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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1208760
審判番号 不服2008-3613  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2009-12-18 
事件の表示 平成10年特許願第4593号「ルート計算装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年7月30日出願公開,特開平11-201768〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成10年1月13日に特許出願されたものであって,平成20年1月8日付けで拒絶査定がなされ,同年2月14日付けで拒絶査定不服審判が請求された。これに対し,当審にて平成21年7月15日付けで拒絶理由通知を行い,これに応答して同年9月2日付けの手続補正書により明細書の補正がなされた。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年9月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「道路ネットワークを構成する各リンクにおけるリンクコスト,リンク属性及び1又は2以上の接続する先のリンクとの接続関係を記憶した道路ネットワークメモリを備え,
前記道路ネットワークに基づき,計算開始リンクから各リンクのリンクコストを順次加算したトータルリンクコストを計算することにより,計算終了リンクまでのルートを算出し,この算出されたルートをディスプレイに表示するルート計算装置において,
一のリンクのリンク属性と前記一のリンクと接続する先のリンクとのリンク属性の変化を検出するリンク属性検出手段と,
前記リンク属性検出手段により,一般道路と高速道路本線との間のランプウエー以外の道路から該ランプウエーへのリンク属性の変化を検出した場合,及び該ランプウエーから該ランプウエー以外の道路へのリンク属性の変化を検出した場合,計算開始リンクから前記一のリンクまでのトータルリンクコストと,前記一のリンクと接続する先のリンクのリンクコストに所定量のリンクコストを加えたリンクコストとを加算し,リンク属性の変化を検出しない場合,計算開始リンクから前記一のリンクまでのトータルリンクコストと前記一のリンクと接続する先のリンクのリンクコストとを加算するリンクコスト算出手段と,
計算終了リンクのリンクコストが前記リンクコスト加算手段により,加算の対象になった後,計算開始リンクと計算終了リンクとの間のルートのうちで,最小のトータルリンクコストであるルートを抽出するルート抽出手段とを有することを特徴とするルート計算装置。」

3.引用出願
当審における拒絶の理由に引用した本願の出願の日前の特許出願であって,その出願後に出願公開がされた特許出願である
特願平9-170644号(特開平11-14385号公報)(以下,
「引用出願」という。)
の願書に最初に添付された明細書には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ナビゲーション装置に好適に実施される経路探索装置に関する。」

・「【0002】
【従来の技術】ナビゲーション装置には,経路探索装置が備えられる。経路探索装置は,予め設定された出発点と目的点との間で車両が走行すべき推奨経路を,予め定める探索条件に基づいて探索する。この探索手法として,いわゆるダイクストラ法が挙げられる。予め経路探索のために,道路地図の道路は,複数の道路リンクをノードを介して連ねて近似して表され,各道路リンクに経路コストを予め付されている。ダイクストラ法では,出発位置から目的位置に向かって,またはその逆に向かって,道路地図上のノードから,そのノードに単一の道路リンクを介して接続されたノードを順次探索して,各ノード間に介在された道路リンクの経路コストを累積加算して,経路コストの和が最小の経路を推奨経路として確定する。
【0003】経路コストは,各道路リンクの選択の優先度を表す重みであり,値が大きいほど選択されにくくなる。経路コストは,たとえば各道路リンクを走行するのに必要な所要時間に比例して定められるので,所要時間が短いほど値が小さい。このため,道路リンクの経路長が等しい場合,高速道路であるような有料道路を構成する道路リンクの経路コストは,一般道路であるような無料道路を構成する道路リンクの経路コストよりも小さいことが多い。
【0004】このため,たとえば複数の道路リンクを接続して構成される一般道路に高速道路の同じ地点から分岐した入口線と出口線とが接続されている場合,一般道路から入口線と出口線とを通って再び一般道路に戻る経路の経路コストの和は,入口線と出口線とを通らずに一般道路だけを走行する経路の経路コストの和よりも小さくなることがある。このために,上述の構造の道路の推奨経路を確定するとき,実際に走行する経路としては後者の経路が好ましいのに拘わらず,前者の経路が推奨経路として探索されてしまうことがある。これによって,推奨経路が実際の走行に適合しない不適切な経路になることがある。」

・「【0052】
【発明の実施の形態】図1は,本発明の第1実施形態である経路探索装置9を含むナビゲーション装置1の概略的な電気的構成を表すブロック図である。ナビゲーション装置1は,たとえば車両に搭載され,車両が走行するべき経路の探索と案内とを行う。ナビゲーション装置1は,概略的には,地図データ記憶装置3,自車位置検索装置44,入力装置5,探索処理装置6,経路案内装置7,および出力装置8を含む。地図データ記憶装置3と探索処理装置6とから,経路探索装置9が構成される。
【0053】地図データ記憶装置3は,道路地図を表す地図データを記憶する。道路地図は,実際の道路地図の道路を,いわゆる折線近似によって,道路リンクを連ねて近似して表し,さらに道路地図上の地点をノードによって表す。この道路データには,各道路リンクの道路の属性と経路コストとが併せて記憶される。道路地図と地図データとの詳細は後述する。自車位置検索装置4は,車両の現在の自車位置を探索する。入力装置5は,車両の乗員によって操作される。乗員は入力装置5を操作して,探索処理装置6および経路案内装置7の動作の開始/終了の指示と,車両が走行を開始すべき出発地点の指定と,車両が到達すべき目的地点の指定とを行う。
【0054】探索処理装置6は,出発位置設定部11,目的位置設定部12,探索部13,演算部14,属性変化判定部15,調整部16,18,組合わせ判定部17,確定部19および探索結果記憶部20を含む。
【0055】出発位置設定部11は,地図データと,入力装置5から入力された出発地点に基づいて,道路地図上に車両が走行を開始すべき出発位置を設定する。出発地点は,自車位置検索装置4によって検索された自車位置であってもよい。目的位置設定部12は,地図データと,入力装置5から入力された目的地点とに基づいて,道路地図上に車両が到達すべき目的位置を設定する。
【0056】探索部13は,出発および目的位置設定部11,12と地図データ記憶装置3の出力に応答し,出発位置から目的位置に至る経路であって推奨経路となるべき経路を複数探索する。概略的には,探索の起点となる起点リンクを設定し,その起点リンクの端部の接続ノードに道路リンクを介して接続される接続ノードを全て探索して,この道路リンクを次の起点リンクとする。この一連の探索処理を,出発位置または目的位置を通る道路リンクを最初の起点リンクとし,次の起点リンクが目的位置または出発位置を通る道路リンクになるまで繰返す。演算部14は,探索部13が道路リンクを探索するたびに,最初の起点リンクとその道路リンクとを両端とする経路の累積コストを求める。経路の累積コストは,その経路を構成する全道路リンクの経路コストの和である。
【0057】属性変化判定部15は,探索部13が道路リンクを探索するたびに,その道路リンクと起点リンクとが接続された接続点で道路の属性が変化したか否かを判定しする(当審注:「判定する」と記載すべきところの誤記と認められる)。調整部16は,属性変化判定部15の判定結果に応答し,道路の属性が変化したときその接続点を経由する経路の前記累積コストを増加させ,変化しないとき前記経路の前記累積コストをそのまま保つように,累積コストを調整する。
【0058】さらに組合わせ判定部17は,探索部13が道路リンクを探索するたびに,その道路リンクと起点リンクとが接続された接続点に接続された全道路リンクの道路の属性の組合わせが,予め定める道路の属性の組合わせであるか否かを判定する。調整部18は,組合わせ判定部17の判定結果に応答し,道路の属性の組合わせが予め定める組合わせであるときその接続点を通る経路の前記累積コストを増加させ,そうでないとき前記経路の前記累積コストをそのまま保つように,累積コストを調整する。
【0059】確定部19は,調整部16,18によって調整された各経路の累積コストを比較して,探索部13によって探索された複数の経路のうちで,累積コストが最小の経路を選択する。この経路の両端のうちで最初の起点リンクと反対側の端の道路リンクが目的位置または出発位置を通る道路リンクでなければ,その道路リンクを次の道路リンクとして,探索部13から調整部18までの処理を繰返す。道路リンクが目的位置または出発位置を通る道路リンクであれば,その経路を推奨経路として確定する。探索部13と演算部14と確定部19との処理は,たとえば,いわゆるダイクストラ法によって実現することができる。
【0060】このような手順で確定された推奨経路は,累積コストが最小となる経路であり,このような経路は,出発位置から目的位置に至る複数の経路のうちで,たとえば車両が経路を走行して出発位置から目的位置に至るために要する時間が最短の経路,または経路の経路長が最短の経路である。確定部19によって確定された推奨経路は,探索結果記憶部17に記憶される。
【0061】経路案内装置7は,探索処理装置6の探索結果記憶部17の記憶内容と,地図データ記憶装置3から読出された地図データと,自車位置検索装置4によって検索された自車位置とに基づいて,案内情報を作成する。案内情報には,たとえば,車両の現在位置,車両の進行方向前方の交差点の有無,および車両が今後走行すべき方向を表すためのデータが含まれる。この案内情報は,出力装置8によって目視表示または音声表示されて,車両の乗員に提供される。また出力装置8には,自車位置検索装置4によって探索された自車位置と,探索処理装置6の探索結果記憶部17に記憶された推奨経路とが与えられ,自車位置と推奨経路とが道路地図に重ねられて表示される。」

・「【0069】出力装置8は,表示装置34と,グラフィックメモリ35と,グラフィックコントローラ36と,表示コントローラ37とを含む。表示装置34は,画像表示が可能な2次元の表示画面を備え,たとえば液晶表示装置および陰極線管で実現される。グラフィックメモリ35には,各種の画像を表す描画データが記憶される。グラフィックコントローラ36は,中央処理回路23によって制御され,グラフィックメモリ35から描画データを読出し,表示装置34の表示画面に描画すべき画像を表す画像データを作成する。この画像データもまた,グラフィックメモリ35に記憶される。表示コントローラ37は,中央処理回路23によって制御され,グラフィックコントローラ36によって作成された画像データを表示装置34に与えて,表示画面に画像を表示させる。また出力装置5には,音響表示のためのスピーカが含まれていても良い。」

・「【0070】図3は,地図データを説明するための道路地図の模式図である。道路地図は,実際の道路を複数の道路リンクの連なりによって折線近似して表し,さらに道路地図上の地点をノードによって表す。道路リンクとは,実際の道路を折線近似した折線を構成する線分であって,実際の道路の変曲点または交差点をその両端とする線分である。ノードとは,前記折線の変曲点および折線の交点に相当する点であり,道路地図上の地点を表す。ノードが表す地点には,道路の交差点および変曲点,すなわち道路リンクの両端となる地点が含まれる。このノードと道路リンクとが交互に順次接続されて,前記折線が形成される。
【0071】以後の説明では,リンクの両端に相当するノードを接続ノードと称し,リンク途中の点およびリンクから離れた点に相当するノードを補間ノードと称する。道路リンクと接続ノードとには,予め定める番号が付されている。以後,番号Nnの接続ノードにはその番号と同じ参照符を付し,接続ノードNa,Nbを両端とし接続ノードNaから接続ノードNbに車両が走行することができる道路リンクには,参照符Labを付す。n,a,bは,1以上N未満の自然数であり,Nは任意の自然数である。たとえば図3の道路地図は,5つの接続ノードN0?N4と8本のリンクL01?L04,L10?L40を含み,各リンクL01?L04,L10?L40を介して,接続ノードN0と接続ノードN1?N4とが個別に接続されている。
【0072】地図データを以下に説明する。地図データは,道路リンクデータと,ノードデータと,探索道路データとを含む。
【0073】道路リンクデータは,たとえば,リンク長さ,道路方位,道路の属性,経路コスト,および交通規制を含む。道路方位は,予め定める基準方位を基準にして道路リンクが伸びる向きを表す値であり,基準方位はたとえば北緯0度である。経路コストは,道路リンクLnaを経路として選択するときの選択され易さを表す重みである。経路コストの具体的な数値は,実際の道路を車両が走行するための所要時間に関連して決定される。たとえば所要時間に比例して数値が増加する。またこの経路コストの具体的な数値は,道路リンクが表す道路の長さ,その道路の幅員に関連して決定されてもよく,このとき数値は長さおよび幅に比例して増加する。ノードデータは,接続ノードおよび補間ノードを含み,各ノードの表す地点の緯度経度,地名,交差点等の属性,および建造物の有無を含む。探索用道路データは,具体的には,交差点等の道路の分岐点および道路の属性変化点の間をリンクによって接続して形成された地図を表し,経路探索に用いられる。」

・「【0075】図4は,探索道路データの具体的構成を表す模式図である。図4の探索道路データは,図3に表す道路地図を表すものと仮定する。探索道路データには,図4(1)に表すように,第0?第Mノード情報が含まれる。このノード情報は,道路地図に含まれる全接続ノードの数M+1と同数準備される。各ノード情報は,各接続ノードと個別に対応する。或る接続ノードNnの第nノード情報には,図4(2)に表すように,接続リンク数と,接続ノード情報と,接続リンク情報とが含まれる。」

・「【0080】経路探索装置9が実施する経路探索動作を,以下に説明する。
【0081】まず,図5に表すような構成の道路地図上の推奨経路を探索する場合の経路探索動作を概略的に説明する。図5の道路地図は,接続ノードN0?N7と道路リンクL01,L12,L13,L27,L23,L36とを含む。道路リンクL01,L13が接続ノードN1を介して接続され,道路リンクL13,L36が接続ノードN3を介して接続され,道路リンクL01,L13,L36が直線道路を構成する。この直線道路上の接続ノードN1に有料道路の入口線である道路リンクL12が接続され,直線道路上の接続ノードN3に有料道路の出口線である道路リンクL23が接続される。道路リンクL12,L13は,直線道路の一部分を迂回する迂回路を構成する。道路リンクL12,L23は,接続ノードN2を介して,有料道路の本線である道路リンクL27に接続される。図面では,無料道路を細実線,有料道路を太実線で表す。
【0082】道路リンクL12,L23の経路コストは1であり,道路リンクL13の経路コストは5であるとする。さらに,接続ノードN1,N3間の迂回路の経路長は,推奨経路全体の一般的な経路長よりも短く,たとえば1km程度であるとする。図5の例では,出発位置を道路リンクL01上の点Psとし,目的位置を道路リンクL36上の地点Pgとする。図5では,車両が実際に走行するのに適した適切経路を,網掛けを付して示す。図5の例では,有料道路を通ることなく無料道路を車両が直進することが好ましいので,適切経路は,道路リンクL101,L13,L36を順に通る直線状の経路になる。
【0083】経路探索動作では,まず探索部13は,経路探索の起点となる最初の起点リンクと,経路探索の終点となる終点リンクとを設定する。図5の例では,最初の起点リンクは道路リンクL01であり,終点リンクは道路リンクL36である。次いで探索部13は,この道路地図上で,最初の起点リンクと終点リンクとを両端とする経路を探索する。この経路は,道路リンクL12,L23を順に通る第1経路と,道路リンクL13を通る第2経路との2種類である。第1経路は,無料道路から該無料道路にほぼ平行して伸びる迂回路を経由して再び無料道路に戻る経路である。第2経路は,無料道路だけを通る経路である。
【0084】演算部14は,これら2つの経路の累積コストを求める。第1経路の累積コストは,道路リンクL12,L23の経路コストの和なので,式(1)から2であることが分かる。第2経路は道路リンクL13だけで構成されるのでその累積コストは道路リンクL13の経路コストと等しく,式(2)から5であることが分かる。
第1経路の累積コスト=1+1=2 …(1)
第2経路の累積コスト=5 …(2)
【0085】従来技術の経路探索装置では,この時点で第1経路の累積コストと第2経路の累積コストとを比較して,累積コストが最小の経路を推奨経路として確定する。ゆえに,推奨経路として,第1経路が確定される。これによって,車両が実際に走行する場合には,1km程度の短い経路長の迂回路を経由するような経路を通らないことが好ましいにも拘わらず,第1経路が推奨経路として確定されてしまう。第1経路は,適切経路にも一致しない。
【0086】本実施形態の経路探索装置9は,上述の累積コストに,道路の属性の変化の有無に応答した調整コストをさらに付加して,経路中で道路の属性が変化する経路ほど,累積コストを増大させる。調整用コストは,或る道路の属性の道路リンクからなる経路の累積コストと,その経路の途中で或る道路の属性とは異なる予め定める長さの道路の属性の経路を経由して再び元の経路に戻る経路の累積コストとの差分よりも大きな値に設定されることが好ましい。たとえば,前記道路リンクの経路コストが1?5であれば,調整用コストは10?20に設定する。図5の例では,調整用コストを10とする。
【0087】具体的には,まず,属性変化判定部15が,第1および第2経路それぞれに,各経路上の接続ノードを境にして,経路を構成する道路リンクの道路の属性が変化するか否かを判定する。図5の例では,第1経路では,接続ノードN1で,道路の属性が無料道路から有料道路に変化する。接続ノードN2では,道路の属性は有料道路のまま変化しない。接続ノードN3では,道路の属性が有料道路から無料道路に変化する。第2経路では,接続ノードN1,N3で,道路の属性は無料道路のまま変化しない。
【0088】次いで,調整部16は,各接続ノード毎に,属性変化判定部15が道路の属性が変化したと判定した場合には,予め定める調整用コストを,その接続ノードを通る経路の累積コストに加算する。図5の例では,第1経路は接続ノードN1,N3で道路の属性が変化するので,調整用コストを2回加算する。ゆえに,第1経路の累積コストは22になる。第2経路は,どの接続ノードでも道路の属性が変化しないので調整用コストは加算されず,第2経路の累積コストは5のままである。したがって,この時点で第1経路の累積コストと第2経路の累積コストとを比較すると,第2経路の累積コストが第1経路の累積コストよりも大きくなるので,確定部19は,適切経路と一致する第2経路を推奨経路として確定することができる。」

・「【0104】次いでステップa5では,探索部13は,最初の起点リンクの両端の接続ノードに単一本の道路リンクを介して接続される全接続ノードを,メモリ25に記憶された地図データのうちから全て探索する。これら接続ノードと最初の起点リンクの両端のうちのいずれか一方の接続ノードとの間に個別に介在される全道路リンクが,探索部13の探索処理の次の起点リンクとなる。
【0105】続いてステップa6で,探索部13は,まず,ステップa5で求められた次の起点リンク毎に,その次の起点リンクの両端の接続ノードのうちで最初の起点リンクが接続された接続ノードとは逆側の接続ノードを求める。続いて,求められた接続ノードを基準の接続ノードとして,基準の接続ノードに単一本の道路リンクを介して接続された接続ノードを,メモリ25に記憶された地図データのうちから全て探索する。基準の接続ノードに接続された接続ノードが複数あるとき,その全ての接続ノードを探索する。
【0106】また,この基準の接続ノードが現在メモリ25に記憶された地図データが表す道路地図の端部近傍に位置する場合,その端部に続く別の地域の道路地図を表す地図データを,再度地図データ記憶装置3から読出し,メモリ25に記憶させる。地図記憶後,上述の接続ノードの探索を行う。
【0107】続いて,ステップa7では,演算部14は,ステップa6で探索された接続ノードのうちのいずれか1つを選択し,その接続ノードと前記基準の接続ノードとの間の道路リンクを,以後の処理対象とする処理リンクとする。このとき,基準の接続ノードは,起点リンクと処理リンクとの間で両リンクを接続する。次いで,ステップa8では,演算部14は,最初の起点リンクのいずれか一方の接続ノードとステップa7で選択された接続ノードとを両端とし,処理リンクを経由する経路の累積コストを求める。この累積コストは,前記経路を構成する全ての道路リンクの経路コストの和である。この累積コストは,ステップa8で算出されるたびに,各経路毎に,ステップa7で選択された接続ノードに対応付けて,メモリ25に順次記憶される。
【0108】具体的には,累積コスト演算の1回目の処理では,演算部14は,処理リンクとステップa6の処理リンクの探索時の起点リンクとからなる経路の累積コストを求める。この起点リンクは,ステップa6の探索のうちで最新の探索時の起点リンクを指す。この累積コストは,処理リンクの経路コストと,起点リンクの経路コストと,ステップa4で設定された2つの初期値のうちでこの道路リンクが接続された接続ノードに設定された初期値とを加算した値である。累積コスト演算の2回目以後の処理では,演算部14は,まず,最初の起点リンクのいずれか一方の接続ノードと前記基準の接続ノードとを両端とする経路の累積コストと,処理リンクの経路コストとを,メモリ25から読出す。前記経路の累積コストとは,前記逆側の接続ノードに対応づけられた累積コストである。さらに探索部13は,その累積コストに処理リンクの経路コストを加算する。この和が,最初の起点リンクの両端のいずれか一方の接続ノードとステップa7で選択された接続ノードとを両端とする経路の累積コストとなる。
【0109】ステップa9,a10では,属性変化判定部15が,基準の接続ノードで道路の属性が変化したか否かを判定する。たとえば道路の属性を有料道路と無料道路とに限って判定する場合,具体的には,ステップa9では,起点リンクの道路の属性が有料道路ではなくかつ処理リンクが有料道路であるか否かが判定される。またステップa10では,処理リンクの道路の属性が有料道路ではなく,かつ起点リンクの道路の属性が有料道路であるか否かが判定される。ステップa9で判定が肯定されたときステップa9からステップa11に進み,判定が否定されたときステップa9からステップa10に進む。ステップa10で判定が肯定されたときステップa11に進み,判定が否定されたときステップa12に進む。
【0110】ステップa11では,調整部16が,ステップa8で計算された累積コスト,すなわち最初の起点リンクのいずれか一方の接続ノードとステップa7で選択された接続ノードとを両端とする経路の累積コストを増加させる。具体的には,図5,6で説明したように,前記経路の累積コストに予め定める調整用コストを加算する。またこの増加の手法は,予め定める調整用コストの加算に限らず他の手法であってよい。たとえば,経路の累積コストと予め定める値とを乗算してもよい。調整用コスト加算後,ステップa11からステップa12に進む。」

・「【0125】以下に,本発明の第2実施形態である経路探索装置について説明する。この経路探索装置は,第1実施形態の経路探索装置9と比較して,属性変化判定部15の詳細な動作だけが異なり,経路探索装置9の概略的な電気的構造のうちで各構成部品の接続関係,経路探索装置9の詳細な電気的構造,および属性変化判定部15以外の構成部品の動作は等しい。経路探索装置9と同一の構成部品には同一の符号を付し,説明は省略する。
【0126】図9は,前記経路探索装置で実施される経路探索動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは,図8のフローチャートと同一の動作を行うステップを含み,同一の動作を行うステップの説明は省略する。経路探索動作が開始されると,ステップb1からステップb2に進む。ステップb2?b8の動作は,図8のフローチャートのステップa2?a8の動作と等しい。
【0127】属性変化判定部15は,ステップb9で,処理リンクが有料道路の入口線であるか否かを判定する。入口線であればステップb9からステップb11に進み,入口線でなければステップb9からステップb10に進む。ステップb10では,属性変化判定部15は,処理リンクが有料道路の出口線であるか否かを判定する。入口線であればステップb10からステップb11に進み,入口線でなければステップb10からステップb12に進む。ステップb11では,調整部16が,最初の起点リンクと処理リンクとを両端とする経路の累積コストに,予め定める調整用コストを加算する。ステップb11?b18の処理動作は,図8のフローチャートのステップa11?a18と等しい。ステップb18で,終点リンクの両端のうちのいずれか一方の接続ノードに到達したと判定されたとき,ステップb18で当該フローチャートの処理動作を終了する。
【0128】処理リンクが有料道路の入口線および出口線であるとき,その処理リンクの両端のうちのいずれか一方の接続ノードに接続される道路リンクは無料道路であり,いずれか他方の接続ノードに接続される道路リンクは有料道路である。したがって,この処理リンクの両端の接続ノードのうちのいずれか一方で,道路の属性が変化する。したがって,処理リンクが有料道路の入口線および出口線であれば,その処理リンクを経由する経路のうちで,道路の属性が変化する。したがって,上述のように,処理リンクの道路の属性が予め定める属性であるか否かを判定することによって,経路内の接続リンクで道路の属性が変化したか否かを判定することができる。したがって,第1実施形態と同じ理由から,車両が実際に走行するのに適した適切経路を推奨経路として確定することができる。
【0129】また,上述の説明では,道路の属性を有料道路と無料道路とに限定したので,予め定める属性を有料道路の入口線および出口線とした。予め定める属性は,その属性の道路リンクのいずれか一方で道路の属性が変化しうる道路の属性であれば,上述の属性には限らない。たとえば,予め定める属性を高速道路に付随する駐車場への入口線および出口線としてもよい。予め定める属性をこのような属性とすることによって,高速道路を通過するときに駐車場を経由する経路を推奨経路として確定することを未然に防止することができる。
【0130】また,この判定方法では,処理リンクだけの道路の属性を基準に判定を行う。道路リンクが有料道路の入口線および出口線であるか否かは,その道路リンクの道路の属性として,予め地図データに記憶されている。したがって,処理リンクの道路の属性だけを地図データ記憶装置3から取得するだけで,属性変化の有無を判定することができる。したがって,属性変化の有無を判定するときに,起点リンクの道路の属性を取得する必要がなくなる。したがって,判定手法が容易になる。
【0131】またこの判定手法では,経路途中で有料道路から無料道路に道路の属性が変化すること,および無料道路から有料道路に道路の属性が変化することがなくとも,入口線および出口線を通過するだけで経路の累積コストに調整用コストが加算される。これによって,前述の図6の例でも,ステップb9?b11の処理を行うだけで,第1経路の累積コストが第2経路の累積コストよりも大きくなる。したがって,第2実施形態の経路探索装置では,ステップb12,b13の処理動作を省略することができる。したがって,経路探索動作をさらに簡略化することができる。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用出願の願書に最初に添付された明細書又は図面には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「地図データを構成する各道路リンクにおける経路コスト,道路の属性及び接続リンク数と接続ノード情報が含まれる探索道路データを記憶した地図データ記憶装置3を備え,
前記地図データに基づき,最初の起点リンクから各道路リンクの経路コストを加算した累積コストを計算することにより,終点リンクまでの経路を探索し,この探索された経路を表示装置34に表示する探索処理装置6及び経路案内装置7において,
道路リンクを探索するたびに,起点リンクと処理リンクとが接続された接続ノードで道路の属性が変化したか否かを判定する属性変化判定部15と,
前記属性変化判定部15により,処理リンクが無料道路から有料道路への入口線であると判定した場合,及び有料道路から無料道路への出口線であると判定した場合,最初の起点リンクと処理リンクとを両端とする経路の累積コストに,予め定める調整用コストを加算し,道路の属性が変化しないとき,経路の累積コストをそのまま保つ調整部16と,
調整部16によって調整された累積コストを比較して,最初の起点リンクから終点リンクまでの複数の経路のうちで,累積コストが最小の経路を選択する確定部19とを有する探索処理装置6及び経路案内装置7。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,
・後者の「地図データ」は前者の「道路ネットワーク」に相当し,
・後者の「各道路リンク」は前者の「各リンク」に相当し,
・後者の「経路コスト」は前者の「リンクコスト」に相当し,
・後者の「道路の属性」は前者の「リンク属性」に相当し,
・後者の「接続リンク数と接続ノード情報が含まれる探索道路データ」は前者の「1又は2以上の接続する先のリンクとの接続関係」に相当し,
・後者の「地図データ記憶装置3」は前者の「道路ネットワークメモリ」に相当し,
・後者の「最初の起点リンク」は前者の「計算開始リンク」に相当し,
・後者の「加算した累積コスト」は前者の「順次加算したトータルリンクコスト」に相当し,
・後者の「終点リンク」は前者の「計算終了リンク」に相当し,
・後者の「経路」は前者の「ルート」に相当し,
・後者の「探索」する態様は前者の「算出」する態様に相当し,
・後者の「表示装置34」は前者の「ディスプレイ」に相当し,
・後者の「探索処理装置6及び経路案内装置7」は前者の「ルート計算装置」に相当し,
・後者の「起点リンク」は前者の「一のリンク」に相当し,後者の「処理リンク」は前者の「一のリンクと接続する先のリンク」に相当するから,後者の「道路リンクを探索するたびに,起点リンクと処理リンクとが接続された接続ノードで道路の属性が変化したか否かを判定する」態様は前者の「一のリンクのリンク属性と前記一のリンクと接続する先のリンクとのリンク属性の変化を検出する」態様に相当し,
・後者の「属性変化判定部15」は前者の「リンク属性検出手段」に相当する。

また,「ランプウェイ」又は「ランプ(ramp)」とは,「立体交差道路などで高さの違う道路を連絡するための傾斜路」(出典:株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であるから,
・後者の「無料道路から有料道路への入口線」又は「有料道路から無料道路への出口線」と前者の「一般道路と高速道路本線との間のランプウエー」とは,「属性の異なる道路間の連絡路」との概念において共通する。

さらに,前者の「一般道路と高速道路本線との間のランプウエー以外の道路から該ランプウエーへのリンク属性の変化を検出した場合(以下,「前者の場合」という。),及び該ランプウエーから該ランプウエー以外の道路へのリンク属性の変化を検出した場合(以下,「後者の場合」という。)」との記載における「及び」との用語の解釈については,当該記載が,平成21年9月2日付けの意見書にも記載されるように,願書に最初に添付した明細書の
・段落【0026】の「リンクの種別がランプウエーの種別以外の種別か
らランプウエーを示す種別に変化した場合,又は,ランプウエーを示す
種別からランプウエーの種別以外の種別に変化した場合」との記載
・段落【0038】の「ランプウエーから他の道路に若しくは他の道路か
らランプウエーに道路種別が変化すれば」との記載
を根拠とするものと解されることからして,前者の場合と後者の場合との両方の場合を意味するのではなく,前者の場合と後者の場合とのいずれかの場合を意味するものと解釈すべきであるので,
・後者の「処理リンクが…入口線であると判定した場合,及び…出口線であると判定した場合」と前者の「ランプウエー以外の道路から該ランプウエーへのリンク属性の変化を検出した場合,及び該ランプウエーから該ランプウエー以外の道路へのリンク属性の変化を検出した場合」とは,「連絡路以外の道路から該連絡路へのリンク属性の変化を検出した場合」との概念において共通する。

加えて,
・後者の「最初の起点リンクと処理リンクとを両端とする経路の累積コストに,予め定める調整用コストを加算」する態様は前者の「計算開始リンクから一のリンクまでのトータルリンクコストと,前記一のリンクと接続する先のリンクのリンクコストに所定量のリンクコストを加えたリンクコストとを加算」する態様に相当し,
・後者の「道路の属性が変化しないとき」は前者の「リンク属性の変化を検出しない場合」に相当し,
・後者の「経路の累積コストをそのまま保つ」態様は前者の「計算開始リンクから一のリンクまでのトータルリンクコストと前記一のリンクと接続する先のリンクのリンクコストとを加算する」態様に相当し,
・後者の「調整部16」は前者の「リンクコスト算出手段」に相当し,
・後者の「調整部16によって調整された累積コストを比較して」は前者の「計算終了リンクのリンクコストがリンクコスト加算手段により,加算の対象になった後」に相当し,
・後者の「最初の起点リンクから終点リンクまでの複数の経路のうちで,累積コストが最小の経路を選択する」態様は前者の「計算開始リンクと計算終了リンクとの間のルートのうちで,最小のトータルリンクコストであるルートを抽出する」態様に相当し,
・後者の「確定部19」は前者の「ルート抽出手段」に相当する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「道路ネットワークを構成する各リンクにおけるリンクコスト,リンク属性及び1又は2以上の接続する先のリンクとの接続関係を記憶した道路ネットワークメモリを備え,
前記道路ネットワークに基づき,計算開始リンクから各リンクのリンクコストを順次加算したトータルリンクコストを計算することにより,計算終了リンクまでのルートを算出し,この算出されたルートをディスプレイに表示するルート計算装置において,
一のリンクのリンク属性と前記一のリンクと接続する先のリンクとのリンク属性の変化を検出するリンク属性検出手段と,
前記リンク属性検出手段により,属性の異なる道路間の連絡路以外の道路から該連絡路へのリンク属性の変化を検出した場合,計算開始リンクから前記一のリンクまでのトータルリンクコストと,前記一のリンクと接続する先のリンクのリンクコストに所定量のリンクコストを加えたリンクコストとを加算し,リンク属性の変化を検出しない場合,計算開始リンクから前記一のリンクまでのトータルリンクコストと前記一のリンクと接続する先のリンクのリンクコストとを加算するリンクコスト算出手段と,
計算終了リンクのリンクコストが前記リンクコスト加算手段により,加算の対象になった後,計算開始リンクと計算終了リンクとの間のルートのうちで,最小のトータルリンクコストであるルートを抽出するルート抽出手段とを有することを特徴とするルート計算装置。」

[相違点]
「属性の異なる道路間の連絡路」に関して,本願発明では「一般道路と高速道路本線との間のランプウエー」と特定されているのに対して,引用発明では「無料道路から有料道路への入口線」又は「有料道路から無料道路への出口線」と特定されている点。

5.判断
上記相違点について以下に検討する。

引用出願の願書に最初に添付された明細書の段落【0003】には,「高速道路であるような有料道路」及び「一般道路であるような無料道路」と記載され,また,引用発明が解決しようとする従来技術における課題について説明する同書の段落【0004】には,「たとえば複数の道路リンクを接続して構成される一般道路に高速道路の同じ地点から分岐した入口線と出口線とが接続されている場合,一般道路から入口線と出口線とを通って再び一般道路に戻る経路の経路コストの和は,入口線と出口線とを通らずに一般道路だけを走行する経路の経路コストの和よりも小さくなることがある。このために,上述の構造の道路の推奨経路を確定するとき,実際に走行する経路としては後者の経路が好ましいのに拘わらず,前者の経路が推奨経路として探索されてしまうことがある。これによって,推奨経路が実際の走行に適合しない不適切な経路になることがある。」と記載されるように,本願発明同様,有料道路として高速道路を,無料道路として一般道路を想定した場合における課題が記載されている。
してみると,引用発明においては,「有料道路」として「高速道路」が,「無料道路」として「一般道路」が想定され,包含されていると解すべきである。

また,「高速道路」と「一般道路」との「連絡路」(引用発明の「入口線」及び「出口線」が相当)として,「ランプウエー」は特に例示するまでもなく周知である。

よって,上記相違点は,表現上の相違又は周知な事項についての相違にすぎず,本願発明と引用発明とは実質同一である。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,その出願の日前の特許出願であって,その出願後に出願公開がされた引用出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された引用発明と同一であり,しかも,本願の発明者が引用発明を発明した者と同一ではなく,また本願の出願の時において,その出願人が引用出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-16 
結審通知日 2009-09-30 
審決日 2009-11-04 
出願番号 特願平10-4593
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 仁木 浩
大河原 裕
発明の名称 ルート計算装置  
代理人 山崎 隆  
代理人 山崎 隆  

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