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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1208620
審判番号 不服2007-16515  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-13 
確定日 2009-12-14 
事件の表示 特願2002-125886「照会処理システム、その方法及びそのプログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 7日出願公開、特開2003- 36272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成10年4月30日(パリ条約による優先権主張1997年5月9日、米国)に出願した特願平10-121038号の一部を平成14年4月26日に新たな特許出願としたものであって、平成19年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年6月13日付けで手続補正がなされたものである。




第2 特許法第36条第6項第2号違反について

1.原査定の理由

(1)平成17年10月4日付けの拒絶理由通知書

平成17年10月4日付けの拒絶理由通知書に記載された、特許法第36条第6項第2号違反に関する拒絶理由は以下のとおりのものである。

「A.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1-2号に規定する要件を満たしていない。


・・・(中略)・・・
[請求項6]
1.「ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトをメモリ内に生成するステップ」という記載では具体的にどのような処理をしているのか明確でない。
・・・(後略)・・・」


なお、平成17年10月4日付けの拒絶理由通知書を受けて、出願人(審判請求人)は、平成18年4月5日付けの意見書において、

「(2)補正前の請求項6(補正後の請求項1に対応)
1)補正前の「ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトをメモリ内に生成するステップと」を「ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトをメモリ内に生成するステップであって、前記アプリケーション・オブジェクトがデータベース内の行から導出される、前記生成するステップと」と補正しました。明細書第0042段落では、「例えば、"裕福な従業員"ビュー・タイプが"従業員"の点からメモリ内に定義されている場合、"裕福な従業員"のビュー・タイプ・オブジェクトは、そのデータ部分に"従業員"に対するハンドルを有する。そのビュー・タイプの全てのメンバは、"従業員"から導出される。メモリ内に生成されるものは、実オブジェクトであるが、オブジェクトはそのデータを他のもの、例えば行から導出する。例えば"従業員"オブジェクトは、データベース内の行から導出される。」と記載されています。従って、補正後の請求項の上記構成より、ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトをメモリ内に生成するとは具体的にどのようなことであるのか明確であると考えます。」

という主張等を行っている。


(2)平成19年3月13日付けの拒絶査定

平成19年3月13日付けの拒絶査定の備考の欄に記載された、特許法第36条第6項第2号違反の拒絶理由に関する指摘事項は以下のとおりのものである。

「[請求項1-9](補正前の請求項6-14)
『実行時に、前記ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトをメモリ内に生成するステップであって、”前記アプリケーション・オブジェクトがデータベース内の行から導出される”、前記生成するステップと、』という記載では、依然としてどのような処理をしているのか不明である。例えばデータベース内の行から導出するという記載ではどのような導出をしているのか不明である。また、現在の記載ではビュータイプとデータベース内の行からアプリケーションオブジェクトなるものが生成されると思われるが、前記ビュータイプとデータベース内の行からどのようにしてアプリケーションオブジェクトが生成されるのか不明である。なお、全ての請求項について「データベース内の行から生成される」という事項が追加されているが、請求項1-9と同様の理由で不備である。(以下説明は省略する。)」


なお、平成19年3月13日付けの拒絶査定を受けて、審判請求人は、審判請求書において、

「4)補正後の請求項について
補正後の請求項1、10及び15では、ビューはデータの仮想行及び仮想列を有する仮想テーブルであること、及びビュー・タイプを参照する照会を受信して、実行時に、前記ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトを実オブジェクトとしてメモリ内に生成することを特定しました。よって、ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトをどのように生成しているのかが特定されたと考えます。なお、明細書第0042段落に、実オブジェクトの生成について次のように記載されています;「"裕福な従業員"ビュー・タイプが"従業員"の点からメモリ内に定義されている場合、"裕福な従業員"のビュー・タイプ・オブジェクトは、そのデータ部分に"従業員"に対するハンドルを有する。そのビュー・タイプの全てのメンバは、"従業員"から導出される。メモリ内に生成されるものは、実オブジェクトであるが、オブジェクトはそのデータを他のもの、例えば行から導出する。例えば"従業員"オブジェクトは、データベース内の行から導出される。」。
また、補正後の請求項1、10及び15では、データベースはデータの行及び列を含むテーブルであることを特定しました。よって、データベース内の行から、どのようにしてアプリケーション・オブジェクトが生成されるのかが特定されたと考えます。」

という主張等を行っている。



2.判断

(1)特許請求の範囲の請求項1の記載

平成19年6月13日付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1ないし2は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
データ処理システム内の照会エンジンにより実行される方法において、
オブジェクト指向言語で記述されたアプリケーションから、ビュー・タイプを参照する照会を受信するステップであって、ビューはデータの仮想行及び仮想列を有する仮想テーブルである、前記受信するステップと、
実行時に、前記ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトを実オブジェクトとしてメモリ内に生成するステップであって、前記アプリケーション・オブジェクトがデータベース内の行から導出され、前記データベースはデータの行及び列を含むテーブルである、前記生成するステップと、
前記アプリケーション・オブジェクトに対するハンドルをアプリケーション・タイプとして前記アプリケーションに返却するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
各ビュー・タイプがオブジェクト指向言語クラス定義に対応し、及び前記アプリケーション・オブジェクトの各々が、オブジェクト指向言語クラス定義に一致する形式を有する、請求項1に記載の方法。」


当該特許請求の範囲の請求項1の記載には「ビュー・タイプ」の定義はないものの、
・特許請求の範囲の請求項1に記載された「ビュー」の定義(すなわち、「データの仮想行及び仮想列を有する仮想テーブル」)、
・「タイプ」の一般的定義(すなわち、「型。類型。典型。」。〔株式会社岩波書店 広辞苑第六版より引用〕)、
の2点を鑑みれば、特許請求の範囲の請求項1の「ビュー・タイプ」は「データの仮想行及び仮想列を有する仮想テーブルの型」と解釈するのが妥当である。

なお、このことは、
・特許請求の範囲の請求項2で規定された「ビュー・タイプがオブジェクト指向言語クラス定義に対応」するという記載、
・本願明細書段落【0039】にある
「ビュー・タイプ"はここでは、多くのOODBMS及びOOS内で見い出されるクラスと収集との区別を維持するために導入される。1つのビュー・タイプが、インスタンス・ビュー列の他に、複数のビュー及び多値ビュー列に対しても使用され得る。それ自体、ビュー・タイプはクラスまたはタイプに類似し、ビューは収集に類似する。」という記載、
(なお、当該段落中の「収集」という日本語が何を指しているのか不明であるが、「コレクション」(すなわち、関連するオブジェクトの集まりを格納するためのオブジェクト)を指しているものと推測される。)
と矛盾しない。


(2)特許請求の範囲の請求項1の記載に対する判断

特許請求の範囲の請求項1の
「実行時に、前記ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトを実オブジェクトとしてメモリ内に生成するステップであって、前記アプリケーション・オブジェクトがデータベース内の行から導出され、前記データベースはデータの行及び列を含むテーブルである、前記生成するステップ」
という記載によれば、
「ビュー・タイプ」(すなわち、「データの仮想行及び仮想列を有する仮想テーブルの型」)という実体を有しない型(又は型定義)から「アプリケーション・オブジェクト」という実体を有する「実オブジェクト」を生成することになる。

しかしながら、
・「前記アプリケーション・オブジェクトがデータベース内の行から導出」されることについて、如何なる技術的思想(例:コンピュータ・アルゴリズム)で「データベース内の行」から「アプリケーション・オブジェクト」を導出するのか不明であること
(そもそも、「行」から導出するとあるが、特定の「行」に格納された実体を元に導出するのか、「行」全体の実体を元に導出するのか、「行」に付与された属性を元に導出するのか、それ以外なのかすら、不明である。)、
・「アプリケーション・オブジェクト」を生成又は導出する情報という点で共通する、「データベース内の行」と「ビュー・タイプ」との関係も規定されていないこと、
の2点から、「前記ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトを実オブジェクトとしてメモリ内に生成する」という記載では具体的にどのような処理をしているのか、明確でない。


なお、審判請求人が審判請求書において指摘している本願明細書段落【0042】には、
特許請求の範囲の請求項1の「前記ビュー・タイプからアプリケーション・オブジェクトを実オブジェクトとしてメモリ内に生成する」ことを実現するための具体的処理方法は記載されていない。



3.まとめ

本出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-17 
結審通知日 2009-07-21 
審決日 2009-08-04 
出願番号 特願2002-125886(P2002-125886)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 小曳 満昭
和田 財太
発明の名称 照会処理システム、その方法及びそのプログラムを記録した記録媒体  
復代理人 松井 光夫  
代理人 太佐 種一  
代理人 市位 嘉宏  
復代理人 村上 博司  
代理人 坂口 博  
代理人 上野 剛史  

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