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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1207958
審判番号 不服2006-14971  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-12 
確定日 2009-12-04 
事件の表示 特願2003-406320「画像形成装置、画像形成方法、文書管理システム、文書管理方法、画像形成プログラム、および画像形成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-161769〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明
本願は、平成15年12月4日の出願であって、平成18年6月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月8日付けで明細書に係る手続補正がなされた後、平成18年9月25日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成21年2月17日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から同年4月27日付けで回答書が提出されたものである。
さらに、当審において平成21年7月1日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して、同年9月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

本願の発明は、平成21年9月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 印刷ジョブを受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けられた印刷ジョブに、画像データに付加して印刷される文書管理上の制限事項を示す所定のマークの付加指示が含まれているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記印刷ジョブに前記所定のマークの付加指示が含まれていると判断された場合、ICタグを含む記録材に前記画像データが示す画像および前記所定のマークを印刷する印刷手段と、
前記判断手段により前記印刷ジョブに前記所定のマークの付加指示が含まれていると判断された場合、前記記録材に含まれるICタグに前記所定のマークの内容を示すマーク情報を書き込む書込手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。 」


2.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1について
原審の拒絶理由通知に先行技術文献として提示され、原審の拒絶査定に引用され、当審からの拒絶理由通知に引用された、特開2002-337426号公報(以下、「刊行物1」という。)には以下の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)

(1-a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 データの読み書きが可能で、そのデータを電波によって送受信するRFIDタグを付属してなるRFIDタグ付き印字用紙。
【請求項2】 与えられたデータに基づいて文字や図形などを印字用紙に印字するプリンタにおいて、
RFIDタグにデータを書き込む書込手段を備え、
与えられたデータ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれていたとき、RFIDタグ付き印字用紙の供給を受けて当該印字用紙に文字や図形などを印字すると共に、当該印字用紙のRFIDタグに前記書込手段によってデータを書き込むことを特徴とするプリンタ。
・・・(請求項3?5、省略)・・・
【請求項6】 複写操作する人のID情報を入力する入力手段を備え、
原稿のRFIDタグ付き印字用紙のRFIDタグには、複写許可情報が書き込まれていて、前記読取手段が読み取った複写許可情報と前記入力手段から入力されたID情報とを比較し、複写操作する人が複写を許可された人であるとき、複写を実行するように構成されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の複写機。」

(1-b)「【0002】
【発明が解決しようとする課題】最近、文字や図形など、人が目で見て認識できる情報(以下、視認情報)とコンピュータが扱うデジタル情報とを一体にして取り扱いたいという要求がある。例えば、ソフトウエアを頒布する場合、マニュアルがなければソフトウエアの取り扱いが困難である。このような場合、文字や図形などを印刷できると共に、デジタルデータを記録できる媒体があれば、ソフトウエアとそのマニュアルとを一体化できる。しかしながら、現在では、文字や図形などの視認情報とデジタル情報とを一体にできる媒体はなく、上記の要求に対応することはできない。」

(1-c)「【0020】次に、上記構成の作用を、場合に別けて説明する。
(1)プリント
まず、データ通信制御部31に外部機器、例えば図5に示すパソコン39を接続し、このパソコン39で作成した文書や図形などを複写機でプリントする場合を図6のフローチャートをも参照して説明する。データ通信制御部31がプリント開始信号を受信すると、制御回路29は、まずパソコン39から送信されてくるデータを受信し(ステップA1)、その受信データ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれているか否かを判断する(ステップA2)。RFIDタグに書き込むデータが含まれていない場合(ステップA2で「NO」)には、制御回路29は、自動給紙装置8を制御してトレー7のうち、RFIDタグ14のない通常の印字用紙が収納されているトレーを選択し、このトレーから通常の印字用紙を印字用紙送り通路9に送り出すようにする(ステップA6)。トレーから送り出された印字用紙は、印字用紙送り通路9中を送られて行く過程で、プリント部11により文字や図形などが印字(プリント)される。そして、その印字用紙は印字用紙送り通路9から排出トレイ10に排出され、以上によりプリントルーチンはエンドとなる。
【0021】ところで、パソコン39から送信されてきたデータ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれている場合がある。例えば、ソフトウエアとそのマニュアルとは一体化されていた方が使い易いので、RFIDタグ付き印字用紙13を用い、ソフトウエアをRFIDタグ14にデジタルデータとして書き込み、マニュアルを印字用紙13にプリントすれば便利である。この場合には、パソコン39でソフトウエアとマニュアルを作成し、そしてソフトウエアを構成するデータをRFIDタグ14に書き込むデータとして、マニュアルを構成する文字データやグラフィックスデータと共に複写機に送信する。このとき、ソフトウエアを複製する権限を有する者を限定したい場合、複製できる人の範囲を特定するデータを許可情報(限定情報)としてRFIDタグ14に書き込んでおく。
【0022】さて、上記のソフトウエアとマニュアルを構成するデータがパソコン39から送信されてくると、そのデータ中にRFIDタグ14に書き込むべきデータが含まれているので、制御回路29は、RFIDタグ付き印字用紙13が収納されているトレーを選択し、このトレーからRFIDタグ付き印字用紙13を印字用紙送り通路9に送り出すようにする(以上、ステップA2で「YES」、ステップA3)。そして、制御回路29は、印字用紙送り通路9の第3のリーダライタ17を制御して、RFIDタグ14にパソコン39から送信されてきたソフトウエアのデジタルデータを書き込む(ステップA4)。その後、制御回路29は、プリント部11を制御し、パソコン39から送信されてきた文字データやグラフィックスデータにより、RFIDタグ付き印字用紙13に文字や図形などを印字し(ステップA5)、エンドとなる。」

(1-d)「【0023】(2)複写
複写機で複写する場合、操作部34を操作して複写モードを選択し、原稿置き台3に原稿を置いてスタート操作を行う。すると、制御回路29は、図7及び図8の複写ルーチンに入り、図示しない自動原稿送り装置を起動して原稿を原稿送り通路4に送り込み、その原稿に記載された文字や図形などをスキャナ6によって読み取る(ステップB1)。次に、制御回路29は、原稿がRFIDタグ付きであるか否かを判断する。この判断は、原稿送り通路4の第1のリーダライタ15をセンサとして行われる。すなわち、制御回路29は、原稿送り通路4の第1のリーダライタ15を制御し、その送信アンテナ25からマルチリード信号を発信する。なお、マルチリード信号とは、不特定のRFIDタグに対して発せられる読取信号である。
【0024】RFIDタグは、マルチリード信号に対して応答信号を発信する。そこで、制御回路29は、第1のリーダライタ15がマルチリード信号を発信したにも拘らず、応答信号を受信しない場合、原稿にはRFIDタグが設けられていないと判断し(ステップB2で「NO」)、トレー7のうちから通常の印字用紙が収納されているトレーを選択し、自動給紙装置8を制御して当該トレーから通常の印字用紙を印字用紙送り通路9に送り出すようにする(ステップB3)。そして、制御回路29は、プリント部11を制御してRFIDタグ付き印字用紙13にスキャナ6で読み取った文字や図形などを印字し、エンドとなる。
【0025】マルチリード信号の発信後、第1のリーダライタ15の受信部28が応答信号を受信した場合、制御回路29は、原稿送り通路4を通る原稿がRFIDタグ付き印字用紙であると判断し(ステップB2で「YES」)、第1のリーダライタ15を制御して原稿のRFIDタグからデータを読み取る(ステップB5)。
【0026】次いで、制御回路29は、原稿のRFIDタグから読み取ったデータ中に許可情報(複写許可情報)があるか否かを判断する(ステップB6)。許可情報が含まれていなかった場合には、複写をする者を限定しないのであるから、制御回路29は、ステップB6で「NO」と判断してステップB10に移行し、トレー7のうちからRFIDタグ付き印字用紙13が収納されているトレーを選択する。
【0027】一方、原稿のRFIDタグから読み取ったデータ中に許可情報が含まれていた場合、制御回路29は、液晶表示器35に「ID番号入力」の表示を出力する(ステップB7)。この表示を見て複写操作を行う者がID情報として自分のID番号を入力手段としての操作部34から入力すると(ステップB8で「YES」)、制御回路29は、入力されたID番号を記憶すると共に、そのID番号が許可情報によって複写を許可された者の中に入っているか否かを判断し、許可者でなかった場合(ステップBで「NO」)、そこで複写ルーチンを中止し、エンドとなる。
【0028】複写の操作を行う者が複写を許可された者であった場合(ステップB9で「YES」)、制御回路29は、次にトレー7のうちからRFIDタグ付き印字用紙13が収納されているトレーを選択する(ステップB10)。」

(1-e)図6として、






(1-f)図7として、





(1-g)図8として、





上記の事項を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「与えられたデータに基づいて文字や図形などを印字用紙に印字するプリンタにおいて、
RFIDタグにデータを書き込む書込手段を備え、
データ通信制御部31がプリント開始信号を受信すると、その受信データ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれているか否かを判断し、
与えられたデータ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれていたとき、RFIDタグ付き印字用紙の供給を受けて当該印字用紙に文字や図形などを印字すると共に、
複製できる人の範囲を特定する複写許可情報など、コンピュータが扱うデジタル情報として記録しておくべきデータを、
当該印字用紙のRFIDタグに前記書込手段によって書き込む、プリンタ。」

(2)刊行物2について
当審からの拒絶理由通知に引用された、特開2000-20664号公報(以下、「刊行物2」という。)には以下の記載がある。 (下線は、当審にて付与した。)

(2-a)「【請求項1】 非接触で情報の記録再生が可能な非接触式情報記録媒体を、シート状に形成された印刷媒体の所定位置に取り付けてなるもので、前記印刷媒体に対する印字処理と、前記非接触式情報記録媒体に対する非接触での情報の記録再生処理とを行なえることを特徴とする複合媒体。」

(2-b)「【0002】
【従来の技術】周知のように、非接触で情報の記録再生を行なう非接触式情報記録媒体は、従来より、例えば無線カードや無線タグ等に代表される形態で、ゲート管理や物流管理等のシステムに広く利用されてきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の非接触式情報記録媒体は、現在のところ、携帯用または荷物に添付されるような、小型の単体として用いられているだけであって、その利用価値がまだまだ十分に発揮されていないのが現状である。
【0004】そこで、この発明は上記事情を考慮してなされたもので、非接触式情報記録媒体を印刷媒体に取り付けて、情報の記録再生と印刷との有機的な融合を図り、種々の分野への適用を効果的に促進させ得るようにした極めて良好な複合媒体及びその処理装置を提供することを目的とする。」

(2-c)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。すなわち、図1(a)は、複合媒体11を示している。この複合媒体11は、非接触式情報記録媒体12を、例えば筆記用紙、複写用紙及び印刷用紙等でなるシート状の印刷媒体13の所定位置に貼り付けて構成されている。
【0009】また、この複合媒体11は、図1(b)に示すように、非接触式情報記録媒体12を印刷媒体13の中に埋め込んで構成することもできる。なお、この場合には、印刷媒体13の製造工程中に、非接触式情報記録媒体12を埋設する必要がある。
【0010】この複合媒体11としては、非接触式情報記録媒体12の大きさや厚み等にもよるが、1枚の印刷媒体13に複数の非接触式情報記録媒体12を取り付けることも考えられる。この場合、複合媒体11には、図2に示すように、非接触式情報記録媒体12の取り付け位置を示すための指示情報14が印刷されている。
【0011】複合媒体11の非接触式情報記録媒体12の取り付け位置には、多少なりとも凹凸が存在するので、指示情報14は、複合媒体13上に人が筆記を行なう場合の目印として機能する。また、この指示情報14は、非接触式情報記録媒体12に対して情報の記録再生を行なう場合の目印としても機能する。」

(2-d)「【0046】なお、図14は、複合媒体11上で位置の決定された複合ヘッド18が、その位置において、印刷媒体13に対してバーコード情報BBBを印字し、非接触式情報記録媒体12に対してバーコード情報BBBを書き込む様子を、わかりやすくイメージしたものである。」

(2-e)「【0048】次に、この発明の他の実施の形態について説明する。図15(a)は、リーダライタ15を内蔵した押印装置20を示している。この押印装置20は、上側ケース20aと下側ケース20bとに分けられ、上側ケース20aに印鑑ラバー20cが搭載されている。また、印鑑ラバー20cの上方にリーダライタ15のアンテナ部15aと、スイッチ20dとが搭載されている。
【0049】押印動作については、下側ケース20bの底面を複合媒体11上に接触させ上側ケース20aを押し込むと、下側ケース20bが上側ケース20aの中に入り込むようにスライドして全体長が短くなり、上側ケース20aに搭載されている印鑑ラバー20cが複合媒体11の表面に接触し、印鑑が印字される。
【0050】図15(b)は、印刷媒体13の中に非接触式情報記録媒体12を埋設した複合媒体11に対して、押印装置20を用いた、インクによる印鑑の印字と、非接触式情報記録媒体12への非接触による個人認証データの書き込みとが行なわれることを示している。
【0051】前提条件として、リーダライタ15は、スイッチ20dがオンになると、メモリ15b6に記録されている個人認証データが読み出されて、アンテナ部15aを介して送出されるようになっているものとする。
【0052】押印装置20を複合媒体11に押し付けると、下側ケース20bが上側ケース20aの中に入り込むようにスライドし、印鑑ラバー20cが複合媒体11の表面に接触して、印鑑が印字される。このとき、同時に、スイッチ20dがオンになり、リーダライタ15が動作を開始し、メモリ15b6に記録されている個人認証データが、非接触式情報記録媒体12に書き込まれる。
【0053】このように、複合媒体11と押印装置20とを組み合わせることにより、印鑑の印字と同時に、非接触による個人認証データの書き込みも可能となる。このため、複合媒体11の表面に印字された内容だけでなく、非接触式情報記録媒体12に書き込まれた個人認証データを読み取ることにより、本人であることを確認することができ、セキュリティを高めることが可能となる。
なお、この発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。」

(2-f)図14として、





(2-g)図15として、







上記の事項を総合すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。

「情報の記録再生と印刷との有機的な融合を図ることを目的として、
非接触で情報の記録再生が可能な非接触式情報記録媒体を、シート状に形成された印刷媒体の所定位置に取り付けてなるものに対して、
前記印刷媒体に対する印字処理と、
例えば、バーコードの印字に対応したバーコード情報や、印鑑の印字に対応した個人認証データなど、前記印字処理に対応した情報の、前記非接触式情報記録媒体に対する非接触での記録処理とを同時に行なうこと。」

(3)刊行物3について
原審の拒絶理由通知及び当審からの拒絶理由通知に引用された、特開平9-305576号公報(以下、「刊行物3」という。)には以下の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)

(3-a)「【請求項1】印刷指定された文書データや帳票データ等を印刷物として印刷する印刷方法において、
前記印刷物に付加させたい表現内容に応じた付加印刷情報を複数設定し、
印刷するデータの指定、並びに、前記設定した複数の付加印刷情報の中から印刷物に付加させる付加印刷情報を選択して指定する印刷指定工程を備え、
この印刷指定工程において印刷指定されたデータを印刷物として印刷する際に、この印刷物の所定位置に前記印刷指定工程において指定された付加印刷情報を付加印刷することを特徴とする印刷方法。」

(3-b)「【0002】
【従来の技術】従来、例えば、ワードプロセッサ(Word Processor)やパーソナルコンピュータ(Personal Computer )、あるいはエンジニアリングワークステーション(Engineering Work Station)等のデータ出力装置においては、作成した文書データや帳票データなどを印刷装置(Printer )を用いて所定用紙に出力する印刷機能を備えている。
【0003】このようなデータ出力装置において印刷出力された文書や帳票等には、通常、以下に示すような処理が行なわれていた。例えば、業務に関する文書や帳票の場合、印刷出力したこれらの書類を回覧させるために、該書類の緊急度(至急、緊急、通常など)、重要性(重要、普通など)、機密性(極秘、部外秘、社外秘など)、取り扱い(手渡し、回覧後廃棄、回覧後返却)などを該書類の先頭ページの右肩に朱印のスタンプを押すことによって示したり、或いは、ファイリングの際に該書類の種別などが一目でわかるように用紙の縁にマーカーやシールで識別色や識別記号を付加したりしていた。」

(3-c)「【0044】また、図2には、付加印刷情報定義テーブルの一例として、緊急度に関する付加印刷情報について示したテーブルを挙げたが、付加印刷情報定義メモリ12bにはこの他にも同様にして、印刷出力される書類の重要性(重要、普通など)、機密性(極秘、部外秘、社外秘など)、取り扱い(手渡し、回覧後廃棄、回覧後返却)などに関する付加印刷情報ついて示したテーブルが格納される。」

(3-d)「【0072】なお、上記印刷指定処理(図3参照)及び印刷処理(図4参照)では、印刷される書類の緊急度に関する付加印刷情報について示したが、付加印刷情報は緊急度に関するものに限定されるわけではなく、図5に示した印刷指定用のサブウィンドウ22において、緊急度項目の下に、重要性項目(重要、普通など)、機密性項目(極秘、部外秘、社外秘など)、取り扱い項目(手渡し、回覧後廃棄、回覧後返却)などを設け、これらの各項目についても上記緊急度項目と同様の処理を行なう構成とすれば、上記各項目に関する付加印刷情報についても書類の所定位置に印刷可能となる。」

(3-e)「【0071】図6は、上記印刷処理(図4参照)によって作成される書類の先頭ページの一例を示す図である。なお、同図は、図2に示した緊急度に関する付加印刷情報定義テーブルにおいて、「大至急」が選択指定された場合について示すものである。図6に示すように付加印刷情報としての文字列「大至急」は、図2に示した付加印刷情報定義テーブルの、対応する「文字サイズ」、「文字修飾」、「文字色」及び「背景色」の各項目に格納されるデータに基づいて、文字サイズ「24」、枠付き、文字色及び枠色「オレンジ」で、印刷した書類の先頭ページの右肩部分に付加印刷される。以上が、本実施の形態のCPU13において実行される印刷処理の動作手順である。
【0077】また、本実施の形態におけるコンピュータシステム1によれば、印刷指定処理において印刷指定されたデータをカラー印刷部15で印刷物として印刷出力する際に、この印刷物の所定位置に前記印刷指定処理において指定された、前記データの緊急度、重要性、機密性、取り扱いなどに関する付加印刷情報が付加印刷される。」

(3-f)図6として、





上記の事項を総合すると、刊行物3には以下の事項が記載されていると認められる。

「印刷される文書データの緊急度、重要性、機密性、取り扱いなど関する付加印刷情報を、文書データに付加して印刷すること。」


3.対比
本願発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における
「RFIDタグ」、
「印字用紙」、
「印字」、
「文字や図形など」
「(プリント開始信号を受信する)データ通信制御部31」、
「プリンタ」は、それぞれ、
本願発明における
「ICタグ」、
「記録材」、
「印刷」、
「画像」
「印刷ジョブを受け付ける受付手段」、
「画像形成装置」に相当する。
そして、刊行物1発明における「その受信データ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれているか否かを判断」する構成と、本願発明における「画像データに付加して印刷される文書管理上の制限事項を示す所定のマークの付加指示が含まれているか否かを判断する判断手段」とは、「所定のデータ、又は、所定のマークの付加指示、が含まれているか否かを判断する判断手段」で共通し、
刊行物1発明における「与えられたデータ中にRFIDタグに書き込むデータが含まれていたとき、RFIDタグ付き印字用紙の供給を受けて当該印字用紙に文字や図形などを印字する」構成と、本願発明における「前記判断手段により前記印刷ジョブに前記所定のマークの付加指示が含まれていると判断された場合、ICタグを含む記録材に前記画像データが示す画像および前記所定のマークを印刷する印刷手段」とは、「前記判断手段により、所定のデータ、又は、所定のマークの付加指示、が含まれていると判断された場合、ICタグを含む記録材に画像を印刷する印刷手段」で共通する。
また、刊行物1発明における「複製できる人の範囲を特定する複写許可情報など、コンピュータが扱うデジタル情報として記録しておくべきデータを、当該印字用紙のRFIDタグに・・・書き込む(書込手段)」と、本願発明における「前記記録材に含まれるICタグに前記所定のマークの内容を示すマーク情報を書き込む書込手段」とは、「前記記録材に含まれるICタグに情報を書き込む書込手段」で共通する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「 印刷ジョブを受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けられた印刷ジョブに、所定のデータ、又は、所定のマークの付加指示、が含まれているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により、所定のデータ、又は、所定のマークの付加指示、が含まれていると判断された場合、ICタグを含む記録材に画像を印刷する印刷手段と、
前記判断手段により、所定のデータ、又は、所定のマークの付加指示、が含まれていると判断された場合、前記記録材に含まれるICタグに情報を書き込む書込手段と、
を有する、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]:「判断手段」及び「ICタグを含む記録材に画像を印刷する印刷手段」に関して、
本願発明においては、「判断手段」は「画像データに付加して印刷される文書管理上の制限事項を示す所定のマークの付加指示」が含まれているか否かを判断して、「印刷手段」が「前記画像データが示す画像および前記所定のマーク」を印刷するのに対して、
刊行物1発明においては、「判断手段」は「複製できる人の範囲を特定する複写許可情報など、コンピュータが扱うデジタル情報として記録しておくべきデータ」が含まれているか否かを判断するものであって、「印刷手段」が「(画像データに付加して印刷される文書管理上の制限事項を示す)所定のマークを印刷する」との特定がない点。


4.判断
(相違点について)
まず、刊行物1発明における「複製できる人の範囲を特定する複写許可情報など、コンピュータが扱うデジタル情報として記録しておくべきデータ」のうち、「複製できる人の範囲を特定する複写許可情報」とは、すなわち「文書管理上の制限事項である情報」といえる。
また、例えば、刊行物3には、「印刷される文書データの緊急度、重要性、機密性、取り扱いなど関する付加印刷情報を、文書データに付加して印刷すること。」が開示されているとおり、「持ち出し禁止」あるいは「コピー禁止」などの文字等の、「文書管理上の制限事項を示す所定のマーク」を付加して文書の印刷を行うことは、周知の事項であるから、このようなマークを付加して印刷するとともに、「コンピュータが扱うデジタル情報として記録しておくべきデータ」として、「印刷される文書データの緊急度、重要性、機密性、取り扱いなど関する付加印刷情報」すなわち「文書管理上の制限事項である情報」を採用する程度のことは、当業者が適宜為し得る設計的事項である。
そして、判断手段の判断基準は、当業者が適宜決定できる事項であるから、「文書管理上の制限事項を示す所定のマークの付加指示」が含まれているか否かを判断するか、それとも、「文書管理上の制限事項を含む、デジタル情報として記録しておくべきデータ情報」が含まれているか否かを判断するかは、設計上の微差に過ぎない。

さらに、上記相違点に関連して、刊行物2には、
「情報の記録再生と印刷との有機的な融合を図ることを目的として、
非接触で情報の記録再生が可能な非接触式情報記録媒体を、シート状に形成された印刷媒体の所定位置に取り付けてなるものに対して、
前記印刷媒体に対する印字処理と、
例えば、バーコードの印字に対応したバーコード情報や、印鑑の印字に対応した個人認証データなど、前記印字処理に対応した情報の、前記非接触式情報記録媒体に対する非接触での記録処理とを同時に行なうこと。」が開示されているように、「印刷媒体に対する印字処理と、前記印字処理に対応した情報の、非接触式情報記録媒体に対する非接触での記録処理とを同時に行なう」ことは公知技術である。

そうすると、刊行物1発明と、刊行物2に記載のものとは、ICタグを含む記録材に対して、記録材への印字と、ICタグへの書き込みを行う装置の点で、同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1発明に、刊行物2に記載の「印刷媒体に対する印字処理と、前記印字処理に対応した情報の、非接触式情報記録媒体に対する非接触での記録処理とを行なう」という技術的思想を適用して、ICタグに「文書管理上の制限事項である情報」を書き込むと同時に、「持ち出し禁止」あるいは「コピー禁止」などの文字等の「文書管理上の制限事項を示す所定のマーク」を付加して文書の印刷を行うことは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、刊行物1発明において、「判断手段」が「画像データに付加して印刷される文書管理上の制限事項を示す所定のマークの付加指示が含まれているか否かを判断する」構成を採用するとともに、「前記判断手段により前記印刷ジョブに前記所定のマークの付加指示が含まれていると判断された場合、ICタグを含む記録材に前記所定のマークを印刷する印刷手段」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(本願発明が奏する効果について)
そして、上記相違点によって、本願発明が奏する『「持ち出し禁止」あるいは「コピー禁止」などの文字等の所定のマークが印刷された文書が、当該マークが示す制限事項に違反して取り扱われることを確実に防止することが可能となる。』との明細書記載の効果も、刊行物1ないし3に記載された事項から予測し得る程度のものであるから、格別のものとはいえない。


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2,3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-28 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-19 
出願番号 特願2003-406320(P2003-406320)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 伏見 隆夫
柏崎 康司
発明の名称 画像形成装置、画像形成方法、文書管理システム、文書管理方法、画像形成プログラム、および画像形成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 八田 幹雄  
代理人 奈良 泰男  
代理人 宇谷 勝幸  

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