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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
管理番号 1207985
審判番号 不服2007-29636  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2009-12-04 
事件の表示 特願2004-205415「描画方法および描画装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月 3日出願公開、特開2005- 55881〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年(2004年)7月13日(国内優先権主張;平成15年7月22日)に出願した特願2004-205415号であって、平成19年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年12月3日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成21年7月6日付けで拒絶理由の通知をし、これに対して同年9月7日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項に特定される次のとおりのものである。

「入射された光を入力された制御信号に応じて変調して1つの描画点を描画する描画素子が一列に多数配置された描画素子列が多数配列された空間光変調素子を有し、該空間光変調素子により変調された光を描画面に結像する複数の描画ヘッドを、前記描画面に沿って所定の走査方向へ相対的に移動させて描画を行う描画方法において、
前記多数の描画素子列を1または複数の描画素子列毎に分割し、
該分割された複数の分割領域毎に前記制御信号を順次入力し、該制御信号の入力が終了した分割領域の描画素子から順次前記変調を行わせることによって、前記相対的移動中の描画面に対して前記分割領域毎に互いに異なるタイミングで描画点群を描画して、前記分割領域毎の描画点群を前記走査方向について前記描画面上の所望の異なる位置にそれぞれ配置するとともに、
前記描画面の相対移動速度および前記分割領域毎の各描画点群が描画される所望の異なる位置に基づいて、前記描画面に描画される画像を表す画像データから前記描画点の各々に対応する描画データを形成し、該描画データに基づいて前記制御信号を形成することを特徴とする描画方法。」において「前記空間光変調素子の使用描画素子から出射される描画光の前記描画面上への投影点が、該投影点の配列方向が前記走査方向に対して所定の傾斜角度をなすように配置されるようにすることを特徴とする」「描画方法。」

第3 引用例
1 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-15309号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「引用例1に記載された発明の認定」に特に関係する記載に下線を付した。)

「【0015】先ず、図1を参照すると、本発明による描画装置が斜視図として概略的に示され、この描画装置はプリント回路基板を製造するための基板上のフォトレジスト層に回路パターンを直接描画するように構成されているものである。
【0016】図1に示すように、描画装置は床面上に据え付けられる基台10を具備し、この基台10上には一対のガイドレール12が平行に敷設される。一対のガイドレール12上には描画テーブル14が搭載され、この描画テーブル14は図1には図示されない適当な駆動機構例えばボール螺子等をステッピングモータ等の駆動モータで駆動することにより一対のガイドレール12に沿って移動し得るようになっている。描画テーブル14上にはフォトレジスト層を持つ基板即ち被描画体が設置され、このとき該被描画体は図示されない適当なクランプ手段によって描画テーブル14上で適宜固定され得るようになっている。
【0017】図1に示すように、基台10上には一対のガイドレールを跨ぐようにゲート状構造体16が設けられ、このゲート状構造体16の上面には複数の露光ユニットが描画テーブル14の移動方向に対して直角方向に二列に配列される。第1列目には8つの露光ユニットが含まれ、これら露光ユニットは参照符号18_(1)、18_(2)、18_(3)、18_(4)、18_(5)、18_(6)、18_(7)及び18_(8)で示される。また、第2列目には7つの露光ユニットが含まれ、これら露光ユニットは20_(1)、20_(2)、20_(3)、20_(4)、20_(5)、20_(6)及び20_(7)で示される。第1列目の露光ユニット(18_(1)、…18_(8))と第2列目の露光ユニット(20_(1)、…20_(7))とは所謂千鳥状に配置される。即ち、第1列目及び第2列目の露光ユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))の配列ピッチは共に等しく露光ユニットのほぼ2つ分の幅とされるが、第2列目の露光ユニット(20_(1)、…20_(7))の配列ピッチは第1列目の露光ユニット(18_(1)、…18_(8))の配列ピッチに対して半ピッチだけずらされている。
【0018】本実施形態では、各露光ユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))はDMDユニットとして構成され、このDMDユニットの反射面は例えば1024×1280のマトリックス状に配列されたマイクロミラーから形成される。各DMDユニットの設置については、描画テーブル14の移動方向に沿って1024個のマイクロミラーが配列されるように行われる。換言すれば、描画テーブル14の移動方向に対して直角方向に1280個のマイクロミラーが配列されることになる。
【0019】図1に示すように、ゲート状構造体16の上面の適当な箇所には光源22が設けられ、この光源22には複数のLED(light emitting diode)が設けられ、これらLEDから得られる光は集光されて平行光束として光源22の射出口から射出されるようになっている。光源22の射出口には15本の光ファイバケーブル束が接続され、個々の光ファイバケーブルは15個のDMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))のそれぞれに対して延設され、これにより光源22から各DEDユニットに対して光が導入されるようになっている。なお、図1では、図示の複雑化を避けるために光ファイバケーブルは図示されていない。
【0020】図2を参照すると、DMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))の機能が概念図として図示されている。同図において、参照符号24は各DMDユニットの反射面を示し、この反射面24は既に述べたように1024×1280のマトリックス状に配列されたマイクロミラーから形成される。また、図2に示すように、各DMDユニットには、参照符号26で全体的に示す照明光学系と、参照符号28で全体的に示す結像光学系とが組み込まれる。
【0021】照明光学系26は凸レンズ26A及びコリメートレンズ26Bを含み、凸レンズ26Aは光源22から延設された光ファイバケーブル30と光学的に結合される。このような照明光学系26により、光ファイバケーブル30から射出した光束はDMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))の反射面24の全体を照明するような平行光束LBに成形される。結像光学系28には第1の凸レンズ28Aと、リフレクタ28Bと、第2の凸レンズ28Cが含まれ、この結像光学系28の倍率は例えば等倍(倍率1)とされる。
【0022】各DMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))に含まれる個々のマイクロミラーはそこに入射した光束を結像光学系28に向けて反射させる第1の反射位置と該光束を結像光学系28から逸らすように反射させる第2の反射位置との間で回動変位するように動作させられる。図2では、任意のマイクロミラーが第1の反射位置に置かれたとき、そこから反射されて結像光学系28に入射された光束の光軸が参照符号LB_(1)で示され、同マイクロミラーが第2の反射位置に置かれたとき、そこから反射されて結像光学系28から逸らされた光束の光軸が参照符号LB_(2)で示されている。
【0023】図2において、描画テーブル14上に設置された被描画体の描画面が参照符号32で示され、この描画面32上には、結像光学系28に入射された光束(LB_(1))によってマイクロミラーの反射面が結像される。例えば、各DMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))に含まれる個々のマイクロミラーのサイズが20μm×20μmであるとすると、結像光学系28の倍率は等倍であるから、マイクロミラーの反射面は描画面32上の20μm×20μmの露光領域として結像され、この露光領域が被描画体上に回路パターンを描画する際の一画素となる。要するに、本実施形態では、回路パターンの描画は20μm×20μmの画素サイズで行われる。
【0024】各描画ユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))では、個々のマイクロミラーは通常は第2の反射位置即ち非露光位置に置かれているが、露光作動を行うとき、マイクロミラーは第2の反射位置(非露光位置)から第1の反射位置即ち露光位置に回動変位させられる。マイクロミラーの非露光位置から露光位置への回動変位の制御については、後述するように回路パターンデータ(ラスタデータ)に従って行われる。なお、図2においては、図示の都合上、結像光学系28から逸らされた光束(LB_(2))も描画面32に向けられているが、しかし実際にはそのような光束(LB_(2))については描画面32に到達しないように処理されることは言うまでもない。
【0025】各DMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))に含まれる全てのマイクロミラーが第1の反射位置即ち露光位置に置かれたときは、全てのマイクロミラーから反射された全光束(LB_(1))が結像光学系28に入射させられ、このため描画面32上にはDMDユニットの反射面による全露光領域が得られ、その全露光領域のサイズについては(1024×20)μm×(1280×20)μmとなり、そこに含まれる総画素数は勿論1024×1280個となる。」

2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載事項を総合勘案すると、引用例1には、露光描画方法に関し、
「描画テーブル14は一対のガイドレール12に沿って移動し得るようになっており、描画テーブル14上にはフォトレジスト層を持つ基板即ち被描画体が設置され、
一対のガイドレールを跨ぐようにゲート状構造体16が設けられ、このゲート状構造体16の上面には複数の露光ユニットが配列され、
各露光ユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))はDMDユニットとして構成され、このDMDユニットの反射面は1024×1280のマトリックス状に配列されたマイクロミラーから形成され、
各DMDユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))に含まれる個々のマイクロミラーはそこに入射した光束を結像光学系28に向けて反射させる第1の反射位置と該光束を結像光学系28から逸らすように反射させる第2の反射位置との間で回動変位するように動作させられ、
マイクロミラーの反射面は、結像光学系28に入射された光束(LB_(1))によって、描画面32上の20μm×20μmの露光領域として結像され、この露光領域が被描画体上に回路パターンを描画する際の一画素となり、
マイクロミラーの非露光位置から露光位置への回動変位の制御は、回路パターンデータ(ラスタデータ)に従って行われる露光描画方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3 引用例2
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-57837号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。

「【0038】露光方式としては、描画テーブル16を走査方向に沿って間欠的に移動させる動作と、描画テーブル16の停止時に回路パターンを部分的に順次描画する動作とを交互に繰り返すことにより、各描画領域を継ぎ足して全体の回路パターンを得るステップ・アンド・リピート(Step & Repeat)方式を採用してもよいし、描画テーブル16を一定速度で移動させつつ同時に描画動作を行う方式であってもよい。本実施形態では説明を容易にするためにステップ・アンド・リピート方式を採用する。即ち、多重露光描画装置10では、描画テーブル16を所定の移動間隔で間欠的に移動させつつ、回路パターンのラスタデータに従って回路パターンを多重露光により描画する描画方法が採用される。以下に、このような多重露光描画方法の原理について説明する。
【0039】図4には、第1露光ユニット20_(01)によって描画面32上に投影される全面露光領域Ua_(01)の一部が示され、この全面露光領域Ua_(01)は各マイクロミラーM(m,n)から得られる単位露光領域U(m,n)から成る。ここで、パラメータmは第1露光ユニット20_(01)のX軸方向に沿うライン番号を示し、パラメータnは第1露光ユニット20_(01)のY軸方向に沿う行番号を示し、本実施形態では1≦m≦1024および1≦n≦1280となる。
【0040】要するに、単位露光領域U(1,1)、U(1,2)、U(1,3)、U(1,4)、U(1,5)、…、U(1,1280)は第1露光ユニット2001のY軸に沿う第1ラインの1280個のマイクロミラーM(1,1)?M(1,1280)から得られるものであり、単位露光領域U(2,1)、U(2,2)、U(2,3)、U(2,4)、U(2,5)、…、U(2,1280)は第1露光ユニット20_(01)のY軸に沿う第2ラインの1280個のマイクロミラーM(2,1)?M(2,1280)から得られるものであり、単位露光領域U(3,1)、U(3,2)、U(3,3)、U(3,4)、U(3,5)、…、U(3,1280)は第1露光ユニット20_(01)のY軸に沿う第3ラインのマイクロミラーM(3,1)?M(3,1280)から得られるものである。
【0041】例えば、露光1回当たりの移動距離が単位露光領域の1つ分のサイズCの整数倍である距離A(例えばA=4C)と距離a(0≦a<C)との和である場合について説明すると、描画テーブル16がX軸に沿ってその負側に移動させられる、即ち第1露光ユニット20_(01)が描画テーブル16に対してX軸の正側に向かって相対移動し、単位露光領域Ua_(01)が描画面32上の描画開始位置SLに到達すると、そこで一旦停止させられて第1露光ユニット20_(01)の第1ラインの1280個のマイクロミラーM(1,1)?M(1,1280)が所定の回路パターンのラスタデータに従って動作させられて第1回目の露光が行われる。このときの描画面32の相対位置を第1回目露光位置と定義する。
【0042】第1回目の露光が終了すると、第1露光ユニット20_(01)は再びX軸に沿ってその正側に相対移動し、その単位露光領域Ua01の移動量が(A+a)となったとき、第1露光ユニット20_(01)は第2回目露光位置に到達したと判断されて停止され、第1露光ユニット20_(01)の第1?第5ラインのマイクロミラーM(1,1)?M(5,1280)が所定の回路パターンのラスタデータに従って動作させられて第2回目の露光が行われる。
【0043】第2回目の露光が終了すると、第1露光ユニット20_(01)は更にX軸に沿ってその正側に移動量(A+a)だけ移動させられて第3回目露光位置で停止され、第1露光ユニット20_(01)の第1?第9ラインのマイクロミラーM(1,1)?M(9,1280)が所定の回路パターンのラスタデータに従って動作させられて第3回目の露光が行われる。
【0044】このように第1露光ユニット20_(01)がX軸に沿ってその正側に移動量(A+a)だけ移動させられる度毎に停止されて露光作動が繰り返され、描画面32の同一領域が第1露光ユニット20_(01)によって多数回に渡って多重露光されることになる。例えば、a=0の場合、第1露光ユニット20_(01)はX軸に沿ってその正側にA(=4C)ずつ移動し、単位露光領域U(m,n)の中心は常に同一点上に一致する。このため、第1列目の先頭のマイクロミラーM(1,1)によって露光されたC×Cの領域は、さらに第(4k+1)番目の先頭のマイクロミラーM(4k+1,1)によって露光され(ただし、1≦k≦255)、合計256回(=1024C/A)だけ多重露光されることになる。一方、a≠0の場合、重なり合う単位露光領域U(m,n)の中心は距離aだけ徐々にずれていくため、同一領域が256回多重露光されるとは限らない。そこで、所定の領域を256回露光させるために、各単位露光領域U(m,n)の中心を256個だけこの所定領域内に均等に配列させ、実質的に256回多重露光させている。
【0045】図3では、露光ユニット20_(01)?20_(15)のマイクロミラーの並びはX軸およびY軸に平行であったが、露光ユニット20_(01)?20_(15)の姿勢をX軸に対して微少角αだけ傾斜させつつ移動させる構成であってもよい。このとき、第1露光ユニット20_(01)がX軸に沿ってその正側に移動量(A+a)だけ移動させられる度毎に、単位露光領域U(m,n)はY軸に沿ってその負側に所定距離だけ相対的にシフトすることになる。
【0046】図5は、露光ユニット20_(01)をX軸に対して傾斜させつつ順次移動させたときの単位露光領域U(m,n)の変位を経時的に示す図である。図5を参照すると、第1回目露光位置での全面露光領域Ua_(01)の一部が破線で示され、第2回目露光位置での全面露光領域Ua_(01)の一部が一点鎖線で示され、第3回目露光位置での全面露光領域Ua_(01)の一部が実線で示され、各単位露光領域U(m,n)のY軸の負側に沿う移動距離がbで示されている。
【0047】第1回目露光位置において第1露光ユニット20_(01)の第1ラインのマイクロミラーM(1,1)?M(1,1280)によって得られる単位露光領域U(1,1)、U(1,2)、…U(1,1280)に注目すると、これら単位露光領域U(1,1)、U(1,2)、…U(1,1280)に対して、第2回目露光位置における第1露光ユニット20_(01)の第5ラインのマイクロミラーM(5,1)?M(5,1280)によって得られる単位露光領域U(5,1)、U(5,2)、…U(5,1280)がX軸およびY軸に沿ってそれぞれ(+a)および(-b)だけずれて互いに重なり合い、さらに第3回目露光位置においては第1露光ユニット2001の第9ラインのマイクロミラーM(9,1)?M(9,1280)によって得られる単位露光領域U(9,1)、U(9,2)、…U(9,1280)は、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ(+2a)および(-2b)だけずれて互いに重なり合うことになる。なお、図5では、3つの互いに重なり合う単位露光領域U(1,1)、U(5,1)およびU(9,1)がそれぞれ破線、一点鎖線および実線の引出し線で例示的に示されている。
【0048】ここで各単位露光領域U(m,n)の相対位置をその中心である露光点CN(m,n)で代表して示すと、第2回目露光位置における露光点CN(5,1)は、第1回目露光位置における露光点CN(1,1)から(+a,-b)だけ離れており、第3回目露光位置における露光点CN(9,1)は、第1回目露光位置における露光点CN(1,1)から(+2a,-2b)だけ離れて存在することになる。なお、各ラインにおける互いに隣接した露光点間の距離は単位露光領域U(m,n)のサイズC(=20μm)に一致する。
【0049】上述したように、移動距離が、単位露光領域U(m,n)の一辺長さCの4倍と距離aとの和とされるとき、距離aおよびbを適当に選ぶことにより、個々の単位露光領域U(m,n)と同じ大きさの面積C×C内に露光点を均一に分布させることができる。
【0050】例えば、図6に示すように、単位露光領域U(m,n)と同じ大きさの面積C×C(=20μm×20μm)内に240個の露光点を分布させるためには、X軸に沿って16個およびY軸に沿って15個配列させればよいことになり、距離aおよびbは以下の計算式によって定められる。
a=C/16 =20μm/16 =1.25μm
b=C/240=20μm/240=0.0833μm
【0051】なお、言うまでもないが、距離bを0.0833μmに設定するということは、描画テーブル16がX軸の負側に距離(A+a=81.25μm)だけ移動したとき、個々の単位露光領域U(m,n)がY軸の負側に0.0833μmだけシフトするように描画テーブル16の傾斜角度αを設定するということに他ならない。
【0052】図6において、参照符号CN(1,1)で示される露光点が例えば第1回目露光位置における第1露光ユニット20_(01)の第1ラインの先頭のマイクロミラーM(1,1)によって得られる単位露光領域U(1,1)のものであるとすると、先の記載から明らかなように、露光点CN(5,1)は第2回目露光位置における第1露光ユニット20_(01)の第5ラインの先頭のマイクロミラーM(5,1)によって得られる単位露光領域U(5,1)のものであり、露光点CN(9,1)は第3回目露光位置における第1露光ユニット20_(01)の第9ラインの先頭のマイクロミラーM(9,1)によって得られる単位露光領域U(9,1)のものとなる。
【0053】さらに、露光点CN(1,1)から距離(+15a,-15b)だけ離れた露光点CN(61,1)は、第16回目露光位置における第61ラインの先頭のマイクロミラーM(61,1)によって得られる単位露光領域U(61,1)の中心であり、露光点CN(1,1)から距離(0,-16b)だけ離れた露光点CN(66,1)は第17回目露光位置における第66ラインの先頭のマイクロミラーM(66,1)によって得られる単位露光領域U(66,1)の中心である。同様に、露光点CN(1,1)から距離(0,-224b)だけ離れた露光点CN(911,1)は第241回目露光位置における第911ラインの先頭のマイクロミラーM(911,1)によって得られる単位露光領域U(911,1)の中心であり、露光点CN(1,1)から距離(15a,-239b)だけ離れた露光点CN(975,1)は第240回目露光位置における第975ラインの先頭のマイクロミラーM(975,1)によって得られる単位露光領域U(975,1)の中心である。
【0054】かくして、15個の露光ユニット20_(01)?20_(15)に対して描画テーブル16が上述した条件下でX軸の負側に間欠的に移動させられると、それら露光ユニット20_(01)?20_(15)の個々のマイクロミラーM(m,n)よって得られる単位露光領域U(m,n)の中心、即ち露光点CN(m,n)がX軸およびY軸のそれぞれに沿ってピッチaおよびbで描画面32の全体にわたって配列されることになる。個々の単位画素領域と同じ大きさの領域C×C(20μm×20μm)内には240個の露光点が均一に分布させられる。
【0055】なお、露光ユニット20_(01)?20_(15)における個々の露光点を描画面32の全体にわたって更に高密度に分布させることももちろん可能であり、例えば、20μm×20μmの面積内に480個の単位露光領域の中心を均一に配列させる場合には、距離Aは単位露光領域のサイズCの2倍(40μm)に設定され、距離aおよびbはそれぞれ1.25μm/2、0.833μm/2に設定される。
【0056】また、図6に示す例では15個の露光点はY軸に沿って平行に配列されているが、距離aおよびbの値を僅かに変化させることによって、露光点をY軸に沿って斜めに配列させることも可能である。
【0057】このように本実施形態の多重露光描画装置10においては、回路パターンのラスタデータに基づいて回路パターンの描画が行われるとき、該回路パターンデータの画素サイズがどのようなサイズであっても、その回路パターンを描画することが可能である。換言すれば、多重露光描画装置10側には、描画されるべき回路パターンに対する画素の概念は存在しないといえる。
【0058】例えば、ラスタデータの画素サイズが20μm×20μmに設定されている場合には、任意の1ビットデータに“1”が与えられると、露光作動時にその1ビットデータに対応する一画素領域(20μm×20μm)に含まれる個々の露光点CN(m,n)に対応したマイクロミラーM(m,n)が該1ビットデータによって動作されて非露光位置から露光位置に回動させられ、これによりかかる一画素領域(20μm×20μm)が総計240回にわたって多重露光を受けることになる。」

「【0071】図8には、ビットマップメモリ52上に展開された回路パターンのラスタデータの一部分が模式的に示されている。同図に示すライン番号Lは描画面32上に描画されるべき回路パターンのY軸に沿う描画ライン番号に対応し、各ラインには1280×15個のビットデータが含まれる。同図に示すように、個々のビットデータは“B”で示され、この“B”には描画されるべき回路パターンに従って“1”か“0”のうちのいずれかの値が与えられる。
【0072】本発明によれば、回路パターンデータ(ラスタデータ)の画素サイズ、即ち個々のビットデータ“B”のサイズについてはその回路パターンの設計段階で種々の大きさを与えることが可能である。例えば、ビットデータ“B”のサイズが10μm×10μmであれば、描画面32上に描かれるべき描画ラインの幅も10μmとなり、ビットデータ“B”のサイズが20μm×20μmであれば、描画ラインの幅も20μmとなり、ビットデータ“B”のサイズが30μm×30μmであれば、描画ラインの幅も30μmとなる。
【0073】図8に示すように、各ラインに含まれる1280×15個のビットデータは第1番目ないし第15番目のグループに分けられる。図3に示すように描画面32がX軸に平行な方向に移動する場合、第1露光ユニット2001によって描かれるべき回路パターンに必要なデータは左端から1280ビット分のラスタデータである。しかし、図5に示すように露光ユニットがX軸に対して傾斜して移動する場合には、露光領域Ua01がY軸に沿ってシフトするため露光データの生成には1280ビット以上のラスタデータが必要である。
【0074】そこで本実施形態においては、第1露光データ生成回路54_(01)は、ビットマップメモリ52から、先頭(図中左端)から(1280+β)ビット分のラスタデータを読み出しており、読み出された第1番目のグループのラスタデータに基づいて第1露光ユニット20_(01)に与えるべき露光データを生成する、即ちこれらラスタデータからY軸方向に並ぶ1280個のマイクロミラーに与えるべき1280ビット分のラスタデータを選択して露光データとして出力する。
【0075】第2露光データ生成回路54_(02)は、ビットマップメモリ52から、左端から1281番目から2560番目までの1280ビット分のラスタデータを含み、その前後βビット分だけ多い(1280+2β)ビット分のラスタデータを第2番目のグループとして読み出し、第2露光ユニット20_(02)に与えるべき露光データを生成する。第3?第14露光データ生成回路54_(03)?54_(14)についても、第2露光データ生成回路54_(02)と同様に(1280+2β)ビット分のラスタデータを読み出して露光データを生成する。第15露光データ生成回路54_(15)は、最後(図中右端)の(1280+β)ビット分のラスタデータを読み出して露光データを生成する。
【0076】なおβは正の整数であり、システムコントロール回路34において予め設定された定数である。特にその値は限定されないが、数十程度が好ましい。また、各グループのラスタデータの数を全て等しくする必要は無く、個々のグループについて任意に変更しても良い。
【0077】各グループの個々のビットデータ“B”に対しては、図9に模式的に示すようなアドレスデータ[L_(X),R_(Y)]が与えられる。アドレスデータ成分L_(X)はライン番号L(図8)を示し、アドレスデータ成分R_(Y)は各グループの最上ビットからの数えて何ビット目に当たるかを表す。例えば、アドレスデータ[000001,0001]は各グループのライン番号1の最上位ビットのビットデータ“B”を表し、アドレスデータ[000003,0001]は各グループのライン番号3の最上位ビットのビットデータ“B”を表し、またアドレスデータ[000001,1278]は各グループのライン番号1の最上位ビットから数えて1278番目のビットデータ“B”を表し、アドレスデータ[000003,1278]は各グループのライン番号3の最上位ビットから数えて1278番目のビットデータ“B”を表し、更にアドレスデータ[000001,1280]は各グループのライン番号1の最下位ビットのビットデータ“B”を表し、アドレスデー
タ[000003,1280]は各グループのライン番号3の最下位ビットのビットデータ“B”を表す。
【0078】図10は、回路パターンと、第1および第2露光ユニット20_(01)および20_(02)との関係を示す模式図である。説明を簡単にするために、ここでは描画面32をX軸に平行に移動させた場合(図3)について説明する。
【0079】第1露光ユニット20_(01)は、全面露光領域Ua_(01)と同一幅である帯状の領域を多重露光により描画する。この帯状の領域を第1パターン領域Ra_(01)と定義する。第1露光ユニットは第1パターン領域Ra_(01)のY方向長さ(以下、パターン領域幅D1と記載する)よりも幅の大きい領域(破線で囲まれる)を露光するだけの数(Y方向に1280個)のマイクロミラーを備えているが、実際に露光作動させられるマイクロミラーは、右上がりのハッチングで示される全面露光領域Ua_(01)に対応する1280個以下のマイクロミラーのみである。この第1パターン領域Ra_(01)に描かれる回路パターンは、そのY方向長さがパターン全体のY方向長さの1/15に相当し、図8に示す第1番目のグループに含まれる先頭からパターン領域幅D1に相当するラスタデータに基づいて描かれる。
【0080】第1番目のグループに含まれるラスタデータに対応する領域を第1分割領域Ba_(01)(図中一点鎖線で囲まれた領域)として定義すると、この第1分割領域Ba_(01)のY方向長さである分割領域幅D2はパターン領域幅D1よりも長く設定され、その差D3はβビット分のラスタデータに相当する長さ(β×PS)に等しい。即ち、第1露光データ生成回路54_(01)において第1分割領域Ba_(01)に相当するラスタデータが読み出され、その中から第1パターン領域Ra01に相当するビットデータが露光データとして選択され、第1露光ユニット20_(01)が作動させられる。
【0081】第2露光ユニット20_(02)についても同様に、第2露光データ生成回路54_(02)によってパターン領域幅D1よりも長さ(D3×2)だけ長い分割領域幅D4を持つ第2分割領域Ba_(02)に相当する(1280+2β)ビット分のラスタデータが読み出され、この第2分割領域Ba_(02)に含まれる第2パターン領域Ra_(02)を多重露光するための露光データが生成される。なお、第3?第15露光データ生成回路54_(02)?54_(15)においても同様に露光データが生成されることは言うまでもない。
【0082】隣り合う2つのパターン領域Ra_(01)およびRa_(02)は重なることはなく実質的に隙間なく並んでいるが、隣り合う2つの分割領域Ba_(01)およびBa_(02)はY方向に長さD3×2だけ重なり合っている。即ち、第1および第2露光データ生成回路54_(01)および54_(02)は2βビット分のラスタデータを共有することになる。なお、第1分割領域Ba_(01)の分割領域幅D2は、第1露光ユニット20_(01)の最大露光幅D5よりも大きい値に設定される。
【0083】このように、パターン領域よりも広い分割領域に相当するラスタデータを読み出して露光データを生成するので、上記のようにパターン領域がY方向にシフトする場合や、回路パターンを座標変換(回転、拡大、縮小、移動等)して描画する場合においても十分に対応することができる。
【0084】図11は、回路パターンに回転変換を施した場合の分割領域とパターン領域との関係を示す図である。本来の回路パターンを破線で示し、時計回りに角度θだけ回転変換した回路パターンを実線で示す。
【0085】回路パターンを回転した場合、図に示すように本来第1露光ユニット20_(01)のみで描画すべき幅D1の回路パターン(第1パターン領域Ra_(01))を第1および第2露光ユニット20_(01)、20_(02)の双方を用いて描画しなければならない。即ち、第1パターン領域Ra01のうち右上がりのハッチングで示される台形の領域が第1露光ユニット20_(01)により描画され、右下がりのハッチングで示される残りの三角形領域が第2露光ユニット20_(02)により描画されるべきである。従って、第2分割領域Ba_(02)の分割領域幅D4は、回転変換前の第1パターン領域Ra_(01)の一部を含むようにパターン領域幅D1よりも大きく設定される。これにより、実質的に回路パターンを回転させて描くことができる。」

「【0107】上述した実施形態では、描画作動時、描画テーブル16が露光位置に到達する度毎に停止され、その停止位置で露光ユニット20_(01)?20_(15)による露光作動が行われている。しかしながら、描画作動時、描画テーブル16を間欠的に移動させることなく連続的に一定速度で移動させつつ、所定の条件下で露光ユニット20_(01)?20_(15)による露光作動を行うことも可能である。詳述すると、描画テーブル16が距離(A+a)だけ移動する度毎に露光ユニット20_(01)?20_(15)による露光作動が開始されることは上述の実施形態と同じであるが、しかし露光時間については、描画テーブル16が各露光ユニットの個々のマイクロミラーによって得られる単位露光領域のサイズ(20μm)より小さい距離dを移動する間の時間とされる。
【0108】このように露光時間を設定すれば、上述の場合と同様な態様で回路パターンの描画を行うことができるだけでなく、回路パターンの描画に必要とされる描画時間も短縮することもできる。また、描画作動時、描画テーブル16を連続的に一定速度で移動させる別の利点として、描画テーブル16の駆動系が故障し難いということも挙げられる。
【0109】このように、本実施形態においては、回路パターンを露光ユニットの数に応じて分割しており、さらにこれら分割されたパターン領域よりも大きい分割領域を決定し、この分割領域に相当するラスタデータから任意のラスタデータを選択するため、座標変換が簡単な構成で容易に行える。また、ビットマップメモリ52内のラスタデータには何ら座標変換を施す必要がない。」

第3 本願発明と引用発明との対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「マイクロミラー」が、本願発明の「描画素子」に相当し、引用発明の「マイクロミラーの非露光位置から露光位置への回動変位の制御は、回路パターンデータ(ラスタデータ)に従って行われる」ことが、本願発明の「(描画素子が)入射された光を入力された制御信号に応じて変調」することに相当する。

引用発明の「描画する際の一画素」が、本願発明の「1つの描画点」に相当し、引用発明の「マイクロミラーの反射面は、結像光学系28に入射された光束(LB_(1))によって、描画面32上の20μm×20μmの露光領域として結像され、この露光領域が被描画体上に回路パターンを描画する際の一画素と」なることが、本願発明の「(描画素子が入射された光を)変調して1つの描画点を描画する」ことに相当する。

引用発明の「(その)反射面は1024×1280のマトリックス状に配列されたマイクロミラーから形成され」ている「DMDユニット」が、本願発明の「描画素子が一列に多数配置された描画素子列が多数配列された空間光変調素子」に相当する。

引用発明の「DMDユニットとして構成され」ている「各露光ユニット(18_(1)、…18_(8);20_(1)、…20_(7))」が、本願発明の「空間光変調素子により変調された光を描画面に結像する複数の描画ヘッド」に相当する。

引用発明の「描画テーブル14は一対のガイドレール12に沿って移動し得るようになっており、描画テーブル14上にはフォトレジスト層を持つ基板即ち被描画体が設置され、一対のガイドレールを跨ぐようにゲート状構造体16が設けられ、このゲート状構造体16の上面には複数の露光ユニットが配列され」ていることが、本願発明の「複数の描画ヘッドを、前記描画面に沿って所定の走査方向へ相対的に移動させ」ることに相当する。

2 一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「入射された光を入力された制御信号に応じて変調して1つの描画点を描画する描画素子が一列に多数配置された描画素子列が多数配列された空間光変調素子を有し、該空間光変調素子により変調された光を描画面に結像する複数の描画ヘッドを、前記描画面に沿って所定の走査方向へ相対的に移動させて描画を行う描画方法。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1
本願発明は、「多数の描画素子列を1または複数の描画素子列毎に分割し、該分割された複数の分割領域毎に前記制御信号を順次入力し、該制御信号の入力が終了した分割領域の描画素子から順次前記変調を行わせることによって、前記相対的移動中の描画面に対して前記分割領域毎に互いに異なるタイミングで描画点群を描画して、前記分割領域毎の描画点群を前記走査方向について前記描画面上の所望の異なる位置にそれぞれ配置するとともに、前記描画面の相対移動速度および前記分割領域毎の各描画点群が描画される所望の異なる位置に基づいて、前記描画面に描画される画像を表す画像データから前記描画点の各々に対応する描画データを形成し、該描画データに基づいて前記制御信号を形成する」ものであるのに対して、引用発明にはその点の限定がない点。

(2)相違点2
本願発明は「空間光変調素子の使用描画素子から出射される描画光の前記描画面上への投影点が、該投影点の配列方向が前記走査方向に対して所定の傾斜角度をなすように配置される」のに対して、引用発明にはその点の限定がない点。

第4 当審の判断
1 上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
マトリックス状に配列された描画素子(マイクロミラー)を用いて空間光変調を行い露光描画を行う描画方法において、多数の描画素子列を1または複数の描画素子列毎に分割すること、該分割された複数の分割領域毎に制御信号を入力すること、制御信号の入力が終了した分割領域の描画素子に対して変調を行わせること、相対的移動中の描画面に対して分割領域毎に互いに異なるタイミングで描画点群を描画すること、及び、分割領域毎の描画点群を前記走査方向について前記描画面上の所望の異なる位置にそれぞれ配置することは、いずれも、引用例2(特に、【0046】?【0054】、【0071】?【0075】、【0107】、【0108】及び【図1】?【図12】の記載参照。)に記載されている。
また、マイクロミラーデバイスを用いて空間光変調を行う技術において、分割された複数の分割領域毎に前記制御信号を順次入力し、該制御信号の入力が終了した分割領域の描画素子から順次前記変調を行わせることは、特開平9-198008号公報(特に、【0001】?【0003】、【0012】、【0013】、【0028】?【0032】及び【図1】?【図4】の記載参照。)にも記載されているように周知の技術である。
引用発明に、マイクロミラーを用いて空間光変調を行うという点で共通した技術分野の上記の引用例2に記載された技術及び上記の周知技術を適用することに格別の困難性は認めらない。そして、引用発明に引用例2に記載された技術及び上記の周知技術を適用した際には、所望の画像を描画するためには、「描画面の相対移動速度」及び「分割領域毎の各描画点群が描画される所望の異なる位置」を考慮すべきことは技術常識から当然の事項であるといえるから、「前記描画面の相対移動速度および前記分割領域毎の各描画点群が描画される所望の異なる位置に基づいて、前記描画面に描画される画像を表す画像データから前記描画点の各々に対応する描画データを形成し、該描画データに基づいて前記制御信号を形成する」という特定は技術常識から考えて当然の事項を特定したものに過ぎない。
すなわち、引用発明に引用例2に記載された技術及び上記の周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
マトリックス状に配列された描画素子(マイクロミラー)を用いて空間光変調を行い露光描画を行う描画方法において、空間光変調素子の使用描画素子から出射される描画光の描画面上への投影点が、該投影点の配列方向が走査方向に対して所定の傾斜角度をなすように配置されることは、引用例2に記載されていることである。(【0056】、【0084】及び【0085】、並びに、【図6】及び【図11】の記載参照。)
引用発明に、マイクロミラーを用いて空間光変調を行うという点で共通した技術分野の上記の引用例2に記載された技術を適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

2 そして、本願発明によってもたらされる作用効果は、引用発明、引用例2に記載された技術、及び、上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

3 したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明及び上記の周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

第5 むすび
以上より、本願の請求項7に係る発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-29 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-19 
出願番号 特願2004-205415(P2004-205415)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 森林 克郎
武田 悟
発明の名称 描画方法および描画装置  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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