• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1208618
審判番号 不服2007-14917  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-24 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 特願2003-377581「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-137605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年11月6日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成19年3月26日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年5月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月25日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
また、当審において、平成21年6月11日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行ったが、請求人からの回答はなかった。

第二.本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年6月25日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。
「複数種類の図柄が外周面に配された複数のリールと、
前記複数種類の図柄を表示する図柄表示部と、
前記複数のリールの回転を開始させるためのスタートレバーと、
前記複数のリールをそれぞれ停止させるための複数の停止ボタンと、
前記スタートレバーが操作されたことに基づいて複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
前記スタートレバーが操作されたことに基づいて前記複数のリールを回転させ、前記停止ボタンが操作されたことと前記内部当選役決定手段により決定された内部当選役とに基づいて、前記複数のリールの回転の停止を制御する制御手段と、
前記図柄表示部に表示された図柄の組合せに応じて、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記図柄表示部を透過して表示可能な図柄表示領域を含み、正面側から見て前記図柄表示部より手前側に設けられた表示手段と、
該表示手段を制御する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記図柄表示部の表示を透過して表示可能な特定の形状を有する光透過図柄を、前記図柄表示領域を含む前記表示手段に可変表示させ、
前記光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールの回転中、又は前記複数のリールの回転開始と略同時期に開始するが、前記図柄表示領域における光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールが回転状態の場合、及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合には行わないことを特徴とする遊技機。」
(下線部が補正箇所)

2.補正要件(目的)、特許請求の範囲(請求項1)の記載要件及び実施可能要件の検討
(1)補正要件(目的)
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「光透過図柄の可変表示」について、「前記光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールの回転中、又は前記複数のリールの回転開始と略同時期に開始するが」と、開始時期について具体化(下位概念化)している。
また、「前記図柄表示領域に可変表示させ」と「前記図柄表示領域を含む前記表示手段に可変表示させ」とで実質的な構成の相違はないので、本件補正は、請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当し、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)特許請求の範囲(請求項1)の記載要件
本件補正によって、「前記光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールの回転中、又は前記複数のリールの回転開始と略同時期に開始する」(以下「前者」という。)こととなったが、前者に後続して「前記図柄表示領域における光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールが回転状態の場合、及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合には行わない」(以下「後者」という。)と記載されており、前者と後者との記載は矛盾するものとなっている。
すなわち、後者には「及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合」との限定があるものの、「透過図柄の可変表示」を行わない時期は、「複数のリールが回転状態の場合」であり、他方、前者の選択的記載において、「前記複数のリールの回転開始と略同時期に開始する」を選択したとしても、「光透過図柄の可変表示」を、複数のリールの回転中に行うものであり、前者の選択的記載のどちらを選択しても、複数のリールの回転中に、「透過図柄の可変表示」を行うものであって、「透過図柄の可変表示」を行わないとする後者とは、矛盾している。
よって、本願補正発明においては、上記補正によって発明を特定することができず、発明が不明確である。
(3)実施可能要件
前者及び後者について、本願出願時の明細書、図面、及び、特許請求の範囲(以下「本願当初明細書等」という。)を参酌すると、後者に対応する記載として、段落【0020】には、
「ここで、各図柄表示領域21L,21C,21Rには、対応するリール3L,3C,3Rが回転状態の場合、又は対応する停止ボタン11L,11C,11Rが停止操作可能な状態の場合、リール3L,3C,3R上に配置された図柄を遊技者が視認し易いように透過表示され、静止画像又は動画像、例えば、図柄、文字、図形、記号、キャラクタ等による演出表示は行われない。」との記載があり、
前者に対応する記載として、段落【0073】には、
「また、視認可能な領域は、図柄表示手段(上述のリール)の可変表示中、可変表示開始と略同時期、停止表示中、停止表示と略同時期などに移動表示を開始するようにしてもよい。」との記載がある。
そして、段落【0020】は、リールが回転状態又は、停止ボタンが停止操作可能な場合に、画像の演出表示を行わないものであるのに対し、段落【0073】では、同様の時期に視認可能な領域の移動表示を行うものであり、段落【0073】の「視認可能な領域の移動表示」は段落【0020】における「画像の演出表示」に含まれるから、段落【0073】の記載が段落【0020】等に記載されている実施例を前提としたものでないことは明らかである。
よって、本願当初明細書等には、本願補正発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。

以上のことから、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項、第6項第2号に規定する要件を満たしているものとは認められない。
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同年3月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数種類の図柄が外周面に配された複数のリールと、
前記複数種類の図柄を表示する図柄表示部と、
前記複数のリールの回転を開始させるためのスタートレバーと、
前記複数のリールをそれぞれ停止させるための複数の停止ボタンと、
前記スタートレバーが操作されたことに基づいて複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
前記スタートレバーが操作されたことに基づいて前記複数のリールを回転させ、前記停止ボタンが操作されたことと前記内部当選役決定手段により決定された内部当選役とに基づいて、前記複数のリールの回転の停止を制御する制御手段と、
前記図柄表示部に表示された図柄の組合せに応じて、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記図柄表示部を透過して表示可能な図柄表示領域を含み、正面側から見て前記図柄表示部より手前側に設けられた表示手段と、
該表示手段を制御する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記図柄表示部の表示を透過して表示可能な特定の形状を有する光透過図柄を、前記図柄表示領域に可変表示させるが、
前記図柄表示領域における光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールが回転状態の場合、及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合には行わないことを特徴とする遊技機。」

なお、本願発明の「光透過図柄を・・・可変表示させる」、及び、「光透過図柄の可変表示は、・・・行わない」について
一般に「図柄」とは、「図案のがら。模様。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]であって、この一般的意味に従えば、本願当初明細書等の図10(2)、(3)のような「花火」を示す形状を図柄として指すことはあっても、当該図10(1)のように、液晶表示部2b全体に何も表示せず、若しくは、全体が同一色(透過も含む)で表示したものは、「がら」や「模様」とはいえない。さらに、本願当初明細書等には、「光透過図柄」について、「この視認可能な領域(光透過図柄)は、特定の形状(具体的には、「花火」を示す形状)を有する。」(段落【0062】)との記載があり、当該図10(1)のような液晶表示を本願明細書等で述べる「特定の形状」とはいえないから、当該図10(1)のような液晶表示を「光透過図柄」に含まれないものとして認定する。
また、「可変表示」については、本願当初明細書等には「可変表示」に対して「停止表示」という記載(段落【0031】等)があるので、「可変表示させる」とは、例えば、本願当初明細書等の図10(2)、(3)における「花火」が打ち上がったり、花開いたりするような、動作や変化を表示させるものとし、「可変表示を行わない」とは、例えば、図10(2)、(3)における「花火」が開いた状態の静止画像を表示させ、演出表示を行う場合も含むものとして、認定する。


2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000?350805号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面に基いて説明する。本実施形態は3リール式のスロットマシンに本発明を適用した場合の一例である。このスロットマシンは、メダルを投入してからスタートレバーを操作することで3つの回転リールを回転させ、ストップボタンを操作して回転リールを停止させたときの入賞ラインに対応する3つの図柄の組合せによる入賞に応じてメダルを払い出す構成のものである。
【0021】前記各回転リール5?7の外周面には、「7」、「BAR 」、「スイカ」、「プラム」、「ベル」・・・などの複数種類の21個の図柄が所定間隔おきに1列状に印刷されている。回転リール5?7及びその外周面の複数の図柄、リール駆動モータ51?53などが図柄表示手段に相当し、各回転リール5?7のうちの前端部分の3つの図柄(図柄表示窓3a?3cから見える3つの図柄)を表示する部分が各図柄表示部5a?7aである。ここで、入賞ラインは、後述の情報表示パネル4に表示される。・・・
【0027】・・・入力インターフェイス39には、メダル投入センサ50、ベットボタン11に連動して作動するベットスイッチ11a、スタートレバー13に連動されたスタートスイッチ13a、ストップボタン14?16に夫々連動されたストップスイッチ14a?16a、精算ボタン12に連動された精算スイッチ12aなど接続されている。
【0030】・・・乱数発生手段60は、スタートレバー13の操作により3個の回転リール5?7が回転を始めたときに抽選用の乱数を発生させる。
【0031】乱数抽選手段61は、スタートスイッチ13aからの信号と乱数発生手段60で発生させた乱数に基づいて抽選を行なう。抽選結果判定手段62は、乱数抽選手段61における抽選結果を判定し、入賞を示唆するか、ビッグボーナスへの移行を示唆するか、或いはハズレを示唆するか否かの判定を行なう。停止図柄選択手段63は、抽選結果判定手段62における判定結果に基づいて回転リール5?7の停止時に図柄表示窓3a?3cに停止表示する図柄の組合せを選択する。
【0032】例えば、「ダイヤ、ダイヤ、ダイヤ」、「スイカ、スイカ、スイカ」、「チェリー、─、─」(左端の回転リール5に「チェリー」の図柄を停止表示させ、他の回転リール6?7に任意の図柄を停止表示させる)等の図柄の組合わせを選択する。ビッグボーナスへの移行を示唆する場合は、例えば「7、7、7」の図柄の組合せを選択する。レギュラーボーナスへの移行を示唆する場合は、例えば「BAR 、BAR 、BAR 」の図柄の組合せを選択する。このレギュラーボーナスは、通常遊技と比較して遊技者がより多くのメダルを獲得できるようなゲームを、所定条件が達成されるまで行なうことが可能なゲーム態様である。
【0033】・・・図柄停止制御手段64は、停止図柄選択手段63で選択された図柄の組合せと、ストップスイッチ14a?16aからのストップ信号に基づいて、各リール駆動モータ51?53の制御を行なって、図柄表示窓3a?3c内に停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように、回転リール5?7を停止させるものである。
【0034】停止図柄判定手段65は、全ての回転リール5?7が停止して、有効な入賞ラインL1?L5上に停止表示される図柄の組合せが入賞態様を構成するか否かの判定を行ない、入賞のときにはその停止図柄の組合せに基づく払い出しメダルの枚数に応じて、クレジットメダルの貯留枚数を増加したり、払出しアクチュエータ54を駆動してメダルの払い出しを行なう。
【0038】更に、3枚目のメダルを投入したとき、図12に示すように3メダル用の入賞ラインL4,L5が追加して、例えば4ドットの線幅で強調して太く表示される。次に、スタートレバー13を操作すると、リール駆動モータ51?53が同時に駆動され、図13に示すように回転リール5?7が同時に所定回転方向に回転する。尚、図柄表示部5a?7aにおいて、下向きの長い矢印はリールの回転状態を示す。このとき、入賞ラインL1?L5の線幅が例えば2ドットに縮小すれば、入賞ラインL1?L5の表示コントラストが薄く(細い点線にて図示)なり、図柄表示部5a?7aを移動する図柄等の下地を見易くなる。
【0043】このように、前面パネル2の背面近傍に、3つの図柄表示部5a?7aよりも前方に、中パネル3の前面近傍に光透過性のある情報表示パネル4を設け、その情報表示パネル4に発光可能な多数行多数列のドットを介してドットパターンで表示可能なマトリクス表示部4aを設けたので、このマトリクス表示部4aに、メダル投入で有効化された入賞ラインL1?L5を表示させたり、種々のアニメーションA1,A2や説明情報やメッセージ、リーチマークM5や大当たりマークM7などを表示させることができ、ゲームを面白くし盛り上げることができ、スロットマシン1の性能を高めることができる。・・・
【0044】しかも、情報表示パネル4は光透過性を有するので、情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に印されたその他の絵や文字などの下地が見えなくなることもなく、情報表示パネル4による表示情報と下地の情報とを重ね合わせて見ることができる。・・・
【0053】ここで、情報表示パネルが、EL(エレクトロルミネッセンス)素子を透明なガラス基板に固定したパネルである場合(請求項2)には、EL素子に設けた蛍光体に電界を印加し励起発光により表示することができ、情報表示パネルを薄型にコンパクトに構成でき、情報表示パネルの駆動制御如何により情報表示パネルに動画を表示させることも可能になる。
と記載されており、
図10?図22には、入賞ラインL1?L5が、3つの回転リール5?7を透過する領域に表示されていることが図示されている。
よって、摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「複数種類の図柄が外周面に印刷された3つの回転リール5?7と、
前記3つの回転リール5?7のうち前端部分の3つの図柄を表示する3つの図柄表示部5a?7aと、
前記3つの回転リールを回転させるためのスタートレバー13と、
前記3つの回転リールを停止させるための複数のストップボタン14?16と、
前記スタートレバー13の操作により前記3つの回転リール5?7が回転を始めたときに抽選用の乱数を発生させる乱数発生手段60と、乱数に基づいて抽選を行う乱数抽選手段61と、前記乱数抽選手段61における抽選結果を判定し、入賞を示唆するか、ビッグボーナスへの移行を示唆するか、或いはハズレを示唆するか否かの判定を行なう抽選結果判定手段62と、
前記抽選結果判定手段62における判定結果に基づいて前記3つの回転リール5?7の停止時に3つの図柄表示窓3a?3cに停止表示する図柄の組合せを選択する停止図柄選択手段63と、
前記停止図柄選択手段63で選択された図柄の組合せと、3つのストップスイッチ14a?16aからのストップ信号に基づいて、前記3つの図柄表示窓3a?3c内に停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように、前記3つの回転リール5?7を停止させる図柄停止制御手段64と、
前記3つの回転リール5?7が透過する領域に表示された有効な入賞ラインL1?L5上に停止表示される図柄の組合せが入賞態様を構成するか否かの判定を行ない、入賞のときにはその停止図柄の組合せに基づく払い出しメダルの枚数に応じて、クレジットメダルの貯留枚数を増加したり、メダルの払い出しを行なう停止図柄判定手段65とを備えたスロットマシン1において、
前記3つの図柄表示部5a?7aよりも前方に設けられた光透過性のある情報表示パネル4を設け、
前記情報表示パネル4を通して、前記3つの図柄表示部5a?7aの図柄が見えなくなることもなく、
前記3つの回転リール5?7が回転状態のとき、前記入賞ラインL1?L5の線幅を2ドットに縮小して、前記図柄表示部5a?7aを移動する図柄を見易くなるようにしたスロットマシン1。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願発明との対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「印刷された」は、本願発明の「配された」に相当し、以下同様に、
「3つの回転リール5?7」は「複数のリール」に、
「3つの図柄表示部5a?7a」は「図柄表示部」に、
「スタートレバー13」は「スタートレバー」に
「有効な入賞ラインL1?L5上に停止表示される図柄の組合せが入賞態様を構成するか否かの判定を行ない」は「前記図柄表示部に表示された図柄の組合せに応じて」に、
「クレジットメダルの貯留枚数を増加したり、メダルの払い出しを行なう」は「遊技者に有利な利益状態を発生させる」に、
「停止図柄判定手段65」は「利益状態発生手段」に、
「スロットマシン1」は「遊技機」に、
「3つの図柄表示部5a?7aよりも前方に設けられた」は「正面側から見て前記図柄表示部より手前側に設けられた」に、各々相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「3つの回転リールを停止させるための3つのストップボタン14?16」について、引用文献1の「ストップボタン14?16に夫々連動されたストップスイッチ14a?16a」(段落【0027】)との記載、及び「ストップスイッチ14a?16aからのストップ信号に基づいて、・・・回転リール5?7を停止させるものである。」(段落【0033】)との記載から、引用発明の「3つのストップボタン14?16」は、「3つの回転リールをそれぞれ停止させるための」ものであると認められるので、引用発明の「3つのストップボタン14?16」は、本願発明の「複数の停止ボタン」に実質的に相当する。
b.引用文献1の段落【0031】の記載から、引用発明の「停止図柄選択手段63」は、「抽選結果判定手段62」による判定結果に基づいて回転リール5?7の停止時に図柄表示窓3a?3cに停止表示する図柄の組合せを選択するものであり、さらに、段落【0030】?【0031】の記載から、「停止図柄選択手段63」はスタートレバー13の操作により、3個の回転リール5?7が回転を始めたときに、選択を行うものであるから、「停止図柄選択手段63」は本願補正発明の「複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段」に相当し、引用発明と本願補正発明は、「前記スタートレバーが操作されたことに基づいて複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段」を備えた点で共通する。
c.引用発明の「図柄停止制御手段64」について、「停止図柄選択手段63」は上記b.で指摘したとおり、スタートレバー13の操作が行われ、3個の回転リール5?7が回転を始めたときに行われるものであり、さらに、「停止図柄選択手段63」は本願補正発明の「内部当選役決定手段63」に相当するものであって、「図柄停止制御手段64」は、「停止図柄選択手段63」で選択された図柄に基づき、「前記3つの図柄表示窓3a?3c内に停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように、前記3つの回転リール5?7を停止させる」ものであるから、「図柄停止制御手段64」は本願補正発明の「制御手段」に相当し、引用発明と本願補正発明は、「前記スタートレバーが操作されたことに基づいて前記複数のリールを回転させ、前記停止ボタンが操作されたことと前記内部当選役決定手段により決定された内部当選役とに基づいて、前記複数のリールの回転の停止を制御する制御手段」を備えた点で共通する。
d.引用発明における、「光透過性を有する情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄が見えなくなることもな」い点について、この記載及び図10?図22の図示から、情報表示パネル4には、図柄表示部5a?7aを透過する領域が存在し、さらに、情報表示パネル4が段落【0053】の記載のとおり、EL素子からなる場合には、コントラストを下げるなどすれば、図柄表示部5a?7aを透過して表示可能であるといえる。さらに、引用発明の情報表示パネル4は図柄表示部5a?7aより手前側に設けられているから、引用発明の「情報表示パネル4」は本願発明の「表示手段」に相当し、引用発明と本願発明は、「前記図柄表示部を透過して表示可能な図柄表示領域を含み、正面側から見て前記図柄表示部より手前側に設けられた表示手段」を備えた点で共通する。
e.情報表示パネル4の表示を行うためには、当然、情報表示パネル4の表示を制御するための手段を有することは、自明であるといえるので、引用発明と本願発明は、「該表示手段を制御する表示制御手段」を備えた点で共通する。
以上を総合すると、両者は、
「複数種類の図柄が外周面に配された複数のリールと、
前記複数種類の図柄を表示する図柄表示部と、
前記複数のリールの回転を開始させるためのスタートレバーと、
前記複数のリールをそれぞれ停止させるための複数の停止ボタンと、
前記スタートレバーが操作されたことに基づいて複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
前記スタートレバーが操作されたことに基づいて前記複数のリールを回転させ、前記停止ボタンが操作されたことと前記内部当選役決定手段により決定された内部当選役とに基づいて、前記複数のリールの回転の停止を制御する制御手段と、
前記図柄表示部に表示された図柄の組合せに応じて、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記図柄表示部を透過して表示可能な図柄表示領域を含み、正面側から見て前記図柄表示部より手前側に設けられた表示手段と、
該表示手段を制御する表示制御手段とを備えた遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「前記表示制御手段は、前記図柄表示部の表示を透過して表示可能な特定の形状を有する光透過図柄を、前記図柄表示領域に可変表示させる」のに対し、引用発明では、「情報表示パネル4」(本願発明の「表示手段」に相当)の3つの回転リール5?7の図柄を透過する領域に入賞ラインL1?L5を表示し、入賞ラインL1?L5の線幅を縮小して、可変表示させるが、入賞ラインL1?L5が光透過図柄であるか否かが不明である点。
[相違点2]
本願発明は、「前記図柄表示領域における光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールが回転状態の場合、及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合には行わない」のに対し、引用発明は、上記[相違点1]で指摘した点に加えて、「回転リール5?7が回転状態のとき、入賞ラインL1?L5の線幅を2ドットに縮小」するが、回転リール5?7が回転状態、及び、ストップボタン14?16が操作可能な状態のときに、入賞ラインL1?L5の線幅を2ドットの状態で可変表示を行わないことが明確に記載されていない点で相違する。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
引用発明における「情報表示パネル4」を引用文献1の段落【0053】に記載されているようにELパネルを用いて、コントラストを下げるなどにより、入賞ラインL1?L5を光透過させる図柄に改変することは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって、設計的変更にすぎない。
[相違点2について]
引用発明において、「回転リール5?7が回転状態のとき、入賞ラインL1?L5の線幅を2ドットに縮小」するのは、「図柄表示部5a?7aを移動する図柄を見易くなる」ために行うものであり、移動する図柄を見易くするために、回転リール5?7が回転状態となって入賞ラインL1?L5の線幅を縮小し、その後、遊技者がストップボタン14?16を押してゲームが終了するまでの間、入賞ラインL1?L5の線幅を2ドットの状態のまま停止表示を行うことは、当業者にとって容易に想到しうる事項である。

なお、本願発明の「前記図柄表示領域における光透過図柄の可変表示は、前記複数のリールが回転状態の場合、及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合には行わない」について、審判請求書の請求の理由を補正する、平成19年6月25日付の手続補正書には、「また、本願発明の構成(K)を有しないことから、リールの回転を(停止ボタンの操作により)停止させようとしているとき、及び停止させようとするときには、図柄表示領域での演出表示を行わないようにすることで、目押し時のリールの視認性を高めるという効果を奏する」と主張しているので、この主張に基づき、仮に、本願発明の当該記載を「前記複数のリールが回転状態の場合、及び前記停止ボタンが操作可能な状態の場合には、前記図柄表示部を表示するために前記図柄表示領域を光透過するように光透過制御を行う」と解釈しても、引用発明において、「3つの図柄表示部5a?7aを移動する図柄を見易く」するために、入賞ラインL1?L5の線幅を最小となる0ドット、すなわち、表示しないように改変することは、当業者にとって容易に想到しうるものと認められるので、本願発明の当該記載をこのように解釈しても、上記[相違点2]の判断は、変わらない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-09 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願2003-377581(P2003-377581)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ