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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1208856
審判番号 不服2007-11156  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-18 
確定日 2009-12-17 
事件の表示 平成 9年特許願第 69700号「フレキシブル印刷配線板用コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月 9日出願公開、特開平10-270132〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年3月24日に出願したものであって、平成19年3月12日付けで拒絶査定がなされ(同年3月20日発送)、これに対し、同年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月8日付けで手続補正がなされ、さらに、平成21年3月16日付けで審尋し、期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなかったものである。

2.平成19年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年5月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「フレキシブル印刷配線板の接続端子に接続するコンタクトを有するハウジングと、該ハウジングに対し水平方向へスライド自在に配設されるとともに、前記フレキシブル印刷配線板の装着時に初期位置から水平方向へスライドさせて引き出された後、前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢となるよう回動自在に支承されるスライドとを有し、前記フレキシブル印刷配線板を前記ハウジング内に嵌挿させた後に、前記傾斜姿勢のスライドを水平な前記初期位置にスライド復帰させ、これにより前記スライドに形成された押圧片により前記接続端子を対応する前記コンタクトに押し付けるようにしたフレキシブル印刷配線板用コネクタにおいて、
前記スライドと前記ハウジングとの間に前記スライドを前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢に停止させるとともに、該傾斜姿勢から前記水平姿勢に戻すべく前記スライドを一方向へ回転させた際に、該スライドの回転を規制するロック手段であって、前記スライド脚に突出形成された突起と、前記ガイド溝に形成され前記突起を嵌着支承する凹部とからなるロック手段を介在させるようにしたことを特徴とするフレキシブル印刷配線板コネクタ。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「ロック手段」について「前記スライド脚に突出形成された突起と、前記ガイド溝に形成され前記突起を嵌着支承する凹部とからなる」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-83651号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「次に、本実施例の作用について説明する。まず、スライド部材30のアーム部32をハウジング10の案内溝11に嵌合させて押圧板部31をキャビティ12内に挿入させるように強く押し込むと、アーム部32が弾性変形しながら係止突部33がハウジング10の仮係止突起26と兼用係止突起23とを乗り越える。そして、スライド部材30の本係止用斜面34がハウジング10の本係止用斜面24に係止することにより、図2,6,9及び13に示すようにスライド部材30がハウジング10に対して本係止状態に保持される。このようにスライド部材30をハウジング10に組み付けた状態のコネクタを図示しないプリント基板に取り付けておく。これにより、端子金具40の接触部41がプリント基板の図示しない回路接点に接続される。
この状態からフラットケーブル60をコネクタに装着する際には、スライド部材30をハウジング10に対して引き抜くように移動させると、アーム部32がその上下両面32A,32Bを案内面21A,21Bに接触させることにより水平姿勢で平行移動し、図10に示すように、被誘導斜面38が誘導斜面28とその曲面29との連続部に接触する状態になる。このとき、被誘導斜面38と誘導斜面28はスライド部材30の移動方向に対して小さい角度で同じ方向に傾斜していると共に、その傾斜角度は被誘導斜面38が誘導斜面28よりも僅かに大きい。したがって、被誘導斜面38の先端の角縁が誘導斜面28に突き当たることがなく、被誘導斜面38と誘導斜面28は互いに擦れ合うように滑らかに接触することとなり、両面28,38の接触時に衝撃は殆どない。
この状態から更にスライド部材30を引っ張り操作すると、図11に示すように、被誘導斜面38が誘導斜面28に乗り上がることにより、スライド部材30が滑らかに姿勢を斜めに変化させる。これに伴い、アーム部32の上面32Aがアーム部用案内斜面22に接触すると共に、アーム部32の逃がし斜面39が案内面21Bに接触し、キャビティ12内においては押圧板部31が押圧板部用案内斜面15に接触する状態となり、この後さらに、被案内面36が誘導斜面28に乗り上がるように接触する状態となる。このとき、被誘導斜面38と被案内面36とが連続する鈍角の角部は曲面29に接触することになるため、スライド部材30の姿勢の変化は引っ掛かりを生じることなくスムーズに行われる。
この後さらにスライド部材30を引張り操作すると、アーム部32の上面32Aとアーム部用案内斜面22との接触、アーム部32の逃がし斜面39と案内面21Bとの接触、押圧板部31と押圧板部用案内斜面15との接触、及び、被案内面36と誘導斜面28との接触により、スライド部材30は所定の傾斜姿勢に保持されたまま斜め上方に平行移動する。そして、図12に示すようにスライド部材30が仮係止位置に達すると、仮係止用斜面25,35同士及び仮係止用突当面27,37同士の当接によってスライド部材30は仮係止位置に遊動不能に保持される。
この仮係止状態においては、図7に示すように、スライド部材30の押圧板部31がキャビティ12の挿入口13の外側位置において斜め上方へ大きく広がった状態となっている。このため、フラットケーブル60をキャビティ12に挿入する作業を容易に行うことができる。
フラットケーブル60を挿入した後は、スライド部材30をハウジング10側へ押し込むようにする。すると、スライド部材30は、上記とは逆の経緯により、斜め下方向に移動して姿勢を水平に変化させて本係止位置に移動し、本係止勇者面(当審注:「本係止用斜面」の誤記と認める。)同士24,34の係止によって本係止位置に保持される。スライド部材30が本係止位置に移動するのに伴い、キャビティ12内においては、図8に示すように、端子金具40が押圧板部31で押し下げられることにより弾性変形しつつフラットケーブル60の上面の端子接点に当接する。これにより、フラットケーブル60の図示しない端子接点が端子金具40を介してプリント基板の回路接点に接続される。」(段落【0026】?【0031】)

上記記載及び図面によると、引用例1には、
「フラットケーブル60の端子接点に接続する端子金具40を有するハウジング10と、該ハウジングに対し水平方向へスライド自在に配設されるとともに、前記フラットケーブルの装着時に本係止位置から水平姿勢で平行移動し引き抜かれた後、前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢となるよう回動自在に支承されるスライド部材30とを有し、前記フラットケーブルを前記ハウジング内に挿入した後に、前記傾斜姿勢のスライド部材を水平な前記本係止位置にスライド復帰させ、これにより前記スライド部材に形成された押圧板部31により前記端子接点を対応する前記端子金具に押し付けるようにしたフラットケーブル用コネクタにおいて、
前記スライド部材と前記ハウジングとの間に設けた仮係止用斜面25,35同士及び仮係止用突当面27,37同士の当接によって仮係止位置に前記スライド部材を前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢に遊動不能に保持させるようにしたフラットケーブル用コネクタ。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

本願出願前に頒布された刊行物である、実願平4-34721号(実開平5-90865号)のCD-ROM(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「図4及び図5を参照して,コネクタ20は,スライドインシュレータ8の突起部8aの先端の下方に内面8cを有するように,ベースインシュレータ7にコンタクト3及びホールドダウン6が装着されている。コンタクト3及びホールドダウン6の突出端は,基板のパターンに半田付けされるので,スライドインシュレータ8は基板の上方に向かって開放される。この開放時のスライドインシュレータ8は,ホールドダウン6の内側面6aと,ベースインシュレータ両端のガイド壁9の端面9aは,姿勢保持手段として働き,内側面6aに内面8c,端面9aに先端面8dが当接することによって,スライドインシュレータ8の姿勢が保持される。
図6を参照して,スライドインシュレータ8の開放動作について説明する。
図6(a)はスライドインシュレータ8を閉じた状態を示している。この状態,即ち,第1の位置にあるスライドインシュレータ8を手前に引くと,図6(b)で示すように,ベースインシュレータ及びホールドダウン6にガイドされて,スライドインシュレータ8が手前に引き出される。次に,図6(c)で示すように,上方にスライドインシュレータ8を持ち上げると,ホールドダウン6の壁部10に内面8cが当接するまで,スライドインシュレータ8の正面側が引き上げられる。この際に,係合部8bと係合部7bとが係合して,スライドインシュレータ8は第2の位置となり,スライドインシュレータの脱離が防止される。図6(d)はこのときの断面図である。図6(d)に示すように,コンタクトの開口に,FPCが挿入可能状態となっている。この状態から図3で示すようにFPCが挿入される。尚,図中符号4はプリント基板である。」(段落【0020】?【0022】)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「端子接点」は本願補正発明の「接続端子」に相当し、以下同様に、「端子金具40」は「コンタクト」に、「本係止位置」は「初期位置」に、「水平姿勢で平行移動し引き抜かれた後」は「水平方向へスライドさせて引き出された後」に、「スライド部材30」は「スライド」に、「挿入した後」は「嵌挿させた後」に、「押圧板部31」は「押圧片」に、それぞれ相当する。

また、引用発明のフラットケーブルと、本願補正発明のフレキシブル印刷配線板は、ともにフレキシブル薄型配線材である点で共通している。

さらに、引用発明では、仮係止用斜面25,35及び仮係止用突当面27,37の当接によるスライド部材30の傾斜姿勢が維持される程度の力が作用してもスライド部材30の回動は規制され、スライド部材30の傾斜姿勢が維持できない力が作用することによってスライド部材30の規制を解除しているものと認められる。
一方、本願の明細書の段落【0023】に「スライド5を反時計方向へ強制的に回動させてロック手段30によるスライド5のロックを解除し」と記載されている点を参酌すると、本願補正発明におけるコネクタには、スライドの傾斜姿勢が維持される程度の力が作用してもスライドの回動は規制され、スライドの傾斜姿勢が維持できない力が作用することによってスライドの規制を解除するものが含まれる。
したがって、本願補正発明と引用発明では、スライドの回動の規制及び規制の解除の技術手段は共通しており、引用発明の「仮係止用斜面25,35同士及び仮係止用突当面27,37同士の当接によって仮係止位置に前記スライド部材を前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢に遊動不能に保持させる」は、本願補正発明の「該傾斜姿勢から前記水平姿勢に戻すべく前記スライドを一方向へ回転させた際に、該スライドの回転を規制するロック手段を介在させる」に相当する。

したがって、両者は、
「フレキシブル薄型配線材の接続端子に接続するコンタクトを有するハウジングと、該ハウジングに対し水平方向へスライド自在に配設されるとともに、前記フレキシブル薄型配線材の装着時に初期位置から水平方向へスライドさせて引き出された後、前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢となるよう回動自在に支承されるスライドとを有し、前記フレキシブル薄型配線材を前記ハウジング内に嵌挿させた後に、前記傾斜姿勢のスライドを水平な前記初期位置にスライド復帰させ、これにより前記スライドに形成された押圧片により前記接続端子を対応する前記コンタクトに押し付けるようにしたフレキシブル薄型配線材用コネクタにおいて、
前記スライドと前記ハウジングとの間に前記スライドを前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢に停止させるとともに、該傾斜姿勢から前記水平姿勢に戻すべく前記スライドを一方向へ回転させた際に、該スライドの回転を規制するロック手段を介在させるようにしたことを特徴とするフレキシブル薄型配線材コネクタ。」の点で一致し、

次の点で相違している。

相違点1
嵌着されるフレキシブル薄型配線材が、本願補正発明では、フレキシブル印刷配線板であるのに対し、引用発明ではフラットケーブルである点。

相違点2
ロック手段が、本願補正発明では、スライド脚に突出形成された突起と、ガイド溝に形成され突起を嵌着支承する凹部とからなるロック手段であるのに対し、引用発明では、このような構成ではない点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
フレキシブル薄型配線材コネクタにおいて、フレキシブル薄型配線材としてフレキシブル印刷配線板(FPC)及びフラットケーブル(FFC)を同様に用いることは、本願出願前、周知の技術〔例えば、引用例2、特開平9-63718号公報、実願平5-27527号(実開平6-82783号)のCD-ROM参照。〕である。
そうすると、引用発明において、フレキシブル薄型配線材として、フラットケーブルに代えてフレキシブル印刷配線板とすることは、当業者であれば、周知技術に基づいて容易に想到し得たことである。

次に、相違点2について検討する。
スライドの回転を規制するために凹部状の部材と突起状の部材を設けることは、引用例2に記載されており(【図6】(c)参照。引用例2記載の「スライドインシュレータ8の先端面8d」が本願補正発明の「スライド脚に突出形成された突起」に対応しており、同様に「ガイド壁9の端面9a」が「ガイド溝に形成され突起を嵌着支承する凹部」の端面に対応している。)、ロック手段はスライドの回転を規制できればよく、そのための技術手段としてどのようなものを採用するかは当業者が適宜選択し得る事項である。
したがって、引用発明において、ロック手段として、相違点2に係るような突起及び凹部を採用することは、引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願補正発明の奏する作用効果をみても、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年5月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願の平成18年12月4日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「フレキシブル印刷配線板の接続端子に接続するコンタクトを有するハウジングと、該ハウジングに対し水平方向へスライド自在に配設されるとともに、前記フレキシブル印刷配線板の装着時に初期位置から水平方向へスライドさせて引き出された後、前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢となるよう回動自在に支承されるスライドとを有し、前記フレキシブル印刷配線板を前記ハウジング内に嵌挿させた後に、前記傾斜姿勢のスライドを水平な前記初期位置にスライド復帰させ、これにより前記スライドに形成された押圧片により前記接続端子を対応する前記コンタクトに押し付けるようにしたフレキシブル印刷配線板用コネクタにおいて、
前記スライドと前記ハウジングとの間に前記スライドを前記ハウジングに対し斜め上方の傾斜姿勢に停止させるとともに、該傾斜姿勢から前記水平姿勢に戻すべく前記スライドを一方向へ回転させた際に、該スライドの回転を規制するロック手段を介在させるようにしたことを特徴とするフレキシブル印刷配線板コネクタ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「ロック手段」の限定事項である「前記スライド脚に突出形成された突起と、前記ガイド溝に形成され前記突起を嵌着支承する凹部とからなる」との事項を省いたものである。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、前記「2.(3)」で示した[相違点1]のみで相違する。

そうすると、前記「2.(4)」に示したとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-15 
結審通知日 2009-10-20 
審決日 2009-11-04 
出願番号 特願平9-69700
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
発明の名称 フレキシブル印刷配線板用コネクタ  
代理人 木村 高久  

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