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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1208615
審判番号 不服2007-14232  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-17 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 特願2002- 90775「電子パスポート」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 7日出願公開、特開2003-285581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願手続の概要は、次のとおりである。
特許出願 平成14年 3月28日
拒絶理由通知書発送 平成18年12月26日
拒絶査定謄本送達 平成19年 4月17日
審判請求 平成19年 5月17日
手続補正書提出 平成19年 6月15日

II.平成19年6月15日付け手続補正についての補正却下の決定
[I]補正却下の決定の結論
平成19年6月15日付け手続補正を却下する。

[II]理由
1.本件補正の内容
平成19年6月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1を
「【請求項1】
パスポート本体にデータ入力手段、柔軟性のあるビザシート部に設けた前記データ入力手段から入力されたデータに基づいて画像を表示する柔軟性を有する画像表示手段を備えたことを特徴とする電子パスポート。」と補正することを含むものであって、平成14年法律第24号による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められるので、以下に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、独立特許要件の検討を行う。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-64370号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。

「【特許請求の範囲】 …
【請求項3】 証明証データを記憶する証明証データ記憶領域を備えたデータ記憶手段と、このデータ記憶手段の証明証データ記憶領域に記憶される証明証データを受信する受信手段と、この受信手段によって受信され且つ前記データ記憶手段の証明証データ記憶領域に記憶された証明証データを表示する表示手段とを備えていることを特徴とする電子証明証。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は運転免許証,健康保険証,パスポートなどの個人データを記憶し、証明するために使用される電子証明証に関する。
【0002】
【従来の技術】運転免許証は免許取得者の住所,氏名,免許番号,免許期間などの必要事項が印刷されると共に、免許取得者の写真が貼着されている。パスポートにおいても同様であり、氏名,国籍,身長などが記入されると共に、写真が掲載されている。これらの証明証は公的期間に対する証明を行なうところから、上述した必要事項の記入がなされるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の証明証では、必要事項のみが記載されるため、その他の事項を認識したり、必要事項の変更,拡張ができない不憫さがあった。例えば運転免許証だけでは、交通違反をした日付やその罰則の内容などの情報を知ることができず、これらを忘れて、さらに交通違反を犯すことが多々行なわれている。
【0004】本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、証明証を情報機器化することにより、証明内容や過去の経歴等の情報を簡単に、しかも確実に把握することが可能な電子証明証を提供することを目的とする。」

「【0008】
【実施例】図1は本発明の電子証明証を電子免許証に適用した実施例を示す。…
【0010】図2は電子免許証1の回路構成を示し、データ記憶手段としてのRAM21およびEEPROM22と、表示部5での表示を制御する表示制御部23と、トランスポンダ7を制御する無線制御部24と、操作釦10a,10b,10cからなるキー入力部10と、全体の制御を行なうCPUからなる制御部20とを備えている。この場合、無線制御部24はトランスポンダ7が受信したデータを制御部20に送出する一方、制御部20からの送信データをトランスポンダ7に送出する。制御部20はキー入力部10からのキー入力に基づいて所定の処理を行なうものであり、例えば操作釦10a(図1参照)からキー入力されると、RAM21に記憶されているデータを表示制御部23に送って表示させ、操作釦10bからキー入力されると、EEPROM22に記憶されているデータを表示制御部23に送って表示させる。更に、操作釦10cからキー入力されると、後述するモードの切換えを行なう。また、この制御部20はトランスポンダ7が特定コードを受信すると、RAM21に記憶されているデータを送信するように制御する。
【0011】図3はRAM21の内部構成を示し、現在時刻及び年日付データを記憶する「計時レジスタ」,交通違反の反則点数もしくは持ち点数を記憶する「点数レジスタ」,「任意保険/強制保険」,「車検期限日/血液型/連絡先」,「経歴」その他のデータが格納される記憶部を有している。このRAM21に記憶されるデータは任意に変更できる個別データである。なお、同図において、「F_(0) 」レジスタは免許の更新日フラグ、「F_(1) 」、レジスタは車検フラグが格納される。
【0012】図4はEEPROM22の内部構成を示し、「画像記憶部」には免許取得者の人物(顔)画像データが格納される。EEPROM22はこの記憶部に加えて、運転免許証に関する種々のデータ、例えば交付番号データ,有効期間データ,免許の種類,交付日,免許取得日,氏名,誕生日,めがねの要・不要,本籍地,住所等のデータを格納する記憶部を有している。」

「【0017】このような本実施例では、取得した運転免許に関する種々のデータを記憶すると共に、更新期限等の期限管理や交通違反などのデータの書込みや各種のデータの更新を自動で行うため、データの把握が確実となり、使用上便利となる。
【0018】なお、本発明の運転免許証のみならず、健康保健証、パスポートなどの他の個人データを記憶し、証明する電子証明証にも同様に適用できると共に、これらを複数、組み合わせた電子証明証にも適用できる。さらに、電子証明証の形態を腕時計タイプとしても良く、これにより携帯忘れがなくなる便利が付与される。さらには、表示部に加えて、使用者の写真を貼着しても良い、」

引用例には、その【請求項3】に記載されるように「 証明証データを記憶する証明証データ記憶領域を備えたデータ記憶手段と、このデータ記憶手段の証明証データ記憶領域に記憶される証明証データを受信する受信手段と、この受信手段によって受信され且つ前記データ記憶手段の証明証データ記憶領域に記憶された証明証データを表示する表示手段とを備えていることを特徴とする電子証明証。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明の「受信手段」は、「証明証データを受信する」ものであるから、本願補正発明の「データ入力手段」に相当する。
また、引用発明の「表示手段」は、本願補正発明と同様に「画像を表示する」ものであることが明らかであり、さらに、「受信手段によって受信され且つ前記データ記憶手段の証明証データ記憶領域に記憶された証明証データを表示する」ものであるから、本願補正発明の「画像表示手段」と「データ入力手段から入力されたデータに基づいて画像を表示する画像表示手段」である点で一致する。
さらに、引用発明の「電子証明証」は、引用例の【0001】、【0002】及び【0018】に記載されるようにパスポートに適用されるものであり、パスポートに適用した引用発明の「電子証明証」は、本願補正発明と同様に「電子パスポート」であるといえる。

以上のことから、両者はともに
「パスポート本体にデータ入力手段、前記データ入力手段から入力されたデータに基づいて画像を表示する画像表示手段を備えた電子パスポート。」の発明である点で一致する。

一方、次の点で相違する。
本願補正発明は、「画像表示手段」が「柔軟性を有する」ものであって、「柔軟性のあるビザシート部に設け」られているのに対し、引用発明の「表示手段」がこのようなものであるか不明である点。

4.相違点についての検討
従来のパスポートは、本願明細書の段落【0002】に記載されているように、複数ページからなる紙の冊子体であり、個人データを記録するいわゆるデータシートとビザ(査証)や入出国確認印を押すビザシートで構成され、データシートには旅券番号、顔写真、国の証明スタンプ(外務大臣印)等が表示され、また、ビザシートはビザ(査証)が貼着あるいは印刷され、また入出国を行う際に入国審査官によって国名や入出国の日付等を表示した入出国スタンプが押印されるようになっているものであるところ、データシートに表示される旅券番号、顔写真、国の証明等の情報及びビザシートに表示されるビザ、入出国名、入出国の日付等の情報を電子データ化するとともに、これらを画像表示手段に表示するようにして電子パスポートとした場合においても、電子パスポートの態様の1つとして、従来の紙のパスポートと同様に扱うことができるようなものが当然に考えられるところである。
そして、例えば、国際公開第2001/011424号の第13頁第1?4行に「本発明の電気泳動表装置は、例えば、リライタブル(書き換え可能)カード、リライタブルシート、リライタブルペーパー等の公衆表示分野、デジタルペーパー、コンピュータ、携帯情報端末等の情報機器のディスプレー等の情報通信分野における表示装置として用いることができる。」とペーパー態様の表示装置が記載されているように、また、特開2001-209760号公報の【0007】、【0009】及び【0014】にそれぞれ「基板と、柔軟な表示メディアおよびこの基板に関連した制御部(コントロール論理)を備える」、「柔軟で、軽量な、消費電力が低いシート状の表示メディア10」及び「薄い、軽量で、消費電力が少ない、柔軟な表示メディアを用いる」と柔軟な表示メディアについて記載されているように、柔軟性を有する表示手段は本願出願前に周知である。
してみれば、電子パスポートについて、従来の紙のパスポートと同様に扱うことができるように「柔軟性を有する」ものとするとともに、その表示手段についても従来の紙に近い画像の表示ができるように「柔軟性を有する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得るところであり、その際、表示手段を設ける部位としてビザシート部を選定することは当業者が適宜決定できる設計的事項に過ぎない。
また、本願補正発明が奏する効果についても、当業者が予測可能なものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
よって、本件補正は、平成14年法律第24号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成19年6月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本願の願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「パスポート本体にデータ入力手段、前記データ入力手段から入力されたデータに基づいて画像を表示する柔軟性を有する画像表示手段を備えたことを特徴とする電子パスポート。」

2.判断
本願発明は、本願補正発明から、画像表示手段についての限定である「柔軟性のあるビザシート部に設けた」との事項を欠くものである。
してみれば、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものである本願補正発明が上記II.[II]2.?4.において検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるのだから、本願発明が同様の理由により、上記引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであることは明らかである。

3.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-07 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願2002-90775(P2002-90775)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 隆一  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 右田 昌士
田部 元史
発明の名称 電子パスポート  

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