定の結果、セットされた入賞フラグの種類に応じてリールの停止制御が行われる(ST94)。そして、リールの停止時の表示が所定の入賞図柄か否かを判定し(ST95)、“NO”であれば、図16に示された全動作の最初のステップ(ST1)に戻り、“YES”のとき、入賞報知デモを行う(ST96)。これは、図10(F)の入賞報知デモである。
【0098】 次に、所定枚数のコインを払い出して(ST97)、全動作の最初のステップ(ST1)に戻る。
【0099】以上のように、実施例によれば、「S・B高確率ゲーム状態」の発生、継続、終了を、各々の状態が発生した時点で遊技者に報知でき、しかも、音と表示ランプ20L,20C,20R、WINランプ21及びリールランプ41によるデモが行われるので、視覚的及び聴覚的に遊技者に報知できると共に、遊技者は仰向く必要がないので、利便性が高い。」

以上、(ア)ないし(オ)の記載、および図面を総合すると、引用例には、
1.S・Bゲームの入賞確率が、「S・B通常確率ゲーム」用の入賞判定テーブル又は「S・B高確率ゲーム状態」用の入賞判定テーブルにより決定され、
2.前記「S・B通常確率ゲーム」用の入賞判定テーブル又は「S・B高確率ゲーム状態」用の入賞判定テーブルが、乱数抽選に基づく入賞判定により選択されて、
3.「S・B通常確率ゲーム」又は「S・B高確率ゲーム状態」に対応した遊技状態が実行される遊技機において、
4.「S・B高確率ゲーム状態」であることを判定するステップ(図中、ST12,ST16,ST37,ST52,ST61等)、ならびに、入賞図柄(JAC)が発生したことを判定するステップ(図中、ST95)の判断結果に応じて、
5.「S・B高確率ゲーム状態」であることをリールランプの点滅パターン(FIG.7)により報知し、また、入賞図柄(JAC)が発生したことをリールランプの点滅パターン(FIG.10のF)により報知する報知手段を備えた、遊技機」
の発明(以下、引用発明という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。
引用発明の「S・Bゲームの入賞図柄(JAC)」は、本願補正発明の「特定の入賞役」に相当し、そして、引用発明の「S・B通常確率ゲーム」および「「S・B通常確率ゲーム」用の入賞判定テーブル」、「S・B高確率ゲーム状態」および「「S・B高確率ゲーム状態」用の入賞判定テーブル」は、本願補正発明の「通常確率遊技」および「通常確率テーブル」、「高確率遊技成立状態」および「高確率テーブル」にそれぞれ相当する。
引用発明の「入賞図柄(JAC)が発生したことを判定するステップ」とは、(JAC)という入賞役の入賞を検出する手段を有することに他ならず、そしてその「判断結果に応じて」報知手段に報知させることは、検出手段の出力に応動して報知手段を作動させることを意味するから、「S・B通常確率ゲーム」あるいは「S・B高確率ゲーム状態」のいずれのゲーム状態であるかを検出するか否かは別にして、引用発明の「入賞図柄(JAC)が発生したことを判定するステップ」は本願補正発明の「特定の入賞役の入賞を検出する特定入賞検出手段」に対応し、そして、引用発明の「入賞図柄(JAC)が発生したことを判定するステップの判断結果に応じて、入賞図柄(JAC)が発生したことを報知する」ことは、本願補正発明の「特定入賞検出手段の出力に応動して、特定の入賞役の入賞を報知する」ことに対応するということができる。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「特定の入賞役の入賞確率が、通常確率テーブル又は通常確率テーブルよりも高い確率値を有する高確率テーブルにより決定され、前記通常確率テーブル又は高確率テーブルが抽選結果に基いて選択されて、それぞれに対応した通常確率遊技又は高確率遊技が実行される遊技機の入賞報知装置に於て、前記特定の入賞役の入賞を検出する特定入賞検出手段と、該特定入賞検出手段の出力に応動して、前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する点灯により、該入賞を報知する報知手段と、前記報知手段を作動する作動制御手段とを備えた遊技機の入賞報知装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明は、「前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞を検出する高確率遊技成立時特定入賞検出手段」を備えており、当該高確率遊技成立時特定入賞検出手段の出力に応じて、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する点灯を行うことにより、該入賞を報知する報知手段を備えたものであるのに対し、
引用発明は、「S・B高確率ゲーム状態」であることを判定するステップ(高確率遊技成立状態を検出する手段)、および入賞図柄(JAC)が発生したことを判定するステップ(特定の入賞役の入賞を検出する手段)をそれぞれ備えているが、高確率遊技成立状態での特定の入賞役の入賞を検出する手段は備えておらず、したがって、高確率遊技成立状態であることを示唆する点灯を行う報知手段、および、特定の入賞役の入賞を示唆する点灯を行う報知手段を備えているものの、高確率遊技成立状態での特定の入賞役の入賞を示唆する点灯を行う報知手段を備えていない点。
<相違点2>
本願補正発明は、入賞の示唆の点灯を「文字を文字の書き順通りに点灯させることにより」行うものであるのに対し、
引用発明は、入賞の示唆の点灯を特定のパターンで点灯させることにより行うものではあるが、本願補正発明のように点灯させるものではない点。

(4)判断
<相違点1>について
引用発明(特にFIG.17,FIG.22参照)において、S・Bゲームの入賞図柄(JAC)が発生したときの報知態様をみると、「S・B高確率ゲーム状態」で入賞図柄(JAC)が発生した場合、まず、S・B高確率ゲーム発生あるいは高確率ゲーム継続中であることが報知手段により報知され、続けて、S・Bゲーム発生および入賞図柄(JAC)の発生が報知手段により報知されている。
つまり、引用発明では、「S・B高確率ゲーム状態」であることと入賞図柄(JAC)が発生したことは順に報知され、その両者は同時に報知されていないものの、遊技者においては、入賞図柄(JAC)が発生したことが報知された時点で、その入賞図柄(JAC)がS・B高確率ゲーム状態で発生したか否か認識できているものである。
しかして、順に報知される内容を一つに纏めて同時に報知する程度のことは適宜なし得る設計事項といえるから、「S・B高確率ゲーム状態」であることと入賞図柄(JAC)が発生したことを纏めて同時に報知することは、当業者が容易に想到できたということができる。
したがって、高確率遊技成立状態であることを示唆する報知、および特定の入賞役の入賞を示唆する報知を順に行うことに換えて、高確率遊技成立状態における特定の入賞役の入賞を示唆する報知を行うことは、当業者が容易に想到し得たものと認められ、そして、そのような報知を行うために、高確率遊技成立状態を検出する手段、および特定の入賞役の入賞を検出する手段をそれぞれ備えることに換えて、それらを同時に検出する高確率遊技成立状態における特定の入賞役の入賞を検出する手段を備えることは当然の設計変更ということができる。
<相違点2>について
遊技機において、様々な遊技状態を文字によって報知することは、拒絶査定時に示された特開平10-85408号公報(特に、図13参照)に記載されているだけでなく、例えば、特開平6-47146号公報(特に、図42参照)や、登録実用新案第3014105号公報(平成7年8月1日発行、特に、図4参照)に記載されているように周知技術といえるものである。
また、マトリックス型の表示装置において、文字をその書き順通りに点灯させるような態様は、特開平8-220982号公報(以下、引用刊行物という。特に、段落【0010】,【0011】,図2,図5参照)に記載されている。
これらの技術を勘案すれば、引用発明において、点灯を特定のパターンでを行うものを、点灯を「文字をその書き順通りに点灯させる」パターンで行うものに換えることは、上記周知技術及び引用刊行物に記載されたものから、当業者が容易に想到し得たということができる。
さらに、本願補正発明の作用効果等を総合的に勘案しても、本願補正発明に格別の点を認めることはできない。

以上のように、本願補正発明は、引用例に記載された発明、周知技術及び引用刊行物に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本願補正についてのまとめ
以上のとおり本願補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)請求項1発明
平成19年3月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、補正前の発明は、平成18年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
特定の入賞役の入賞確率が、通常確率テーブル又は通常確率テーブルよりも高い確率値を有する高確率テーブルにより決定され、前記通常確率テーブル又は高確率テーブルが抽選結果に基いて選択されて、それぞれに対応した通常確率遊技又は高確率遊技が実行される遊技機の入賞報知装置に於て、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞を検出する高確率遊技成立時特定入賞検出手段と、該高確率遊技成立時特定入賞検出手段の出力に応動して、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する文字の表示により該入賞を報知する報知手段と、前記報知手段を作動する作動制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機の入賞報知装置。」

(2)引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-280872号公報(引用例)に記載された事項は、前記「2.(2)」に摘記したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明(引用発明)を対比すると、両者は、
<一致点>
「特定の入賞役の入賞確率が、通常確率テーブル又は通常確率テーブルよりも高い確率値を有する高確率テーブルにより決定され、前記通常確率テーブル又は高確率テーブルが抽選結果に基いて選択されて、それぞれに対応した通常確率遊技又は高確率遊技が実行される遊技機の入賞報知装置に於て、前記特定の入賞役の入賞を検出する特定入賞検出手段と、該特定入賞検出手段の出力に応動して、前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する表示により該入賞を報知する報知手段と、前記報知手段を作動する作動制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機の入賞報知装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞を検出する高確率遊技成立時特定入賞検出手段」を備えており、当該高確率遊技成立時特定入賞検出手段の出力に応じて、前記高確率遊技成立状態での前記特定の入賞役の入賞であることを示唆する点灯を行うことにより、該入賞を報知する報知手段を備えたものであるのに対し、
引用発明は、「S・B高確率ゲーム状態」であることを判定するステップ(高確率遊技成立状態を検出する手段)、および入賞図柄(JAC)が発生したことを判定するステップ(特定の入賞役の入賞を検出する手段)をそれぞれ備えているが、高確率遊技成立状態での特定の入賞役の入賞を検出する手段は備えておらず、したがって、高確率遊技成立状態であることを示唆する点灯を行う報知手段、および、特定の入賞役の入賞を示唆する点灯を行う報知手段を備えているものの、高確率遊技成立状態での特定の入賞役の入賞を示唆する点灯を行う報知手段を備えていない点。
<相違点2>
本願発明は、入賞の示唆を「文字の表示により」行うものであるのに対し、
引用発明は、入賞の示唆を特定のパターンで点灯させることにより行うものの、「文字の表示により」行うものではない点。

<相違点1>について
前記「2.(4)<相違点1>について」で述べたのと同じ理由で、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
<相違点2>について
遊技機において、様々な遊技状態を文字によって報知することは、特開平10-85408号公報、特開平6-47146号公報、実用新案登録公報3014105号に記載されているように周知技術といえるものであるから、入賞の示唆を「文字の表示により」行う程度のことは当業者が適宜なし得たものと認められる。

(4)むすび
以上の通りであるから、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2009-09-11 
結審通知日 2009-09-15 
審決日 2009-10-01 
出願番号 特願平10-152174
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 井上 昌宏
吉村 尚
発明の名称 遊技機の入賞報知装置  
代理人 山中 郁生  
代理人 田中 裕人  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  

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