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審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服20051667 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1208804
審判番号 不服2006-10976  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-29 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 平成 7年特許願第515254号「経口持続放出性オピオイド医薬製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月 1日国際公開、WO95/14460、平成 9年 6月 3日国内公表、特表平 9-505602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続・経緯
本願は、平成6年11月22日(優先権主張1993年11月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年8月27日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「1.鎮痛有効量のオピオイド鎮痛薬が塗布されている複数の不活性医薬ビーズを含有する経口持続放出性オピオイド医薬製剤であって、
前記オピオイド鎮痛薬が、ヒドロモルホン、その医薬的に許容可能な塩、および前記のものの任意の混合物より成る群から選ばれ、
前記不活性医薬ビーズは、有効量の医薬的に許容可能な、アクリル系ポリマー、疎水性セルロース物質、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性ポリマーが上塗り(オーバーコート)されており、
前記製剤は1日1回の経口投与で鎮痛効果をもたらし、
前記医薬製剤の1服をヒトの患者に投与したとき、約1時間?約8時間の吸収半減期(吸収可能なオピオイドの用量の1/2が血漿に移動するのに必要な時間量)、4時間?9時間以内に最高血漿濃度到達時間(Tmax)、および患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が、患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準に対し、少なくとも約2.26倍の血漿濃度を与え、
前記投薬製剤が、患者に投与した後、約24時間またはそれ以上にわたり効果的な鎮痛治療を提供する、
経口持続放出性オピオイド医薬製剤。」

2.拒絶理由の概要
これに対し、原査定の拒絶の理由の概要は、本願明細書には、本願発明のオピオイド医薬製剤の具体的な効果が試験データ等によって裏付けられておらず、当業者が本願発明を容易に実施することができる程度に記載したものとはいえないから、本願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないというものである。

3.当審の判断
本願請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、経口持続放出性オピオイド医薬製剤に関する発明であり、ア)鎮痛有効量のヒドロモルホン、その医薬的に許容可能な塩、および前記のものの任意の混合物(以下、「ヒドロモルホン類」という。)を有効成分とし、イ)鎮痛薬が塗布されている複数の不活性医薬ビーズを含有する経口持続放出性オピオイド医薬製剤であり、前記不活性医薬ビーズは、有効量の医薬的に許容可能な、アクリル系ポリマー、疎水性セルロース物質、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性ポリマーが上塗り(オーバーコート)されており、ウ)(a)前記製剤は1日1回の経口投与で鎮痛効果をもたらし、(b)前記医薬製剤の1服をヒトの患者に投与したとき、(b-1)約1時間?約8時間の吸収半減期(吸収可能なオピオイドの用量の1/2が血漿に移動するのに必要な時間量)、(b-2)4時間?9時間以内に最高血漿濃度到達時間(Tmax)、および(b-3)患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が、患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準に対し、少なくとも約2.26倍の血漿濃度を与え、(c)前記投薬製剤が、患者に投与した後、約24時間またはそれ以上にわたり効果的な鎮痛治療を提供するものであることを構成要件とするものである。
そして、本願が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしているというためには、本願明細書の発明の詳細な説明は、上記ア)の有効成分に関する構成要件(有効成分がヒドロモルホン類)、イ)の製剤に関する構成要件(有効成分が塗布された不活性医薬ビーズを疎水性ポリマーにより上塗り)、ウ)の薬理効果に関する構成要件( (a)、(b)、(c))、のすべての構成要件を満たす経口持続放出性オピオイド医薬製剤を、当業者が容易に製造することができるように本願発明の目的、構成、効果を記載したものでなければならない。

そこで、このような観点から、本願明細書の記載につき検討する。
本願明細書の6頁?11頁には、上記ウ)の薬理効果に関する構成要件((a)、(b)、(c))についての説明があり、続いて、このような薬理効果に関する構成要件を満たす製剤を製造する方法に関しては、以下の記載がある。
まず、本願明細書の20頁16行?23行には、上記の疎水性ポリマーよる上塗りに関して、「本発明の製剤の持続放出特性を、例えば以下のような方法によって変更することができる;疎水性コーティングの厚さを変える;使用する特定の疎水性材料を変えるか、または例えば異種のアクリル樹脂ラッカーの割合を変える;可塑剤の添加方法を変える(例えば、持続放出性コーティングを疎水性ポリマーの水性分散物から形成させる場合);疎水性ポリマーに対する可塑剤の割合を変える;さらに別の成分または賦形剤を含有させる;製造方法を変える;その他。」と記載されており、本願明細書の22頁2?6行には「治療薬効剤の物理的性質、可塑剤の組み入れ方法、その他を考慮して、コーティングされた支持体が水性溶液、例えば胃液にさらされたときに、治療薬効剤のあらかじめ定めた持続放出を得るのに十分な量の疎水性ポリマーの水性分散物を、好適に適用する。」と記載されている。
また、上塗り後のビーズの硬化に関しては、本願明細書の22頁11行?23頁3行に、「次に、治療薬効剤の安定した放出速度を得るため、このコーティングされたビーズを硬化させる。コーティング剤がエチルセルロースの水性分散物を含む場合、コーティングされた支持体は、好ましくは、ここに参考として引用する、米国特許第5,273,760号の記載にしたがって、……において、硬化を行う。アクリルコーティングを目指す、本発明の好ましい実施態様において、可塑化したアクリルポリマーのTgより高い温度で、必要な時間、コーティングされた支持体を加熱(oven)硬化させることによって、安定化した生成物を得る。このとき、特定の製剤に関する最適温度および時間は、実験で定められる。本発明のいくつかの実施態様において、ここに参考として引用する、米国特許第5,286,493号の記載にしたがって、……加熱硬化することによって、安定化した生成物が得られる。」と記載されている。
そして、実施例としては、本願明細書の発明の詳細な説明に、実施例1?7が記載され、試験結果をグラフとした図1?14が添付されている。
以下、これらの記載について検討する。疎水性ポリマーよる上塗りに関しては、疎水性ポリマーの材料、コーティング層の厚さ、可塑剤の添加方法、可塑剤の添加割合、別の成分または賦形剤の含有等を変えること、あるいは、治療薬効剤の物理的性質、可塑剤の組み入れ方法、その他を考慮して、 本発明の製剤の持続放出特性を変更することが記載されているだけであり、具体的にどのような条件を選択すれば上記のウ)の薬理効果に関する構成要件を満たす製剤を製造することができるかについてはなんら説明されていない。
そして、上塗り後のビーズの硬化に関しては、放出速度の安定化のため硬化させること、及び一般的な説明と、具体的な硬化温度、硬化時間等について米国特許を2件引用した説明はされているものの、硬化条件と、上記ウ)の薬理効果に関する構成要件との関係については何ら記載されていない。
次に実施例について検討する。本願発明は、有効成分がヒドロモルホン類を有効成分とする製剤の発明であるが、実施例1?6は、いずれも硫酸モルヒネを有効成分とする製剤であり、実施例7だけが、ヒドロモルホン類である塩酸ヒドロモルホンを有効成分とする製剤に関する実施例である。
そこで、実施例7について検討する。実施例7で製造した製剤について行った血液サンプル中のヒドロモルホン濃度を検査した試験結果には、製剤投与から6時間後と24時間後のヒドロモルホン濃度の比について記載されておらず、実施例7の製剤が、上記ウ)の薬理効果に関する要件の(b-3)「前記医薬製剤の1服をヒトの患者に投与したとき、患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が、患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準に対し、少なくとも約2.26倍の血漿濃度を与え」るものであることは記載されていない。また、24時間後の血液サンプル中のヒドロモルホン濃度が記載されておらず、実施例7の製剤が、上記ウ)の薬理効果に関する要件の(a)の「前記製剤は1日1回の経口投与で鎮痛効果をもたら」すものであること、(c)の「前記投薬製剤が、患者に投与した後、約24時間またはそれ以上にわたり効果的な鎮痛治療を提供するもの」であることも実施例7には記載されていない。なお、実施例7の溶解試験の結果によれば、8時間後には93.3%という大半の塩酸ヒドロモルホンが溶解しており、18時間後と24時間後の溶解量は98.8%で同じであり、このことは、18時間後以降には新たな塩酸ヒドロモルホンは溶解していないということを意味する。この溶解試験結果は、実施例7の製剤が、一服で効果的な鎮痛効果をもたらすことができる期間は24時間よりは相当に短いことを示唆するものであるとはいえても、この溶解試験結果から、実施例7の製剤が、(a)の「前記製剤は1日1回の経口投与で鎮痛効果をもたら」すものであること、(c)の「前記投薬製剤が、患者に投与した後、約24時間またはそれ以上にわたり効果的な鎮痛治療を提供するもの」との構成要件を満たすものであるとはいえない。
また、硫酸モルヒネを有効成分とする実施例1?6の製剤についての記載が、本願発明の実施例と同視しうるものであるかどうかについて検討するに、溶出試験の結果は、塩酸ヒドロモルホンを有効成分とする実施例7の製剤では、たとえば、4時間、8時間後の溶解%がそれぞれ77.4%、93.3%であるのに対して、硫酸モルヒネを有効成分とする実施例1?5の製剤では、それぞれ12.8%?28.1%、16.4%?58.3%、と大きく異なり、実施例6では、それぞれ59.6%、76.6%であるが、やはり実施例7の製剤に比べれば15%以上小さい。このように溶解試験の結果が大きく異なる硫酸モルヒネを有効成分とする製剤に関する記載をもって、塩酸ヒドロモルホンを有効成分とする実施例7の製剤の薬理効果の持続性に関する記載とすることはできない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、疎水性ポリマーの上塗り、その後の加熱硬化等の製剤の製造条件をどのように選定すれば、上記ウ)の薬理効果に関する構成要件を満たす製剤を製造することができるかについては何ら説明が記載されておらず、上記ア)、イ)、ウ)の構成要件を満たす、すなわち本願発明の実施例と認められる製造試験例も記載されていない。

以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明の上記ア)の有効成分に関する構成要件、イ)の製剤に関する構成要件、ウ)の薬理効果に関する構成要件のすべての構成要件を満たす経口持続放出性オピオイド医薬製剤を、当業者が容易に製造することができるように本願発明の目的、構成、効果を記載したものであるということはできない。

4.むすび
したがって、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-30 
結審通知日 2009-07-07 
審決日 2009-07-22 
出願番号 特願平7-515254
審決分類 P 1 8・ 531- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森井 隆信鶴見 秀紀  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
星野 紹英
発明の名称 経口持続放出性オピオイド医薬製剤  
代理人 片山 英二  
代理人 廣瀬 隆行  
代理人 小林 純子  
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