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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1208938 |
審判番号 | 不服2008-4845 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-28 |
確定日 | 2009-12-10 |
事件の表示 | 特願2007- 25530「駆動装置及びこれを用いた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-191384〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成19年2月5日の出願であって、同年8月16日付け拒絶理由通知に対して、同年10月22日付けで手続補正がされたが、平成20年1月24日付けで拒絶査定され、これに対し、同年2月28日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年3月28日付けで特許請求の範囲および明細書の手続補正がなされたものである。 これに対し、当審において、平成20年6月17日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成21年3月6日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年5月11日付けで回答書を提出した。 当審においてこれを審理した結果、同年6月23日付けで平成20年3月28日付け手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年8月31日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成21年8月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「単一の駆動源と、 前記駆動源により駆動されて回転するウォーム軸と、 前記ウォーム軸と同軸に設けられ、かつ炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材で被覆されている複数のウォームギアと、 前記ウォームギアのそれぞれと潤滑剤を介さずに噛み合うウォームホイールと、 前記ウォームホイールを回転軸の一端に有し、前記ウォームギアの回転により駆動されて回転する、並列して配置された複数の像保持体と、 前記複数の像保持体を帯電する帯電器と、 前記帯電器により帯電された前記複数の像保持体上に露光により形成された潜像を、前記複数の像保持体それぞれで異なる色の現像剤で現像する現像手段と、 該現像手段で現像された像を記録材に転写する転写手段と、 を備えることを特徴とする 画像形成装置。」 3 引用文献 当審における拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-298387号公報(以下、「引用文献」という。)には、図示とともに以下(1)?(5)に示す記載がある。 (1)「複数の回転体が並列配置される画像形成装置において、 単一の駆動源と、 この単一の駆動源に駆動連結されて回転するウォーム軸と、 前記複数の回転体に対応してウォーム軸と同軸に設けられる複数のウォームギアと、 複数の回転体の回転軸に固定され且つ各ウォームギアに噛合するウォームホイールとを備え、 前記ウォーム軸は、一若しくは二つの回転体に対応して複数の分割軸体に分割され、各分割軸体を可撓性連結手段を介して連結したものであることを特徴とする画像形成装置の駆動システム。」(【請求項1】) (2)「本実施の形態において、各画像形成ユニット22(22a?22d)は、中間転写ベルト23の循環方向上流側から順に、例えばブラック用、イエロ用、マゼンタ用、シアン用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、各感光体カートリッジ30と、共通する一つの露光ユニット40とを備えている。ここで、感光体カートリッジ30は、例えば感光体ドラム31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電器(本例では帯電ロール)32と、帯電された感光体ドラム31上に前記露光ユニット40にて露光形成された静電潜像を対応する色トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像する現像器33と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーナ34とを一体的にカートリッジ化したものである。・・・(後略)」(段落【0013】) (3)「また、本実施の形態において、中間転写ベルト23は例えば一対の張架ロール(一方が駆動ロール)231,232間に掛け渡されており、各感光体カートリッジ30の感光体ドラム31に対応した中間転写ベルト23の裏面には一次転写器(本例では一次転写ロール)51が配設され、この一次転写ロール51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像を中間転写ベルト23側に静電的に転写するようになっている。更に、中間転写ベルト23の最下流画像形成ユニット22dの下流側の張架ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写ベルト23上の一次転写像を記録材に二次転写(一括転写)するようになっている。・・・(後略)」(段落【0014】) (4)「また、本実施の形態に係るタンデム型画像形成装置で用いられる感光体ドラムの駆動システムについて説明する。本駆動システムは、図3及び図4に示すように、単一の駆動モータ120(本例では固定設置)を有し、この駆動モータ120の駆動軸120aにはフレキシブルカップリング121を介してウォーム軸(回転伝達軸)122を同軸に駆動連結すると共に、このウォーム軸122のうち各画像形成ユニット22(22a?22d)の感光体ドラム31に対応した部位にはウォームギア125(具体的には125a?125d)を取り付ける一方、前記各感光体ドラム31の一端側には夫々ウォームホイール126(具体的には126a?126d)を同軸に取り付け、各ウォームホイール126と前記各ウォームギア125とを噛合させるようにしたものである。・・・(後略)」(段落【0016】) (5)「(前略)・・・この結果、ウォーム軸122に同軸に設けられているウォームギア125が回転すると共に、これに噛合するウォームホイール126が回転し、各画像形成ユニット22(22a?22d)の各感光体ドラム31が駆動せしめられる。」(段落【0018】) (6)記載(1)における「駆動源」及び「回転体」は、記載(2)ないし(4)及び図1ないし4からみて、それぞれ、「駆動モータ120」及び「感光体ドラム31」に対応するものであると認められる。 (7)引用文献の明細書ならびに図面全体を参酌しつつ、上記(1)ないし(6)を検討すると、引用文献には次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)と認められる。 「単一の駆動モータ120と、 この単一の駆動モータ120に駆動連結されて回転するウォーム軸122と、 ブラック用、イエロ用、マゼンタ用、シアン用のトナー像を形成する画像ユニット22(22a?22d)であって、感光体ドラム31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電器(本例では帯電ロール)32と、帯電された感光体ドラム31上に露光ユニット40にて露光形成された静電潜像を対応する色トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像する現像器33と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーナ34とを一体的にカートリッジ化した感光体カートリッジ30を備えた画像ユニット22(22a?22d)とを備え、 各感光体カートリッジ30の感光体ドラム31に対応した中間転写ベルト23の裏面には一次転写器(本例では一次転写ロール)51が配設され、この一次転写ロール51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像を中間転写ベルト23側に静電的に転写し、更に、中間転写ベルト23の最下流画像形成ユニット22dの下流側の張架ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写ベルト23上の一次転写像を記録材に二次転写(一括転写)するようになっている画像形成装置であって、 前記ウォーム軸122のうち各画像形成ユニット22(22a?22d)の感光体ドラム31に対応した部位にはウォームギア125(具体的には125a?125d)を取り付ける一方、前記各感光体ドラム31の一端側には夫々ウォームホイール126(具体的には126a?126d)を同軸に取り付けた画像形成装置。」 4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「駆動モータ120」,「ウォーム軸122」,「感光体ドラム31」,「帯電器32」,「露光形成」,「静電潜像」,「色トナー」,「現像器33」,「ウォームギア125」及び「ウォームホイール126」は、それぞれ、本願発明の「駆動源」,「ウォーム軸」,「像保持体」,「帯電器」,「露光により形成」,「潜像」,「異なる色の現像剤」,「現像手段」,「ウォームギア」及び「ウォームホイール」に相当する。 (2)引用発明は「感光体ドラム31」及び「現像器33」を有する「感光体カートリッジ30」を備えた「画像ユニット22(22a?22d)」を複数有しているものであるから、「感光体ドラム31」及び「現像器33」をそれぞれ複数有するものであると認められる。よって、引用発明と本願発明は「複数の像保持体」及び「複数の現像手段」を備える点で一致する。 (3)引用発明の「感光体ドラム31」は、図1ないし4からみて、「並列して配置された」ものであると認められることから、引用発明と本願発明とは「並列して配置された複数の像保持体」を備える点で一致する。 (4)引用発明の「各感光体カートリッジ30の感光体ドラム31に対応した中間転写ベルト23の裏面には一次転写器(本例では一次転写ロール)51が配設され、この一次転写ロール51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像を中間転写ベルト23側に静電的に転写し、更に、中間転写ベルト23の最下流画像形成ユニット22dの下流側の張架ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写ベルト23上の一次転写像を記録材に二次転写(一括転写)するようになっている」構成は、複数の「現像器33」により「感光体ドラム31」上で現像されたトナー像を「記録材」に転写する構成であるから、本願発明の「複数の現像手段で現像された像を記録材に転写する転写手段」に相当する。 (5)引用発明における「ウォーム軸122のうち各画像形成ユニット22(22a?22d)の感光体ドラム31に対応した部位にはウォームギア125(具体的には125a?125d)を取り付ける一方、各感光体ドラム31の一端側には夫々ウォームホイール126(具体的には126a?126d)を同軸に取り付けた」構成とは、「ウォーム軸122」に複数の「ウォームギア125」を設けるとともに該「ウォームギア125」のそれぞれと噛み合う複数の「ウォームホイール126」を複数の「感光体ドラム31」の回転軸と「同軸」に取り付けることにより「ウォームギア125」の回転によって「感光体ドラム31」を駆動して回転する構成である。よって引用発明と本願発明とは、「ウォーム軸に設けられた複数のウォームギア」と、「ウォームギアのそれぞれと噛み合うウォームホイール」と、「複数のウォームホイールのそれぞれを回転軸の一端に有し、ウォームギアの回転により駆動されて回転する」構成とを備える点で一致する。 (6)してみると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「単一の駆動源と、 前記駆動源に駆動されて回転するウォーム軸と、 前記ウォーム軸に設けられた複数のウォームギアと、 ウォームギアのそれぞれと噛み合うウォームホイールと、 複数のウォームホイールのそれぞれを回転軸の一端に有し、ウォームギアの回転により駆動されて回転する、並列して配置された複数の像保持体と、 前記複数の像保持体を帯電する帯電器と、 前記帯電器により帯電された前記複数の像保持体上に露光により形成された潜像を異なる色の現像剤で現像する複数の現像手段と、 複数の現像手段で現像された像を記録材に転写する転写手段と、 を備えた画像形成装置。」 一方で、引用発明と本願発明とは以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明の「ウォームギア」は、「炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材」で被覆されているとともに、該「ウォームギア」と「ウォームホイール」とが「潤滑剤を介さずに」噛み合う、との特定を有するものであるのに対し、引用発明の「ウォームギア」には被覆材に関する開示はなく、また、「ウォームギア」と「ウォームホイール」との間に「潤滑剤」を介するものであるかどうかについても開示がなく、上記特定を有さない点。 5 判断 上記相違点について検討する。 (1)画像形成装置のような、人間の執務空間に置かれる装置について、製造コストや環境への影響、装置自体に対する悪影響等を考慮して、使用する駆動伝達歯車列を、潤滑剤を介さずに噛み合うようにすると言う課題は、例えば特開平5-297781号公報(特に段落【0005】参照。),特開平9-177945号公報(特に段落【0002】参照。),特開2003-207027号公報(特に段落【0002】参照。)等に記載されているように、本願の出願前において周知のものである。 したがって、「画像形成装置」である引用発明について、製造コストや環境への影響、装置自体に対する悪影響を考慮して、その駆動伝達歯車列を潤滑剤を介さずに噛み合うようにしようとすることは、当業者にとって十分な動機付けがあったものと認めざるを得ない。 (2)そして、回転駆動力を伝達する歯車等により構成される駆動伝達装置という技術分野において、潤滑剤のない、もしくは、潤滑剤の少ない状況下においても高い信頼性で駆動を伝達するために、ダイヤモンドライクカーボンやアモルファスカーボン等の炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材で駆動伝達装置の摺動部品を被覆する技術は、特開平11-18631号公報(特に段落【0011】,【0040】参照。)、特開2002-235748号公報(特に段落【0045】?【0046】参照。)、特開2004-11845号公報(特に請求項4,段落【0030】?【0031】参照。)等に記載されているように、本願の出願前において周知のものである。 (3)したがって、引用発明において、「画像形成装置」が使用される環境を考慮して、使用する駆動伝達歯車列を潤滑剤を介さずに噛み合うようにするという、上記周知の課題を解決するために、炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材で駆動伝達装置の摺動部品を被覆する、という周知技術を採用し、駆動伝達部材であるウォームギア等の歯車を炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材で被覆するように設計することは、当業者ならば容易に想到することができたものである。 そして、上記周知技術である、炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材で駆動伝達装置の摺動部品を被覆する技術を採用した場合には、より信頼性の高い駆動伝達が可能となるのであるから、該構成を採用することによる効果も、当業者が周知技術から予測することができた程度の事項である。 (4)これに対し、審判請求人は平成21年8月31日付け意見書にて、概略以下アないしウのとおり主張して、本願発明は進歩性を有するものである旨主張している。 ア 引用発明の解決しようとする課題は、本願発明とは異なる イ 周知技術として上げられた各文献は、画像形成装置において本願発明 が解決しようとする課題である、「記録材に転写される画像の濃度む ら(画像むら)の発生が抑制される」画像形成装置を得る、というも のではなく、該課題を解決しようとする記載も示唆もない ウ 周知技術として上げられた各文献は、いずれもウォームホイールとウ ォームギアを用いるものではない。 (5)上記審判請求人の主張について検討する。 ア 引用発明と本願発明の解決しようとする課題は異なるものではあるものの、引用文献には「ところで、上述した駆動システムにあっては、ウォームギアに起因して感光体ドラムが速度変動するという技術的課題が見られる。」(段落【0005】参照。)という記載があることから、画像形成装置において駆動伝達機構の果たす重要性には着目していたものであると認められる。 そして、上記(1)に示したように、画像形成装置において駆動伝達機構に対し、駆動伝達歯車列を潤滑剤を介さずに噛み合うようにする構成としようとする十分な動機付けが当業者に存在したと認められるものである以上、引用発明と本願発明の解決しようとする課題とが完全には一致しないものであるものであったとしても、それのみで本願発明の進歩性が肯定されるものであるとは認められない。 イ 周知技術の例示として上げた各文献は、駆動伝達機構の駆動伝達歯車列を潤滑剤を介さずに噛み合うように設計すること、及び、その具体的な構成として、炭素原子同士がSP3混成軌道によって結合している構造を有する被覆材で駆動伝達装置の摺動部品を被覆するように設計することが本願出願前に周知のものであり、当業者が当然認識していたものであることを示すものである。 これらの技術課題およびその解決手段は、画像形成装置に限定されるものではなく、人間の執務空間に置かれる装置に使用される駆動伝達機構全体に共通するものであるから、本願発明の解決しようとする課題とは異なるものであっても、当業者が本願発明に至る十分な動機付けとなり、これらを組み合わせることを容易に想到させるものである。 ウ 上記した周知技術に示された技術課題およびその解決手段は、ウォームホイールとウォームギアのみならず、人間の執務空間に置かれる装置に使用される駆動伝達機構全体に共通するものである。よって、具体的な駆動伝達機構の構成が異なるからといって、引用発明と周知技術とを組み合わせを阻害するものではない。 エ 上記アないしウのとおりであるから、上記審判請求人の主張は受け入れられるものではなく、上記<相違点>の構成は、引用発明及び周知課題並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであると判断せざるを得ない。 (6)小括 以上のとおりであるから、上記<相違点>にて示した本願発明を特定する事項は、審判請求人の主張を参酌しても、当業者が引用発明及び周知課題並びに周知技術に基づいて容易に想到することができたものであり、かつ、その作用効果も予測することができた程度のものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-01 |
結審通知日 | 2009-10-06 |
審決日 | 2009-10-21 |
出願番号 | 特願2007-25530(P2007-25530) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畑井 順一 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
上田 正樹 伏見 隆夫 |
発明の名称 | 駆動装置及びこれを用いた画像形成装置 |
代理人 | 青谷 一雄 |
代理人 | 成瀬 勝夫 |
代理人 | 小泉 雅裕 |
代理人 | 鳥野 正司 |
代理人 | 中村 智廣 |