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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1207737
審判番号 不服2007-25490  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-18 
確定日 2009-11-25 
事件の表示 特願2002- 65167「サーバ、故障診断システム、及び故障診断方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月19日出願公開、特開2003-263516〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成14年3月11日の出願であって、平成19年8月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年10月11日付けで手続補正がなされたものである。




第2 平成19年10月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成19年10月11日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成19年10月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲の補正であって、
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、すなわち、

「【請求項1】
インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバであって、前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診コンテンツを記録している問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信し、前記送信した問診コンテンツに基づいた問診を実施することによって利用者から入力した電子機器の不具合に関する問診結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツであるとともに、前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して当該電子機器の故障状況を診断する機能と、前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目とを電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能とを有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力することを特徴とするサーバ。」

を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、すなわち、

「【請求項1】
インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバであって、前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診コンテンツを記録している問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信し、前記送信した問診コンテンツに基づいた問診を実施することによって利用者から入力した電子機器の不具合に関する問診結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツであるとともに、前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して当該電子機器の故障状況を診断する機能と、前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能とを有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力することを特徴とするサーバ。」

に補正するものを含む。つまり、本件補正は、

本件補正前の特許請求の範囲の請求項1中の「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目とを電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能」という記載を、
本件補正によって、「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能」と補正すること(以下、「本件補正事項」という。)、

を含むものである。



2.本件補正について

本件補正事項は、利用者所望の修理項目を入力するために表示される修理項目を「修理項目の一覧」に限定するものであるから、
本件補正事項を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について検討する。



3.本願補正発明の認定

本願補正発明は、本件補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバであって、前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診コンテンツを記録している問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信し、前記送信した問診コンテンツに基づいた問診を実施することによって利用者から入力した電子機器の不具合に関する問診結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツであるとともに、前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して当該電子機器の故障状況を診断する機能と、前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能とを有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力することを特徴とするサーバ。」



4.引用例1の認定

原査定の拒絶の理由に引用例1として引用された、特開平9-297694号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

(ア)
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、修理作業手配装置および方法に関し、特に、所定の故障診断プログラムを転送し、故障診断プログラムが実行されることにより生成される故障判定データを解析して故障原因を特定し、対応する修理を行うための手配をするようにした修理作業手配装置および方法に関する。」

(イ)
「 【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の修理作業においては、ユーザ(家電機器の使用者)から得た少ない情報を基に、修理担当者が故障した家電製品を調査するため、本来、不要である調査、例えば、正常である部品の調査などが行われる場合があり、故障箇所の特定を行うために過大な時間を要する課題があった。
【0005】
また、修理担当者が故障した家電製品を調査することで、不良の部品を特定するため、事前に修理に必要な部品を用意しておくことができない。従って、例えば、出張修理の場合、修理担当者が修理に必要な部品を持参していないときには、再度、必要な部品を持参してユーザの家庭に出向く必要がある。その結果、人権費が多大になるとともに、迅速に修理作業を行うことが困難である課題があった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、事前に、所定の故障診断プログラムを実行することにより、故障箇所を特定し、修理に必要な部品や修理作業を行う保守員を手配することができるようにしたものである。」

(ウ)
「 【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の修理作業手配装置を応用した故障原因解析システムの一実施例の構成を示すブロック図である。」

(エ)
「 【0012】
家庭Hに設置された家電機器(ビデオカメラ1、パーソナルコンピュータ2、TV(テレビジョン)受像器3、及び冷蔵庫4)は、必要に応じてホームバス6と電話回線7を介してセンタSに設置された故障判定装置5に接続することができるようになされている。すなわち、例えば、家庭Hに設置されたビデオカメラ1に故障が発生した場合、家庭Hのユーザがビデオカメラ1をホームバス6に接続するようにする。
【0013】
その結果、ビデオカメラ1とセンタSの故障判定装置5との間で、所定のデータが相互に授受され、自動的に、ビデオカメラ1の故障原因が特定され、修理に必要な部品が手配されたり、修理作業を行う保守員の業務計画が調整されるようになされている。」

(オ)
「 【0014】
同様に、他の家電機器(パーソナルコンピュータ2、テレビジョン受像器3、及び冷蔵庫4)に故障が発生した場合も、家庭Hのユーザが、故障が発生した所定の家電機器をホームバス6に接続し、センタSの故障判定装置5と所定の家電機器との間で相互に所定のデータを授受させるようにする。なお、家庭Hでの設置場所が頻繁に変更されないような家電機器、例えば、TV受像器3や冷蔵庫4などは、予めホームバス6に接続しておくようにしてもよい。」

(カ)
「 【0015】
所定の被写体の映像は、ビデオカメラ1のレンズ11と、その光学系を変更する調整回路12を介して、CCDカメラ13に入力されるようになされている。CCDカメラ13は、被写体の映像に対応する映像信号を生成し、信号処理回路15に供給するようになされている。信号処理回路15は、CCDカメラ13より供給された映像信号に、所定の信号処理を施し、出力回路16を介して図示せぬVCR(Video Cassette Recorder)などの記録装置に出力するようになされている。」

(キ)
「 【0017】
マイクロコンピュータ14は、ビデオカメラ1の各種の制御、例えば、調整回路12に対し、被写体に対応する光学系を実現させたり、信号処理回路15に対し、所定の信号処理を指示するなどの制御を行うようになされている。また、ビデオカメラ1の不良の動作を検知し、この検知結果を基に、故障原因を特定するための故障解析データを生成し、信号処理回路15と送受信回路17を介してホームバス6に出力するようになされている。さらに、送受信回路17と信号処理回路15を介してホームバス6から入力される故障診断プログラムを実行したり、その結果、生成される故障判定データを信号処理回路15と送受信回路17を介してホームバス6に出力するようになされている。さらにまた、送受信回路17と信号処理回路15を介してホームバス6から入力される所定のメッセージや故障情報(故障内容、修理方法、修理所用時間、および修理費用などの情報)を液晶表示装置18に表示させるようになされている。
【0018】
これらのデータ(故障解析データ、故障診断プログラム、故障判定データ、メッセージ、および故障情報)は、ホームバス6と電話回線7を介して、ビデオカメラ1とセンタSの故障判定装置5とで、授受されるようになされている。」

(ク)
「 【0019】
ビデオカメラ1より伝送された故障解析データまたは故障判定データは、故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給されるようになされている。
【0020】
故障箇所判定装置22は、故障解析データまたは故障判定データを解析処理し、その結果をマクロコンピュータ24に供給するようになされている。
【0021】
マイクロコンピュータ24は、この解析結果をCRT21に表示させるようになされている。また、解析結果に応じて、より詳細な情報を取得するための故障判定プログラムを関連情報DB(データベース)25より読み出し、マクロコンピュータ24、故障箇所判定装置22、送受信回路23、電話回線7、およびホームバス6を介して、ビデオカメラ1に伝送するようになされている。さらに、関連情報DB25に蓄積された故障情報の中から、故障箇所判定回路22より供給された故障原因の解析結果に対応する故障情報を読み出し、ビデオカメラ1に伝送するようになされている。さらにまた、故障原因の解析結果を基に、部品の在庫管理を行うとともに、修理を行う保守員の業務計画を生成するようにもなされている。」

(ケ)
「 【0022】
なお、家庭Hに設置されたビデオカメラ1以外の家電機器と、故障判定装置5との間でも、ビデオカメラ1の場合と同様に、所定の故障解析データ、故障判定データ、故障判定プログラム、メッセージ、または故障情報が授受されるようになされている。
【0023】
また、家庭HとセンタSとの通信手段としては、電話回線の他、光ファイバケーブルなどの有線とすることもできる。また、移動体通信用回線などの無線とすることもできる。」

(コ)
「 【0024】
次に、図1の故障原因解析システムの処理動作について、図2と図3のフローチャートを参照して説明する。」

(サ)
「 【0025】
今、図1のビデオカメラ1に故障が発生し、ユーザがビデオカメラ1をホームバス6に接続したものとする。このとき、図2のステップS1で、ビデオカメラ1のマイクロコンピュータ14は、ビデオカメラ1の動作不良を検知し、検知結果を基に、所定の制御バッファのダンプデータなどより構成される動作不良の状態を表した故障解析データを生成し、信号処理回路15、送受信回路17、ホームバス6、および電話回線7を介してセンタSの故障判定装置5に送信する。この故障解析データは、故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給される。その後、故障解析データは、故障箇所判定回路22で解析され、解析結果がマイクロコンピュータ24を介してCRT21に表示される。」

(シ)
「 【0026】
続くステップS2で、マイクロコンピュータ24は、故障原因のより詳細な情報を得るために、故障箇所判定装置22から供給された解析結果に対応する、関連情報DBに蓄積されている所定の故障診断プログラムを読み出し、ビデオカメラ1に送信する。ビデオカメラ1の送受信回路17は、故障診断プログラムを受信し、信号処理回路15を介して、マイクロコンピュータ14に供給する。そして、マイクロコンピュータ14は、故障診断プログラムを実行し、故障判定データを生成する。」

(ス)
「 【0027】
続いて、ステップS3で、マイクロコンピュータ14は、信号処理回路15と送受信回路17を介して、故障判定データをホームバス6に出力する。故障解析データは、ホームバス6と電話回線7を介して故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給される。」

(セ)
「 【0028】
次に、ステップS4で、故障箇所判定回路22は、故障判定データを解析し、解析結果をマイクロコンピュータ24に供給する。そして、この解析結果は、マイクロコンピュータ24で対応する映像信号に変換され、CRT21に表示される。」

(ソ)
「 【0029】
後続のステップS5で、マイクロコンピュータ24は、解析結果と関連情報DB25に蓄積された情報を基に、故障した家電機器(ビデオカメラ1)が修理可能であるか否かを判断する。ステップS5で修理不可能であると判断された場合、ステップS6で、マイクロコンピュータ24は、修理が不可能であることを示す所定のメッセージをビデオカメラ1に伝送する。このメッセージはビデオカメラ1の送受信回路17で受信され、信号処理回路15とマイクロコンピュータ14を介して液晶表示装置18に表示される。
【0030】
このようにして、家庭Hのユーザは、ビデオカメラ1の故障が修理可能であるのか否かを知ることができる。なお、ステップS6では、修理が不可能であることを示すメッセージの他、故障箇所や簡単な故障原因の説明を加えたメッセージを送信することもできる。」

(タ)
「 【0031】
ステップS5で修理可能であると判断された場合、ステップS7で、マイクロコンピュータ24は、ユーザによる修理が可能であるか否かを判断する。ステップS7でユーザによる修理が可能であると判断された場合、ステップS8で、マイクロコンピュータ24は、関連情報DB25より、対応する修理方法を検索してビデオカメラ1に送信する。そして、この修理方法がビデオカメラ1の液晶表示装置18に表示される。」

(チ)
「 【0032】
このようにして、家庭Hのユーザは、ビデオカメラ1の故障が自分で修理可能である場合、その修理方法を知ることができる。」

(ツ)
「 【0033】
ステップS7でユーザによる修理が不可能であると判断された場合、ステップS9で、マイクロコンピュータ24は、関連情報DB25より、修理費や修理時間などの故障情報を検索し、ビデオカメラ1に伝送する。この故障情報は、ビデオカメラ1の液晶表示装置18に表示される。家庭Hのユーザは、液晶表示装置18に表示された故障情報を参照して、修理を行うか否かの修理意志を決定し、ビデオカメラ1の具備する図示せぬ所定のテンキーやボタンの操作により、修理意志を故障判定装置5に伝送する。」

(テ)
「 【0034】
続くステップS10で、修理意志の情報が故障判定装置5に伝送され、CRT21に表示される。」

(ト)
「 【0035】
後続のステップS11で、マイクロコンピュータ24は、伝送されてきた修理意志の情報を基に、ユーザが修理を希望しているのか否かを判断する。修理を希望していないと判断された場合、図2に示すフローチャートの処理は終了するが、ユーザが修理を希望していると判断された場合、ステップS12のサブルーチン処理(修理準備処理)が実行される。」

(ナ)
「 【0036】
ここで、図2のステップS12の処理の詳細について、図3のフローチャートを参照して説明する。」

(ニ)
「 【0037】
図3のステップS21で、マイクロコンピュータ24は、故障箇所判定装置22から供給された解析結果を基に、関連情報DB25を検索して、ビデオカメラ1の修理に必要な所定の部品を決定する。」

(ヌ)
「 【0038】
続くステップS22で、修理に必要な部品の在庫があるか否かが判断される。修理に必要な部品の在庫があると判断された場合、ステプS27に分岐するが、修理に必要な部品の在庫がないと判断された場合、ステップS23で、マイクロコンピュータ24は、所定の備品購入計画に従い、部品センタに発注する部品(修理に必要な部品)の数量を決定する。」

(ネ)
「 【0039】
そして、ステップS24で、部品センタへの発注がおこなわれ、ステップS25で、マイクロコンピュータ24は、発注部品リストを発注内容に従い更新する。続いて、ステップS26で、発注部品が入荷されると、ステップS27に分岐し、ステップS27で、マイクロコンピュータ24は、部品在庫リストを更新する。」

(ノ)
「 【0040】
このようにして、所定の部品購入計画に従い、修理に必要な部品の在庫を、自動的に管理するようにする。」

(ハ)
「 【0041】
後続のステップS28で、マイクロコンピュータ24は、故障の種類、修理難易度、修理に要する作業時間、部品在庫情報、および部品入荷時期情報などの修理に関する詳細な故障修理作業属性を関連情報DB25より検索する。」

(ヒ)
「 【0042】
次に、ステップS29で、関連情報DB25に蓄積された保守員の人事情報(各保守員の有する特殊技術や作業速度などの情報)を基に、各保守員毎に、修理に要する修理時間が推定され、ステップS30で、関連情報DB25に蓄積された保守員の業務計画を基に、ビデオカメラ1の修理を行うのに最適な保守員が選出される。」

(フ)
「 【0043】
続くステップS31で、マイクロコンピュータ24は、ステップS30で選出した保守員の業務計画を更新する。」

(ヘ)
「 【0044】
このようにして、図3のフローチャートに示す修理準備処理が終了すると、図2のステップS13に分岐し、選出された保守員が業務計画に従い、在庫管理された修理に必要な部品を使用して所定の家電機器(ビデオカメラ1)の修理を行う。」

(ホ)
「 【0045】
このようにして、通信回線を介して、事前に、故障が発生した家電機器の故障箇所を特定し、修理に必要な部品の在庫管理を行うとともに、所定の修理内容に最適な修理担当者を選出することができる。」

(マ)
「 【0058】
さらにまた、ユーザには、故障した家電機器31-1乃至31-nの診断結果として、修理費用や修理に要する時間などを、故障内容の簡単な説明とともに送信することができるため、ユーザは、これを参照して修理を行うか否かを選択することができる。」


以上の引用例1の記載によれば、引用例1には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例1の上記(エ)の「家庭Hに設置された家電機器(ビデオカメラ1、パーソナルコンピュータ2、TV(テレビジョン)受像器3、及び冷蔵庫4)は、必要に応じてホームバス6と電話回線7を介してセンタSに設置された故障判定装置5に接続することができるようになされている。すなわち、例えば、家庭Hに設置されたビデオカメラ1に故障が発生した場合、家庭Hのユーザがビデオカメラ1をホームバス6に接続するようにする。・・・(中略)・・・その結果、ビデオカメラ1とセンタSの故障判定装置5との間で、所定のデータが相互に授受され、自動的に、ビデオカメラ1の故障原因が特定され、修理に必要な部品が手配されたり、修理作業を行う保守員の業務計画が調整されるようになされている。」という記載、

引用例1の上記(ク)の「ビデオカメラ1より伝送された故障解析データまたは故障判定データは、故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給されるようになされている。」という記載から、

引用例1には、「電話回線を介して家電機器と直接、データの送受信を行う送受信回路を備えたセンタの故障判定装置」が開示されていると認められる。


(b)
上記(a)の「電話回線を介して家電機器と直接、データの送受信を行う送受信回路を備えたセンタの故障判定装置」という開示、

引用例1の上記(キ)の「マイクロコンピュータ14は、ビデオカメラ1の各種の制御、例えば、調整回路12に対し、被写体に対応する光学系を実現させたり、信号処理回路15に対し、所定の信号処理を指示するなどの制御を行うようになされている。また、ビデオカメラ1の不良の動作を検知し、この検知結果を基に、故障原因を特定するための故障解析データを生成し、信号処理回路15と送受信回路17を介してホームバス6に出力するようになされている。」という記載、
(なお、「マイクロコンピュータ」が「所定のプログラムを実行することによって所望の処理を行うもの」であることが情報処理分野における技術常識であることを鑑みれば、「マイクロコンピュータ」が「不良の動作を検知」するためには所定のプログラム(例えば「検知プログラム」)を必要とすることは明らかである。)

引用例1の上記(サ)の「今、図1のビデオカメラ1に故障が発生し、ユーザがビデオカメラ1をホームバス6に接続したものとする。このとき、図2のステップS1で、ビデオカメラ1のマイクロコンピュータ14は、ビデオカメラ1の動作不良を検知し、検知結果を基に、所定の制御バッファのダンプデータなどより構成される動作不良の状態を表した故障解析データを生成し、信号処理回路15、送受信回路17、ホームバス6、および電話回線7を介してセンタSの故障判定装置5に送信する。この故障解析データは、故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給される。その後、故障解析データは、故障箇所判定回路22で解析され、解析結果がマイクロコンピュータ24を介してCRT21に表示される。」という記載から、

引用例1には、「家電機器にて前記家電機器の動作不良を検知するための検知プログラムを前記家電機器にて実行し、前記検知プログラムに基づいて動作不良を検知することによって生成された家電機器の動作不良に関する故障解析データを、前記家電機器から前記送受信回路を介して受信」することが開示されていると認められる。


(c)
上記(a)の「電話回線を介して家電機器と直接、データの送受信を行う送受信回路を備えたセンタの故障判定装置」という開示、

上記(b)の「家電機器にて前記家電機器の動作不良を検知するための検知プログラムを前記家電機器にて実行し、前記検知プログラムに基づいて動作不良を検知することによって生成された家電機器の動作不良に関する故障解析データを、前記家電機器から前記送受信回路を介して受信」するという開示、

引用例1の上記(ク)の「ビデオカメラ1より伝送された故障解析データまたは故障判定データは、故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給されるようになされている。・・・(中略)・・・故障箇所判定装置22は、故障解析データまたは故障判定データを解析処理し、その結果をマクロコンピュータ24に供給するようになされている。・・・(中略)・・・マイクロコンピュータ24は、この解析結果をCRT21に表示させるようになされている。また、解析結果に応じて、より詳細な情報を取得するための故障判定プログラムを関連情報DB(データベース)25より読み出し、マクロコンピュータ24、故障箇所判定装置22、送受信回路23、電話回線7、およびホームバス6を介して、ビデオカメラ1に伝送するようになされている。さらに、関連情報DB25に蓄積された故障情報の中から、故障箇所判定回路22より供給された故障原因の解析結果に対応する故障情報を読み出し、ビデオカメラ1に伝送するようになされている。さらにまた、故障原因の解析結果を基に、部品の在庫管理を行うとともに、修理を行う保守員の業務計画を生成するようにもなされている。」という記載、

引用例1の上記(シ)の「続くステップS2で、マイクロコンピュータ24は、故障原因のより詳細な情報を得るために、故障箇所判定装置22から供給された解析結果に対応する、関連情報DBに蓄積されている所定の故障診断プログラムを読み出し、ビデオカメラ1に送信する。ビデオカメラ1の送受信回路17は、故障診断プログラムを受信し、信号処理回路15を介して、マイクロコンピュータ14に供給する。そして、マイクロコンピュータ14は、故障診断プログラムを実行し、故障判定データを生成する。」という記載、

引用例1の上記(ス)の「続いて、ステップS3で、マイクロコンピュータ14は、信号処理回路15と送受信回路17を介して、故障判定データをホームバス6に出力する。故障解析データは、ホームバス6と電話回線7を介して故障判定装置5の送受信回路23で受信され、故障箇所判定回路22に供給される。」という記載から、

引用例1には、「受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラムであるとともに、前記家電機器にて家電機器の故障診断を行う故障診断プログラムであって、当該家電機器の故障箇所を判定する機能を有する故障診断プログラムを記録している関連情報DBから、前記受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラムを読み出して前記送受信回路を介して前記家電機器に対して送信する旨の指示を出力すること」が開示されていると認められる。


以上の引用例1の記載によれば、引用例には下記の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「電話回線を介して家電機器と直接、データの送受信を行う送受信回路を備えたセンタの故障判定装置であって、家電機器にて前記家電機器の動作不良を検知するための検知プログラムを前記家電機器にて実行し、前記検知プログラムに基づいて動作不良を検知することによって生成された家電機器の動作不良に関する故障解析データを、前記家電機器から前記送受信回路を介して受信し、受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラムであるとともに、前記家電機器にて家電機器の故障診断を行う故障診断プログラムであって、当該家電機器の故障箇所を判定する機能を有する故障診断プログラムを記録している関連情報DBから、前記受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラムを読み出して前記送受信回路を介して前記家電機器に対して送信する旨の指示を出力することを特徴とするセンタの故障判定装置。」



5.対比

本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(1)
引用例1発明の「電話回線」、「家電機器」、「送受信回路」、「動作不良」、「関連情報DB」は、それぞれ、

本願補正発明の「インターネット等の通信網」、「電子カメラ、ゲーム機、家電機器等の電子機器」、「送受信手段」、「不具合」、「診断コンテンツ記録手段」に相当する。


(2)
本願補正発明の「インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバ」という規定は、
「インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、・・・情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバ」を発明特定事項として含むのであるから、

引用例1発明の「電話回線を介して家電機器と直接、データの送受信を行う送受信回路を備えたセンタの故障判定装置」は、

本願補正発明の「インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバ」に相当する。


(3)
引用例1発明の「家電機器にて前記家電機器の動作不良を検知するための検知プログラムを前記家電機器にて実行し、前記検知プログラムに基づいて動作不良を検知することによって生成された家電機器の動作不良に関する故障解析データを、前記家電機器から前記送受信回路を介して受信し、受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラムであるとともに、・・・」と、
(なお、「受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラム」なのであるから、結局のところ、「受信した故障解析データ」に対応する「故障診断プログラム」と何ら変わらない。)

本願補正発明の「前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診コンテンツを記録している問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信し、前記送信した問診コンテンツに基づいた問診を実施することによって利用者から入力した電子機器の不具合に関する問診結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツであるとともに、・・・」とは、
(なお、本願補正発明が「前記電子機器・・・にて前記電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診コンテンツを記録している問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器・・・に対して送信し、前記送信した問診コンテンツに基づいた問診を実施することによって利用者から入力した電子機器の不具合に関する問診結果を、前記電子機器・・・から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツであるとともに、・・・」を発明特定事項として含むことことは明らかである。)

「前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の検査を実施するための検査コンテンツに基づいた検査を実施することによって得られた電子機器の不具合に関する検査結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した検査結果に対応する診断コンテンツであるとともに、・・・」という点で一致し、

・本願補正発明の「検査」は、「問診」であるのに対し、
引用例1発明の「検査」は、「検知」である点、

・本願補正発明の「検査結果」は、「利用者から入力した」ものである「問診結果」であるのに対し、
引用例1発明の「検査結果」は、生成された「故障解析データ」である点、

・本願補正発明の「検査コンテンツ」は、サーバが「問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信」することによって得られる「問診コンテンツ」であるのに対し、
引用例1発明の「検査コンテンツ」は、「検知プログラム」である点、

で相違する。


(4)
引用例1発明の「前記家電機器にて家電機器の故障診断を行う故障診断プログラムであって、当該家電機器の故障箇所を判定する機能を有する故障診断プログラムを記録している関連情報DBから、前記受信した故障解析データによって解析された解析結果に対応する故障診断プログラムを読み出して前記送受信回路を介して前記家電機器に対して送信する旨の指示を出力すること」と、

本願補正発明の「前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して当該電子機器の故障状況を診断する機能と、前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能とを有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力すること」とは、

「前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、当該電子機器の故障状況を診断する機能を有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力すること」という点で一致し、

・本願補正発明では、「電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して」診断しているのに対し、
引用例1発明では、「電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して」診断しているのか不明である点、

・本願補正発明の「診断コンテンツ」は、「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能」を有しているのに対し、
引用例1発明の「診断コンテンツ」はそのような機能を有していない点、

で相違する。


(5)
したがって、本願補正発明と引用例1発明とは、

「インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバであって、前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の検査を実施するための検査コンテンツに基づいた検査を実施することによって得られた電子機器の不具合に関する検査結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した検査結果に対応する診断コンテンツであるとともに、前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、当該電子機器の故障状況を診断する機能を有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力することを特徴とするサーバ。」

である点で一致し、

(相違点1)
本願補正発明の「検査」は、「問診」であるのに対し、
引用例1発明の「検査」は、「検知」である点、

(相違点2)
本願補正発明の「検査結果」は、「利用者から入力した」ものである「問診結果」であるのに対し、
引用例1発明の「検査結果」は、生成された「故障解析データ」である点、

(相違点3)
本願補正発明の「検査コンテンツ」は、サーバが「問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信」することによって得られる「問診コンテンツ」であるのに対し、
引用例1発明の「検査コンテンツ」は、「検知プログラム」である点、

(相違点4)
本願補正発明では、「電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して」診断しているのに対し、
引用例1発明では、「電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して」診断しているのか不明である点、

(相違点5)
本願補正発明の「診断コンテンツ」は、「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能」を有しているのに対し、
引用例1発明の「診断コンテンツ」はそのような機能を有していない点、

で相違する。



6.相違点に対する判断

(1)相違点1について

サーバがインターネットを介して、電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診用のコンテンツの配信を受けることによって、ユーザ操作による問診を行って、不具合原因を推定する技術は、例えば、

・原査定の拒絶の理由に引用例2として引用された、特開2001-145131号公報(特に、段落【0171】乃至【0172】、【0196】乃至【0206】、【0215】乃至【0221】、【図25】、【図29】乃至【図36】、【図47】を参照)

・特開平10-63682号公報(特に、段落【0036】乃至【0050】、【図12】乃至【図14】を参照)、

・特開2001-265889号公報(特に、段落【0019】乃至【0025】、【図6】乃至【図8】を参照)、

にあるように、情報処理分野における周知技術である。

また、引用例1の上記(ツ)に、「ステップS7でユーザによる修理が不可能であると判断された場合、ステップS9で、マイクロコンピュータ24は、関連情報DB25より、修理費や修理時間などの故障情報を検索し、ビデオカメラ1に伝送する。この故障情報は、ビデオカメラ1の液晶表示装置18に表示される。家庭Hのユーザは、液晶表示装置18に表示された故障情報を参照して、修理を行うか否かの修理意志を決定し、ビデオカメラ1の具備する図示せぬ所定のテンキーやボタンの操作により、修理意志を故障判定装置5に伝送する。」と記載されているように、
引用例1の家電機器は、(問診とは異なるものの)修理に関する情報が入力可能に構成されている。

したがって、引用例1発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
引用例1発明の「検査」として、「問診」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

前記「(1)相違点1について」で検討したように、サーバがインターネットを介して、電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診用のコンテンツの配信を受けることによって、ユーザ操作による問診を行って、不具合原因を推定する技術は、情報処理分野における周知技術である。

また、前記「(1)相違点1について」で検討したように、引用例1の家電機器は、(問診とは異なるものの)修理に関する情報が入力可能に構成されている。

したがって、引用例1発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
引用例1発明の「検査結果」として、「利用者から入力した」ものである「問診結果」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(3)相違点3について

前記「(1)相違点1について」で検討したように、サーバがインターネットを介して、電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診用のコンテンツの配信を受けることによって、ユーザ操作による問診を行って、不具合原因を推定する技術は、情報処理分野における周知技術である。

なお、サーバがインターネットを介して、電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診用のコンテンツの配信を受ける場合、
電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診用のコンテンツを記録している記録手段から問診用のコンテンツを読み出して、該問診用のコンテンツを送受信手段を介して送信することは、
情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例1発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
引用例1発明の「検査コンテンツ」として、サーバが「問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信」することによって得られる「問診コンテンツ」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(4)相違点4について

電子機器にてエラー情報やステータス情報等を発生させ、当該情報を取得することによって、電子機器の診断をすることは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例1発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
「電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して」診断するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(5)相違点5について

(a)
引用例1の上記(ソ)に、「後続のステップS5で、マイクロコンピュータ24は、解析結果と関連情報DB25に蓄積された情報を基に、故障した家電機器(ビデオカメラ1)が修理可能であるか否かを判断する。ステップS5で修理不可能であると判断された場合、ステップS6で、マイクロコンピュータ24は、修理が不可能であることを示す所定のメッセージをビデオカメラ1に伝送する。このメッセージはビデオカメラ1の送受信回路17で受信され、信号処理回路15とマイクロコンピュータ14を介して液晶表示装置18に表示される。・・・(中略)・・・このようにして、家庭Hのユーザは、ビデオカメラ1の故障が修理可能であるのか否かを知ることができる。なお、ステップS6では、修理が不可能であることを示すメッセージの他、故障箇所や簡単な故障原因の説明を加えたメッセージを送信することもできる。」と記載されているように、
引用例1は、『(故障解析データによって解析された)解析結果に基づいて故障した当該家電機器の故障箇所を家電機器の液晶表示装置に表示する機能』を開示している。

つまり、引用例1は、(「診断コンテンツ」の機能ではないものの)本願補正発明の「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能」を開示しているといえる。


(b)
・前述したように、引用例1は、(「診断コンテンツ」の機能ではないものの)本願補正発明の「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能」を開示しているといえること、

・引用例1の上記(ツ)に、「ステップS7でユーザによる修理が不可能であると判断された場合、ステップS9で、マイクロコンピュータ24は、関連情報DB25より、修理費や修理時間などの故障情報を検索し、ビデオカメラ1に伝送する。この故障情報は、ビデオカメラ1の液晶表示装置18に表示される。家庭Hのユーザは、液晶表示装置18に表示された故障情報を参照して、修理を行うか否かの修理意志を決定し、ビデオカメラ1の具備する図示せぬ所定のテンキーやボタンの操作により、修理意志を故障判定装置5に伝送する。」と記載されていること、

・引用例1の上記(マ)に、「さらにまた、ユーザには、故障した家電機器31-1乃至31-nの診断結果として、修理費用や修理に要する時間などを、故障内容の簡単な説明とともに送信することができるため、ユーザは、これを参照して修理を行うか否かを選択することができる。」と記載されていること、

の3点を鑑みれば、引用例1は、『前記表示手段に表示された前記修理項目により、利用者から利用者の修理意思を入力する機能』を開示しているといえる。


(c)
上記(a)及び(b)から、引用例1は、
「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目により、利用者から利用者の修理意思を入力する機能」
を開示しているといえる。

なお、家電機器の液晶表示装置に表示する「当該家電機器の故障箇所」が、『当該電子機器に必要な修理項目』に該当することは明らかであり、
また、家電機器が故障する際には一箇所しか故障しないとは限らない(すなわち、通常、複数個所故障する可能性がある。)のであるから、
「当該家電機器の故障箇所」を『一覧』表示できるように機能させることが好ましいことは明らかである。

また、診断に関する一連の処理に限らないことであるが、一連の処理を、複数のコンテンツ(又は、プログラム)で行ったり、(複数のコンテンツを統合する等して)ひとつのコンテンツで行ったりすることは、情報処理分野における周知技術である。

一方、家電機器等の電子機器に限らないことであるが、修理に出す機器に対して修理項目の明細(修理項目の一覧)が提示されたが、全ての修理項目に対して修理すると、利用者の予算が超過してしまう等の不都合が生じる場合があることは世間常識であり、
しかも、その際、全ての修理項目に対して修理するのではなく、利用者が指定する優先度の高い修理項目を希望することによって、希望した修理項目に対してのみ修理してもらう場合があることも世間常識である。
すなわち、『修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目』を指定することは、世間常識であるといえる。

したがって、引用例1発明に対して、当該周知技術及び世間常識を適用することによって、
引用例1発明の「診断コンテンツ」に、「前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目の一覧を電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、前記表示手段に表示された前記修理項目の一覧のうち、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能」を追加することは、当業者が容易に想到し得ることである。



7.むすび

以上のことから、本願補正発明は、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3 本願発明について

1.本願発明

平成19年10月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年7月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
インターネット等の通信網を介して、電子カメラ、ゲーム機、家電製品等の電子機器と直接、又は、前記電子機器と通信接続されているパソコン、PDA、携帯電話等の通信機器と情報の送受信を行う送受信手段を備えたサーバであって、前記電子機器又は前記通信機器にて前記電子機器の不具合状況の問診を実施するための問診コンテンツを記録している問診コンテンツ記録手段から問診コンテンツを読み出して、該問診コンテンツを前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信し、前記送信した問診コンテンツに基づいた問診を実施することによって利用者から入力した電子機器の不具合に関する問診結果を、前記電子機器又は前記通信機器から前記送受信手段を介して取得し、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツであるとともに、前記電子機器又は前記通信機器にて電子機器の診断を実施する診断コンテンツであって、電子機器にて発生しているエラー情報やステータス情報等を取得して当該電子機器の故障状況を診断する機能と、前記診断の結果に基づいて故障している当該電子機器に必要な修理項目とを電子機器又は通信機器の表示手段に表示する機能と、利用者から利用者所望の修理項目を入力する機能とを有する診断コンテンツを記録している診断コンテンツ記録手段から、前記取得した問診結果に対応する診断コンテンツを読み出して前記送受信手段を介して前記電子機器又は前記通信機器に対して送信する旨の指示を出力することを特徴とするサーバ。」



2.引用例1の認定

原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、及びその記載事項は、前記「第2 〔理由〕4.引用例1の認定」に記載したとおりである。



3.対比及び判断

本願発明は、上記「第2 〔理由〕1.補正内容」及び「第2 〔理由〕3.本願補正発明の認定」で検討した本願補正発明から、本件補正事項によって限定する補正を解除したものに相当する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明は、
前記「第2〔理由〕6.相違点に対する判断」に記載したとおり、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、
本願発明も、同様の理由により、引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。



4.むすび

したがって、本願発明は、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって結論の通り審決する。
 
審理終結日 2009-09-30 
結審通知日 2009-10-01 
審決日 2009-10-14 
出願番号 特願2002-65167(P2002-65167)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 和田 財太
小曳 満昭
発明の名称 サーバ及び故障診断方法  
代理人 松浦 憲三  

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