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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1207933
審判番号 不服2007-11079  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-20 
確定日 2009-12-08 
事件の表示 特願2001-235592「「水域及び陸地等で、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌して、水中に放流拡散する殺菌密度水放流拡散装置。」」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月14日出願公開、特開2003- 10887〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年6月28日の出願であって、平成18年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年2月9日付けで拒絶査定され、これに対し、平成19年3月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。その後、平成21年6月1日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋を通知し、期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが、請求人からは応答はなかった。

2.平成19年3月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年3月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年3月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
【請求項1】 水域及び陸地に設置された水槽構造物の中に各揚水ポンプにて、高酸素濃度・高温の「表層水」と貧酸素濃度・富栄養・低温の「底層水」を各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事により混合比重が異なる混合水=密度水が生成される、「水域及び陸地等で、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌して、水中に放流拡散する殺菌密度水放流拡散装置。」
と補正された。
上記補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ポンプ」を「各揚水ポンプ」に限定するとともに、「入れる事」を「各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事」に限定し、「混合された密度水」を「混合比重が異なる混合水=密度水」に限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかについて、以下に検討する。

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-94599号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する装置であって、装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置と、該混合装置における表層水と低層水との混合比率を各層の水温に応じて制御する流量制御手段とを、備えたことを特徴とする混合型強制循環装置。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「本発明は、自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する混合型強制循環装置に関するものである。」(段落【0001】)
(ウ)「図1から図3に示すように、混合型強制循環装置1はその装置本体3内の底部外周に、装置本体3の外周側面に設けられた表層水吸水口4から吸水した表層水を蓄える表層水タンク5が設けられると共に、装置本体3内の中央部に、装置本体3の下面中央部から垂下された低層水揚水管6下端の低層水吸水口7から吸水した低層水を蓄える低層水タンク8が設けられる。
また、装置本体3内の左,右両部には、前記両タンク5,8内に吸水した表層水と低層水とを混合する混合装置としての混合ポンプ9が設けられ、これらの混合ポンプ9の吐出側は装置本体3の下面から短尺で垂下された混合水排出管10にそれぞれ連通される。混合水排出管10の下端開口部が混合水排水口11となっている。」(段落【0009】?【0010】)
(エ)「前記各混合ポンプ9の吸入側には、表層水タンク5からの表層水量を調節する流量調節バルブ12Aと、低層水タンク8からの低層水量を調節する流量調節バルブ12Bとが設けられる。」(段落【0011】)
(オ)「次に、本混合型強制循環装置1の作用を、図4を参照して説明する。先ず、表層水吸水口4から吸水された20?25℃の表層水と低層水吸水口7から吸水された5?15℃の低層水は、一旦表層水タンク5,低層水タンク8に入り、ここから流量調節バルブ12A,12B及び混合ポンプ9によって任意比率で混ぜ合わされる。
そして、15?20℃の任意水温になった混合水は、混合水配水口11より湖水に戻されるが、水温によって等密度層(藻類消滅層である無光層)まで沈降して拡散する。」(段落【0013】?【0014】)

(2-2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-267691号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 水域の水を取水する取水機構と、空気を取り入れる空気取入機構と、該空気取入機構により取り入れられた空気から窒素を除去する窒素吸着器と、該取水機構により取水された水と該窒素吸着器により窒素を除去された空気とを混合して該水域中に噴射する水流発生機とをそなえたことを特徴とする、水域浄化装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(イ)「【請求項2】 該取水機構と該水流発生機との間に、該取水機構により取水された水を処理する処理槽をそなえ、該処理槽内に、該窒素吸着器により窒素を除去処理された空気を流通させて、該空気を該取水機構により取水された水に溶解させる酸素分子透過膜製の透過管がそなえられていることを特徴とする、請求項1記載の水域浄化装置。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)
(ウ)「【請求項3】 該取水機構と該水流発生機との間に、該取水機構により取水された水を処理する処理槽をそなえ、該処理槽内に、該水内に紫外線とオゾンとを供給して殺藻処理及び有機物分解処理を行なうUV・オゾン管がそなえられていることを特徴とする、請求項1又は2記載の水域浄化装置。」(【特許請求の範囲】【請求項3】)
(エ)「本発明は、河川,湖沼,ダム湖,貯水池等の水域を浄化する、水域浄化装置に関する。」(段落【0001】)
(オ)「透過管9内を流通する酸素濃度の高い圧縮空気のうちの酸素O_(2 )の一部は、透過管9の管壁を透過して処理槽3内を流通する水に溶け込む。これにより、処理槽3内を流通する水の溶存酸素量が増大する。」(段落【0028】)
(カ)「この水流発生機7においても、水と酸素とが混合するため、水流発生機7から水域へ噴出される水は、溶存酸素量が極めて多くなっており、溶存酸素による水域内の汚染物の分解(即ち、アオコの殺藻や有機物の分解等)が十分に行なわれるようになり、水域の浄化を確実に進めることができる。」(段落【0031】)
(キ)「処理槽本体3E内の水中に含まれたアオコ等は、UV・オゾン管10内の紫外線ランプ10Bから照射される紫外線に反応して殺藻される。」(段落【0043】)

(2-3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-102797号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「1 河川又は閉鎖水域の水を採取し、これを高酸素水として水中へ供給すると共に、前記河川又は閉鎖水域の水を不連続的に上下流動させることを特徴とした大量水の酸素量改善方法」(特許請求の範囲 請求項1)
(イ)「2 高酸素水は、低酸素水又は無酸素水の中へ高酸素の空気を吹き込んで生成することを特徴とした請求項1記載の大量水の酸素量改善方法」(特許請求の範囲 請求項2)
(ウ)「4 高酸素水を水中へ供給する散水装置と、高酸素水生成装置と、無酸素水又は低酸素水の取水装置と、水を上下流動させる間欠空気揚水装置とを結合させたことを特徴とする大量水の酸素量改善装置」(特許請求の範囲 請求項4)
(エ)「この発明は、主として閉鎖水域における低酸素の水又は無酸素の水を高酸素水の供給及び上下流動によって所定の溶存酸素量の水に改善することを目的とした大量水の酸素量改善方法及び装置に関する。」(第1頁右下欄7?11行)
(オ)「即ちこの発明によれば、高酸素水を湖底等に導き、これを上下対流させると共に、攪拌させるので、無酸素水又は低酸素水が急速に有酸素水となり魚類等の棲息が可能になると共に、水底好気性微生物が繁殖して有機物を分解し、有害ガスの発生及び栄養源の溶出を防止し得る効果がある。」(第3頁右下欄16行?第4頁左上欄1行)

(2-4)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-101886号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「(1)水中ポンプ1で汲み上げた池等の汚水を浮上ろ材を用いたろ過機3でろ過し、そのろ過水に紫外線を照射したのち、もとの池等に環流させることを特長とする池水等の浄化方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
(イ)「(3)水中に設置されたポンプ1とこのポンプ1が汲み上げた汚水をろ過するための浮上ろ材4を用いたろ過機3とこのろ過機3のろ過水に紫外線を照射する装置6とよりなり、・・・池水等の浄化装置。」(特許請求の範囲 請求項3)
(ウ)「この発明は、池水等の浄化方法並びにその装置に関し、大型の堀・湖沼等の浄化に用いて卓効を奏する浄化方法並びに浄化装置を提供せんとするものである。」(第1頁右下欄5?8行)
(エ)「この発明は、・・・、二次汚染が発生することがない紫外線を用いて有害微生物を死滅させるようにしたことを特長とするものである。」(第2頁左上欄4?8行)

(2-5)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-114393号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 池水導入流路と、
この池水導入流路に連結する循環ポンプと、
この循環ポンプの吐出側に設けた処理流路と、
この処理流路に下流側に向かって順次設けられた流量計,紫外線照射装置,濾過器及び銀イオン・銅イオン発生装置と、
この銀イオン・銅イオン発生装置の下流側に設けられ処理水を池に戻す導出流路と、
前記池水導入流路の池水導入口近傍の池水中に配設され池水中の電導度或いは濁度を検出するセンサと、
このセンサ及び流量計からの信号に基づいて循環ポンプと銀イオン・銅イオン発生装置を制御するコントローラとを備えて成ることを特徴とする池水浄化装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(イ)「本発明は、池水の浄化装置に係り、特に、親水又は修景用の人工池中の藻類の発生を防止するための浄化装置に関するものである。」(段落【0001】)
(ウ)「この紫外線照射によって、池水中の藻類は滅菌される。その後、濾過器23で殺菌された藻類が除かれる。次に、殺藻された処理水は、銀イオン・銅イオン発生装置25を通過し、ここで銀イオンと銅イオンが添加される。この銀イオンと銅イオンは、殺藻効果の持続を可能にするものである。」(段落【0027】)

(3)対比、判断
刊行物1は、記載事項(イ)に記載されているとおり「自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する混合型強制循環装置」に関するものであり、記載事項(ア)には、「装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置」を備えたものであることが記載されている。そして、記載事項(ウ)には、装置本体3内に、表層水を蓄える表層水タンク5及び低層水を蓄える低層水タンク8と共に「前記両タンク5,8内に吸水した表層水と低層水とを混合する混合装置としての混合ポンプ9が設けられ」ることが、記載事項(エ)には、「前記各混合ポンプ9の吸入側には、表層水タンク5からの表層水量を調節する流量調節バルブ12Aと、低層水タンク8からの低層水量を調節する流量調節バルブ12Bとが設けられる」ことが記載され、記載事項(オ)には、「表層水吸水口4から吸水された20?25℃の表層水と低層水吸水口7から吸水された5?15℃の低層水は、一旦表層水タンク5,低層水タンク8に入り、ここから流量調節バルブ12A,12B及び混合ポンプ9によって任意比率で混ぜ合わされる」こと、及び、「15?20℃の任意水温になった混合水は、・・・湖水に戻され」、「水温によって等密度層(藻類消滅層である無光層)まで沈降して拡散する」ことが記載されている。
これらの記載事項を本願補正発明の記載振りに則して整理すると、刊行物1には、
「自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する混合型強制循環装置であって、装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備えた装置本体を有し、20?25℃の表層水と5?15℃の低層水を、第1タンクからの表層水量を調節する流量調節バルブと第2タンクからの低層水量を調節する流量調節バルブにより表層水量と低層水量を調節することにより混合装置で任意比率で混ぜ合わされた混合水が生成され、この混合水を湖水に戻し拡散させる混合型強制循環装置。」の発明(以下、「刊行1-1発明」という。)が記載されているものと認められる。

そこで、本願補正発明と刊行1-1発明とを対比すると、刊行1-1発明の「自然湖沼・ダム湖等」は、本願補正発明の「水域」或いは「水域等」に包含されること、及び、刊行1-1発明の「表層水」、「低層水」は、それぞれ本願補正発明の「表層水」、「底層水」に相当することは明らかであり、刊行1-1発明の「20?25℃」、「5?15℃」は、それぞれ本願補正発明の「高温」、「低温」であるといえる。また、刊行1-1発明の「混合水」は、本願補正発明の「密度水」に相当するものであり、刊行1-1発明の「混合水」も表層水と低層水を「任意比率で混ぜ合わされた」ものであるから、本願補正発明でいう「混合比重が異なる混合水」であることは明らかである。そして、刊行1-1発明の「装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備えた装置本体」は、その中に表層水と低層水が吸水され混合水が生成されるものであることからみて、本願補正発明の「水槽構造物」に相当するものであるといえ、また、この「装置本体」は、「自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する混合型強制循環装置」の装置本体であることからみて、水域に設置されるものであることは明らかである。さらに、刊行1-1発明の「混合型強制循環装置」は、混合水を湖水に戻し拡散させるものであるから、「密度水」を「水中に放流拡散する」ものであり、「密度水放流拡散装置」といえるものである。
してみると、両者は、
「水域に設置された水槽構造物の中に、高温の「表層水」と低温の「底層水」により混合比重が異なる混合水=密度水が生成される、「水域等で、表層水と底層水を混合生成した密度水を、水中に放流拡散する密度水放流拡散装置。」」
で一致し、次の点で相違する。
相違点a:本願補正発明は、「表層水」及び「底層水」が、「高酸素濃度・高温の「表層水」と貧酸素濃度・富栄養・低温の「底層水」」であるのに対し、刊行1-1発明は、表層水が高酸素濃度であるとの特定及び低層水が貧酸素濃度・富栄養であるとの特定がない点。
相違点b:本願補正発明は、混合比重が異なる混合水=密度水が、各揚水ポンプにて、「表層水」と「底層水」を各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事により生成されるのに対し、刊行1-1発明は、装置本体に、装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備え、第1タンクからの表層水量を調節する流量調節バルブと第2タンクからの低層水量を調節する流量調節バルブにより表層水量と低層水量を調節することにより生成される点。
相違点c:本願補正発明は、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌する殺菌密度水放流拡散装置であるのに対し、刊行1-1発明は、密度水に大気中の酸素を混合すること、及び、密度水を殺菌することについて特定がなく、殺菌密度水放流拡散装置とまではいえない点。
そこで、相違点aについて検討する。
水質を浄化する必要のある水域において、表層水は高温であるばかりでなく高酸素濃度でもあること、及び、低層水は低温であるばかりでなく貧酸素濃度で富栄養でもあることは、従来より広く知られている。
よって、相違点aは、水質を浄化する必要のある水域における表層水と低層水の各々について広く知られた特性をあらためて特定したか否かの相違に過ぎず、実質的な相違点であるとは認められない。

次に、相違点bについて検討する。
まず、刊行1-1発明における装置本体内への表層水と低層水の吸水手段について検討すると、刊行物1には記載事項(ウ)に、「装置本体3内の中央部に、装置本体3の下面中央部から垂下された低層水揚水管6下端の低層水吸水口7から吸水した低層水を蓄える低層水タンク8が設けられる」との記載がある。この記載は、装置本体内に低層水揚水管を介して低層水を吸水すること、すなわち、装置本体内に低層水を揚水することを意味しており、かかる揚水に揚水ポンプを用いることは常套手段に過ぎない。他方、刊行物1には、装置本体内に表層水を揚水することに関する記載は無い。しかし、水を移送する手段としてポンプを使用することは広く一般的に用いられている技術であるから、装置本体内への表層水の吸水を揚水ポンプにて行うようにすることは、水域における表層水と装置本体内の表層水との位置関係に応じて当業者が普通に採用する事項に過ぎない。
また、刊行1-1発明は、装置本体の中に表層水と低層水により任意比率で混ぜ合わされた混合水、すなわち、混合比重が異なる混合水=密度水が生成されるものであるところ、装置本体の中で表層水と低層水により混合比重が異なる混合水=密度水を生成する手段としては、刊行1-1発明のように、装置本体に表層水を蓄える第1タンクと低層水を蓄える第2タンクと第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備えるようにし、各々流量調節バルブにより表層水量と低層水量を調節することにより混合装置で混合比重が異なる混合水を生成する手段のほか、単に装置本体の中に吸水する表層水と底層水の量をそのものを調節することにより装置本体の中に混合比重が異なる混合水を生成する手段があることは当業者にとって明らかなことである。
そして、揚水ポンプの揚水量は、バルブを調整し操作することにより、また、電圧を調整し操作することにより、容易に増減することができることは従来から広く知られていることであるから、装置本体の中に、それぞれ揚水ポンプにより、表層水と低層水を、各揚水ポンプのバルブを調整し操作し、また、電圧を調整し操作して各揚水ポンプの揚水量を増減して揚水することにより装置本体の中に混合比重が異なる混合水=密度水を生成することは、当業者にとって格別の困難性なく普通に思い至る事項である。
してみると、刊行1-1発明において、装置本体に表層水を蓄える第1タンクと低層水を蓄える第2タンクと第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備え、各々流量調節バルブにより表層水量と低層水量を調節することにより混合装置で混合比重が異なる混合水=密度水を生成する代わりに、装置本体の中に、それぞれ揚水ポンプにより、表層水と低層水を、各揚水ポンプのバルブを調整し操作し、また、電圧を調整し操作して各揚水ポンプの揚水量を増減して揚水することにより装置本体の中に混合比重が異なる混合水=密度水を生成するようにすること、すなわち、各揚水ポンプにて、「表層水」と「底層水」を各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事により混合比重が異なる混合水=密度水を生成するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

最後に相違点cについて検討する。
まず、水域を浄化する装置において、水域から採取した水に大気中の酸素を混合して水域に戻すこと、及び、水域から採取した水を殺菌して水域に戻すことは、本願出願前周知の技術である。
例えば、刊行物2には、記載事項(ア)、(イ)に、水域の水を取水する取水機構により取水された水と窒素吸着器により窒素を除去された空気とを混合して水域中に噴射する水流発生機とを備えた水域浄化装置と、この水域浄化装置にさらに窒素吸着器により窒素を除去処理された空気を流通させて、この空気を取水機構により取水された水に溶解させる酸素分子透過膜製の透過管が備えられている処理槽を備えた水域浄化装置が記載され、記載事項(オ)、(カ)には、これらの装置により水と空気中の酸素が混合し水の溶存酸素量が極めて多くなり、水域の浄化を確実に進めることができることが記載されている。また、記載事項(ウ)には、水域の水を取水する取水機構により取水された水と窒素吸着器により窒素を除去された空気とを混合して水域中に噴射する水流発生機とを備えた水域浄化装置に、さらに該水内に紫外線とオゾンとを供給して殺藻処理及び有機物分解処理を行なうUV・オゾン管が備えられている処理槽を備えた水域浄化装置が記載され、記載事項(キ)には、この装置によりアオコ等が紫外線に反応して殺藻されることが記載されている。
そして、刊行物3には、河川又は閉鎖水域の水を採取し、これに高酸素の空気を吹き込むことにより生成した高酸素水を水中へ供給する大量水の酸素量改善装置が記載され、高酸素水を湖底等に導くことにより無酸素水又は低酸素水が急速に有酸素水となり魚類等の棲息が可能になることが記載されており、刊行物4には、水中ポンプで汲み上げた池等の汚水をろ過し、そのろ過水に紫外線を照射したのち、もとの池等に環流させる池水等の浄化装置が記載され、紫外線を用いて有害微生物を死滅させることが記載されている。さらに、刊行物5には、池水導入流路と、この池水導入流路に連結する循環ポンプと、処理流路と、処理水を池に戻す導出流路とを備え、この処理流路に紫外線照射装置を備えた池水浄化装置が記載され、紫外線照射によって池水中の藻類が滅菌されることが記載されている。
また、水域を浄化する装置において、複数の浄化手段を共に採用することも普通に行われていることである。
例えば、上述の刊行物2?5に記載された装置をみても、刊行物2の記載事項(ウ)に記載された水域浄化装置は、取水機構により取水された水と窒素吸着器により窒素を除去された空気とを混合して水域中に噴射する水流発生機と、水内に紫外線とオゾンとを供給して殺藻処理及び有機物分解処理を行なうUV・オゾン管とを共に備えたものである。また、刊行物3に記載された大量水の酸素量改善装置は、河川又は閉鎖水域の水を採取し、これに高酸素の空気を吹き込むことにより生成した高酸素水を水中へ供給する手段と、この河川又は閉鎖水域の水を不連続的に上下流動させる間欠空気揚水装置とを共に備えたものであり、刊行物4に記載された池水等の浄化装置は、池等の汚水をろ過するろ過機と、ろ過水に紫外線を照射する装置とを共に備えたものである。さらに、刊行物5に記載された池水浄化装置は、処理流路に紫外線照射装置と共に濾過器及び銀イオン・銅イオン発生装置を備えたものである。
してみれば、刊行1-1発明において、密度水に大気中の酸素を混合するようにすると共に密度水を殺菌するようにして、装置を殺菌密度水放流拡散装置といえるものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、混合比重が異なる混合水=密度水が、各揚水ポンプにて、「表層水」と「底層水」を各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事により生成されるようにしたこと、及び、密度水に大気中の酸素を混合し、密度水を殺菌して装置を殺菌密度水放流拡散装置としたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたとも認められない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年3月20日付けの手続補正は前記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成18年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された以下のとおりのものである。
【請求項1】 水域及び陸地に設置された水槽構造物の中にポンプにて、高酸素濃度・高温の「表層水」と貧酸素濃度・富栄養・低温の「底層水」を入れる事により混合された密度水が生成される、「水域及び陸地等で、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌して、水中に放流拡散する殺菌密度水放流拡散装置。」
【請求項2】 水槽構造物内の「表層水」と「底層水」が混合された密度水に自然界の太陽光線・照明及び紫外線光等の人工光線を当て殺菌する、「水域及び陸地等で、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌して、水中に放流拡散する殺菌密度水放流拡散装置。」

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1?5及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

5.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明に関し、「各揚水ポンプ」を「ポンプ」に拡張し、「各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事」を「入れる事」に拡張し、「混合比重が異なる混合水=密度水」を「混合された密度水」に拡張したものである。
してみると、本願発明の発明特定事項のうち、「ポンプ」を「各揚水ポンプ」に限定し、「入れる事」を「各揚水ポンプのバルブの調整(操作)と各電圧調整(操作)で各揚水量を増減して揚水する事」に限定すると共に、「混合された密度水」を「混合比重が異なる混合水=密度水」に限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明と同様の理由により、本願発明1も、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明2について
本願発明2についても、刊行物1に記載された発明と対比、判断する。
本願発明2は、前記2.の決定により却下された平成19年3月20日付けの手続補正による補正後の請求項2に記載された発明と同じものである。

刊行物1は、記載事項(イ)に記載されているとおり「自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する混合型強制循環装置」に関するものであり、その記載事項(ア)には、「装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置」を備えたものであることが記載されている。そして、記載事項(ウ)には、装置本体3内に、表層水を蓄える表層水タンク5及び低層水を蓄える低層水タンク8と共に「前記両タンク5,8内に吸水した表層水と低層水とを混合する混合装置としての混合ポンプ9が設けられ」ることが記載され、記載事項(オ)には、「・・・表層水と・・・低層水は、一旦表層水タンク5,低層水タンク8に入り、・・・混合ポンプ9によって・・・混ぜ合わされる」こと、及び、「混合水は、・・・湖水に戻され」、「水温によって等密度層(藻類消滅層である無光層)まで沈降して拡散する」ことが記載されている。
これらの記載事項を整理すると、刊行物1には、
「自然湖沼・ダム湖等に浮かべられて水質を浄化する混合型強制循環装置であって、装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備えた装置本体を有し、混合装置で表層水と低層水が混ぜ合わされた混合水が生成され、この混合水を湖水に戻し拡散させる混合型強制循環装置。」
の発明(以下、「刊行1-2発明」という。)が記載されているものと認められる。
そこで、本願発明2と刊行1-2発明とを対比すると、刊行1-2発明の「自然湖沼・ダム湖等」は、本願発明2の「水域」或いは「水域等」に包含されることは明らかであり、刊行1-2発明の「表層水」、「低層水」は、それぞれ本願発明2の「表層水」、「底層水」に相当することは明らかである。また、刊行1-2発明の「混合水」は、表層水と低層水が混合されたものであるから、本願発明2の「密度水」に相当し、刊行1-2発明の「装置本体内に吸水した表層水を蓄える第1タンクと、装置本体内に吸水した低層水を蓄える第2タンクと、第1タンクからの表層水と第2タンクからの低層水を混合して装置本体外の水中に排出する混合装置を備えた装置本体」は、その中で表層水と低層水が混ぜ合わされた混合水が生成されるものであるから、本願発明2の「水槽構造物」に相当する。そして、刊行1-2発明の「混合型強制循環装置」は、「混合水を湖水に戻し拡散させる」ものであるから、「密度水」を水中に放流拡散するものであり、「密度水放流拡散装置」といえるものである。
してみると、両者は、
「水槽構造物内の「表層水」と「底層水」が混合され、「水域等で、表層水と底層水を混合生成した密度水を、水中に放流拡散する密度水放流拡散装置。」」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点d:本願発明2は、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌する殺菌密度水放流拡散装置であり、しかも、水槽構造物内の「表層水」と「底層水」が混合された密度水に自然界の太陽光線・照明及び紫外線光等の人工光線を当て殺菌するものであるのに対し、刊行1-2発明は、密度水に大気中の酸素を混合すること、及び、密度水を殺菌することについて特定がなく、殺菌密度水放流拡散装置とまではいえない点。

そこで、相違点dについて検討する。
前記2.(3)で相違点cについて述べたとおり、例えば刊行物2?5に記載されているように、水域を浄化する装置において、水域から採取した水に大気中の酸素を混合して水域に戻すこと、及び、水域から採取した水を殺菌して水域に戻すことは、本願出願前周知の技術であり、また、水域を浄化する装置において、複数の水域浄化手段を共に採用することも普通に行われていることである。
さらに、水域から採取した水を殺菌するに際し、水域を浄化する装置内で殺菌手段として紫外線光を用い、水に紫外線光を当てて殺菌することも、本願出願前周知の技術である。
例えば、刊行物2には、記載事項(ウ)に、水域の水を取水する取水機構により取水された水内に紫外線とオゾンとを供給して殺藻処理及び有機物分解処理を行なうUV・オゾン管が備えられている処理槽を備えた水域浄化装置が記載され、記載事項(キ)に「処理槽本体3E内の水中に含まれたアオコ等は、UV・オゾン管10内の紫外線ランプ10Bから照射される紫外線に反応して殺藻される」との記載がある。また、刊行物4には、汲み上げた池等の汚水をろ過する過機のろ過水に紫外線を照射する装置を備えた池水等の浄化装置が記載され、記載事項(エ)に「紫外線を用いて有害微生物を死滅させるようにした」との記載があり、刊行物5には、池水導入流路と、この池水導入流路に連結する循環ポンプと、処理流路と、処理水を池に戻す導出流路とを備え、この処理流路に紫外線照射装置を備えた池水浄化装置が記載され、記載事項(ウ)に「この紫外線照射によって、池水中の藻類は滅菌される」との記載がある。
してみれば、これらの事項を刊行1-2発明に適用し、密度水に大気中の酸素を混合するようにすると共に密度水を殺菌するようにして、装置を殺菌密度水放流拡散装置といえるものとし、さらに、この密度水の殺菌を、水槽構造物内の「表層水」と「底層水」が混合された密度水に紫外線光を当て殺菌するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、密度水に大気中の酸素を混合し、密度水を殺菌して装置を殺菌密度水放流拡散装置とし、さらに、水槽構造物内の「表層水」と「底層水」が混合された密度水に自然界の太陽光線・照明及び紫外線光等の人工光線を当て殺菌したことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたとも認められない。
したがって、本願発明2は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、いずれも、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-25 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-19 
出願番号 特願2001-235592(P2001-235592)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 安齋 美佐子
小川 慶子
発明の名称 「水域及び陸地等で、表層水と底層水と大気中の酸素を混合生成した密度水を殺菌して、水中に放流拡散する殺菌密度水放流拡散装置。」  
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