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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1207626
審判番号 不服2008-17085  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-03 
確定日 2009-11-26 
事件の表示 特願2005-263920「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 11490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯 本願発明
本願は、平成10年2月25日に出願した特願平10-60491号出願の一部を新たな特許出願として平成17年9月12日に出願され、平成20年5月23日付で拒絶査定がなされ、同年7月3日付で拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、平成19年11月5日付手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次の通りのものである。

「【請求項1】
ガラス転移温度が60℃以下の樹脂を含むコアと、該コアを包囲し樹脂を含むシェルとから成るカプセル構造のトナーを用いる画像形成方法において、
像担持体の表面を該表面に接触する帯電ローラにより帯電させる工程と、
該帯電した像担持体の表面を露光し該表面に静電潜像を形成する工程と、
該静電潜像の形成された像担持体に前記トナーを付着させて現像を行う工程と、
前記像担持体上の現像されたトナー像を用紙に転写する工程と、を含む画像形成方法であって、
前記転写後に前記像担持体の表面に残る転写残留トナーを回収ボックスに回収するクリーニング工程を有し、
前記帯電ローラは、その表面が純水を用いて測定した接触角が90°以上の高撥水性ローラから形成され、
前記トナーは、前記シェルが前記コアよりガラス転移温度が高く、熱により前記コアの樹脂に比べて溶けにくい樹脂を含み、かつ微粒子粉末から成るクリーニング性向上剤が添加されている、
ことを特徴とする画像形成方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である国際公開第97/001131号公報(原査定の拒絶の理由に引用された「引用例1」。以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、各引用例における下線は、当審で付与した。)

(1a)「1. 分散剤を含む水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含有する単量体組成物を懸濁重合することにより、着色重合体粒子からなる静電荷像現像用トナーを製造する方法において、
(1)水系分散媒体中で、ガラス転移温度80℃以下の重合体を形成する少なくとも一種のコア成分用単量体と着色剤とを含有するコア成分用単量体組成物を、該単量体の重合転化率が80%以上となるまで懸濁重合して、コア成分となる着色重合体粒子を形成する第一工程、及び
(2)コア成分となる着色重合体粒子を含有する反応系に、コア成分の重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度の重合体を形成する少なくとも一種のシェル成分用単量体または該単量体を含有するシェル成分用単量体組成物と水溶性ラジカル開始剤とを添加して、重合反応を行い、コア成分となる着色重合体粒子の表面にシェル成分となる重合体の被覆層を形成する第二工程の少なくとも2つの工程により、コア成分40?99重量%及びシェル成分1?60重量%から構成されるコア-シェル構造のカプセル型着色重合体粒子を製造することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。」(請求の範囲 1.)

(1b)「本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、懸濁重合法によりトナー粒子を製造する方法において、先ず最初に、ガラス転移温度が80℃以下の重合体粒子をコア成分(核体粒子)として形成し、次いで、コア成分の重合体よりもガラス転移温度が高い重合体を形成する単量体を添加して重合反応を継続し、コア成分の表面にガラス転移温度の高いシェル成分の被覆層を形成することにより、カプセル型トナーを作製したところ、該カプセル型トナーが低い定着温度と良好なOHP透過性を有すると共に、シェル成分の存在により、ブロッキングが防止され、保存性に優れることを見いだした。コア成分には、着色剤を含有させて、着色重合体粒子とする。」(第5頁第5?15行)

(1c)「画像形成装置
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法を利用した画像形成装置において用いられる。
図1に、画像形成装置の一例の断面図を示す。この画像形成装置では、像担持体として感光体ドラム1が矢印方向に回転自在に装着されている。感光体ドラム1は、通常、導電性支持ドラム体の外周上に光導電層を設けた構造を有している。光導電層は、例えば、有機系感光体、セレン感光体、酸化亜鉛感光体、アモルファスシリコン感光体などで構成される。
感光体ドラム1の周囲には、その周方向に沿って、帯電手段3、潜像形成手段4、現像手段5、転写手段6、及びクリーニング手段2が配置されている。帯電手段3は、感光体ドラム1の表面をプラスまたはマイナスに一様に帯電する作用を担い、図1に示す帯電ロール以外に、例えば、コロナ放電装置、帯電ブレードなどを用いることができる。潜像形成手段4は、画像信号に対応した光を、一様に帯電された感光体ドラム表面に所定のパターンで照射して、被照射部分に静電潜像を形成する(反転現像方式)か、あるいは、光が照射されない部分に静電潜像を形成する(正規現像方式)作用を行う。潜像形成手段4は、例えば、レーザ装置と光学系との組み合わせ、あるいはLEDアレイと光学系との組み合わせにより構成される。
現像手段5は、感光体ドラム1表面に形成された静電潜像に現像剤(トナー)を付着させる作用を行う。現像手段5は、通常、現像ローラ8、現像ローラ用ブレード9、現像剤10の収容手段(収容ケーシング)11、及び現像剤供給手段(供給ローラ)12を備えた現像装置である。現像ローラ8は、感光体ドラム1に対向して配置されており、通常、その一部が感光体ドラム1に接触するように近接して配置され、感光体ドラム1とは反対方向に回転させる。供給ローラ12は、現像ローラ8に接触して、現像ローラ8と同じ方向に回転するようにし、現像ローラ8の外周にトナー10を供給する。現像ローラ8は、現像装置内で回転させると、摩擦による静電気力などにより現像剤収容手段11内のトナー10が外周面に付着する。現像ローラ用ブレード9は、回転する現像ローラ8の外周面に当接し、現像ローラ8の外周面に形成されるトナー層の層厚を調節する。反転現像方式においては、感光体ドラム1の光照射部にのみトナーを付着させ、正規現像方式においては、光非照射部にのみトナーを付着させるように、現像ローラ8と感光体ドラム1との間にバイアス電圧が印加される。
転写手段6は、現像手段5により形成された感光体ドラム1表面のトナー像を被転写材(転写紙)7に転写するためのものであり、図1に示す転写ローラ以外に、例えば、コロナ放電装置、転写ベルトなどを使用することができる。クリーニング手段2は、感光体ドラム1の表面に残留したトナーを清掃するためのものであり、例えば、清掃用ブレードなどにより構成される。このクリーニング手段は、現像時と同時にクリーニング作用を行う方式の場合には、必ずしも必要ではない。
したがって、本発明によれば、前記製造方法により得られた静電荷像現像用トナーを収容する収容手段、収容手段に収容されたトナーを供給する供給手段、像担持体、像担持体に対向して設けられ、供給手段により供給されたトナーを用いて像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像手段、及び現像されたトナー像を被転写材に転写する転写手段を備えた画像形成装置が提供される。」(第25頁第16行?第27頁第14行)

(1d)「[実施例1]
スチレン60部、n-ブチルアクリレート40部、カーボンブラック(デグサ社製、商品名プリンテックス150T)5部、帯電制御剤(保土ケ谷化学社製、商品名スピロンブラックTRH)1部、ジビニルベンゼン0.3部、及び2,2-アゾビスイソブチロニトリル2部(得られるコア成分用共重合体の計算Tg=20℃)を、高剪断力を有する混合機である。TK式ホモミキサー(特殊機化工社製)により、6000rpmの回転数で撹拌、混合して、均一分散したコア成分用単量体組成物を調製した。
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属塩)6.9部を溶解した水溶液を撹拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の水酸化金属塩コロイド)分散液を調製した。生成した上記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径は、D_(50)(個数粒径分布の50%累積値)が0.38μmで、D_(90)(個数粒径分布の90%累積値)が0.82μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器による測定においては、以下に示すパラメーターを用いた。
測定レンジ:0.12?704μm
測定時間 :30秒
媒 体 :イオン交換水
一方、スチレン(計算Tg=100℃)10部と水100部を超音波乳化機(超音波工業製)にて微分散化処理して、シェル成分用単量体の分散液を調製した。超音波乳化機での微分散単量体液滴の粒径は、得られた液滴を1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に濃度3%で加え、マイクロトラック粒径分布測定器で測定したところ、D_(90)が1.6μmであった。
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記コア成分用重合性単量体組成物を投入し、TK式ホモミキサーを用いて8000rpmの回転数で高剪断撹拌して、コア成分用単量体組成物の液滴(単量体組成物粒子)を造粒した。この造粒したコア成分用単量体組成物の水分散液を、撹拌翼を装着した反応器に入れ、65℃で重合反応を開始させ、重合転化率が80%に達したとき、シェル成分用単量体の分散液を反応器に添加し、次いで、水溶性ラジカル開始剤として1%過硫酸カリウム水溶液1部を添加し、その後、5時間反応を継続して反応を完結させ、重合体粒子(トナー粒子)の水分散液を得た。なお、コールターカウンター法により測定した重合転化率80%のコア成分の着色重合体粒子の個数平均粒径(dp)は、5.7μmであった。
重合反応終了後のトナー粒子の粒径を、コールターカウンター(コールター社製)より測定したところ、その体積平均粒径(dv)は5.8μmで、その粒径分布すなわち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は1.32であった。得られたトナー粒子をエポキシ樹脂で包埋した後、ウルトラミクロトームで1mm厚に切断し、切断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、トナー粒子には、0.2μm厚のシェルが生成していることが確認された。
上記により得た重合体粒子の水分散液を撹拌しながら、硫酸により系のpHを4以下にして酸洗浄(25℃ 10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えてリスラリー化し水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を数回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて50℃で一昼夜乾燥を行い、トナー粒子を得た。
上記により得られたトナー粒子100部に、疎水化処理したコロイダルシリカ(商品名:R-972、日本アエロジル社製)0.3部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合してトナーを調製した。このようにして得られたトナーの体積固有抵抗を測定したところ、1.0×10^(11)Ω・cmであった。
上記により得られたトナーを用いて定着温度を測定したところ、130℃であった。また、このトナーの保存性は、非常に良好であった(評価=◎)。結果を表1に示す。その他の画像評価では、画像濃度が高く、カブリ、ムラの無い、解像度の極めて良好な画像が得られた。」(第29頁第23行?第31頁第23行)

上記の事項から、引用例1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「引用例発明」という。)

「Tgが20℃の共重合体を含むコアと、シェルとから成るトナーを用いる画像形成方法において、
感光体ドラム1の表面をプラスまたはマイナスに一様に帯電する帯電手段により帯電させる工程と、
光を一様に帯電された感光体ドラム表面に所定のパターンで照射して、静電潜像を形成する潜像形成工程と、
感光体ドラム1表面に形成された静電潜像に現像剤(トナー)を付着させる現像工程と、
現像工程により形成された感光体ドラム1表面のトナー像を被転写材(転写紙)に転写する工程と、を含む画像形成方法であって、
感光体ドラムの表面に残留したトナーを清掃する清掃用ブレードによりクリーニングするクリーニング工程を有し(1c)、
前記トナーは、前記シェルがコア成分の重合体よりもガラス転移温度が高い画像形成方法(1a)」

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-10838号公報(原査定の拒絶の理由に引用された「引用例2」。以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】 電源に連絡する軸体と、軸体の外周に配設される導電性を有する発泡材よりなる発泡体層と、導電性発泡体層の外周に配設される、半導電性の弾性材よりなる弾性表面層を備え、
半導電性の弾性表面層は、試験片に水を滴下したとき試験片平面と水滴の接触角が90°以上となる半導電性材料で形成されてなる導電性ロール。」

(2b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置に係り、特に像担持体の表面を一様に帯電するための帯電ロールとして用いられる導電性ロールに関するものである。」

(2c)「【0020】このように構成する導電性ロール10aは導電性発泡体層13のセル(セル径50?300μm)により発生する帯電むらを、導電性発泡体13の外周上に設けた半導電性の弾性層15で抑えることができる。すなわち、半導電性の弾性層15は弾性材料が発泡層13の変形にともなって変形し、弾性層15の表面にクラックを発生させることがなく、安定してニップを形成することができる。また、水滴の濡れ性で表現した接触角90°以上の表面エネルギ-を有する半導電性の材料を用いることで、トナーの付着がなくなり、トナー汚染が少なくなる。」

(2d)「【0038】【発明の効果】以上説明してきたように、軸芯とこの軸芯の周囲に固着された発泡体層と、発泡体層の外周に導電剤を分散した弾性層を形成することによって、硬度を低くしたロールが形成でき、像担持体材と安定してニップを形成することができる。さらに、弾性層を水の濡れ性が90°以上を形成する低表面エネルギーを有する素材により形成することにより、帯電時にトナー付着による像担持体材を汚染することがない。また、表面層の弾性により像担持体材との圧接によるロールの変形にともなって弾性層が変形し、表面にクラックが発生することがなく、かつトナーの汚染の少ない、安定的なニップ幅を形成することができる。安定したニップ幅を有する導電性ロールは感光体ドラムに均一な帯電を供給し、高画質な画像が提供できる画像形成装置を提供することができる。」

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-190011号公報(原査定の拒絶の理由に引用された「引用例4」。以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(3a)「【請求項1】 少なくとも熱可塑性樹脂と着色剤を含有する熱溶融性芯材と、その芯材の表面を被覆するように設けた親水性樹脂よりなる外殻により構成される熱圧力定着用カプセルトナーにおいて、該芯材が軟化点110℃以下の石油樹脂を含有するものであることを特徴とする熱圧力定着用カプセルトナー。
【請求項2】 カプセルトナーが、in situ重合法により形成されている請求項1記載の熱圧力定着用カプセルトナー。
【請求項3】 外殻の主成分がガラス転移点50?80℃の非晶質ポリエステルである請求項1又は2記載の熱圧力定着用カプセルトナー。
【請求項4】 非晶質ポリエステルの酸価が3?50(KOHmg/g)である請求項3記載の熱圧力定着用カプセルトナー。
【請求項5】 芯材の主成分となる熱可塑性樹脂に由来するガラス転移点が10?50℃である請求項1?4いずれか記載の熱圧力定着用カプセルトナー。」

(3b)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の如き事情に基づいてなされたものであって、その目的は、熱ローラー等の熱圧力定着方式において、特に低温定着と耐オフセットに優れていて、また保存安定性にも優れた熱圧力定着用カプセルトナー及びその製造方法を提供することにある。」

(3c)「【0058】本発明のカプセルトナーには、必要に応じて、流動性向上剤、クリーニング性向上剤などを用いることができる。流動性向上剤としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。特にシリカの微粉末が好ましい。なお、シリカの微粉末は、Si-O-Si結合を有する微粉末であり、乾式法及び湿式法で製造されたもののいずれであってもよい。また、無水二酸化ケイ素のほか、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛などいずれであってもよいが、 SiO_(2 )を85重量%以上含むものが好ましい。また、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコンオイル、側鎖にアミンを有するシリコンオイルなどにより表面処理されたシリカの微粉末などを用いることができる。
【0059】クリーニング性向上剤としては、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末などがある。更に現像性を調整するための添加剤、例えばメタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル等の重合物の微粒子粉末などを用いてもよい。更に調色、抵抗調整などのために少量のカーボンブラックを用いてもよい。カーボンブラックとしては従来公知のもの、例えばファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどの種々のものを用いることができる。」

3.対比
本願発明と引用例発明とを、対比する。
引用例発明の「Tgが20℃の共重合体を含むコア」は、本願発明の「ガラス転移温度が60℃以下の樹脂を含むコア」に相当する。
引用例発明の「感光体ドラム1の表面をプラスまたはマイナスに一様に帯電する帯電手段により帯電させる工程」、「光を一様に帯電された感光体ドラム表面に所定のパターンで照射して、静電潜像を形成する潜像形成工程」、「感光体ドラム1表面に形成された静電潜像に現像剤(トナー)を付着させる現像工程」、「現像工程により形成された感光体ドラム1表面のトナー像を被転写材(転写紙)に転写する工程」、「感光体ドラムの表面に残留したトナーを清掃する清掃用ブレードによりクリーニングするクリーニング工程」は、それぞれ本願発明の「像担持体の表面を該表面に接触する帯電ローラにより帯電させる工程」、「帯電した像担持体の表面を露光し表面に静電潜像を形成する工程」、「静電潜像の形成された像担持体にトナーを付着させて現像を行う工程」、「像担持体上の現像されたトナー像を用紙に転写する工程」、「転写後に像担持体の表面に残る転写残留トナーを回収するクリーニング工程」に相当する。
引用例発明の「トナーは、前記シェルがコア成分の重合体よりもガラス転移温度が高い」ことは、本願発明の「トナーは、前記シェルが前記コアよりガラス転移温度が高く」なっていることに相当する。

したがって、両者は、 「ガラス転移温度が60℃以下の樹脂を含むコアと、該コアを包囲し樹脂を含むシェルとから成るカプセル構造のトナーを用いる画像形成方法において、
像担持体の表面を該表面に接触する帯電ローラにより帯電させる工程と、
該帯電した像担持体の表面を露光し該表面に静電潜像を形成する工程と、
該静電潜像の形成された像担持体に前記トナーを付着させて現像を行う工程と、
前記像担持体上の現像されたトナー像を用紙に転写する工程と、を含む画像形成方法であって、
前記転写後に前記像担持体の表面に残る転写残留トナーをクリーニング工程を有し、
前記トナーは、前記シェルが前記コアよりガラス転移温度が高い画像形成方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点1〕
本願発明が「像担持体の表面に残る転写残留トナーを回収ボックスに回収する」ことを規定するのに対して、引用例発明では、回収ボックスを備えているかどうかが明示されていない点。

〔相違点2〕
本願発明が、帯電ローラについて「その表面が純水を用いて測定した接触角が90°以上の高撥水性ローラから形成され」たものであることを規定するのに対して、引用例発明では、使用する帯電ローラについて接触角が明らかでない点。

〔相違点3〕
本願発明が、トナーの材質に関して「シェルが」「コアの樹脂に比べて熱により溶けにくい樹脂を含」むことを規定するのに対して、引用例発明では、そのような規定がない点。

〔相違点4〕
本願発明が、「トナー」に、微粒子粉末から成るクリーニング性向上剤が添加されていることを規定するのに対して、引用例発明では、トナーにクリーニング性向上剤が添加されいない点。

4.判断
〔相違点1〕について
引用例1には、ブレードを以て像担持体上に残留したトナーを掻き落とすことが記載されている(1c)。ここで、掻き落としたトナーを、画像形成装置の筐体中に、あるいは現像部を含むカートリッジ中にそのまま落とす訳には行かないから、その受器となるもの、すなわち「回収ボックス」が必要であることは自明である。
したがって、引用例発明において、相違点1に係る上記構成を採用することに格別の困難性はない。

〔相違点2〕について
引用例2には、帯電ローラ表面の純水に対する接触角を90°以上にすることにより、ローラ表面にトナーが付着しにくくなることが記載されている(2b,2c)。
したがって、引用例発明において、相違点2に係る上記構成を採用することに格別の困難性はない。

〔相違点3〕について
本願発明において「熱により溶けにくい」こととは、熱により溶融ないし融解する温度がより高いことと同義であるといえる。
ここで、引用例発明では、コアの構成樹脂よりもシェルの構成樹脂のほうがガラス転移温度が高い(1a,1d)。そして、樹脂においてガラス転移温度や熱溶融の温度が分子鎖の熱運動のしやすさの傾向から決まる現象であるから、樹脂の熱溶融のし易さがガラス転移のし易さと同じ傾向にあることは、当業者に明らかなことである。すなわち、引用例発明において、コアの構成樹脂よりもシェルの構成樹脂のほうが「ガラス転移温度が高い」ことから、コアの構成樹脂よりもシェルの構成樹脂のほうが「熱により溶けにくい」ことは、明らかである。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではないといえる。

〔相違点4〕について
像担持体へのトナー成分のフィルミングの防止、すなわち、トナー成分が像担持体表面に固着するのを防止するために「クリーニング性向上剤」を外添することは、従来周知の事項である。
必要ならば、引用例3における「ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末など」の「クリーニング性向上剤」を外添する(3c)ことのほか、特開平5-100486号公報段落【0029】、特開平5-72804号公報段落【0026】、特開平4-342264号公報段落【0074】【0076】、特開平4-330460号公報段落【0026】【0027】、特開平3-231757号公報第6頁左上欄第19行?右上欄第16行、特開平3-216664号公報第6頁右上欄第14行?左下欄第7行等を参照されたい。

そして、クリーニングブレードによる掻き落とし後の像担持体表面上の残留トナーは、帯電ローラに達することになるから、該残留トナーにより帯電ローラが汚染され得ること、および、クリーニング性向上剤により汚染が軽減されることは、当業者には極く容易に類推しうることにすぎない。
したがって、相違点4に係る上記構成を採用することに、格別の困難性はない。

(請求人の主張について)
審判請求人は、審判請求書において、
引用文献1の実施例において外添されている「疎水化したコロイダルシリカR-972」について、日本アエロジル社のカタログには流動性向上剤とは記載されてはいるが、クリーニング性向上剤とは記載されていないから、外添しているシリカはクリーニング性向上剤ではない旨、主張する。

しかしながら、例えば、本願出願より以前の出願に係る、特開平2-275965号公報の第11頁左上欄第6?13行には、
「本発明のトナーには、その他、必要に応じて添加剤が含有させられる。添加剤の種類としては流動性向上剤、クリーニング性向上剤、オフセット防止剤などが挙げられる。しかし、これらのものは、さらに他の機能を具備することがある。例えば流動性向上剤として賞用されるシリカ粉末は研摩機能をも有するためクリーニング性向上剤にもなる。したがって便宜上、前述の語句で代表したが、添加剤の中には複数の効果をもつものも含む。」(下線は、当審において付与したもの。)
と記載されてるように、シリカ粉末に「クリーニング性向上剤」としての機能もあることを明記しており、本願出願前より周知のことである。
さらに、日本アエロジル社はトナー及び複写機に深く関係する者ではないから、自己の販売するシリカのカタログには一般的な用途のみを記載したものといえる。してみると、該カタログに記載がないからといって、シリカが、クリーニング性向上剤としての機能がないものとはいえない。
したがって、原査定において、シリカ微粒子「R-972」が「クリーニング性向上剤」であると判断したことに、誤りはない。

また、請求人は、本願発明の作用効果について、以下のように主張する。
「本願発明のかかる構成によれば、上記6)の構成により転写残留トナーが再度放出されることがなく、該転写残留トナーが帯電ローラに固着するのを防止することができる。
そして、上記6)の構成を有しているにもかかわらず回収ができなかった未回収残留トナーが像担持体に残存しても、上記7)の高撥水構成により帯電ローラに未回収残留トナーが固着するのを阻止することができる。
また、上記6)の構成を有しているにもかかわらず未回収残留トナーが残存しても、上記8)のトナーのシェルのガラス転移温度がコアのそれより高く、かつシェル樹脂がコア樹脂より溶けにくい構成を有することで、帯電ローラに未回収残留トナーが固着するのを阻止することができる。
更に、上記6)の構成を有しているにもかかわらず未回収残留トナーが残存しても、上記8)のトナーにクリーニング性向上剤が添加されている構成を有することで、帯電ローラに未回収残留トナーが固着するのを阻止することができる。
このように、本願発明は帯電ローラに残留トナーが固着するのを複数の手段を組み合わせて阻止する点に特徴を有し、これにより帯電ローラの帯電不良を防止することができる。」(前審における意見書)
「上記6)の構成でトナーを回収したにもかかわらず未回収トナーが像担持体に残存しても帯電ロールへの固着を防止すべく、上記7)の高撥水性の帯電ロールを用いる構成、上記8)の構成、特にトナーにクリーニング性向上剤を添加する構成を相関的、不可分一体的に組み合わせることを予測することは不可能であり、かかる組み合わせ構成により、従来、使用困難とされてきた低温定着用トナーを帯電ローラに固着させることなく画像形成に利用することができる。」(審判請求理由補充書)

しかしながら、本願明細書には、具体例1乃至4として開示された各実施例及び比較例において、トナーに対して、本願明細書の段落【0055】に記載するような「ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体微粒子粉末」等の「クリーニング性向上剤」を適用した例は、全く記載されていない。
さらに、それらすべての具体例を通じて、「像担持体の表面に残る転写残留トナーを回収ボックスに回収するクリーニング工程」を採用しているのは、図13の画像形成装置を使用する具体例2の実施例4及び具体例4の比較例1?3のみであり、回収ボックスが奏する当然の効果以外に、格別の効果は確認できない。
そのため、本願明細書の具体例からは、各構成を相関的、一体不可分的に組み合わせたことにより奏する効果として、各構成の奏する効果の総和以上のものは全く確認できない。
したがって、本願発明の奏する効果は、各構成のそれぞれが奏する効果の総和にすぎず、当業者であれば、引用文献1、2及び従来周知の事項に基づいて容易に予測できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1、2及び従来周知事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-15 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-14 
出願番号 特願2005-263920(P2005-263920)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿久津 弘淺野 美奈  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 伊藤 裕美
中田 とし子
発明の名称 画像形成装置  
代理人 佐藤 幸男  

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