• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1207631
審判番号 不服2008-22071  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-28 
確定日 2009-11-26 
事件の表示 特願2003-307027「用紙剥離機構およびプロセスカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-170905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成15年8月29日(優先権主張平成14年10月29日)の出願であって、平成20年7月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月29日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。
さらに、平成20年12月26日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成21年4月22日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から同年7月1日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成20年9月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 感光体に対し当接または離間して用紙を剥離する複数の用紙剥離爪を備えた用紙剥離機構において、
上記各用紙剥離爪の用紙進行方向始端に設けられ、かつ上記感光体に対して当接する爪体と、
上記各用紙剥離爪の用紙進行方向終端に設けられ、かつ感光体から剥離された用紙を接触させながら案内する案内部材と、
上記各用紙剥離爪の爪体と案内部材との間に設けられている支持部とを備え、
上記支持部は、
上記各用紙剥離爪の爪体を感光体に対し自重により当接させると共に、案内部材が用紙以外の他の部材に対し接触することなく各用紙剥離爪を揺動自在に支持してなり、
上記案内部材が用紙に対し接触しているときに爪体を各用紙剥離爪の自重による付勢力に抗して感光体に対し離間させるように構成されていることを特徴とする用紙剥離機構。」
から
「 感光体に対し当接または離間して用紙を剥離する複数の用紙剥離爪を備えた用紙剥離機構において、
上記各用紙剥離爪の用紙進行方向始端に設けられ、かつ上記感光体に対して当接する爪体と、
上記各用紙剥離爪の用紙進行方向終端に設けられ、かつ感光体から剥離された用紙を接触させながら案内する案内部材と、
上記各用紙剥離爪の爪体と案内部材との間に設けられている支持部と、
上記爪体に対し所定間隔を存して配置され、かつ上記案内部材を横切ったオーバーラップ位置に配置された用紙搬送路と、を備え、
各用紙剥離爪は、
用紙進行方向と直行する方向に感光体に沿って併設され、
それぞれの爪体の感光体に対する接離動作が協働して行われる構成であり、
上記支持部は、
上記各用紙剥離爪の爪体を感光体に対し自重により当接させると共に、案内部材が用紙以外の他の部材に対し接触することなく各用紙剥離爪を揺動自在に支持してなり、
上記案内部材は、用紙搬送路に搬送された用紙に対し接触しているときに、上記爪体を各用紙剥離爪の自重による付勢力に抗して感光体に対し離間させるように構成され、
各用紙剥離爪の爪体の感光体に対する接離動作は、互いの支持部同士を連結する軸によって協働して行われる構成であることを特徴とする用紙剥離機構。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「用紙剥離爪」に関して、「用紙進行方向と直行する方向に感光体に沿って併設され、それぞれの爪体の感光体に対する接離動作が協働して行われる構成」であり、「各用紙剥離爪の爪体の感光体に対する接離動作は、互いの支持部同士を連結する軸によって協働して行われる構成である」点を追加するとともに、「用紙剥離機構」が、「上記爪体に対し所定間隔を存して配置され、かつ上記案内部材を横切ったオーバーラップ位置に配置された用紙搬送路」を備える点を限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-209251号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

(1-a)「【請求項1】 トナー像を担侍する感光体ドラムと、該感光体ドラムより1次転写したトナー像を記録媒体側に2次転写する中間転写体と、前記1次転写位置より回転方向上流側の感光体ドラム周辺に対面して配した記録媒体巻き付き防止手段とからなる電子写真装置において、
前記記録媒体巻き付き防止手段は、前記感光体ドラムから記録媒体を剥離する爪部と剥離した記録媒体を中間転写体側に向かわせる案内部とを持ち、回転中心を重心位置から偏心させて揺動自在に軸支し、先端側に位置する爪部が自重で感光体ドラムに接触して記録媒体を剥離可能に構成すると共に、前記感光体ドラムから剥離された記録媒体先側の前記案内部への押圧力により、爪部が感光体ドラムから離れるように構成したことを特徴とする電子写真装置。」

(1-b)「【0029】図1は、本発明になる記録媒体巻き付き防止用爪(記録媒体巻き付き防止手段)の実施の形態の一例を示した図で、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)、(e)は記録媒体巻き付き防止用爪が感光体ドラムに接触する部分を模式的に示した概略図である。
【0030】図1において、記録媒体巻き付き防止用爪1は、感光体ドラムに巻き付いた記録媒体を剥離する爪部2、剥離した記録媒体を中間転写体方向に向かわせる案内部3、回転中心を重心位置から偏心させて揺動自在に電子写真装置に軸支する軸4で構成され、爪部2の感光体ドラム5に接する部分は(d)、(e)に示したように、感光体ドラム5への接触点の軸方向両側に、感光体ドラムの軸方向表面から一定角度を持たせた逆山形形状とし、また爪部2の先端部分は、感光体ドラム5から記録媒体の厚さ以下の距離hだけ離れるように構成してある。
【0031】図2は、本発明の記録媒体巻き付き防止用爪1の電子写真装置への装着状態を示すと共に、感光体ドラムに巻き付いた記録媒体を剥離するときの説明図である。
【0032】図2において、1は本発明の記録媒体巻き付き防止用爪、5は感光体ドラム、6は中間転写体である。記録媒体巻き付き防止用爪1は、感光体ドラム5からトナー像を中間転写体に1次転写する位置より回転方向7の上流側に、軸4で電子写真装置本体に取り付けられ、常時は自重で感光体ドラム5に接触している。
【0033】今、記録媒体8が前記分離機構25で分離できずに中間転写体6に巻き付くと、感光体ドラム5との接触点(1次転写位置)で感光体ドラム5の静電力により、図2(イ)に示したように今度は感光体ドラム5に巻き付く。そして、感光体ドラム5に沿って搬送されるが、記録媒体巻き付き防止用爪1まで搬送されると、前記爪部2により感光体ドラム5から剥離され、図2(ロ)に示したように案内部3に沿って中間転写体6側に戻される。
【0034】しかし、中間転写体6より感光体ドラム5の方が静電力が強いため、記録媒体8は完全に中間転写体6側に戻ることなく、記録媒体巻き付き防止用爪1を経由して中間転写体6側にゆく。そのため、記録媒体8が記録媒体巻き付き防止用爪1の案内部3を押圧することで軸4を中心に揺動し、爪部2は図2(ロ)に示したように感光体ドラム5から離れる。
【0035】なお、記録媒体巻き付き防止用爪1は、図1の(b)に示したように爪部2の先端から軸4の中心までと、軸4の中心から爪部2とは逆方向の端とのなす角度βが略90°<180°とし、また、図2(ロ)の感光体ドラム5から剥離した記録媒体8が、案内部3と記録媒体8自身の腰により生成する角度αが、α<βの関係となるように案内部3を構成することで、記録媒体8を感光体ドラム5から剥離したとき、記録媒体巻き付き防止用爪1を確実に感光体ドラム5から離すことができる。」

(1-c)図1、図2として、





上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「感光体ドラムに巻き付いた記録媒体を剥離する爪部2、剥離した記録媒体を中間転写体方向に向かわせる案内部3、回転中心を重心位置から偏心させて揺動自在に電子写真装置に軸支する軸4で構成される記録媒体巻き付き防止手段であって、
先端側に位置する前記爪部2が自重で前記感光体ドラムに接触して記録媒体を剥離可能に構成すると共に、
前記感光体ドラムから剥離された記録媒体先側の前記案内部3への押圧力により、前記爪部2が前記感光体ドラムから離れるように構成した、
記録媒体巻き付き防止手段。」


(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における
「記録媒体」
「感光体ドラム」、
「感光体ドラムに巻き付いた記録媒体を剥離する爪部2」、
「剥離した記録媒体を中間転写体方向に向かわせる案内部3」、
「回転中心を重心位置から偏心させて揺動自在に電子写真装置に軸支する軸4」、
「記録媒体巻き付き防止手段」は、それぞれ、
本願補正発明における
「用紙」、
「感光体」、
「感光体に対し当接または離間して用紙を剥離する用紙剥離爪」、
「上記用紙剥離爪の用紙進行方向終端に設けられ、かつ感光体から剥離された用紙を接触させながら案内する案内部材」、
「上記用紙剥離爪の爪体と案内部材との間に設けられている支持部」、
「用紙剥離機構」に相当する。
そして、刊行物1発明における
「先端側に位置する前記爪部2が自重で前記感光体ドラムに接触して記録媒体を剥離可能に構成すると共に、
前記感光体ドラムから剥離された記録媒体先側の前記案内部3への押圧力により、前記爪部2が前記感光体ドラムから離れるように構成した」は、
本願補正発明における
「上記用紙剥離爪の爪体を感光体に対し自重により当接させると共に、案内部材が用紙以外の他の部材に対し接触することなく各用紙剥離爪を揺動自在に支持してなり、
上記案内部材は、用紙搬送路に搬送された用紙に対し接触しているときに、上記爪体を各用紙剥離爪の自重による付勢力に抗して感光体に対し離間させるように構成された」に相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「 感光体に対し当接または離間して用紙を剥離する用紙剥離爪を備えた用紙剥離機構において、
上記用紙剥離爪の用紙進行方向始端に設けられ、かつ上記感光体に対して当接する爪体と、
上記用紙剥離爪の用紙進行方向終端に設けられ、かつ感光体から剥離された用紙を接触させながら案内する案内部材と、
上記用紙剥離爪の爪体と案内部材との間に設けられている支持部と、
を備え、
上記支持部は、
上記用紙剥離爪の爪体を感光体に対し自重により当接させると共に、案内部材が用紙以外の他の部材に対し接触することなく各用紙剥離爪を揺動自在に支持してなり、
上記案内部材は、用紙搬送路に搬送された用紙に対し接触しているときに、上記爪体を各用紙剥離爪の自重による付勢力に抗して感光体に対し離間させるように構成された、用紙剥離機構。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]:本願補正発明においては、「上記爪体に対し所定間隔を存して配置され、かつ上記案内部材を横切ったオーバーラップ位置に配置された用紙搬送路」を備えるのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。

[相違点2]:「用紙剥離爪」に関して、本願補正発明においては、「用紙剥離爪」は複数であって、「各用紙剥離爪は、
用紙進行方向と直行する方向に感光体に沿って併設され、
それぞれの爪体の感光体に対する接離動作が協働して行われる構成であり、
各用紙剥離爪の爪体の感光体に対する接離動作は、互いの支持部同士を連結する軸によって協働して行われる構成である」のに対し、
刊行物1発明においては、「用紙剥離爪」が複数ではなく、「用紙進行方向と直行する方向に感光体に沿って併設され」、「各用紙剥離爪の爪体の感光体に対する接離動作が協働して行われる」との特定がない点。


(3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1発明の用紙剥離機構においては、「上記爪体に対し所定間隔を存して配置され、かつ上記案内部材を横切ったオーバーラップ位置に配置された用紙搬送路」を備えていないものの、刊行物1発明における「先端側に位置する前記爪部2が自重で前記感光体ドラムに接触して記録媒体を剥離可能」、「前記感光体ドラムから剥離された記録媒体先側の前記案内部3への押圧力により、前記爪部2が前記感光体ドラムから離れる」という接離動作は、本願補正発明における接離動作と、何ら異ならないから、接離動作自体にともなう作用効果に差異はない。
そして、例えば、特開平2-286541号公報(第1図参照)には、定着ローラの用紙剥離機構において、剥離爪の一部が用紙搬送路側に突出し、用紙と接触することによって爪体がローラから離間する構成が開示されているように、用紙剥離爪の一部が用紙搬送路とオーバーラップする構成を採用し、用紙が用紙剥離爪に接触することによって爪体を離間させることは、当業者が適宜為し得たことである。
したがって、「上記爪体に対し所定間隔を存して配置され、かつ上記案内部材を横切ったオーバーラップ位置に配置された用紙搬送路」を備えることは、当業者が適宜為し得たことである。

(相違点2について)
まず、「用紙剥離爪」を複数備えることは、文献を提示するまでもなく、従来周知の事項である。
そして、複数の「用紙剥離爪」について、「爪体の感光体に対する接離動作」をそれぞれ独立に行う構成とするか、それとも、「爪体の感光体に対する接離動作」を同時に行う構成とするかは、当業者が適宜選択・決定できる事項である。
さらに、同軸とすることによって部材を同時に回動させることは、技術常識であるから、「爪体の感光体に対する接離動作」を同時に行う構成とする際に、支持部を同軸とすることによって、協働して同時に接離動作を行う構成とすることも、当業者が適宜為し得る設計的事項といえる。
したがって、「用紙剥離爪」を複数とし、「各用紙剥離爪は、用紙進行方向と直行する方向に感光体に沿って併設され、それぞれの爪体の感光体に対する接離動作が協働して行われる構成であり、各用紙剥離爪の爪体の感光体に対する接離動作は、互いの支持部同士を連結する軸によって協働して行われる構成」を採用することは、当業者が適宜為し得たことである。

(本願補正発明が奏する効果について)
そして、上記相違点によって、本願補正発明が奏する「用紙剥離爪の爪体を僅かな自重により感光体に当接させることで、爪体を感光体に対し軽く押し付けれ、感光体の表面への傷付きを可及的に防止し、感光体の劣化を抑制することができる上、画像形成品位の低下を効果的に防止することができる。」、「各用紙剥離爪を感光体に対し接離動作させる専用のソレノイドを不要にして、用紙剥離機構のコンパクト化を達成することができる。」、「用紙の搬送状態に応じた正確な接離動作を行えることになり、プロセス速度、設置環境および用紙の剥離性に基づいてソレノイドをON/OFF切り換えする制御回路も不要となり、用紙剥離機構のコストダウンを図ることができる。」、「案内部材に対する用紙の接触または非接触により各用紙剥離爪の接離動作を行えて、給紙のつれ送りや、搬送スリップによって用紙間隔が変化しても、十分に対応させることができる。」といった効果も、刊行物1に記載された事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(請求人の主張について)
請求人は、請求の理由、及び、平成21年7月1日付け回答書において、『引用文献1の記録媒体巻き付き防止用爪1は、記録媒体8が案内部3の全長に亘って接触することに基づく記録媒体8の「押圧力」で回動することができるものであり、その回動力は、本願発明のような「重心バランスの崩れ」に基づいて「防止用爪1が回動する」のでなく、記録媒体8が案内部3に接触している間において、記録媒体8自身に拘束されて、時計回りと反時計回りの回動力が作用するために、薄紙等の「腰の弱い」用紙の場合には、記録媒体8による押圧力が小さいために、爪部2を感光体ドラム5から離間させて記録媒体8を剥離させることは困難であります。』と主張している。
しかしながら、本願明細書には「通紙された用紙の案内時に案内部材に対して作用する用紙の当接力による案内部材の移動量が微小であっても、爪体を確実に感光体の表面から離間させることが可能となる。」(段落【0024】)と、「用紙の当接力」について記載があるものの、「重心バランスの崩れ」に関する記載も示唆もない。
そして、「重心バランス」とは、用紙の当接によって爪体を離間させるべく、当業者が案内部材の重さや、支持部の位置を設定することによってもたらされるものであるから、「重心バランスの崩れ」といった作用は、当業者が適宜為し得る設計上の微差にすぎず、また、本願明細書の記載の「用紙の当接力」は、用紙の「押圧力」と格別異ならない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年9月29日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成20年6月25日付けの手続補正は原審において却下の決定がなされているので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成20年4月10日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 感光体に対し当接または離間して用紙を剥離する複数の用紙剥離爪を備えた用紙剥離機構において、
上記各用紙剥離爪の用紙進行方向始端に設けられ、かつ上記感光体に対して当接する爪体と、
上記各用紙剥離爪の用紙進行方向終端に設けられ、かつ感光体から剥離された用紙を接触させながら案内する案内部材と、
上記各用紙剥離爪の爪体と案内部材との間に設けられている支持部とを備え、
上記支持部は、
上記各用紙剥離爪の爪体を感光体に対し自重により当接させると共に、案内部材が用紙以外の他の部材に対し接触することなく各用紙剥離爪を揺動自在に支持してなり、
上記案内部材が用紙に対し接触しているときに爪体を各用紙剥離爪の自重による付勢力に抗して感光体に対し離間させるように構成されていることを特徴とする用紙剥離機構。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1-a)?(1-c)で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「上記爪体に対し所定間隔を存して配置され、かつ上記案内部材を横切ったオーバーラップ位置に配置された用紙搬送路」を備える点を削除するとともに、「用紙剥離爪」に関して、「用紙進行方向と直行する方向に感光体に沿って併設され、それぞれの爪体の感光体に対する接離動作が協働して行われる構成」、及び、「各用紙剥離爪の爪体の感光体に対する接離動作は、互いの支持部同士を連結する軸によって協働して行われる構成」を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-16 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-13 
出願番号 特願2003-307027(P2003-307027)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
伏見 隆夫
発明の名称 用紙剥離機構およびプロセスカートリッジ  
代理人 倉内 義朗  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ