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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1207598
審判番号 不服2007-17227  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2009-11-26 
事件の表示 特願2001-325454「病院情報表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-132144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成13年10月23日の出願であって、平成19年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年7月20日付けで手続補正がなされたものである。




第2 平成19年7月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成19年7月20日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成19年7月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、
本件補正前の特許請求の範囲第1乃至12項、すなわち、

「【請求項1】
患者情報、診療情報を格納するデータベースサーバと、業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバと、診療情報を表示する診療情報表示端末とが接続されてなる病院情報表示システムにおいて、
前記診療情報表示端末は、表示部と、この表示部に前記診療情報を表示する制御と、前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う制御部を有することを特徴とする病院情報表示システム。
【請求項2】 前記制御部は、診療内容をマトリクス状のカレンダ形式にて表すカレンダ画面を表示する制御と、各診療内容の実施日及び実施予定日に応じて該当する日付のカラムにマークを表示する制御とを行うことを特徴とする請求項1記載の病院情報表示システム。
【請求項3】 前記制御部は、前記カレンダ画面において、各診療内容の進捗情報をマークの表示形式によって区別して、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の病院情報表示システム。
【請求項4】 前記制御部は、前記カレンダ画面の表示幅に入りきらない日付のカラムを、過去分・未来分としてそれぞれ一列に圧縮して表示する制御を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の病院情報表示システム。
【請求項5】 前記制御部は、前記カレンダ画面の表示幅の伸縮に応じて、そのまま日付のカラムを表示する期間と、この期間の前後であって日付のカラムを過去分・未来分としてそれぞれ一列に圧縮して表示する期間とを自動的に計算して、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の病院情報表示システム。
【請求項6】 前記制御部は、前記過去分・未来分として圧縮された期間内に実施された診療情報に関しては、見出しのみの一行に省略して、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の病院情報表示システム。
【請求項7】 前記制御部は、前記カレンダ画面の縦方向に関する表示幅に余裕がある場合には、前記過去分として圧縮された期間内に実施された診療情報の内、直近の内容に関して、これを展開して表示する制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の病院情報表示システム。
【請求項8】 前記制御部は、前記カレンダ画面を表示する場合、特定の日付を指定することで、その前後の期間を自動的に圧縮して、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の病院情報表示システム。
【請求項9】 前記制御部は、特定の診療内容に関しては、前記過去分として圧縮された期間内に実施された診療情報に関しても、常にその内容を展開して表示する制御を行うことを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載の病院情報表示システム。
【請求項10】 前記制御部は、特定の診療区分に関しては、前記過去分として圧縮された期間内に実施された診療情報に関しても、常にその内容を展開して表示する制御を行うことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか一項に記載の病院情報表示システム。
【請求項11】 前記制御部は、前記進捗情報の属性と、これに対応するマークの表示形式を任意に設定する制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の病院情報表示システム。
【請求項12】 前記制御部は、前記カレンダ画面の表示幅に入りきらない日付のカラムを、過去分・未来分としてそれぞれ一列に圧縮して表示するか否かを任意に設定する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の病院情報表示システム。」

であったものを、本件補正後の特許請求の範囲第1乃至9項、すなわち、

「【請求項1】
患者情報、診療情報を格納するデータベースサーバと、業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバと、診療情報を表示する診療情報表示端末とが接続されてなる病院情報表示システムにおいて、
前記診療情報表示端末は、表示部と、前記データベースサーバに格納された情報を読み出して前記表示部に前記診療情報を表示する制御を行うものであって、前記診療情報をカレンダ形式で表示する制御と、前記診療情報の一部が圧縮された状態で表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分が展開された状態で表示する制御と、及び前記カレンダ形式の表示におけるカラムに診療項目の属性に応じて表示形式が区別されたマークを表示する制御を行う制御部を有することを特徴とする病院情報表示システム。
【請求項2】 前記診療項目の属性は、実施済み、または未実施である請求項1記載の病院情報表示システム。
【請求項3】 前記制御部は、前記カレンダ画面の表示幅に入りきらない日付のカラムを、過去分・未来分としてそれぞれ一列に圧縮した状態で表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。
【請求項4】 前記制御部は、前記カレンダ画面の表示幅の伸縮情報に基づいて、これに応じて、そのまま日付のカラムを表示する期間と、この期間の前後であって日付のカラムを過去分・未来分としてそれぞれ一列に圧縮した状態で表示する期間とを計算して、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。
【請求項5】 前記制御部は、前記過去分・未来分として圧縮された期間内に実施された診療情報に関しては、見出しのみの一行に省略した状態で、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。
【請求項6】 前記制御部は、前記カレンダ画面の縦方向に関する表示幅に余裕がある場合には、前記過去分として圧縮された期間内に実施された診療情報の内、直近の内容に関して、これを展開した状態で表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。
【請求項7】 前記制御部は、前記カレンダ画面を表示する場合、特定の日付を指定することで、その前後の期間を自動的に圧縮した状態で、これを表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。
【請求項8】 前記制御部は、特定の診療内容に関しては、前記過去分として圧縮されて表示された期間内に実施された診療情報に関しては、常にその内容を展開した状態で表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。
【請求項9】 前記制御部は、特定の診療区分に関しては、前記過去分として圧縮されて表示された期間内に実施された診療情報に関しては、常にその内容を展開した状態で表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の病院情報表示システム。」

に変更するものである。


つまり、本件補正は、

(1)本件補正事項1
本件補正前の請求項1乃至2を削除する補正、
(このことは、本件補正前の請求項4乃至10が直接的又は間接的に本件補正前の請求項3を引用していたものが、本件補正前の請求項4乃至10に対応する本件補正後の請求項3乃至9が本件補正後の請求項1を引用したものとなっていること、及び、後述する審判請求人の主張から明らかである。)

(2)本件補正事項2
本件補正前の請求項3の「前記制御部は、前記カレンダ画面において、各診療内容の進捗情報をマークの表示形式によって区別して、これを表示する制御を行う」という記載を、本件補正後の請求項1の「・・・、及び前記カレンダ形式の表示におけるカラムに診療項目の属性に応じて表示形式が区別されたマークを表示する制御を行う制御部を有する」という記載に変更することによって、
「表示形式が区別されたマーク」の対象を、「各診療内容の進捗状況」から「診療項目の属性」に変更する補正、

(3)本件補正事項3
本件補正前の請求項11乃至12を削除する補正、

を含むものである。


なお、本件補正に関して、本審判請求人は、審判請求書において、

「(b)補正の根拠
補正後の請求項1は旧請求項1乃至3を組み合わせたものである。
「前記データベースサーバに格納された情報を読み出して前記表示部に前記診療情報を表示する制御を行うものであって、」は、明細書段落[0027]の記載「・・・主に、診療情報を表示する本発明に係る複数の診療情報表示端末1と、患者情報・診療情報等を格納するデータベースサーバ2と、業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ3とから構成されている。」を根拠とするものである。すなわち、前記表示端末には表示を制御する制御部が設けられ、表示に当たっては、データーベースサーバに格納されている情報を読み出してきて種々の表示態様を制御しているのが一般的なのである。
また、「前記診療情報をカレンダ形式で表示する」は、段落[0028]の記載「・・・縦軸に診療項目をとり、横軸に日付をとる表形式、所謂カレンダ形式によって表示される。」を根拠とするものである。
さらに「及び前記カレンダ形式の表示におけるカラムに診療項目の属性に応じて表示形式が区別されたマークを表示する制御」は、段落[0028]の記載「本実施形態における診療表示端末では、これらのマークの表示形式を、診療項目の属性に応じて任意に設定することができるようになっている。」及び旧請求項3の記載「前記制御部は、前記カレンダ画面において、各診療内容の進捗情報をマークの表示形式によって区別して、」を根拠とするものである。
(c)上記補正後の請求項1による発明によれば、先ず、限られた表示範囲の中で、過去及び未来にわたる診療内容を効果的に圧縮して簡略表示することにより、診療情報の一覧性を向上することができる、という作用効果が得られ、さらに、診療項目の属性に応じてマークの表示形式を設定することができるので、カレンダ画面を参照することのみで、各診療項目について、既に実施済みであるか、未だ実施されていないか等を判断することができるという作用効果が得られる(明細書段落[0029])。」

と主張している。



2.本件補正に対する判断

本件補正事項2は、請求項を削除するものではないので、
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)第1号に規定された「請求項の削除」に該当しない。

また、本件補正事項2は、「表示形式が区別されたマーク」の対象を、「各診療内容の進捗状況」という具体的情報から、「診療項目の属性」という「各診療内容の進捗状況」以外の診療に関する情報を含む抽象的情報に変更する補正なのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件補正事項2に関して、本件補正前の請求項3の「前記制御部は、前記カレンダ画面において、各診療内容の進捗情報をマークの表示形式によって区別して、これを表示する制御を行う」という記載に誤記はないのであるから、
本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」に該当しない。

しかも、本件補正事項2に関して、本件補正前の請求項3の「前記制御部は、前記カレンダ画面において、各診療内容の進捗情報をマークの表示形式によって区別して、これを表示する制御を行う」という記載は明りようであり、
しかも、本件補正前の請求項3の「前記制御部は、前記カレンダ画面において、各診療内容の進捗情報をマークの表示形式によって区別して、これを表示する制御を行う」という記載が明りようでない旨の拒絶理由通知は通知されていないので、
本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。

したがって、本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。


3.まとめ

以上のことから、本件補正事項1及び本件補正事項3について検討するまでもなく、
本件補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3 本願発明について

1.本願発明の認定

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年3月26日付けの手続補正書の特許請求の範囲第1項に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
患者情報、診療情報を格納するデータベースサーバと、業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバと、診療情報を表示する診療情報表示端末とが接続されてなる病院情報表示システムにおいて、
前記診療情報表示端末は、表示部と、この表示部に前記診療情報を表示する制御と、前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う制御部を有することを特徴とする病院情報表示システム。」



2.引用例の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-52073号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ア)
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療計画及び記録を適切に作成できるように医師等の計画及び記録者を支援する新規な医療計画及び記録支援システムの技術分野に属する。本発明はまた、コンピュータをそのような医療計画及び記録支援システムとして機能させるためのプログラムを記録した機械読み取り可能な媒体の技術分野に属する。」

(イ)
「 【0002】
【従来の技術】
病院、クリニック等の医療機関では伝統的に、或る患者が、頭痛、吐き気、耳鳴り、腹痛等がするなど何らか主訴(病気の兆候)を伴って外来した場合や救急車等により運び込まれた場合、医師はこの患者に対し診察を行った後に、当該医師の診断又は所見に従って、その後の検査、診療、入院手配、手術、薬剤投与等の医療行為についての医療計画を先ず頭の中で立てる。そして、この患者に対する検査・投薬の内容や日程、手術の内容や日程、術後処置・検査の内容や日程、…等の医療計画を“指示表”と呼ばれる専用シートに書込んで行ったりする。また、計画に基づいて実行された医療行為の記録については、伝統的な紙のカルテに代えてコンピュータを用いた電子カルテによる記録が普及しつつある。
【0003】
最近では、例えば、本願出願人により特許された特許番号第2706645号(特開平9-185651号)や特許番号第2815346号(特開平10-214302号)の公報に開示されているように、コンピュータ画面に表示された日付け毎に所定の医療行為項目を並べた表、即ち所謂“ケアマップ”(本願出願人の登録商標)というプログラムをコンピュータ上で起動することにより表示される医療計画表(以下適宜、“ケアマップ”と称する)上で、当該医師の診断又は所見に従って、各項目を穴埋めする要領で、このような医療計画を立てたりすることも可能である。より具体的には、医師等の医療計画及び記録者は、当該医師の診断又は所見に基づいて、当該患者に関連ある医療項目をケアマップの縦軸をなす項目に設定すると共に、各項目に属する医療行為を実行する適当な期間を横軸をなす日付けに設定して、ケアマップの枠組みを作成し、更に、実行すべき医療行為を対応する日付け及び項目の各枠に囲まれた個々の領域(以下、“セル”と称する)内に入力する。そして、計画された医療行為が実行された後には、計画データに代えて実績データが、ケアマップの各セル内に確定データとして残されて行く。即ち、このケアマップには、計画データと共に実績データも示される。
【0004】
特に、上述のケアマップによれば、医療計画を実行する医師、看護婦、薬剤師等の病院関係者が医療計画情報を共有することにより、各端末においてケアマップの各セル(或いは、各項目)に係るデータを入力や変更するなど、言わば連係プレーにより適宜修正を加えながら、無駄の無い医療計画を立てつつ当該医療計画を実行して行くことが可能とされる。」

(ウ)
「 【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のケアマップによれば、近時の複雑高度化した医療の現場では、主治医等の医療計画及び記録者と、実際に医療行為を行う者(副担当医師、検査医師や検査技師、薬剤師、看護師、看護婦、リハビリテーション技師、給食係等)とが同一でない場合も多く、更に両者間ではコンピュータによる公知のオーダシステム(医療行為の実行命令をコンピュータネットワークを介して行うシステム)等によって間接的に連絡が取られている場合も多い。このため、ケアマップ上で計画した各医療行為について、単純に計画段階或いは待機段階に有るのか否か、既にオーダが発せられたのか否か、近日中に或いは早急に実行すべき時期に至っているのか否か、必要に応じて実行すればよいのか否か、既に予定通りに実行されたのか否か、実行により検査結果データ等の何らかの結果データが存在しているのか否か、予定に反して実行されなかったのか否か、予定通りではなくともとにかく実行済みであるのか否か、継続的に行われるべき医療行為が規則的に行われているのか否か等の各医療行為の実行状況について、医師等の医療計画及び記録者が把握することは困難であるという問題点がある。即ち、このような各種状況を表上で即時に認識したり、このような各種状況を示す情報を表上で見ながら同一表上で計画を立てたりすることができないという問題点がある。
【0006】
しかも、このような早急に行うべき時期に至っているのか否かや予定通りに実行されたか否か等の各種状況は、何らの行為が行われなくても、時間が経過することにより変化する性質を持つので、このような各種状況を示す情報の入力作業(例えば、どのような状況にあるかを計画及び記録者が手動入力する作業)は、煩雑で多大の労力を要してしまう。特に医療計画が例えば食事制限、薬剤投与、精密検査、診断、手術、リハビリ等の多種多様の医療行為を含む場合には、一層煩雑で多大の労力を要する。加えて、それらの多種多様な医療行為が、一定の相前関係(例えば、一の医療行為を行うためには、その実行前に他の医療行為が実行済みでなければならなかったり、一の医療行為を実行したことにより他の医療行為を早急に実行しなければならない等の相互関係)を持つため、単純に時間により定まることのない、このような各種状況を示す情報の入力作業は、一層困難となってしまうのである。
【0007】
しかも例えば、交通事故による緊急患者を受け入れたり、医師の都合が付かなくなったりした場合に、当該医療計画表に係る患者に対する実行間近の医療行為が未実行に終わったり、この際一つの項目の日程を変更するだけで、或いは、薬剤の種類など医療行為の内容を若干変更するだけで、他の多数の項目についての計画変更も余儀なくされる場合も現実には多いため、この問題は非常に重大である。特に、重病や緊急を要する多数の患者を扱うような病院では、このような計画及び記録を作成する作業が迅速に行われないのでは、人命に関わる重大事に発展しかねないため、ベテランの医師等が、この計画変更の作業自体に多大な労力を費やす必要があり、結局その分だけ貴重な医療資源が不足してしまうのである。
【0008】
本発明は上述した問題点に鑑みなされたものであり、医師等の医療計画及び記録者が適切な医療計画及び記録を容易且つ迅速に作成することを支援する医療計画及び記録支援システム並びにコンピュータをそのような医療計画及び記録支援システムとして機能させるためのプログラムを記録した機械読み取り可能な媒体を提供することを課題とする。」

(エ)
「 【0066】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態としての医療計画及び記録支援システムのブロック図である。
【0067】
図1において、医療計画及び記録支援システム1は、ハードウエア資源としては、公知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、中型コンピュータ、大型コンピュータ、モバイルコンピュータ(携帯型情報端末)、電子手帳等のコンピュータからなり、記憶装置2、入力装置3、処理部4、表示装置5、印刷装置6、通信部7、読取装置8及びシステム時計9を備えて構成されている。」

(オ)
「 【0068】
記憶装置2は、ハードディスク装置、IC(Integrated Circuit)メモリ、磁気ディスク装置、光磁気ディスク装置、光ディスク装置等のランダムアクセス可能な周知の記憶装置から構成されている。」

(カ)
「 【0069】
記憶装置2には、予め設定された複数種類の医療行為のうちのいずれかを示す医療行為データを各医療行為の実行時期を示す実行時期データに対応付けて夫々格納する複数の第1オブジェクトファイル21が論理的に構築されている。第1オブジェクトファイル21は、これら医療行為データ及び実行時期データの他に、後述のように処理部4に複数種類の状況表示マークのうちの一つを選定させ、状況表示マークを表示するための第1副表示データを生成させる手順情報を更に格納している。記憶装置2には更に、後述のように処理部4に、システム時計9の現在日時を参照させ、医療計画表中における現在日時位置を算出させ、現在日時マークを表示するための第2副表示データを生成させる手順情報を格納する第2オブジェクトファイル手段31が論理的に構築されている。このように本実施形態では、第1オブジェクトファイル21及び第2オブジェクトファイル31に格納された各種の手順情報を用いて、オブジェクト指向により効率的に、第1副表示データ及び第2副表示データを生成できる。」

(キ)
「 【0070】
但し、第1オブジェクトファイル21や第2オブジェクトファイル31を用いること無く、このような手順情報を、医療行為データや実行時期データとは別に設けられたプログラムファイル内に格納しておき、これを適宜実行するように構成してもよい。また、医療計画表を表示するための主表示データのうち医療計画表の枠組みを規定するファーマット情報については、第1オブジェクトファイル21とは別にフォーマット情報用ファイルに格納してこれを適宜読み出し、枠組みにより囲まれた何れのセル内に各医療行為データを表示するかを定める手順情報については第1オブジェクトファイル21に格納するように構成してもよい。」

(ク)
「 【0071】
入力装置3は、キーボード、テンキースイッチ、マウス、トラックボール、入力ペン、入力タブレット等からなり、医療行為データ及び実行時期データ、その他各種のデータやコマンドを入力可能であり、更に表示装置5に表示された画像の任意の位置を指定可能に構成されている。」

(ケ)
「 【0072】
処理部4は、表示制御手段の一例としてCPU(Central Processing Unit)から構成されており、第1オブジェクトファイル21に格納された医療行為データ及び実行時期データに基づいて一の患者に関する一連の医療計画をなす医療行為データを日付け別且つ種類別に並べた医療計画表のフォーマットで表示するための主表示データを生成し、更に第1オブジェクトファイル21に格納された手順情報に従って、システム時計9により計測された現在日時と各医療行為の実行時期との関係に応じて予め設定された複数種類の状況表示マークのうちの一つを選定して、該選定した状況表示マークを医療計画表中の対応する医療行為データに重ねて又は隣接して表示するための第1副表示データを生成する。そして、第2オブジェクトファイル31に格納された手順情報に従って、医療計画表中の一日の幅を24時間に換算した場合における、システム時計9により計測された現在日時に対応する医療計画表中の現在日時位置を算出して、該算出した現在日時位置に予め設定された現在日時マークを表示するための第2副表示データを生成するように構成されている。」

(コ)
「 【0073】
表示装置5は、CRT(Cathode Ray Tube)装置、LCD(液晶表示装置)等の周知の表示装置であり、処理部4により生成された主表示データ、第1副表示データ及び第2副表示データに基づいて、状況表示マーク及び現在日時マークと共に医療行為データを医療計画表のフォーマットで表示する。また特に入力装置3により画面上の任意の位置を指定可能に構成されている。」

(サ)
「 【0075】
通信部7は、例えば、第1オブジェクトファイル21を含む各種のファイルやデータを他のコンピュータ等とやり取りするためのモデム等を含む。通信部7は、例えば、有線、無線、専用回線、一般回線、電話回線等の通信回線を介して他の大型コンピュータ、パーソナルコンピュータ、モバイルコンピュータ(携帯型情報端末)、電子手帳等と結ばれている。」

(シ)
「 【0076】
読取装置8は、例えば、CD-ROMドライブ、DVD-ROMドライブ、FD(フロッピーディスク)ドライブ等からなり、CD-ROM、DVD-ROM、FD等の記録媒体8aに記録されているコンピュータプログラムを読み取る。このように機械読み取りされたコンピュータプログラムは、医療計画及び記録支援システム1のハードウエア資源たるコンピュータを、当該医療計画及び記録支援システムとして機能させる。尚、記憶装置2内に構築される第1オブジェクトファイル21や第2オブジェクトファイル31の一部又は全部を記録媒体2aに記録しておき、必要に応じて読み出すようにしてもよい。特に、特定患者に対する個別的な医療計画に用いられる前段階における、標準的な医療計画に用いられる第1オブジェクトファイル21や、後に個別的な医療計画用に修正変更する際の基礎となる標準的な第1オブジェクトファイル21については、コンピュータプログラム作成時に作成可能であると共に汎用性も高いので、コンピュータプログラムと共に記録媒体8aに予め格納しておくと後々便利である。」

(ス)
「 【0078】
次に、本実施形態において、処理部4により生成される表示データに基づいて、表示装置5が表示する医療計画表の一例を図2に示す。
【0079】
図2に示すように、医療行為データは、日付けを横軸12にとると共に医療行為の種類を縦軸11にとる医療計画表10のフォーマットで表示装置5上に表示されている。この場合、医療計画表10を本実施の形態により表示しつつ、各医療行為の実行状況を示す状況表示マーク201を表示すると共に日付け欄(横軸12)の一日の幅を24時間換算した場合における現在日時位置を示す現在日時マーク202を表示する。状況表示マーク201は、その形状及び色により、各状況表示マークが重ねて又は隣接してテキスト表示された各医療行為データについての実行状況を示す。
【0080】
本実施形態において、図2に示した医療計画表10中に主にテキスト表示される“複数種類の医療行為”は、大分類及び各大分類に属する小分類からなる階層的な分類体系により分類された医療行為である。例えば、大分類として、“医師や看護の記録”、“処置”、“注射”、“検査”、“対診”、“評価”、“投薬”、“食事”、“活動制限”、“観察”、“リハビリテーション”、“コーディネーション”、“入退院”、“患者家族の教育”、“観察・モニター”、“検査”、“内服・外用”、“処置”等があり、例えば、一の大分類“検査”に属する小分類として、“胸部X線(写真撮影)”、“頭部MRI(写真撮影)”、“心電図(測定)”、“体温(測定)”、“血液検査”、“尿検査”等がある。
【0081】
図2に示すように、医療計画表10における医療行為の種類を区切る線は、前述のように“検査”、“記録”等の大分類毎に区切る線とされており、医療計画表10中において、同一日に実行される複数の(即ち、複数の小分類の)医療行為データのうち、同一大分類に属するものが複数存在する場合には、これらは同一セル10a内に配列されている。このように医療計画表10の縦軸11にどのような大分類による種類の欄を設定するかは、固定してもよいし、医師等の計画及び記録作成者が、各患者毎の医療計画に見合った医療計画表10が表示されるように、所望の欄を設定可能なようにしてもよい。
【0082】
また本実施形態において図2に示した医療計画表10中に主にテキスト表示される“医療行為データ”は例えば、当該医療計画及び記録者により計画されただけの状況(例えば、一連の医療計画をなす他の医療行為との関係や、他の患者との関係でまだ計画検討中であり、当該医療行為のために入力以上の行動を実行していない状況)にある医療行為、計画された医療行為に係るオーダが発行された状況(例えば、オーダシステムを介して薬剤部、検査部等の他の部署のコンピュータに対して薬剤配布や特定検査予約を指示するオーダが既に発行された状況)にある医療行為、早急に実行すべき時期に至っている状況(例えば、計画した実行時期が今日又は明日に迫っている状況)にある医療行為、既に実行された医療行為、継続的に実行する状況(例えば、人工呼吸器などで継続的に治療を実行する状況)にある医療行為、所定期間に断続的に実行する状況(例えば、一日に6回の薬剤投与を3日間続けて行う状況)にある医療行為、計画倒れ(未実行)に終わった状況にある医療行為、必要に応じて実行すべき状況(例えば、発作を起こしたり特定バイタルサインが危険値を超えた場合に特殊処理を実行すべき状況)にある医療行為など、各種実行状況にある医療行為を示すデータである。」

(セ)
「 【0083】
このような医療行為データは、例えばキーボード、マウス等の入力装置3により一連の医療計画をなす各医療行為毎に一つずつ入力され、第1オブジェクトファイル21が新規に登録されたり内容変更されたりするが、特に医療計画表10を表示装置5により表示した状態においてウィンドウ表示された医療行為データの入力用画面を介して入力されてもよいし、当該医療計画及び記録システム1に通信部7を介してコンピュータネットワークで接続された他のシステムから入力されてもよい。或いは、ハードディスク、フロッピーディスク等の読取装置8を介しての入力により、患者名(患者コード)、疾病名(疾病コード)、患者属性(患者属性コード)等に対応して一連の医療計画をなす複数の医療行為に係る医療行為データが一挙に指定されてもよい。」

(ソ)
「 【0084】
そして、このような医療行為データにより示される各医療行為の実行時期を示す“実行時期データ”は例えば、特定の時点又は期間における、1回、複数回、周期的、継続的、断続的、必要に応じて実行等の各実行時期(即ち、過去、現在又は未来における実績ベース又は計画ベースの実行時期)を示すデータである。このような実行時期データは、上述した医療行為データの入力操作と同様に、入力装置3等を用いて特定の日時や時期を直接入力することも可能であるが、本実施形態では一歩進んで、後述のように第1オブジェクトファイル21に格納された設定手順情報に従って、一連の医療計画をなす複数の医療行為の各実行時期を、適当な基準日を用いて且つ複数の医療行為間の相互関係を考慮した上で自動設定して、実行時期データを第1オブジェクトファイル21に登録するように構成されている。」

(タ)
「 【0158】
・・・(中略)・・・
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態を図19を参照して説明する。」

(チ)
「 【0159】
図19において、第8実施形態の医療計画及び記録支援システムは、通信回線を介して結ばれた複数のユニットを含み、複数の第1オブジェクトファイル21は、一方のユニットの一例であるセンター装置1a側に備えられており、入力装置3、処理部4b、表示装置5及び通信部7bは、他方のユニットの一例である端末装置1b側に夫々備えられている。センター装置1aは、大型コンピュータ、ホストコンピュータ、サーバ等からなり、第1オブジェクトファイル21を格納する大規模の記憶装置2aを有する。端末装置1bは、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、モバイルコンピュータ(携帯型情報端末)、電子手帳等からなる。そして、例えば、センター装置1aの記憶装置2aに格納された複数の第1オブジェクトファイル21と、端末装置1bに備えられた入力装置3、処理部4b及び表示装置5とは、有線、無線、専用回線、一般回線、電話回線等の通信回線を介して結ばれている。従って、センタ装置1aに設けられた大規模な記憶装置2aに複数の第1オブジェクトファイル21を備えておき、端末装置1bを複数配備する構成を採ることにより、複数の端末装置1bで同じデータを共用することも可能となる。処理部4については、処理部4a及び4bのように、センタ装置1a及び端末装置1bのどちらに備えて構成してもよい。尚、こ実施形態では、センタ装置1aの記憶装置2aに格納された多数の第1オブジェクトファイル21やデータセットを複数の端末装置1bで共有できるので且つ各端末装置1bには多数の第1オブジェクトファイル21を格納するだけの大規模の記憶装置が不要となるので実践上有利である。」

(ツ)
「 【0160】
最後に、以上実施形態において用いられた医療計画及び記録支援システムの機能を図20に概念的に示す。
【0161】
図20に示すように、医療計画及び記録支援システム1の機能は、図1に示した表示装置5、入力装置3等により実現される画面操作機能13、表示装置5等により実現される表示機能14並びに通信部7、処理部4等により実現される各システムのインタフェース機能15を統合するものである。画面操作機能13は、新規入力機能13a、追加・変更入力機能13b及び削除機能13cを統合するものである。また、表示機能14は、医療行為データを所定フォーマット(図2、図3及び図15参照)を表示する機能14a、詳細医療データを用いて結果を表示する結果表示機能14b、詳細医療データを用いてグラフを表示するグラフ機能14c及び表示装置5の画面倍率を変更するための画面倍率変更表示機能14dを統合するものである。
【0162】
更に、各システムインターフェース機能15は、各種オーダー機能15a、電子カルテ機能15b及び医事会計システム15cを統合するものである。尚、ここに、各種オーダー機能15aは、各システムインターフェースから通信部を介して受信される、例えば診療部門からの薬剤オーダー等を受けて薬剤リストを画像出力可能に構成された薬剤用装置等で用いられる。本実施の形態では特に、前述のように各オブジェクトファイルが含むオーダ情報(図6参照)に基づいて、各医療行為に対応するオーダを迅速に発することが可能に構成されている。
【0163】
電子カルテ機能15bは、各システムインターフェースから通信部を介して送受信される各種データを用いて診療簿を画像出力可能に構成された診療用装置で用いられる。また、医事会計システム15は、各システムインターフェースから通信部を介して送受信される各種データを用いて医事会計用の演算を行うと共に該演算結果に基づいて医療会計簿を画像出力可能に構成された会計用装置で用いられる。
【0164】
このように、機能が階層構造で統合されているので、当該医療計画及び記録支援システム1により、各機能を効率良く呼び出せると共に相互の機能を有機的に組み合わせて実行することもでき便利である。」


以上の引用例の記載によれば、引用例には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例の上記(カ)の「記憶装置2には、予め設定された複数種類の医療行為のうちのいずれかを示す医療行為データを各医療行為の実行時期を示す実行時期データに対応付けて夫々格納する複数の第1オブジェクトファイル21が論理的に構築されている。」という記載、

引用例の上記(コ)の「表示装置5は、CRT(Cathode Ray Tube)装置、LCD(液晶表示装置)等の周知の表示装置であり、処理部4により生成された主表示データ、第1副表示データ及び第2副表示データに基づいて、状況表示マーク及び現在日時マークと共に医療行為データを医療計画表のフォーマットで表示する。」という記載、

引用例の上記(チ)の 「図19において、第8実施形態の医療計画及び記録支援システムは、通信回線を介して結ばれた複数のユニットを含み、複数の第1オブジェクトファイル21は、一方のユニットの一例であるセンター装置1a側に備えられており、入力装置3、処理部4b、表示装置5及び通信部7bは、他方のユニットの一例である端末装置1b側に夫々備えられている。センター装置1aは、大型コンピュータ、ホストコンピュータ、サーバ等からなり、第1オブジェクトファイル21を格納する大規模の記憶装置2aを有する。端末装置1bは、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、モバイルコンピュータ(携帯型情報端末)、電子手帳等からなる。そして、例えば、センター装置1aの記憶装置2aに格納された複数の第1オブジェクトファイル21と、端末装置1bに備えられた入力装置3、処理部4b及び表示装置5とは、有線、無線、専用回線、一般回線、電話回線等の通信回線を介して結ばれている。従って、センタ装置1aに設けられた大規模な記憶装置2aに複数の第1オブジェクトファイル21を備えておき、端末装置1bを複数配備する構成を採ることにより、複数の端末装置1bで同じデータを共用することも可能となる。」という記載から、

引用例1には、「医療行為データを格納している記憶装置を有するサーバと、医療行為データを表示する端末装置とが接続されている医療計画及び記録支援システム」が開示されていると認められる。


(b)
上記(a)の「医療行為データを格納している記憶装置を有するサーバと、医療行為データを表示する端末装置とが接続されている医療計画及び記録支援システム」という開示、

引用例の上記(エ)の「以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。(第1実施形態)・・・(中略)・・・図1において、医療計画及び記録支援システム1は、ハードウエア資源としては、公知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、中型コンピュータ、大型コンピュータ、モバイルコンピュータ(携帯型情報端末)、電子手帳等のコンピュータからなり、記憶装置2、入力装置3、処理部4、表示装置5、印刷装置6、通信部7、読取装置8及びシステム時計9を備えて構成されている。」という記載、

引用例の上記(ケ)の「処理部4は、表示制御手段の一例としてCPU(Central Processing Unit)から構成されており、第1オブジェクトファイル21に格納された医療行為データ及び実行時期データに基づいて一の患者に関する一連の医療計画をなす医療行為データを日付け別且つ種類別に並べた医療計画表のフォーマットで表示するための主表示データを生成し、更に第1オブジェクトファイル21に格納された手順情報に従って、システム時計9により計測された現在日時と各医療行為の実行時期との関係に応じて予め設定された複数種類の状況表示マークのうちの一つを選定して、該選定した状況表示マークを医療計画表中の対応する医療行為データに重ねて又は隣接して表示するための第1副表示データを生成する。」という記載、

引用例の上記(コ)の「表示装置5は、CRT(Cathode Ray Tube)装置、LCD(液晶表示装置)等の周知の表示装置であり、処理部4により生成された主表示データ、第1副表示データ及び第2副表示データに基づいて、状況表示マーク及び現在日時マークと共に医療行為データを医療計画表のフォーマットで表示する。」という記載から、

引用例には、「前記端末装置は、表示装置と、この表示装置に前記医療行為データを表示する処理を行う処理部を有すること」が開示されていると認められる。


以上の引用例の記載によれば、引用例には下記の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「医療行為データを格納している記憶装置を有するサーバと、医療行為データを表示する端末装置とが接続されている医療計画及び記録支援システムにおいて、
前記端末装置は、表示装置と、この表示装置に前記医療行為データを表示する処理を行う処理部を有することを特徴とする医療計画及び記録支援システム。」



3.本願発明と引用例発明との対比

(1)
引用例発明の「医療行為データ」、「記憶装置を有するサーバ」、「端末装置」、「表示装置」は、

それぞれ、

本願発明の「診療情報」、「データベースサーバ」、「診療情報表示端末」、「表示部」に相当する。


(2)
引用例発明の「医療行為データを格納している記憶装置を有するサーバと、医療行為データを表示する端末装置とが接続されている医療計画及び記録支援システム」と、

本願発明の「患者情報、診療情報を格納するデータベースサーバと、業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバと、診療情報を表示する診療情報表示端末とが接続されてなる病院情報表示システム」とは、

「診療情報を格納するデータベースサーバと、診療情報を表示する診療情報表示端末とが接続されてなる病院情報表示システム」で一致し、
・本願発明の「データベースサーバ」は「患者情報」も格納しているのに対し、
引用例発明の「データベースサーバ」は「患者情報」も格納していることを開示していない点、

・本願発明の「病院情報表示システム」は「業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ」を備えているのに対し、
引用例発明の「病院情報表示システム」は「業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ」を備えていることを開示していない点、

で相違する。


(3)
引用例発明の「前記端末装置は、表示装置と、この表示装置に前記医療行為データを表示する処理を行う処理部を有すること」と、

本願発明の「前記診療情報表示端末は、表示部と、この表示部に前記診療情報を表示する制御と、前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う制御部を有すること」とは、

「前記診療情報表示端末は、表示部と、この表示部に前記診療情報を表示する制御を行う制御部を有すること」で一致し、

本願発明の「制御部」は「前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う」のに対し、
引用例発明の「制御部」は「前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う」ものではない点、

で相違する。


(6)
したがって、本願発明と引用例発明とは、

「診療情報を格納するデータベースサーバと、診療情報を表示する診療情報表示端末とが接続されてなる病院情報表示システムにおいて、
前記診療情報表示端末は、表示部と、この表示部に前記診療情報を表示する制御を行う制御部を有することを特徴とする病院情報表示システム。」

である点で一致し、

(相違点1)
本願発明の「データベースサーバ」は「患者情報」も格納しているのに対し、
引用例発明の「データベースサーバ」は「患者情報」も格納していることを開示していない点、

(相違点2)
本願発明の「病院情報表示システム」は「業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ」を備えているのに対し、
引用例発明の「病院情報表示システム」は「業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ」を備えていることを開示していない点、

(相違点3)
本願発明の「制御部」は「前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う」のに対し、
引用例発明の「制御部」は「前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う」ものではない点、

で相違する。



4.相違点の判断

(1)相違点1について

引用例の上記(セ)に
「このような医療行為データは、・・・(中略)・・・。或いは、ハードディスク、フロッピーディスク等の読取装置8を介しての入力により、患者名(患者コード)、疾病名(疾病コード)、患者属性(患者属性コード)等に対応して一連の医療計画をなす複数の医療行為に係る医療行為データが一挙に指定されてもよい。」
と記載されているように、引用例発明の「医療行為データ」(本願発明の「診療情報」に対応)は、「患者名(患者コード)、疾病名(疾病コード)、患者属性(患者属性コード)等」という「患者情報」に対応付けられることが開示されている。

また、(「医療行為データ」や「患者情報」に限らず)対応付けられた各種情報をデータベースサーバに格納することによって、当該各種情報を利用可能とすることは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、診療情報に対応付けられる患者情報も利用可能とするべく、当該周知技術を適用することによって、引用例発明の「データベースサーバ」に「患者情報」も格納するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

引用例の上記(ツ)に
「最後に、以上実施形態において用いられた医療計画及び記録支援システムの機能を図20に概念的に示す。・・・(中略)・・・図20に示すように、医療計画及び記録支援システム1の機能は、図1に示した表示装置5、入力装置3等により実現される画面操作機能13、表示装置5等により実現される表示機能14並びに通信部7、処理部4等により実現される各システムのインタフェース機能15を統合するものである。・・・(中略)・・・更に、各システムインターフェース機能15は、各種オーダー機能15a、電子カルテ機能15b及び医事会計システム15cを統合するものである。・・・(中略)・・・電子カルテ機能15bは、各システムインターフェースから通信部を介して送受信される各種データを用いて診療簿を画像出力可能に構成された診療用装置で用いられる。また、医事会計システム15は、各システムインターフェースから通信部を介して送受信される各種データを用いて医事会計用の演算を行うと共に該演算結果に基づいて医療会計簿を画像出力可能に構成された会計用装置で用いられる。」
と記載されているように、引用例発明の「医療計画及び記録支援システム」は、電子カルテ機能や医事会計システムなどを統合可能なものである。
そして、電子カルテ機能や医事会計システムなどに限らないことであるが、各種機能を実現するために、当該機能を「業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ」によって構築することは、情報処理分野における周知技術である。

しかも、引用例の上記(チ)に、
「処理部4については、処理部4a及び4bのように、センタ装置1a及び端末装置1bのどちらに備えて構成してもよい。」
と記載されているように、各種処理を端末装置側ではなく、センタ装置側で行う旨の示唆がある。
なお、各種処理を行うために、ひとつのセンタ装置(又はサーバ)で行うか、複数のセンタ装置(又は複数のサーバ)で行うかは、センタ装置(又はサーバ)の処理能力などに応じて決定される、当業者が適宜成し得る設計的事項である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、引用例発明の「医療計画及び記録支援システム」に「業務アプリケーションを実施するためのアプリケーションサーバ」を付加することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(3)相違点3について

視認性を向上するために、情報の一部を圧縮表示したり、前記圧縮表示した部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示したりすることは、例えば、

・原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-275187号公報

・原査定の備考の欄に引用された、増井俊之,インターフェイスの街角07 情報視覚化技術,UNIX MAGAZINE,日本,株式会社アスキー,1998年6月1日,第13巻,第6号,第161-167頁

・EXCEL 2000 for Windows SUPER MASTER,日本,株式会社エクスメディア,2000年8月2日,初版,第375-375頁
(当該文献には、「アウトラインは、ワークシートの行や列をグループ化したものです。グループ化した行や列は、表示/非表示を切り替えることができるので、データを集計した表に利用すると、集計行(列)だけを表示してデータの概略を把握したり、詳細データのある行(列)を表示してデータを把握したりすることができます。」(第372頁)と記載されている。)

にあるように、情報処理分野における周知技術である。

また、情報の一部を圧縮表示したり、前記圧縮表示した部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示したりすることを、CPUのような「制御部」が行うことは、情報処理分野における周知技術である。

しかも、医療用の情報処理装置においても、視認性を向上せしめたほうが好ましいことは明らかである。

したがって、「診療情報」の視認性を向上すべく、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、引用例発明の「制御部」が、「前記診療情報の一部を圧縮表示する制御と、前記圧縮表示部分が選択されたことに基づいて前記圧縮部分を展開して表示する制御とを行う」ように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。



5.むすび

したがって、本願発明は、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-24 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-13 
出願番号 特願2001-325454(P2001-325454)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相澤 聡  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 和田 財太
小曳 満昭
発明の名称 病院情報表示システム  
代理人 特許業務法人三澤特許事務所  
代理人 三澤 正義  

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