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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1209132
審判番号 不服2008-4515  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-25 
確定日 2009-12-24 
事件の表示 特願2003- 85638「光ファイバケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-294680〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年3月26日に特許出願したものであって、平成19年5月22日付けで手続補正がなされたが、平成20年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後、当審において、平成21年8月17日付けで拒絶理由が通知され、同年10月6日付けで手続補正がなされた(以下、平成21年10月6日付けでなされた手続補正を「本件補正」という。)ものである。

第2 本件補正についての却下の決定
1 結論
本件補正を却下する。

2 理由
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前(平成19年5月22日付け手続補正後のもの。)の、
「ケーブル本体のケーブル端部で複数の光ファイバ心線が分岐して相互に独立して引き出された光ファイバケーブルであって、
上記光ファイバ心線の分岐部を覆うように筒状のスリーブが設けられ、
上記スリーブは、上記ケーブル本体におけるシーリングテープが巻き付けられた部分が嵌入されていると共に、該スリーブに嵌入された該ケーブル本体における該シーリングテープの巻き付けられた部分に対応してネジ孔が設けられており、且つ該ネジ孔にネジ螺合されて、該ネジ先端によって該シーリングテープを介して該ケーブル本体に係止されていることを特徴とする光ファイバケーブル。」

「ケーブル本体のケーブル端部で複数の光ファイバ心線が分岐して相互に独立して引き出された光ファイバケーブルであって、
上記光ファイバ心線の分岐部を覆うように筒状のスリーブが設けられ、
上記スリーブは、上記ケーブル本体におけるシーリングテープが巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆された部分が嵌入されていると共に、該スリーブに嵌入された該ケーブル本体における該シーリングテープの巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆された部分に対応してネジ孔が設けられており、且つ該ネジ孔にネジ螺合されて、該ネジ先端によって該シーリングテープを介して該ケーブル本体に係止されていることを特徴とする光ファイバケーブル。」
に補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的
上記(1)の補正の内容は、補正前の請求項1における「ケーブル本体におけるシーリングテープが巻き付けられた部分」が「可撓性の樹脂で被覆された」ものであることを特定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。

(3)独立特許要件
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

ア 刊行物の記載
当審において平成21年8月17日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)に引用された、この出願前に頒布された刊行物である特開平9-304654号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

(ア)「【0015】-第1の実施形態-
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光ファイバケーブル組立体を示す外観図である。この光ファイバケーブル組立体1は、金属被覆光ケーブル2と、その金属被覆光ケーブル2の先端近傍に設けられた中継アダプタ3と、その中継アダプタ3からそれぞれ導出された4本の光ファイバ素線(図2の21)に絶縁補強チューブ(図2の40)を被せた光コード4と、それら光コード4の先端にそれぞれ設けられたコネクタ5とを具備して構成されている。
【0016】図2は、前記金属被覆光ケーブル2と前記中継アダプタ3と前記光コード4の構造説明図である。前記金属被覆光ケーブル2は、4本(但し、図2では2本のみ図示している)の光ファイバ(光ファイバ素線)21と、それら4本の光ファイバ21を覆う金属被覆(可撓性金属管)22とを具備している。前記光コード4は、光ファイバ21と、その光ファイバ21を覆う絶縁補強チューブ40とを具備している。その絶縁補強チューブ40は、ナイロンパイプ41と、ケプラ42と、PVCチューブ43の3層構造になっている。前記中継アダプタ3は、第1の開口31aと第2の開口31bとを互いに反対側の位置に有する中空円筒状ケース31と、その中空円筒状ケース31内に前記第1の開口31aから挿入された金属被覆光ケーブル2の金属被覆22を中空円筒状ケース31に固定するケーブル固定部32と、前記中空円筒状ケース31内に前記第2の開口31bから挿入された絶縁補強チューブ40を中空円筒状ケース31に固定するチューブ固定部33とを具備している。
【0017】金属被覆光ケーブル2の金属被覆22は、ケーブル固定部32から先は除去されている。また、絶縁補強チューブ40は、チューブ固定部33からコネクタ(図1の5)まで被せられている。
【0018】ケーブル固定部32では、中空円筒状ケース31に穿設されたネジ孔321にネジ322を螺入することにより金属被覆22を締めつけて、中空円筒状ケース31に金属被覆22を固定する。」

(イ)上記(ア)を踏まえて図2をみると、金属被覆光ケーブル2の金属被覆22が除去された部分において、4本の光ファイバ21が分岐して相互に独立して引き出されていること、中継アダプタ3は、4本の光ファイバ21が分岐して相互に独立して引き出されている部分を覆っていることがみてとれる。

イ 引用発明
上記アによれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。

「中空円筒状ケース31を具備する中継アダプタ3が金属被覆光ケーブル2の先端近傍に設けられ、中継アダプタ3が具備するケーブル固定部32において、中空円筒状ケース31に穿設されたネジ孔321にネジ322を螺入することにより金属被覆光ケーブル2の金属被覆22を締めつけて中空円筒状ケース31に金属被覆22を固定し、金属被覆光ケーブル2の金属被覆22は、ケーブル固定部32から先が除去されて、4本の光ファイバ21が分岐して相互に独立して引き出され、中継アダプタ3は、4本の光ファイバ21が分岐して相互に独立して引き出されている部分を覆う光ファイバケーブル組立体1。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「金属被覆光ケーブル2」、「光ファイバ21」及び「光ファイバケーブル組立体1」は、それぞれ、本願補正発明の「ケーブル本体」、「光ファイバ心線」及び「光ファイバケーブル」に相当する。

(イ)引用発明は、「金属被覆光ケーブル2の金属被覆22」が、「金属被覆光ケーブル2の先端近傍に設けられ」た「中継アダプタ3」が具備する「ケーブル固定部32」から先が除去されて、「4本の光ファイバ21が分岐して相互に独立して引き出された」ものであるから、引用発明は、本願補正発明の「ケーブル本体のケーブル端部で複数の光ファイバ心線が分岐して相互に独立して引き出された光ファイバケーブル」との構成を備える。

(ウ)引用発明の「中継アダプタ3」は、「4本の光ファイバ21が分岐して相互に独立して引き出されている部分を覆う」ものであるから、引用発明は、本願補正発明の「上記光ファイバ心線の分岐部を覆うように筒状のスリーブが設けられ」との構成を備える。

(エ)引用発明は、「中継アダプタ3が具備するケーブル固定部32において、中空円筒状ケース31に穿設されたネジ孔321にネジ322を螺入することにより金属被覆光ケーブル2の金属被覆22を締めつけて中空円筒状ケース31に金属被覆22を固定」するものであるから、「上記スリーブは、上記ケーブル本体が嵌入されていると共に、該スリーブに嵌入された該ケーブル本体にネジ孔が設けられており、且つ該ネジ孔にネジ螺合されて、該ネジ先端によって該ケーブル本体に係止されている」点において、本願補正発明の「上記スリーブは、上記ケーブル本体におけるシーリングテープが巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆された部分が嵌入されていると共に、該スリーブに嵌入された該ケーブル本体における該シーリングテープの巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆された部分に対応してネジ孔が設けられており、且つ該ネジ孔にネジ螺合されて、該ネジ先端によって該シーリングテープを介して該ケーブル本体に係止されている」との構成と一致する。

(オ)以上によれば、両者は、
「ケーブル本体のケーブル端部で複数の光ファイバ心線が分岐して相互に独立して引き出された光ファイバケーブルであって、
上記光ファイバ心線の分岐部を覆うように筒状のスリーブが設けられ、
上記スリーブは、上記ケーブル本体が嵌入されていると共に、該スリーブに嵌入された該ケーブル本体にネジ孔が設けられており、且つ該ネジ孔にネジ螺合されて、該ネジ先端によって該ケーブル本体に係止されている光ファイバケーブル。」
である点で一致し、
「本願補正発明では、スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分が、シーリングテープが巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆されており、ネジ孔が、シーリングテープが巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆された部分に対応して設けられているのに対し、引用発明では、スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分が金属で被覆されている点。」(以下「相違点1」という。)
で相違するものと認められる。

エ 判断
(ア)a 本願補正発明における、「ケーブル本体」が「可撓性の樹脂で被覆された」点について検討するに、本願明細書(本件補正後のもの。)の「このケーブル本体10は、ケーブル中心に設けられた鋼線からなるテンションメンバ11が樹脂製のスペーサ12で被覆され、また、その外側が不織布からなる押さえ巻き13で被覆され、さらに、その外側がラップシース14で被覆された構成のものである。ラップシース14は、可撓性の樹脂からなるシース本体14aの内周面にアルミニウムテープ14bが貼着されたものである。」(【0013】)、「ラップシース14の終点近傍にはスリーブ16の内径に略等しい外径となるようにシーリングテープ17が巻き付けられており、その部分の約半分がスリーブ16に嵌入されている。」(【0016】)との記載によれば、具体的には、ケーブル本体が、外側をラップシース(可撓性の樹脂からなるシース本体の内周面にアルミニウムテープが貼着されたもの)で被覆したものであることに由来するものと認められる。
そして、ケーブル本体がそのようなものであることに伴って、本願補正発明では、「スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分」が、「可撓性の樹脂で被覆されて」いることを特定したものと認められる。

b しかるところ、光ケーブルを、ラップシースで外側を被覆したものとすることは、本願出願時において周知の技術であり(例えば、特開昭62-173410号公報の2頁「従来の技術」の欄、特開昭63-21614号公報の1頁?2頁「〔従来の技術〕」の欄を参照。)、引用発明において、ラップシースで外側を被覆した光ケーブルを用い、これにより、「スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分」が、「可撓性の樹脂で被覆されて」いるものとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

(イ)光ファイバケーブルなどの通信ケーブルの接続部において、ケーブル外被とスリーブ間の気密性を確保するためにケーブル外被にシーリングテープを巻き付けることは、本願出願時において周知の技術である(例えば、当審拒絶理由に引用された特開昭63-23984号公報の1頁左下欄12行?右下欄6行、2頁左下欄11行?14行、第2図及び第4図、同じく特開昭63-63009号公報の2頁左上欄18行?右上欄2行、同じく実願昭63-74241号(実開平1-180135号)のマイクロフィルムの3頁11?14行を参照。)から、引用発明にあっても、ケーブル外被とスリーブ間の気密性を確保するためにケーブル外被にシーリングテープを巻き付ける上記周知技術を適用し、ケーブル固定部において、ケーブル外被にシーリングテープを巻き付けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。

(ウ)上記(ア)b及び(イ)に照らすと、引用発明において、ラップシースで外側を被覆した光ケーブルを用いつつ、ケーブル固定部において、ケーブル外被にシーリングテープを巻き付けることは、当業者が容易に想到し得たものというべきであり、これにより、相違点1に係る本願補正発明の「スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分が、シーリングテープが巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆されており、ネジ孔が、シーリングテープが巻き付けられた可撓性の樹脂で被覆された部分に対応して設けられている」との構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。

(エ)そして、本願補正発明において、引用発明及び周知技術から当業者予測し得る域を超えるほどの格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年5月22日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、2(1)において補正前のものとして示したとおりのものである。

2 引用例の記載及び引用発明
前記第2、2(3)ア及びイのとおりである。

3 対比
前記第2、2(3)ウで検討したところに照らして、本願発明と引用発明とは、
「ケーブル本体のケーブル端部で複数の光ファイバ心線が分岐して相互に独立して引き出された光ファイバケーブルであって、
上記光ファイバ心線の分岐部を覆うように筒状のスリーブが設けられ、
上記スリーブは、上記ケーブル本体が嵌入されていると共に、該スリーブに嵌入された該ケーブル本体にネジ孔が設けられており、且つ該ネジ孔にネジ螺合されて、該ネジ先端によって該ケーブル本体に係止されている光ファイバケーブル。」
である点で一致し、
「本願発明では、スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分が、シーリングテープが巻き付けられたものであり、ネジ孔が、シーリングテープが巻き付けられた部分に対応して設けられているのに対し、引用発明では、スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分が、シーリングテープが巻き付けられていない点。」(以下「相違点2」という。)
で相違するものと認められる。

4 判断
(1)光ファイバケーブルなどの通信ケーブルの接続部において、ケーブル外被とスリーブ間の気密性を確保するためにケーブル外被にシーリングテープを巻き付けることは、本願出願時において周知の技術である(例えば、当審拒絶理由に引用された特開昭63-23984号公報の1頁左下欄12行?右下欄6行、2頁左下欄11行?14行、第2図及び第4図、同じく特開昭63-63009号公報の2頁左上欄18行?右上欄2行、同じく実願昭63-74241号(実開平1-180135号)のマイクロフィルムの3頁11?14行を参照。)から、引用発明にあっても、ケーブル外被とスリーブ間の気密性を確保するためにケーブル外被にシーリングテープを巻き付ける上記周知技術を適用し、ケーブル固定部において、ケーブル外被にシーリングテープを巻き付けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことであり、これにより、相違点2に係る本願発明の「スリーブに嵌入されるケーブル本体の部分が、シーリングテープが巻き付けられたものであり、ネジ孔が、シーリングテープが巻き付けられた部分に対応して設けられている」との構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。

(2)そして、本願発明において、引用発明及び周知技術から当業者予測し得る域を超えるほどの格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。

(3)以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-26 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-09 
出願番号 特願2003-85638(P2003-85638)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
P 1 8・ 575- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前川 慎喜柏崎 康司横林 秀治郎  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 稲積 義登
右田 昌士
発明の名称 光ファイバケーブル  
代理人 関 啓  
代理人 嶋田 高久  
代理人 前田 弘  
代理人 二宮 克也  
代理人 杉浦 靖也  
代理人 今江 克実  
代理人 井関 勝守  
代理人 竹内 宏  
代理人 竹内 祐二  
代理人 藤田 篤史  
代理人 原田 智雄  

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