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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない E21D |
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管理番号 | 1207917 |
審判番号 | 訂正2008-390096 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2008-08-27 |
確定日 | 2009-11-05 |
事件の表示 | 特許第2138035号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成 1年 9月14日 出願(特願平1-238748号) 平成 6年 7月11日 手続補正 平成 7年11月 8日 出願公告(特公平7-103770号) 平成 8年 2月 7日 異議申立(1件) 平成 8年 2月 8日 異議申立(3件) 平成10年 5月29日 異議決定(全件理由なし)・特許査定 平成10年 8月28日 特許権設定登録(特許第2138035号) 平成16年 3月11日 無効審判請求(無効2004-35133号) 平成16年 6月 1日 答弁書提出(被請求人) 平成16年 7月 7日 弁駁書提出(請求人) 平成16年 8月12日 無効2004-35133号審決(1回目)(本件 審判の請求は、成り立たない。) 平成16年 8月24日 審決謄本送達 平成16年 9月 9日 東京高等裁判所出訴(平成16年(行ケ)第 403号,知的財産高等裁判所での新番号は 平成17年(行ケ)第10325号) 平成19年 1月18日 審決取消決定(特許庁が無効2004-3513 3号事件について平成16年8月12日にし た審決を取り消す。) 平成19年 2月 5日 判決確定 平成19年 2月 6日 訂正請求申立 平成19年 4月23日 訂正請求のための期間指定通知(特許法第 134条の3第1項の規定) 平成19年 5月 7日 訂正請求 平成19年 6月18日 意見書提出(請求人) 平成19年 8月14日 上申書提出(請求人) 平成19年 9月25日 答弁書提出(被請求人) 平成20年 6月 3日 無効2004-35133号審決(2回目)(訂正 を認める。特許第2138035号の請求項1に 係る発明についての特許を無効とする。) 平成20年 7月14日 知的財産高等裁判所出訴(平成20年(行ケ) 第10262号) 平成20年 8月27日 本件訂正審判請求 平成20年 9月24日 手続中止通知 平成20年12月22日 上申書提出(訂正審判請求人・手続中止解 除の申出) 平成21年 1月21日 上申書提出(無効審判請求人) 平成21年 2月17日 手続補正書提出(訂正審判請求人) 平成21年 5月22日 訂正拒絶理由通知 平成21年 6月26日 意見書提出 平成21年 7月15日 上申書提出 第2.訂正審判請求の要旨 本件訂正審判請求の趣旨は,本件特許の願書に添付した明細書又は図面(以下,「本件特許明細書」という。)を,審判請求書に添付した訂正明細書(以下,「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであり,そして,その訂正(以下,「本件訂正」という。)の内容は,次のとおりのものである。(但し,特許請求の範囲以外の訂正箇所は,本件の特許公報(特公平7-103770号公報)の頁,欄,行で示し,また,訂正された箇所には下線を付す。) 〔1〕訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の 「レーザー光を投射するレーザー発振器と光波によって距離を測定する光波測角測距儀とを、レーザー光の光軸と光波の光軸とが平行になるように一体としたレーザー光投射装置と; このレーザー光投射装置を支持して、鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置と; 前記光波測角測距儀からの測角測距データとトンネル形状情報に基づいて前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を鉛直方向および水平方向に移動させる演算制御装置と;を有し、 前記レーザー光投射装置および前記駆動装置を切羽断面手前の位置に設置するとともに、予めその設置座標を知っておき、 座標が既知の別の基準点を前記光波測角測距儀により視準し、この視準による前記設置座標からの測角測距データを得て、 他方で、前記演算制御装置に与えられた計画トンネル線形および計画トンネル断面形状に基づいて、前記切羽断面上における作業基準点を設定し、 前記演算処理装置で前記測角測距データに基づいて前記作業基準点に向けての前記設置座標からの鉛直角度および水平角度を演算し、その鉛直角度および水平角度で前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って、前記作業基準点にレーザー光を投射させ、 順次切羽断面上に作業基準点をレーザー光の照射によるマーキングを行うことを特徴とするトンネル断面のマーキング方法。」を, 「レーザー光を投射するレーザー発振器と光波によって距離を測定する光波測角測距儀とを、前記光波測角測距儀の鏡筒部に前記レーザー発振器を搭載して、レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体としたレーザー光投射装置と; 前記光波測角測距儀を支持して、鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置と; 前記光波測角測距儀からの測角測距データとトンネル形状情報に基づいて前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を鉛直方向および水平方向に移動させる演算制御装置と;を有し、 前記レーザー光投射装置および前記駆動装置を切羽断面手前の位置に設置するとともに、予めその設置座標Pを知っておき、 切羽断面ではないトンネル内に測量により設けられた、座標が既知の別の基準点Oを前記光波測角測距儀により視準し、この視準による前記設置座標Pからの測角測距第1データを得て、 他方で、前記基準点Oとは別に、前記切羽断面に前記光波の反射体8を置き、前記光波測角測距儀から投光され前記反射体により反射された光波を受光することにより前記切羽断面までの距離を測距することによる測角測距第2データにより前記反射体8の座標を得て、前記演算制御装置に与えられた計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状と前記反射体8の座標とに基づいて、前記切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し、 前記演算制御装置において、前記光波測角測距儀により前記基準点Oを視準したときの前記設置座標Pからの前記測角測距第1データに基づいて、前記基準点Oの視準方向に対する、前記複数の発破孔の作業基準点に向けての前記設置座標Pからの鉛直角度および水平角度を演算し、その鉛直角度および水平角度で前記レーザー光投射装置と切羽との間に設けられた操作盤により遠隔操作により、前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って、前記複数の発破孔の設定作業基準点に順次レーザー光を投射させ、 トンネルの曲線区間において、順次切羽断面上に複数の発破孔の作業基準点を順次レーザー光の照射によるマーキングを行うことを特徴とするトンネル断面のマーキング方法。」に訂正する。 〔2〕訂正事項b 特許公報2頁3欄2行の「発破孔などの」を,「発破孔の」に訂正する。 〔3〕訂正事項c 同公報2頁4欄1?26行の「レーザー光を投射する…特徴とする」を, 「レーザー光を投射するレーザー発振器と光波によって距離を測定する光波測角測距儀とを、前記光波測角測距儀の鏡筒部に前記レーザー発振器を搭載して、レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体としたレーザー光投射装置と; 前記光波測角測距儀を支持して、鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置と; 前記光波測角測距儀からの測角測距データとトンネル形状情報に基づいて前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を鉛直方向および水平方向に移動させる演算制御装置と;を有し、 前記レーザー光投射装置および前記駆動装置を切羽断面手前の位置に設置するとともに、予めその設置座標Pを知っておき、 切羽断面ではないトンネル内に測量により設けられた、座標が既知の別の基準点Oを前記光波測角測距儀により視準し、この視準による前記設置座標Pからの測角測距第1データを得て、 他方で、前記基準点Oとは別に、前記切羽断面に前記光波の反射体8置き、前記光波測角測距儀から投光され前記反射体により反射された光波を受光することにより前記切羽断面までの距離を測距することによる測角測距第2データにより前記反射体8の座標を得て、前記演算制御装置に与えられた計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状と前記反射体8の座標とに基づいて、前記切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し、 前記演算制御装置において、前記光波測角測距儀により前記基準点Oを視準したときの前記設置座標Pからの前記測角測距第1データに基づいて、前記基準点Oの視準方向に対する、前記複数の発破孔の作業基準点に向けての前記設置座標Pからの鉛直角度および水平角度を演算し、その鉛直角度および水平角度で前記レーザー光投射装置と切羽との間に設けられた操作盤により遠隔操作により、前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って、前記複数の発破孔の設定作業基準点に順次レーザー光を投射させ、 トンネルの曲線区間において、順次切羽断面上に複数の発破孔の作業基準点を順次レーザー光の照射によるマーキングを行うことを特徴とする。」に訂正する。(但し,末尾の「…特徴とする。」は,「…特徴とする」の誤りと認められる。) 〔4〕訂正事項d 同公報2頁4欄50行の「測距儀7」を,「測距儀6」に訂正する。 〔5〕訂正事項e 同公報3頁5欄3行の「切羽断面2」を,「切羽断面18」に訂正する。 〔6〕訂正事項f 同公報3頁5欄5行の「測距儀7」を,「測距儀6」に訂正する。 〔7〕訂正事項g 同公報3頁5欄15行の「演算処理装置」を,「演算制御装置」に訂正する。 〔8〕訂正事項h 同公報3頁5欄15?16行の「測距儀7」を,「測距儀6」に訂正する。 〔9〕訂正事項i 同公報3頁5欄18行の「作業点」を,「作業基準点」に訂正する。 〔10〕訂正事項j 同公報3頁5欄23?25行の「この場合、光波プリズム8の設置座標は測定したので、これを基準として、第1作業点aにレーザー光を照射することもできる。」を,削除する。 〔11〕訂正事項k 同公報3頁5欄28?30行の「この場合、b点を照射する場合には、a点を既知の基準点とすることにより、再度基準点Oを視準することなく、能率的に順次作業基準点b?c?…を照射できる。」を,削除する。 〔12〕訂正事項l 同公報3頁6欄7行の「設置点」を,「設置座標」に訂正する。 〔13〕訂正事項m 同公報3頁6欄9行の「照射装置」を,「投射装置」に訂正する。 〔14〕訂正事項n 同公報3頁6欄25行の「断面18」を,「断面」に訂正する。 第3.独立特許要件 本件訂正は,本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。 そこで,本件訂正後の請求項1に係る発明(以下,「本件訂正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する。 〔1〕本件訂正後の請求項1に係る発明 本件訂正発明は,訂正審判請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり(上記「第2.〔1〕訂正事項a」を参照。),これを,各構成要件毎に符号(A)?(I)を付し,分節して記載すると,次のとおりである。 「(A)レーザー光を投射するレーザー発振器と光波によって距離を測定する光波測角測距儀とを,前記光波測角測距儀の鏡筒部に前記レーザー発振器を搭載して,レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体としたレーザー光投射装置と; (B)前記光波測角測距儀を支持して,鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置と; (C)前記光波測角測距儀からの測角測距データとトンネル形状情報に基づいて前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を鉛直方向および水平方向に移動させる演算制御装置と;を有し, (D)前記レーザー光投射装置および前記駆動装置を切羽断面手前の位置に設置するとともに,予めその設置座標Pを知っておき, (E)切羽断面ではないトンネル内に測量により設けられた,座標が既知の別の基準点Oを前記光波測角測距儀により視準し,この視準による前記設置座標Pからの測角測距第1データを得て, (F)他方で,前記基準点Oとは別に,前記切羽断面に前記光波の反射体8を置き,前記光波測角測距儀から投光され前記反射体により反射された光波を受光することにより前記切羽断面までの距離を測距することによる測角測距第2データにより前記反射体8の座標を得て,前記演算制御装置に与えられた計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状と前記反射体8の座標とに基づいて,前記切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し, (G)前記演算制御装置において,前記光波測角測距儀により前記基準点Oを視準したときの前記設置座標Pからの前記測角測距第1データに基づいて,前記基準点Oの視準方向に対する,前記複数の発破孔の作業基準点に向けての前記設置座標Pからの鉛直角度および水平角度を演算し,その鉛直角度および水平角度で前記レーザー光投射装置と切羽との間に設けられた操作盤により遠隔操作により,前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って,前記複数の発破孔の設定作業基準点に順次レーザー光を投射させ, (H)トンネルの曲線区間において,順次切羽断面上に複数の発破孔の作業基準点を順次レーザー光の照射によるマーキングを行う (I)ことを特徴とするトンネル断面のマーキング方法。」 (本件訂正発明において,上記(A)?(I)との符号を付した各構成要件を,以下,それぞれ,「構成要件(A)」等という。) 〔2〕引用例とその記載事項 本件訂正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討するにあたって,提示する引用例は,本件訂正審判事件の対象となる本件特許に係る無効審判請求事件(無効2004-35133号)において提示された証拠を援用する(尚,末尾の( )内に,当該事件での証拠番号を示す。)。 1.引用例 引用例1 :特開昭61-262611号公報(甲第1号証) 引用例2 :日本トンネル技術協会誌「トンネルと地下」(第17巻 第9号),日本トンネル技術協会,昭和61年9月1日 発行(表紙,目次,71?78頁「シールド工法の自動 化システム(5)第4章 シールドの方向制御」,奥付) (甲第2号証) 引用例3 :特開昭62-288514号公報(甲第36号証) 引用例4 :秀島好昭編、「農業土木北海道」(第9号),全国農業 土木技術連盟北海道支部,1987年2月28日発行(表 紙,6?9頁「4-1 穿孔位置表示機」,奥付) (甲第24号証) 引用例5 :「測量」(1982年8月号),1982年8月発行(20?23 頁「福知山線第2名塩トンネルにおけるレーザビーム の活用」)(甲第25号証) 引用例6 :トンネル工法ハンドブック編集委員会編,「トンネル 工法ハンドブック」,建設産業調査会,昭和48年9月 10日発行(表紙,目次,1-10頁,1-11頁,1- 19頁,1-22頁,奥付)(甲第26号証) 引用例7 :特開昭62-19712号公報(甲第37号証) 引用例8 :特開昭59-187214号公報(甲第40号証) 引用例9 :実開平1-93510号公報,及び,実願昭62-1 89397号(実開平1-93510号)のマイクロ フィルム(甲第44号証) 引用例10:「測量1989年6月号」,日本測量協会,1989年6月10 日発行(表紙,目次,79?85頁「テクニカル・レポ ート トンネル工事の新しい測量システム」,奥付) (甲第45号証) 引用例11:ライカ,「WILD T1600・TC1600」,セオマットT1600・ タキマットTC1600の取扱説明書(甲第5号証) 引用例12:ライカ株式会社のホームページ(甲第6号証) 引用例13:「Wild GLO2 laser eyepiece」(レーザーアイピース) のカタログ(甲第9号証の1) 引用例14:「照度調整付きレーザーGLO2」(レーザーアイピース) の販売時期に関する証明書(甲第9号証の2) 引用例15:特開昭62-161012号公報(甲第48号証) 引用例16:特開昭63-281012号公報(甲第49号証) 引用例17:特開昭51-6567号公報(甲第50号証) 引用例18:特公昭63-21877号公報(甲第51号証) 2.引用例の記載事項 (1)引用例1(特開昭61-262611号公報)には,「レーザ光利用による自動墨出し装置」について,次の事項が記載されている。 (1a)「2.特許請求の範囲 被測量面に向って絞ったレーザ光束を照射し、照射点を照示するレーザ光照射ガンと、該レーザ光照射ガンを垂直面に沿って仰向方向に旋回駆動する垂直回転側制御回転駆動装置と、該垂直回転側制御回転装置を基台上水平方向に旋回駆動する水平回転側制御回転装置と、上記垂直および水平回転側制御回転装置に対してそれぞれ記憶回路に入力したプログラムにしたがって旋回角を制御するマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータに対して作動信号を発停する受信機と、該受信機に対して操作信号を無線により送信する無線送信式操作機とから構成してなるレーザ光利用による自動墨出し装置。」(1頁左欄4行?右欄3行) (1b)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、測量技術に係るレーザ光利用による自動墨出し装置に関するものである。 〔従来の技術〕 従来より建設工事における墨出し作業はトランシットを使って三角測量するものがほとんどである。 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかし、このトランシット測量においては通常作業者がトランシット側と被計測位置との双方に2名必要であり、これを1名の作業者で測量すると多大な時間と労力を要するものでありはなはだ煩わしいものであった。 本発明は上記問題に鑑みて、建設工事における墨出し作業の省力化を図るとともに高精度な計測を得る墨出し装置を提供することを目的とするものである。」(1頁右欄5行?2頁左上欄6行) (1c)「〔問題点を解決するための手段〕 本発明のレーザ光利用による自動墨出し装置は、被計測地点(たとえば家内外壁面)に向って絞ったレーザ光束を照射し照射点を照示するレーザ光照射ガンと、該レーザ光照射ガンを垂直面に沿って仰向方向自在に駆動する垂直回転側エンコーダ付モータと、該垂直回転側エンコーダ付モータを基台上に水平方向回動自在に駆動枢設する水平回転側エンコーダ付モータと、上記垂直および水平回転側エンコーダ付モータに対してそれぞれ回転角をあらかじめ記憶回路に入力した各種設計プログラムにしたがって指示制御するマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータに対して作動信号を発停する受信機と、該受信機に対して操作信号を無線により送信する無線送信式操作機とから構成したものである。」(2頁左上欄7行?右上欄7行) (1d)「〔作用〕 すなわち測量における墨出し作業に際して、本発明装置はレーザ光照射装置を墨出しを必要とする壁面の前方に設置し、エンコーダ付モータを介してレーザ光照射ガンによりレーザ光束を縦横二次元方向に照射する構造にしたものであり、墨出作業者は被測量壁面に近い位置において無線送信式操作機を持ち、該無線送信式操作機からの信号を受信機を介してマイクロコンピュータのオペレータ信号として入力し、該マイクロコンピュータにより垂直回転側エンコーダ付モータと、水平回転側エンコーダ付モータに対してそれぞれ上記マイクロコンピュータに記憶された墨出し壁面の投光点に相当する回転角を出力する。すなわち、第3図に示すごとく壁面(a)とレーザ光照射ガン(1)の距離をLとすると基点PからL_(1)離れた墨出し点P’はレーザ光照射ガン(1)を変位角 θ=tan^(-1)L_(1)/L 回転せしめて得られるもので、該変位角(θ)を垂直または水平側エンコーダ付モータの回転角によって駆動する。この場合作業者は投光されたレーザ光スポットの近傍位置に待機しており、該スポット位置に印付けをすることにより、順次壁面の墨出し作業を続けることができる。」(2頁右上欄8行?右下欄1行) (1e)「〔実施例〕 以下、本発明レーザ光利用による自動墨出し装置の一実施例を図面にしたがって説明すると、第1図は装置全体のシステムを示す略斜視図、第2図は同ブロックダイヤグラム、第3図は測量演算原理を示す説明図である。符号(1)は可視レーザ光線(B)を光軸(X)方向に発射するレーザ発光器(1a)を備えたレーザ光照射ガンであり、該レーザ光照射ガン(1)は二個のエンコーダ付モータ(2)(3)を介して基台(4)上に枢設され、三次元の自由度を持つもので、レーザ光照射ガン(1)を仰向方向に駆動する垂直回転側エンコーダ付モータ(2)を、基台(4)上に水平方向回動自在に駆動枢設する水平側エンコーダ付モータ(3)を介して枢着してなる。上記垂直および水平側エンコーダ付モータ(2)(3)はそれぞれマイクロコンピュータ(5)によりフィードバック制御されるものであり、該マイクロコンピュータ(5)にはあらかじめ図面等から墨出し位置のデータが入力されており、レーザ光照射ガン(1)の位置入力値との演算により該マイクロコンピュータ(5)から照射位置に相当する駆動角度(θ_(1))(θ_(2))を両エンコーダ付モータ(2)(3)にそれぞれ出力するようになる。上記マイクロコンピュータ(5)は無線受信機(6)からの作動信号により、所定値を出力するようになり、該無線受信機(6)は無線送信式操作機(7)からのオペレータ信号を無線により受信する。 したがって作業者はたとえば屋内壁面(a)前方にレーザ光照射ガン(1)を設置し、無線送信式操作機(7)を携帯するとともに、該無線送信式操作機(7)から操作しながら絞ったレーザ光束(B)により壁面(a)上に照示された照射点(P’)により墨出しを行なうものであり、トンネル工事における発破装薬位置のパターンを表示したり、建築内装工事における壁面の墨出しを行なう等、種種の墨出しをマイクロコンピュータ(5)の記憶入力を変えるだけで行なうことができる。」(2頁右下欄2行?3頁右上欄9行) (1f)「〔発明の効果〕 以上述べたごとく本発明のレーザ光利用による自動墨出し装置は、作業者が1名で壁面における墨出し作業を行なうことができるとともに、マイクロコンピュータの演算により基点に対して墨出し点の相対位置をきわめて正確に決定するようになり、高精度の墨出し作業を短時間に行なうことができる。また本発明では壁面装飾等の墨出し作業において、壁面に直接レーザ光像を描くことができ、壁面上のイメージを得ることができる等の特徴を有し、本発明の効果はきわめて大きい。」(3頁右上欄10行?左下欄5行) (1g)そして,上記(1d)の「作業者は投光されたレーザ光スポットの近傍位置に待機しており、該スポット位置に印付けをすることにより、順次壁面の墨出し作業を続けることができる」との記載によれば,レーザ光照射ガン(1)により被測量壁面上にレーザ光スポットの照示位置に印付けされる墨出し点(照射点)(P’)は,複数あって,順次印付けされるものであることは明らかである。 上記記載事項(1a)?(1g)及び当業者の技術常識からみて,引用例1には,次の発明(以下,「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「(a)可視レーザ光線(B)を光軸(X)方向に発射するレーザ発光器(1a)を備え,被測量壁面に向ってレーザ光を照射し発破装薬位置の墨出し点(P’)を照示するレーザ光照射ガン(1)と, (b)このレーザ光照射ガン(1)を垂直面に沿って仰向方向に旋回駆動する垂直回転側エンコーダ付きモータ(2)と,該垂直回転側エンコーダ付きモータ(2)を基台(4)上水平方向に旋回駆動する水平回転側エンコーダ付きモータ(3)とを備えた駆動装置と, (c)上記駆動装置の垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)に対して,予め記憶回路に図面等から墨出し位置のデータが入力されて,トンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターンを表示する設計プログラムにしたがって,それぞれの駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))を指示制御するマイクロコンピュータ(5)とを有し, (d)前記レーザ光照射ガン(1)並びに垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を備えた駆動装置を被測量壁面の前方で被測量壁面上の基点(P)から距離(L)離れた位置に設置し, (f)前記マイクロコンピュータ(5)の記憶回路に予め入力された図面等からの墨出し位置のデータに応じたトンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターンとレーザ光照射ガン(1)の位置入力値とに基づいて,前記被測量壁面上における基点(P)に対する複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)の相対位置を決定し, (g)前記マイクロコンピュータ(5)において,前記被測量壁面上の複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)に向けての前記レーザ光照射ガン(1)の照射位置に相当する駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))を演算し,その駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))で無線送信式操作機(7)により,前記駆動装置の垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を作動させて,前記被測量壁面上の基点(P)の位置から前記被測量壁面上の複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)に相当する駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))にレーザ光照射ガン(1)を駆動しながら,被測量壁面上の複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)に順次レーザ光を照射し, (h)順次被測量壁面上に複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)の墨出し作業を順次レーザ光を照射しながら行う (i)トンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターン表示方法。」 (2)引用例2(「トンネルと地下」(第17巻第9号),71?78頁「シールド工法の自動化システム(5) 第4章 シールドの方向制御」)には,次の事項が記載されている。 (2a)「シールドの掘削においては,あらかじめ定められた掘進計画路線に沿ってシールドを進めなければならない.… シールドの方向制御にあたっては,まず,シールドを測量し,計画路線に対する変位と傾きを求め,計画路線に近づくように掘進方向を調整する.通常の測量方法は,トランシットやレベルなどの光学測量機で,後方の基準点からシールドを視準して測定する.」(71頁左欄2?13行) (2b)「4-1-1 自動測量方法 計画路線に対するシールドの変位や傾きを求めるうえで,線形が直線であればトランシットの視準線や,レーザ光を計画路線と平行に設定し,その線とのずれをシールドの位置で測定すれば容易に求めることができる.線形が曲線の場合には,計画路線と平行に視準線や光線の設定は不可能なので,ずれを直接的に求めることはできない.したがって,シールドの位置と傾きは,立坑の基準点などを基準とする座標上の点と方位としてあらわし,ずれは,この座標に設定する計画路線との差として計算により求めることになる.」(71頁右欄24?34行) (2c)「光学装置を用いる方法は,曲線を直線の線分に置き換え,光学測定装置を用いて各線分の長さと互いの角度を測定して座標基準点に対するシールドの位置と方位を求める(図-3参照).光学式のうち,旋回レーザ方式では,シールドにもっとも近い基準点に旋回式レーザ装置を置き,シールドの測定基準点に向けてレーザ光を投射するときの光の方向を測定し,また,光波距離計で,この2点の距離を測定するようになっている.」(72頁左欄23行?右欄1行) (2d)「光学的測量の方法」を示す「図-3」には,曲線を進行するシールドの掘進に伴って,測距・測角部が設置される基準点が順次更新され,また,シールドの方位を検出する際に用いるレーザ光軸の基準方位(レーザ装置の設置点と後方基準点とを結ぶ線の方向)が順次更新されることが記載されている。 (2e)「4-1-2 旋回レーザ方式 旋回レーザ方式の装置構成の一例を図-4に示す.シールドの後方基準点に光波距離計を搭載したレーザトランシット(写真-1参照)を設置し,シールドに取り付けた受光器にレーザ光を投射する.レーザ光が受光器を常に捕捉するため,受光信号によりレーザトランシットの振り角駆動モータを作動し,受光器を追尾するように制御している.この水平方向および鉛直方向の振り角を読み取り,出力する.また,光波距離計で受光器に取り付けた反射器との距離を測定し,出力する.受光器にはターゲットが内蔵され,ターゲット上に受光した光点の位置を電気的に検出し,出力する.このターゲットは,光軸方向に前後の2か所で受光できるようになっている.この2つの光点の位置の差は,光軸に対する受光器の傾きを示す.これらのデータは,データ処理装置に送られ,シールドの座標値と方位が算出される. レーザ光軸の基準方位は,レーザ装置の設置点と,後方基準点を結ぶ線の方向なので,後方基準点にも受光器を設置しておく.この基準点の測定は,レーザトランシット位置の定期的な検査時や,シールドの進行に伴うレーザトランシットの移動時などに行う. レーザ旋回装置はレーザトランシットをベースに,旋回駆動機構や光波距離計の搭載などを付加した構造であるが,このほかに専用の旋回機構をもつものや,ジャイロコンパスを搭載したものなどがある.」(72頁右欄27行?73頁左欄25行) (2f)「旋回レーザ方式の装置構成」を示す「図-4」には,レーザ光の光軸と光波距離計の光波の光軸が,シールドの受光器と距離計反射器の間隔と同一の間隔を保ちつつ,平行になっている態様が模式的に示されている。 (2g)「測定器からの計測データは,コンピュータにより処理される.この処理は,図-5のようにあらかじめ入力設定されている計画路線と計測データをもとに,計画路線に対する変位と傾きを計算し,結果を図表化して示す.」(73頁右欄3?11行) (2h)データ処理装置(コンピュータ,演算制御装置)による「測量データの処理フロー」を示す「図-5」には,「[計測データ(変換器入力)]→[シールドの座標の計算]→[シールドの変位,傾きの計算]→[計算結果の出力(表示,記録装置)]」で制御ループが形成されているとともに,「[計画路線データ(キーボード入力)]→[計画線座標の計算]→」という制御ステップが上記制御ループの[シールドの変位,傾きの計算]に入力され,また,「[基準点データ(キーボード入力)]→」という制御ステップが上記制御ループの[シールドの座標の計算]に入力されることが記載されていることからすると,データ処理装置に座標基準点の位置データが座標データとして入力され,データ処理装置において座標基準点の座標が既知であることは自明である。 (2i)「4-3 方向制御 シールドの方向を制御するためには,シールドの位置を測量してシールドと計画線との相対位置およびシールドの姿勢を求め,次にトンネルの計画線にそって掘進するための方向修正量を解析する.そして,解析より得た目標方向にシールドが向くように推進ジャッキを選択し,方向を制御することが必要である.」(74頁右欄15?21行) 上記記載事項(2a)?(2i)及び当業者の技術常識からみて,引用例2には,次の発明(以下,「引用例2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「トンネルの曲線区間において,曲線を直線の線分に置き換え,各線分の長さと互いの角度を測定して座標基準点(測距・測角部)に対するシールドの座標と方位とを算出して,あらかじめデータ処理装置に入力設定されている曲線状の計画路線に沿うようにシールドの掘進方向を制御する,トンネルのシールド工法における旋回レーザ方式の自動化システムであって, シールドの掘進に伴って順次更新され,シールドの後方にあってシールドにもっとも近い座標が既知の上記座標基準点に,レーザートランシットのレーザ光の光軸と光波距離計の光波の光軸とが平行になるように,レーザートランシットに光波距離計が搭載されて,ひとまとまりの装置として一体となった光波距離計付きレーザートランシットを設置し, シールドの背面に,反射器が一体的に取り付けられた受光器を,測定基準点として配置し, 光波距離計付きレーザートランシットは,旋回駆動機構により,レーザートランシットのレーザ光が上記受光器を常に捕捉するとともに,光波距離計からの光波が上記反射器を捕捉するように構成されており, レーザートランシットからシールドの上記受光器に向けてレーザ光を投射するときの光の方向を測定するとともに,光波距離計で上記座標基準点から上記反射器までの距離を測定することにより,上記シールドの座標と方位とを算出して,上記曲線状の計画路線に対するシールドの変位を求め, トンネルの曲線区間において,シールドの上記変位に基づいて,シールドの方向修正量を解析し,解析から得た目標方向にシールドが向くようにその方向を修正制御して,シールドの掘進方向を上記曲線状の計画路線に沿うようにした, トンネルのシールド工法における旋回レーザ方式の自動化システム。」 (尚,上記下線部の認定は,本件特許に係る無効審判請求事件についての知財高裁平成17年(行ケ)第10325号判決の,「甲2(当審注:引用例2のこと。以下同様。)記載の装置のレーザートランシットのレーザ光の光軸と,光波距離計の光波の光軸とは平行に設定されていると認められるので,甲2の装置は,『レーザー光の光軸と光波の光軸が平行になるようにしたレーザー光投射装置』であるということができる。」(27頁2?5行を参照。)との判示,及び,「甲2記載の光波距離計付きレーザートランシットは,レーザートランシットに光波距離計が搭載され,ひとまとまりの装置として構成されたものであるということができるので,構成要件(A)の『一体とした』との要件を充足するというべきである。」(同頁17?20行を参照。)との判示に沿うものである。) (3)引用例3(特開昭62-288514号公報)には,「測量装置」について,次の事項が記載されている。 (3a)「2.特許請求の範囲 (1)発光部からの光を測点に配置した反射鏡を介して受光し、測点までの距離を測定する測距部と、 望遠鏡の視準方向の角度を測定する測角部と、 各地点のデータを記憶しているメモリ部と、 上記メモリ部に記憶されているデータに基づいて測量に必要な測量データを所定の順序で演算する演算部と、 上記測距部及び上記測角部の測定結果並びに上記演算部で求められた測量データに応じた表示を行なう表示部と、 上記表示部で距離に関する測量データに応じた表示を行なうときに測距モードを設定し、上記表示部で距離に関する測量データに応じた表示を行なうとき以外には、測距モード以外のモードを設定するモード設定部とから構成されていることを特徴とする測量装置。」(1頁左欄4?最終行) (3b)「(産業上の利用分野) 本発明は、地図上に表わされた各地点としての各点を現地に測設するため等に用いる測距機能及び測角機能を有する測量装置に関する。」(1頁右欄2?5行を参照。) (3c)「第1図は、本発明に係る測量装置の外観を示した図であり、この第1図には測距・測角を行なう本体1と本体1にケーブル2で接続されて使用されるデータコレクタ100とこのデータコレクタ100を支持する三脚3とが示されている。 本体1は、三脚3に取付けられる基板4と基板4に対し鉛直軸回りに回転可能な托架部5と托架部5に対し水平軸回りに回動可能な望遠鏡6を有する望遠鏡部7とで構成されている。」(2頁左下欄2?10行) (3d)「第3図は、本体1に内蔵されている回路のブロック図を示し、この回路は、主として測距部20、水平測距部(当審注:「水平角測定部」の誤り。)40、高度角測定部60、第1制御部80、第1メモリ81から構成され、上記の第1表示器82及び第1操作部83は、第1制御演算部80に接続されている。 測距部20は光源である発光素子21からの光を測点に配置された反射鏡9を介して受光素子24によって受光し測点までの距離を求めるものである。」(2頁左下欄18行?右上欄6行) (3e)「水平角測定部40は、基板4に対する托架部5の回転角をインクリメンタル式エンコーダによって測定する。」(3頁左下欄11?13行) (3f)「高度角測定部60は、托架部5に対する望遠鏡部7の回転角をインクリメンタル式エンコーダによって測定する。」(4頁右上欄2?4行) (3g)「以上のように説明した水平角測定部40と高度角測定部60とは、測角部として動作し、また、第1制御演算部80はデータコレクタ100を接続した場合にモード設定部として動作する。 この実施例では、水平角測定部40、高度角測定部60をインクリメンタル式エンコーダにより構成しているため、本体1がいずれのモードになっていようとも、測定動作を継続するように構成される。… なお、本体1は、データコレクタ100を接続しない場合でも、本体1それ単体で、測量者が第1操作部83によって適当なモードを選択することによって、測点までの距離、水平角、高度角の測定が行われ、必要なデータは、第1メモリ81に記憶される。」(4頁左下欄9行?右上欄6行) (3h)「第4図は、データコレクタ100の回路のブロック図を示し、このデータコレクタ100は、主として、第2制御演算部101、第2メモリ102、プログラムメモリ103、第2表示器104、第2操作部105、インターフェイス106から構成されている。 第2メモリ102には、測量者が第2操作部105から入力した測量対象の点名データ、点データ、プログラムメモリに記憶されているプログラムに基づく演算によって求められた測量データ、ケーブル2によって、本体1から送られてきたデータ等の各種データが第2制御演算部101によって記憶され、読み出される。 プログラムメモリ103には、標準的な測量作業に必要な測量データを測量作業の工程に従って演算し、かつ、求めるための各種測量プログラムが記憶されている。 第2制御演算部101は、第2操作部からの測量者の指令又はプログラムメモリ103に記憶されている測量プログラムによって、第1制御演算部80を介して本体1のモードの切り換え、測定結果の表示等の各種制御、第2メモリに記憶されている各種データから測量プログラムに従って測量に必要な測量データの演算等の各種演算を行なう。」(4頁右下欄7行?5頁左上欄9行) (3i)「第5図は、本体1とデータコレクタ100を接続し、測量プログラムの一つとしての測設プログラムを実行した場合のフローチャートを示している。 ここで、フローチャートの説明は、後述することにし、まず、測設作業について第6図の図面を参照しつつ簡単に述べる。 現地に既に測設され、かつ、地図上に記載された若しくは座標が与えられている既知の地点ととての既知点を点A、点Bとし、また、点Aと点Bとを結ぶ線上の方向Xを基準方向として定めた水平角H_(1)、H_(2)、及び点Bを基準として定めた水平距離HD_(1)、HD_(2)で示される測設点(測点)を点C、点Dとする。 ここで、測量装置を点Bに設置して点Aを規準し、水平角をゼロセットした後、水平角H_(1)方向を規準し、水平距離HD_(1)の距離の地点を求め、これを測設点Cとし、以下、同様にして測設作業を進めるものである。」(5頁左上欄10行?右上欄7行) (3j)「測設プログラムが開始されると、第5図に示すように、ステップS_(1)に移行し、第1制御演算部80を介して、本体1のモードを水平角測定モードに切り換え、ステップS_(2)に移行する。… ステップS_(2)においては、既知点及び測設点の地点データとしての点名とこの点名に対応する地点データとしての座標データを、測量者が第2操作部105により入力する。この既知点及び測設点の点名とこの点名に対応する座標データの入力は、外部記憶装置に記憶されているデータをインターフェイスを介して送り込むことにより行なうこともできる。 この入力された地点データは、第2メモリ102に記憶される。このデータの入力が終了すると、…ステップS_(3)に移行する。 … ステップS_(3)においては、測設作業が行われる現地点名を入力し、この現地点名の入力が終了すると、…ステップS_(4)に移行する。 現地点名は、測設作業が行われる地域を示す名称で、入力された地点データのうち、この現地点名の地域の測設に必要な座標データを抽出するために使用される。 ステップS_(4)においては、機械点ナンバーNOの入力が行われ、…ステップS_(5)に移行する。 機械点ナンバーNOは、測量装置を据付る地点(以下、機械点という)のナンバーNOであり、… ステップS_(5)では、後視点ナンバーNOの入力を行ない、…ステップS_(6)に移行する。 後視点ナンバーNOとは、機械点と組み合わせて測量の基準方向を形成するための地点(以下、後視点という)の番号である。この測量の基準方向を形成するための後視点点は、第6図の例においては、点Aでり、機械点は点Bである。 ステップS_(6)では、ステップS_(5)において入力した後視点ナンバーNOの後視点を望遠鏡6で視準し、視準が完了すると、ステップS_(7)に移行する。 ステップS_(7)では、後視点の視準方向を角度0°に設定するために、第1操作部83又は第2操作部105の〈SET〉キーを操作することによって、水平角のゼロセットを行ない、…ステップS_(8)に移行する。このステップS_(8)では、測設点ナンバーNOの入力が行われ、…ステップS_(9)に移行する。 この測設点ナンバーNOとは、現地に測設する測設点の番号であり、第6図の例においては、点C、Dが該当する。 ステップS_(9)では、機械点及び機械点と後視点とで形成する基準方向に基づいた測設点への水平角H及び水平距離HDを第2メモリに記憶されたデータから演算して求め、…ステップS_(10)に移行する。 … ステップS_(11)では、測量者がステップS_(10)で表示された水平角Hになるように望遠鏡部7を回転させ、セットする。 … まず、ステップS_(12)では、第1制御演算部80を介して本体1のモードを測距モードに切り換え、ステップS_(9)で求められた水平距離HDをオフセット値として、第1制御演算部80に送信し、第1制御演算部80では、本体1が測定した反射鏡までの距離を測距モードで…測定し、オフセット値としての水平距離HDとの差分を第1表示器82で表示させ、ステップS_(13)に移行する。 ステップS_(13)では、第1表示器83で表示されている差分表示が「0」となる方向に、反射鏡9を設けたポールを移動させ、概略位置合せを行なって、ここで、測量くいを打ち込む。これが、終了すると、…ステップS_(14)に移行する。 … ステップS_(14)では、…精密測距モードが設定される。そして、その測距結果とオフセット値との差分が、粗測距モード設定時のそれと同様に表示される。 ここでは、…測量者はこの精密測距モードにおいて表示された表示値を目視しながら、ステップS_(13)において打ちこんだくいの頭部に釘を打ち込む等の作業を行なって測設点位置を示すマークをつけて、精密位置合せが終了する。…ステップS_(16)では、ステップS_(4)で入力された機械点に対する測設すべき点(測点)を全て測設したか否かを判断する。 … また、入力した機械点に対する全ての測設が終了していれば、ステップS_(18)に移行するステップS_(18)では、全ての機械点に対する測設が終了したか否かを判断する。 ここで、…全ての機械点についての測設が終了すれば、測設作業が終了したことになる。 以上の通り、第2制御演算部101は、演算部の役割を果たしている。 なお、高度角に対しても、同様のフロチャートに従って測設が行なわれる。」(5頁右上欄8行?6頁右下欄12行) 上記記載事項(3a)?(3j)及び当業者の技術常識からみて,引用例3には,次の発明(以下,「引用例3記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「三脚3に取付けられた基板4と,基板4に対し鉛直軸回りに回転可能な托架部5と,托架部5に対し水平軸回りに回動可能な望遠鏡6を有する望遠鏡部7とで測距・測角を行う本体1を構成し,本体1内の回路には,光源である発光素子21からの光を測点に配置された反射鏡9を介して受光素子24によって受光し測点までの距離を求める測距部20と,基板4に対する托架部5の鉛直軸回りの回転角を測定する水平角測定部40及び托架部5に対する望遠鏡部7の水平軸回りの回転角を測定する高度角測定部60からなって望遠鏡6の視準方向の角度を測定する測角部とを備え,測距機能及び測角機能を有する測量装置を用いて,地図上に表わされた地点を現地に測設する方法であって, 現地に既に測設され地点データとして座標データが演算部に与えられている既知の地点を既知点A,Bとし,既知点A,Bを結ぶ線上の方向Xを基準方向として定めた水平角H_(1),H_(2)と既知点Bを基準として定めた水平距離HD_(1),HD_(2)とで示され地点データとして座標データが演算部に与えられている測設点C,Dを順次求めるに際し,既知点Bを機械点としてここに測量装置を設置し,既知点Aを後視点として機械点(B)から後視点(A)を視準し,後視点(A)の視準方向を角度0°に設定して,水平角のゼロセットを行い,その後,機械点(B)及び機械点(B)と後視点(A)とで形成される基準方向に基づいたそれぞれの測設点C,Dへの水平角H_(1),H_(2)及び水平距離HD_(1),HD_(2)を演算部に記憶された座標データから演算して求め,それぞれの測設点C,Dに対応するように基板4及び托架部5を作動させて測量装置を振って,水平角H_(1),H_(2)方向を規準し,水平距離HD_(1),HD_(2)の距離の地点を求め,また,高度角に対しても同様の作業を行って,測設点C,Dを現地に測設するようにした測設方法。」 (4)引用例4(「農業土木北海道」(第9号),6?9頁「4-1 穿孔位置表示機」)には,「現在多く用いられている,切羽へのマーキング方法は,レーザービームを断面に応じ数個所設置し,その点を定規でマーキングする方法を採用している。この方法は,直線のトンネルでは有効であるが,曲線のトンネルでは問題が多い。本システムの開発は,レーザー光が,拡散しにくく遠方まで到達することを利用して,レーザー光の方向を高精度に制御することにより,切羽に短時間で穿孔位置を表示し,…」(6頁,「開発の目的」を参照。)と記載され,「レーザートランシットの,上下角,水平角の調整用,送りネジにギアを装着し,レーザー発振器の向きを2軸(X軸,Y軸)に回転させることによりレーザー光の方向を制御する。…」(同頁,「システムの概要」を参照。)と記載され,「レーザートランシットは,トンネルのほぼセンターに設置し,さらにターゲットを設ける。…次に各々の距離,高さ及び視準角を求めマイコンにインプットすると,自動的に切羽でのレーザーと,トンネルセンター及びSL(当審注:トンネルセンター)からの離れXYを計算しプリントする。…」(7頁,「レーザートランシットの設置」を参照。)と記載され,「あらかじめマイコンにはトンネルの軌道をプログラムしておき,マーキング時にデータとして切羽の位置,X,Y,穿孔パターンを与えてやる。これで準備は終了し,切羽で送信機のスイッチを押すたびに,切羽上にレーザーが穿孔位置を次々に表示する。そして,これを作業員がペンキでマーキングしていく。」(同頁,「穿孔位置の表示(マーキング)」を参照。)と記載されている。 (5)引用例5(「測量」(1982年8月号),20?23頁「福知山線第2名塩トンネルにおけるレーザビームの活用」)には,鋼製支保工を使用しない「NATM」工法において,レーザービームを利用する主な作業として,「2-1 レーザビームの配置 発破掘さくに伴う掘さく線の明示,および,発破孔,せん孔位置,せん孔方向確認」(21頁,「2.レーザビームの適用」を参照。)と記載されている。 (6)引用例6(「トンネル工法ハンドブック」,1-10頁,1-11頁,1-19頁,1-22頁)には,「レーザー測量機」が,「セオドライトTM-20Aに組合わせたものは,角度測定による位置決め、方位測定、杭打作業などに。」(1-10頁を参照。)使用されると記載され,「LTSレーザトランシット装置」が,「肉眼で確認できる、He-Neガスレーザの赤色光をAfocalレンズ系により細い光の線として、それを基準線として設定し、作業しながら工事をチェックできます。」,「トンネルや水路、側溝の掘削工事、パイプ敷設、整地などの土木工事…などに、作業能率の向上、省力化によるコスト低減に大きな役割を果たします。」,「【特長】…2 視準線とビームがつねに同一芯上に一致しており、視準点に最小のスポットでビームが集光します。」(1-11頁を参照。)と記載され,「レーザ位置決め装置 LAG-500シリーズ」が,「…トンネル掘削シールド工法・杭打作業などの土木工事などにおける各種測定・芯出し・基準設定・けがき・位置決めなどに使用できます。」と記載され,そのうちの「LAG-501型:レーザトランシット」が,「He-Neガスレーザとトランシットを組み合わせたものでトランシットの望遠鏡を通してレーザビームを出し、望遠鏡の視準点にビームをあてることができます。」(1-19頁を参照。写真からは,望遠鏡にレーザ管が搭載された態様のものがみてとれる。)と記載され,「土木工事用レーザ機器」である「勾配用レーザレベルEL-M型」が,「RCA社製レーザ器とNIKONレベルE6型とを組み合わせて、レーザビームによる水平基準線設置に用いるばかりでなく、さらに俯仰角を与えて勾配基準線の設置の機能を備えたもので、鉄道工事・トンネル掘削・下水道管工事などの諸工事用に適す。」(1-22頁を参照。)と記載されている。 (7)引用例7(特開昭62-19712号公報)には,「位置決め方法」について,次の事項が記載されている。 (7a)「2.特許請求の範囲 (1) (a)基礎となる2点以上の基準点の位置を座標情報として与える。 (b)電子測量機を建設現場の任意位置においたうえ前記基準点に設置の反射鏡を視準して当該電子測量機の座標を求める。 (c)求めるポイントとしての目標点の位置を座標で与えると共に,該電子測量機から視準点として該目標点の近くに目当をつけて置かれた反射鏡の座標を求める。 (d)当該視準点の目標点との間のずれを求めて表示し,視準点移動指示をする繰返しで当該ずれをなくしていく。 との行程よりなることを特徴とする位置決め方法。 (2) (a)目的に合ったプログラムに応じて演算が出来,データや計算結果等を表示したり,メモリー機能を有し,携帯に便利な小型のコンピュータに基礎となる2点以上の基準点の位置を座標情報として与える。 (b)電子測量機を建設現場の任意位置においたうえ前記基準点に設置の反射鏡を視準して当該電子測量機の座標を求める。 (c)求めるポイントとしての目標点の位置を座標で与えると共に,該電子測量機から視準点として該目標点の近くに目当をつけて置かれた反射鏡の座標を求める。 (d)当該視準点の目標点との間のずれを求めて表示し,視準点移動指示をする繰返しで当該ずれをなくしていく。 との行程よりなることを特徴とする位置決め方法。 (3)CAD等の予じめ他の目的で既に求められた三次元位置情報のデータをプログラムで転送することで目標点の座標を与えるとした特許請求の範囲第2項に記載の位置決め方法。」(1頁左欄4行?2頁左上欄1行) (7b)「「産業上の利用分野」 この発明は建物の図面上で表示された建物の通り芯,墨出しポイント等の各種データを現地に出す位置決め方法に関する。」(2頁左上欄3?6行) (7c)「「従来の技術」 建設,土木工事等において,設計図書に記載された位置情報を現地にマーキングする墨出作業は,全ての作業のもととなるものであり,…図面化,あるいは,数表化された位置情報のあるポイントを,現地に,定めるためには,… すなわち,図面上で表示された各種データ(通り芯,墨出しポイント等)は,狭少範囲・単純形状構造物では各種測量機器(セオドライト・レベル・テープ等)の組合せにより測定者が図面を現地で解読しながらその作業を行っている。 また,大規模構造物・曲線を有する構造物等の三次元測量は,事前に内業により計算値をコンピュータ・手計算等で求め,外業(現地)にて各種測量機器(光波距離計・セオドライト・レベル・測量テープ等)の組合せにより多大な労力を掛け,その値を現地に出す方法が一般的である。」(2頁左上欄7?右上欄6行) (7d)「「発明が解決しようとする問題点」 しかして,叙上の従来のやり方によるならば,現地に出したいデータの値を直接出すのでなく,測角・測距及び鉛直(レーザ・さげ振り)等の組合せにより出すため求めるポイントまでの各段階での誤差の集積があり,又,高さ関係を含めるには,作業工数の増加,精度の低下が問題であり,…」(2頁右下欄1?7行) (7e)「…位置決め行程をば,(a)基礎となる2点以上の基準点の位置を座標情報として与える。(b)電子測量機を建設現場の任意位置においたうえ前記基準点に設置の反射鏡を視準して当該電子測量機の座標を求める。(c)求めるポイントとしての目標点の位置を座標で与えると共に,該電子測量機から視準点として該目標点の近くに目当をつけて置かれた反射鏡の座標を求める。…にて構成するとして,基礎となる基準点から直接的に割り出しすることを特徴とした図面等より必要なデータ(墨出しポイント等)を現地に出す建築的測量のより簡便な測量システムを実現させた点にある。 … すなわち,上述本発明各行程を詳述すると,「基礎となる2点以上の基準点の位置を座標情報として与える。」とは,墨出しの基礎となる2点以上の基準点を三次元位置情報に変換し座標情報として促えるということで,当該基準点は従来と異なり視準可能であれば電子測量機と同一平面上にある必要はない。 又、この2点以上の基準点は建設進行に伴ない,都合のよい好適な個所,例えば逐次座標情報として促えられる安定した構築途上の適宜個所に変更することが出来る。 「電子測量機を建設現場の任意位置においたうえ前記基準点に設置の反射鏡を視準して,当該電子測量機の座標を求める。」とは,連続した光波列を発射させ,該光を視準点に設置した反射鏡により元に反射させて受光し,該受光された光列を電気信号に変換し,時間制御により距離を算出する測距部と上記視準点を照準する望遠鏡の水平回動又は俯仰運動に連動させたロータリーエンコーダにより視準点までの水平角又は天頂角を電気的に測定する測角部を有する。…所謂電子測量機を,建設現場の任意位置に設置し,前記基準点に設置の反射鏡を視準して,その座標を後方交会法にて求めるということである。 … 「求めるポイントとしての目標点の位置を座標で与えると共に,該電子測量機から視準点として該目標点の近くに目当をつけて置かれた反射鏡の座標を求める。」とは,位置決めしたいポイントとしての目標点を座標上に与え,この位置に…目当をつけて置かれた反射鏡をとりあえず視準点として,その座標位置を電子測量機との相関関係から求めるということである。 上記の目標点を座標上に与える際のデータは…他の目的で既に求められた電算機の三次元位置情報を利用するとしてもよい。」(3頁左上欄9行?右下欄17行) (7f)「…視準点(反射鏡)C,測量機座標P,目標点の位置Bは,第4図に示す如く,直角座標で示されているが,目標点Bに反射鏡Cを置こうとする場合,目標点B近くに反射鏡Cを置き,測定して,反射鏡Cと目標点Bのズレを表示させることが必要である。 …尚図中1,2は基準点を示す。 上記した一連の行程は目的に合ったプログラムに応じて演算が出来,データや計算結果等を表示したり,メモリー機能を有し,携帯に便利な小型のコンピュータと電子測量機を組み合わせることにより,現場でリアルタイムで位置決めすることが可能となる。 以上の如く,本発明は,全てのデータを座標情報で促え,この中で電子測量機の機能を存分に活用することによって,基礎となる基準点からの大巾な直接的割り出しを可能としたため,既述した従来の諸難点を全く解消した。」(4頁左上欄6行?右上欄13行) (7g)そして,第1図には,本システムに用いられる「電子測量機」が「トータルステーション」(測角・測距儀)であることが記載されている。 (8)引用例8(特開昭59-187214号公報)には,「被測量物体の位置検出方法」について,次の事項が記載されている。 (8a)「2.[特許請求の範囲] (1)被測量物体の位置を検出する方法であって、前記被測量物体を見通すことができる位置に基準点を設定しかつ該基準点から見通すことができる位置に三つの既知点を設定し、次いで前記基準点および前記各既知点を結ぶ線と前記基準点を含む任意の基準線との成す角度、前記基準点および前記被測量物体を結ぶ線と前記基準線との成す角度、前記基準点と各既知点との間の距離、および前記基準点と前記被測量物体との間の距離を、それぞれ、測量することにより前記被測量物体の位置を求める、被測量物体の位置検出方法。 (2)前記角度および前記距離の測量は、前記基準点に、直交する二つの軸線の回りに回転可能の可動鏡を、前記基準点へ向けて発光器と光検知器と光波距離計とを備える測量装置を、および前記既知点と前記被測量物体とに前記基準点へ向けて反射鏡を、それぞれ、設置して行う…方法。」(1頁左欄4行?右欄2行) (8b)「3.[発明の詳細な説明] 本発明は、被測量物体の三次元位置検出方法に関し、特にシールド掘削機やトンネルボーリングマシンのような被測量物体の三次元座標を特定するのに適する位置検出方法に関する。 シールド掘削機、トンネルボーリングマシン等のトンネル掘削機においては、近時、その運転の自動化が促進され、掘削能率の向上が図られているが、トンネル掘削機のこのような高能率性は、トンネル掘削機の掘進方向を常に監視してトンネル掘削機が計画路線に沿って進むようにこれを制御することにより維持される。 したがって、本発明の目的は、被測量物体の進行方向の監視に好適な、被測量物体の位置検出方法を提供することにある。 本発明に係る被測量物体の位置検出方法は、予め三次元座標が特定された三つの既知点を設定しかつ該既知点および被測量物体の双方を見通すことができる位置に基準点を設定した後、該基準点および各既知点を結ぶ線と前記基準点を含む任意の基準線との成す角度、および前記基準点と各既知点との間の距離を測量し、かつ前記基準点および前記被測量物体を結ぶ線と前記基準線との成す角度、および前記基準点と前記被測量物体との間の距離を測量することにより前記被測量物体の三次元座標位置を求めることを特徴とする。 本発明によれば、例えば被測量物体がシールド掘削機の場合、その計画路線を予め前記シールド掘削機の位置が表示される座標系に表示しておけば、前記シールド掘削機が前記計画路線に沿って進んでいるか否かを視覚的に確認することができ、また、三次元座標上に表示されたシールド掘削機の表示点が前記計画路線の表示線から変位しているとき、その変位量は演算によって容易に求めることができる。さらに、前記計画路線に曲線部が含まれているか否かに関係なく被測量物体の三次元座標位置を求めることができる。」(1頁右欄9行?2頁右上欄5行) (8c)「まず、第1図に示すように、被測量物体10、例えばトンネル11内のシールド掘削機、を見通すことができる位置に基準点Oを設定しかつ該基準点から見通すことができる位置13、例えばシールド掘削機の起点となる竪坑、に三つの既知点A,B,Cを設定する。 このとき、被測量物体10および既知点A,B,Cのそれぞれに、反射鏡12(第3図)を基準点Oに向けて設置し、また、基準点Oに互いに直交する軸線の回りに回転可能の可動鏡14(第3図)を設置しかつ該可動鏡へ向けて測量装置16(第3図)を設置する。 … 反射鏡12、可動鏡14および測量装置16の設置後、基準点Oを含む後述の任意の基準線と各既知点A,B,Cおよび基準点Oを結ぶ直線との成す角度、前記基準線と基準点Oおよび被測量物体10を結ぶ直線との成す角度、基準点Oと各既知点A,B,Cとの間の距離および基準点Oと被測量物体10との間の距離を測量する。」(2頁右上欄9行?右下欄10行) (8d)「本発明によれば、被測量物体がトンネル掘削機のように経時的にその位置が変化するものであっても、連続的にその現在位置を検出することができ、計画路線を同一の座標系に表示しておけば、トンネル掘削機が計画路線から変位したときの変位量を視覚的に確認することができ、またトンネル掘削機の掘進方向の早期修正を可能とする。さらに、直線状のトンネル内であるか直線部だけでなく一または複数の曲線部を有するトンネル内であるかに拘らず、被測量物体であるトンネル掘削機の位置を検出することができる。」(4頁左下欄19行?右下欄9行) (9)引用例9(実願昭62-189397号(実開平1-93510号)のマイクロフィルム)には,「レーザートランシツト」について,次の事項が記載されている。 (9a)「産業上の利用分野 測量作業に使われるトランシツトは測点を望遠鏡で視準し墨付けをしたり高度角及び水平角を測定して相対的な位置関係を求める測量に使用され土木、建築施工に不可欠な測量機械であり、本考案レーザートランシツトは従来のトランシツトの望遠鏡の代りにレーザー管を用い測量作業を大巾に合理化したものである。」(明細書1頁16行?2頁4行) (9b)「考案の効果 本考案レーザートランシツトは従来測量者が眼で視準していた望遠鏡の代りに明るい小さなスポツトを測量点上に投射するレーザー光線を使用しているため測量者は一人で測量及び墨付けができ、小さなスポツト上に直接墨付けをするから測量精度も著しく向上する。…」(同書5頁12?18行) (10)引用例10(「測量1989年6月号」,79?85頁「テクニカル・レポート トンネル工事の新しい測量システム」)には,「トンネル工事の新しい測量システム」において,「トンネル測量に電子タキオメーター(任意点の測距,測角を電気的に測定し,デジタルで表示する器械)とコンピュータを導入し,従来トンネルの中心に設けていた基準点を,トンネル断面サイドの任意の位置…に設け,坑外三角点などで使用されている公共座標をそのまま坑内の基準点に使用した。」,及び,「そこで以下の3つのプログラムを作成し,…測量管理を行った。(1)(当審注:○で囲まれた数字1,以下同様。)既知の2点より角度,距離の分かった任意点の座標を計算するプログラム。(図-8)(2)座標の分かった3点の角度,距離を計算するプログラム。(図-9)(3)座標既知点より発射されたレーザー光と任意のトンネル位置でのトンネルセンターからの距離を計算するプログラム。これらのプログラムを利用することにより,掘削断面測量は,トンネル断面サイド…の基準点より,レーザー据え付け点,視準点を測量し,座標を求め(3)のプログラムにより掘削管理を行った。」(82?83頁を参照。)が記載されている。 (11)引用例11(「WILD T1600・TC1600」,セオマットT1600・タキマットTC1600の取扱説明書)には,「WILDセオマットT1600電子式ユニバーサル・セオドライト」及び「WILDタキマットTC1600電子式トータル・ステーション」について,「ウイルドのセオマットT1600は、高精度な電子式セオドライトです。また、タキマットTC1600は、T1600にEDM(光波距離計)を組合せて一体にしたもので、T1600と全く同じ機能に加えて、測距機能をもっています。」(4頁,「1.はじめに」を参照。),T1600とウイルドのディストマット(「DI 5S,DI 1000,DI 2000,DI 3000,DIOR3002」,「DI 4,…」)を組合せて使用する際には、セオドライトの望遠鏡にディストマットを取付けること(6?7頁,「2.測定前の準備」を参照。),「高精度な測定結果を得るには、ディストマットの赤外線ビーム(光軸)と望遠鏡の視準軸が平行でなければなりません。…ディストマットの光軸と望遠鏡の視準軸との調整が、正しく行なわれていれば、望遠鏡でターゲットを視準するだけで、測距と測角が一度に行なえます。」(8頁,「3.反射器の視準 3-1 T1600」を参照。)等が記載されている。 (12)引用例12(ライカ株式会社のホームページ)には,引用例11に記載された「トータル・ステーションTC1600」(「WILDタキマットTC1600電子式トータル・ステーション」)が,1985年(昭和60年)に販売開始されたことが記載されている。 (13)引用例13(「Wild GLO2 laser eyepiece」(レーザーアイピース)のカタログ)には,「レーザーアイピース(Wild GLO2 laser eyepiece)」が,セオドライト(測角儀)の望遠鏡接眼レンズの通常のアイピースと交換して取り付けることにより,レーザーセオドライトとして使用できるものであり,非常に多機能で幅広い業務に使用されており,その主な利点が,レーザーによる基準点照射が水平・垂直方向の測定値からあらかじめ計算された方位角・仰角の指し示す点を正確に指し示すことにあること,アイピースに光ファイバー経由で送り込まれたレーザー光によるレーザービームが非常に正確に望遠鏡接眼レンズの視線に一致したものとなってターゲット上に正確に焦点の合った赤い輝点として投影されること,その使用例が,「ガイド トンネル掘削用削岩機・穿孔機。…マーキング 穿孔および切断のためのポイント。近づき難い岩石面、構造物等の測量およびその他の目的。」であること等(翻訳文を参照。)が記載されている。 (14)引用例14(「照度調整付きレーザーGLO2」(レーザーアイピース)の販売時期に関する証明書)には,「照度調整付きレーザーGLO2」の販売時期が,1977年(昭和52年)1月であることが記載されている。 (15)引用例15(特開昭62-161012号公報)には,「光波距離計用反射装置」について,次の事項が記載されている。 「(発明の背景) 光波距離計で目標点までの距離を測定する場合、目標点に反射鏡を設置して測定が行なわれる。…」(1頁左欄18?20行) (16)引用例16(特開昭63-281012号公報)には,「測量装置」について,次の事項が記載されている。 「(従来の技術) … この種の測量機においては、測定地点に測量機を設定し、測定を行うための測定者と、測定目標点にターゲット或いは反射プリズムを配置保持するための測定補助者が必要であり、しかも測定者は望遠鏡を覗きながら測量機をターゲットに向けて正確に照準するという操作を行った後に測定を行っていたものである。…」(2頁左上欄4?16行) (17)引用例17(特開昭51-6567号公報)には,「レーザー距離計」について,次の事項が記載されている。 「…レーザー発生回路1レーザー管2によりレーザーパルスを発生さす。このレーザーパルス光は光スイッチ3、半透明鏡4、5を通り前方の測距目標におかれた反射用ペンタプリズム14より反射され半透明鏡5にて反射され集光レンズ17を経て受光素子7にて受光する。…」(1頁右欄14?20行) (18)引用例18(特公昭63-21877号公報)には,「光波距離計」について,次の事項が記載されている。 「光波距離計から光波を発射して、反射プリズムからの反射光を受光し、基準周波数との位相差を測定して、距離を求める光波距離計…」(1頁1欄2?4行) 3.本件訂正発明と引用例1記載の発明との対比・判断 (1)本件訂正発明と引用例1記載の発明との対比 (ア)本件訂正発明と引用例1記載の発明とを対比すると,その機能ないし構成からみて, 引用例1記載の発明の「可視レーザ光線(B)」,「可視レーザ光線(B)を光軸(X)方向に発射する」,「レーザ発光器(1a)」,「レーザ光照射ガン(1)」,「マイクロコンピュータ(5)」は,本件訂正発明の「レーザー光」,「レーザー光を投射する」,「レーザー発振器」,「レーザー光投射装置」,「演算制御装置」に,それぞれ相当ないし対応する。 また,引用例1記載の発明の「被測量壁面」は,「発破装薬位置の墨出し点(P’)」が照示される面(トンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターンの表示面)であるから,本件訂正発明の「切羽断面」或いは「切羽」に相当し,さらに,引用例1記載の発明の「被測量壁面」上に照示する「発破装薬位置の墨出し点(P’)」は,本件訂正発明の「発破孔の(設定)作業基準点」に相当する。 (イ)上記(ア)の相当ないし対応関係を踏まえて,さらに,本件訂正発明と引用例1記載の発明とを対比すると, 引用例1記載の発明の「レーザ光照射ガン(1)を垂直面に沿って仰向方向に旋回駆動する垂直回転側エンコーダ付きモータ(2)と,該垂直回転側エンコーダ付きモータ(2)を基台(4)上水平方向に旋回駆動する水平回転側エンコーダ付きモータ(3)とを備えた駆動装置」と,本件訂正発明の「光波測角測距儀を支持して,鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置」とは, 引用例1記載の発明の「垂直回転側エンコーダ付きモータ(2)」と「水平回転側エンコーダ付きモータ(3)」とが協働して,「基台(4)上」の「レーザ光照射ガン(1)」を,「垂直面に沿って仰向方向(鉛直方向)」及び「水平方向」に旋回駆動するものであり,さらに,本件訂正発明において,「光波測角測距儀」を支持することが,必然的に,「レーザー光投射装置」を支持することになるから, 「レーザー光投射装置を支持して,鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置」で共通している。 (ウ)同じく,引用例1記載の発明の「駆動角度(θ_(1))」,「駆動角度(θ_(2))」は, 何れも,「レーザ光照射ガン(1)」を駆動するために,「マイクロコンピュータ(5)」から「指示制御」されるものであって,一方の「駆動角度(θ_(1))」が,「レーザ光照射ガン(1)を垂直面に沿って仰向方向に旋回駆動する垂直回転側エンコーダ付モータ(2)」の回転角度であり,他方の「駆動角度(θ_(2))」が,「垂直回転側エンコーダ付モータ(2)を基台(4)上水平方向に旋回駆動する水平回転側エンコーダ付モータ(3)」の回転角度であるから, 本件訂正発明において,「駆動装置」を作動させて「レーザー光投射装置」を移動させる際の「鉛直角度」,「水平角度」に,それぞれ相当する。 (エ)同じく,引用例1記載の発明の「垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)」に対して「駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))を指示制御する」ために「マイクロコンピュータ(5)」の「記憶回路」に予め入力される「図面等からの墨出し位置のデータ」の中には, 当該「マイクロコンピュータ(5)」が,上記「図面等からの墨出し位置のデータ」に応じて「トンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターンを表示する設計プログラム」を行うものであるから, 計画されているトンネルの図面等に基づいて,何らかの「トンネル形状情報」を有しているものと推認できる。 (オ)同じく,引用例1記載の発明の「マイクロコンピュータ(5)」は, 「記憶回路に予め入力された図面等からの墨出し位置のデータに応じたトンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターンとレーザ光照射ガン(1)の位置入力値とに基づいて,被測量壁面上における基点(P)に対する複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)の相対位置を決定」し,「レーザ光照射ガン(1)の照射位置に相当する駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))を演算」するものであるから, 「レーザ光照射ガン(1)」及び「垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を備えた駆動装置」の設置位置を予め知っているものと推認できる。 (カ)同じく,引用例1記載の発明の「マイクロコンピュータ(5)の記憶回路に予め入力された図面等からの墨出し位置のデータに応じたトンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターンとレーザ光照射ガン(1)の位置入力値とに基づいて,被測量壁面上における基点(P)に対する複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)の相対位置を決定し」と,本件訂正発明の「演算制御装置に与えられた計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状と反射体8の座標とに基づいて,切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し」とは, 引用例1記載の発明の上記「レーザ光照射ガン(1)の位置入力値」が,「被測量壁面上の基点(P)」から「レーザ光照射ガン(1)」までの相対的な「距離(L)」であるところ,これにより,「レーザ光照射ガン(1)」から「距離(L)」離れた「被測量壁面上の基点(P)」の位置を相対的に規定しているものということができ,また,引用例1記載の発明の上記「被測量壁面上の基点(P)」も,本件訂正発明の上記「反射体8」と同様に,「複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)」を設定する「被測量壁面」の位置を知るための指標となるものであり,さらに,上記(エ)で説示したところからすると, 「演算制御装置に与えられたトンネル形状情報と切羽断面の指標の位置とに基づいて,切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し」で共通している。 (キ)同じく,引用例1記載の発明の「マイクロコンピュータ(5)において,被測量壁面上の複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)に向けてのレーザ光照射ガン(1)の照射位置に相当する駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))を演算し,その駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))で無線送信式操作機(7)により,駆動装置の垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を作動させて,被測量壁面上の基点(P)の位置から被測量壁面上の複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)に相当する駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))にレーザ光照射ガン(1)を駆動しながら,被測量壁面上の複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)に順次レーザ光を照射し」と,本件訂正発明の「演算制御装置において,光波測角測距儀により基準点Oを視準したときの設置座標Pからの測角測距第1データに基づいて,基準点Oの視準方向に対する,複数の発破孔の作業基準点に向けての設置座標Pからの鉛直角度および水平角度を演算し,その鉛直角度および水平角度でレーザー光投射装置と切羽との間に設けられた操作盤により遠隔操作により,駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って,複数の発破孔の設定作業基準点に順次レーザー光を投射させ」とは, 引用例1記載の発明の上記「無線送信式操作機(7)」は,引用例1の「〔作用〕…墨出し作業に際して、本発明装置はレーザ光照射装置を墨出しを必要とする壁面の前方に設置し、…墨出作業者は被測量壁面に近い位置において無線送信式操作機を持ち、該無線送信式操作機からの信号を受信機を介してマイクロコンピュータのオペレータ信号として入力し、該マイクロコンピュータにより垂直回転側エンコーダ付モータと、水平回転側エンコーダ付モータに対してそれぞれ上記マイクロコンピュータに記憶された墨出し壁面の投光点に相当する回転角を出力する。…この場合作業者は投光されたレーザ光スポットの近傍位置に待機しており、該スポット位置に印付けをすることにより、順次壁面の墨出し作業を続けることができる。」(上記「2.(1)(1d)」を参照。)との記載によれば,「レーザ光照射ガン(1)」と「被測量壁面」との間に設けられたものであって,両「エンコーダ付モータ(2)(3)」を「駆動角度(θ_(1))(θ_(2))」で遠隔操作する「操作盤」であるといえ,また,上記(オ)で説示したところからすると,引用例1記載の発明の「レーザ光照射ガン(1)の照射位置に相当する駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))」は,「レーザ光照射ガン(1)」の設置位置からの「駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2))」であるといえるから, 「演算制御装置において,複数の発破孔の作業基準点に向けてのレーザ光投射装置の設置位置からの鉛直角度および水平角度を演算し,その鉛直角度および水平角度でレーザー光投射装置と切羽との間に設けられた操作盤により遠隔操作により,駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って,複数の発破孔の設定作業基準点に順次レーザー光を投射させ」で共通している。 (ク)同じく,引用例1記載の発明の「順次被測量壁面上に複数の発破装薬位置の墨出し点(P’)の墨出し作業を順次レーザ光を照射しながら行うトンネル工事における発破装薬位置の墨出しパターン表示方法」は,本件訂正発明の「順次切羽断面上に複数の発破孔の作業基準点を順次レーザー光の照射によるマーキングを行うトンネル断面のマーキング方法」に相当する。 そうすると,本件訂正発明と引用例1記載の発明とは,次の点で一致し,また,相違するものと認められる。 <一致点> 「レーザー光を投射するレーザー発振器を備えたレーザー光投射装置と, このレーザー光投射装置を支持して,鉛直方向および水平方向に駆動する駆動装置と, トンネル形状情報に基づいて前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を鉛直方向および水平方向に移動させる演算制御装置とを有し, 前記レーザー光投射装置および前記駆動装置を切羽断面手前の位置に設置するとともに,予めその設置位置を知っておき, 前記演算制御装置に与えられたトンネル形状情報と切羽断面の指標の位置とに基づいて,切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し, 前記演算制御装置において,前記複数の発破孔の作業基準点に向けての前記レーザー光投射装置の設置位置からの鉛直角度および水平角度を演算し,その鉛直角度および水平角度で前記レーザー光投射装置と切羽との間に設けられた操作盤により遠隔操作により,前記駆動装置を作動させてレーザー光投射装置を振って,前記複数の発破孔の設定作業基準点に順次レーザー光を投射させ, 順次切羽断面上に複数の発破孔の作業基準点を順次レーザー光の照射によるマーキングを行う トンネル断面のマーキング方法。」 <相違点1>(構成要件(A),(B),(H)に関して) 「レーザー光投射装置」及び「駆動装置」の構成,並びに,これら「レーザー光投射装置」及び「駆動装置」に「演算制御装置」を組み合わせて行われる「トンネル断面のマーキング方法」の適用区間について, 本件訂正発明では, 「レーザー光投射装置」が,「レーザー光を投射するレーザー発振器と光波によって距離を測定する光波測角測距儀とを,光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して,レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」ものであり,「駆動装置」が,「光波測角測距儀」を支持するものであり,そして,これら「レーザー光投射装置」及び「駆動装置」に「演算制御装置」を組み合わせて行われる「トンネル断面のマーキング方法」の適用区間が,「トンネルの曲線区間」であるのに対して, 引用例1記載の発明では, レーザー光投射装置(レーザ光照射ガン(1))が,光波測角測距儀を備えていないことから,「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して、レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」ものではなく,駆動装置(垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を備えた駆動装置)が,レーザー光投射装置を支持するものであって,光波測角測距儀を支持するものではなく,そして,これらレーザー光投射装置及び駆動装置に演算制御装置(マイクロコンピュータ(5))を組み合わせて行われるトンネル断面のマーキング方法(発破装薬位置の墨出しパターン表示方法)の適用区間が,トンネルの曲線区間ではない点。 <相違点2>(構成要件(C)?(G)に関して) 「演算制御装置」により「トンネルの曲線区間」で行われる「トンネル断面のマーキング方法」の具体的な手法,及び,その際に「演算制御装置」に与えられるデータについて, 本件訂正発明では, 「演算制御装置」において, 「予めその(切羽断面手前の位置に設置したレーザー光投射装置および駆動装置の)設置座標Pを知っておき, 切羽断面ではないトンネル内に測量により設けられた,座標が既知の別の基準点Oを光波測角測距儀により視準し,この視準による設置座標Pからの測角測距第1データを得て, 他方で,基準点Oとは別に,切羽断面に光波の反射体8を置き,光波測角測距儀から投光され反射体により反射された光波を受光することにより切羽断面までの距離を測距することによる測角測距第2データにより反射体8の座標を得て,演算制御装置に与えられた計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状と反射体8の座標とに基づいて,切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し, 演算制御装置において,光波測角測距儀により基準点Oを視準したときの設置座標Pからの測角測距第1データに基づいて,基準点Oの視準方向に対する,複数の発破孔の作業基準点に向けての設置座標Pからの鉛直角度および水平角度を演算し」ているものであり, 「演算制御装置」には,トンネル形状情報としての「計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状」,及び,「レーザー光投射装置および駆動装置」,「別の基準点」,「光波の反射体」等の位置情報としての座標情報が与えられ,これらに基づいて,「切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し」,「光波測角測距儀により基準点Oを視準したときの設置座標Pからの測角測距第1データに基づいて,基準点Oの視準方向に対する,複数の発破孔の作業基準点に向けての設置座標Pからの鉛直角度および水平角度を演算し」ているのに対して, 引用例1記載の発明では, 演算制御装置(マイクロコンピュータ(5))において, 切羽断面(被測量壁面)手前の位置に設置したレーザー光投射装置(レーザ光照射ガン(1))および駆動装置(垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を備えた駆動装置)の位置(距離(L))を予め知っており, 与えられたトンネル形状情報(図面等からの墨出し位置のデータ)と切羽断面の指標(基点(P))の位置とに基づいて,切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点(発破装薬位置の墨出し点(P′))を設定し, 複数の発破孔の作業基準点に向けてのレーザー光投射装置の設置位置からの鉛直角度および水平角度(駆動角度(θ_(1))および駆動角度(θ_(2)))を演算しているものの, 演算制御装置には,切羽断面上の基点(P)から距離(L)離れたレーザー光投射装置および駆動装置の設置位置が座標情報として予め与えられておらず,また,切羽断面ではないトンネル内に測量により設けられた座標が既知の別の基準点を設けておらず,且つ,上記<相違点1>で挙げたように,光波測角測距儀を備えていないから,基準点を光波測角測距儀により視準することによる設置座標からの基準点の測角測距(第1)データが与えられておらず,また,レーザー光投射装置から切羽断面上の基点(P)までの距離(L)を予め測定しておくものであって,当該距離(L)等を測定するために,切羽断面に基準点とは別の光波の反射体を置いておらず,且つ,上記したように,光波測角測距儀を備えていないから,切羽断面上の基点(P)の位置として,光波測角測距儀から投光され反射体により反射された光波を受光することにより切羽断面までの距離を測距することによる測角測距(第2)データにより反射体の座標が与えられておらず,さらに,トンネル形状情報として,計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状が与えられておらず,結局,演算制御装置が,トンネル形状情報としての計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状及び各種装置の位置情報としての座標情報に基づいて切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し,基準点の視準方向に対する複数の発破孔の作業基準点に向けての設置座標からの鉛直角度および水平角度を演算していない点。 (2)相違点についての判断 <相違点1について> 引用例2には,上記「2.(2)」で説示したように,引用例2記載の発明として, 「トンネルの曲線区間において,曲線を直線の線分に置き換え,各線分の長さと互いの角度を測定して座標基準点(測距・測角部)(本件訂正発明の「設置座標P」に相当ないし対応する。以下同様。)に対するシールドの座標と方位とを算出して,あらかじめデータ処理装置(「演算制御装置」)に入力設定されている曲線状の計画路線に沿うようにシールドの掘進方向を制御する,トンネルのシールド工法における旋回レーザ方式の自動化システムであって, シールドの掘進に伴って順次更新され,シールドの後方にあってシールドにもっとも近い座標が既知の上記座標基準点に,レーザートランシットのレーザ光の光軸と光波距離計の光波の光軸とが平行になるように,レーザートランシットに光波距離計が搭載されて,ひとまとまりの装置として一体となった光波距離計付きレーザートランシット(「レーザー光投射装置」)を設置し, シールドの背面に,反射器が一体的に取り付けられた受光器を,測定基準点として配置し, 光波距離計付きレーザートランシットは,旋回駆動機構(「駆動装置」)により,レーザートランシットのレーザ光が上記受光器を常に捕捉するとともに,光波距離計からの光波が上記反射器を捕捉するように構成されており, レーザートランシットからシールドの上記受光器に向けてレーザ光を投射するときの光の方向を測定するとともに,光波距離計で上記座標基準点から上記反射器までの距離を測定することにより,上記シールドの座標と方位とを算出して,上記曲線状の計画路線に対するシールドの変位を求め, トンネルの曲線区間において,シールドの上記変位に基づいて,シールドの方向修正量を解析し,解析から得た目標方向にシールドが向くようにその方向を修正制御して,シールドの掘進方向を上記曲線状の計画路線に沿うようにした, トンネルのシールド工法における旋回レーザ方式の自動化システム。」との発明が記載されているところ, 当該発明の「光波距離計付きレーザートランシット」は,「レーザートランシットに光波距離計が搭載されて,ひとまとまりの装置として一体となった」ものであり,「反射器が一体的に取り付けられた受光器」に対して,「レーザートランシットのレーザ光が上記受光器を常に捕捉するとともに,光波距離計からの光波が上記反射器を捕捉するように構成されて」,「レーザートランシットのレーザ光の光軸と光波距離計の光波の光軸とが平行になるように」設定されているものである。 ここで,上記「光波距離計付きレーザートランシット」は,トンネルの曲線区間における曲線状の計画路線に対するシールドの変位を求めるものであって,トンネルの曲線区間をその作業対象としているものの,トンネル断面のマーキングに使用されるものではなく,しかも,「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して,レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」ものでもない。 しかしながら,レーザー光をトンネル工事におけるマーキングに用いることは,例えば,引用例4に,その記載事項及び当業者の技術常識からみて,「レーザー光が拡散しにくく遠方まで到達することを利用して,レーザー光の方向を高精度に制御することにより,切羽に穿孔位置を表示するようにしたトンネルのマーキングシステムにおいて,上下角・水平角の調整用送りネジにギアを装着し,レーザー発振器の向きを2軸(X軸,Y軸)に回転させることによりレーザー光の方向を制御できるレーザートランシットを用い,マイコンにはトンネルの軌道を予めプログラムした上で,マーキング時に,切羽の位置,トンネルセンター等からの離れ,穿孔パターン等のデータに基づいて,切羽で送信機のスイッチを押すたびに切羽上にレーザーが穿孔位置を次々に表示してマーキングできるようにした,曲線の軌道を有するトンネルに適用できるトンネルのマーキングシステム。」(上記「2.(4)」を参照。)が記載され,引用例5に,鋼製支保工を使用しない「NATM」工法において,レーザービームを利用する主な作業として,「2-1 レーザビームの配置 発破掘さくに伴う掘さく線の明示,および,発破孔,せん孔位置,せん孔方向確認」(上記「2.(5)」を参照。)と記載され,引用例6に,「レーザー測量機」が,「セオドライトTM-20A」に組合わせたものは,角度測定による位置決め,方位測定,杭打作業などに使用されること,「LTSレーザトランシット装置」が,肉眼で確認できるHe-Neガスレーザの赤色光をAfocalレンズ系により細い光の線としてそれを基準線として設定し作業しながら工事をチェックでき,トンネルや水路・側溝の掘削工事・パイプ敷設・整地などの土木工事などに作業能率の向上・省力化によるコスト低減に大きな役割を果たし,視準線とビームがつねに同一芯上に一致しており視準点に最小のスポットでビームが集光すること,及び,「レーザ位置決め装置 LAG-500シリーズ」が,トンネル掘削シールド工法・杭打作業などの土木工事などにおける各種測定・芯出し・基準設定・けがき・位置決めなどに使用でき,そのうちの「LAG-501型:レーザトランシット」が,He-Neガスレーザとトランシットを組み合わせたものでトランシットの望遠鏡を通してレーザビームを出し望遠鏡の視準点にビームを当てることができること(上記「2.(6)」を参照。)が記載され,引用例13に,引用例14により,1977年(昭和52年)1月に販売されたと認められる「レーザーアイピース」(Wild GLO2 laser eyepiece)が,セオドライト(測角儀)の通常のアイピースと交換して取り付けることによりレーザーセオドライトとして使用できるものであって,非常に多機能で幅広い業務に使用されるものであり,その主な利点が,レーザーによる基準点照射が水平・垂直方向の測定値からあらかじめ計算された方位角・仰角の指し示す点を正確に指し示すことにあること,アイピースに光ファイバー経由で送り込まれたレーザー光によるレーザービームが非常に正確に望遠鏡接眼レンズの視線に一致したものとなってターゲット上に正確に焦点の合った赤い輝点として投影されること,及び,その使用例が,「ガイド トンネル掘削用削岩機・穿孔機。…マーキング 穿孔および切断のためのポイント。近づき難い岩石面、構造物等の測量およびその他の目的。」であること(上記「2.(13)(14)」を参照。)が記載されているように,本件特許出願時に,測量の技術分野における公知ないしは周知の技術であったものといえ, また,測角儀(トランシット・セオドライト)の望遠鏡(鏡筒部)にレーザー発振器やその一部(光ファイバー)を取り付けて一体とすることは,例えば,引用例6に,上述のように,「レーザー測量機」が,「セオドライトTM-20A」に組合わせたものは,視準線とビームがつねに同一芯上に一致しており視準点に最小のスポットでビームが集光すること,及び,「レーザ位置決め装置 LAG-500シリーズ」のうちの「LAG-501型:レーザトランシット」が,He-Neガスレーザとトランシットを組み合わせたもの(写真からは,望遠鏡にレーザ管が搭載された態様のものがみてとれる。)でトランシットの望遠鏡を通してレーザビームを出し望遠鏡の視準点にビームを当てることができることが記載され,引用例11に,引用例12により,1985年(昭和60年)に販売されたと認められる「WILDタキマットTC1600電子式トータル・ステーション」が,「高精度な電子式セオドライト」である「WILDセオマットT1600電子式ユニバーサル・セオドライト」に「EDM(光波距離計)」を組み合わせて一体にしたものであって,測角・測距機能を有していること,T1600とウイルドのディストマット(「DI 5S,DI 1000,DI 2000,DI 3000,DIOR3002」,「DI 4,…」)を組合せて使用する際には,セオドライトの望遠鏡にディストマットを取付けること,及び,高精度な測定結果を得るには,ディストマット(赤外線ビームを投射する測距儀)の赤外線ビーム(光軸)と望遠鏡の視準軸が平行でなければならず,ディストマットの光軸と望遠鏡の視準軸との調整が正しく行なわれていれば,望遠鏡でターゲットを視準するだけで測距と測角が一度に行なえること(上記「2.(11)(12)」を参照。)が記載され,引用例13に,上述のように,「レーザーアイピース」(Wild GLO2 laser eyepiece)が,セオドライト(測角儀)の通常のアイピースと交換して取り付けることによりレーザーセオドライトとして使用できるものであって,アイピースに光ファイバー経由で送り込まれたレーザー光によるレーザービームが非常に正確に望遠鏡接眼レンズの視線に一致したものとなってターゲット上に正確に焦点の合った赤い輝点として投影されることが記載されているように,本件特許出願時に,測量の技術分野における公知ないしは周知の技術であったものといえ, さらに,マーキング(墨付け)やターゲットの視準に用いる測量機において,ビームの光軸と望遠鏡の視準軸とを一致させ或いは平行にすることは,例えば,引用例6,13に,上述のように,マーキングに用いる測量機において,レーザー光によるレーザービームの光軸と望遠鏡の視準軸とを一致させることが記載され,引用例9に,墨付けに用いる測量機において,レーザー光によるレーザービームの光軸と望遠鏡の視準軸とを一致させること(上記「2.(9)」を参照。)が記載され,引用例11に,上述のように,ターゲットの視準に用いる測量機において,ビームの光軸と望遠鏡の視準軸とを平行にすることが記載されているように,本件特許出願時に,測量の技術分野における公知ないしは周知の技術であったものといえる。 以上のような諸事情を考慮すると,引用例2記載の発明の「レーザートランシットのレーザ光の光軸と光波距離計の光波の光軸とが平行になるように,レーザートランシットに光波距離計が搭載されて,ひとまとまりの装置として一体となった光波距離計付きレーザートランシット」が,トンネルの曲線区間における曲線状の計画路線に対するシールドの変位を求めるものであって,トンネル断面のマーキングに使用されるものではなく,また,引用例1記載の発明のレーザ光投射装置が,「レーザ光照射ガン(1)」であるとしても,レーザートランシットと光波測角測距儀とは,ともに測量に用いられる測量機であるから,レーザートランシットと光波測角測距儀とを組み合わせ,測距儀,測角儀及びレーザー発振器が一体となった測量機を,トンネルの曲線区間におけるトンネル断面のマーキングに用いるようにすることは,本件特許出願時に,当業者にとって格別に困難なことであったとは認められない。 してみると,引用例1記載の発明において,レーザ光投射装置(レーザ光照射ガン(1))を,当該レーザ光投射装置と切羽断面(被測量壁面)との距離(距離(L))及び適宜位置に対する角度を測定するために,引用例2記載の発明の「光波距離計付きレーザートランシット」の技術を採用して,光波測角測距儀とレーザー発振器とからなる態様のものであって,光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載してレーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体となった測量機として構成し,さらに,レーザ光投射装置を駆動する駆動装置(垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を備えた駆動装置)を,光波測角測距儀を支持するように構成して,これを,トンネルの曲線区間におけるトンネル断面のマーキングに用いることは,当業者にとって想到容易の事項といえる。 したがって,上記相違点1に係る本件訂正発明の構成は,引用例1,2記載の発明及び測量における公知ないしは周知の技術から,当業者が格別の技術的困難性を要することなく容易になしえたものである。 尚,審判請求人は,審判請求書において,本件訂正発明の「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して,レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」との事項の技術的意義について,「別途追従手段を設けることなく、レーザー光の光軸と光波の光軸とが物理的又は機械的に常に平行になる構成である」旨主張している(「(4)請求の原因 1)ア.」を参照。)。 しかしながら,上記「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して,レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」との事項に関して,本件特許明細書には, 「第1図において、1はレーザー光投射装置であり、レーザー光を投射するレーザ発振器5と光波によって距離を測定する光波測角測距儀6とを、レーザー光の光軸と光波の光軸とが平行になるように一体としたものである。」(特許公報2頁4欄30?33行)と記載され,「本発明のレーザー光投射装置においては、レーザー光の光軸と光波の光軸とが平行となるように設定されている。…そこで、本発明によれば、レーザー光の光軸と光波の光軸とが平行になり、視準方向に常時レーザー発振器の投射方向が向けられるので、測距時の視準方向をレーザー光を投射する方向として扱うことができる。レーザー光の光軸と測距時の光軸との間に角度を与えずに平行することは、視準点とレーザー照射されるポイントとの距離を、レーザー光投射装置と切羽断面との距離に関係なく、ほぼ一定にさせることが可能である。」(同公報3頁5欄49行?6欄6行)と記載され,「レーザー発振器5は光波測角測距儀6の鏡筒部に搭載され、視準望遠鏡の光軸と平行にレーザー光3を照射できるようになっている。」(同公報3頁6欄15?17行)と記載されているのみであり, これらの記載からは,「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載」するにあたり,「追従手段」を設けないものに限られるというようなことは勿論のこと,当該「搭載」した状態において,「物理的又は機械的に常に平行になる」というようなことも一切把握できないものであり,これを以て,「別途追従手段を設けることなく、…常に平行になる構成である」との裏付けとすることはできないものというべきであるから,審判請求人の上記主張は採用できない。 (尚,本件特許明細書に記載の上記「視準方向に常時レーザー発振器の投射方向が向けられ…測距時の視準方向をレーザー光を投射する方向として扱うことができる」,「視準点とレーザー照射されるポイントとの距離を、レーザー光投射装置と切羽断面との距離に関係なく、ほぼ一定にさせることが可能である」ということのためには,レーザー光投射装置が,別途追従手段を設けるか否か,さらには,光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載するか否かに拘わらず,単に,レーザー発振器のレーザー光の光軸と光波測角測距儀の光波の光軸とが平行になるようにひとまとまりの装置として一体に構成されたものであれば足りるものと思料される。) また,審判請求人は,審判請求書の平成21年2月17日付け手続補正書において,上記「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して,レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」との事項の想到容易性について,本件訂正発明は,光波測角測距儀とレーザー発振器とが「水平及び鉛直の駆動軸を共有する」状態で一体となったもの,したがって,「レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように」一体としたものであって,「光波測角測距儀とレーザー発振器とが、前判決(当審注:知財高裁平成17年(行ケ)第10325号判決)の認定のように、単にひとまとまりの装置だけの構成…ではなく、光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体としたもの」であるから,引用例1,2記載の発明及び周知の技術に基づいて,「相違点1に係る本件訂正発明の構成を当業者が格別の技術的困難性を要することなく容易になしえたもの」とすることはできない旨主張している(7頁1行?8頁25行を参照。)。 しかしながら,上記想到容易性について,本件特許に係る無効審判請求事件についての知財高裁平成17年(行ケ)第10325号判決では,「2 取消事由1(相違点1の判断の誤り)について」の項において, 「(2)甲2(当審注:引用例2のこと。以下同様。)記載の光波距離計付きレーザートランシットが,構成要件(A)を満たすかどうかについて検討する。 ア 前記認定のとおり,甲2記載の装置のレーザートランシットのレーザー光の光軸と,光波距離計の光波の光軸とは平行に設定されていると認められるので,甲2の装置は,『レーザー光の光軸と光波の光軸が平行になるようにしたレーザー光投射装置』であるということができる。甲26(引用例6)に『視準線とビームがつねに同一芯上に一致しており』と記載されているとおり,レーザー光軸と視準線とを平行にすることは,本件特許出願前から周知であり,この点は,被告らも争うものではない。 イ 構成要件(A)の『一体とした』との要件の意義について,本件明細書には『レーザー光を投射するレーザ発振器5と光波によって距離を測定する光波測角測距儀6とを,レーザー光の光軸と光波の光軸とが平行になるように一体とした』(4欄30?33行)と記載されているにすぎず,『一体』の意義や程度についての具体的な説明はなされていない。一般に『一体』とは『一つになって分けられない関係にあること』(広辞苑第5版)を意味するのであるから,一般的な用語の意味に照らすと,構成要件(A)の『一体』とは,レーザ発振器と光波測角測距儀が水平及び鉛直方向の駆動軸を共有することを意味するものとは解し得ず,光波測角測距儀にレーザ発振器が取り付けられるなどしてひとまとまりの装置を構成していれば足りると解すべきである。前記判示のとおり,甲2記載の光波距離計付きレーザートランシットは,レーザートランシットに光波距離計が搭載され,ひとまとまりの装置として構成されたものであるということができるので,構成要件(A)の『一体とした』との要件を充足するというべきである。 … (3)仮に,…構成要件(A)の『一体とした』との要件が,レーザ発振器と光波測角測距儀が水平及び鉛直方向の駆動軸を共有することを意味すると解したとしても,甲2記載の光波距離計付きレーザートランシットと本件発明の相違点は,レーザ発振器と光波測角測距儀が鉛直方向の駆動軸を同一にするかどうかという点にすぎない。レーザ発振器と光波測角測距儀の水平及び鉛直方向の駆動軸を同一にすることは,本件発明において技術的な課題として言及されている事項でもなく,そのような構成とすることに格段の困難があることをうかがわせる証拠もないことに照らすと,単なる設計事項というべきである。」と判示されているところであり, このような判示によれば,構成要件(A)の「一体」が,「レーザ発振器と光波測角測距儀が水平及び鉛直方向の駆動軸を共有する」状態で一体となることを意味すると解したとしても,本件特許明細書において,このようにしなければ解決できないような技術的課題が言及されている訳でもなく,このような構成とすることに格段の困難があることをうかがわせる証拠もないことに照らして,単なる設計事項というべきものといえる以上,同じく,「一体」が,「光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載して、レーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体とした」ことを意味すると解したとしても,上記と同様の理由により,単なる設計事項というべきものであるから,審判請求人の上記主張は採用できない。 <相違点2について> 引用例1記載の発明において,レーザ光投射装置(レーザ光照射ガン(1))として,引用例2記載の発明の「光波距離計付きレーザートランシット」の技術を採用して,レーザートランシットと光波測角測距儀とを組み合わせ,測距儀,測角儀及びレーザー発振器が一体となった測量機を,トンネルの曲線区間におけるトンネル断面のマーキングに用いるようにすることは,本件特許出願時に,当業者にとって格別に困難なことであったとは認められないことは,上記<相違点1について>で説示したとおりであるところ, 引用例1には,上記「2.(1)(1e)」のとおり,「トンネル工事における発破装薬位置のパターンを表示したり…等、種種の墨出しをマイクロコンピュータ(5)の記憶入力を変えるだけで行なうことができる。」との記載があるところ,トンネルが曲線区間を含みうるものであることは自明の事項であるし,また,引用例1記載の発明が曲線区間を含むトンネル工事における発破装薬位置のパターンを表示することができないことをうかがわせる記載はみられず,かえって,本件訂正発明の「計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状」は,「演算制御装置に与えられた」もの(構成要件(F))であるところ,引用例1記載の発明も,上記のとおり,「種種の墨出しをマイクロコンピュータ(5)の記憶入力を変えるだけで行なうことができる」ものであり,さらに,トンネルの曲線区間においても,トンネルの曲率中心からの法線に沿う面を設定するものであって,当該面に対し,引用例1記載の発明の墨出しパターン表示方法を使用できることは明らかであるから,引用例1記載の発明において,演算制御装置(マイクロコンピュータ(5))に与えられたトンネル形状情報には,「計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状」が含まれることは自明の事項である。(本件特許に係る無効審判請求事件についての知財高裁平成20年(行ケ)第10262号判決(32頁7行?33頁7行)を参照。) ところで,引用例2記載の発明は,引用例2に,「光学装置を用いる方法は,曲線を直線の線分に置き換え,光学測定装置を用いて各線分の長さと互いの角度を測定して座標基準点に対するシールドの位置と方位を求める(図-3を参照。).光学式のうち,旋回レーザ方式では,シールドにもっとも近い基準点に旋回式レーザ装置を置き,シールドの測定基準点に向けてレーザ光を投射するときの光の方向を測定し,また,光波距離計で,この2点の距離を測定するようになっている.」(上記「2.(2)(2c)」を参照。),「レーザ光軸の基準方位は,レーザ装置の設置点と,後方基準点を結ぶ線の方向なので,後方基準点にも受光器を設置しておく.この基準点の測定は,レーザトランシット位置の定期的な検査時や,シールドの進行に伴うレーザトランシットの移動時などに行う.」(上記「2.(2)(2e)」を参照。)と記載され,また,「測量データの処理フロー」を示す「図-5」に,「[基準点データ(キーボード入力)]という制御ステップが制御ループの[シールドの座標の計算]」に入力されること(上記「2.(2)(2g)(2h)」を参照。)が記載されていることでも解るように,引用例2記載の発明の「データ処理装置」には,「光学測定装置」(光波距離計付きレーザートランシット)を設置する「座標基準点」の位置が予め座標情報として既知であり,また,当該データ処理装置が,「座標基準点に対するシールドの位置と方位を求める」に際して,「座標基準点」から「シールド」の「測定基準点」(シールドの背面に配置して反射器が一体的に取り付けられた受光器)までの距離の測定値,及び,「座標基準点」と「後方基準点」とを結ぶ「基準方位」から「測定基準点」に向けてレーザ光を投射するときの光の方向(角度)の測定値を用いているものと思量されるから,「後方基準点」,「測定基準点」の位置も座標情報として与えられているものといえ,そして,当該「後方基準点」が,本件訂正発明における「切羽断面ではないトンネル内に測量により設けられた座標が既知の別の基準点」に相当ないしは対応するものといえる。 一方,引用例3には,上記「2.(3)」で説示したように,引用例3記載の発明として, 「三脚3に取付けられた基板4と,基板4に対し鉛直軸回りに回転可能な托架部5と,托架部5に対し水平軸回りに回動可能な望遠鏡6を有する望遠鏡部7とで測距・測角を行う本体1を構成し,本体1内の回路には,光源である発光素子21からの光を測点に配置された反射鏡9を介して受光素子24によって受光し測点までの距離を求める測距部20と,基板4に対する托架部5の鉛直軸回りの回転角を測定する水平角測定部40及び托架部5に対する望遠鏡部7の水平軸回りの回転角を測定する高度角測定部60からなって望遠鏡6の視準方向の角度を測定する測角部とを備え,測距機能及び測角機能を有する測量装置(本件訂正発明の「光波測角測距儀」に相当ないし対応する。以下同様。)を用いて,地図上に表わされた地点を現地に測設する方法であって, 現地に既に測設され地点データとして座標データが演算部(「演算制御装置」)に与えられている既知の地点を既知点A,Bとし,既知点A,Bを結ぶ線上の方向Xを基準方向として定めた水平角H_(1),H_(2)と既知点Bを基準として定めた水平距離HD_(1),HD_(2)とで示され地点データとして座標データが演算部に与えられている測設点C,Dを順次求めるに際し,既知点Bを機械点(「設置座標が既知の設置点」)としてここに測量装置を設置し,既知点A(「座標が既知の別の基準点」)を後視点として機械点(B)から後視点(A)を視準し,後視点(A)の視準方向を角度0°に設定して,水平角のゼロセットを行い,その後,機械点(B)及び機械点(B)と後視点(A)とで形成される基準方向に基づいたそれぞれの測設点C,D(「複数の作業基準点」)への水平角H_(1),H_(2)(「(設置座標からの)水平角度」)及び水平距離HD_(1),HD_(2)を演算部に記憶された座標データから演算して求め,それぞれの測設点C,Dに対応するように基板4及び托架部5(「駆動装置」)を作動させて測量装置を振って,水平角H_(1),H_(2)方向を規準し,水平距離HD_(1),HD_(2)の距離の地点を求め,また,高度角(「(設置座標からの)鉛直角度」)に対しても同様の作業を行って,測設点C,Dを現地に測設するようにした測設方法。」との発明が記載されているところ, 当該発明には,演算制御装置(演算部)が,予め光波測角測距儀(測量装置)の設置位置(既知点B)の設置座標を知っており,座標が既知の別の基準点(既知点A)を光波測角測距儀(測量装置)により視準し,この視準による設置座標からの測角測距データを得て,光波測角測距儀により基準点(既知点A)を視準したときの設置座標からの上記測角測距データに基づいて,基準点(既知点A)の視準方向に対する複数の作業基準点(それぞれの測設点C,D)に向けての設置座標からの鉛直角度(高度角)および水平角度(水平角H_(1),H_(2))を演算し,その鉛直角度および水平角度で駆動装置(基板4及び托架部5)を作動させて光波測角測距儀を振って,複数の作業基準点の測設を行うようにした測設方法が,開示されている。 そして,上記引用例3記載の発明に開示された測設方法のように,測設作業を行うに際して,測量装置を座標位置が既知の点,或いは,他の2点以上の基準点を視準することで一意的に算出が可能な点に設置して,上記測量装置に基準方位を初期値としてセットすること,及び,演算制御装置(コンピュータ)に,測量に必要となる各基準点の位置データを座標データとして与えることは,その他に,例えば,引用例7に,その記載事項及び当業者の技術常識からみて,建設・土木工事等における設計図書に記載された墨出しポイント等の三次元位置情報を現地にマーキングする位置決め方法であって,基礎となる2点以上の基準点の位置を座標情報として与え,電子測量機(トータルステーション,測角測距儀)を建設現場の任意位置においたうえ前記基準点に設置の反射鏡を視準して当該電子測量機の座標Pを求め,求めるポイントとしての目標点Bの位置を座標で与えると共に,当該電子測量機から視準点として当該目標点Bの近くに目当をつけて置かれた反射鏡Cの座標を求め,当該反射鏡Cを基準にして反射鏡Cと目標点Bとの間のズレを測角と測距とにより求めること,及び,全てのデータを座標情報で捉えること等(上記「2.(7)」を参照。)が記載され,引用例8に,その記載事項及び当業者の技術常識からみて,被測量物体の三次元座標を特定するのに適する位置検出方法であって,予め三次元座標が特定された三つの既知点を設定しかつ当該既知点及び被測量物体の双方を見通すことができる位置に基準点を設定した後,基準点及び各既知点を結ぶ線と基準点を含む任意の基準線との成す角度,基準点及び被測量物体を結ぶ線と基準線との成す角度,基準点と各既知点との間の距離,並びに,基準点と被測量物体との間の距離をそれぞれ測量し,これらの角度及び距離を基準にして,被測量物体の位置を求めること等(上記「2.(8)」を参照。)が記載され,引用例10に,その記載事項及び当業者の技術常識からみて,トンネル工事の新しい測量システムであって,トンネル測量に電子タキオメーター(任意点の測距,測角を電気的に測定し,デジタルで表示する器械)とコンピュータを導入し,従来トンネルの中心に設けていた基準点をトンネル断面サイドの任意の位置に設け,坑外三角点などで使用されている公共座標をそのまま坑内の基準点に使用すること,既知の2点より角度,距離の分かった任意点の座標を計算し,座標の分かった3点の角度,距離を計算し,座標既知点より発射されたレーザー光と任意のトンネル位置でのトンネルセンターからの距離を計算すること等(上記「2.(10)」を参照。)が記載されているように,本件特許出願時に,測量の技術分野における公知ないしは周知の技術であったものといえる。 また,光波の反射を利用して対象物までの距離を測定する際に,対象物の位置に反射器(反射鏡,反射プリズム等)を配置することは,例えば,引用例3,7,8,15?18(上記「2.(3)(7)(8)(15)?(18)」を参照。)に記載されているように,本件特許出願時に,測量の技術分野における公知ないしは周知の技術であったものといえ(特に,引用例8には,トンネル掘削機(切羽断面に位置している。)のように経時的にその位置が変化する被測量物体10に反射鏡12を設置し,直線状のトンネル内であるか曲線部を有するトンネル内であるかに拘らず,被測量物体10の位置を連続的に検出することができること(上記「2.(8)(8c)(8d)」を参照。)が記載されている。), さらに,トンネルの曲線の軌道を予めプログラムした上で,マーキング時に,切羽の位置,トンネルセンター等からの離れ,穿孔パターン等のデータに基づいて,切羽上にレーザーが穿孔位置を次々に表示してマーキングすることは,例えば,引用例4に,「レーザー光が拡散しにくく遠方まで到達することを利用して,レーザー光の方向を高精度に制御することにより,切羽に穿孔位置を表示するようにしたトンネルのマーキングシステムにおいて,上下角・水平角の調整用送りネジにギアを装着し,レーザー発振器の向きを2軸(X軸,Y軸)に回転させることによりレーザー光の方向を制御できるレーザートランシットを用い,マイコンにはトンネルの軌道を予めプログラムした上で,マーキング時に,切羽の位置,トンネルセンター等からの離れ,穿孔パターン等のデータに基づいて,切羽で送信機のスイッチを押すたびに切羽上にレーザーが穿孔位置を次々に表示してマーキングできるようにした,曲線の軌道を有するトンネルに適用できるトンネルのマーキングシステム。」(上記<相違点1について>で説示。)の技術が記載されているように,本件特許出願時に,測量の技術分野における公知ないしは周知の技術であったものといえる。 以上のような諸事情を考慮すると,引用例1記載の発明において,レーザ光投射装置(レーザ光照射ガン(1))として,引用例2記載の発明の「光波距離計付きレーザートランシット」の技術を採用して,レーザートランシットと光波測角測距儀とを組み合わせ,測距儀,測角儀及びレーザー発振器が一体となった測量機を,トンネルの曲線区間におけるトンネル断面のマーキングに用いるに際し,切羽断面に反射体を置き,当該反射体の座標とトンネル形状情報としての計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状に基づいて切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し,既知の座標点どうしを結ぶことによって一意的に決定されるような方向であって,上記測量機(本件訂正発明における「レーザー光投射装置」)の設置座標(本件訂正発明における「設置座標P」)から観念的な任意の点である基準点(本件訂正発明における「基準点0」)を視準した方向に演算制御装置(マイクロコンピュータ(5))を初期的にセットし,このセットされた方位を基準にして,その後の,切羽断面上の作業基準点に向けての設置座標からの水平角度及び鉛直角度を演算するようにすることは,本件特許出願時に,当業者にとって格別に困難なことであったとは認められない。 (尚,引用例1記載の発明における基準方位はレーザ光投射装置(レーザ光照射ガン(1))の位置から切羽断面(被測量壁面)上の基点Pに向けての方位となるが,これに代えて,測量機の設置位置である既知の点から他の既知の点を結ぶ方位とすることは,当業者が必要に応じて適宜選択することのできる事項と認めるのが相当であることは,本件特許に係る無効審判請求事件についての知財高裁平成20年(行ケ)第10262号判決(30頁20行?31頁6行)で判示されている。) してみると,引用例1記載の発明のレーザ光投射装置(レーザ光照射ガン(1))を,当該レーザ光投射装置と切羽断面(被測量壁面)との距離(距離(L))及び適宜位置に対する角度を測定するために,引用例2記載の発明の「光波距離計付きレーザートランシット」の技術を採用して,光波測角測距儀とレーザー発振器とからなる態様のものであって,光波測角測距儀の鏡筒部にレーザー発振器を搭載してレーザー光の光軸と光波の光軸とが常に平行になるように一体となった測量機として構成し,さらに,レーザ光投射装置を駆動する駆動装置(垂直および水平回転側エンコーダ付きモータ(2)(3)を備えた駆動装置)を,光波測角測距儀を支持するように構成して,これを,トンネルの曲線区間におけるトンネル断面のマーキングに用いて,駆動装置を切羽断面上の複数の作業基準点(墨出し点(P′))の方向(水平方向および垂直方向)に正確に作動させるに際し, 引用例3記載の発明及び測量機における公知ないしは周知の技術を採用して,演算制御装置(マイクロコンピュータ(5))において,レーザ光投射装置および駆動装置の設置位置を座標情報として予め知っておき,切羽断面に光波の反射体を置いて光波測角測距儀から投光され反射体により反射された光波を受光することにより切羽断面までの距離を測距することによる測角測距データにより反射体の座標を得て,この反射体の座標とトンネル形状情報としての計画トンネル線形の曲線形状および計画トンネル断面形状に基づいて切羽断面上における複数の発破孔の作業基準点を設定し,光波測角測距儀により座標が既知の別の基準点を視準したときの設置座標からの測角測距データに基づいて,基準点の視準方向に対する複数の作業基準点に向けての設置座標からの鉛直角度および水平角度を演算し,その鉛直角度および水平角度で駆動装置を作動させて光波測角測距儀を振って,複数の作業基準点の測設を行うことは,当業者にとって想到容易の事項といえる。 したがって,上記相違点2に係る本件訂正発明の構成は,引用例1,2,3記載の発明及び測量における公知ないしは周知の技術から,当業者が格別の技術的困難性を要することなく容易になしえたものである。 (3)作用効果・判断 以上述べたように,本件訂正発明は,引用例1記載の発明において,レーザ光投射装置(レーザ光照射ガン(1))として,引用例2記載の発明の「光波距離計付きレーザートランシット」を採用するとともに,引用例3記載の発明の測設方法の技術及び測量における公知ないしは周知の技術を採用したものに該当し,本件訂正発明の作用効果も,全体として,引用例1,2,3記載の発明及び測量における公知ないしは周知の技術に基づき当業者が予測できる範囲内のものであって,格別なものがあるとは認められない。 (4)まとめ したがって,本件訂正発明は,引用例1,2,3記載の発明及び測量における公知ないしは周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のように,本件訂正発明は,引用例1,2,3記載の発明及び測量における公知ないしは周知の技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件訂正は,特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされる同法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので,認められない。 |
審理終結日 | 2009-09-04 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-24 |
出願番号 | 特願平1-238748 |
審決分類 |
P
1
41・
121-
Z
(E21D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大森 伸一、安藤 勝治、藤原 伸二 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
山口 由木 関根 裕 宮崎 恭 草野 顕子 |
登録日 | 1998-08-28 |
登録番号 | 特許第2138035号(P2138035) |
発明の名称 | トンネル断面のマーキング方法 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 永井 義久 |