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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1209139
審判番号 不服2008-7105  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-21 
確定日 2009-12-24 
事件の表示 平成10年特許願第354282号「吊り戸棚」拒絶査定不服審判事件〔平成12年6月27日出願公開,特開2000-175755〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成10年12月14日の出願であって,平成20年2月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり,その請求項1ないし3に係る発明は,平成20年1月21日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。

「レンジフード横に隣接する吊り戸棚において、レンジフード側の側板と、これに隣接接合する底板及び、天板と、前記側板と相対する側板とを有し、前記レンジフード側の側板と底板を、不燃材の両面に化粧材を有して構成された両面化粧不燃板とし、これら両面化粧不燃板の厚みを不燃仕様ではない前記レンジフード側の側板に相対する側板及び天板と同一とすることを特徴とする吊り戸棚。」



第2.刊行物及びその記載内容
刊行物1:特開平8-112150号公報
刊行物2:特開平4-12706号公報

1.原査定の拒絶の理由に引用され本願の出願前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに,次のことが記載されている。
(1a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、キャビネットに関し、具体的には、キッチンなどのレンジフードの側方に設置されるのに有用なキャビネットに関する。」
(1b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、…その目的とするところは、不燃性の高さを維持しながら、生産性や切断性が高くて施工が容易にでき、かつ、軽量で運搬しやすいキャビネットを提供することにある。」
(1c)「【0011】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】図1は、本発明の一実施例に係るキャビネットを示した断面図である。図2は、本発明の一実施例に係るキャビネットを示した要部断面図である。図3は、本発明の一実施例に係るキャビネットの一使用状態を示した斜視図である。
【0013】本発明のキャビネットは、図1および図3に示すごとく、レンジフード(12)の側方に設置されるキャビネットにおいて、上記レンジフード(12)側の側板(14)と底板(15)のそれぞれが、パーティクルボード(4)とこのパーティクルボード(4)の外側に貼着されたフェノール発泡板(3)とから構成されているものである。」
(1d)「【0015】本発明のキャビネットは、上記構成をとることによって、不燃性を要求されるレンジフード(12)側の側板(14)と底板(15)のそれぞれがパーティクルボード(4)の外側へのフェノール発泡板(3)の貼着で不燃性の高さを維持しながら、従来のようにダボを用いてパーティクルボード(4)を組む必要がないため、手間が省けて生産性が良くなり、しかも、フェノール発泡板(3)を用いているため切断性が高くなり、その結果、施工が容易にできるものである。」
(1e)「【0017】…キャビネット本体(1)内には、適宜棚板などを設けてもよいものである。」

上記(1a)?(1e)の記載及び図面の記載からみて,刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レンジフード12の側方に設置されるキャビネットにおいて,レンジフード12側の側板14と,底板15及び,前記側板14と相対するパーティクルボ-ド4とを有し,前記レンジフード12側の側板14と底板15を,パーティクルボード4の外面にフェノール発泡板3を有して構成し,内部に適宜棚板などを設けたキャビネット。」


2.同じく,上記刊行物2には,図面とともに,次のことが記載されている。
(2a)「<産業上の利用分野>
本発明は防火性能に優れた家具に関する。」(1頁左下欄15?16行)
(2b)「本発明の家具の構成部材の少なくとも一部、特に家具本体の板材として用いられる化粧板は、細胞孔内及び/又は内壁面に不燃性無機化合物が充填或は固着されて成る不燃性有機質繊維が接着性物質を介して成形一体化されて成る繊維板を基板とし、該基板の表面又は表裏面或は木口縁を含む表全面にシート状物が貼着されて成る。」(2頁左上欄10?16行)
(2c)「<実施例>
第1図に示される厨房家具としての流し台は、上部にシンクl及び調理面2等が設けられたカウンタ3を有し、このカウンタ3の下部に棚4や引出し(図示せず)が適宜内設された物品収納部が設けられている。物品収納部は一対の側板8,8と、底板9と、背板(図示せず)とで略コの字形に構成され、その開放前面には扉5が開閉可能に取り付けられて流し台本体6をなしている。流し台本体6の最下部前端には蹴込み板7が取り付けられている。
この流し台における扉5、蹴込み板7、側板8,8、底板9及び図示されない背板は、いずれも第2図に示す構成の化粧板10を所定形状に裁断加工して得られたものであり、この化粧板10は、化粧シート状物11が接着剤12を介して基板13上に貼着されて成る。基板13は、細胞孔内及び/又は内壁面に不燃性無機化合物が充填或は固着された不燃性有機質繊維を接着剤を介して成形一体化して成る不燃性繊維板であって、極めて優れた防火性能を有する。」(4頁左上欄1行?右上欄1行)



第3.対比・判断
1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明の「レンジフード12」が,本願発明の「レンジフード」に相当し,以下同様に,「レンジフード12の側方に設置される」が「レンジフード横に隣接する」に相当し,「内部に適宜棚板などを設けたキャビネット」が,「吊り戸棚」に相当し,「(レンジフード12側の)側板14」が,「(レンジフード側の)側板」に相当し,「底板15」が,「(レンジフード側の側板に隣接接合する)底板」に相当し,「側板14と相対するパーティクルボード4」が,「(レンジフード側の)側板と相対する側板」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の「レンジフード12側の側板14と底板15を,パーティクルボード4の外面にフェノール発泡板3を有して構成し」と,本願発明の「レンジフード側の側板と底板を、不燃材の両面に化粧材を有して構成された両面化粧不燃板とし」とは,「レンジフード側の側板と底板を,不燃板とし」で共通する。

そうすると,両者は,
「レンジフード横に隣接する吊り戸棚において,レンジフード側の側板と,これに隣接接合する底板及び,前記側板と相対する側板とを有し,前記レンジフード側の側板と底板を,不燃板とした吊り戸棚。」の点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
吊り戸棚について,本願発明は,「天板」を有しているのに対し,刊行物1記載の発明は,この点が定かでない点。
<相違点2>
レンジフード側の側板と底板について,本願発明は,「不燃材の両面に化粧材を有して構成された両面化粧不燃板」であるのに対し,刊行物1記載の発明は,パーティクルボードの外面にフェノール発泡板を有して構成した不燃板である点。
<相違点3>
不燃板の厚みについて,本願発明は,「(レンジフード側の側板と底板)の両面化粧不燃板の厚みを不燃仕様ではないレンジフード側の側板に相対する側板及び天板と同一」としているのに対し,刊行物1記載の発明は,この点が定かでない点。


2.相違点の検討
<相違点1について>
吊り戸棚に天板を設けることは,従来から普通に採用されている技術事項であるところ,さらに,レンジフードに隣接する吊り戸棚に天板を設けることも,例えば,実願平4-86194号(実開平6-41550号)のCD-ROM,実願昭63-151460号(実開平2-71336号)のマイクロフィルム,等に記載されているように,従来から周知の技術事項である。
してみると,刊行物1記載の発明において,本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2について>
刊行物2には,本願発明と同一技術分野に属する厨房家具において,不燃性繊維板である基板13(本願発明の「不燃材」に相当する。以下同様。)の両面に化粧シート状物11(「化粧材」)を有して構成された化粧板10(「両面化粧不燃板」)を,家具の板材として用いることが記載されている。
してみると,刊行物1記載の発明において,「レンジフード12側の側板14及び底板15」に,刊行物2記載の両面化粧不燃板の技術を採用して,本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点3について>
刊行物1には,不燃板(側板14,底板15)の厚みを不燃仕様ではない側板(パーティクルボード4)と同一とすることについて明記されてはいないものの,同刊行物1の【図1】をみると,不燃板(側板14,底板15)の厚みと側板(パーティクルボード4)の厚みとをほぼ同程度にしたキャビネットの例が記載されており,また,一般に,組み立て接合される板材の厚みを同一として加工寸法の共用化等を図る程度のことは,切断作業や組み立て作業等の容易性を考慮して,当業者が普通に採用する程度の技術事項にすぎない。
してみると,刊行物1記載の発明において,本願発明の上記相違点3に係る構成とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。


3.判断
したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術並びに吊り戸棚等における周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。



第4.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術並びに吊り戸棚等における周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2009-10-23 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-10 
出願番号 特願平10-354282
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
関根 裕
発明の名称 吊り戸棚  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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