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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1207938
審判番号 不服2007-27760  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-10 
確定日 2009-12-07 
事件の表示 特願2003-417344「始動機/発電機システム及びその制御ASIC」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開,特開2004-215497〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年12月15日(パリ条約による優先権主張2002年12月13日,米国)の外国語でなされた出願であって,平成16年2月13日付けで翻訳文提出書が提出され,その後,平成19年7月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


2.平成19年10月10日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項12は,
「自動車車両エンジンを始動させ,自動車バッテリを充電するように構成された始動機/発電機システムで使用する制御ASICであって,
ブリッジ接続されたMOSゲートデバイスを有し,始動機モードと発動機モードのいずれか1つのモードで前記MOSゲートデバイスを駆動するための,前記始動機/発電機システムの3相MOSゲート制御インバータ/ブリッジの前記MOSゲートデバイスに電気的に結合され,かつ前記始動機モードと前記発動機モードで駆動されるように構成され,前記始動機/発電機システムの始動機/発電機を制御するのに必要なすべての制御回路を備えたことを特徴とする制御ASIC。」
と補正された。
上記補正は,実質的に,補正前の請求項12に記載した発明を特定するために必要な事項である「3相MOSゲート制御インバータ/ブリッジ」について「ブリッジ接続されたMOSゲートデバイスを有し」との限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項12に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-223594号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 バッテリ(22)の充電電力を発電する三相の磁石式同期発電機として機能するようにしてエンジン(6)に連結される電動機兼発電機(5)を,前記エンジン(6)の始動前には前記バッテリ(22)からの供給電力で回転するブラシレス直流電動機として機能させるための制御装置であって,バッテリ(22)のプラス側に接続されるコイル(71)と,導通時にはコイル(71)側に電流が流れるスイッチング機能を有して前記コイル(71)に直列に接続される第1半導体素子(72)と,前記コイル(71)側への電流の流れを阻止するようにして第1半導体素子(72)に並列接続される第1整流素子(73)と,導通時には前記コイル(71)側から電流が流れるようにして前記コイル(71)および第1半導体素子(72)の接続点とバッテリ(22)のマイナス側に連なるマイナス側ライン(ML)との間に設けられる第2半導体素子(74)と,前記コイル(71)側からの電流の流れを阻止するようにして第2半導体素子(74)に並列接続される第2整流素子(75)と,前記バッテリ(22)のプラス側およびコイル(71)間とマイナス側ライン(ML)との間に設けられる第1コンデンサ(76)と,前記第1半導体素子(72)および前記コイル(71)を介してバッテリ(22)のプラス側に接続されるプラス側ライン(PL)および前記マイナス側ライン(ML)間に設けられる第2コンデンサ(77)と,導通時にプラス側ライン(PL)からマイナス側ライン(ML)に電流が流れるスイッチング機能を有してプラス側ライン(PL)およびマイナス側ライン(ML)間に一対ずつ直列接続される3組の第3半導体素子(78)と,プラス側ライン(PL)からマイナス側ライン(ML)への電流の流れを阻止するようにして各第3半導体素子(78)にそれぞれ並列接続される6個の第3整流素子(79)とを備え,各組の第3半導体素子(78)の接続点が,前記電動機兼発電機(5)が備える三相のコイル(14U,14V,14W)にそれぞれ接続されることを特徴とする電動機兼発電機の制御装置。」

・「【0005】本発明は,かかる事情に鑑みてなされたものであり,部品点数を少なくした単純な回路構成で,バッテリを充電可能な三相の磁石式同期発電機として機能する電動機兼発電機をエンジンを始動させるブラシレス直流電動機として機能させ得るようにした電動機兼発電機の制御装置を提供することを目的とする。」

・「【0007】このような構成によれば,バッテリを充電するにあたっては,各第3半導体素子および第2半導体素子を遮断し,第1半導体素子のスイッチング状態を切換え制御すればよく,エンジンで駆動される電動機兼発電機の各相コイルから出力される電流が各第3整流素子を流れ,プラス側ラインおよびマイナス側ライン間に生じる直流電圧が,第1半導体素子,コイル,第2整流素子および第1コンデンサで構成される降圧チョッパで所定の電圧に降圧調節され,バッテリにチャージされることになる。一方,電動機兼発電機をバッテリからの電力によってエンジン始動用の電動機として機能させるにあたっては,第1半導体素子を遮断するとともに各第3半導体素子および第2半導体素子のスイッチング状態を切換え制御すればよい。そうすればバッテリから出力される直流電圧が,コイル,第2半導体素子,第1整流素子および第2コンデンサで構成される昇圧チョッパで昇圧調節され,各第3半導体素子で構成される三相のインバータ回路により所定の直流電圧が各相のコイルに順次印加されることになり,電動機兼発電機が回転してエンジンが起動される。すなわち電動機発電機をバッテリチャージ用の磁石式同期発電機として機能させるに必要な三相のインバータ回路および降圧チョッパに,第2半導体素子,第2整流素子および第2コンデンサ等のわずかな個数の部品を付加するだけの簡単な回路構成で,電動機兼発電機をエンジン始動用のブラシレス直流電動機として機能させることが可能となる。」

・「【0009】図1?図8は本発明の一実施例を示すものであり,・・・図3は制御装置の構成を示す回路図,図4はインテリジェントパワーモジュールの内部構成の一部を示す回路図,・・・」

・「【0016】図3において,電動機兼発電機5は,エンジン6の始動前にはブラシレス直流電動機として機能するとともにエンジン6の始動後にはバッテリ22を充電するための交流電力を発電する三相の磁石式同期発電機として機能するように制御ユニット21で制御されるものであり,この制御ユニット21には,電動機兼発電機5が備えるロータ8の回転位置を検出する回転位置検出手段20からの回転位置検出信号が入力される。」

・「【0017】回転位置検出手段20は,電動機兼発電機5が備える各相のコイル14U…,14V…,14W…の誘起電圧を検出するとともにその誘起電圧に基づいてロータ8の回転位置を検出すべく構成されるものであり,各相のコイル14U…,14V…,14W…にそれぞれ個別に対応したコンパレータ24U,24V,24Wを備える。」

・「【0021】このような各コンパレータ24U,24V,24Wからの出力電圧は,分圧抵抗29…,30…でさらに分圧され,制御ユニット21の一部を構成するセンサレスモータ制御IC36に分圧電圧が入力される。」

・「【0024】制御ユニット21は,インテリジェントパワーモジュール(以下,IPMと略称する)35と,前記回転位置検出手段20からの信号を受けて各相のコイル14U…,14V…,14W…のドライブ信号を出力するセンサレスモータ制御IC36と,センサレスモータ制御IC36からのドライブ信号をIPM35に対応したドライブ信号に分割するドライブ信号分割回路37とを備える。」

・「【0026】図4において,IPM35は,バッテリ22のプラス側にリレースイッチ48および起動スイッチ23を介して接続されるコイル71と,該コイル71に直列に接続される第1半導体素子としての第1IGBT72と,コイル71側への電流の流れを阻止するようにして第1IGBT72に並列接続される第1整流素子としての第1ダイオード73と,前記コイル71および第1IGBT72の接続点とバッテリ22のマイナス側に抵抗80を介して連なるマイナス側ラインMLとの間に設けられる第2半導体素子としての第2IGBT74と,コイル71側からの電流の流れを阻止するようにして第2IGBT74に並列接続される第2整流素子としての第2ダイオード75と,バッテリ22のプラス側およびコイル71間とマイナス側ラインMLとの間に設けられる第1コンデンサ76と,前記第1IGBT72およびコイル71を介してバッテリ22のプラス側に接続されるプラス側ラインPLおよび前記マイナス側ラインML間に設けられる第2コンデンサ77と,プラス側ラインPLおよびマイナス側ラインML間に一対ずつ直列接続される3組の第3半導体素子としての第3IGBT78,78…と,プラス側ラインPLからマイナス側ラインMLへの電流の流れを阻止するようにして各第3IGBT78,28…にそれぞれ並列接続される6個の第3整流素子としての第3ダイオード79,79…とを備える。
【0027】スイッチング機能を有する第1IGBT72は,導通時にコイル71側に電流が流れることを可能としてコイル71およびプラス側ラインPL間を接続し,スイッチング機能を有する第2IGBT74は,導通時にはコイル71側から電流が流れるようにしてコイル71および第1IGBT72の接続点とマイナス側ラインMLとの間に設けられる。
【0028】第1および第2IGBT72,74のゲートには,それらの導通・遮断を切換えるためのゲートドライブ回路81,82がそれぞれ接続されており,各ゲートドライブ回路81,82は電圧調整回路制御部83により制御される。
【0029】電圧調整回路制御部83には,コイル71およびバッテリ22のプラス側間と,マイナス側ラインMLとの間を直列に接続する分圧抵抗84,85の接続点が接続されるとともに,プラス側ラインPLおよびマイナス側ラインML間を直列に接続する分圧抵抗86,87の接続点が接続されている。而して電圧調整回路制御部83は,電動機兼発電機5を三相の磁石式同期発電機として機能させてバッテリ22のチャージを行なうときには,分圧抵抗84,85で分圧された電圧に応じて第1IGBT72のスイッチング状態を切換え制御するとともに第2IGBT74を遮断し,また電動機兼発電機5をエンジン6の始動のためにブラシレス直流電動機として機能させるときには,分圧抵抗86,87で分圧された電圧に応じて第2IGBT74のスイッチング状態を切換え制御するとともに第1IGBT72を遮断する。」

・「【0030】スイッチング機能を有して一対ずつ直列接続される3組の第3IGBT78,78…と,それらのIGBT78,78…にそれぞれ並列接続される6個の第3ダイオード79,79…とは,ブラシレス直流電動機を駆動するためのインバータ90を構成するものであり,導通時にプラス側ラインPLからマイナス側ラインMLに電流が流れるようにしてプラス側ラインPLおよびマイナス側ラインML間に一対ずつ直列接続される3組の第3IGBT78,78…の接続点が,電動機兼発電機5が備える三相のコイル14U,14V,14W(図1参照)にそれぞれ接続される。
【0031】各第3IGBT78,78…のゲートには,各IGBT78…の導通・遮断を切換えるためのゲートドライブ回路88,88…がそれぞれ接続されており,各ゲートドライブ回路88,88…はインバータ回路制御部89により制御される。
【0032】インバータ回路制御部89は,電動機兼発電機5を三相の磁石式同期発電機として機能させてバッテリ22のチャージを行なうときには,各第3IGBT78,78…を遮断し,また電動機兼発電機5をエンジン6の始動のためにブラシレス直流電動機として機能させるときには各第3IGBT78,78…のスイッチング状態を切換え制御する。」

・「【0033】再び図3において,リレースイッチ48は,バッテリ22から出力される直流電圧が低い状態では遮断しているものであり,起動スイッチ23の導通初期には,バッテリ22からの直流電流は抵抗47を介してコンデンサ40に流れ込むことになる。したがって起動スイッチ23の導通に応じてコンデンサ40にバッテリ22からの直流電流が急激に流れこむことはない。
【0034】リレースイッチ48は,前記コンデンサ40に接続されるリレーコイル59と共働してリレー60を構成するものであり,リレーコイル59はFET61を介して接地され,FET61のゲートには,コンデンサ40からIPM35に入力される直流電圧が設定圧以上となるのに応じてFET61を導通せしめるようにしてDC電圧検出回路63が接続される。」

・「【0035】またIPM35の電圧調整回路制御部83およびインバータ回路制御部89にはOR回路62の出力信号が入力されており,OR回路62には,回転数検出回路64および誤動作保護回路65の出力が並列に入力される。
【0036】回転数検出回路64は,センサレスモータ制御IC36から入力される電動機兼発電機5の回転数がエンジン6の起動回転数以上になるのに応じてハイレベルの信号を出力するものであり,センサレスモータ制御IC36は,回転位置検出手段20からの信号を受けて電動機兼発電機5の回転数を演算する。」

・「【0037】IPM35は,入力される直流電流を検出する機能を有しており,この検出直流電流は過電流検出回路66に入力される。この過電流検出回路66は,IPM35に入力される直流電流が設定値以上であるか否かを判断し,設定値以上であるときには,その旨を示す信号をセンサレスモータ制御IC36に入力する。而してセンサレスモータ制御IC36は,IPM35に入力される直流電流が設定値以上であるときには,ドライブ信号分割回路37に付与するドライブ信号のパルス幅を狭めるようにして,ブラシレス直流電動機として機能している電動機兼発電機5が備えるコイル14U…,14V…,14W…の励磁電流を制限することになる。」

・「【0038】図5において,ドライブ信号分割回路37は,電動機兼発電機5のU相コイル14U…に対応した部分では,抵抗68,71?75,NPNトランジスタ69,PNPトランジスタ70,バッファ76およびインバータ77を備える。」

・「【0040】バッファ76およびインバータ77の出力は,IPM35のインバータ回路制御部89にそれぞれ入力される。
【0041】このような回路において,図5のA,B,Cで示す部分の信号は,図6で示すように変化するものであり,U相のコイル14U…に対応してセンサレスモータ制御IC36からドライブ信号分割回路37に付与される信号(A)が,IPM35のインバータ回路90においてU相のコイル14U…に対応した一対の第3IGBT78,78に対応して2つの信号(C,B)に分割されてドライブ信号分割回路37から出力されることになる。
【0042】電動機兼発電機5のV相コイル14V…に対応した部分,ならびにW相コイル14W…に対応した部分のドライブ信号分割回路37の構成は,図5で示した回路と同一に構成されており,V相のコイル14V…およびW相のコイル14W…に対応してセンサレスモータ制御IC36からドライブ信号分割回路37に付与される信号は,IPM35のインバータ回路90がV相のコイル14V…に対応して備える一対のIGBT78,78,ならびにインバータ回路90がW相のコイル14W…に対応して備える一対のIGBT78,78に対応してそれぞれ2つの信号に分割されることになる。」

・「【0043】次にこの実施例の作用について説明すると,回転位置検出手段20は,電動機兼発電機5が備える3相のコイル14U…,14V…,14W…の誘起電圧を検出するとともにその誘起電圧に基づいてロータ8の回転位置を検出するように構成されており,電動機兼発電機5の組立作業を簡略化することができる。」

・「【0045】電動機兼発電機5を三相の磁石式同期発電機として機能させてバッテリ22を充電するにあたっては,図7の鎖線で示すように第2IGBT74を遮断するとともに,インバータ回路90における第3IGBT78,78…を全て遮断し,分圧抵抗84,85で分圧された電圧に応じて第1IGBT72のスイッチング状態を切換え制御する。
【0046】そうすると,エンジン6で駆動される電動機兼発電機5の各相コイル14U,14V,14Wから出力される電流が各第3ダイオード79,79…を流れ,コイル71,第1IGBT72,第2ダイオード75および第1コンデンサ76が,鎖線で囲むように降圧チョッパ91として機能することになる。
【0047】この降圧チョッパ91においては,プラス側およびマイナス側ラインPL,ML間に生じている直流電圧が第1IGBT72の導通・遮断に応じて所定の電圧に降圧調整されるとともに第1コンデンサ76で平滑化されてバッテリ22にチャージされることになる。」

・「【0048】一方,電動機兼発電機6をバッテリ22からの電力によってエンジン6を始動始動するためのブラシレス直流電動機として機能させるにあたっては,図8の鎖線で示すように第1IGBT72を遮断するとともに,各第3IGBT78,78…のスイッチング状態を切換え制御し,さらに分圧抵抗86,87で分圧された電圧に応じて第2IGBT74のスイッチング状態を切換え制御する。
【0049】そうすると,コイル71,第2IGBT74,第1ダイオード73および第2コンデンサ77が,鎖線で囲むように昇圧チョッパ92として機能することになる。
【0050】この昇圧チョッパ92においては,バッテリ22から出力される直流電圧が,第2IGBT74の導通・遮断に応じて所定の電圧まで昇圧調節され,三相のインバータ回路90により所定の直流電圧が各相のコイル14U,14V,14Wに順次印加されることになり,電動機兼発電機5が回転してエンジン6が起動される。
【0051】すなわち電動機発電機5をバッテリチャージ用の磁石式同期発電機として機能させるに必要な三相のインバータ回路90および降圧チョッパ91に,第2IGBT74,第2ダイオード75および第2コンデンサ77を付加する程度に部品点数を増やすだけの簡単な回路構成で,電動機兼発電機5をエンジン始動用のブラシレス直流電動機として機能させることが可能となる。」

・「【0053】たとえばスイッチング機能を有する半導体素子として,IGBTに代えてFETやSCRを用いることも可能である。」

・【図3】には,電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステムが示されている。

・【図4】には,ブリッジ接続された第3半導体素子(78)及びプラス側ライン(PL)からマイナス側ライン(ML)への電流の流れを阻止するようにして各第3半導体素子(78)にそれぞれ並列接続される第3整流素子(79)を有する,三相のインバータ回路(90)の主回路(図4において,符号90で示されるインバータ回路から,符号88で示されるゲートドライブ回路を除いたもの)が示されている。

・【図3】及び【図4】には,バッテリ(22)と電動機兼発電機(5)との間に接続され,三相のインバータ回路(90)の主回路と,始動時では,前記三相のインバータ回路(90)から前記電動機兼発電機(5)に印加される直流電圧を所定の電圧まで昇圧調整する昇圧チョッパ(92)として機能し,発電時では,前記三相のインバータ回路(90)の第3整流素子(79)によって生じる直流電圧を降圧調整する降圧チョッパ(91)として機能する,コイル(71),第1半導体素子(72),第1ダイオード(73),第2半導体素子(74),第2ダイオード(75),第1コンデンサ(76)及び第2コンデンサ(77)からなる回路と,コンデンサ(40),抵抗(47)及びリレー(60)(リレースイッチ(48)とリレーコイル(59)とで構成)からなる回路とを備えた制御ユニット(21)の主回路が示されている。

・そして,段落【0016】,段落【0024】,段落【0026】?【0029】,段落【0030】?【0032】,段落【0033】?【0034】,段落【0035】?【0036】,段落【0037】,段落【0038】,段落【0040】?【0042】,段落【0045】?【0047】,段落【0048】?【0051】,【図3】及び【図4】の各記載によると,制御ユニット(21)が備えるすべての回路から,制御ユニット(21)の主回路を除いた,複数の回路を備えた制御回路装置が示されている。
また,三相のインバータ回路(90)の第3半導体素子(78)に制御回路装置が接続されることが示されている。
さらに,制御回路装置が,電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステムにおいて使用されることが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には,次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「エンジン(6)を始動させ,バッテリ(22)を充電するように構成された電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステムで使用する制御回路装置であって,
ブリッジ接続されたFETを用いた第3半導体素子(78)及びプラス側ライン(PL)からマイナス側ライン(ML)への電流の流れを阻止するようにして各第3半導体素子(78)にそれぞれ並列接続される第3整流素子(79)を有し,前記電動機兼発電機(5)を前記エンジン(6)の始動のためにブラシレス直流電動機として機能させるとき(以下,「始動時」という。)と前記電動機兼発電機(5)を三相の磁石式同期発電機として機能させるとき(以下,「発電時」という。)のいずれかで前記第3半導体素子(78)の導通・遮断が切換えされる,前記電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステムの三相のインバータ回路(90)の前記第3半導体素子(78)に接続され,かつ,始動時と発電時で前記第3半導体素子(78)の導通・遮断を切換えるように構成され,
制御ユニット(21)が備えるすべての回路から,制御ユニット(21)の主回路を除いた,複数の回路を備えた制御回路装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

・後者の「電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステム」は前者の「始動機/発電機システム」に相当し,後者の「電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステムで使用する制御回路装置」と,前者の「始動機/発電機システムで使用する制御ASIC」とは,「始動機/発電機システムで使用する制御回路装置」との概念で共通する。

・後者の「FETを用いた第3半導体素子(78)」と前者の「MOSゲートデバイス」は,「ゲートデバイス」という概念で共通し,さらに,後者の「ブリッジ接続されたFETを用いた第3半導体素子(78)及びプラス側ライン(PL)からマイナス側ライン(ML)への電流の流れを阻止するようにして各第3半導体素子(78)にそれぞれ並列接続される第3整流素子(79)を有し」との態様と,前者の「ブリッジ接続されたMOSゲートデバイスを有し」との態様とは,「ブリッジ接続されたゲートデバイスを有し」との概念で共通する。

・後者の「電動機兼発電機(5)をエンジン(6)の始動のためにブラシレス直流電動機として機能させるとき」は前者の「始動機モード」に相当し,以下同様に,「電動機兼発電機(5)を三相の磁石式同期発電機として機能させるとき」は「発動機モード」に,「いずれかで」は「いずれか1つのモードで」にそれぞれ相当する。

・後者の「第3半導体素子(78)の導通・遮断が切換えされる」と,前者の「MOSゲートデバイスを駆動するための」とは,「ゲートデバイスを駆動するための」との概念で共通する。

・後者の「三相のインバータ回路(90)」はゲートデバイスであるFETを有しているのであるから,後者の「電動機兼発電機(5)及びその制御装置を備えたシステムの三相のインバータ回路(90)」と,前者の「始動機/発電機システムの3相MOSゲート制御インバータ/ブリッジ」とは,「始動機/発電機システムの3相ゲート制御インバータ/ブリッジ」との概念で共通する。

・後者の「接続され」る態様は前者の「電気的に結合され」る態様に相当する。

・後者の「始動時と発電時で第3半導体素子(78)の導通・遮断を切換えるように構成され」との態様は,前者の「始動機モードと発動機モードで駆動されるように構成され」との態様に相当する。

・後者の「制御ユニット(21)が備えるすべての回路から,制御ユニット(21)の主回路を除いた,複数の回路」は,前者の「始動機/発電機システムの始動機/発電機を制御するのに必要なすべての制御回路」に相当する。

したがって,両者は,
「エンジンを始動させ,バッテリを充電するように構成された始動機/発電機システムで使用する制御回路装置であって,
ブリッジ接続されたゲートデバイスを有し,始動機モードと発動機モードのいずれか1つのモードで前記ゲートデバイスを駆動するための,前記始動機/発電機システムの3相ゲート制御インバータ/ブリッジの前記ゲートデバイスに電気的に結合され,かつ前記始動機モードと前記発動機モードで駆動されるように構成され,前記始動機/発電機システムの始動機/発電機を制御するのに必要なすべての制御回路を備えた制御回路装置。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
始動機/発電機システムの用途に関して,本願補正発明では,自動車を用途とし,エンジンが「自動車車両エンジン」であるとともに,バッテリが「自動車バッテリ」であるのに対して,引用発明では,そのような特定はされていない点。

[相違点2]
3相ゲート制御インバータ/ブリッジのゲートデバイスが,本願補正発明では,MOSゲートデバイスであるのに対して,引用発明では,FETである点。

[相違点3]
制御回路装置の構造に関して,本願補正発明では,ASICを用いて,これに始動機/発電機システムの始動機/発電機を制御するのに必要なすべての制御回路を備えたものとしているのに対して,引用発明では,そのような特定はされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
電動機または発電機として機能する回転機を用いて,エンジンの始動と発電を行う装置を,自動車に用いることは,次の文献にも開示されているようにこの出願前に周知の事項(以下,「周知事項1」という。)であるから,これを引用発明に適用することにより,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものと認められる。
なお,上記周知事項1は,例えば,特開2001-69797号公報(特に,段落【0001】,段落【0021】?【0023】及び図1の記載を参照。)及び実願平1-113457号(実開平3-54400号)のマイクロフィルム(特に,2ページ10?16行の記載を参照。)などに開示されている。

[相違点2について]
インバータのブリッジ接続されるゲートデバイスとして,MOS形のFETが用いられることは,特に文献を示すまでもなく,この出願前に周知の事項(以下,「周知事項2」という。)であるから,これを引用発明におけるゲートデバイスとして用いることにより,上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものと認められる。

[相違点3について]
各種の機器において,特定用途向け集積回路であるASICを用いることは次の文献にも開示されているようにこの出願前に周知の事項(以下,「周知事項3」という。)であり,構成の簡素化を目的として,これを引用発明に適用することは当業者が容易に着想し得ることと認められる。
その際,ASICは用途に合わせて特別仕様とされるものであって,どのような回路を含めるかは任意に設計されるものであるから,引用発明において,制御ユニット(21)が備えるすべての回路から,三相のインバータ回路(90)を備えた主回路を除いた,複数の回路(始動機/発電機システムの始動機/発電機を制御するのに必要なすべての制御回路)をすべてASICに備えたものとすることは当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。
なお,上記周知事項3は,例えば,特表平11-513240号公報(特に,5ページ23行?2ページ4行,6ページ18?22行,8ページ28行?9ページ2行,図1及び図2の記載を参照。),特開平11-46125号公報(特に,段落【0003】の記載を参照。)及び特開平4-32249号公報(特に,1ページ右下欄5?15行の記載を参照。)などに開示されている。
よって,引用発明において,上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものと認められる。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果は,引用発明及び上記周知事項1?3から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び上記周知事項1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項12に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成18年12月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「自動車のエンジンを始動させ,バッテリを充電するように構成され,始動機モードと発動機モードのいずれか1つのモードで駆動される3相MOSゲート制御インバータ/ブリッジを有する始動機/発電機システムで使用する制御ASICであって,
前記始動機/発電機システムの3相MOSゲート制御インバータ/ブリッジのブリッジ接続されたMOSゲートデバイスに電気的に結合され,前記始動機モードと前記発動機モードで駆動されるように構成され,前記始動機/発電機システムの始動機/発電機を制御するのに必要なすべての制御回路を備えたことを特徴とする制御ASIC。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から,実質的に,「3相MOSゲート制御インバータ/ブリッジ」の限定事項である「ブリッジ接続されたMOSゲートデバイスを有し」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(4)」に記載したとおり,引用発明及び上記周知事項1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び上記周知事項1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知事項1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-13 
結審通知日 2009-07-17 
審決日 2009-07-28 
出願番号 特願2003-417344(P2003-417344)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02P)
P 1 8・ 121- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 槙原 進
仁科 雅弘
発明の名称 始動機/発電機システム及びその制御ASIC  
代理人 谷 義一  
復代理人 加藤 信之  
代理人 阿部 和夫  

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