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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1208948 |
審判番号 | 不服2008-7566 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-27 |
確定日 | 2009-12-09 |
事件の表示 | 特願2002- 35192「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月22日出願公開、特開2003-233811〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年2月13日の出願であって、平成19年10月4日付けの拒絶理由通知の後、平成20年2月19日付けで拒絶査定されたものである。そして、平成20年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年4月24日付けで手続補正がなされた。これに対し、平成21年6月18日付けで、当審において拒絶理由を通知したところ、同年8月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 第2.本願発明の認定 本願の発明は、平成21年8月20日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は次のとおりである。 「 【請求項1】 入力画像を中間調再現処理する画像処理装置であって、 縦M×横N個の要素で構成される閾値マトリクスを設定するマトリクス設定手段であり、閾値関数を定義するための二つの閾値UL(e)、LL(e)を各要素毎に格納する閾値マトリクスを設定するマトリクス設定手段と、 前記入力画像における画素位置より、前記閾値マトリクス内の該当する要素を特定する要素特定手段と、 特定された前記要素から前記二つの閾値を取り出し、取り出された前記二つの閾値を用いて定義される閾値関数を用いて、入力画素値を多値化して多値化信号を生成する多値化信号生成手段とを有し、 前記多値化信号生成手段は、前記多値化信号として、前記入力画素値が前記閾値の最小値LL(e)よりも小さい場合には定数値Doutminを出力し、前記入力画素値が前記閾値の最大値UL(e)よりも大きな場合には定数値Doutmaxを出力し、前記入力画素値が前記閾値の最小値以上且つ前記閾値の最大値以下であった場合には、次の式で表される線形補間演算を行なって前記2つの定数値DoutminとDoutmaxとの間の補間値を出力することを特徴とする画像処理装置。 補間値DoutH=Doutmin+[Din-LL(e)]×(Doutmax-Doutmin)/[UL(e)-LL(e)] 」 (以下、これを本願発明という。) 第3.引用刊行物記載の発明 これに対し、当審の拒絶理由通知で引用した本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1.特開2001-326814号公報には、図1ないし図7とともに、次の(ア)?(オ)の記載がある。 (ア)「【請求項1】ディザマトリクスを用いて階調変換を行う画像処理装置であって、 注目画素が、ディザマトリクス内のどのセルに相当するかを判断する第1判断手段と、 (中略) を有することを特徴とする画像処理装置。」(【請求項1】) (イ)「【0015】(第1の実施の形態)図1は、本発明に係る画像処理装置の第1の実施の形態としてのレーザビームプリンタの内部構成を示すブロック図である。 (中略) 【0019】ROM110には、また、解像度変換のために用いられる、図2のようなディザマトリクスが格納されている。 【0020】図2において、(a)は、ディザマトリクスの各セルに定義される閾値を示し、(b)は、ディザマトリクスに含まれるセルに対する印字の順番を示し、(c)は、各セル内のドットの開始位置を示し、(d)は、ディザマトリクスの各セルに割り当てられた、印字開始位置を示すデータを示す。ここでは、例として、4×4画素のディザマトリクスについて説明する。 【0021】図2(a)のように、ディザマトリクスの各セルには、最小閾値と最大閾値が割り当てられている。本実施の形態では、8ビット255階調の画像データが入力されるものとし、かつ、各セル(画素)は、その内部に占めるドットの割合によって16階調の濃度を表現できるものとする。 【0022】各セルにおいては、その最小閾値と、最大閾値との間に、入力画像データの値が含まれているかどうかを判断し、入力画像データが最小閾値よりも小さい場合には、そのセルにはドットが存在しないことになり、入力画像データが最大閾値よりも大きい場合には、そのセル全体にドットが存在することになる。最小閾値と、最大閾値との間に、入力画像データの値が含まれている場合には、入力画像データの値と最小閾値との差に応じた大きさのドットがセル内に形成される。」 (ウ)「【0028】本実施の形態においては、図2に示すようにディザ閥値マトリクスサイズを4×4サイズとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意のマトリクスサイズでよい。 【0029】図3は、図2に示すディザマトリクスを用いて画像データを処理する手順について説明するフローチャートである。」 (エ)「【0031】次に、ステップS36で、注目画素の濃度値とステップS34で判断されたセルの閾値(最小閾値及び最大閾値)とを、比較する。 【0032】ステップS37で画素濃度値が最小濃度値よりも小さい場合には、ステップS38に進み、パルス幅0が選択される。ステップS39で画素濃度値が最大閾値を越える値の時は、ステップS40に進み、フル点灯値としてのパルス幅16が記憶される。 【0033】それ以外の場合には、ステップS41において、画素濃度値から、最小濃度値ー1が減算されパルス幅が算出される。パルス幅が算出されると、次にステップS42において、パルス幅情報に、ステップS35で判断されたドット開始位置情報が付加され、ステップS43で、一時保存の為にページメモリ上に書き込まれる。」 (オ)「【0039】(第2の実施の形態)次に図5及び図6を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。 【0040】上記第1の実施の形態では、4×4のディザマトリクスを用いており、更に、どの中間値入力に対しても、ディザ内の単一の画素だけがパルス幅成長を行い、他の画素は飽和値ないしパルス無しの状態になっていた。しかし、本実施の形態では、図5のような、5×5サイズであって、かつ、網点の濃度重心が動かないように複数のセルが同時にドットを成長させるような、ディザマトリクスを用いる。また、電子写真プロセスの濃度特性にあわせ、各セルに割り当てられる階調数が異なる。具体的には、成長開始点近傍の画素は小さい濃度値に対して大きなパルス幅を出力し、すぐに飽和値に達する。成長開始点から離れた画素に対応するテーブルはかなり大きな濃度入力値に対してもパルスを出力せず、なかなか飽和値には達しない。これにより、視覚的になめらかなグラデーションをプリントできる。」 上記引用刊行物1の記載及び図面を総合してみると、特に前掲(ア)、(イ)の記載及び図1によると、上記刊行物1には、ディザマトリクスを用いて階調変換を行う画像処理装置であって、入力画像データの注目画素がディザマトリクス内のどのセルに相当するかを判断し、入力画像データに対しディザ処理を行うことによって多階調の階調変換を行うようにした画像処理装置が開示されている。 また、前掲(イ)、(エ)の記載及び図2-3によると、1実施形態として4×4のディザマトリクスが例示され、上記ディザマトリクスの各セルには、最小閾値と最大閾値が割り当てられており、8ビット255階調の画像データが入力されるものであり、各セルにおいては、その最小閾値と最大閾値との間に入力画像データの値が含まれているかどうかを判断し、入力画像データが最小閾値よりも小さい場合には、そのセルにはドットが存在しないよう、パルス幅0が選択され、入力画像データが最大閾値よりも大きい場合には、そのセル全体にドットが存在するよう、フル点灯値としてのパルス幅16が選択され、最小閾値と最大閾値との間に入力画像データの値が含まれている場合には、入力画像データの値と最小閾値との差に応じた大きさのドットがセル内に形成されるように、画素濃度値から、最小濃度値-1が減算され、画素濃度値に応じた1?16の間のパルス幅が算出されるようになっているものと解される。画素濃度値というのは、入力画像データを表す注目画素の入力画素値のことであり、最小濃度値というのは、この場合、最小閾値のことであることは明らかであるから、上記の減算は、「入力画素値-(最小閾値-1)」と表しても同じことである。 したがって、まとめると、上記刊行物1には、次のような画像処理装置の発明が記載されていると認められる。 「4×4のディザマトリクスを用いて階調変換を行う画像処理装置であって、ディザマトリクスの各セルに最小閾値と最大閾値を割り当てる手段と、8ビット255階調のデータを入力画像データとし、注目画素がディザマトリクス内のどのセルに相当するかを判断する判断手段を備え、各セルにおいて、その最小閾値と最大閾値との間に入力画像データの値が含まれているかどうかを判断し、入力画像データが最小閾値よりも小さい場合には、パルス幅0を選択し、入力画像データが最大閾値よりも大きい場合には、パルス幅16を選択する手段と、最小閾値と最大閾値との間に入力画像データの値が含まれている場合には、入力画像データの値と最小閾値との差に応じたパルス幅を、「入力画素値-(最小閾値-1)」によって算出する手段とを備えた画像処理装置。」 (以下、これを引用発明という。) 第4.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、どちらも入力画像を中間調再現処理する画像処理装置に変わりはなく、引用発明において選択され又は算出される0?16の範囲のパルス幅に対応する数値は、入力画像データ、つまり入力画素値に応じて生成された多値化信号に相当するものであるから、引用発明も本願発明と同様、入力画素値を多値化して多値化信号を生成し出力する多値化信号生成手段を備えているといえる。 また、大小二つの閾値(最小閾値及び最大閾値、すなわち本願発明でいうLL(e)、UL(e)に相当するもの)を、各要素(セル)毎に格納する閾値マトリクスを設定する手段を備え、この二つの閾値を用いて、入力画素値を多値化する点でも両者は共通しているといえる。 また、引用発明においては、閾値関数という言葉は出てこないが、注目画素の濃度値とセルの大小二つの閾値とを比較し、その大小関係に応じてパルス幅を選択したり、算出したりするようになっていることからみて、実質的には、本願発明と同様、入力画像における画素位置より、閾値マトリクス内の該当する要素を特定し、その特定した要素から二つの閾値を取り出し、該二つの閾値を用いて閾値関数を定義し、その関数を用いて入力画素値に応じた多値化信号を生成し出力する技術的思想を開示しているものととらえることができる。 さらに、引用発明において、パルス幅が「入力画素値-(最小閾値-1)」によって算出されるということは、図2のとおり、各セルの最小閾値と最大閾値との差が15になっている点からみて、入力画素値が二つの閾値の間にある場合には、入力画素値に応じて、最小パルス幅と最大パルス幅に対応する定数値0と16の間を線形補間することによって、1?16の補間値を算出し、多値化信号として出力するようになっていると解される。すなわち、線形補間演算を行っているという点でも両者は共通するものである。 そして、引用発明における定数値0は、入力画像データが最小閾値よりも小さいときに選択され出力される値であり、定数値16は、入力画像データが最大閾値よりも大きいときに選択され出力される値でもあるから、それぞれ本願発明における記号Doutmin、Doutmaxで表される定数値に相当しているといえる。 また、引用発明において、注目画素がディザマトリクス内のどのセルに相当するかを判断する判断手段は、本願発明でいう要素特定手段の機能を果たしている。 したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点をまとめると、次のとおりである。 ( 一致点 ) 「 入力画像を中間調再現処理する画像処理装置であって、 複数の要素で構成される閾値マトリクスを設定するマトリクス設定手段であり、閾値関数を定義するための二つの閾値UL(e)、LL(e)を各要素毎に格納する閾値マトリクスを設定するマトリクス設定手段と、 前記入力画像における画素位置より、前記閾値マトリクス内の該当する要素を特定する要素特定手段と、 特定された前記要素から前記二つの閾値を取り出し、取り出された前記二つの閾値を用いて定義される閾値関数を用いて、入力画素値を多値化して多値化信号を生成する多値化信号生成手段とを有し、 前記多値化信号生成手段は、前記多値化信号として、前記入力画素値が前記閾値の最小値LL(e)よりも小さい場合には定数値Doutminを出力し、前記入力画素値が前記閾値の最大値UL(e)よりも大きな場合には定数値Doutmaxを出力し、前記入力画素値が前記閾値の最小値以上且つ前記閾値の最大値以下であった場合には、線形補間演算を行なって前記2つの定数値DoutminとDoutmaxとの間の補間値を出力するようにした画像処理装置。」である点。 そして、相違点は以下のとおりである。 ( 相違点1 ) 引用発明は、4×4の要素で構成される閾値マトリクスを設定するのに対し、本願発明は、縦M×横N個の要素で構成される閾値マトリクスを設定する点。 ( 相違点2 ) 線形補間演算による補間値が、引用発明では、「入力画素値-(最小閾値-1)」という式によって算出されるのに対し、 本願発明では、DoutH=Doutmin+[Din-LL(e)]×(Doutmax-Doutmin)/[UL(e)-LL(e)]という一般化した式によって算出される点。 第5.相違点についての判断 以下、上記相違点について検討する。 ( 相違点1について ) 引用発明では、4×4の閾値マトリクスが例として挙げられているが、前掲(ウ)にもあるように、ディザ処理に用いる閾値マトリクスを一般に任意の縦M×横N個の複数の要素からなるマトリクスとすることは周知技術に過ぎないから、この点は格別な差異ではない。 ( 相違点2について ) 引用発明における式は、前掲(イ)、(エ)の記載及び図2からみて、入力画素値が大小二つの閾値の間にあるときは、入力画素値が最小閾値を超えた分に比例する数値を、定数値0と定数値16との間を線形補間することによって、1?16の数値、すなわち16段階の補間値として出力するようにしたものと解される。 一方、本願発明における式もまた、入力画素値が大小二つの閾値の間にあるときは、定数値Doutminと定数値Doutmaxとの間を線形補間することにより多階調の補間値として出力しようとしたものであるから、両者とも二つの定数値の間を線形補間して出力する点で差異はない。 そして、定数値Doutminと定数値Doutmaxとの間を線形補間する数式を一般化した形で表すと、本願発明における、DoutH=Doutmin+[Din-LL(e)]×(Doutmax-Doutmin)/[UL(e)-LL(e)]の式になることは、当業者に自明である。 したがって、相違点2についても特段の創造力を要すことはなく、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 ( 付記 ) 審判請求人の意見書での主張について 審判請求人は、当審で通知した拒絶理由に対する意見書において、引用刊行物1の図3に基づいて、引用発明は演算式を用いるものではないと主張しているが、同図3について説明している段落【0033】には、減算によりパルス幅が算出されることが記載されている。 また、本願発明は、閾値マトリクスの各要素における二つの閾値の幅が異なっても、補間演算式を用いることで適正な多値信号を出力できると主張しているが、二つの閾値の幅が異なる例も、前掲(オ)のとおり、引用刊行物1の図5に別の実施形態として示されており、この場合でも、線形補間を行うと、補間値が本願発明のような一般化した補間演算式で表されることは当業者に自明である。 よって意見書の主張は採用できない。 |
審理終結日 | 2009-09-15 |
結審通知日 | 2009-09-29 |
審決日 | 2009-10-19 |
出願番号 | 特願2002-35192(P2002-35192) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 真木 健彦、松野 広一、脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
大野 雅宏 千葉 輝久 |
発明の名称 | 画像処理装置 |