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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B05B
管理番号 1207977
審判番号 不服2007-15657  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-05 
確定日 2009-12-04 
事件の表示 特願2001-399994「エアゾール噴霧方法及びエアゾール装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月15日出願公開、特開2003-200086〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年12月28日の出願であって、平成19年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月1日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年6月5日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同年7月3日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において平成21年3月5日付けで書面による審尋がなされ、それに対して、同年5月7日付けで回答書が提出され、同年6月12日付けで上記平成19年7月3日付けの手続補正が却下され、同年7月1日付けで拒絶理由が通知され、同年8月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、上記平成21年8月27日付けで提出された手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付された図面からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ステムが備えられエアゾール内容物を収容したエアゾール容器と、
伸縮ロッドと、
前記ステムを覆うように取り付けられかつ前記伸縮ロッドを保持するロッド保持部を備えたキャップと、
前記キャップに取り付けられた操作手段と、
前記伸縮ロッドの先端に取り付けられた噴口ユニットと、
前記ステムと前記噴口ユニットとを直接的又は間接的に接続する可撓性チューブと、
前記エアゾール容器内部に前記エアゾール容器の正立時でも倒立時でも前記ステムからエアゾール内容物を噴出可能とする正倒立調整手段と、を備えた、エアゾール内容物を低い場所に噴霧するエアゾール装置であって、
前記操作手段は前記ステムの側方に位置するレバーであり、
前記ロッド保持部は、前記ステムに対して前記キャップの前記レバーが取り付けられた部分とは反対側に備えられ、
前記エアゾール内容物が原液と噴射剤とからなり、それらの混合比が5:95容量%?50:50容量%であり、用時に、前記エアゾール容器が倒立状態で保持された際に、前記伸縮ロッドの一部が前記エアゾール容器を長手方向に延長した軸に沿って50cm?100cm下方に伸びた状態となるように該伸縮ロッドの他部を前記ロッド保持部が保持し、前記エアゾール容器が倒立状態のまま前記操作手段を操作されると、前記正倒立調整手段を介して前記噴口ユニットからエアゾール内容物を低い場所に噴霧することを特徴とするエアゾール装置。」

2.当審において平成21年7月1日付けで通知した拒絶の理由に引用した引用例
2-1.実願昭61-164038号(実開昭63-69577号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)
2-1-1.引用例1の記載事項
引用例1には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は、発明の理解の一助として、当審において付した。
(ア)「産業上の利用分野
この考案は、容器内に高圧ガスと殺虫剤等の噴霧剤を共に充填(審決注:「填」は代字)し、容器上部に突出の排出管を押し下げることによって内部の開閉弁を作動させて噴霧させるいわゆるスプレー装置に関するものである。」(明細書第1ページ16行ないし第2ページ1行)
(イ)「次に本考案の高所スプレー用補助具(A)は、下部に容器1の取付用環状部9に着脱自在の嵌合部11を有す円筒部12と該円筒部12上に連設する円錐部13とでキャップ4を構成している。レバー5は基部を枢支軸14に回動自在に枢支し操作部をキャップ4の外方に延出すると共に、連通管6と係合し、該連通管6を押し下げ可能に構成してある。
連通管6は、その下端を排出管2に嵌合連通可能に構成し、又、その上方に、レバー5との係止部15を、該係止部15上に蛇腹部16を設けてある。
8は連通管6と一体に形成される延長パイプであって、基部をキャップ4に保持されると共に、上部に蛇腹部17を形成し、その上端に嵌脱自在の噴霧ノズル7の噴霧姿勢を変更可能に構成してある。」(明細書第4ページ18行ないし第5ページ14行)
(ウ)「キャップ4部分は、樹脂成形により、又、同じく管部分も硬質樹脂、又は、アルミパイプ等で成形するとよいが、例えば、キャップ4上に硬質の支柱を立設させ、該支柱に軟質の延長パイプ8を吊持させて構成してもよい。」(明細書第5ページ15ないし19行)
(エ)「この状態で作業者は、スプレー装置3部分を手で持ち、キャップ4のレバー5を矢印(イ)方向に押すと、連通管6はその蛇腹部16により伸縮しながら押し下げられこれに伴って連通管6と嵌合連通する排出管2を押し下げ容器1内の弁を開放する。
従って、容器1内の噴霧剤は高圧ガスと共に排出管2、連通管6、延長パイプ8を通過して、高所の噴霧ノズル7から噴霧される。」(明細書第6ページ7ないし15行)
(オ)「又、連通管6と延長パイプ8は図例では一体に構成してあるが、別体に構成して着脱自在に構成し、長さの異なる延長パイプと交換可能に構成するもよい。」(明細書第6ページ18行ないし第7ページ1行)

2-1-2.引用例1に記載された発明
上記2-1-1.によると、引用例1には、
「排出管2が備えられ噴霧剤と高圧ガスを収容した容器1と、
硬質の支柱と、
前記排出管2を覆うように取り付けられかつ前記硬質の支柱を立設するキャップ4と、
前記キャップ4に取り付けられたレバー5の操作部と、
前記硬質の支柱に吊持され、前記排出管2と噴霧ノズル7とを直接的又は間接的に接続する軟質の延長パイプ8と、を備えた、噴霧剤と高圧ガスを高い場所に噴霧するスプレー装置であって、
前記レバー5の操作部は前記排出管2の側方に位置する操作部であり、
用時に、前記容器1が正立状態で保持された際に、前記硬質の支柱の一部が前記容器1を長手方向に延長した軸に沿って上方に伸びた状態となるように該硬質の支柱の他部を前記キャップ4上に立設し、前記容器1が正立状態のまま前記レバー5の操作部を操作されると、前記噴霧ノズル7から噴霧剤と高圧ガスを高い場所に噴霧するスプレー装置。」
の発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

2-2.実願平4-67151号(実開平6-27652号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)
2-2-1.引用例2の記載事項
引用例2には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして本考案によれば、エアゾールスプレー缶に着脱自在に取り付け可能なスプレーノズル延長装置であって、コイル状に巻回されたキャピラリー管(4)の一端が伸縮自在のロッド(2)の先端部に設けられた噴射ヘッド(6)で保持され、他端がエアゾールスプレー缶のノズル部分に装着するノズル押圧キャップ(5)に接続され、ロッド(2)の下端部は、エアゾールスプレー缶の缶本体を把持する把持部(1)に一体的に設けられたロッド支持部(3)で支持されていることを特徴とするスプレーノズル延長装置が提供される。」(段落【0006】)
(イ)「【0010】
…(中略)…
伸縮自在のロッドは、…(中略)…。その長さは、通常、伸長時には約1?1.5mで、収縮時には約20cmであるが、これに限定されるものではない。」(段落【0010】)
(ウ)「【0020】
[実施例1]
…(中略)…伸縮自在のロッド(2)として多段ロッドアンテナ(伸長時の長さが約1mで、収縮時の長さが約20cm)…(後略)…」(段落【0020】)

2-3.特開2001-347200号公報(平成13年12月18日公開。以下、「引用例3」という。)
2-3-1.引用例3の記載事項
引用例3には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】従来の遠隔スプレー器具は、1つの代表的な例として、実開平6-27652号公報が挙げられるが、図10に従ってこの従来技術を説明すると、スプレー缶107のノズル押圧キャップ105から伸びるキャピラリー管104を伸縮可能なパイプロッド102の先端に取着された噴射ヘッド106に接続したスプレーノズル延長装置が開示されている。その収納に当たり、スプレー缶107の本体下部で該本体を把持する把持部101に該缶本体と平行に設けたロッド支持部103内に縮小されたロッド下端部を挿入すると言った形態が示されている。使用に際しては、該ロッド102をそのまま引き出して延長し、噴射ヘッド106を所望の噴射位置に持ち来たし、次いでノズル押圧キャップ105を押すことで、スプレー缶内の液体を噴射ヘッド106から散布することが可能であり、使用後の収納に際してはロッド102をそのまま押し込んで縮小すると言った使い勝手の良さを利点とするものである。」(段落【0002】)
(イ)「【0013】図1において、本発明による遠隔スプレー器具用格納ブロック1が全体的に示されている。そして、遠隔スプレー用器具として、スプレー缶Sのノズル部分Tに取着可能なコネクタ2と、伸縮可能なパイプロッド3と、このロッド3の先端部分に取付けられた噴射ヘッド4と、この噴射ヘッド4とコネクタ2とを接続する中空の可撓性チューブ5とから構成される。…(後略)…」(段落【0013】)
(ウ)「【0014】従って、ノズル部分Tから霧状液体(ミスト)を噴霧するにはトリガUを指先で引くだけで、霧状液体は、コネクタ2、可撓性チューブ5及び噴射ヘッド4を通って最後に噴口ユニット6から外界へ拡散噴射される。このT字形の噴口ユニット6は、噴射されるミストを左右の異なった方向に噴射するので、人手の入り難い狭い箇所或いはパイプロッド3を引き伸ばして、高い樹木等に薬剤を極めて広い範囲に散布することが可能である。」(段落【0014】)
(エ)「【0022】次に、図7?9に示された本発明による遠隔スプレー器具用格納ブロックのもう1つの実施の形態に就いて説明する。図7および8において、上記した図1?6に示された実施の形態と同様な部材には同じ参照符号を使用しており、使用方法並びに手順に関しては、コネクタ2の着脱以外は略同じであるのでこれらに関する詳細な説明はここでは省略する。
【0023】この実施の形態において構成上の特徴は、可撓性チューブ5がパイプロッド3に螺旋状に巻回されており、実質的にキャピラリチューブを構成している。…(後略)…」(段落【0022】及び【0023】)

2-4.実願平4-23948号(実開平6-47177号)のCD-ROM(以下、「引用例4」という。)
2-4-1.引用例4の記載事項
引用例4には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】エアゾールバルブ本体の下端の開口部に、流体送り用管状部の上端の開口部を接続し、前記流体送り用管状部の中間部分から下端の重錘までの部分をわん曲可能にさせてなる正倒立状態で使用可能なエアゾールバルブ。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】)

2-5.特開平10-211978号公報(以下、「引用例5」という。)2-5-1.引用例5の記載事項
引用例5には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】噴射剤/原液の比率(容量)が70/30?90/10であり、かつ床面積10?16.5m^(2)当たりの噴射時間が1分以内であることを特徴とする全量噴射エアゾール装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明における「排出管2」は、その技術的意義からみて、本願発明における「ステム」に相当し、以下同様に、「噴霧剤と高圧ガス」は「エアゾール内容物」に、「容器1」は「エアゾール容器」に、「キャップ4」は「キャップ」に、「レバー5の操作部」は「操作手段、レバー」に、「噴霧ノズル7」は「噴口ユニット」に、「軟質の延長パイプ8」は「可撓性チューブ」に、「スプレー装置」は「エアゾール装置」に、「噴霧剤」は「原液」に、「高圧ガス」は「噴射剤」に、それぞれ相当する。
また、引用例1に記載された発明における「硬質の支柱」と本願発明における「伸縮ロッド」とは、「ロッド」の限りにおいて一致している。
してみると、本願発明と引用例1に記載された発明は、
「ステムが備えられエアゾール内容物を収容したエアゾール容器と、
ロッドと、
前記ステムを覆うように取り付けられたキャップと、
前記キャップに取り付けられた操作手段と、
前記ステムと噴口ユニットとを直接的又は間接的に接続する可撓性チューブと、を備えた、エアゾール内容物を噴霧するエアゾール装置であって、
前記操作手段は前記ステムの側方に位置するレバーであり、
前記エアゾール内容物が原液と噴射剤とからなり、用時に、前記操作手段を操作されると、前記噴口ユニットからエアゾール内容物を噴霧するエアゾール装置。」
の点で一致し、次の(1)ないし(3)の点で相違している。
(1)本願発明においては、「ロッド」は「伸縮ロッド」であり、「キャップ」は「伸縮ロッドを保持するロッド保持部」を備え、「ロッド保持部はステムに対してキャップのレバーが取り付けられた部分とは反対側に備えられ」、「噴口ユニット」は「伸縮ロッドの先端に取り付けられ」、「伸縮ロッドの一部がエアゾール容器を長手方向に延長した軸に沿って50cm?100cm伸びた状態となるように該伸縮ロッドの他部をロッド保持部が保持」するのに対し、引用例1に記載された発明においては、「ロッド」は「硬質の支柱」であり、「キャップ」は「ロッド(硬質の支柱)」を立設するものの、本願発明における「ロッド(硬質の支柱)を保持するロッド保持部」に相当するものを備えるのか否か明らかでなく、「ロッド(硬質の支柱)」を「キャップ」のどこに立設するのか明らかでなく、「噴口ユニット」は「ロッド(硬質の支柱)」の先端に取り付けられるのか否か明らかでなく、「ロッド(硬質の支柱)」は「エアゾール容器を長手方向に延長した軸に沿って伸びた状態となる」が伸縮するものでない点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明においては、「エアゾール容器内部にエアゾール容器の正立時でも倒立時でもステムからエアゾール内容物を噴出可能とする正倒立調整手段」を備え、「用時に、エアゾール容器が倒立状態で保持された際に、エアゾール容器が倒立状態のまま操作手段を操作されると、正倒立調整手段を介して噴口ユニットからエアゾール内容物を低い場所に噴霧する」のに対し、引用例1に記載された発明においては、本願発明における「正倒立調整手段」に相当するものをそもそも備えておらず、「用時に、エアゾール容器が正立状態で保持された際に、エアゾール容器が正立状態のまま操作手段を操作されると、噴口ユニットからエアゾール内容物を高い場所に噴霧する」点(以下、「相違点2」という。)。
(3)本願発明においては、「エアゾール内容物」が「原液と噴射剤」とからなり、「それらの混合比が5:95容量%?50:50容量%」であるのに対し、引用例1に記載された発明においては、「エアゾール内容物」が「原液と噴射剤」とからなるものの、それらの混合比が明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

4.当審の判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
<その1>
引用例2には、上記2-2-1.(ア)ないし(ウ)によると、
「スプレーノズル延長装置において、伸縮自在のロッド(2)と、伸縮自在のロッド(2)を支持するロッド支持部(3)を備えたエアゾールスプレー缶の缶本体を把持する把持部(1)と、伸縮自在のロッド(2)の先端に取り付けられた噴射ヘッド(6)と、ノズル押圧キャップ(5)と噴射ヘッド(6)とを接続するコイル状に巻回されたキャピラリー管(4)とを備え、伸縮自在のロッド(2)の一部がエアゾールスプレー缶を長手方向に延長した軸に沿って約1m、若しくは、約1?1.5m伸びた状態となるように該伸縮自在のロッド(2)の他部をロッド支持部(3)が支持する」技術(以下、「引用例2に記載された技術」という。)
が記載されている。ここで、引用例2に記載された技術における「伸縮自在のロッド(2)」は、その技術的意義からみて、本願発明における「伸縮ロッド」に相当し、以下同様に、「ロッド支持部(3)」は「ロッド保持部」に、「エアゾールスプレー缶」は「エアゾール容器」に、「噴射ヘッド(6)」は「噴口ユニット」に、「ノズル押圧キャップ(5)と噴射ヘッド(6)とを接続する」は「ステムと噴口ユニットとを接続する」に、「キャピラリー管(4)」は「可撓性チューブ」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用例1に記載された発明において、上記引用例2に記載された技術を適用して、ロッドを伸縮ロッドとし、キャップは伸縮ロッドを保持するロッド保持部を備えるようにし、噴口ユニットは伸縮ロッドの先端に取り付けるようにし、伸縮ロッドの一部がエアゾール容器を長手方向に延長した軸に沿って伸びた状態となるように該伸縮ロッドの他部をロッド保持部が保持するように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。
また、上記適用に際し、ロッド保持部をステムに対してキャップのレバーが取り付けられた部分とは反対側に備えるように構成することは、キャップの形状や可撓性チューブの配置等に基いて当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、さらに、伸縮ロッドの伸び量をどの程度にするかは、エアゾール装置の使用目的等に応じて当業者が適宜設定する設計的事項にすぎない。

<その2>
引用例3には、上記2-3-1.(ア)によると、従来技術として、上記引用例2に記載された技術が記載されている。
また、上記記載事項上記2-3-1.(イ)ないし(エ)によると、さらに、
「伸縮可能なパイプロッド3と、パイプロッド3の先端に取り付けられた噴射ヘッド4とを備える遠隔スプレー用器具において、トリガUと、ノズル部分Tと噴射ヘッド4とを接続する可撓性チューブ5とを備え、トリガUはステムの側方に位置するレバーである」技術(以下、「引用例3に記載された技術」という。)
が記載されている。ここで、引用例3に記載された技術における「パイプロッド3」は、その技術的意義からみて、本願発明における「伸縮ロッド」に相当し、以下同様に、「噴射ヘッド4」は「噴口ユニット」に、「トリガU」は「操作手段、レバー」に、「ノズル部分Tと噴射ヘッド4とを接続する」は「ステムと噴口ユニットとを接続する」に、「可撓性チューブ5」は「可撓性チューブ」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用例1に記載された発明において、上記引用例2に記載された技術を適用し、当該適用に際し、上記引用例3に記載された技術を勘案して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

(2)相違点2について
エアゾール装置において、「エアゾール容器内部にエアゾール容器の正立時でも倒立時でもステムからエアゾール内容物を噴出可能とする正倒立調整手段を備え、用時に、エアゾール容器が倒立状態で保持された際に、エアゾール容器が倒立状態のまま操作手段を操作されると、倒立調整手段を介して噴口ユニットからエアゾール内容物を低い場所に噴霧する」ことは、周知技術(以下、「周知技術」という。必要なら、上記2-4-1.参照。)である。
そうすると、引用例1に記載された発明において、上記周知技術を適用することにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、エアゾール装置の使用目的等に応じて当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(3)相違点3について
原液と噴射剤とからなるエアゾール内容物の混合比を5:95容量%?50:50容量%とすることは、エアゾール装置の使用目的等に応じて当業者が適宜設定する設計的事項にすぎない。また、その混合比も通常の範囲内のもの(必要なら、上記2-5-1.参照。)である。

そして、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から、若しくは、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基いて、若しくは、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-01 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-19 
出願番号 特願2001-399994(P2001-399994)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 径  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 河端 賢
中川 隆司
発明の名称 エアゾール噴霧方法及びエアゾール装置  
代理人 小栗 昌平  
代理人 本多 弘徳  
代理人 市川 利光  
代理人 添田 全一  

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