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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1208749
審判番号 不服2007-10577  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-12 
確定日 2009-12-14 
事件の表示 平成 8年特許願第310841号「外観検査装置の集中管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 9日出願公開、特開平10-153556〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成8年11月21日の出願であって,平成19年3月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月12日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに,同年5月1日付けで手続補正がされたものであるところ,この手続補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,補正前の請求項1を削除するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当すると認められる。

そして,本願の請求項1?3に係る発明は,平成19年5月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「部品を実装した基板の撮影画像を取り込んで該部品やはんだ付けの良否を判定する外観検査装置の集中管理システムであって、
各外観検査装置で取り込んだ画像を所定のネットワークを介してモニタに表示する管理装置を備え、
各外観検査装置で取り込んだ画像を画像ファイルとして所定のネットワークを介して前記管理装置に転送し、転送された前記画像ファイルを前記モニタに表示し、モニタに表示された前記画像ファイルの画像に基づいて不良と判定された箇所の検査を行うことを特徴とする外観検査装置の集中管理システム。」

第2 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-69700号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(記載事項1-1)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の部品を実装されたプリント板ユニットにおける外観検査を行なうプリント板ユニット外観検査システムに関する。」

(記載事項1-2)
「【0008】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理ブロック図で、この図1において、1は光学式外観検査装置であり、この光学式外観検査装置1は、複数の部品を実装されたプリント板ユニットにおける主として可視領域部分の外観検査を行なうものである。2はX線式外観検査装置であり、このX線式外観検査装置2は、プリント板ユニットにおける主として不可視領域部分の外観検査を行なうものである。
【0009】3は不良診断装置であり、この不良診断装置3は、光学式外観検査装置1,X線式外観検査装置2で不良判定とした部分を再確認するものである。4はサーバであり、このサーバ4は、光学式外観検査装置1,X線式外観検査装置2,不良診断装置3で得られた測定データを一括して管理するものである。更に詳細には、サーバ4に光学式外観検査装置1およびX線式外観検査装置2で不良判定とした部分を不良診断装置3で確認した結果で修正したデータが格納される。また、光学式外観検査装置1で不良判定とした部分については、X線式外観検査装置2で再検査するようになっている。
【0010】5-1,5-2,5-3はデータ処理装置であり、このデータ処理装置5-1,5-2,5-3は、それぞれ光学式外観検査装置1,X線式外観検査装置2,不良診断装置3に付設されるとともに、ローカルエリアネットワーク(LAN)6を介してサーバ4と接続されている。・・・・・
【0011】なお、光学式外観検査装置1およびX線式外観検査装置2がそれぞれ自動検査装置として構成されるとともに、不良診断装置3が手動検査装置として構成される。」

(記載事項1-3)
「【0020】ついで、ステップS2で、X線式検査装置12による自動検査が行なわれる。このX線式検査装置12は主として不可視領域部分の外観検査を行なう。詳細には、検査部品としてQFP,Jリード部品を対象とし、検査項目として半田量、半田ブリッジ、リード浮きがあり、微細リード部品下部の半田付け検査を特徴とする。
【0021】さらに、ステップS3で、光学式検査装置11による自動検査が行なわれる。光学式検査装置11は0.05Sec/部品の高速検査であり、主として可視領域部分の実装、半田付け検査を行なう。このときの検査部品としてはチップC,R(コンデンサ,抵抗部品),ミニトランジスタ,SOPを対象とし、検査項目としては部品の有無、位置ずれ、部品浮き、極性、半田量、半田ブリッジがある。
・・・・・
【0023】つぎに、ステップS4で、ステップS2およびステップS3での検査結果が良であるか不良であるかを判定する。ステップS4で不良の場合は、ステップS5で、不良診断装置(ステレオスコープ)13による目視検査を行なう。不良診断装置13は光学式検査装置11,X線式検査装置12で不良判定とした部分を再確認する。・・・
・・・・・
【0026】不良診断装置13は、X線式検査装置12の検査結果格納ファイル45-2および光学式検査装置11の結果ファイル45-1を読み出して、不良箇所の確認を行ない、真の不良のみをサーバ14の診断結果格納ファイル46に格納する。・・・」

(記載事項1-4)
「【0030】まず、従来技術〔1〕(当審注。原文は丸付き数字。以下同様に,丸付き数字は括弧〔〕で囲んで表記する。)(特開平2-31144号公報に記載されたもの)との差であるが、この従来技術〔1〕は、光学方式とX線方式の光源及びカメラを1台の検査装置に内蔵しているのに対し、本実施例は、各々個々の装置と不良診断装置とサーバから成る検査システムであり、前者には障害診断機能がない。また、前者の技術による判定方法は、光学式とX線式双方の画像と比較、照合し表面か裏面かを認識して最後に良否判定を行なうものであるが、本実施例では、検査対象備品を分担し各装置は別々の時間に検査をして各々良否判定を行ない、結果をサーバに送るものである。」

(記載事項1-5)
「【0032】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のプリント板ユニットによれば、光学式外観検査,X線式外観検査および不良診断について、それぞれの検査の特徴に応じ、役割を分担し、相互に補完させることによって、外観検査の効率化を実現しているため、検査工数を削減できる利点がある。」

上記記載事項1-1?1-5及び図1?5の内容を総合すると,引用文献4には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「複数の部品を実装されたプリント板ユニットにおける主として可視領域部分の外観検査を行ない該部品やはんだ付けの良否を判定する光学式外観検査装置と,該プリント板ユニットにおける主として不可視領域部分の外観検査を行ない該部品やはんだ付けの良否を判定するX線式外観検査装置と,該光学式外観検査装置,該X線式外観検査装置で不良判定とした部分を目視検査により再確認する不良診断装置とをそなえるとともに,該光学式外観検査装置,該X線式外観検査装置,該不良診断装置で得られた測定データを一括して管理するサーバをそなえ,該光学式外観検査装置,該X線式外観検査装置,該不良診断装置にそれぞれ付設されたデータ処理装置と該サーバとがローカルエリアネットワークを介して接続されているプリント板ユニット外観検査システム。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,光学式外観検査装置とX線式外観検査装置がプリント板ユニットの撮影画像を取り込んで判定を行うものであることは技術常識から明らかであるから,引用発明の「複数の部品を実装されたプリント板ユニットにおける主として可視領域部分の外観検査を行ない該部品やはんだ付けの良否を判定する光学式外観検査装置と,該プリント板ユニットにおける主として不可視領域部分の外観検査を行ない該部品やはんだ付けの良否を判定するX線式外観検査装置」は,本願発明の「部品を実装した基板の撮影画像を取り込んで該部品やはんだ付けの良否を判定する外観検査装置」に相当する。
また,引用発明の「プリント板ユニット外観検査システム」は,光学式外観検査装置及びX線式外観検査装置の両方を集中して管理するものであるから,本願発明の「集中管理システム」に相当するとともに,引用発明の「該光学式外観検査装置,該X線式外観検査装置,該不良診断装置で得られた測定データを一括して管理するサーバ」は,本願発明の「管理装置」に相当する。
さらに,引用発明の「該光学式外観検査装置,該X線式外観検査装置で不良判定とした部分を・・・再確認する」は,本願発明の「不良と判定された箇所の検査を行う」に相当するとともに,本願発明はモニタに表示して不良と判定された箇所の検査を行うものであるから,引用発明と同じく「目視検査」により検査を行うものと言うことができる。
そして,本願発明は,「各外観検査装置で取り込んだ画像を画像ファイルとして所定のネットワークを介して前記管理装置に転送」するものであり,引用発明は,「該光学式外観検査装置,該X線式外観検査装置,該不良診断装置にそれぞれ付設されたデータ処理装置と該サーバとがローカルエリアネットワークを介して接続されている」ものであるから,この点において,本願発明と引用発明とは,「各外観検査装置と管理装置とが所定のネットワークを介して接続され」ている点で共通していると言うことができる。

してみると,両発明は,

「部品を実装した基板の撮影画像を取り込んで該部品やはんだ付けの良否を判定する外観検査装置の集中管理システムであって,管理装置を備え,各外観検査装置と管理装置とが所定のネットワークを介して接続され,不良と判定された箇所の検査を目視検査により行う外観検査装置の集中管理システム。」

である点で一致し,以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明では,目視検査を管理装置にて行うのに対し,引用発明では,目視検査を管理装置とは別の不良診断装置にて行う点。

(相違点2)
本願発明では,目視検査を行うのに,各外観検査装置で取り込んだ画像を画像ファイルとして所定のネットワークを介して目視検査場所に転送し,転送された前記画像ファイルをモニタに表示し,モニタに表示された前記画像ファイルの画像に基づいて行うのに対し,引用発明では,そのような構成であるか否か明らかでない点。

第4 判断
まず相違点1について検討する。
ローカルエリアネットワーク(LAN)上で,どの機能とどの機能とを一体的に配置し,どの機能を別に配置するかは適宜選択し得る設計事項であるところ,引用発明において管理装置たるサーバはデータ管理を行うものであり,LAN上のどこに配置してもよいものであることは当業者にとって明らかであるから,これを不良診断装置と一体的に配置する,すなわち,不良と判定された箇所の検査を管理装置にて行うようにし,相違点1における本願発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことにすぎない。

次に相違点2について検討する。
外観検査の技術分野において,外観検査装置にて不良と判定された箇所の検査を目視検査により行う際に,外観検査装置で取り込んだ画像をモニタに表示し,モニタに表示された画像に基づいて行うことは周知の技術である。(必要であれば,特開平5-332948号公報(段落【0021】?【0023】)や原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-222012号公報(段落【0011】,【0034】)を参照。)
また,画像データをLANのような所定のネットワークを介して転送することは,例えば特開平6-266814号公報(段落【0015】等を参照。)等にも記載されているように本願出願前に周知の技術であったと言えるし,さらに,画像データを画像ファイルとして転送することは技術常識である。
してみると,引用発明に上記の各周知技術を適用して,光学式外観検査装置及びX線式外観検査装置,すなわち,各外観検査装置で取り込んだ画像を画像ファイルとして所定のネットワークを介して目視検査場所へ転送するとともに,当該画像ファイルをモニタに表示し,モニタに表示された画像に基づいて目視検査を行うこと,すなわち,相違点1における本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到できたことというべきである。

そして,本願発明の作用効果も,引用文献4に記載の技術事項及び各周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

なお,請求人は,請求の理由中で「意見書の主張は全て援用します。」としており,平成18年5月11日付けの意見書において,「すなわち、文献4発明においては、X線式外観検査装置と光学式外観検査装置とが二つで一つの検査装置を構成することとなり、X線式外観検査装置と光学式外観検査装置とから成る一つの検査装置が、一つの不良診断装置と対応する関係となっております。したがって、文献4発明は、本願発明の特徴とする処の、複数の外観検査装置のそれぞれが取り込んだ画像を画像ファイルとして一つの管理装置に転送し、複数の外観検査装置を一つの管理装置で集中管理する構成を有するものではありません。また引用文献4には、これについて何ら開示されておらず、またその示唆もありません。」と主張している。
しかし,引用文献4の段落【0020】?【0021】の記載から,X線式外観検査装置と光学式外観検査装置とがそれぞれ異なる箇所を検査するものであり,また,「不良診断装置13は、X線式検査装置12の検査結果格納ファイル45-2および光学式検査装置11の結果ファイル45-1を読み出して、不良箇所の確認を行ない」(段落【0026】),「本実施例では、検査対象備品を分担し各装置は別々の時間に検査をして各々良否判定を行ない、結果をサーバに送るものである。」(段落【0030】)等の記載からも,X線式外観検査装置と光学式外観検査装置とがそれぞれ独自に検査結果を出すものであることは明らかであるから,両者はそれぞれ別個の外観検査装置,すなわち,「各外観検査装置」というべきものである。
よって,請求人の上記主張は採用することができない。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献4に記載された発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,他の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-12 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-02 
出願番号 特願平8-310841
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田邉 英治  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 小島 寛史
後藤 時男
発明の名称 外観検査装置の集中管理システム  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  

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