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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
管理番号 1208867
審判番号 不服2007-27871  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-11 
確定日 2009-12-17 
事件の表示 特願2003-357751「直噴火花点火式内燃機関の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-120942〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成15年10月17日の出願であって、平成19年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年8月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月4日付けで拒絶査定がなされ、同年10月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同年10月15日付けの手続補正書(方式)によって請求の理由が補充されるとともに、同日付けの手続補正書によって明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審において、平成21年4月20日付けで審尋がなされ、同年6月3日付けで回答書が提出され、同年8月12日付けで拒絶理由が通知され、同年9月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成21年9月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、次のとおりである。

「【請求項1】
排気通路に排気浄化用の触媒を備える直噴火花点火式内燃機関において、
触媒の暖機が要求されている時の、圧縮行程噴射による成層燃焼、吸気行程噴射による均質燃焼、及び、吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる二度噴射燃焼での、エンジン負荷-HC排出量特性を比較して、
3つの燃焼方式でのHC排出量のうち、前記成層燃焼でのHC排出量が最小となる低負荷域と、前記二度噴射燃焼でのHC排出量が最小となる中負荷域と、前記均質燃焼でのHC排出量が最小となる高負荷域とについて、各負荷範囲を設定し、
触媒の暖機が要求されている時に、前記設定した負荷範囲に基づいて、前記低負荷域で、前記成層燃焼を行わせ、前記中負荷域で、前記二度噴射燃焼を行わせ、前記高負荷域で、前記均質燃焼を行わせることを特徴とする直噴火花点火式内燃機関の制御装置。」

2.引用文献記載の発明
(1)引用文献
当審における拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特許第2987925号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】シリンダ内に燃料を直接噴射するための燃料噴射弁と点火栓とを具備し、前記燃料噴射弁は、機関運転状態に応じた全燃料噴射量毎に定められた燃料噴射量割合に基づき前記点火栓回りだけに混合気を形成するための圧縮行程燃料噴射及びシリンダ内に均質混合気を形成するための吸気行程燃料噴射を実施する筒内直接噴射式火花点火機関において、機関冷間時には、前記燃料噴射割合を前記圧縮行程燃料噴射における燃料噴射量を増量するように変更することを特徴とする筒内直接噴射式火花点火機関。」(第1欄2ないし11行)

イ.「第1図を参照すると、1はシリンダブロック、2はシリンダヘッド、3はピストン、4はシリンダ室、5は吸気管、6は排気管を夫々示す。吸気管5にはリンクレススロットル弁7が配置される。このスロットル弁7はステップモータ8によって開閉制御せしめられ、アイドル運転時以外および減速運転時以外においてはほぼ全開状態とされる。燃料噴射弁9の先端はシリンダ室4まで延び、シリンダ室4内に燃料を直接噴射することができる。各気筒の燃料噴射弁9は、各燃料噴射弁9に共通の蓄圧室10に接続され、この蓄圧室10は燃料ポンプ11によってほぼ一定圧力の高圧燃料で満たされている。点火栓12はディストリビュータ13を介してイグナイタ14に接続される。
電子制御ユニット30はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって相互に接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。機関回転数を検出するためのクランク角センサ25はディストリビュータ13に内蔵され、クランク角センサ25の出力信号は入力ポート35に入力される。機関冷却水温を検出するための水温センサ26はAD変換器37を介して入力ポート35に接続される。図示しないアクセルペダルの踏込み量を検出するためのアクセル開度センサ27はAD変換器38を介して入力ポート35に接続される。
一方、出力ポート36は各駆動回路39,40,41介して夫々燃料噴射弁9、イグナイタ14、ステップモータ8に接続される。
第2図には第1図の機関本体の拡大断面図を示す。第2図を参照すると、ピストン頂部に形成された凹状燃焼室20は、上部側の大径の浅皿部21と、浅皿部21の中央部に形成された下部側の深皿部22との二重構造とされ、深皿部22は浅皿部21よりも小径に形成されている。
図示しない吸気ポートはスワールポートとなっており、燃料噴射弁9は多噴孔ホールノズルを有する。したがって燃料噴射弁9は比較的貫徹力が付置くかつ広がり角の小さい棒状の燃料を噴射する。燃料噴射弁9は、斜め下方を指向してシリンダ室4の頂部に配置される。また燃料噴射弁9の燃料噴射方向および燃料噴射時期は、噴射燃料が燃焼室20内に指向するように決められている。点火栓12は、ピストン3の上死点時に凹状燃焼室20内に位置するように配設される。
第3図には圧縮行程噴射と吸気行程噴射の制御パターンを示す。第3図を参照すると、横軸は機関の負荷を表しており、第3図では負荷として燃料噴射量Qをとり、縦軸には燃料噴射量Qをとっている。燃料噴射量Q_(S)に相当する負荷領域までは、圧縮行程においてだけ燃料が噴射される。圧縮行程燃料噴射量はQ_(S)まで漸次増大せしめられる。燃料噴射量Q_(S)において、圧縮行程燃料噴射量はQ_(D)まで急激に減少せしめられると共に吸気行程燃料噴射量はQ_(P)まで急激に増大せしめられる。Q_(S)は中負荷付近の燃料噴射量であり、Q_(D)とQ_(P)との和として次式で示される。
Q_(S)=Q_(D)+Q_(P)
ここで、Q_(D)は点火栓12により着火可能な混合気を形成し得る最小限の圧縮行程燃料噴射量であり、Q_(P)は吸気行程において噴射された燃料がシリンダ室4内に均質に拡散した際に点火栓12による着火火炎が伝播可能な最小限の吸気行程燃料噴射量である。
燃料噴射量がQ_(S)より大きくかつQ_(H)より小さい負荷領域においては、全燃料噴射量Qを圧縮行程と吸気行程とに分割して噴射し、圧縮行程燃料噴射量は負荷によらず一定とし吸気行程燃料噴射量は負荷の増大に伴って増大せしめられる。
燃料噴射量がQ_(H)より大きい負荷領域においては、燃料噴射量が多いため吸気行程噴射によって形成されるシリンダ室内の予混合気の濃度が着火に十分なほど濃いため、着火のための圧縮行程噴射をやめて、要求燃料噴射量の全量を空気行程において噴射することとしている。Q_(H)はシリンダ室内に燃料が均質に拡散した場合にも点火栓により着火可能な均質混合気を形成可能な最小限吸気行程燃料噴射量である。
第4図には、第3図の燃料噴射制御パターンを負荷とクランク角との関係で表わした図を示す。
再び第2図を参照すると、中負荷付近Q_(S)より低い負荷領域においては、圧縮行程後期に燃料噴射弁9から燃焼室20に向かって要求噴射量の全量が噴射される。燃料噴射時期は遅くされ、このため大部分の燃料は深皿部22内に噴射される。深皿部22内壁面に付着した燃料は蒸発霧化し、燃焼室20内に可燃域を含む濃淡のある混合気層を形成する。この混合気層の一部が点火栓12により点火され、主に深皿部22内で良好な燃焼が完了する。
中負荷付近Q_(S)より高くQ_(H)より低い負荷領域においては、第5図に示されるように、吸気行程初期(第5図(a))に吸気行程噴射が実行され、燃料噴射弁9から燃焼室20を指向して燃料が噴射される。燃料噴射Fは主に浅皿部21に衝突し、その一部はシリンダ室4中に反射し、他の一部は浅皿部21の壁面に付着し壁面からの加熱により蒸発霧化する。これらの燃料は、吸入渦流SWおよび吸気流の乱れRによって吸気行程から圧縮行程に至る間に予混合気Pが形成される(第5図(b))。この予混合気Pの空燃比は、着火火炎が伝播できる程度の空燃比とされる。吸入渦流SWが強い場合には、シリンダ室4外周付近が濃く、中心付近が薄くなるような予混合気が形成される。
なお、吸気行程噴射時期を早めて、ピストン3がより上死点に近い位置にあるときに燃料を噴射すると、大部分の燃料は深皿部22内に噴射され、大部分の燃料が深皿部22内で予混合気化される。
続いて圧縮行程後期(第5図(c))に圧縮行程噴射が実行され、大部分の燃料が深皿部22内に噴射される。深皿部22内壁面に付着した燃料は、壁面および圧縮空気からの加熱により気化し、渦流SWにより拡散混合し、可燃域を含む濃淡のある不均一混合気層が形成される。この混合気層の一部が点火栓12により点火され、不均一混合気層の燃焼が進行する(第5図(d))。この燃焼により形成された火炎Bが深皿部22内で発達する過程で、周辺の予混合気に伝播し、さらに逆スキッシュ流Sにより、深皿部22外まで燃焼を進行させる。
なお圧縮行程噴射時期を早め、燃料を浅皿部21と深皿部22の両方に噴射する場合には、火炎が浅皿部21と深皿部22とに広く分布し、予混合気への火炎の伝播をより容易にすることができる。
ところでこのような内燃機関では、機関冷間時においてはシリンダ内の温度、例えば燃焼室20の壁温が低いために、シリンダ内に噴射された燃料の蒸発が悪化し、このため着火および火炎伝播に必要な混合気の形成が不十分となり、良好な着火および燃焼が得られないという問題を生ずる。
そこで本実施例では機関暖機前のような機関冷間時には圧縮行程燃料噴射量を増量せしめるようにしている。この圧縮行程燃料噴射量の増量には、圧縮行程噴射すべき負荷領域の増大も含む。
これによって着火に必要な混合気を形成することができ、シリンダ内が低温時であっても良好な着火を得ることができる。また、発生火炎からの伝熱によって燃料の蒸発を促進させることができ、これによって良好な燃焼を得ることができる。
第6図にはシリンダ内低温時における燃料噴射パターンの第1の実施例を示す。通常時における燃料噴射パターン(第4図参照)と比較すると、斜線部で示すように、Q_(H)以上の負荷領域においても圧縮行程噴射が実行され、Q_(H)以上の負荷領域においては圧縮行程噴射量が増量されたことになる。圧縮行程噴射量の増量分だけ吸気行程噴射の噴射量は減量せしめられる。なおQ_(H)以上の負荷領域における圧縮行程燃料噴射量は、Q_(S)以上Q_(H)未満の負荷領域の圧縮行程燃料噴射量と等しい。
第1の実施例の噴射パターンを実行するためのルーチンを第7図に示す。このルーチンは一定クランク角毎の割込みによって実行される。第7図を参照すると、まずステップ60においてアクセル踏込み量と機関回転数とのマップから全燃料噴射量Qが計算される。次いでステップ61において全燃料噴射量Qと機関回転数とのマップから圧縮行程燃料噴射量Q_(C)が計算される。ステップ62では圧縮行程燃料噴射Q_(C)が0か否か、すなわち全燃料噴射量がQ_(H)以上か否か判定される。Q_(C)≠0の場合、すなわちQ<Q_(H)の場合には、ステップ67に進み、吸気行程燃料噴射量QIが次式から計算され、本ルーチンを終了する。
Q_(I)=Q-Q_(C)
方、Q_(C)=0、すなわちQ≧Q_(H)の場合には、ステップ63に進み、機関冷却水温TWが70℃以上か否か、すなわち機関冷間時か否か判定される。TW<70℃の場合、すなわち機関冷間時においては、ステップ66に進み圧縮行程燃料噴射量Q_(C)が例えば5mm^(3)とされる。すなわち、Q≧Q_(H)であっても機関冷却水温TW<70℃であれば、圧縮行程噴射が実行される。次いでステップ67で吸気行程燃料噴射量Q_(I)が計算される。
第8図には機関冷間時における燃料噴射パターンの第2の実施例を示す。この実施例では、斜線で示すように、機関冷間時においては、Q_(H)以上Q_(M)下の負荷領域においても圧縮行程噴射が実行される。その他については第6図に示す燃料噴射パターンと同様である。」(第3欄16行ないし第6欄27行)

(2)引用文献記載の発明
上記(1)ア.及びイ.の記載事項並びに図面を総合すると、引用文献には次の発明が記載されている。

「筒内直接噴射式火花点火機関において、
機関冷間時の、圧縮行程噴射による燃焼、吸気行程噴射による燃焼、及び、吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる燃焼の、3つの燃料噴射パターンでの、
前記圧縮行程噴射による燃焼での中負荷付近Q_(S)より低い負荷領域と、前記吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる燃焼での中負荷付近Q_(S)より高くQ_(M)より低い負荷領域と、前記吸気行程噴射による燃焼でのQ_(M)より大きい負荷領域とについて、各負荷領域を設定し、
機関冷間時に、前記設定した負荷領域に基づいて、前記中負荷付近Q_(S)より低い負荷領域で、前記圧縮行程噴射による燃焼を行わせ、前記中負荷付近Q_(S)より高くQ_(M)より低い負荷領域で、前記吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる燃焼を行わせ、前記Q_(M)より大きい負荷領域で、前記吸気行程噴射による燃焼を行わせる筒内直接噴射式火花点火機関の電子制御ユニット30。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「筒内直接噴射式火花点火機関」は、その技術的意義からみて、本願発明における「直噴火花点火式内燃機関」に相当し、以下同様に、「圧縮行程噴射による燃焼」は「圧縮行程噴射による成層燃焼」に、「吸気行程噴射による燃焼」は「吸気行程噴射による均質燃焼」に、「吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる燃焼」は「吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる二度噴射燃焼」に、「燃料噴射パターン」は「燃焼方式」に、「中負荷付近Q_(S)より低い負荷領域」は「低負荷域」に、「中負荷付近Q_(S)より高くQ_(M)より低い負荷領域」は「中負荷域」に、「Q_(M)より大きい負荷領域」は「高負荷域」に、「負荷領域」は「負荷範囲」に、「電子制御ユニット30」は「制御装置」に、それぞれ相当する。

よって、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「直噴火花点火式内燃機関において、
圧縮行程噴射による成層燃焼、吸気行程噴射による均質燃焼、及び、吸気行程噴射と圧縮行程噴射とによる二度噴射燃焼での、
3つの燃焼方式での、前記成層燃焼での低負荷域と、前記二度噴射燃焼での中負荷域と、前記均質燃焼での高負荷域とについて、各負荷範囲を設定し、
前記設定した負荷範囲に基づいて、前記低負荷域で、前記成層燃焼を行わせ、前記中負荷域で、前記二度噴射燃焼を行わせ、前記高負荷域で、前記均質燃焼を行わせる直噴火花点火式内燃機関の制御装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明は、そもそも、「排気通路に排気浄化用の触媒を備える直噴火花点火式内燃機関」に関するものであって、「触媒の暖機が要求されている時の」、「エンジン負荷-HC排出量特性を比較して」、「3つの燃焼方式でのHC排出量のうち」、それぞれでの「HC排出量が最小となる」、「各負荷範囲を設定」するのに対して、引用文献記載の発明は、本願発明における「直噴火花点火式内燃機関」に相当する「筒内直接噴射式火花点火機関」に関するものであるものの、「排気通路に排気浄化用の触媒」を備えるものか不明であるから、「機関冷間時」が「触媒の暖機が要求されている時」を意味するか不明であり、また、「エンジン負荷-HC排出量特性」を比較して、本願発明における3つの「燃焼方式」に相当する3つの「燃料噴射パターン」での「HC排出量」のうち、それぞれでの「HC排出量」が最小となる、本願発明における各「負荷範囲」に相当する各「負荷領域」を設定するかも不明である点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。
そもそも、「直噴火花点火式内燃機関」を実施する際に、「排気通路に排気浄化用の触媒」を備えることは、本願出願時の技術常識に照らして、当業者に明らかである。
そして、排気通路に排気浄化用の触媒を備える直噴火花点火式内燃機関において、触媒の暖機が要求されている時に、HC排出量を小さくすることは、周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2000-54881号公報の段落【0007】、【0019】ないし【0058】並びに図1ないし5または特開2001-73913号公報の段落【0008】、【0010】及び【0020】ないし【0050】並びに図1ないし7、9及び13ないし15等参照。)である。
ここで、排気通路に排気浄化用の触媒を備える直噴火花点火式内燃機関における機関冷間時と、触媒の暖機が要求されている時とがほぼ重なることも、技術常識(例えば、上記特開2000-54881号公報または特開2001-73913号公報等参照。)である。
また、各燃焼方式に応じたエンジン負荷-HC排出量特性を比較することも、周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2000-54882号公報の段落【0054】ないし【0060】並びに図5及び6または特開2001-336435号公報の段落【0044】及び図6等参照。)である。
さらに、HC排出量を小さくする際に、各燃焼方式に応じたエンジン負荷-HC排出量特性を比較して、それぞれでのHC排出量が最小となるように各負荷範囲を設定することも、当業者が適宜設定し得る設計的事項である。
そうすると、引用文献記載の発明における「機関冷間時」の、3つの「燃料噴射パターン」での、各「負荷領域」の設定について、上記周知技術2を考慮しながら、上記周知技術1を採用し、「排気通路に排気浄化用の触媒を備える直噴火花点火式内燃機関」における「触媒の暖機が要求されている時の」、3つの「燃焼方式」での「HC排出量」のうち、「エンジン負荷-HC排出量特性」を比較して、それぞれでの「HC排出量」が小さくなる各「負荷範囲」を設定することとし、その際、「HC排出量」が小さくなる場合として、「HC排出量」が最小となる場合をも想定して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願発明を全体としてみても、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-16 
結審通知日 2009-10-20 
審決日 2009-11-04 
出願番号 特願2003-357751(P2003-357751)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 祐介畔津 圭介  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 志水 裕司
加藤 友也
発明の名称 直噴火花点火式内燃機関の制御装置  
代理人 笹島 富二雄  

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