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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1207450
審判番号 不服2008-1782  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-23 
確定日 2009-11-19 
事件の表示 特願2006- 14180「電磁石式に操作可能な弁」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日出願公開、特開2006-138325〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1996年1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年2月6日、ドイツ)を国際出願日とする特願平8-523159号の一部を、平成18年1月23日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成18年8月28日付けで拒絶理由が通知され、平成19年2月6日付けで意見書が提出され、平成19年2月26日付けで拒絶理由が再度通知され、平成19年8月27日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年10月22日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年1月23日付けで同拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、平成19年8月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項2】
殊に内燃機関の燃料噴射装置のための電磁式に操作可能な弁であって、磁石コイルによって取り囲まれたコアと、定置の弁座と協働する弁閉鎖体を操作する可動子と、前記コアの下流に配置された管状の閉鎖部とを有しており、該閉鎖部が前記可動子を半径方向で部分的に取り囲んでいる形式のものにおいて、
コア(2)と閉鎖部(10)とが別個の構成部分であって、コア(2)と閉鎖部(10)とが、磁気的な絞り箇所(13)を介して直接磁石を通すように互いに接続されており、絞り箇所(13)が、閉鎖部(10)から突き出す、薄い壁厚の円筒形領域として閉鎖部(10)に直接一体的に構成されており、コア(2)と閉鎖部(10)とが絞り箇所(13)の外側で、かつ前記薄い壁厚の円筒形領域において互いに堅固に結合されていて、それによって弁の内側の金属製の管体を形成していることを特徴とする、電磁石式に操作可能な弁。」

第3.当審の判断
1.引用文献
(1)特開平6-221244号公報(以下、「引用文献1」という。)
(2)特表平5-504181号公報(以下、「引用文献2」という。)

2.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である上記引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁に関するもので、この燃料噴射弁は、ECUからの噴射信号に基づいて燃料の噴射を行なうもので、電気信号を燃料流量に変換するとともに燃料を霧化して機関に向けて噴射する。」(段落【0001】)

イ.「【0002】
【従来の技術】従来一般的に使用される燃料噴射弁は例えば特開昭60-119363号公報に示される。この燃料噴射弁について図3により説明する。1は、磁性材料よりなり、底部1Aより後方Aに向かって筒体よりなる第1筒状部1Bが突出し、その後端1Cが係止段部1Dを介して開口するとともに底部1Aより先方Bに向かって筒体よりなる第2筒状部1Eが突出し、その先端1Fが開口する本体ハウジングである。2は磁性材料よりなる環状の上側磁極片であり、この上側磁極片2の中心より先方Bに向かって固定コア3が突出して形成され、一方上側磁極片2の中心より後方Aに向かってソケット部4が突出して形成される。固定コア3とソケット部4とは上側磁極片2に一体形成されるものでソケット部4の後端4Aから固定コア3の先端3Aに向けて燃料流路5が貫通して穿設される。6は、固定コア3の外周と第1筒状部1Bの内周との間に形成される環状の間隙内に配置される電磁コイルであり、この電磁コイル6は端子8に接続され、端子8はプラグソケット7を介して外方に向けて突起する。そしてECU(図示せず)より出力される電気信号は端子8を介して電磁コイル6に入力される。9は固定コア3の先端3Aに対向して配置された可動コアであってスプリング10によって固定コア3より離反する側に付勢される。前記可動コア9には弁体11が一体的に取着されるもので、弁体11は弁座形成体12の流路12A内に移動自在に案内配置されるとともに弁体11の先端には弁座形成体12の流路12Aの先端近傍に形成される弁座12Bを開閉する弁部11Aが形成される。又、弁体11に形成される鍔部11Bと可動コア9の先端9Aとの間にはC溝13Aが穿設されるストップ部材13が配置されるもので、弁体11の鍔部11Bがストップ部材13に当接することによって弁体11の固定コア3側への移動ストローク(いいかえると弁部11Aが弁座12Bを開放する開放側のストローク)が規制される。尚、弁座12Bは弁座形成体12の先端に穿設される燃料噴射孔12Cによって先方Bに開口する。」(段落【0002】)

ウ.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】かかる従来の燃料噴射弁によると、その製造コストの低減が困難であるとともに燃料噴射弁を小形化することが困難である。すなわち、製造コストの上昇は、Oリングを2個用意しなければならないことと、それぞれのOリングを装着する作業が必要となることによるものであり、一方大形化することは、Oリングを装着する為のOリング溝等の収納スペースを必要とすることによるものである。本発明になる燃料噴射弁は前記課題に鑑み成されたもので製造コストの低減と小形化を図ることにある。
【0006】
【課題を解決する為の手段】本発明になる燃料噴射弁によると、本体ハウジングと、該本体ハウジング内に配置される電磁コイルにより固定コアに磁気吸引される可動コアと、先端に弁部が形成されるとともに可動コアに取着された弁体と、弁体の弁部にて開閉される弁座と弁座に連なって先端に向けて開口する燃料噴射孔とを有し、本体ハウジングの先端に取着される弁座形成体と、を備える燃料噴射弁において、本体ハウジングを、底部の後端面より後方に向かいその先端が開口する第1筒状部と、底部の先端面より先方に向かいその先端が開口する第2筒状部と、底部の後端面より後方に向かい、その先端が第1筒状部の先端より後方に向かって突出する軸部と、軸部にあって軸部の先端から底部の先端面に向けて開口する燃料流路と、により構成し、前記、底部を含む第1筒状部、第2筒状部、軸部を磁性材料にて一体形成したものである。
【0007】
【作用】底部の後端面を含む第1筒状部の内方は本体ハウジング自体にて燃料流路と遮断されているので電磁コイルに対する一切のシール用のOリングが不要となる。」(段落【0005】ないし【0007】)

エ.「【0008】
【実施例】以下、本発明になる燃料噴射弁の一実施例を図により説明する。図1は本体ハウジングの縦断面図、図2は組みつけられた燃料噴射弁を示す縦断面図である。尚、図3の従来例と同一構成部品については同一符号を使用して説明を省略する。図1により磁性材料によって形成された本体ハウジング20について説明する。底部21の後端面21Aより後方Aに向かって第1筒状部22が延び、その先端22Aは係止段部22Bを介して開口する。又、底部21の後端面21Aの中心より後方Aに向かって軸部23が延び、軸部23の先端23Aは、第1筒状部22の先端22Aより後方Aに向かって突出する。而して軸部23の外周と第1筒状部22の内周とによって環状の間隙が形成される。又、軸部23の先端23Aから底部21の先端面21Bに向かって燃料流路24が貫通して穿設されるもので、底部21の近傍にあって底部21の先端面21Bに開口する燃料流路24の直径Cは他の燃料流路24の直径Dより大径を成すもので、この直径の相違に基づき燃料流路24には底部21の先端面21Bに向けて環状の端面24Aが形成されることになる。この環状の端面24Aの幅EはC-D/2となる。一方、底部21の先端面21Bより先方Bに向かって第2筒状部25が延び、その先端25Aは開口する。大径をなす燃料流路24は第2筒状部25内に開口することになる。以上の構成にて本体ハウジング20は一体形成される。
【0009】そして燃料噴射弁は次のように組みつけられる。第1筒状部22の先端22Aの開口より電磁コイル6が第1筒状部22内に挿入配置される。このとき電磁コイル6のコイルボビン6Aの内径部を軸部23に挿入するものでコイルボビン6Aの下側鍔部6Bが底部21の後端面21A上に配置される。次いで第1筒状部22の係止段部22B上に磁性材料にて形成された環状の上側磁極片26を配置する。これによると、上側磁極片26はコイルボビン6Aの上側鍔部6C上に配置されるもので、このとき端子8は上側磁極片26を貫通して第1筒状部22外へと突出する。かかる状態において、第1筒状部22の先端22Aを上側磁極片26の外周に向けて内方へカシメる。以上によって第1筒状部22内に電磁コイル6と上側磁極片26とを固着できた。尚、プラグソケット7は前記作業の終了後においてアウトモールドされる。
【0010】次いで、弁体11が取着された可動コア9を第2筒状部25の先端25Aの開口より底部21の先端面21Bを通して燃料流路24内に挿入配置するもので、このとき、可動コア9の先端9Aと弁体11の鍔部11Bとの間にC溝13Aを介して挿入されたストップ部材13は底部21の先端面21B上に配置される。尚、可動コア9の後端9Bと燃料流路24内に配置された環状調整部材Pとの間にはスプリング10が縮設される。次いで、ストップ部材13に向けて弁座形成体12が挿入配置されるもので、これによると弁体11は流路12Aに移動自在に案内配置されるとともに弁体11の弁部11Aは弁座12Bに対向する。以上をもって第2筒状部25内への部品の挿入は終了し、かかる状態において、第2筒状部25の先端25Aを弁座形成体12の外周に向けて内方へカシメる。又、可動コア9の後端9Bは燃料流路24の大径部内にあって軸部23に形成された環状の端面24Aに対向する。以上述べた第1筒状部22及び第2筒状部25内への部品の挿入作業及び第1筒状部22及び第2筒状部25の各先端22A,25Aのカシメ作業をもって燃料噴射弁の組みつけは終了する。」(段落【0008】ないし【0010】)

オ.「【0011】以上によって形成された燃料噴射弁によると、端子8を介して電磁コイル6に通電されると、上側磁極片26、第1筒状部22、底部21、可動コア9、第1筒状部22内にある軸部23によって磁気回路が形成され、可動コア9の後端9Bがスプリング10のバネ力に抗して固定コアとしての軸部23の環状の端面24Aに向けて吸引されるので弁体11は鍔部11Bがストップ部材13に当接する迄移動し、もって弁体11の弁部11Aが弁座12Bを規定量開口し、燃料流路24内に供給される加圧された燃料が弁座12Bを介して燃料噴射孔12Cより機関に向けて噴射される。」(段落【0011】)

カ.「【0013】
【発明の効果】以上述べた通り、本発明になる燃料噴射弁によると、燃料噴射弁を構成する部品コストの低減と組みつけ作業の低減を達成することができたもので安価な燃料噴射弁を提供できるとともに燃料噴射弁の小形化を達成できたものである。」(段落【0013】)

キ.「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる燃料噴射弁に用いられる本体ハウジングの一実施例を示す縦断面図。
【図2】本発明になる燃料噴射弁の一実施例を示す縦断面図。」(【図面の簡単な説明】) 」(【図面の簡単な説明】)

ク.上記ア.及びウ.の段落【0006】の記載事項から、引用文献1には、機関の燃料噴射装置に用いられる電磁コイルにより磁気吸引される燃料噴射弁が記載されていることが分かる。

ケ.上記エ.の段落【0009】及びオ.の記載事項から、引用文献1の燃料噴射弁は、電磁コイル6のコイルボビン6Aの内径部を挿入された固定コアとしての軸部23を備えることが分かる。

コ.上記イ.、ウ.の段落【0006】及びエ.の段落【0010】の記載事項から、引用文献1の燃料噴射弁は、弁座12Bを開閉する弁体11を取着して固定コアに磁気吸引される可動コア9を備えることが分かる。

サ.上記ウ.の段落【0006】、エ.の段落【0008】及びキ.の記載事項、並びに、図1及び図2から、引用文献1の燃料噴射弁は、軸部23の下流側に配置される、軸部23と底部21の肉厚よりも薄肉な部分(以下、「薄肉部」という。)、底部21及び第2筒状部25を有することが分かり、さらに、引用文献1の燃料噴射弁は、該薄肉部、底部21及び第2筒状部25が可動コア9を半径方向で部分的に取り囲んでいる構成を有していることが分かる。

シ.上記ウ.の段落【0006】、エ.の段落【0008】、キ.及びサ.の記載事項、並びに、図1及び図2から、引用文献1の燃料噴射弁は、固定コアとしての軸部23、薄肉部、底部21及び第2筒状部25とが一体形成されていることが分かる。加えて、引用文献1の燃料噴射弁は、上記薄肉部は、磁性材料で構成されて薄肉であることから、「磁気絞り」を形成しているものと認められ、さらに、上記薄肉部は磁性材料で構成されるから、軸部23と底部21及び第2筒状部25とが、磁気絞りを形成する薄肉部を介して直接磁石を通すように互いに接続されていると認められる。
また、引用文献1の燃料噴射弁は、磁気絞りを形成する薄肉部が、底部21から突き出す、薄肉の円筒形として底部21に一体形成されていること、及び、軸部23と磁気絞りを形成する薄肉部と底部21及び第2筒状部25とから成る一体的な全体構造が、燃料噴射弁の内側の磁性材料製の管体を形成していることが分かる。
なお、内燃機関の燃料噴射装置のための燃料噴射弁における磁気絞りの機能や磁気回路中の適宜の場所に設置することは、例えば、特開昭60-256550号公報、特開昭60-152960号公報及び特表平5-501749号公報にそれぞれ示されるように、当業者にとって周知の技術的事項であり、引用文献1の燃料噴射弁に設けられた上記「薄肉部」は構造的にみて、当該「磁気絞り」の機能を有していることは明らかである。

上記記載事項ア.ないしシ.から、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「機関の燃料噴射装置に用いられる電磁コイルにより磁気吸引される燃料噴射弁であって、電磁コイル6のコイルボビン6Aの内径部を挿入された固定コアとしての軸部23と、弁座12Bを開閉する弁体11を取着して磁気吸引される可動コア9と、前記固定コアとしての軸部23の下流に配置された、薄肉部、底部21及び第2筒状部25とを有しており、該薄肉部、底部21及び第2筒状部25が前記可動コア9を半径方向で部分的に取り囲んでいる形式のものにおいて、
固定コアとしての軸部23、薄肉部、底部21及び第2筒状部25とが一体形成であって、軸部23と底部21及び第2筒状部25とが、磁気絞りを形成する薄肉部を介して直接磁石を通すように互いに接続されており、磁気絞りを形成する薄肉部が、底部21から突き出す、薄肉の円筒形として底部21に一体形成されており、軸部23と磁気絞りを形成する薄肉部と底部21及び第2筒状部25とから成る構造が、燃料噴射弁の内側の磁性材料製の管体を形成している、電磁コイルにより磁気吸引される燃料噴射弁。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「機関の燃料噴射装置に用いられる電磁コイルにより磁気吸引される燃料噴射弁」は、その構成・機能からみて、本願発明における「殊に内燃機関の燃料噴射装置のための電磁式に操作可能な弁」に相当する。同様に、引用文献1記載の発明における「電磁コイル6」は本願発明における「磁石コイル」に、「固定コアとしての軸部23」は「コア」に、「弁座12B」は「定置の弁座」に、「弁体11」は「弁閉鎖体」に、「可動コア9」は「可動子」に、「薄肉部、底部21及び第2筒状部25」は「環状の閉鎖部」に、「磁気絞り」が「磁気的な絞り箇所」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用文献1記載の発明における「電磁コイル6のコイルボビン6Aの内径部を挿入された固定コアとしての軸部23」は本願発明における「磁石コイルによって取り囲まれたコア」に、「弁座12Bを開閉する弁体11を収着して磁気吸引される可動コア9」は「定置の弁座と協働する弁閉鎖体を操作する可動子」に、「磁気絞りを形成する薄肉部が、底部21から突き出す、薄肉の円筒形として底部21に一体形成されて」は「絞り箇所が、閉鎖部から突き出す、薄い壁厚の円筒形領域として閉鎖部に直接一体的に構成されて」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「固定コアとしての軸部23、薄肉部、底部21及び第2筒状部25とが一体形成」されていることは、「コアと閉鎖部とが構成部分」である限りにおいて、本願発明における「コアと閉鎖部とが別個の構成部分」に相当し、引用文献1記載の発明における「軸部23と磁気絞りを形成する薄肉部と底部21及び第2筒状部25とから成る構造が、燃料噴射弁の内側の磁性材料製の管体を形成している」は、「それによって弁の内側の磁性材料製の管体を形成している」という限りおいて、本願発明における「それによって弁の内側の金属製の管体を形成している」に相当する。

してみると、両者は、
「殊に内燃機関の燃料噴射装置のための電磁式に操作可能な弁であって、磁石コイルによって取り囲まれたコアと、定置の弁座と協働する弁閉鎖体を操作する可動子と、コアの下流に配置された管状の閉鎖部とを有しており、該閉鎖部が可動子を半径方向で部分的に取り囲んでいる形式のものにおいて、
コアと閉鎖部とが構成部分であって、コアと閉鎖部とが磁気的な絞り箇所を介して直接磁石を通すように互いに接続されており、絞り箇所が、閉鎖部から突き出す、薄い壁厚の円筒形領域として閉鎖部に直接一体的に構成されており、それによって弁の内側の磁性材料製の管体を形成している、電磁石式に操作可能な弁。」の点で一致し、以下の(1)及び(2)の点で相違している。

・相違点
(1)本願発明では、コアと閉鎖部とが「別個の構成部分」であり、コアと閉鎖部とが「絞り箇所の外側で、かつ前記薄い壁厚の円筒形領域において互いに堅固に結合されて」いるのに対して、引用文献1記載の発明では、コア(軸部23)と閉鎖部(薄肉部、底部21及び第2筒状部25)とが一体形成されている点(以下、「相違点1」という。)。

(2)磁性材料製の管体に関して、本願発明では、金属製と特定されているのに対して、引用文献1記載の発明では、磁性材料について具体的に特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である上記引用文献2の記載事項(例えば、第2ページ右下欄第20行ないし第3ページ左下欄第10行及び図面)から分かるように、引用文献2には、「殊に内燃機関の燃料噴射装置のための電磁式に操作可能な弁であって、コアと閉鎖部(中間部材6及び結合部材20)とが別個の構成部分であって、薄い壁厚の円筒形領域が、閉鎖部から突き出す構成(中間部材6が管形の金属)とされており、コアと閉鎖部とが薄い壁厚の円筒形領域の外側で、薄い壁厚の円筒形領域(第1の結合区分5)において互いに堅固に結合されている噴射弁。」なる技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されている。
ところで、コアと閉鎖部を別体で構成することは、例えば特開平2-66380号公報にも示されているところであり、上記引用文献2記載の技術的事項は周知といい得るものである。さらに、特開平2-66380号公報に記載の弁の如く、コアと閉鎖部とを2つの構成部材から構成することも、また、上記引用文献2記載の弁の如く、コアと閉鎖部とを3つの構成部材から構成することも、いずれも周知の技術(以下、「周知技術」という。)であって、いずれを採用するかは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
そして、引用文献1記載の発明と周知といい得る引用文献2記載の技術的事項は、「コアと閉鎖部とから構成される、殊に内燃機関の燃料噴射装置のための電磁式に操作可能な弁」である点で共通するから、当業者であれば、引用文献1記載の発明において、組付性等を考慮して周知といい得る引用文献2記載の技術的事項を適用して、コアと閉鎖部を別個の構成部材とし、その際に、コアと閉鎖体の結合箇所を適宜選択し、引用文献1記載の発明における薄い壁厚の円筒形領域、すなわち、絞り箇所の外側で結合するようにすることは、格別の創作力を要することもなく、なし得る程度のことにすぎない。
よって、当業者であれば、引用文献1記載の発明、周知といい得る引用文献2記載の技術的事項及び周知技術に基づいて、相違点1に係る本願発明のように構成することは、容易になし得ることである。

(2)相違点2について
磁性部材として所定の金属を選択し得ることは、当業者が通常備える技術常識であるから、引用文献1記載の発明の「磁性材料」に関して金属を選択して、相違点2に係る本願発明のように構成することは、当業者であれば適宜なし得る設計事項である。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、周知といい得る引用文献2記載の技術的事項及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明、周知といい得る引用文献2記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-24 
結審通知日 2009-06-25 
審決日 2009-07-07 
出願番号 特願2006-14180(P2006-14180)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 森藤 淳志
中川 隆司
発明の名称 電磁石式に操作可能な弁  
代理人 杉本 博司  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  

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