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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B07B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B07B
管理番号 1208581
審判番号 不服2006-25733  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-15 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 平成 9年特許願第108911号「静電荷像現像用トナーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月17日出願公開、特開平10- 43688〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1] 手続の経緯
本願は、平成9年(1997年)4月25日(優先権主張 平成8年(1996年)5月27日)の出願であって、平成17年7月29日付けで通知した拒絶理由に対して、同年9月30日付けで手続補正書が提出され、平成18年10月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服の審判の請求がなされるとともに、同年11月28日付けで手続補正がなされたものである。
さらに、当審において、審尋がなされたところ、審判請求人から平成21年1月27日付けで回答書が提出されたものである。


[2] 平成18年11月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年11月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正には、特許請求の範囲を以下のように補正しようとする補正事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】 少なくともバインダー樹脂および着色剤からなるトナー粒子を形成する工程、並びに、該トナー粒子を篩別する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、バインダー樹脂のガラス転移点が40?80℃であり、超音波で篩面を振動させながら前記篩別を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】 バインダー樹脂の軟化点が80?120℃である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】 静電荷像現像用トナーの平均粒子径が3?8μmである請求項1又は2に記載の電荷像現像用トナーの製造方法。」

(補正後)
「【請求項1】 少なくともバインダー樹脂および着色剤からなるトナー粒子を形成する工程、並びに、該トナー粒子を篩別する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、バインダー樹脂のガラス転移点が40?80℃であり、30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら前記篩別を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】 バインダー樹脂の軟化点が80?120℃である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】 静電荷像現像用トナーの平均粒子径が3?8μmである請求項1又は2に記載の電荷像現像用トナーの製造方法。」

この補正事項は、補正前の請求項1の「超音波」を「30?40kHzの振動数の超音波」に限定するものであるから、
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された次の発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(本願補正発明)
「 少なくともバインダー樹脂および着色剤からなるトナー粒子を形成する工程、並びに、該トナー粒子を篩別する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、バインダー樹脂のガラス転移点が40?80℃であり、30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら前記篩別を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。」


2.引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平6-19201号公報(原査定の引用文献1。以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1a) 「【請求項1】 重量平均粒径2?15μmのトナー粒子と外添剤とを混合してトナーを調製し、調製したトナーを、下記条件
0.05≦d〔mm〕≦0.208
100≦W〔μm〕≦180
7.9×10^(-4)≦d〔mm〕/W〔μm〕≦9.1×10^(-4)〔式中、dは篩に使用している網を構成するワイヤーの平均粒径(当審注:平均径の誤記である。)を示し、Wは篩の目開きを示す〕を満足するあや織の網の篩を通過させることを特徴とするトナーの製造方法。」

(1b) 「【0002】
【従来の技術】図3に示す如く、一般に、熱可塑性樹脂、着色剤(例えば、染料、顔料、磁性粉など)を加熱溶融混練し、均一な分散体を形成した後、冷却した混練物を粉砕するための粉砕工程及び必要により粉砕物を分級するための分級工程を経て、所定の粒径及び粒度分布を有する微粉末(すなわち、トナー粒子)が調製される。更に、複写機の現像工程、転写工程、感光体から未転写トナーを除去するクリーニング工程において安定に画出しを続けるために、トナーの流動性,帯電安定性,潤滑性,クリーニング性などの特性を向上させる目的で無機微粉体や有機微粉体の如き外添剤とトナー粒子とを混合する工程を経て、トナーは製造される。」

(1c) 「【0003】しかしながら、これらの工程において、粗粒や、機械的な発熱による融着粗粒や、ファンデルワールス力による再凝集体などが発生し、粗粒及び再凝集体は現像機中の微小間隙へのつまりを生じたり、帯電不良粒子として種々の画像欠陥を発生させる原因となる。粗粒や再凝集体を除去するために、例えば、目開き100?250μmの篩いを通す工程などが行われている。篩を有する装置として、例えば、多段ジャイロシフターがあり、振動方法としては機械的振動や超音波振動などがある。」

(1d) 「【0004】このような方法によって、粗粒や再凝集体は、一応、除去することは可能となるが、現状において、生産安定性やトナーの品質にいくつかの改良すべき点を有している。例えば、篩を長時間使用するとトナー粒子と篩の網との摺擦によって、網を形成するワイヤーが摩耗して、目開きが大きくなったり、ワイヤーが破損して、目的を達成し得ないことが起こる。特に、トナー粒子中に磁性粉を含有する磁性トナーの場合や、硬度の高い研摩性の高い無機微粉体や有機微粉体をトナー粒子と混合したトナーにおいては、ワイヤーの摩耗は大きくなる。更に、近年、より高精細な画質を追及するするために、トナー粒径は小さくなる傾向にあり、単位重量当りのトナーの比表面積の増大は、網のワイヤーとの接触回数を増やす。効果的な粗粒及び再凝集体の除去のために目開きを小さくするためにワイヤー径を細くすると、ワイヤーの摩損を早める問題を生じている。」

(1e) 「【0005】トナー粒子及び外添剤を篩いから効率的に通過させるために、種々の振動をメッシュにかけることが行われている。
【0006】しかしながら、従来の平織の網の篩を振動させてトナーを通過させると、トナー粒子表面の形状が変形しやすく、トナー中の外添剤の分散状態や、外添剤とトナー粒子との付着状態が変化し、その結果、トナーの帯電特性や粉体特性が変化してトナーの特性が低下する場合があった。
【0007】そのため、外添工程後のトナーの篩処理を、トナーの特性を低下させずに効率良く行う方法が待望されている。」

(1f) 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、長期間にわたって、安定に凝集体や粗粒子を除去し得るトナーの製造方法を提供することにある。
【0009】更に、本発明の目的は、凝集体や粗粒子を除去するための篩いの網の摩損を防止し、効率的にトナーを通過させる製造方法を提供することにある。
【0010】更に、本発明の目的は、凝集体や粗粒子を除去するための工程において、トナーが所望の帯電性能や粉体特性などを保持し、安定した画質を得ることができるトナーの製造方法を提供することにある。
【0011】更に、本発明の目的は、磁性体を含有する磁性トナーの場合でも篩いの網の摩損の少ないトナーの製造方法を提供することにある。
【0012】更に、本発明の目的は、トナー粒子に研摩性を有する無機微粉体や有機微粉体を外添したトナーの場合でも、篩いの網の摩損の少ないトナーの製造方法を提供することにある。
【0013】更に、本発明の目的は、小粒径のトナーの場合においても、篩いの網の摩損の少ないトナーの製造方法を提供することにある。」

(1g)「【0016】本発明において、トナー粒子は、外添剤と混合され、トナー組成物(すなわち、トナー)とした後に篩にかけられる。使用する篩として、図1に示す綾織の網を有する篩が使用される。重量平均粒径2?15μmのトナー粒子の場合、網を構成するワイヤーの平均径dは、0.052乃至0.208mmが好ましく、網の平均目開きWは、100乃至180μmが好ましい。ワイヤーの平均径dが0.052mm未満の場合は、篩の耐久性が劣る傾向にあり、一方、0.208mmを越える場合は、トナーが篩上に滞留する時間が長くなり過ぎる傾向にある。網の平均目開きWが100μm未満の場合は、トナー粒子表面から外添剤が遊離しやすくなり、一方、180μmを越える場合は、粗粒がトナーに混入する虞が大きくなる。ワイヤーの平均径dは、好ましくは0.080乃至0.180mmが良く、網の平均目開きは106乃至170μmが良い。」

(1h) 「【0022】トナー粒子に外添剤を外添する際には、ヘンシェルミキサーの如き粉体混合装置が好ましく使用される。」

(1i) 「【0023】篩を装着している装置としては、振動ふるい、ジャイロシフターなどがある。」

(1j) 「【0029】なかでも、トナーの現像特性を考慮するとスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が結着樹脂として特に好ましく用いられる。」

(1k) 「【0037】トナー粒子は、解像性及び現像性の点から、重量平均粒径2?15μm(好ましくは、4?12μm)が良い。」

(1L)) 「【0040】トナー粒子と混合される添加剤(すなわち、外添剤)としては、無機微粉体、表面処理された無機微粉体及び有機微粉体が挙げられる。」

(1m) 「【0047】
【実施例】以下に、具体的実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明はなんらこれらのみに限定されるものではない。
【0048】実施例1
スチレン/ブタジエン樹脂 100重量部
磁性酸化鉄(平均粒径0.2μm) 90重量部
ニグロシン染料 2重量部
【0049】上記材料をヘンシェルミキサーにて均一混合した後、2軸タイプ押出機で加熱溶融混練し、冷却した混練物を約100μmに粗砕して粗粉砕物を得、粗粉砕物をジェット粉砕機にて微粉砕して微粉砕物を得、微粉砕物を分級機にて所望粒度分布に調整し、重量平均粒径7μmの黒色微粉末〔磁性トナー粒子(A)〕を得た。
【0050】75リットル容量のヘンシェルミキサーに、磁性トナー粒子(A)97.7wt%、疎水性コロイダルシリカ微粉体0.3wt%及びチタン酸ストロンチウム微粉体2wt%を添加して、撹拌羽根の回転数1800rpmで5分間撹拌混合して磁性トナー(A)を得た。疎水性コロイダルシリカ微粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積200m^(2) /gを有し、チタン酸ストロンチウムは、BET比表面積2.4m^(2) /gを有していた。
【0051】得られた磁性トナー(A)から、生産工程における融着物、粗粒子、再凝集物等を除去するため、平均目開きWが112μm、ワイヤーの平均径dが0.100mm、d/Wが8.93×10^(-4)の綾織りのステンレススチール網を有するふるい(120Meshes per Linear Inch)を装着したジャイロシフター(篩を、旋回半径30mm、旋回数230rpmで動かした)で、磁性トナー(A)の処理量5kg/m^(2) ・分で通過せしめて磁性トナー(A-a)を得た。
【0052】通算500時間の稼動においても、篩いの網に破損はなく、磁性トナー(A-a)に粗粉、融着物及び再凝集物の混入も見られなかった。
【0053】篩を通した磁性トナー(A-a)をキヤノン製複写機NP2020に入れて常温常湿(温度23℃、湿度60%RH)で画出しを行ったところ、画像濃度1.35で、カブリ、反転カブリ等の画像欠落は見られなかった。
【0054】複写機を高温高湿(温度32.5℃、湿度85%RH)環境下に一晩放置後、常温常湿環境下で画出ししたところ、画出しの1枚目は画像濃度が1.31であったが、10枚目には画像濃度が1.35に回復した。」

(1n)「【0080】
【発明の効果】本発明によれば、篩いメッシュの摩損を防止でき、トナーを所望の帯電性能や粉体特性などに保持し、長期間にわたって安定に凝集体や粗粒子を除去することができる。」

これら記載事項によれば、刊行物1の実施例1(1m)には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「スチレン/ブタジエン樹脂 100重量部
磁性酸化鉄(平均粒径0.2μm) 90重量部
ニグロシン染料 2重量部
上記材料をヘンシェルミキサーにて均一混合した後、溶融混練し、冷却した混練物を粗砕して粗粉砕物を得、粗粉砕物を微粉砕して微粉砕物を得、微粉砕物を分級機にて所望粒度分布に調整し、重量平均粒径7μmの黒色微粉末〔磁性トナー粒子(A)〕を得る工程、
磁性トナー粒子(A)97.7wt%と、疎水性コロイダルシリカ微粉体0.3wt%及びチタン酸ストロンチウム微粉体2wt%(外添剤)とを、ヘンシェルミキサー中で、混合して磁性トナー(A)を得る工程、
平均目開きWが112μm、ワイヤーの平均径dが0.100mm、d/Wが8.93×10^(-4)の綾織りのステンレススチール網を有するふるい(120Meshes per Linear Inch)を装着したジャイロシフター(篩を、旋回半径30mm、旋回数230rpmで動かした)で、磁性トナー(A)を処理量5kg/m^(2 )・分で通過せしめて、磁性トナー(A-a)を得る工程、
よりなり、
得られた磁性トナー(A-a)に粗粉、融着物及び再凝集物の混入が見られない、
磁性トナー(A-a)の製造方法。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭50-37062号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
「基部と、これに対し振動運動を行なうよう取付けられた枠と、枠に取付けられた格子と、基部に対して枠を振動させる装置とを含む振動ふるい装置において、枠に対し格子28を超音波振動させるため格子に作動する独立作動の超音波装置を設けたことを特徴とする、振動ふるい装置。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)なる発明が記載され、更に、「超音波装置は使用中、格子を枠に対し毎秒13,000?40,000、特に18,000?22,000回範囲の振動させる」(1頁右下欄3?5行)こと、等が記載されている。

(3)刊行物5
本願出願前に頒布されたことが明らかな、「Schuttgut」1995年1月号、215頁(本願の平成15年12月22日付けの刊行物提出書の「刊行物5」である。ここでも、「刊行物5」という。)には、
「超音波振動篩システム」は「粉体とメッシュ間の摩擦抵抗は格段に小さくなる」こと、
その「電気振動」が「36kHz」であること、
「篩工程の効率が格段に向上するとともに、メッシュ詰まりも減る」こと、「本装置が使用される業界の典型」の一つとして、「トナー」が挙げられること、
が説示されている。
(なお、和訳文は、平成15年12月22日付け刊行物提出書に「刊行物5」の翻訳文として示されている)。


3.本願補正発明と刊行物1発明との対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、
刊行物1発明の「スチレン/ブタジエン樹脂」は、本願補正発明の「バインダー樹脂」に相当する。
刊行物1発明の「磁性酸化鉄」及び/または「ニグロシン染料」は、本願補正発明の「着色剤」に相当する。
刊行物1発明の「磁性トナー粒子(A)」は、本願補正発明の「トナー粒子」に相当する。
刊行物1発明の「磁性トナー(A-a)」は、本願補正発明の「静電荷像現像用トナー」に相当する。

刊行物1発明の「平均目開きWが112μm、ワイヤーの平均径dが0.100mm、d/Wが8.93×10^(-4)の綾織りのステンレススチール網を有するふるい(120Meshes per Linear Inch)を装着したジャイロシフター(篩を、旋回半径30mm、旋回数230rpmで動かした)で、外添処理した磁性トナー(A)を処理量5kg/m^(2 )・分で通過せしめる工程」は、
本願補正発明の「トナー粒子を篩別する工程」及び「篩面を振動させながら前記篩別を行う」ものであることに相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

[一致点]
「 少なくともバインダー樹脂および着色剤からなるトナー粒子を形成する工程、並びに、該トナー粒子を篩別する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、篩面を振動させながら前記篩別を行う、静電荷像現像用トナーの製造方法。」

[相違点1]
バインダー樹脂のガラス転移点が、
本願補正発明では、「40?80℃」であるのに対し、
刊行物1発明では、バインダー樹脂である「スチレン/ブタジエン樹脂」のガラス転移点について特定されていない点。

[相違点2]
篩面の振動について、
本願補正発明では、30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら篩別を行うのに対し、
刊行物1発明では、「ジャイロシフター」を旋回させながら篩別するものであり、30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させるものでない点。

そこで、これら相違点について、以下検討する。

(1) 相違点1について
刊行物1には、刊行物1発明のバインダー樹脂である「スチレン/ブタジエン樹脂」のガラス転移点について記載されておらず、
また、刊行物1には、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が結着樹脂として特に好ましく用いられることが記載されている(前記(1i)参照)ところ、それら結着樹脂のガラス転移点がどの程度であるかについては記載されていない。

しかし、トナーのバインダー樹脂に用いられるポリエステル樹脂のガラス転移点は、40?80℃の範囲にあることは、本願出願前に周知である。
もし必要であれば、原審の拒絶査定の備考欄に引用された、下記の追加文献1?追加文献3を参照されたい。
追加文献1:特開平5-224461号公報(【0033】等)
追加文献2:特開平8-30014号公報 (【0008】【0015】【0032】等)
追加文献3:特開平5-100478号公報(【0009】【0020】等)
それ以外にも、例えば、特開平7-134445号公報には、トナー用ポリエステル樹脂のガラス転移点について、汚染や定着性等の観点から、65?80℃の範囲が好ましいことが説示されている。また、特開平8-129270号公報には、高温での保存安定性、凝集物の生成などの観点から、トナーのバインダー樹脂のガラス転移点を45℃程度以上とするのが好まし旨が記載され、その実施例では、ガラス転移点(Tg)が60℃のスチレン/n-ブチルアクリレートの共重合樹脂が使用されている。
このように、ガラスガラス転移点の低いバインダー樹脂を用いることは、本願明細書【0005】にも記載されるように、近年(本願出願前から)の傾向である。

そうすると、刊行物1発明のバインダー樹脂について、ガラス転移点が40?80℃の範囲のバインダー樹脂を使用することは、当業者が容易に採用し得ることである。

(2) 相違点2について
刊行物1には、篩の振動方法としては、「機械的振動」や「超音波振動」などがあることが説示されている(前記(1c)参照)。
そうすると、刊行物1記載のこの説示にしたがって、刊行物1発明における「ジャイロシフター」に換えて、「超音波振動」による篩装置を使用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、刊行物2には、「基部と、これに対し振動運動を行なうよう取付けられた枠と、枠に取付けられた格子と、基部に対して枠を振動させる装置とを含む振動ふるい装置において、枠に対し格子28を超音波振動させるため格子に作動する独立作動の超音波装置を設けたことを特徴とする、振動ふるい装置。」なる発明が記載され、更に、「超音波装置は使用中、格子を枠に対し毎秒13,000?40,000(当審注:これは、13?40kHzである。)、特に18,000?22,000回範囲の振動させる」ことが記載されている。
さらに、刊行物5には、上記のとおり、「超音波振動篩システム」は「粉体とメッシュ間の摩擦抵抗は格段に小さくなる」こと、その「電気振動」が「36kHz」であること、「篩工程の効率が格段に向上するとともに、メッシュ詰まりも減る」こと、「本装置が使用される業界の典型」の一つとして、「トナー」が挙げられること、が説示されている。
したがって、本願補正発明に規定された「振動数30?40kHz」は、篩の超音波振動としては、通常、使用される範囲に含まれるものに過ぎず、また、トナーを篩う際にも使用され得る範囲である。

これらのことを勘案すると、刊行物1発明における「ジャイロシフター」に換えて「超音波振動」による篩装置を使用し、その際に、振動数を30?40kHzにすることは、当業者が容易になし得ることである。

(請求人の主張、効果について)
請求人は、回答書で次のように主張する。
「(2)引用文献1(当審注:本審決の刊行物1である。)には、樹脂と着色剤との溶融混練→粉砕→分級→外添剤との混合、を含むトナーの製造方法において、機械的発熱による融着粗粒やファンデルワールス力による再凝集体を除去するために、例えば、目開き100?250μmの篩いを通す工程が行われているとされる。
これは当該引用文献1が主題とする発明に対する従来技術の紹介であって、続いて、「篩を有する装置として、例えば、多段ジャイロシフターがあり、振動方法としては機械的振動や超音波振動などがある」([0003])、「生産安定性やトナー品質にいくつか改良すべき点を有している([0004])と記載されているように、ジャイロシフターや超音波振動篩それ自体は公知の技術ではあるが、まだ解決すべき課題が残っていることを指摘している。
(3)そこで、引用文献1の発明は、これらの課題を解決するために、あや織り網の篩を使用して、トナー粒子径、篩の目開き、篩を構成するワイヤー径をそれぞれ数値で特定したものである([請求項1][0016])。目開きが100μm未満の場合、トナー粒子表面から外添剤が遊離しやすくなり好ましくないとされる([0016])。篩を装着している装置としては、振動ふるい、ジャイロシフターなどがあるとされるが[0023]、全ての実施例であや織りステンレス網(比較例は平織り網)を有する篩を装着したジャイロシフターが使用されており、超音波振動に関連する記載は全くない。示唆もない。ジャイロシフターは、篩面の目詰まり除去のために、タッピングボール等の媒体を篩面上で運動させ、網に機械的衝撃を与えて目詰まりを連続的に除去するものである(本願[0020])。
篩に機械的振動が与えられるので、その観点からも篩の目開きを小さくすることに限界があり、100?180μmと限定されたものと理解される。 引用文献1の発明をジャイロシフターを使用せずに特定の超音波振動を付与して実施する態様については記載も示唆もされないものと思料する。」

そこで検討するに、請求人の主張は、刊行物1では、超音波振動篩は従来技術として記載されているに留まり、その実施例は、ジャイロシフターを使用するものだけであり、超音波振動に関連する記載はなく示唆もないというものであるが、
刊行物1には、実施例に記載された事項(具体的には、刊行物1発明)だけでなく、明細書の他の部分に記載された事項も存在するから、相違点の判断に当たり、明細書の他の部分に記載された事項を勘案することは、当然に許されることである。そして、明細書の他の部分には、ジャイロシフターでないと、刊行物1に記載された技術課題が解決できないという記載はなく、また、刊行物1の特許請求の範囲は、ジャイロシフターに限定していないのであるから、ジャイロシフターだけでなく、超音波振動篩も適用可能なことは明らかである。
なお、刊行物1で目開きを100?180μmと限定したのは、刊行物1の上記(1g)に記載されるように、「網の平均目開きWが100μm未満の場合は、トナー粒子表面から外添剤が遊離しやすくなり、一方、180μmを越える場合は、粗粒がトナーに混入する虞が大きくなる。」というものである。本願の実施例は、メッシュ150(目開き約104μm)、メッシュ200(目開き約74μm)というものであり、刊行物1でも、本願の実施例の目開き104μm程度のものを許容している。そして、刊行物1発明(目開き112μm)でも、トナー粒子表面から外添剤が多少遊離することをあまり気にしなければ、目開きが104μm程度のものを採用することは、もちろん可能である。
また、回答書で請求人が提案するような、本願補正発明の振動篩の目開きを「150メッシュ(104μm)以下」に限定する補正をしたとしても、刊行物1との重複部分は依然として残るものである。

また、請求人は、審判請求書で次のようにも主張する。
「ところで本願発明は、ガラス転移点が低すぎる場合には画質低下を招く恐れがあり、また、保存中にトナーがブロッキングをおこす可能性があるという観点から、(b)ガラス転移点が40?80℃のバインダー樹脂を採用するのですが(本願明細書、段落0010段落)、このようなガラス転移点が通常のものより低めのバインダー樹脂を使用する場合には、特に目詰まりが発生し易いという課題があるところ(同、段落0010)、(c)30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら篩別を行うことで、篩の目開きに近い粒度の粒子が網の目に付着するのを防ぐため、篩面上ではトナー・網共に非接触で目詰まりが除去可能となるものです(同、段落0021)。しかしながら、引用刊行物1にはバインダー樹脂としてガラス転移点を如何様にするのかについては全く記載がなく本願発明のようになすことは何ら想起されません。また仮に想起したとしても、特定の範囲のガラス転移点を有するバインダー樹脂を採用したトナー粒子を篩別する工程において、篩いの振動方法に超音波で篩面を振動させながら前記篩別を行うことは想起しないことは勿論、その振動数までをも想起するものでは決してありません。更には、バインダー樹脂のガラス転移点と超音波振動による篩別の効果との関係は当業者といえども容易に予想されるものではありません。」

そこで、検討すると、上記したように、ガラス転移点が40?80℃のバインダー樹脂を採用すること、30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら篩別を行うことは、ともに普通の程度のことであるから、両者をともに採用することに特に困難性はないものである。
請求人は、本願発明は、「ガラス転移点が通常のものより低めのバインダー樹脂を使用する場合には、特に目詰まりが発生し易いという課題」があり、「30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら篩別を行うことで、篩の目開きに近い粒度の粒子が網の目に付着するのを防ぐため、篩面上ではトナー・網共に非接触で目詰まりが除去可能となる」というものであるのに対し、刊行物1にはそのような記載も示唆もない旨を主張するが、
請求人が説明するような課題が刊行物1に記載されていないとしても、刊行物1発明において、バインダー樹脂のガラス転移点や超音波振動による篩の振動数に関する周知または公知の事項から、ガラス転移点が40?80℃のバインダー樹脂を採用し、かつ、30?40kHzの振動数の超音波で篩面を振動させながら篩別を行うことを、当業者であれば容易に想到することができるから、本願補正発明の構成により、請求人が主張するような組み合わせの作用効果が一定程度あるとしても、容易想到性の判断を変えるほどのものではない。
なお、本願補正発明は「30?40kHzの振動数」を規定するが、本願明細書には、30?40kHzから外れた比較例はなく、30?40kHzの数値範囲について明確な臨界的意義があるということはできない。

よって、請求人の主張を採用することはできない。

(まとめ)
以上のとおりであるから、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、周知技術、及び、刊行物2,5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[3]本願発明について
1.本願の請求項1に係る発明
平成18年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成17年9月30日付けの手続補正書
により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「 【請求項1】 少なくともバインダー樹脂および着色剤からなるトナー粒子を形成する工程、並びに、該トナー粒子を篩別する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、バインダー樹脂のガラス転移点が40?80℃であり、超音波で篩面を振動させながら前記篩別を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(本審決では上記の刊行物1)の記載事項は、前記「[2]2.(1)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、本願補正発明の「30?40kHzの振動数の超音波」から、「30?40kHzの振動数の」という限定事項を省いたものに相当する。
本願発明1と刊行物1発明を対比すると、上記「[2]3.」で示した相違点1及び相違点2(但し、「30?40kHzの振動数」の点を除く。)で相違するところ、
これらの相違点に係る本願発明1のごとくなすことは、本願補正発明の相違点1,2について示したのと同様の判断理由(但し、刊行物2,5を使用する必要はない。)により、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明、周知技術、及び、刊行物1に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-29 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願平9-108911
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B07B)
P 1 8・ 121- Z (B07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 登  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 森川 元嗣
大森 伸一
発明の名称 静電荷像現像用トナーの製造方法  
代理人 特許業務法人志成特許事務所  

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