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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1207646
審判番号 不服2006-3106  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-20 
確定日 2009-11-04 
事件の表示 平成 9年特許願第510061号「対話型娯楽内容の制御」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月 6日国際公開、WO97/08632、平成10年 8月18日国内公表、特表平10-508407〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成8年8月26日(パリ条約による優先権主張、平成7年8月31日、英国)を国際出願日とする特願平9-510061号であって、平成17年11月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年2月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、当審において、平成20年5月13日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成20年11月12日付けで意見書が提出され、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年11月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「分岐構造化された物語を経るユーザに影響される経路を有する画像フレームのシーケンスを出力する動作が可能な対話型娯楽装置であって、
前記物語の全ての分岐構造経路用の画像フレーム供給源と、
前記物語の分岐構造を規定するデータのための分岐格納手段と、
ユーザ操作可能な入力手段と、
前記分岐格納手段に結合され、当該物語が分岐点に到達したことを決定し、ユーザの入力に依存して前記画像フレーム供給源から二つ以上の画像フレームシーケンスのうちの一つを呼び出すように動作可能な分岐選択手段と、
選択された前記画像フレームシーケンスの出力部と、
少なくとも1つのユーザ固有コードを含むユーザ格納手段とを有する装置において、
前記分岐格納手段が、一つ又は複数の画像フレームシーケンスをロックされたと識別する他のデータを含み、
前記分岐選択手段が、当該物語が一つ又は複数のロックされた経路を有する分岐点に接近したことを決定し、前記ユーザ固有コードにより実現される所定のアクセス許可データを前記ユーザ格納手段から呼び出し、当該所定のアクセス許可データが存在しない場合には前記一つ又は複数のロックされた経路が選択されることができないように選択を制限する動作が可能であることを特徴とする対話型娯楽装置。」

第3 引用例及びその記載事項
1 引用例1
当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特開平4-266781号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゲームをする人すなわち操作者と、テレビジョンまたはビデオスクリーン上の動画的な話し相手すなわち対話キャラクターとの間で擬似音声対話をするビデオゲーム方法に関する。
【0002】
【発明の、構成、作用、効果】2以上の操作者は、動画化された対話キャラクターに交互に応答することができる。2以上の対話キャラクターは各プレーヤーすなわち各操作者におよび互いに声で応答することができ、それにより3通りまたは4通りの対話を提供する。ゲームが実行されると、各対話キャラクターは、操作者に話しかけ、それに対する応答を待つ。各操作者は、各操作者の側の対話用の2以上の語句すなわち言葉を目視可能に表示すべく押し釦を備えた軽い制御器または表示ユニットを持っている。この対話は、操作者が対話キャラクターに対して言うべき択一的言葉または対話キャラクターが言うべき択一的言葉または動作すべき択一的動作を含む。操作者は、対話キャラクターの言うことに対し、言葉を選択し、釦を押すことにより応答する。対話キャラクターは、操作者により応答されたとき、選択された言葉に対し声で応答するか、または、制御器に表示された言葉により開示された選択された動作を実行する。実際に会話する必要はない。このため、操作者は、興味深いキャラクターと対話している幻覚を受ける。
【0003】ビデオゲーム内のキャラクターの役目には、操作者に管理されるキャラクター(すなわち、管理キャラクター)の役目と、操作者に直接的には管理されない非管理キャラクターの役目との2種類がある。操作者管理キャラクターは、動画化された操作者の複製であり、操作者が選択したことを実行する。非管理キャラクターは、操作者により直接的には管理されないが、操作者により選択された動作に応答すること、または管理キャラクターが行うことまたは言うことに対し応答することにより、操作者により間接的に影響される。非管理キャラクターは、操作者または管理キャラクターが言ったことに応じて異なる択一的考えを言うようにプログラムされる。場面は、いつも異なる何かを言う非管理キャラクターと、場面が繰り返されるたびに異なる操作者用択一的応答とを有する所定期間の繰返しとしてもよい。」

イ 「【0006】
【実施例】図1を参照するに、本発明の1つの実施例において、ビデオゲームシステムは、動画化された画像シーケンスを2人の操作者10,12に対してビデオスクリーン11上に表示している。操作者10,12は、スクリーン上の対話相手である1以上の対話キャラクター17,18に対し”言う”べきまたは話し掛けるべき言葉(句または文)を選択する順番を有する。この実施例では、操作者10の番である。操作者12の手持式すなわち携帯式の制御器は、空白であり、その操作者が現在対話キャラクターに対し何も話し掛けることができないことを意味する。ビデオスクリーン11は、ボートまたは他の乗物で旅行をする動画化された2つの対話キャラクター17,18を示している。各キャラクターは、操作者と直接対話をする非管理キャラクターである。各操作者は、明瞭のために図1に拡大して示す液晶表示器13と、これの隣りの3つの押し釦とを備える制御器を持っている。
【0007】ボート場面が始まると、ビデオゲームシステムは、2または3もしくはそれ以上の択一的応答を表示器13または他の表示装置に表示する。操作者10が釦を押すことを決心するまでは、図示しない連結画像シーケンスは、まるで波止場にいる操作者10を見るように、ボートから振り返る1つのキャラクター18を有する同じボート場面を示し続ける。操作者10は表示された応答の1つ(図示の例では、”どこへ行くの?”)を選択し、選択された応答は、操作者10が対話キャラクターに対し話し掛けている内容を操作者12が知ることができるように、音声として模倣されるまたはビデオスクリーン上にサブタイトルとして表示される。このキャラクター18は”島だよ”のように音声で答え、その後、他のキャラクター17はキャラクター18の回答に応じて”1時間で着くわ”と答える。好ましい実施例において、ゲームシステムは、操作者12がキャラクターに対し”言う”ことができるように、操作者10により選択された言葉に対応する声を発生する。操作者12の順番になると、操作者12の制御器は、キャラクター17または18の回答に応答して操作者12が”言う”ことができる図1に示さない択一的な言葉を表示する。したがって、3通りまたは4通りの対話を擬態することができる。
・・・
【0009】図2を参照するに、本発明の他の実施例において、ビデオゲームシステムは、動画化された2以上の対話キャラクター17,18を有する動画的な画像シーケンスをビデオスクリーン11上に表示している。この実施例において、キャラクター17は、操作者12が管理する管理キャラクターである。操作者12は、キャラクター17の役目をし、またキャラクター17を通してゲームにおいてキャラクター18または他のキャラクターと対話をすることができる。操作者12は、明瞭にするために図2において拡大して示す液晶表示器13と、これの隣りの3つの押し釦とを備える制御器を持っている。ゲームシステムは、3つの択一的応答を表示器13に表示している。操作者12は、表示された応答の1つ(この実施例においては、”もう一度、キスして”)を押し釦14により選択する。キャラクター17のための模倣音声15は、表示器13で選択された言葉を言う。この言葉は、キャラクター17に音声16で応答するキャラクター18に向けられる。
【0010】動画化された2つのキャラクターは、逆のシーケンスに応答させてもよい。すなわち、管理キャラクター17が操作者12により指令されたように応答することができるように、非管理キャラクター18が最初に何かを言うようにしてもよい。たとえば、操作者12が”もう一度、キスして”を選択した後、表示された択一的言葉の1つではない前もって必要な言葉”何をしてもしいの?”と、キャラクター18が言い、次いでキャラクター18が言ったことに対する応答として”もう一度キスして”とキャラクター17が答えてもよい。
・・・
【0013】図4を参照するに、本発明の他の実施例においては、ビデオゲームシステムは、ビルディングの外側の出っ張りから指により吊下がっているキャラクターを示す動画化された画像シーケンスを発生している。屋上にいる友人達は、図4のキャラクターに到達するに不十分な長さのロープをキャラクターに投げている。この出っ張り吊下がり状態は図5に示す次の場面に続き、ここで動画的な2つの対話キャラクターは、吊下がりキャラクターを救出すべき方法について話合いをしている。
【0014】図5を参照するに、画像シーケンス21,25,28は、それぞれ、動画化された2人の対話キャラクターが図4のキャラクターを救助する方法を相談している1つの屋上場面の一部である。1以上の操作者は、次に答えかつ質問をし、または操作者による次の入力を導く意見を述べる対話キャラクターに対し、言葉(語、句、文)を言うことにより、対話に参加する。表示器22に示された択一的言葉は、”ロープが短すぎるは”という言葉20において保留された課題に対し選択すべき解決法である。次に、操作者10が”緊急自体であることを叫べ”に対応する釦14を押すと、1人の対話キャラクターは他の対話キャラクターに”119番に電話してくれた”という質問23をし、他の対話キャラクターは操作者に向けて”うん。でも待てないよ。どうしようか?”という質問24をする。質問24は、また、択一的動作26によりなされる。次に、操作者が”ロープを下せ”に対応する釦を押すと、対話キャラクターはその選択に対する意見をシーケンス28における”ロープをおろせって? 正気なの?”という言葉27として動作の中で述べる。このため、擬態された言葉上の対話は、同じ場面の中のいくつかの言葉を変更することにより継続することができる。
【0015】図6を参照するに、本発明の他の実施例において、ビデオゲームシステムは、動画化された画像シーケンス31,32を発生する。画像シーケンスは、背景に燃えている自動車を示し、前景に怯えた婦人である対話キャラクター17を示す1つの場面を有する。シーケンスの部位31の間、婦人の声15は、”助けて!、母が自動車に閉じ込められている!”と叫んでいる。ゲームは、次に、2以上の択一的応答を表示する。操作者10は、表示された応答の1つ(たとえば、”ドアをこじ開けなさい”)を選択し、対応する押し釦14またはそれと同等のものを押す。操作者が釦を押すことにより解決する間、連結画像シーケンス(図示せず)は、操作者と心配して話しかける婦人を含む同じ場面を継続して示す。操作者が応答を選択すると、動画的な画像シーケンスの部位32は、同じ燃えている自動車の場面を、”開けようとしたけど、開かないのよ”という婦人の声16とともに継続して示す。
【0016】釦14を押すことによる応答の選択は、異なる場面への変化をもたらすが、図6の実施例において、場面は依然として同じであり、対話だけが変化する。表示器13上の3つの択一的応答のそれぞれは、キャラクター17による異なる回答になる。シーケンス31,32は、(1)燃えている自動車を点滅するフレームで示す背景のシーケンス、(2)背景に対し自然に動く婦人キャラクター17を示すまたはモザイク的なスプライト(sprite)、および(3)唇が音声15,16と殆ど同期されたゲームシステムにより(テーブル索引により)選択された口および他の顔のスプライト、の3つの動画を重ねるビデオゲームシステムにより発生される。
【0017】操作者の応答時が可変であるから、閉じた口のスプライトを有するシーケンス31,32は、釦14が押されるまで、または制限時間になるまで、周期的に継続される。”急いで! 急いで!”のような言葉を、刺激する画像シーケンスとともに発生してもよいし、動く口のスプライトとともに表示してもよい。燃えている自動車の代りに、危険な状態を提供する、破壊した、バス、飛行機、ボート、ビルディング等、他の対象物としてもよい。
【0018】図7を参照するに、ビデオシステムは、動作を実行する操作者の手を擬態する1以上の手36を示す動画化された画像シーケンスをビデオスクリーンに表示している。この実施例において、シーケンス33は、実際の手10で表示器13の釦14を押すように示す操作者が表示器13に表示された択一的動作の1つを選択する間、パイプ35、硝化器または他の工具を手に持った状態を示す。図7の表示器13は場面の変化に起因する択一的演技を示すが、図6の表示器13は共通の場面における動画化されたキャラクター17に対して言うべき択一的な言葉を示す。図7において、”ドアを解放する”を選択すべく釦14を押すと、パイプ15により自動車のドアを解放する手36を示す画像シーケンス34になる。
【0019】図8に示すフローチャートは、対話の分岐と場面の分岐の区別を示す。たとえば、場面64において、対話分岐部60は、2つの択一的な言語の応答すなわち言語応答61,62を操作者に示すべく表示される。言語応答は動画化されたキャラクターから異なる答えを導くが、場面は変化しない。しかし、場面の分岐部63において、場面は場面65または66のいずれかに変化する。言語応答62は、操作者の選択に応じて、場面を場面67に変化させるか、次の対話分岐部に変化するかのいずれかになる。
【0020】図9を参照するに、ビデオゲームシステム42は、ケーブルにより、テレビジョン11すなわちビデオモニタと、携帯式の1以上の制御器ユニット44,47または携帯式のゲームユニット46とに接続される。ユニット44,46,47のそれぞれは、液晶表示器13と、その隣りの3つの押し釦14とを有する。ケーブルの代りに、赤外線信号、高周波信号等の電気信号を利用してもよい。システム42は、動画化された画像シーケンス、声用および他の音声用の圧縮された音声、同期用データ、およびユニット44,46,47に表示する言葉をシステム42で発生するための各種のデジタルデータを記憶している、CDロムディスク43、一回書込みディスク、カード、他の媒体等から、デジタルデータを読み出すディスクリーダを含む。ゲームユニット46は、適宜なプログラム化された読出し専用カートリッジを備えており、ユニット44,47の代りとしてもよい。ケーブル45は、ゲームシステム42をユニット44,46または47に接続し、また表示器13に表示する択一的な案内語または他の言語表現を発生する。ケーブル45は、また、釦14による応答をゲームシステム42に伝達する。
・・・
【0022】背景場面に対して動く異なるキャラクターを各背景場面に利用すべく、背景場面用のディジタル的な動画データが、各キャラクター用のディジタル的な動画データと分離して記憶される。同様に、場面を変えることなく各キャラクターに多くの異なる言葉を言わせるべく、ディジタル的な音声データが動画データから独立される。好ましい実施例において、動画化されたキャラクタービデオ、音声シーケンスおよび誘導文は、分離して記憶されたデォジタル的なデータから独立的に発生される。1つの場面において使用されない対話用データは、その後、同じまたは異なるキャラクターを含む他の場面に使用してもよい。音声データは、各キャラクターが予めプログラムされた多数の言葉すなわち文を話すことができるように、いくつかの特有な声の音素、語、文または言葉のコード・シーケンスまたは圧縮されたディジタル的な記憶からなる。同様に、動画化された各キャラクターの身体用のディジタル的なデータは、動く唇、顔面、身振り等のスプライト・データから分離して記憶してもよく、それにより各キャラクターおよびその特有の声を会話に応じて異なる口の動きおよび唇と同期させることができる。動画化されたキャラクター用のディジタル的なデータは、体の像、唇、顔面、手のジェスチャー、および音声と結合される。
【0023】操作者が図2,5,6または7に示す釦14を押すと、ゲームシステムは、選択された言葉に対応する音声を操作者の代りに発生する。対話キャラクターは、次に、発生された音声を操作者が話したものとして応答する。操作者が選択した言葉が実際に発生されるので、操作者は対話の自分のせりふとして耳にする話された言葉が自分に声でなく指で開始されることにすぐ順応する。この模擬音声は、各操作者がスクリーン上の対話キャラクターに対し言うことを各操作者が聞くことができるような他人数用のゲームにとって重要である。釦14を押すことは、対話キャラクターにより話された先の言葉に応答する言語の応答を選択し、表示器13上に示された言語応答に対応する新たな対話用シーケンスを選択することになる。選択された新たな対話用シーケンスは、操作者により選択された言語応答に応答する言葉を話す対話キャラクターの顔および声を含む。」

ここで、上記記載事項ア,イ及び図面から、引用例1では、以下の(ア)ないし(オ)の事項が明らかである。

(ア)段落【0002】及び【図8】から、対話キャラクターから話しかけられ、操作者が応答するという対話を繰り返すものであり、また、段落【0016】【0019】及び【図8】から、ある場面での操作者の応答の選択によっては、場面が変化するので、引用例1では、場面を変えつつ対話を繰り返してゆくという意味において、物語を経ているといえる。
(イ)段落【0016】【0019】及び【図8】から、ある場面での操作者の応答の選択によっては、場面が分岐して変化するので、引用例1では、上記物語は、分岐構造化されており、また、操作者の選択に影響される、分岐による経路を有するといえる。
(ウ)上記記載事項イ及び【図1】ないし【図7】から、ビデオゲームシステム42が、各場面で、1又は複数の、動画化された画像シーケンスを、ビデオスクリーン11に表示しているといえるので、引用例1では、ビデオゲームシステム42は、上記経路を有する画像シーケンスを、ビデオスクリーン11に出力する動作が可能であるといえる。
(エ)段落【0006】【0007】から、対話では、操作者が、対話キャラクターに対し何も話し掛けることができないときと、話し掛けるべき言葉(句または文)を選択できるときがあり、順番で行われているといえる。
(オ)段落【0016】【0018】【0019】及び【図6】ないし【図8】から、操作者が釦14を押すことによる応答の選択によって、異なる場面へ分岐して変化する場合と、同じ場面で対話だけが変化する場合に分岐しているといえる。

上記(ア)ないし(オ)の明らかな事項も考慮すれば、上記記載事項ア,イ及び図面から、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。)

「分岐構造化された物語を経る操作者に影響される経路を有する動画化された画像シーケンスを出力する動作が可能な、擬似音声対話をするビデオゲームシステム42であって、
各場面で表示される、動画化された画像シーケンス等の各種のデジタルデータを記憶しているCDロムディスク43、及び、前記デジタルデータを読み出すディスクリーダと、
操作者が選択して、押すことのできる3つの押し釦14を備える制御器44,47と、
画像シーケンスが表示されるビデオスクリーン11とを有し、
操作者が、対話キャラクターに対し何も話し掛けることができないときと、話し掛けるべき言葉(句または文)を選択できるときがある中で、操作者の選択に応じて、場面を異なる場面に分岐させ、変化させるか、次の対話に変化するかのいずれかにする、
ビデオゲームシステム42。」

2 引用例2
当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である、「デア ラングリッサー必勝攻略法」、株式会社双葉社、1995年7月30日第1刷発行、第6-7,42-43,45,50-51,80頁(以下、「引用例2」という。)には、写真とともに以下の事項が記載されている。

ウ 第6-7頁には、「デア ラングリッサーの流れ」として、
「デア ラングリッサーは、次々とシナリオをクリアしていくシミュレーションゲームだ。ここでは、ひとつのシナリオをどのような流れでクリアしていくのかを確認してみよう。」と記載され、続いて、
「Step1 大陸移動」「Step2 出撃準備」「Step3 ゲームスタート」「Step4 勝利or敗北」「Step5 戦果報告」が順に記載された後、「次シナリオへ step1に戻る」と記載されている。

エ 第42頁右上の画面写真について、「シナリオ7で光か闇どちらかのルートに分岐するのだ」との説明文が記載され、同頁下段の「攻略フローチャート」には、「MAP1?7」から2つの矢印がそれぞれ「光側ルート」の「MAP8?13」及び「闇側ルート」の「MAP37?40」に延びていることが見て取れる。

オ 第45頁左上には、「MAP2 SCENARIO 2」と記載され、同頁右下には、「もしこの面でローレンか自軍がレアードを撃破してしまうと、マップ7でレオンがエルウィンを誘わなくなってしまう。つまり闇側のルートに進めなくなってしまうのだ。」と記載されている。

カ 第50頁左上には、「MAP7 SCENARIO 7」と記載され、同頁右下には、「またシナリオクリア後、レオンに誘われるイベントが発生する。シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合にのみ発生するぞ。」と記載されている。

キ 第51頁左上には、「MAP8 SCENARIO 8」と記載され、同頁右上には、「レオンの誘いを断り、帝国と戦うことを決意したエルウィン。」と記載されている。

ク 第80頁左上には、「MAP37 SCENARIO 8」と記載され、同頁右上には、「レオンに誘われたエルウィンは、帝国にその身を置くことになった。」と記載されている。

第4 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

・対応関係1
引用発明の「操作者」、「動画化された画像シーケンス」、及び「擬似音声対話をするビデオゲームシステム42」は、本願発明の「ユーザ」、「画像フレームのシーケンス(画像フレームシーケンス)」、及び「対話型娯楽装置」に、相当する。

・対応関係2
引用発明では、動画化された画像シーケンスは、各場面で表示されており、また、場面を変えつつ対話を繰り返すことで、物語が構成されるので、引用発明では、物語の「全ての」場面で、動画化された画像シーケンスが、表示されていることは、明らかである。
引用発明では、動画化された画像シーケンスは、CDロムディスク43等に記憶されており、ディスクリーダにより読み出されて、最終的にビデオスクリーン11に表示されることから、引用発明の「CDロムディスク43等」及び「ディスクリーダ」は、動画化された画像シーケンスを、最終的にはビデオスクリーン11に「供給」しているといえる。

してみれば、引用発明の「各場面で表示される、動画化された画像シーケンス等の各種のデジタルデータを記憶しているCDロムディスク43、及び、前記デジタルデータを読み出すディスクリーダ」は、本願発明の「物語の全ての分岐構造経路用の画像フレーム供給源」に相当する。

・対応関係3
一般に、データを規定し、格納した上で処理を行うことは、技術常識であるので、引用発明では、ビデオゲームシステム42が、操作者の選択に応じて、分岐して、変化する場面を特定するための、データを規定し、格納していることは、明らかである。

してみれば、引用発明では、本願発明の「物語の分岐構造を規定するデータのための分岐格納手段」に相当する構成を有していることは、明らかである。

・対応関係4
引用発明の「操作者が選択して、押すことのできる3つの押し釦14を備える制御器44,47」は、本願発明の「ユーザ操作可能な入力手段」に相当する。

・対応関係5
引用発明では、操作者が、対話キャラクターに対し何も話し掛けることができないときと、話し掛けるべき言葉(句または文)を選択できるときがあることから、操作者が選択できるときを「決定し」ていることは明らかである。
引用発明における前記選択できるときは、選択に応じて、場面を異なる場面に分岐させ、変化させる場合があることから、「分岐点」といえる。
してみれば、引用発明では、「物語の分岐点に到達したことを決定し」ていることは、明らかである。

引用発明では、操作者の選択に応じて、場面が分岐して、変更する場合があり、また、場面が変更されれば、動画化された画像シーケンスが変更された場面に応じたものとなることから、引用発明では、本願発明の「ユーザの入力に依存して」「二つ以上の画像フレームシーケンスのうちの一つを呼び出すように動作可能」に相当する構成を有していることは、明らかである。
また、画像フレームシーケンスが、「画像フレーム供給源から」呼び出されることも、上記「・対応関係2」で述べたように、明らかである。

また、引用発明では、上記「・対応関係3」で述べたように、操作者の選択に応じて、分岐して、変化する場面を特定するための、データを規定していることは、明らかであることから、引用発明では、操作者の選択に応じて、変更された場面の動画化された画像シーケンスを表示するためには、(上記「・対応関係3」で述べたように)引用発明が有していることが明らかな、本願発明の「分岐格納手段」に相当する構成と、何等かの「結合」した上で、前記特定するためのデータを用いていることは、明らかである。

してみれば、引用発明の「操作者が、対話キャラクターに対し何も話し掛けることができないときと、話し掛けるべき言葉(句または文)を選択できるときがある中で、操作者の選択に応じて、場面を異なる場面に分岐させ、変化させるか、次の対話に変化するかのいずれかにする」ための構成は、
本願発明の「前記分岐格納手段に結合され、当該物語が分岐点に到達したことを決定し、ユーザの入力に依存して前記画像フレーム供給源から二つ以上の画像フレームシーケンスのうちの一つを呼び出すように動作可能な分岐選択手段」に相当する。

・対応関係6
引用発明では、操作者の選択に応じて、場面を異なる場面に分岐させ、変化させた場合にも、変化させた場面の動画化された画像シーケンスが、ビデオスクリーン11に表示されるので、引用発明では、本願発明の「選択された前記画像フレームシーケンスの出力部」に相当する構成を有していることは、明らかである。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「分岐構造化された物語を経るユーザに影響される経路を有する画像フレームのシーケンスを出力する動作が可能な対話型娯楽装置であって、
前記物語の全ての分岐構造経路用の画像フレーム供給源と、
前記物語の分岐構造を規定するデータのための分岐格納手段と、
ユーザ操作可能な入力手段と、
前記分岐格納手段に結合され、当該物語が分岐点に到達したことを決定し、ユーザの入力に依存して前記画像フレーム供給源から二つ以上の画像フレームシーケンスのうちの一つを呼び出すように動作可能な分岐選択手段と、
選択された前記画像フレームシーケンスの出力部と、
とを有する対話型娯楽装置。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点
本願発明では、「少なくとも1つのユーザ固有コードを含むユーザ格納手段」を有し、
「前記分岐格納手段が、一つ又は複数の画像フレームシーケンスをロックされたと識別する他のデータを含み、
前記分岐選択手段が、当該物語が一つ又は複数のロックされた経路を有する分岐点に接近したことを決定し、前記ユーザ固有コードにより実現される所定のアクセス許可データを前記ユーザ格納手段から呼び出し、当該所定のアクセス許可データが存在しない場合には前記一つ又は複数のロックされた経路が選択されることができないように選択を制限する動作が可能である」のに対し、引用発明では、そのような事項が特定されていない点。

第5 当審の判断
上記相違点について検討する。

引用例2には、

シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合にのみ、シナリオ7のクリア後、レオンに誘われるイベントが発生し、誘いを受けた場合と断る場合に応じて、MAP37あるいはMAP8のシナリオ8となり、
シナリオ2でレアードかシナリオ5でゾルム、の少なくとも一方を倒した場合には、シナリオ7のクリア後、レオンがエルウィンを誘わずに、MAP8のシナリオ8となる、ゲーム、

の発明が記載されていると認められる。

ここで、引用例2に記載された発明では、「レオンに誘われるイベント」は、誘いを受けた場合と断る場合という分岐が生じる「分岐点」といえる。
また、引用例2に記載された発明では、「レオンに誘われるイベント」で誘いを受けた場合と断る場合により、「シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合」であるか否かに拘わらず進むことができる「MAP8」のシナリオ8と、「シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合」にのみ進むことができる「MAP37」のシナリオ8とに分岐している。
前記「MAP37」のシナリオ8は、「シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合」以外では、進むことができないことから、「ロックされた経路」といえる。

してみれば、引用例2に記載された発明の「レオンに誘われるイベント」「シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合」、及び「MAP37」のシナリオ8は、本願発明の「物語が一つのロックされた経路を有する分岐点」「アクセス許可」、及び「ロックされた経路」に相当する。
また、前記「アクセス許可」、及び「ロックされた経路」に対応するデータを有すること、即ち、「アクセス許可データ」及び「ロックされたと識別する他のデータ」を有することは、自明である。

引用発明と引用例2に記載された発明は、いずれも分岐構造化された物語を経る対話型娯楽装置として共通する技術であるので、引用発明に引用例2に記載された発明を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得たものである。
その際に、引用例2に記載された発明における「シナリオ2でレアードを、シナリオ5でゾルムを倒さなかった場合」か否かの判断を、レオンに誘われるイベントより前に行うことは明らかであるので、具体的に前記判断を行う時点を「接近した」ときとすることは、適宜選択、設計される事項である。

個人毎に、禁止あるいは許可する事項や項目を定めることは、例を挙げるまでもなく、あらゆる分野で一般的に行われている周知の事項であるので、引用発明に引用例2に記載された発明を組み合わた際に、前記周知事項に鑑みて、個人毎にロックされた経路の選択を制限するか否かを定めることは、適宜選択、設計される設計事項である。その際には、具体的には、個人毎の、ユーザ個人コードを格納する手段を有し、前記格納する手段からの呼び出しにより実現されることは、明らかである。

なお、請求人は、平成20年11月12日付け意見書において、本願発明は、「所定の条件に到達したら、必ず特別な段階(引用文献2では、レオンに誘われるという段階)へ進むというわけでもない。」と主張するが、上述のとおり、引用発明に適用される、引用例2に記載された発明として、「レオンに誘われるイベント」にどのように進むかについてまで、直接適用しているわけではないので、請求人の前記主張は採用できない。
また仮に、請求人の前記主張が採用されるとしても、分岐点と(ロックされたものを含めた)経路を具体的にどのように関係付け、定めるかは、物語をどのように展開させるかという、演出における当業者が適宜選択、設計する事項にすぎず、技術的に格別のものは認められない。

したがって、引用発明に、引用例2に記載された発明及び前記周知事項を適用して、適宜選択、設計することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことといえる。

また、本願発明の効果も、引用発明、引用例2に記載された発明及び前記周知事項から予測できる範囲内のものであって、技術的に格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明、及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-05 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-24 
出願番号 特願平9-510061
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 栄成  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 武田 悟
江塚 政弘
発明の名称 対話型娯楽内容の制御  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  
代理人 宮崎 昭彦  

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