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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1207968 |
審判番号 | 不服2007-7696 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-15 |
確定日 | 2009-12-04 |
事件の表示 | 平成10年特許願第154247号「アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月24日出願公開、特開平11-355031〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成10年6月3日の出願であって、平成19年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年3月15日に審判請求がなされるとともに、同年4月16日付けで審判請求時の手続補正がなされ、平成21年1月27日付けの当審よりの審尋に対して、同年4月6日付けで回答書の提出があったものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年4月16日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成18年12月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「接地板と、 概略ホーンに形成され、該ホーンの中心軸線が前記接地板に対してほぼ垂直に、かつ該ホーンの頂点部が前記接地板側にこれと所定の距離をおいて位置するアンテナ素子と、 このアンテナ素子の底面部の周縁部に、間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記接地板に結合されている複数の棒状の容量体とを、 具備し、前記接地板と前記アンテナ素子の頂点部とに給電され、前記接地板から前記アンテナ素子の底面部までの距離が、中心受信波長の1/4より短い長さであるアンテナ。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「接地板と、 概略ホーンに形成され、該ホーンの中心軸線が前記接地板に対してほぼ垂直に、かつ該ホーンの頂点部が前記接地板側にこれと所定の距離をおいて位置するアンテナ素子と、 このアンテナ素子の底面部の周縁部に、間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記接地板に結合されている複数の棒状の容量体と、 前記接地板と前記アンテナ素子の頂点部とに直接に接続された給電部とを、 具備し、前記接地板から前記アンテナ素子の底面部までの距離が、中心受信波長の1/4より短い長さであるアンテナ。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 なお、上記各補正書の原文に記載されている「前記基板」という用語は、明細書及び図面の記載からみて、「前記接地板」の明白な誤記と認められるので、上記のように認定した。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「アンテナ」の構成を「前記接地板と前記アンテナ素子の頂点部とに直接に接続された給電部」を具備した「アンテナ」に限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 (2)引用発明及び周知技術 A.原審の拒絶理由に引用された特開昭53-9451号公報(以下、「引用例」という。)には「2波共用アンテナ」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「(1)給電点から円錐状に広がる放射器を持つアンテナにおいて、該放射器を1つの周波数に対して共振する大きさになし、また該放射器の開放端縁とアース板との間にコイルまたはコンデンサを接続して他の周波数に対しても共振させたことを特徴とする2波共用アンテナ。」 (1頁左下欄、特許請求の範囲第1項) ロ.「 第2図は上記種類の電波の送受信用に用いられるコニカルアンテナを示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。・・・(中略)・・・このアンテナは完全な円錐形ではなく、その頂部を軸線に垂直な面で切つた円錐台の形状をしている・・・(中略)・・・そこで本発明では第3図(b)に示すようにアンテナ(放射器)Aの先端とアース板Gとの間にコイルを装荷してこの 150MHzにおいても共振するようにした。」 (2頁右上欄6行目?左下欄下から3行目) ハ.「従つて入力インピーダンスの抵抗成分はR1?R2つまり33?94Ωの間にあり、前記条件を満足することが分る。共振はリアクタンス成分Xが零つまり入力インピーダンスが純抵抗のときに存在し、l/λが0.293で共振点からずれると第5図から明らかなようにリアクタンス成分Xが存在するのでこれは整合回路によつて除去する。」 (3頁左上欄15行目?右上欄2行目) ニ.「 装荷はコイルだけでなく、コンデンサでもよい。第3図(c)にその実施例を示す。接続位置はやはりアンテナAの解放端縁とアース板Gとの間である。」(3頁左下欄14?16行目) ホ.「 第8図および第9図はコイルLを用いた場合の本発明のアンテナの実施例を示す。10はアンテナ本体(放射器)で前述のように円錐台状をなし、その底部平板部10aにおいてアース板Gに碍子9、ビス9a、9bにより取り付けられる。但しそのビス9a、9bは絶縁されるように碍子9の中において隙間を有している。・・・(中略)・・・同軸ケーブルCCは接続部11においてアース板Gへ固定され、その外部導体はこのアース板に接続され、中心導体12はアース板と絶縁されながらこれを貫通、突出し、その先端には導電性円板13が取付けられる。円板13はアース板Gとの間に静電容量を持ち、整合回路のコンデンサC1となる。整合回路Mは第10図に示すようにコイルL1?L3およびコンデンサC1で構成する。・・・(中略)・・・アンテナ長lを長くするコイルLはやはり4分割して本体部10の周辺の各4等分の位置とアース板Gとの間に接続する。なおコイルL、L1を分割したのはアンテナ本体10に均等に電流を流すためで、分割数は4に限らず、適宜の数でよい。」 (3頁右下欄6行?4頁左上欄12行目) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 引用例記載の「アンテナ」は、上記イ.、ロ.、ニ.、ホ.および第2図、第3図、第9図にあるように、 「アース板G」と、その上に設けられた「円錐状」に形成された「アンテナ(放射器)A」、「アンテナ本体(放射器)10」とを具備して成り、 この「放射器」の形状は、上記ロ.に「このアンテナは完全な円錐形ではなく、その頂部を軸線に垂直な面で切つた円錐台の形状をしている」とあるから、『概略円錐状』に形成されているということができ、 該「放射器」の「アース板」に対する位置は、上記図面第3図、第9図によれば、『該円錐の中心軸線が前記アース板に対してほぼ垂直に、かつ該円錐の頂部が前記アース板側にこれと所定の距離をおいて位置する』ということができるものである。 また、引用例記載の「アンテナ」は、 「該放射器の開放端縁とアース板との間にコイルまたはコンデンサを接続」する(上記イ.、ロ.、ニ.および第3図)とあって、 上記ホ.末尾及び第9図によれば、この「コイルLはやはり4分割して本体部10の周辺の各4等分の位置とアース板Gとの間に接続する。」とあり、 該コイルは、前記『概略円錐状』に形成された「放射器」の底面を構成する「開放端縁」(上記イ.)の周上を4等分する間隔を隔てて複数(4つ)設けられていて、そこに『一端が結合』され、また『それぞれの他端が前記アース板に結合されている』ものである。 そして、上記イ.、ニ.にあるように上記コイルに替えて「コンデンサ」も同様の構成を取り得るものであるから、結局引用例には、『放射器の開放端縁に、それぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記アース板に結合されている複数のコンデンサ』を有する「アンテナ」が開示されている。 また、上記ホ.には、「同軸ケーブルCCは接続部11においてアース板Gへ固定され」とあって、この「同軸ケーブルCC」や「接続部11」はアンテナ(放射器)に給電するためのものであるのは技術常識であって、上記ハ.の記載も参酌すれば、例えばリアクタンス成分Xが存在する周波数で共振させる場合には給電部に「整合回路」を設け、該「整合回路」を介して「放射器の頂部」に接続されて給電する『給電部』を構成するものである。 また、上記円錐台の底面を構成する「放射器」の「開放端縁」と、上記「アース板」間の距離は、機械構造的に所定の長さであるから「所定長」であるということができる。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「アース板と、 概略円錐状に形成され、該円錐の中心軸線が前記アース板に対してほぼ垂直に、かつ該円錐の頂部が前記アース板側にこれと所定の距離をおいて位置する放射器と、 この放射器の開放端縁に、間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記アース板に結合されている複数のコンデンサと、 前記アース板と前記放射器の頂部とに整合回路を介して接続された給電部とを、 具備し、前記アース板から前記放射器の開放端縁までの距離が、所定長であるアンテナ。」 B.例えば特開昭60-65602号公報(以下、「周知例1」という。)には「車両用アンテナ」として図面とともに下記イ.、ロ.の事項が、 また特公昭58-45201号公報(以下、「周知例2」という。)には「回転パタンを電子的に発生するアンテナ」として図面とともに下記ハ.?ヘ.の事項が記載されている。 (周知例1) イ.「以下、本発明の一実施例を図面により説明すると、第1図は、本発明に係るアンテナ20が車両10の屋根11の略中央部に取付けられた状態を示している。アンテナ20は、車両10の車室内に配置したパーソナル無線機のためのもので、第2図に示すごとく、コネクタ21と、このコネクタ21に組付けた金属板体22と、コネクタ21及び金属板体22に主金属ロッド23及び4本の補助金属ロッド24を介して組付けた逆円錐金属板25とによって構成されている。・・・(中略)・・・ 金属板体22は、円板部22aと、傾斜板部22bとを一体的に形成してなるもので、円板部22aは、その中心に設けた貫通孔22cを、鍔部21aの中空部分から上方へ突出する絶縁環21cの外周部に嵌合させて、鍔部21aの上面に固着されており、一方傾斜板部22bは、円板部22aの外周から末広がり状に傾斜している。主金属ロッド23はその基部をコネクタ21の絶縁環21cの中空部に嵌着させて、円板部22aに対し垂直になるようにコネクタ21に組付けられており、主金属ロッド23の基部は同軸ケーブル(図示しない)を介し前記パーソナル無線機の給電端子に接続されている。なお、円板部22aはその中心部にて鍔部21a、コネクタ21の本体部分、前記アタッチメント及び車両10を介し接地されている。 逆円錐金属板25は主金属ロッド23の先端部から上方へ逆円錐状に傾斜して延在しており、金属板体22と共にその水平方向全周囲に亘り一様な水平方向開口面を形成する。かかる場合、逆円錐金属板25の上縁は円板部22aと並行となっている。各補助金属ロッド24は、アンテナ20の水平方向無指向性を実現すべく入力抵抗の整合作用を精度よく行なうもので、第2図及び第3図に示すごとく、金属板体22の傾斜板部22bの同一円周上に沿いほぼ等間隔にて円板部22aに対し垂直に立設されるとともに、その先端部24aにて逆円錐金属板25の外周部を支持して傾斜板部22bに短絡させる。なお、逆円錐金属板25は、その中心にて、主金属ロッド23を介し前記パーソナル無線機との間の信号の授受を行なう。」 (2頁左下欄11行目?3頁左上欄15行目) ロ.「しかして、以上の実験結果から、900MHzの周波数の波長をλとしたとき、α=10°?30°,β=10°?20°,D1≒0.09λ,D2≒0.56λ?0.6λ,D3≒0.42λ,H1≒0.13λ?0.18λ,H2≒0.03λであれば、アンテナ20が従来の棒形アンテナと同等以上のアンテナとしての特性を発揮し得ることが分った。」 (3頁右下欄5?12行目) (周知例2) ハ.「 この発明は、アンテナに、特に、可動部品を必要としないでカージオイド型パタンの電界を放射するアンテナに関するものである。 この発明の装置は、所望の周波数たとえば「タカン」方式で用いられる15Hzで回転するカージオイド型パタン電界を放射させるのに特に役立つ。」(2頁4欄27?32行) ニ.「 まず第1図には、この発明によるアンテナ装置が示されている。このアンテナ装置は、アルミニウムの基板11で形成された接地平面の上方に取付けられた金属の円錐すなわち円錐形のモノポール10を持つている。・・・(中略)・・・ このアンテナ装置には、90°の円弧間隔で放射状平面に設けられる4個の垂直な(水平面に対して)変調フイン(板状体)16から19までがある(第3,4,6,8,9図も参照)。これらの変調フイン相互間に位置するように互に90°の円弧間隔をもって放射状平面上に、短絡柱すなわち抑制柱21から24までが設けられている。・・・(中略)・・・また、RF同軸装置29(第4図)があつて、その金属棒30が円錐10の下端に結合され、これにRFエネルギを供給する。」 (4頁8欄34行?5頁9欄15行) ホ.「 再びアンテナ装置に戻り、主として第1図、第4図、および第5図によつて述べる。大地電位平面を形成する基板11は、たとえば、円形で、アルミニウムで作られている。その一寸法例として直径は約21.6cmである。・・・(中略)・・・円錐10は、たとえば、銅で作られ、基板11に対して約30°の勾配を持ち、直径約15.2cmのものである。」 (5頁10欄25?34行) ヘ.「 次に変調器フイン16から18までについて述べる。これら4個のフインはすべて同じものであるから、第4、8,9図によつて、フイン18と16について詳しく述べよう。フイン18は、絶縁性材料たとえばフアイバガラスから成る基板70とその上に設けられた金属層とからできている。一方の側(第4,9図)には金属層71と72とがあり、反対の側には金属層73がある。・・・(中略)・・・そこで、二つの層73と71aは基板70をはさんで、キヤパシタを形成している。」 (6頁11欄20?36行) 上記周知例1、2には、 「金属板体」(周知例1の「金属板体22」、周知例2の「アルミニウム基板11」相当)の上に、 「逆円錐金属板」(周知例1の「逆円錐金属板25」、周知例2の「金属円錐体(円錐モノポール)10」相当)が、 複数の「補助金属ロッド」(周知例1の「補助金属ロッド24」、周知例2の「変調フイン16?19」および「抑制柱21?24」相当)によって外周部を間隔を隔てて支持するように設けられた「逆円錐型アンテナ」であって、 該「逆円錐金属板」の中央部、すなわち円錐の「頂点部」に直接に接続され給電する「主金属ロッド」(周知例1の「主金属ロッド23」、周知例2の「金属棒30」相当)を具備したものが記載されている。 そして、周知例1の前記ロ.及び第2図には、前記「補助金属ロッド」の長さは「H1≒0.13λ?0.18λ」とあり、これは明らかにλ/4=0.25λより短く、 また、周知例2の上記ホ.末尾には、「円錐10は、たとえば、銅で作られ、基板11に対して約30°の勾配を持ち、直径約15.2cm」とあって、周知の「タカン」方式(上記ハ.、いわゆる「TACAN」方式)のRF周波数がおよそ1000MHz近傍(波長λ≒30cm)であることを勘案すれば、「円錐10」の「直径約15.2cm」はλ/2相当であるから、「約30°の勾配」を考慮すれば周知例2の「変調フイン」、「抑制柱」の長さもまたλ/4より短いのは明らかである。 したがって、 「金属板体と、前記金属板体上に位置する逆円錐金属板と、 該逆円錐金属板の外周部を間隔を隔てて支持する複数の補助金属ロッドと、 該逆円錐金属板の頂点部に直接に接続され給電する主金属ロッドを具備し、 前記補助金属ロッドの長さがλ/4より短い長さである逆円錐型アンテナ」は周知である。 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明を対比すると、補正後の発明の「概略ホーン」、「ホーン」、「接地板」、「底面部の周縁部」、「アンテナ素子」と、引用発明の「概略円錐状」、「円錐」、「アース板」、「開放端縁」、「放射器」は、それぞれ同じ構成を指す用語であるから、これらの間に実質的な差異はない。 また、補正後の発明の「頂点部」と、引用発明の「頂部」は、いずれもアンテナ素子(放射器)に対して給電が行われる点であるから「給電点」である点で一致している。 また、補正後の発明の「間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記接地板に結合されている複数の棒状の容量体」と、引用発明の「間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記アース板に結合されている複数のコンデンサ」において、「コンデンサ」は「容量」であるから、いずれも「間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記接地板に結合されている複数の容量」である点で一致している。 また、補正後の発明の「直接に接続された給電部」と、引用発明の「整合回路を介して接続された給電部」は、いずれも「接続された給電部」である点で一致している。 また、補正後の発明の「中心受信波長の1/4より短い長さ」と、引用発明の「所定長」は、いずれも「ある長さ」である点で一致している。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「接地板と、 概略ホーンに形成され、該ホーンの中心軸線が前記接地板に対してほぼ垂直に、かつ該ホーンの給電点が前記接地板側にこれと所定の距離をおいて位置するアンテナ素子と、 このアンテナ素子の底面部の周縁部に、間隔を隔ててそれぞれの一端が結合され、それぞれの他端が前記接地板に結合されている複数の容量と、 前記接地板と前記アンテナ素子の給電点とに接続された給電部とを、 具備し、前記接地板から前記アンテナ素子の底面部までの距離が、ある長さであるアンテナ。」 (相違点1)「給電点」に関し、補正後の発明は「頂点部」であるのに対し、引用発明は「頂部」である点。 (相違点2)「容量」に関し、補正後の発明は「棒状の容量体」であるのに対し、引用発明は「コンデンサ」である点。 (相違点3)「給電部」に関し、補正後の発明は「直接に接続された給電部」であるのに対し、引用発明は「整合回路を介して接続された給電部」である点。 (相違点4)「ある長さ」に関し、補正後の発明は「中心受信波長の1/4より短い長さ」であるのに対し、引用発明は単に「所定長」であり、波長との関係は不明である点。 そこで、まず上記相違点1の「給電点」及び相違点3の「給電部」についてまとめて検討するに、 そもそも補正後の発明における「アンテナ素子」の形状は「概略ホーン」というにすぎないから、「給電点」及び「給電部」の位置が「頂点部」であるか「頂部」であるかは格別な技術的意味を有するものではないが、 上記周知例1,2に開示されているように、 「金属板体と、前記金属板体上に位置する逆円錐金属板と、 該逆円錐金属板の外周部を間隔を隔てて支持する複数の補助金属ロッドと、 該逆円錐金属板の頂点部に直接に接続され給電する主金属ロッドを具備し、 前記補助金属ロッドの長さがλ/4より短い長さである逆円錐型アンテナ」は周知である。 当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらず、ここで当該周知技術の「金属板体」、「逆円錐金属板」、「主金属ロッド」は、それぞれ引用発明の「アース板」、「円錐(放射器)」、「給電部」(補正後の発明の「接地板」、「ホーン(アンテナ素子)」、「給電部」)に相当するものであるから、 上記周知技術の「逆円錐金属板の頂点部に直接に接続され給電する主金属ロッドを具備した」構成より、 引用発明の「給電点」を「円錐(放射器)の頂部」から、補正後の発明のような「ホーン(アンテナ素子)の頂点部」とする(相違点1)とともに、 必要に応じて設けられる構成要素である引用発明の「整合回路」を省略し、給電手段を直接給電に限定することにより、引用発明の「整合回路を介して接続された給電部」を、補正後の発明のような「直接に接続された給電部」とする(相違点3)程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 ついで、上記相違点2の「容量」及び上記相違点4の「ある長さ」についてまとめて検討するに、 上記相違点1、3の検討で述べたように、上記周知技術を引用発明に適用した場合、 当該周知技術の「補助金属ロッド」は、引用発明の「コンデンサ」(補正後の発明の「容量体」)に構成上対応するものであるから、引用発明の「コンデンサ」の「容量」としての電気的機能を保持したまま当該周知技術を適用し、これを機械的な支持機能をも有する「補助金属ロッド」すなわち「棒状の」構造体と成し、補正後の発明の「棒状の容量体」とする(相違点2)ことは、当業者であれば容易に想到し得たものにすぎない。 なお、この点につき付言するに、周知例2の上記ヘ.にあるように、少なくとも周知例2の「変調(器)フイン」は「キヤパシタ」すなわち「容量」をも形成するものであるから、当該周知技術を引用発明の「コンデンサ」に適用することは示唆のあることでもある。 また、このような「棒状の容量体」の長さ(補助金属ロッドの長さ)はすなわち「接地板からアンテナ素子の底面部までの距離」であるから、これが「λ/4より短い長さ」すなわち「中心受信波長の1/4より短い長さ」となること(相違点4)も当該周知技術の適用によって必然のことであって、格別のことではない。 以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正(審判請求時の手続補正)は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-05 |
結審通知日 | 2009-10-06 |
審決日 | 2009-10-19 |
出願番号 | 特願平10-154247 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 賢司、鈴木 圭一郎 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 柳下 勝幸 |
発明の名称 | アンテナ |
代理人 | 木村 正俊 |