• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1208937
審判番号 不服2008-4119  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2009-12-09 
事件の表示 平成 9年特許願第336505号「給水管分岐用の回転式ヘッダ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 2日出願公開、特開平11-148588〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年11月19日(優先権主張、平成9年9月12日)の出願であって、平成20年1月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月21日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年3月21日付で手続補正書が提出されたものである。

2.平成20年3月21日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「直管部の一端を差し込み口、他端を受け口とし、中間の一側に管接続部を一体に形成してなるT字管を一部材からなるヘッダ単体とし、上記差し込み口の外周面において、端部寄りに1乃至複数条のパッキンの陥入凹溝を環設すると共に、それより中間寄りの一段高い段部に抜止めリングの嵌入溝を環設する一方、上記受け口の内周面の上記段部と対応する段部の端部寄りに抜止めリングの嵌入溝を環設し、上記陥入凹溝にパッキンを介装すると共に、上記差し込み口及び受け口が同一構成である隣接ヘッダ単体の差し込み口の嵌入溝と前記ヘッダ単体の受け口の嵌入溝とにより両ヘッダ単体間に跨って形成される嵌入溝に抜止めリングを介装して、互いに隣接するヘッダ単体を水密、且つ回転可能に順次接続して嵌着したことを特徴とする給水管分岐用の回転式ヘッダ。」
と補正された。
上記補正は、実質的に請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「嵌入溝に設けた抜止めリング」、及び「パッキン」に関し、「差し込み口の外周面において、端部寄りに1乃至複数条のパッキンの陥入凹溝を環設すると共に、それより中間寄りの一段高い段部に抜止めリングの嵌入溝を環設する一方、受け口の内周面の上記段部と対応する段部の端部寄りに抜止めリングの嵌入溝を環設し、上記陥入凹溝にパッキンを介装すると共に、上記差し込み口及び受け口が同一構成である隣接ヘッダ単体の差し込み口の嵌入溝とヘッダ単体の受け口の嵌入溝とにより両ヘッダ単体間に跨って形成される嵌入溝に抜止めリングを介装して、互いに隣接するヘッダ単体を」嵌着したと限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-208674号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体主として水等の液体を分流させるために、水道等に用いる分岐管の構成単位管に関するものである。」
・「【0007】
【作用】接続ナットと接続筒との間に生じる空隙内に、隣接する他の構成単位管の雄螺子筒を係合するようにして、接続ナットを該雄螺子筒に螺合締付けることによって適宜数の構成単位管は接続されて、周面に適宜数の分路管接続用の開口部を備えた分岐管を得られ、また、接続筒は、接続ナットないし接続した他の構成単位管の雄螺子に対して自由に回動でき、この結果、開口部の位置を自在に決められる。」
・「【0009】図中、1は構成単位管で、構成単位管1は、周面に分路管接続用の開口部2を構成する雌螺子筒3を設けた主体4の一端に雄螺子筒5を、該一端に対応する他の一端に接続筒6をそれぞれ設けて構成したものである。
【0010】前記雄螺子筒5の内周面7には係合溝8を凹設し、この係合溝8にゴム製のシールリング9を係合して前記内周面7より突設してある。
【0011】前記接続筒6は、隣接する他の構成単位管1の前記雄螺子筒5の内径とほぼ一致する外径を備え、該隣接する他の構成単位管の雄螺子筒5の前記シールリング9が外周面10に接して取り囲み、このシールリング9の接続筒6外周面に対する接触関係によって液体漏れは防止されるようになっている。
【0012】接続筒6のやや基部側の外周面10部には係止溝11を凹設し、該係止溝11にステンレス製のCリング12を嵌合係止し前記外周面10より突設し、このCリング12によって、接続筒6を貫通させるようにして該接続筒6に組付けた接続ナット13の小径部14を係止し、接続ナット13は前記接続筒6に回動自在に組付け、大径部15の内周面に、隣接する他の構成単位管1の雄螺子筒5に螺合する雌螺子16を刻設したものである。
【0013】しかして、接続筒6と接続ナット13間に生じる空隙17に隣接する他の構成単位管1の雄螺子筒5を係合するようにして接続ナット13を雄螺子筒5に螺合締付けて、適宜数の構成単位管1,……を順次接続することによって分岐管Aを得られる。」
また、図1には、以下のとおりの開示がある。
・主体4の一端を接続筒6、他端を雄螺子筒5とし、中間の一側に雌螺子筒3を一体に形成してなるT字管を構成単位管1としている。
・雄螺子筒5の外周面には、雄螺子が刻設されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「主体4の一端を接続筒6、他端を雄螺子筒5とし、中間の一側に雌螺子筒3を一体に形成してなるT字管を構成単位管1とし、上記雄螺子筒5の内周面7において、1条のシールリング9の係合溝8を凹設すると共に、その外周面には、雄螺子が刻設される一方、接続筒6の外周面に上記雄螺子に螺合する雌螺子16を刻設した接続ナット13を回転自在に組付け、上記係合溝8にシールリング9を係合すると共に、上記接続筒6及び雄螺子筒5が同一構成である隣接する構成単位管1の接続筒6と接続ナット13との間の空隙17に前記構成単位管1の雄螺子筒5を係合するようにして接続ナット13を雄螺子筒5に螺合締付けして、互いに隣接する構成単位管1を液体漏れ防止、且つ開口部2の位置を自在に順次接続して螺着した水道等に用いる分路管分岐用の開口部2の位置を自在に決められる分岐管。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
後者における「主体4」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「直管部」に相当し、以下同様に、「接続筒6」は、「差し込み口」に、「雄螺子筒5」は、「受け口」に、「雌螺子筒3」は、「管接続部」に、「構成単位管1」は、「ヘッダ単体」に、「シールリング9」は、「パッキン」に、「係合溝8」は、「陥入凹溝」に、「凹設する」態様は、「環設する」態様に、「液体漏れ防止」は、「水密」に、「開口部2の位置を自在」は、「回転可能」に、「水道等に用いる分路管分岐用」は、「給水管分岐用」に、「開口部2の位置を自在に決められる分岐管」は、「回転式ヘッダ」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「雄螺子筒5の内周面7において、1条のシールリング9の係合溝8を凹設する」態様と前者の「差し込み口の外周面において、端部寄りに1乃至複数条のパッキンの陥入凹溝を環設する」態様とは、「ヘッダ単体において、1条のパッキンの陥入凹溝を環設する」との概念で共通し、以下同様に、後者の「その(雄螺子筒5)外周面には、雄螺子が刻設される一方、接続筒6の外周面に上記雄螺子に螺合する雌螺子16を刻設した接続ナット13を回転自在に組付け」と前者の「差し込み口の外周面において、」「それ(差し込み口に環設された陥入凹溝)より中間寄りの一段高い段部に抜止めリングの嵌入溝を環設する一方、受け口の内周面の上記段部と対応する段部の端部寄りに抜止めリングの嵌入溝を環設し」とは、「差し込み口において、接続機構を設ける一方、受け口に被接続機構を設け」との概念で、後者の「隣接する構成単位管1の接続筒6と接続ナット13との間の空隙17に前記構成単位管1の雄螺子筒5を係合するようにして接続ナット13を雄螺子筒5に螺合締付けして、互いに隣接する構成単位管1を液体漏れ防止、且つ開口部2の位置を自在に順次接続して螺着した」と前者の「隣接ヘッダ単体の差し込み口の嵌入溝とヘッダ単体の受け口の嵌入溝とにより両ヘッダ単体間に跨って形成される嵌入溝に抜止めリングを介装して、互いに隣接するヘッダ単体を水密、且つ回転可能に順次接続して嵌着した」とは、「隣接ヘッダ単体の差し込み口の接続機構とヘッダ単体の受け口の被接続機構とにより、互いに隣接するヘッダ単体を水密、且つ回転可能に順次接続して固着した」との概念で、それぞれ共通する。
更に、本願補正発明における「一部材からなるヘッダ単体」の技術意義を検討する。
本願明細書の段落【0011】ないし【0013】には、図1に開示のものが、ヘッダ単体(S)が一部材で構成されるものであり、ヘッダ単体(S)は、その直管部の一端を差し込み口、他端を受け口とし、中間の一側に管接続部を形成してなるT字管で、その管接続部1cに軟質管Pを接続するための袋ナット4が外嵌されると共に、嵌入溝2・2’に抜止めリング2aを弾装し、陥入凹溝3にパッキン3aを嵌着していると記載されている。してみると、図1に開示のヘッダ単体は、一部材で構成されるものであるが、袋ナット4、抜止めリング2a、及びパッキン3aが設けられているものである。
次に、本願明細書の段落【0015】には、図2に開示のものが、ヘッダ単体(S’)が二部材で構成されるものであり、ヘッダ単体(S’)は、T字管11と該T字管11の直管部にパッキン13aを介して水密、且つ回転可能に嵌合する芯部材12とからなると記載されている。
これらのことから、ヘッダ単体が、いくつの部材から構成されるかは、例えば、袋ナット、抜止めリング、パッキン等のT字管に設けられた部材を除いたT字管そのものを構成する部材の数によって定められているから、「一部材からなるヘッダ単体」とは、T字管そのものが、一つの部材から構成されているものを意味すると解される。
してみると、後者の「構成単位管1」は、「主体4(本願補正発明の「直管部」に相当。)の一端を接続筒6(本願補正発明の「差し込み口」に相当。)、他端を雄螺子筒5(本願補正発明の「受け口」に相当。)とし、中間の一側に雌螺子筒3(本願補正発明の「管接続部」に相当。)を一体に形成してなるT字管を構成単位管1(本願補正発明の「ヘッダ単体」に相当。)」とするものであって、T字管そのものが、一つの部材から構成されているから、前者の「一部材からなるヘッダ単体」に相当する。
したがって、両者は、
「直管部の一端を差し込み口、他端を受け口とし、中間の一側に管接続部を一体に形成してなるT字管を一部材からなるヘッダ単体とし、上記ヘッダ単体において、1条のパッキンの陥入凹溝を環設すると共に、上記差し込み口において、接続機構を設ける一方、上記受け口に被接続機構を設け、上記陥入凹溝にパッキンを介装すると共に、上記差し込み口及び受け口が同一構成である隣接ヘッダ単体の差し込み口の接続機構と前記ヘッダ単体の受け口の被接続機構とにより、互いに隣接するヘッダ単体を水密、且つ回転可能に順次接続して固着した給水管分岐用の回転式ヘッダ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
陥入凹溝の配置に関し、本願補正発明は、「差し込み口の外周面において、端部寄りに」陥入凹溝を環設するのに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。
[相違点2]
ヘッダ単体と隣接ヘッダ単体との継手構造に関し、本願補正発明は、「差し込み口の外周面において、」「それ(陥入凹溝)より中間寄りの一段高い段部に抜止めリングの嵌入溝を環設する一方、受け口の内周面の上記段部と対応する段部の端部寄りに抜止めリングの嵌入溝を環設し、」「隣接ヘッダ単体の差し込み口の嵌入溝とヘッダ単体の受け口の嵌入溝とにより両ヘッダ単体間に跨って形成される嵌入溝に抜止めリングを介装して、」互いに隣接するヘッダ単体を「嵌着した」のに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。

(4)判断
上記相違点1、及び2について以下検討する。
一般に管を接続するために、一方の管の継手の差し込み口の外周面において、端部寄りにパッキンの陥入凹溝を環設すると共に、それより中間寄りの一段高い段部に抜止めリングの嵌入溝を環設する一方、他方の管の継手の受け口の内周面の上記段部と対応する段部の端部寄りに抜止めリングの嵌入溝を環設し、上記陥入凹溝にパッキンを介装すると共に、上記一方の管の継手の差し込み口の嵌入溝と前記他方の管の継手の受け口の嵌入溝とにより両管間に跨って形成される嵌入溝に抜止めリングを介装して、互いに隣接する管を水密、且つ回転可能に接続して嵌着したものは、周知の技術(以下、「周知の技術事項」という。例えば、特開平4-69486号公報の2頁右下欄8行ないし3頁右下欄2行、及び第1図ないし第6図を参照。特開平9-229259号公報の段落【0024】ないし段落【0035】、段落【0054】、及び図1ないし図4を参照。)である。
したがって、引用発明において、上記周知の技術事項を採用することにより、相違点1、及び2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明、及び上記周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年9月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「直管部の一端を差し込み口、他端を受け口とし、中間の一側に管接続部を一体に形成してなるT字管を一部材からなるヘッダ単体とし、上記差し込み口及び受け口が同一構成である隣接ヘッダ単体の差し込み口と前記ヘッダ単体の受け口とを両者に跨って環設する嵌入溝に設けた抜止めリング及びパッキンを介して互いに水密、且つ回転可能に順次連続して嵌着したことを特徴とする給水管分岐用の回転式ヘッダ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「嵌入溝に設けた抜止めリング」、及び「パッキン」について、「差し込み口の外周面において、端部寄りに1乃至複数条のパッキンの陥入凹溝を環設すると共に、それより中間寄りの一段高い段部に抜止めリングの嵌入溝を環設する一方、受け口の内周面の上記段部と対応する段部の端部寄りに抜止めリングの嵌入溝を環設し、上記陥入凹溝にパッキンを介装すると共に、上記差し込み口及び受け口が同一構成である隣接ヘッダ単体の差し込み口の嵌入溝とヘッダ単体の受け口の嵌入溝とにより両ヘッダ単体間に跨って形成される嵌入溝に抜止めリングを介装して、互いに隣接するヘッダ単体を」嵌着したとの限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-16 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-14 
出願番号 特願平9-336505
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 刈間 宏信渡邉 洋  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 黒瀬 雅一
槙原 進
発明の名称 給水管分岐用の回転式ヘッダ  
代理人 濱田 俊明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ