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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1208777
審判番号 不服2007-5129  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-16 
確定日 2009-12-16 
事件の表示 特願2004-136139「ブレ補正装置を備えたカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月16日出願公開、特開2004-258679〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年4月8日に出願した特願平6-95605号の一部を平成16年4月30日に新たな特許出願としたものであって、平成18年12月20日付けで拒絶査定がなされ、平成19年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるともに、同年3月15日付けで手続補正がなされ、平成20年2月13日付けで、同補正に対する補正の却下の決定とともになされた拒絶理由通知に対し、同年4月21日付けで手続補正がなされ、さらに、平成20年9月29日付けの拒絶理由に対し、同年12月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成20年12月8日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「特許請求の範囲
【請求項1】
振れを検出する振れ検出手段と、
被写体輝度の測光を行う測光手段と、
前記振れ検出手段により検出された振れ量に基づいて像振れ補正を行う振れ補正手段と、
撮影補助光を発光させる発光モードと、前記撮影補助光の発光を行わない非発光モードと、前記撮影補助光を発光させ、前記振れ補正手段を駆動させながら撮影するときの最大露出時間が、前記振れ補正手段を駆動させながら前記非発光モードで撮影を行うときの最大露出時間と等しく設定されたスローシンクロモードとを切換える制御部と、
前記振れ補正手段を駆動させながら前記スローシンクロモードで撮影するときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定し、かつ、前記振れ補正手段を駆動させながら前記発光モードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定し、かつ、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記非発光モードで撮影を行うときの最大露出時間よりも短く設定するとともに、前記測光手段での測光結果に応じて適正露出値を算出し、前記適正露出値による露出時間あるいは設定された最大露出時間に達するまで露出を行う露出制御手段と
を備えたことを特徴とする振れ補正手段を備えたカメラ。」

3.引用例
先の拒絶理由通知で引用した、本願の原出願の出願日(平成6年4月8日)前に頒布された刊行物である特開平3-24529号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項ア
「2.特許請求の範囲
(1)被写体の輝度を測定する測光手段と、フラッシュ撮影か否かを判定するフラッシュ撮影判定手段と、フラッシュ撮影のときのシャッター速度を測光手段の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段と、演算されたシャッター速度がフラッシュ同調最高速よりも小さい所定のシャッター速度以下のときに、制御用のシャッター速度を前記所定のシャッター速度に設定するシャッター速度制限手段とを備える露出制御装置。」

記載事項イ(第1頁右下欄第5行目乃至第2頁右下欄第14行目)
「3.発明の詳細な説明
[産業上の利用分野]
本発明は、露出制御装置に関するものであり、シャッター1幕走行完了に同期するフラッシュ撮影機能を有するカメラに特に適するものである。
[従来の技術]
従来、例えば夜景を背景として人物を撮影する場合に、人物を写すためのフラッシュ撮影と、背景を写すためのスローシャッターとを組み合わせたスローシンクロ撮影を行うことが提案されている。
一方、特開昭63-53529号公報には、スローシャッターを用いる場合に、被写体の像振れ量を検出し、その量が所定値以上であるときに、警告することが提案されている。
[発明が解決しようとする課題]
スローシンクロ撮影において、シャッター速度を長くし過ぎると、被撮影者が動いてしまい、二重写しになることがある。特に、シャッターの1幕走行完了に同期してフラッシュ発光する場合には、フラッシュが発光されたことを確認した被撮影者は、フラッシュの発光直後に動いてしまい、その後に露光された部分が二重写しになるという問題がある。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スローシンクロ撮影時のシャッター速度を適正に制御できる露出制御装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
本発明に係る露出制御装置にあっては、上記の課題を解決するために、第1図に示すように、被写体の輝度BVを測定する測光手段1と、フラッシュ撮影か否かを判定するフラッシュ撮影判定手段2と、フラッシュ撮影のときのシャッター速度TVを測光手段1の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段3と、演算されたシャッター速度TVがフラッシュ同調最高速TVxよりも小さい所定のシャッター速度TVf2以下のときに、制御用のシャッター速度TVeを前記所定のシャッター速度TVf2に設定するシャッター速度制限手段4とを備えることを特徴とするものである。
なお、手振れ量を検出する手振れ検出手段5と、手振れ検出手段5の検出出力に基づいて撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正手段6と、手振れ補正が有効か否かを判定する判定手段7とを更に備え、前記判定手段7により補正が有効でないと判定されたときには、前記シャッター速度演算手段3では、シャッター速度TVをフラッシュ同調最高速TVxとし、補正が有効であると判定されたときには、測光手段1の出力に基づいてシャッター速度TVを演算するように構成することが好ましい。
ただし、第1図は本発明の構成を機能的にブロック化して示した説明図であり、後述の実施例では、手段1?7の全部又は一部をマイクロコンピュータのソフトウェアにより実現している。
[作用]
以下、本発明の作用を第1図により説明する。測光手段1は被写体の輝度BVを測定する。本発明の露出制御装置は、フラッシュ撮影機能を有しており、フラッシュ撮影判定手段2によりフラッシュ撮影か否かを判定される。フラッシュ撮影と判定されたときには、シャッター速度演算手段3により測光手段1の出力に基づいてシャッター速度TVを演算する。このシャッター速度TVがフラッシュ同調最高速TVxよりも小さい所定のシャッター速度TVf2以下のときには、シャッター速度制限手段4により、制御用のシャッター速度TVcを前記所定のシャッター速度TVf2に設定する。したがって、フラッシュ撮影時においても、制御用のシャッター速度TVcが所定のシャッター速度TVf2よりも低速となることはない。この所定のシャッター速度TVf2は、手振れ限界シャッター速度に設定しておけば、スローシンクロ撮影時における二重写しを防止できる。
なお、手振れ検出手段5により手振れ量を検出し、この手振れ検出手段5の検出出力に基づいて手振れ補正手段6により撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正するように構成すれば、手振れ検出及び手振れ補正を行わない場合に比べて、上記所定のシャッター速度TVf2を低速化することができる。ただし、手振れ量が大き過ぎる等の理由で十分な手振れ補正を行うことができない場合には、得られた写真に像振れを生じる恐れがあるので、手振れ検出手段5と手振れ補正手段6による手振れ補正が有効か否かを判定手段7により判定し、補正が有効でないと判定されたときには、前記シャッター速度演算手段3により、シャッター速度TVをフラッシュ同調最高速TVxとすれば良い。」

記載事項ウ(第4頁右下欄第4行目乃至第13行目)
「次に、交換レンズに内蔵されたレンズ内回路LEの詳細な回路構成を第3図に示し説明する。同図は、手振れ補正機能を有する手振れ補正用レンズNBLの回路構成を示している。
図中、μC3はカメラボディとのデータ交信及び手振れ補正のための制御を行うレンズ内マイコンである。
M3、M4は手振れ補正用レンズを駆動するためのパルスモータであり、それぞれ後述のk方向及びl方向に手振れ補正用レンズを駆動する。」

上記記載事項イには、引用例1の露出制御は、測光手段の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段からの演算結果が、所定のシャッター速度TVf2(手振れ限界シャッター速度に設定)以下のときには、制御用のシャッター速度TVcを前記所定のシャッター速度TVf2に設定する点が記載されている。
また、当該記載から、上記演算結果であるシャッター速度TVが上記所定のシャッター速度TVf2以上のときは、シャッター速度は当該TVの価に設定されることは自明である。

したがって、記載事項ア?ウ、及び図面から、引用例1には
「手振れ量を検出する手振れ検出手段5と、
被写体の輝度BVを測定する測光手段1と、
手振れ検出手段5の検出出力に基づいて撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正手段6と、
フラッシュ撮影機能と、人物を写すためのフラッシュ撮影と背景を写すためのスローシャッターとを組み合わせたスローシンクロ撮影であって、
スローシンクロ撮影において、シャッター速度TVcの制御が手振れ限界シャッター速度TVf2よりも低速となることはなく、手振れ検出手段5の検出出力に基づいて手振れ補正手段6により撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正するように構成すれば、手振れ検出及び手振れ補正を行わない場合に比べて、上記所定のシャッター速度TVf2を低速化するように制御され、
測光手段の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段からの演算結果が、所定のシャッター速度TVf2(手振れ限界シャッター速度に設定)以下のときには、制御用のシャッター速度TVcを前記所定のシャッター速度TVf2に設定し、上記演算結果であるシャッター速度TVが上記所定のシャッター速度TVf2以上のときは、シャッター速度は当該シャッター速度TVの値に設定される、
手振れ補正手段6を備えたカメラ」の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

先の拒絶理由通知で引用した、本願の原出願の出願日(平成6年4月8日)前に頒布された刊行物である特開平2-79824号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項エ(第2頁右下欄第1行目乃至第5行目)
「ところで、フラッシュ撮影は、一般にフラッシュ同調速度(たとえば、1/60秒)で行なわれるが、スローシンクロ撮影等、フラッシュ同調速度よりも遅いシャッタ速度で行われることがある。」

先の拒絶理由通知で引用した、本願の原出願の出願日(平成6年4月8日)前に頒布された刊行物である特開平4-98231号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項オ(第1頁左下欄第15行目乃至右下欄第17行目)
「[従来の技術]
近年のカメラの多機能化に伴い、筐体にストロボを内蔵したカメラ、いわゆるストロボ内蔵カメラが、登場している。また、かかるカメラとしては、撮影モードやストロボモードを多種類備えた、多モード型のものが知られている。
例えば、露出モードとしては、シャッタスピードおよび絞りFナンバーを撮影者が設定するマニュアルモードの他、測光を行い、この結果から、あらかじめ定められたプログラムにしたがってシャッタスピードおよび絞りFナンバーを決定するプログラムAEモード、設定された絞りFナンバーにしたがってシャッタスピードを決定する絞り優先AEモード、設定されたシャッタスピードにしたがって絞りFナンバーを決定するシャッタ優先AEモード等がある。
また、ストロボモードには、被写体の輝度が低い時や逆光時に自動的に発光する自動発光モードや、撮影者の意思により強制的に発光させる強制発光モード(FILL-INモード)、スローシンクロモード、発光禁止モード等がある。
撮影者は、これらのモードを組み合わせることによって、様々な撮影を行うことができる。」

先の拒絶理由通知で引用した、本願の原出願の出願日(平成6年4月8日)前に頒布された刊行物である特開平2-275422号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項カ(第5頁左下欄第9行目乃至第17行目)
「バルブモード撮影の場合には測距が行なわれ(ステップo)、シャッタを開き(ステップp)、時限タイマーを開始する(ステップq)。例えば時限タイマーで20秒間が設定され、この時間内にリモコン信号の受信を判断して受信され(ステップr)、またリモコンモードが0FFし(ステップs)、さらにタイムオーバの場合には(ステップt)、シャッタを閉じて撮影してフィルムを1駒分給送して撮影が終了する。」

4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「手振れ量を検出する手振れ検出手段5と、
被写体の輝度BVを測定する測光手段1と、
手振れ検出手段5の検出出力に基づいて撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正手段6」と、
本願発明の「振れを検出する振れ検出手段と、
被写体輝度の測光を行う測光手段と、
前記振れ検出手段により検出された振れ量に基づいて像振れ補正を行う振れ補正手段」
とを対比すると、
引用発明の「手振れ量を検出する手振れ検出手段5」、「被写体の輝度BVを測定する測光手段1」及び「手振れ検出手段5の検出出力に基づいて撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正手段6」は、本願発明の「振れを検出する振れ検出手段」、「被写体輝度の測光を行う測光手段」、「振れ検出手段により検出された振れ量に基づいて像振れ補正を行う振れ補正手段」にそれぞれ相当するから、両者は相当関係にある。

(2)引用発明の「フラッシュ撮影機能と、人物を写すためのフラッシュ撮影と背景を写すためのスローシャッターとを組み合わせたスローシンクロ撮影」と、本願発明の「撮影補助光を発光させる発光モードと、前記撮影補助光の発光を行わない非発光モードと、前記撮影補助光を発光させ、前記振れ補正手段を駆動させながら撮影するときの最大露出時間が、前記振れ補正手段を駆動させながら前記非発光モードで撮影を行うときの最大露出時間と等しく設定されたスローシンクロモードとを切換える制御部」とを対比すると、引用発明の「スローシンクロ撮影」は本願発明の「スローシンクロモード」に相当するので、両者は「スローシンクロモード」を有する点で一致する。

(3)引用発明の「スローシンクロ撮影において、シャッター速度TVcの制御が手振れ限界シャッター速度TVf2よりも低速となることはなく、手振れ検出手段5の検出出力に基づいて手振れ補正手段6により撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正するように構成すれば、手振れ検出及び手振れ補正を行わない場合に比べて、上記所定のシャッター速度TVf2を低速化するように制御され、
測光手段の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段からの演算結果が、所定のシャッター速度TVf2(手振れ限界シャッター速度に設定)以下のときには、制御用のシャッター速度TVcを前記所定のシャッター速度TVf2に設定し、上記演算結果であるシャッター速度TVが上記所定のシャッター速度TVf2以上のときは、シャッター速度は当該シャッター速度TVの値に設定される」と、
本願発明の「前記振れ補正手段を駆動させながら前記スローシンクロモードで撮影するときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定し、かつ、前記振れ補正手段を駆動させながら前記発光モードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定し、かつ、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記非発光モードで撮影を行うときの最大露出時間よりも短く設定するとともに、前記測光手段での測光結果に応じて適正露出値を算出し、前記適正露出値による露出時間あるいは設定された最大露出時間に達するまで露出を行う露出制御手段」とを対比すると、

ア 引用発明の「スローシンクロ撮影において、シャッター速度TVcの制御が手振れ限界シャッター速度TVf2よりも低速となることはなく、手振れ検出手段5の検出出力に基づいて手振れ補正手段6により撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正するように構成すれば、手振れ検出及び手振れ補正を行わない場合に比べて、上記所定のシャッター速度TVf2を低速化するように制御」するとは、要するに、手振れ補正を行いながら、スローシンクロ撮影するときのシャッタ-速度の最小値TVf2が、手振れ補正を行わないで、スローシンクロ撮影を行うときのシャッタ-速度の最小値TVf2よりも小さく設定されるように制御することを意味する。
また、「シャッター速度TV」の値は「露出時間」に相当するものであり、さらに当該シャッター速度の最小値は、最大露出時間に実質的に対応すること(つまり、シャッター速度と露出時間は、大小関係が逆転して実質的に対応していること)は、カメラの分野において従来周知の技術常識である。
以上の点から、引用発明の「スローシンクロ撮影において、シャッター速度TVcの制御が手振れ限界シャッター速度TVf2よりも低速となることはなく、手振れ検出手段5の検出出力に基づいて手振れ補正手段6により撮影レンズの一部を駆動して手振れを補正するように構成すれば、手振れ検出及び手振れ補正を行わない場合に比べて、上記所定のシャッター速度TVf2を低速化するように制御」は、本願発明の「前記振れ補正手段を駆動させながら前記スローシンクロモードで撮影するときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定」に相当する。

イ 引用発明の「測光手段の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段からの演算結果が、所定のシャッター速度TVf2(手振れ限界シャッター速度に設定)以下のときには、制御用のシャッター速度TVcを前記所定のシャッター速度TVf2に設定し、上記演算結果であるシャッター速度TVが上記所定のシャッター速度TVf2以上のときは、シャッター速度は当該TVの価に設定される」とは、要するに、測光手段の出力に基づいて算出されたシャッター速度により撮影を行うか(その際、適正露出値も算出されることは自明)、あるいは、手振れ限界シャッター速度(すなわち最小シャッター速度値)により撮影を行うかのいずれかを選択して、撮影を行うことである。
従って、上記「4.(3)ア」で示した「シャッター速度」と「露出時間」との対応関係から、引用発明の「測光手段の出力に基づいて演算するシャッター速度演算手段からの演算結果が、所定のシャッター速度TVf2(手振れ限界シャッター速度に設定)以下のときには、制御用のシャッター速度TVcを前記所定のシャッター速度TVf2に設定し、上記演算結果であるシャッター速度TVが上記所定のシャッター速度TVf2以上のときは、シャッター速度は当該TVの価に設定される」は、本願発明の「前記測光手段での測光結果に応じて適正露出値を算出し、前記適正露出値による露出時間あるいは設定された最大露出時間に達するまで露出を行う露出制御手段」に相当する。

以上、ア及びイから、両者は「前記振れ補正手段を駆動させながら前記スローシンクロモードで撮影するときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定し、前記測光手段での測光結果に応じて適正露出値を算出し、前記適正露出値による露出時間あるいは設定された最大露出時間に達するまで露出を行う露出制御手段」である点で一致する。

(4)引用発明の「手振れ補正手段6を備えたカメラ」は、本願発明の「振れ補正手段を備えたカメラ」に相当する。

したがって、上記の対比考察(1)?(4)から本願発明と引用発明とは
「振れを検出する振れ検出手段と、
被写体輝度の測光を行う測光手段と、
前記振れ検出手段により検出された振れ量に基づいて像振れ補正を行う振れ補正手段と、
スローシンクロモードを有し、
前記振れ補正手段を駆動させながら前記スローシンクロモードで撮影するときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定し、前記測光手段での測光結果に応じて適正露出値を算出し、前記適正露出値による露出時間あるいは設定された最大露出時間に達するまで露出を行う露出制御手段と
を備えたことを特徴とする振れ補正手段を備えたカメラ。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明のカメラが、「スローシンクロモード」の他、「撮影補助光を発光させる発光モード」と、「前記撮影補助光の発光を行わない非発光モード」とを有し、これらのモードを「切換える制御部」を有するのに対し、引用発明では、その点明示されていない点。

相違点2
本願発明の「スローシンクロモード」における最大露出時間の設定が、「撮影補助光を発光させ、前記振れ補正手段を駆動させながら撮影するときの最大露出時間が、前記振れ補正手段を駆動させながら前記非発光モードで撮影を行うときの最大露出時間と等しく設定」するものであるのに対し、引用発明にはその点、明示されていない点。

相違点3
本願発明の最大露出時間の設定が、「前記振れ補正手段を駆動させながら前記スローシンクロモードで撮影するときの最大露出時間を、・・・前記振れ補正手段を駆動させながら前記発光モードで撮影を行うときの最大露出時間よりも長く設定」するものであるのに対し、引用発明には、そのような限定はない点。

相違点4
本願発明の最大露出時間の設定が、「前記振れ補正手段を駆動させないで前記スローシンクロモードで撮影を行うときの最大露出時間を、前記振れ補正手段を駆動させないで前記非発光モードで撮影を行うときの最大露出時間よりも短く設定する」ものであるのに対し、引用発明には、そのような限定はない点。

5.当審の判断

相違点1について

カメラの撮影モードとして、撮影補助光を発光させる発光モード、撮影補助光の発光を行わない非発光モードと、スローシンクロモードをそれぞれ有し、かつこれらのモード間で切換制御を行うことは、フラッシュ撮影が可能なカメラにおいては、従来周知である(例えば、上記記載事項オ(引用例3)の記載等を参照のこと。ここで、記載事項オの「自動発光モード」や「強制発光モード」が、撮影補助光を発光させる発光モードに、また、記載事項オの「スローシンクロモード」、「発光禁止モード」が、スローシンクロモード、「非発光モード」にそれぞれ該当する)。
したがって、引用発明のカメラの撮影モードとして、上記従来周知の「発光モード」、「非発光モード」、及び「スローシンクロモード」を備え、これらのモードの切換制御を行うことは、当業者にとって、単なる周知手段を付加する程度のものにすぎない。

相違点2について

上記「相違点1について」で述べたとおり、カメラの撮影モードとして、非発光モード(発光禁止モード)は従来周知であるので、当該非発光モードを引用発明のカメラに付加することは、当業者にとって単なる設計事項にすぎない。
(また、特開平6-51363号公報(以下、「周知例1」という)の段落【0023】乃至【0027】の記載及び図5等も参照のこと。)
またその際、引用発明の手振れ補正と当該非発光モードとは、それぞれ独立した露出制御に関する機能であるから、この両者を単に組み合わせて撮影をおこなうことも、当業者であれば適宜なす程度の事項である。
さらに、この組み合わせ(手振れ補正中の非発光モード)による撮影の際には、手振れ補正を動作させる以上、手振れによる悪影響を極力回避するために、引用発明のシャッター速度の最小設定値(最大露出時間にあたる)として、手振れ補正動作中に対応した手振れ限界シャッター速度に設定することも、当業者にとっては当然想起する事項である。
したがって、引用発明のカメラの撮影モードに、非発光モード(発光禁止モード)を付加する時点で、シャッター速度の最小設定値(最大露出時間にあたる)は、ストロボを発光するか否かによらず、(手振れ補正動作中においては)手振れ補正に対応した手振れ限界シャッター速度に設定することになるから、上記付加によって、相違点2は解消されるものである。

相違点3について

上記「相違点1について」で述べたとおり、カメラの撮影モードとして、発光モード(例えば引用例3の自然発光モードなどの、通常のストロボ撮影モード)を有することは従来周知であるので、当該発光モードを引用発明のカメラに付加することは、当業者にとって単なる設計事項にすぎない。
またその際に、引用発明の手振れ補正と当該発光モードとは、それぞれが独立した露出制御に関する機能であるから、この両者を組み合わせて撮影をおこなうことも、当業者であれば適宜なす程度の事項である。
一方、当該発光モード撮影とスローシンクロモード撮影のシャッター速度の大小関係は、一般に、前者の方が、後者よりも速めに設定されることは、従来周知の事項である(例えば、引用刊行物2の記載事項エ等を参照のこと。)
したがって、引用発明のカメラの撮影モードとして当該発光モードを付加し、これと手振れ補正を組み合わせた場合におけるシャッター速度の最低速度値(最大露出値に対応)の設定を、引用発明の手振れ補正動作中のスローシンクロモードにおけるシャッター速度の最低速度値よりも大きく設定することは、当業者が容易に想到する事項である。
よって、相違点3も解消される。

相違点4について

(1)判断1
カメラの分野において、長時間露光撮影モード(バルブモード)と呼ばれる撮影方法は従来周知である(例えば、記載事項カ(引用例4)を参照のこと。)。
このバルブモード撮影における最大露出時間は、一般に手振れ限界シャッター速度に比べれば、長く設定されることも技術常識である(例えば、記載事項カで示されたバルブモード撮影時の露出時間を参照のこと)。
また、当該バルブモード撮影は、手振れ補正機能を有しないカメラ(すなわち手振れ補正を行わないカメラ)のフラッシュ非発光モード撮影時においても実行されることも従来周知である(例えば、特開平5-341361号公報(以下、「周知例2」という)の段落【0047】の記載及び【図18】等を参照のこと。)
従って(上記相違点1、2で述べたように)引用発明のカメラに非発光モードを付加する際に、これとは独立した露出制御機能である従来周知のバルブモード機能を併せて付加することは、当業者にとって、単なる組み合わせ程度のものにすぎない。
さらに、バルブモード撮影と並行して、測光結果に応じた適正露出値を算出し、この適正露出値による露出時間の算出を行うこと(ただし撮影時の露出時間は、バルブ撮影用の最大露出時間)も従来周知(例えば、上記周知例2の【図16】及び【図18】を参照のこと)の制御方法である。
したがって、上述の引用発明のカメラにバルブモードを組み合わせる際、当該周知の制御方法も併せて採用することも、当業者であれば容易に想到する事項である。
よって、相違点4も解消される。

(2)判断2
手ぶれ機能を用いないでカメラ撮影を行う場合に三脚を用いて、通常シャッター速度の制限を考慮しない撮影が行う(すなわち、手振れ限界シャッター速度に比べて、長時間の露光を行う)ことは、従来周知である(例えば、特開平3-75628号公報(以下、「周知例3」という)の第2頁左上欄第1行目乃至第6行目の記載を参照のこと。)
したがって、(上記相違点1、2で述べたように)引用発明のカメラに非発光モードを付加した場合、手振れ補正を行わずに非発光モードで撮影を行う際にも、上記三脚を使って撮影をすることは、当業者であれば当然想起する程度の事項である。
またその場合には、その他の撮影モード(例えば、手振れ補正を行わないスローシンクロ撮影時)で設定される手振れ限界シャッター速度よりも、最大露出時間を長めに設定されることも、上記周知の事項(例えば周知例3)から、当業者にとって自明である(よって、相違点4は解消される)。

また、本願発明によってもたらされる効果は引用例1乃至4の記載、及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

まとめ

よって、本願発明は、引用例1乃至4に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1乃至4に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2009-09-28 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願2004-136139(P2004-136139)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
越河 勉
発明の名称 ブレ補正装置を備えたカメラ  
代理人 山田 武樹  

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