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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B24B |
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管理番号 | 1209140 |
審判番号 | 不服2008-7557 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-27 |
確定日 | 2009-12-24 |
事件の表示 | 特願2002-376496「研磨治具、研磨パッド、眼鏡用プラスチックレンズの研磨方法および製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月24日出願公開、特開2003-266287〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年12月26日(優先権主張、平成14年1月9日)の出願であって、平成19年7月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月25日に手続補正がなされ、平成20年2月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年4月28日に明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成21年6月24日に審尋がなされ、同年9月4日に回答書が提出されたものである。 第2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲、発明の名称、発明の詳細な説明について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。 (1)補正前 「被研磨面を研磨するために用いられる研磨治具において、 弾性材料により背面側が開放するカップ状に形成され、表面側に研磨パッドが取付けられるバルーン部材と、 前記バルーン部材の背面側開口部を気密に閉塞する固定具と、 前記固定具に設けられ前記バルーン部材の密閉空間に流体を導入するバルブとを備え、 前記バルーン部材は、表面が扁平または緩やかな凸曲面からなり前記密閉空間に導入される流体圧によって所定のドーム状に変形されるドーム部と、このドーム部の外周より後方に向かって一体に延設された筒部とを有しており、 前記ドーム部は正面視形状が略楕円形であり、 前記固定具は前記バルーン部材の筒部を保持していることを特徴とする研磨治具。」 (2)補正後 「被研磨面を研磨するために用いられる研磨治具において、 弾性材料により背面側が開放するカップ状に形成され、表面側に研磨パッドが取付けられるバルーン部材と、 前記バルーン部材の背面側開口部を気密に閉塞する固定具と、 前記固定具に設けられ前記バルーン部材の密閉空間に流体を導入するバルブとを備え、 前記バルーン部材は、表面が扁平または緩やかな凸曲面からなり前記密閉空間に導入される流体圧によって所定のドーム状に変形されるドーム部と、このドーム部の外周より後方に向かって一体に延設された筒部とを有しており、 前記ドーム部は正面視形状が略楕円形であり、 前記筒部の背面側開口部には内フランジを有し、 前記固定具は前記バルーン部材の筒部と内フランジを内側と外側から挟持していることを特徴とする研磨治具。」 2.補正の適否 本件補正の特許請求の範囲の補正後の請求項1についての補正は、バルーン部材の筒部について「筒部の背面側開口部には内フランジを有し」なる事項、固定具によるバルーン部材の筒部の保持について「バルーン部材の筒部と内フランジを内側と外側から挟持している」なる事項を付加するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。 (1)補正発明 補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。 (2)刊行物に記載された発明 これに対し、原査定で引用された本件優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭55-164462号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア.第2ページ右上欄第8?10行 「本発明の主目的は、簡単な研磨用へツドによつて広範囲のレンズ表面曲率及び組合せ曲率が研磨できる改良工具を提供することにある。」 イ.第2ページ左下欄第5?17行 「この代替装置は一側面に研磨機アダプタを、又他側面には内側が凹形のカツプ状成形弾性ラツプを配置した本体を有する研磨用ヘツドを含み、上記ラツプの外側表面は広範囲の処方レンズ表面に適応するように予め選択される。所望の表面弾性に従つてラツプの中空部内を加圧する装置が設けられる。 弾性ラツプ上に配置された薄い研磨用パツドと適当な研磨剤を使用し、ラツプ表面を研磨レンズ曲率に一致させる力で研磨レンズ表面に押付け、更にレンズとラツプを相対的に激しく運動させることによつて、レンズ形状にひずみを生ずることなくレンズ最終研磨が行われる。」 ウ.第2ページ右下欄第5?7行 「図面に示す研磨用ヘツド10は下方に突出して機械に取付けるアダプタ14と中空の弾性ラツプ16とを含む剛性本体12を有する。」 エ.第2ページ右下欄第18?20行 「ラツプ16は図示のようなカツプ状に成形され、この装着用フランジ22は固定環24と固定ねじ25によつて本体12に固着される。」 オ.第3ページ左上欄第9?17行 「作業面28は通常、加工すべきレンズ表面曲率のほぼ中間値の曲率(例えば8Dから4Dまでのレンズ表面に対しては6D)が与えられ、又薄い研磨用パツド30で被覆される。空気逆止弁32(例えばシユレーダ型)により空洞部34は膨張される。この膨張によつて作業面は適当な弾性に対する選択的調整が行われ、加工すべきレンズ曲率に一致した最適形状が得られ、この形状は研磨作業間常時維持される。」 カ.FIG.1 上記ウ?オを踏まえ、FIG.1を参照すると、カツプ状に成形されたラツプ16は、背面側が開放され、表面側に研磨用パッド30が存すること、表面が凸曲面からなり所定のドーム状に変形されるドーム部と、このドーム部の外周より後方に向かって一体に延設された筒部とを有すること、筒部の背面側開口部には外フランジ22を有すること、が看取できる。 これら事項を、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認める。 「レンズ表面を研磨するために用いられる改良工具において、 弾性材料により背面側が開放するカツプ状に形成され、表面側に研磨用パッド30が被覆されたラツプ16と、 前記ラツプ16の背面側開口部を気密に閉塞する剛性本体12、固定環24と、 前記剛性本体12に設けられ前記ラツプ16の空洞部34に空気を導入する空気逆止弁32とを備え、 前記ラツプ16は、表面が凸曲面からなり前記空洞部34に導入される空気圧によって所定のドーム状に変形されるドーム部と、このドーム部の外周より後方に向かって一体に延設された筒部とを有しており、 前記筒部の背面側開口部には外フランジ22を有し、 前記剛性本体12、固定環24は前記ラツプ16の筒部と外フランジ22を内側と外側から挟持している改良工具。」 (3)対比 補正発明と刊行物発明とを対比する。 刊行物発明の「レンズ表面」、「改良工具」、「ラツプ16」、「剛性本体12、固定環24」、「空洞部34」、「空気」、「空気逆止弁32」は、それぞれ補正発明の「被研磨面」、「研磨治具」、「バルーン部材」、「固定具」、「密閉空間」、「流体」、「バルブ」に相当する。 刊行物発明の「研磨用パッド30が被覆された」と、補正発明の「研磨パッドが取付けられる」とは、「研磨パッドを有する」である限りにおいて一致する。 刊行物発明の「外フランジ22」と、補正発明の「内フランジ」とは、「フランジ」である限りにおいて一致する。 したがって、補正発明と刊行物発明とは、次の点で一致している。 「被研磨面を研磨するために用いられる研磨治具において、 弾性材料により背面側が開放するカップ状に形成され、表面側に研磨パッドを有するバルーン部材と、 前記バルーン部材の背面側開口部を気密に閉塞する固定具と、 前記固定具に設けられ前記バルーン部材の密閉空間に流体を導入するバルブとを備え、 前記バルーン部材は、表面が凸曲面からなり前記密閉空間に導入される流体圧によって所定のドーム状に変形されるドーム部と、このドーム部の外周より後方に向かって一体に延設された筒部とを有しており、 前記筒部の背面側開口部にはフランジを有し、 前記固定具は前記バルーン部材の筒部とフランジを内側と外側から挟持している研磨治具。」 そして、補正発明と刊行物発明とは、以下の点で相違している。 相違点1:「研磨パッドを有する」ことに関し、補正発明は「研磨パッドが取付けられる」ものであるのに対し、刊行物発明は「研磨用パッド30が被覆された」ものである点。 相違点2:ドーム部の形状に関し、補正発明は、「表面が扁平または緩やかな」凸曲面で、「正面視形状が略楕円形」であるのに対し、刊行物発明は、明らかでない点。 相違点3:固定具が挟持する「フランジ」に関し、補正発明は「内フランジ」であるのに対し、刊行物発明は「外フランジ」である点。 (4)相違点の検討 相違点1について検討する。 研磨パッドを着脱自在に取り付けることは、原査定で引用された特開2001-198788号公報の要約、特開昭55-157470号公報の特許請求の範囲にみられるごとく周知である。 研磨パッドを交換する場合、刊行物発明では「バルーン部材」とともに交換する必要があるところ、周知技術を踏まえ、利便性向上の観点から、研磨パッドのみ交換可能である「研磨パッドが取付けられる」ものとすることは、適宜なしうる設計的事項にすぎない。 相違点2について検討する。 刊行物発明は、「レンズ表面」を研磨するものであるから、研磨パッドを表面に有するバルーン部材を「表面が扁平または緩やかな」凸曲面とする必要があることは明らかであり、この点は、当然考慮すべき事項にすぎない。 「正面視形状が略楕円形」である点については、上記(2)のイ.に「ラツプの外側表面は広範囲の処方レンズ表面に適応するように予め選択される」と記載されているごとく、研磨パッドを有するドーム部の形状は、レンズ形状に応じて、設計されるものであり、しかも、「正面視形状が略楕円形」とすることは、原査定で引用した特開2000-117604号公報の段落0045?0054、図5、図7にみられるごとく周知であるから、この点は、目的とするレンズ形状に応じて、適宜なしうる設計的事項にすぎない。 なお、請求人は、審判請求理由において、上記公報について、「ドーム2dの正面視形状については何らの記載もない。また、図7はあくまでも側面図であるため、これをもってドーム2dの正面視形状が略楕円形であると判断するには無理がある。何故なら、C方向とS方向の曲率が異なるという情報だけでは正面視形状を一義的に特定することができないからである」と、主張している。 確かに、同公報には「正面視形状が略楕円形」なる文言はないが、段落0045?0054、図5、図7を踏まえ、技術常識を考慮すれば、「正面視形状が略楕円形」となることは、明らかであるから、請求人の主張は採用できない。 相違点3について検討する。 内フランジを挟持して固定する点は、審尋において引用した特開平11-163101号公報の段落0019、図1、図3、同じく国際公開第99/62672号(特表2002-516763号)の可撓膜118のサポート・プレート170と下部環状クランプ172による挟持構造にみられるごとく周知である。 刊行物発明の「外フランジ」を挟持するものは、固定具は筒部外方に存し、相応の体積を有するところ、周知技術を踏まえ、小型化の観点から、「内フランジ」を挟持することは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。 また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。 請求人は、回答書において、「さらなる請求項の減縮を検討しておりますので、新たに追加された引用文献2、3(当審注、相違点3の検討で示した周知例)に対しては別途拒絶理由通知を発して、審判請求人に手続補正書および意見書を提出する機会を与えて下さるようお願いいたします」と主張する。 しかし、「新たに追加された引用文献2、3」は、周知技術を示す証拠であって「新たに追加された」ものではない。 また、仮に、「新たに追加された」ものであるとしても、補正を却下する場合に拒絶理由を請求人に通知しなければならないとする規定はない(裁判例として、平成16年(行ケ)57号、平成15年(行ケ)475号)。 よって、請求人の主張は採用できない。 以上のことから、補正発明は、刊行物発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし12に係る発明は、平成19年9月25日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。 2.刊行物等 これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。 3.対比・検討 本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。 そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-07 |
結審通知日 | 2009-10-20 |
審決日 | 2009-11-05 |
出願番号 | 特願2002-376496(P2002-376496) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B24B)
P 1 8・ 575- Z (B24B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 卓行 |
特許庁審判長 |
小椋 正幸 |
特許庁審判官 |
今村 亘 千葉 成就 |
発明の名称 | 研磨治具、研磨パッド、眼鏡用プラスチックレンズの研磨方法および製造方法 |
代理人 | 黒川 弘朗 |
代理人 | 山川 政樹 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 山川 茂樹 |