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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1207597
審判番号 不服2007-16623  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-14 
確定日 2009-11-26 
事件の表示 特願2003-378648「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 2日出願公開、特開2004-181226〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年11月7日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成19年2月1日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年6月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月17日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年6月11日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行ったが、請求人による回答書の提出はなかった。

第二.平成19年7月17日付の手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年7月17日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。
「図柄が可変表示する遊技の結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、前記図柄が可変表示する第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、
前記第2表示手段に表示される画像は、ノーマリーホワイトに制御することで前記図柄を視認可能にするスプライト画像を含むスプライト画像であって、優先順位に基づいて、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を他のスプライト画像に比べて優先的に視認できるように複数のスプライト画像を合成することにより生成され、
前記第1表示手段の図柄を視認可能な前記第2表示手段の図柄表示領域は、前記複数のスプライト画像のうち、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を優先して表示することにより実現し、
前記スプライト画像の優先順位は、前記遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後とする所定の条件により、変更可能であることとし、
前記第2表示手段は、液晶パネルと、該液晶パネルの裏側に設けられた導光手段と、該導光手段に導入する光を発生する照明手段と、該導光手段に導入された光を該導光手段の正面側の液晶パネルに向けて反射させる反射手段とを含む液晶表示装置で構成され、
前記反射手段の前記第1表示手段に対応する領域を光透過部とし、
前記液晶パネルはノーマリーホワイトに設定されることを特徴とする遊技機。」

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「遊技結果表示手段」、「第1表示手段」を、それぞれ、「図柄が可変表示する遊技の結果を表示する」、「前記図柄が可変表示する」と、図柄が可変表示する点を付加して特定(下位概念化)し、第2表示手段に表示される「スプライト画像」について、「ノーマリーホワイト」という新たな用語を付加することで、スプライト画像を特定し、「所定の条件」について「前記遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後とする所定の条件」とし、さらに、「第2表示手段」の構成、及び「液晶パネル」を具体化したものであるから、請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7?124290号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
【請求項1】 複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、
上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とするとともに、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態としたことを特徴するスロットマシン。
【請求項2】 複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、
上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とし、ゲーム中は液晶を透光状態とするとともに、液晶の透光面の一部を遮光状態として、メダルの投入枚数に応じた有効ラインを表示するようにしたことを特徴するスロットマシン。
【0016】上記センターパネル21のほぼ中央には、図2に示すように、3個の表示窓22?24を横並びに形成している。各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませている。・・・
【0018】・・・前記センターパネル21の裏側には、図1に示すように、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置されている。
【0019】・・・前記液晶パネル40の裏側には、図1に示すように、液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50が配置されている。
【0020】上記バックライトユニット50は、図1に示すように、各表示窓22?24の位置を除き、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、この乱反射板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている。なお、面発光板51を、各表示窓22?24の位置を除いて配置したことから、液晶パネル40の透光状態では、スロットマシン10の内部に配置された各回転リール30?32のシンボルマークを、センターパネル21を透してスロットマシン10の前面より見ることができる。
【0021】つぎに、上記した液晶パネル40の表示状態をゲームの進行に関連して説明する。まず、ゲームの開始前には液晶を遮光状態としている。このため、センターパネル21の前面からは、図3に示すように、各回転リール30?32のシンボルマークが見えない。
【0022】また、上記液晶を遮光状態においては、その遮光面にインフォメーションを液晶表示している。このインフォメーションとしては、図3に示すように、例えば「メダルをご投入下さい。」の文字を液晶表示している。なお、インフォメーションとしては、文字に限らず、絵等を表示させてもよい。また、「メダルをご投入下さい。」の文字のように、ゲーム機の使用方法に限らず、ゲーム機名やホール名、製造メーカー名を液晶表示させてもよい。
【0023】つぎに、スロットマシン10の前面の図2に示すメダル投入口11からのメダルの投入、或いはクレジットメダル投入スイッチ16のスイッチ操作により、1枚のメダルを投入すると、図4に示すように、各表示窓22?24の箇所の液晶が透光状態となる。このため、センターパネル21の前面より、内部の各回転リール30?32のシンボルマークを見ることができる。
【0024】これに加え、液晶の透光面の一部を遮光状態として、図4に示すように、中央ライン60を液晶表示して、1本の有効ラインを表示する。また、中央ライン60の図4において右端には、1枚のメダルが投入されたことを示す、例えば「1メダル」の文字が付された1個のメダル投入表示部70を液晶表示する。
【0025】つぎに、2枚目のメダルを投入すると、図5に示すように、中央ライン60に加えて、その上下に上ライン61と下ライン62とを液晶表示して、計3本の有効ラインを表示する。また、上下2本のライン61,62の図5において各右端には、2枚のメダルが投入されたことを示す、例えば「2メダル」の文字が付された2個のメダル投入表示部71,72を液晶表示する。その結果、メダル投入表示部70?72が、計3個となる。
【0026】さらに、3枚目のメダルを投入すると、図6に示すように、中央・上・下ライン60?62に加えて、その中央で「×」形に交差した2本の斜めライン63,64を液晶表示して、計5本の有効ラインを表示する。また、2本の斜めライン63,64の図6において各右端には、3枚のメダルが投入されたことを示す、例えば「3メダル」の文字が付された2個のメダル投入表示部73,74を液晶表示する。その結果、メダル投入表示部70?74が、計5個となる。
【0027】つづいて、スロットマシン10の前面の図2に示すスタートスイッチ12が操作されると、3個の回転リール30?32がほぼ同時に回転を開始する。そして、全回転リール30?32が回転を開始すると、図7に示すように、各表示窓22?24の下側に、「STOP」の文字が付された計3個のストップ表示部80?82が液晶表示される。3個のストップ表示部80?82は、スロットマシン10の前面の図2に示す3個のストップスイッチ13?15にそれぞれ対応し、各ストップスイッチ13?15の操作が可能であることを示す。
【0028】つぎに、3個のストップスイッチ13?15を全て操作し、全ての回転リール30?32を停止させる。その結果、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、特別の賞態様、例えば、図7に示す右下がりの斜めライン63上に「7」の文字から成る図柄が3個揃うと、いわゆる「ビッグボーナス」の役が成立し、15枚のメダルが遊技者に払い出される。
【0029】また、「ビッグボーナス」が成立すると、図8に示すように、上下に長く透光状態となっていた各表示窓22?24が、右下がりの斜めライン63上に揃った「7」の図柄を残して遮光状態となり、「ビッグボーナス」の当たり図柄を遊技者から見易いように強調する。さらに、各表示窓22?24の図7において向かって右側に表示されていた5個のメダル投入表示部70?74が、消灯し、その箇所に、図8に示すように、「ビッグボーナス」の文字が表示され、「ビッグボーナス」が成立したことを遊技者にわかり易く表示する。
と記載されている。
さらに、図4乃至図7には、メダルの投入枚数に応じた有効ラインを各表示窓22?24を含む位置に表示し、各表示窓22?24の周囲には、「stop」、「1メダル」、「2メダル」、「3メダル」が表示されている。
よって、摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、「ビックボーナス」の役が成立し15枚のメダルが遊技者に払い出される、スロットマシン10において、複数のシンボルマークを外周の表面に表示した回転リール30?32、及び、各回転リール30?32の外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リール30?32を回転させてシンボルマークを移動表示する手段と、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置され、上記センターパネル21のほぼ中央には、3個の表示窓22?24を横並びに形成されており、各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませており、
液晶パネル40の表示状態を、ゲームの開始前には各回転リールのシンボルマークを見えないように、液晶を遮光状態として、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態とするとともに、液晶の透光面の一部を遮光状態として、メダルの投入枚数に応じた有効ラインを表示するようにし、
液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50は、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、面発光板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている、スロットマシン10。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「シンボルマーク」は、本願補正発明の「図柄」に相当し、以下同様に、
「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると」は「特定の遊技結果が表示された場合」に、
「「ビッグボーナス」の役が成立し15枚のメダルが遊技者に払い出される」は「遊技者に有利な利益状態を発生させる」に、
「各回転リール30?32」は「第1表示手段」に、
「液晶パネル40」は「液晶パネル」に、
「スロットマシン10」は「遊技機」に、各々相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明の「回転リール30?32」は、引用文献1の請求項1、2及び、【0023】、【0028】の記載から、各回転リール30?32の外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませる構成となっており、ゲーム中は液晶を透光状態とすることで、センターパネル21の前面より、有効ライン上に停止した各回転リールのシンボルマークが見え、有効ライン上に停止したシンボルマークの組み合わせにより、「ビッグボーナス」の役が成立するものであるから、引用発明の「回転リール30?32」及び「液晶パネル」から構成されるものが、本願補正発明の「図柄が可変表示する遊技の結果を表示する遊技結果表示手段」に相当するものと認められる。
b.引用発明は、「液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置され、上記センターパネル21のほぼ中央には、3個の表示窓22?24を横並びに形成されており、各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませて」いるのであるから、正面側から見て、液晶パネル40は、回転リール30?32の表示領域より手前側に設けられているものと認められる。
また、本願補正発明の「液晶パネル」は「第2表示手段」に含まれるから、引用発明と本願補正発明とは、「正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段」を有する点で一致する。
c.本願補正発明の「前記第1表示手段の図柄を視認可能な前記第2表示手段の図柄表示領域は、前記複数のスプライト画像のうち、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を優先して表示することにより実現し」について、「優先順位の高い所定のスプライト画像」と、「他のスプライト画像」が、具体的にどのような画像であるのかが記載されていないので、「前記第1表示手段の図柄を視認可能な前記第2表示手段の図柄表示領域」が、何を「実現し」たのかが不明であるが、少なくとも本願補正発明における上記記載から、第2表示手段の図柄表示領域を第1表示手段の図柄を視認可能とした状態で、なんらかの複数のスプライト画像をそれぞれの優先順位に基づいて、スプライト画像を合成して表示した点を特定したものと解釈できる。
一方、引用発明においては、ゲーム中は液晶を透光状態とすることで、各表示窓22?24から各回転リールのシンボルマークが見えるようにし、液晶の透光面の一部を遮光状態として、メダルの投入枚数に応じた有効ラインを各表示窓の所定の位置に表示するものであるから、本願補正発明とは、「前記第1表示手段の図柄を視認可能な第2表示手段の図柄表示領域は、所定の画像を表示する」点で共通する。
d.引用発明の「バックライトユニット50」を配設した目的が「液晶パネル40をその裏側から照明するため」である点、及び、「蛍光灯52」が「面発光板51」の端面に配置されている点を勘案すると、「蛍光灯52」の光が、「面発光板51」を介して「液晶パネル40」を裏側から照明しているものと認められるので、引用発明の「面発光板51」、「蛍光灯52」は、それぞれ、本願補正発明の「導光手段」、「照明手段」に相当する。
よって、引用発明と本願補正発明とは、「前記第2表示手段は、少なくとも、液晶パネルと、該液晶パネルの裏側に設けられた導光手段と、該導光手段に導入する光を発生する照明手段とを含む液晶表示装置で構成され」た点で一致する。

以上を総合すると、両者は、
「図柄が可変表示する遊技の結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、前記図柄が可変表示する第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、
前記第1表示手段の図柄を視認可能な前記第2表示手段の図柄表示領域は、所定の画像を表示し、
前記第2表示手段は、少なくとも、液晶パネルと、該液晶パネルの裏側に設けられた導光手段と、該導光手段に導入する光を発生する照明手段とを含む液晶表示装置で構成された、遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、「前記第2表示手段に表示される画像は、ノーマリーホワイトに制御することで前記図柄を視認可能にするスプライト画像を含むスプライト画像であって、優先順位に基づいて、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を他のスプライト画像に比べて優先的に視認できるように複数のスプライト画像を合成することにより生成され」るのに対し、引用発明では、「液晶パネル40」に表示される画像を「ノーマリーホワイト」に制御しているか否か不明であり、さらに、「スプライト画像」を用いていない点で相違する。
[相違点2]
本願補正発明は、「第2表示手段の図柄表示領域」に「前記複数のスプライト画像のうち、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を優先して表示する」のに対し、引用発明では、各回転リールのシンボルマークが見える領域に表示された「有効ライン」が、スプライト画像を用いていない点で相違する。
[相違点3]
本願補正発明の、「前記スプライト画像の優先順位は、前記遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後とする所定の条件により、変更可能であることとし」について、「前記遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後とする」との記載によって、所定の条件をどのように特定しようとしているのかが不明(例えば、「遊技結果表示手段に遊技結果を表示する」前と後で、スプライト画像の優先順位が変わるように設定可能であるのか、若しくは、「遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後」の期間中の任意時期に、スプライト画像の優先順位が変わるように設定可能であるのか、または、それ以外の内容を意図しているのか、など、様々な意味がとれる。)である。しかも、本願出願時の明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下、「本願当初明細書等」という。)を参酌(特に段落【0075】?【0076】)しても、依然として不明である。しかしながら、審判請求書を補正する平成19年7月17日付け手続補正書の(3)本願発明が特許されるべき理由の中で、「また、遊技結果の前後で、優先順位を変更させて表示することができます。すなわち、遊技結果の前後とされる遊技の結果を表示する図柄(リール)の停止前後で、スプライト画像の優先順位を変更させることができます。」と説明しているので、本願補正発明の「前記遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後とする所定の条件により、」の記載を「遊技結果の前後とされる遊技の結果を表示する図柄(リール)の停止前後で、」に換えて本願発明を認定し、引用発明との対比を行うと、本願補正発明では、「前記スプライト画像の優先順位は、遊技結果の前後とされる遊技の結果を表示する図柄(リール)の停止前後で、変更可能であることとし」ているのに対し、引用発明では、そもそも、「スプライト画像」を用いていない点で相違する。
[相違点4]
本願補正発明では、「第2表示手段」が、「該導光手段に導入された光を該導光手段の正面側の液晶パネルに向けて反射させる反射手段とを含む液晶表示装置で構成され」、さらに、「前記反射手段の前記第1表示手段に対応する領域を光透過部」とするのに対し、引用発明では、「反射手段」を含むかどうか明らかでない点。
[相違点5]
本願補正発明は、「前記液晶パネルはノーマリーホワイトに設定される」のに対し、引用発明の「液晶パネル40」がノーマリーホワイトに設定されているか否かが不明な点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1、2、5について]
相違点1、2、5は、関連するのであわせて検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001?231976号公報(以下「引用文献2」という。)の図面(特に、図3、図4)から、「組合せ図柄画像W,異空間背景画像V,移動体画像U及び表示画面背景画像Y」が全て表示されているときに、「図柄画像W」は、「液晶ディスプレイ20」の「表示部60」において視認可能となっており、これに加えて、引用文献2の請求項1、段落【0023】、【0046】?【0065】の記載から、本願補正発明の「図柄が可変表示する遊技の結果を表示する遊技結果表示手段」、「該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段」、「優先順位に基づいて、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を他のスプライト画像に比べて優先的に視認できるように複数のスプライト画像を合成することにより生成され」る技術、及び、「前記第1表示手段の図柄を視認可能な前記第2表示手段の図柄表示領域は、前記複数のスプライト画像のうち、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を優先して表示する」技術、に相当する技術(以下、「引用文献2の技術」という。)が記載されているものと認められる。
なお、引用文献2の「図柄画像W」、「表示画面60又は液晶ディスプレイ20」、「繰り返し表示が順次停止して並んで表示された組合せ図柄が全て同じであると大当りで賞球又は賞品メダルが多く払い出される」(請求項1)、「組合せ図柄画像W,異空間背景画像V,移動体画像U及び表示画面背景画像Y」、「液晶ディスプレイ20」、「組合せ図柄表示部61、62、63」は、それぞれ、本願補正発明の「図柄」、「遊技結果表示手段」、「該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段」、「複数のスプライト画像」、「第2表示手段」、「図柄表示領域」に相当し、引用文献2の段落【0023】、図1に記載された「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
そして、引用発明と引用文献2の技術は、共に、「図柄が可変表示する遊技の結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機」の技術で共通し、さらに、遊技中において、図柄を視認可能とするように、液晶表示する点で共通するから、引用発明に引用文献2の技術を適用して、引用発明の「液晶パネル40」に、各回転リールのシンボルマークを視認可能とする「複数のスプライト画像」を合成して表示することは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって容易に想到しうることである。
さらに、液晶を駆動していない時は液晶が透光状態となり、液晶の裏側にある背景を視認可能とする液晶表示装置は、例えば、実願昭47-104490号(実開昭49-61588号)のマイクロフィルム(特に、第3頁)、実願昭58-171440号(実開昭60-79116号)のマイクロフィルム(特に、第3頁)、特開平8?194172号公報(特に、【0006】)、特開平8?94960号公報(特に、段落【0015】)に記載されているように、周知の技術(以下、「周知技術」という。)であり、引用発明において、各回転リールのシンボルマークを視認可能とするために、上記周知技術を適用して、液晶パネル40を、液晶装置が駆動されていないときに透過率を高くする、ノーマリーホワイトに設定、及び、制御することで、上記相違点1、2に係るスプライト画像を、図柄を視認可能にするスプライト画像として含ませることは、当業者にとって格別な困難性はない。
[相違点3について]
引用文献1の段落【0027】と、段落【0029】の記載及び、図7、図8による図示から、回転リール30?32の停止前後で、液晶パネル40の表示が変更されているものと認められる。
そして、回転リールの停止前後での液晶パネルの表示を変更するために、上記相違点3に係るスプライト画像を引用発明に適用して、複数のスプライト画像の優先順位を変更することは、当業者にとって容易に想到しうることである。
[相違点4について]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000?11725号公報(以下「引用文献3」という。)には、【0013】「中央パネル31には、その中央部にリール表示窓31aが設けられ、このリール表示窓31aの周囲にメダル投入枚数及び入賞ライン選択などの各種表示器の表示部31bが設けられている。」、【0017】「なお、後述するように、反射シート43に形成された切り欠き部43a,43bに対向する部分にはドット印刷パターンを施さず、板厚方向に透明な透光部41a,41bを形成している。」、【0019】「また、各導光板41,42それぞれの一方の光入射面41c,42cに沿って、光源としての冷陰極ランプ44が配置されている。」、【0025】「導光板42の光放射面42eから放出された光は、リール34の周面を照らす。そして、リール34の周面によって反射された光の一部は、導光板42に導入され、反射シート43の切り欠き部43a、導光板41、拡散シート48の切り欠き部48a、中央パネル31のリール表示窓31aを通って、外部に放出される。」、との記載、及び図3の図面から、「導光板41」に導入する光を発生する「冷陰極ランプ44」と、「導光板41」に導入された光を「導光板41」の正面側に向けて反射させる「反射シート43」と、「反射シート43」の「切り欠き部43a」が複数の「リール34」に対応する領域に形成され、光透過部となっている技術(以下、「引用文献3の技術)という。)が開示されているものと認められる。
また、「表示部31b」について液晶表示であることが記載されていないものの、【0002】の【従来の技術】には、正面パネルに遊技内容を表示する液晶表示を行うことが記載されており、この記載に基づき「表示部31b」を液晶パネルから構成して、「冷陰極ランプ44」、「導光板41」「反射シート43」によって、「表示部31b」を照明することは、当業者にとって自明であるといえる。
そうすると、引用文献3の技術を引用発明の「液晶パネル40」に適用して、「液晶パネル40」を「冷陰極ランプ44」、「導光板41」「反射シート43」によって照明する構成にすることは、当業者にとって容易に想到しうることである。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2、3の技術、及び周知技術に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用発明2、3の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成19年7月17日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年2月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。
「遊技結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、
前記第2表示手段に表示される画像は、スプライト画像であって、優先順位に基づいて、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を他のスプライト画像に比べて優先的に視認できるように複数のスプライト画像を合成することにより生成され、
前記第1表示手段を視認可能な前記第2表示手段の図柄表示領域は、前記
複数のスプライト画像のうち、前記優先順位の高い所定のスプライト画像を優先して表示することにより実現し、
前記スプライト画像の優先順位は、所定の条件により、変更可能であること、
を特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、本願補正発明の「遊技結果表示手段」、「第1表示手段」における「図柄が可変表示する」点についての限定がなくなり、さらに、「スプライト画像」における「ノーマリーホワイト」に関する限定、「所定の条件」における「前記遊技結果表示手段に遊技結果を表示する前後」の限定がなくなり、「第2表示手段」の構成、及び「液晶パネル」の記載を簡略化するものである。
そうすると、本願発明の構成要件の一部を下位概念化するとともに複雑化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2、3の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2、3の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2、3の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-25 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-15 
出願番号 特願2003-378648(P2003-378648)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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