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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1208060
審判番号 不服2007-22423  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-13 
確定日 2009-11-30 
事件の表示 特願2002-120777「移動通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 7日出願公開、特開2003-319036〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年4月23日の出願であって、平成19年7月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年8月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年9月11日付けで手続補正がなされ、平成21年5月11日付けで審尋がなされ、平成21年7月13日に回答書が提出されたものである。

2.平成19年9月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年9月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「一方に第1の表示部を有し、且つ、一端がヒンジ部で連結された第1及び第2の筐体部を含み、使用時、非使用時に応じて前記第1及び第2の筐体部を前記ヒンジ部を中心に開閉する移動通信装置において、
前記第1及び第2の筐体部の一方の裏面に前記第1の表示部とは別に設けられ、所定の情報を表示するための第2の表示部と、
前記第1及び第2の筐体部の開閉を検出する開閉検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき前記第1及び第2の筐体部が開状態の時には前記第1の表示部を選択し、前記第1及び第2の筐体部が閉状態の時には前記第2の表示部を選択して、使用する表示部を切り換える制御回路と、
外部の明るさを検出する光センサとを備え、
前記光センサで検出された明るさが予め決められた基準レベル以下となった場合には、前記第2の表示部を消灯することを特徴とする移動通信装置。」
と補正された。

上記補正は、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「表示部」を「第1の表示部」と限定し、「前記第1及び第2の筐体部の一方の裏面に前記表示部とは別に第2の表示部を設け、前記第1及び第2の筐体部の閉状態において前記第2の表示部に所定の情報を表示すると共に、更に、外部の明るさを検出する光センサを含み」を「前記第1及び第2の筐体部の一方の裏面に前記第1の表示部とは別に設けられ、所定の情報を表示するための第2の表示部と、前記第1及び第2の筐体部の開閉を検出する開閉検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき前記第1及び第2の筐体部が開状態の時には前記第1の表示部を選択し、前記第1及び第2の筐体部が閉状態の時には前記第2の表示部を選択して、使用する表示部を切り換える制御回路と、外部の明るさを検出する光センサとを備え」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-326710号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置の外形形状を示す斜視図であり、(a)は筐体を開いた状態の斜視図であり、(b)は筐体を閉じた状態の斜視図である。図1(a)、(b)に示した本発明の一実施形態による、折り畳み式携帯通信装置は、上部筐体10と、下部筐体12と、上部筐体10及び下部筐体12を開閉自在に保持するヒンジ部14とから概略構成されている。
【0010】上部筐体部10は、電波の送受信のためのアンテナ16、アンテナ16で受信した音声情報を使用者に音声として通知するためのスピーカ18、及び各種情報を表示するためのLCD(Liquid Crystal Display)表示部20とを備える。また、下部筐体12は、使用者の操作に従った操作情報を入力するためのキー操作部22と使用者の音声を音声情報に変換するためのマイク24とを備える。以上の構成は、図7に示した従来の折り畳み式携帯通信装置と同様の構成である。
【0011】本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置は、以上の構成に加えて上部筐体10の裏面10aに簡易LCD表示部26と簡易キー操作部28とを備えている点を特徴としている。つまり、図7に示した従来の折り畳み式携帯通信装置は、上部筐体100と下部筐体102とを開いた場合には、LCD表示部110によりLCD表示部110に表示された文字等の情報を使用者が確認することができるが、上部筐体100と下部筐体102とを閉じた場合には、LCD表示部110に表示された情報を確認することができず、キー操作も行うことができなかった。
【0012】本発明の一実施形態による折り畳み式携帯電話装置は、LCD表示部20及びキー操作部22以外に、上部筐体10の裏面10aに簡易LCD表示部26と簡易キー操作部28とを備えることによりLCD表示部及びキー操作部を2つ設け、携帯電話装置を開いた状態と閉じた状態とで各々LCD表示部及びキー操作部を使い分けることで、携帯電話装置の操作性、低消費電流化を向上させるものである。つまり、携帯通信装置を開いた状態では、LCD表示部20によって各種情報を表示するとともにキー操作部22によって使用者の操作内容を入力し、携帯通信装置を閉じた状態では、LCD表示部26によって各種情報を表示するとともに簡易キー操作部28によって使用者の操作内容を入力する。また、LCD表示部20及びキー操作部22と、LCD表示部26及び簡易キー操作部28とを用途によって使い分けることによって、LCD表示部20,26やLED(Light Emitting Diode)によるバックライト等の表示機能に使われる消費電力を低減させるものである。尚、簡易LCD表示部26は、上部筐体10の裏面10aに設けられるため、表示領域の面積はLCD表示部20よりも小さく設定されている。
【0013】図2は、本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置が備える簡易キー操作部28の構成例を示す図である。図2に示したように、簡易キー操作部28は、数字ボタン等を配列してなる配列ボタン30と、操作者が図中符号d1、d2,d3,及びd4に付された方向に押圧して上方向、下方向、右方向、及び左方向それぞれの選択を指示する4方向選択キー32とを備える。よって、使用者は、配列ボタン30と4方向選択キー32とを操作して、各種操作情報を入力する。
【0014】次に、本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置の電気的構成について説明する。図3は、本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置の電気的構成を示すブロック図である。尚、図3においては、図1に示した各部材に相当する部材には同一の符号を付してある。図3に示したように、本発明の一実施形態による折り畳み式携帯通信装置の電気的構成は、アンテナ16、無線部40、制御部42、マイク24、スピーカ18、キー操作部22、簡易キー操作部28、記憶装置44、開閉検出スイッチ46、LCDドライバ48、LCD表示部20、及び簡易LCD表示部26を含んで構成されている。
【0015】アンテナ16は無線信号の送受信を行うものであり、アンテナ16で受信された信号は無線部40へ送られる。無線部40はアンテナ16で受信された信号が音声情報である場合には、その信号を低周波数の音声信号に変換して、制御部42へ送信する。制御部42は、送られてきた音声信号をスピーカ18へ出力し、スピーカ18は音声信号を音声に変換する。また、マイク24から音声信号が入力された場合には、その音声信号が制御部42を介して無線部40へ出力され音声情報に変換されてアンテナ16から無線信号として送信される。
【0016】また、制御部22は、キー操作部22又は簡易キー操作部28から入力される操作情報に基づいて各種の制御を行う。記憶装置44は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)から構成され、折り畳み式携帯通信装置の動作を制御するプログラムを記憶したり、アンテナ16から受信した文字情報等を一時的に記憶する。開閉検出スイッチ46は図1に示した上部筐体10と下部筐体12との開閉状態を検出するスイッチである。LCDドライバ48は、LCD表示部20及び簡易LED表示部の表示制御を行う。制御部42は、開閉検出スイッチ46の検出結果及び表示する情報の種類に応じて、LCD表示部20に表示させるか又は簡易LCD表示部26に表示させるかをLCDドライバ48に制御させる。
【0017】ここで、図4を参照して表示する情報の種類に応じた表示切り換え制御について説明する。図4は、表示する情報の種類に応じた表示切り換え制御を説明するための図である。前述したように、簡易LCD表示部26はLCD表示部20よりも面積が小に設定されているため、LCDドライバ48は簡易な情報、例えば電話番号やショートメッセージ(SMS)を表示させる。一方、WEB情報や画像情報は、面積が大であるLCD表示部20へ表示させる。尚、これはあくまでも一例であって、開閉検出スイッチ46の検出結果に応じてこれらを切り換えても良い。例えば、携帯通信装置が閉状態である場合には簡易キー操作部28の操作内容を簡易LCD表示部26へ表示させ、携帯通信装置が開状態である場合にはキー操作部22の操作内容をLCD表示部20へ表示させる方が利便性が高いので好ましい。」

引用例の上記記載からすると、引用例には、
「LCD表示部を備える上部筐体と、下部筐体と、上部筐体及び下部筐体を開閉自在に保持するヒンジ部とで構成される折り畳み式携帯通信装置において、
上部筐体の裏面に設けられ、簡易な情報を表示するための簡易LCD表示部と、
上部筐体と下部筐体との開閉状態を検出する開閉検出スイッチと、
前記開閉検出スイッチの検出結果に応じて、LCD表示部に表示させるか又は簡易LCD表示部に表示させるかを制御する制御部とを備える折り畳み式携帯通信装置。」
の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
本願補正発明と引用例発明を対比する。
引用例において、図1(a)のように上部筐体と下部筐体が開状態であるときが使用時であり、図1(b)のように上部筐体と下部筐体が閉状態であるとき非使用時であることは自明であるので、引用例発明は、上部筐体と下部筐体の一端がヒンジ部で連結され、使用時、非使用時に応じて上部筐体及び下部筐体をヒンジ部を中心に開閉するものであるといえる。
また、引用例発明の制御部は、開閉検出スイッチの検出結果に応じて、LCD表示部に表示させるか又は簡易LCD表示部に表示させるかを制御するものであるから、開状態の時にはLCD表示部を選択し、閉状態の時には簡易LCD表示部を選択して、使用する表示部を切り換えるものであるといえる。
引用例発明の「LCD表示部」「上部筐体」「下部筐体」「折り畳み式携帯通信装置」「簡易な情報」「簡易LCD表示部」「開閉検出スイッチ」「制御部」は、本願補正発明の「第1の表示部」「第1の筐体部」「第2の筐体部」「移動通信装置」「所定の情報」「第2の表示部」「開閉検出手段」「制御回路」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「一方に第1の表示部を有し、且つ、一端がヒンジ部で連結された第1及び第2の筐体部を含み、使用時、非使用時に応じて前記第1及び第2の筐体部を前記ヒンジ部を中心に開閉する移動通信装置において、
前記第1及び第2の筐体部の一方の裏面に前記第1の表示部とは別に設けられ、所定の情報を表示するための第2の表示部と、
前記第1及び第2の筐体部の開閉を検出する開閉検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき前記第1及び第2の筐体部が開状態の時には前記第1の表示部を選択し、前記第1及び第2の筐体部が閉状態の時には前記第2の表示部を選択して、使用する表示部を切り換える制御回路とを備える移動通信装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、外部の明るさを検出する光センサとを備え、前記光センサで検出された明るさが予め決められた基準レベル以下となった場合には、前記第2の表示部を消灯するものであるのに対して、引用例発明では、そのような手段を備えていない点。

(4)判断
[相違点]について
移動通信装置において、外部の明るさを検出する光センサとを備え、前記光センサで検出された明るさが予め決められた基準レベル以下となった場合には、表示部を消灯することにより不使用時の電力消費を低減させることは、特開平9-224000号公報、特開2000-307719号公報、特開平9-233544号公報に示されているように、周知技術であり、当該周知技術を引用例発明に適用することに困難性は認められない。また、引用例発明は、不使用時には筐体が閉状態であり、第2の表示部が選択されていることから、消灯する表示部が第2の表示部となることは当然である。
したがって、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年9月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「一方に表示部を有し、且つ、一端がヒンジ部で連結された第1及び第2の筐体部を含み、使用時、非使用時に応じて前記第1及び第2の筐体部を前記ヒンジ部を中心に開閉する移動通信装置において、
前記第1及び第2の筐体部の一方の裏面に前記表示部とは別に第2の表示部を設け、前記第1及び第2の筐体部の閉状態において前記第2の表示部に所定の情報を表示すると共に、
更に、外部の明るさを検出する光センサを含み、前記光センサで検出された明るさが予め決められた基準レベル以下となった場合には、前記第2の表示部を消灯することを特徴とする移動通信装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明において付加された限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2009-09-29 
結審通知日 2009-09-30 
審決日 2009-10-20 
出願番号 特願2002-120777(P2002-120777)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則鶴谷 裕二  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 松元 伸次
山本 春樹
発明の名称 移動通信装置  
代理人 永井 道雄  
代理人 山下 穣平  

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