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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1208580
審判番号 不服2006-25570  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-13 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 平成 9年特許願第305213号「情報処理装置、情報処理方法、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月28日出願公開、特開平11-146034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成9年11月7日の出願であって、平成18年9月19日付けで手続補正がなされたが、同年10月6日付けで拒絶査定され、これに対し、同年11月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月13日付けで手続補正がなされたが、当審において、平成21年2月12日付けで平成18年12月13日付けの手続補正が却下されるともに最後の拒絶理由が通知され、平成21年4月20日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年4月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成18年9月19日付け手続補正書に記載された

「【請求項5】 他の情報処理装置に情報を送信する情報処理装置の情報処理方法において、
前記他の情報処理装置が所定の機能を有するかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果から、前記他の情報処理装置がテレビ電話機能を有する場合、音声入力手段により入力された音声情報と、画像入力手段により入力された画像情報とを送受信するテレビ電話の通話の処理が実行され、テレビ電話機能を有していない場合、画像情報を送信せずに前記音声入力手段により入力された音声情報を送受信する音声電話の通話の処理が実行されるように制御する制御ステップと
を備えることを特徴とする情報処理方法。」

という発明(以下、「本願発明」という)を、補正前の請求項3、4を削除することによって繰り上げると共に、

「【請求項3】 他の情報処理装置に情報を送信する情報処理装置の情報処理方法において、
前記他の情報処理装置が所定の機能を有するかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果から、前記他の情報処理装置がテレビ電話機能を有する場合、音声入力手段により入力された音声情報と、画像入力手段により入力された画像情報とを送受信するテレビ電話の通話の処理が実行され、テレビ電話機能を有していない場合、音声電話の通話のみ行える旨のメッセージを表示手段に表示させた後、画像情報を送信せずに前記音声入力手段により入力された音声情報を送受信する音声電話の通話の処理が実行され、テレビ電話の通話中には前記表示手段の表示を消灯せず、音声電話の通話中には前記表示手段の表示を消灯させるように制御する制御ステップと
を備えることを特徴とする情報処理方法。」

という発明(以下、「補正後発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、

a.本願発明に記載された「制御ステップ」について、「テレビ電話の通話中には前記表示手段の表示を消灯せず、音声電話の通話中には前記表示手段の表示を消灯させる」と限定し、

b.本願発明に記載された制御ステップにおける「画像情報を送信せずに前記音声入力手段により入力された音声情報を送受信する音声電話の通話の処理が実行される」について、「音声電話の通話のみ行える旨のメッセージを表示手段に表示させた後」であることを限定して、

特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(3-1)補正後発明
上記「1.本願発明と補正後発明」の項で「補正後発明」として認定したとおりである。

(3-2)引用発明
当審の拒絶理由通知に引用された特開平7-30872号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0015】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1に本実施例によるテレビ放送受信機付テレビ電話装置の外観を示し、図2は全体構成のブロック図を示す。図示のように、システムバス10にCPU12、プログラムROM14、インターフェース部16、RAM18、ディスクコントローラ20、テレビ受信回路24、画像処理部30、音声処理部36、キーボード42が接続される。インターフェース部16は本装置と電話回線48(例えばISDN回線)とのインターフェースをつかさどり、回線接続中、このインターフェース部16を介して画像と音声の情報が送受される。代表的にはカメラ部32に取り込まれた自画像は画像処理部30を経て多重部44で多重化され、インターフェース部16から送信画像信号として電話回線48に出力される。またハンドセット38から入力された音声は音声処理部36を通った後、多重部44で画像と多重化され、インターフェース部16から送信音声信号として回線48に出力される。一方、回線48から受信した画像信号は多重部46を通って分離され、画像処理部30に入力される。また回線48から受信した音声信号は多重部46を通って分離され音声処理部36に入力される。更に着呼の際に回線48から受信した相手の電話番号と普通の音声電話かテレビ電話かを識別するコードはCPU12に読み取られ、RAM18に格納される。」
(第4頁6欄)

ロ.「【0020】〈第1例〉第1の応答構成例では、テレビ放送受信中に電話がかかってきたことを表示部34のテレビ画面に合成表示してテレビを見ている人に知らせる。その際、電話をかけてきた相手が電話帳データベースに登録されていれば、受信した相手の電話番号とデータベースに登録された相手の情報(静止画像)をテレビ画面に合成表示し、登録されていなければ、その旨と相手の電話番号とをテレビ画面に合成表示する。
【0021】このような合成表示による電話着信の報知に対し、使用者が電話に出るためにハンドセット38を持ち上げると、それに伴うオフフック操作を装置が検出する。そして装置は動作モードをテレビ受信状態から電話状態へと切り替えるため、スピーカ40からのテレビ放送音声を消音するとともに、電話中のテレビ放送をハードディスク22に録画開始する。そして、相手からの電話がテレビ電話なら、回線48から受信した相手画像を主画面、テレビ放送画像を子画面というピクチャーインピクチャー形式でテレビ画面表示部34に表示し、普通の音声電話なら相手情報を主画面、テレビ放送画像を子画面というピクチャーインピクチャーで表示する。更に、電話中に使用者中からキーボード48を介して画面変更操作がされると対応する変更処理が行われる。なお、所定の呼出音の間、オフフック操作がない場合、本装置は留守番電話として対応する。
【0022】第1例の動作フローを図5に示す。TV受信中に着呼要求があると(5-1)、受信した相手電話番号で電話帳データベースを検索する(5-2)。相手がデータベースに登録されていれば(5-3)、相手電話番号とデータベースからの相手静止画像をテレビ画面に合成表示する。表示例を図7の上部に示す。主画面202がTV放送受信画面であり子画面204に電話がかかってきたこと、相手番号、及び電話帳データベースからの相手静止画像が表示される。データベースに未登録の相手の場合の合成表示(5-4)の例は図7の下部に示される。主画面202がTV放送受信画面であり、子画面214に電話がかかってきたこと、相手番号、及び未登録の相手であることが表示される。
【0023】このような合成表示による電話の着信報知に対し、使用者がハンドセット38を持ち上げると装置はそのオフフック操作を検出し(5-6)、通信を開始し、TV放送音声を消音し、TV画像・音声のハードディスク22への記録を開始する(5-9)。そして相手からの電話のタイプを識別し(5-10)、テレビ電話なら、図8の上部に示すように、回線48から受信した相手画像を主画面302、TV放送受信画像を子画面304としてテレビ画面表示部34にピクチャーインピクチャー表示し(5-12)、普通の音声電話なら図8の下部に示すように相手情報を主画面312とし、TV放送受信画像を子画面としてテレビ画面表示部34にピクチャーインピクチャー表示する。その後、キーボード42から画面変更操作(例えば、テレビ放送画像のみを表示部34に表示する形式への変更)が行われると、対応する変更処理が実行される(5-14)。通話終了によりハンドセット38を元に戻すと装置はそのオンフック操作を検出し(5-15)、動作を元のTV放送受信状態に復帰させ、ハードディスク22のTV放送録画エリア108への記録を停止する。
【0024】一方、所定の呼出音の回数の間ハンドセットを持ち上げる操作がされないとき(使用者がテレビを見つづける場合)は、オフフック操作なしと判定され(5-6)、留守番電話処理が実行される(5-7、5-8)。」
(第5頁7欄?8欄)


上記引用例の記載及び関連する図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(1)上記イ.によれば、引用例記載のテレビ放送受信機付テレビ電話装置は、相手の電話にカメラ部から入力された画像とハンドセットから入力された音声の情報を送受信するものであって、「情報処理」を行うものと言える。
(2)また、上記ロ.によれば、引用例記載のテレビ放送受信機付テレビ電話装置では、図5の5-10の動作において、相手の電話がテレビ電話であるか音声電話であるかを識別し、この識別結果から、相手の電話がテレビ電話の場合、テレビ電話の通話の処理が実行され、相手の電話が音声電話の場合、音声電話の通話の処理が実行されている。ここで、テレビ電話の通話の処理では音声と画像を送受信し、音声電話の通話の処理では画像を送信せずに音声を送受信することは技術常識であり、相手の電話がテレビ電話であるか音声電話であるかを識別することは、「所定の機能を有するかを識別する」と言える。
(3)そして、上記ロ.によれば、引用例記載のテレビ放送受信機付テレビ電話装置では、相手の電話が音声電話の場合、図8の下部に示されるように「相手はテレビ電話ではない旨」のメッセージがテレビ画面表示部に表示された後、音声電話の通話の処理が実行されており、テレビ電話の通話中には、図8の上部に示されるように、テレビ画面表示部には相手の動画像が表示されているから、「テレビ画面表示部は消灯しない」と言える。

したがって、上記(1)?(3)からして、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「相手の電話に情報を送信するテレビ放送受信機付テレビ電話装置の情報処理方法において、
前記相手の電話が所定の機能を有するかを識別する識別ステップと、
前記識別ステップにおける識別結果から、前記相手の電話がテレビ電話の場合、ハンドセットにより入力された音声と、カメラ部により入力された画像とを送受信するテレビ電話の通話の処理が実行され、音声電話の場合、相手はテレビ電話ではない旨のメッセージをテレビ画面表示部に表示させた後、画像を送信せずに前記ハンドセットにより入力された音声を送受信する音声電話の通話の処理が実行され、テレビ電話の通話中には前記テレビ画面表示部の表示を消灯しないように制御する制御ステップと
を備える情報処理方法。」

(3-3)対比
補正後発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「テレビ放送受信機付テレビ電話装置」、「相手の電話」は、それぞれ補正後発明の「情報処理装置」、「他の情報処理装置」に相当し、
引用発明の「識別」は、補正後発明の「判定」に相当し、
引用発明の「相手の電話がテレビ電話の場合」、「音声電話の場合」は、それぞれ補正後発明の「他の情報処理装置がテレビ電話機能を有する場合」、「テレビ電話機能を有していない場合」に相当し、
引用発明の「ハンドセット」、「音声」、「カメラ部」、「画像」、「テレビ画面表示部」は、それぞれ補正後発明の「音声入力手段」、「音声情報」、「画像入力手段」、「画像情報」、「表示手段」に相当する。

したがって、補正後発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「他の情報処理装置に情報を送信する情報処理装置の情報処理方法において、
前記他の情報処理装置が所定の機能を有するかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果から、前記他の情報処理装置がテレビ電話機能を有する場合、音声入力手段により入力された音声情報と、画像入力手段により入力された画像情報とを送受信するテレビ電話の通話の処理が実行され、テレビ電話機能を有していない場合、メッセージを表示手段に表示させた後、画像情報を送信せずに前記音声入力手段により入力された音声情報を送受信する音声電話の通話の処理が実行され、テレビ電話の通話中には前記表示手段の表示を消灯しないように制御する制御ステップと
を備える情報処理方法。」

(相違点1)
補正後発明は、メッセージが「音声電話の通話のみ行える旨」であるのに対して、引用発明では「相手はテレビ電話ではない旨」である点。

(相違点2)
補正後発明は、「音声電話の通話中には前記表示手段の表示を消灯させる」のに対して、引用発明では不明な点。

(3-4)当審の判断
そこで、まず、上記相違点1について検討すると、引用例の図8の下部に示される「相手はテレビ電話ではない旨」のメッセージは、上記ロ.の【0023】、図5を参照してわかるように、電話のタイプが音声電話と識別された場合に表示されるものであって、音声電話の通話のみ行える状態を意図しているから、引用発明におけるメッセージを「音声電話の通話のみ行える旨」の表示となるように設計する程度のことは、当業者であれば適宜成し得ることである。
次に、上記相違点2について検討すると、例えば、特開平1-256889号公報、特開平8-149178号公報に記載されるように、「音声電話の通話中には表示手段の表示を消灯させる」ことは慣用手段であるから、引用発明において、音声電話の通話中には表示手段の表示を消灯させるように設計する程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。

そして、補正後発明の作用・効果も、引用発明及び慣用手段から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後発明は引用発明及び慣用手段に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年4月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(3-2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び慣用手段に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-08 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-27 
出願番号 特願平9-305213
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
P 1 8・ 575- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 研一佐々木 洋  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 高野 洋
萩原 義則
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、および記録媒体  
代理人 稲本 義雄  

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