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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1209438 |
審判番号 | 不服2008-7174 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-24 |
確定日 | 2009-12-28 |
事件の表示 | 特願2002-282443「人物認証装置および人物認証方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月15日出願公開、特開2004-118627〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年9月27日の出願であって、平成19年11月30日付け拒絶理由通知に対して平成20年1月31日付けで手続補正がなされたが、平成20年2月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年3月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成20年4月22日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成20年4月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年4月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「撮像入力手段から得られた人物の顔領域の画像を抽出する顔領域抽出手段と、前記顔領域抽出手段によって抽出された上記顔領域の画像から顔の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、顔の特徴量を登録する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した顔の特徴量を当該人物の特徴量として登録するための辞書登録手段と、顔の特徴量を認証する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した特徴量と前記辞書登録手段により登録された特徴量との類似度に応じて当該人物を認証する人物認証手段と、顔の特徴量を登録する際に、当該人物の動きを誘導する誘導手段とを具備し、当該誘導手段により誘導された状況の下で当該人物の顔の特徴量を所定数、前記特徴量抽出手段によって抽出し、所定数の特徴量を当該人物を特定可能な情報に対応付けて前記辞書登録手段へ登録することを特徴とする人物認証装置。」と補正された。 なお、下線部は補正箇所を示している。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物 ア 原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成13年12月7日に頒布された「特開2001-338296号公報」(以下、「刊行物1」という。)は、「顔画像認識装置および通行制御装置」に関するものであって、その公報には次の事項が記載されている。 (ア) 「図1は、本発明の第1の実施の形態に係る顔画像認識装置の構成を概略的に示すものである。この顔画像認識装置は、認識対象者100の顔画像を撮像して入力する画像入力手段としてのカメラ101、カメラ101の右上方あるいは左上方から認識対象者100の顔に向けて一定の照度で光を照射する第1の照明手段としての第1の照明部102、カメラ101の下方から認識対象者100の顔に向けて一定の照度で光を照射する第2の照明手段としての第2の照明部103、および、カメラ101から入力された顔画像を処理して認識処理などを行なう画像処理部104から構成されている。」(6頁段落【0018】、図1) (イ) 「次に、画像処理部104について説明する。(中略) なお、以下の説明では、画像入力データ、抽出した特徴量、部分空間、部分空間を構成するための固有ベクトル、相関行列、登録の時刻、日時、場所などの状況情報、暗証番号、IDコードなどの個人情報の各情報がでてくる。そして、(中略)登録情報と言うときは、画像入力データ、抽出した特徴量、部分空間、部分空間を構成するための固有ベクトル、相関行列、状況情報、個人情報を含んでいる。したがって、認識データは登録情報に含まれる。 以下、画像処理部104の具体的な構成例について、図1を参照して詳細に説明する。画像処理部104は、画像入力手段としての画像入力部105、特徴量抽出手段としての特徴量抽出部106、認識手段としての認識部107、および、基準の特徴量があらかじめ登録(記憶)されている記憶手段としての登録情報保存部108から構成されている。 画像入力部105は、カメラ101から顔画像を入力し、A/D変換してデジタル化した後、特徴量抽出部106に送る。 特徴量抽出部106は、画像入力部105から得られた認識対象者100の顔画像を用いて、濃淡情報あるいは部分空間情報などの特徴量を抽出するもので、たとえば、図5に示すように、顔領域検出部106A、顔部品検出部106B、および、特徴量生成部106Cからなり、以下、詳細に説明する。 顔領域検出部106Aは、カメラ101で入力された顔画像から顔の領域を検出する。顔領域検出部106Aにおける顔領域の検出方法は、たとえば、あらかじめ用意されたテンプレートと画像中を移動させながら相関値を求めることにより、最も高い相関値をもった場所を顔領域とする。(中略) 顔部品検出部106Bは、検出された顔領域の部分の中から、目、鼻の位置を検出する。(中略) 特徴量生成部106Cは、検出された顔部品の位置を基に、顔領域を一定の大きさ、形状に切り出し、特徴量を生成する。ここでは、たとえば、mピクセル×nピクセルの領域の濃淡値をそのまま情報として用い、m×n次元の情報を特徴ベクトルとして用いる。 (中略) 認識方法として相互部分空間法を用いたときは、上記m×n次元の情報を特徴ベクトルとして算出した後、特徴ベクトルの相関行列(または、共分散行列)を求め、そのK-L展開による正規直交ベクトル(固有ベクトル)を求めることにより、部分空間を計算する。部分空間は、固有値に対応する固有ベクトルを、固有値の大きな順にk個選び、その固有ベクトル集合を用いて表現する。 本実施の形態では、(中略)たとえば、入力画像を特徴量抽出部106によって処理して得られた時系列的な顔画像データから特徴ベクトルの相関行列を求め、K-L展開による正規直交ベクトルを求めることにより、部分空間を計算する。この部分空間は、人物の同定を行なうための認識辞書として利用する。たとえば、あらかじめ登録しておいて、それを辞書として登録しておけばよい。 また、後で述べるように、部分空間自身を認識を行なうための入力データとしてもよい。したがって、認識方法として相互部分空間法を用いたときの特徴量である部分空間計算結果は、認識部107および登録情報保存部108に送られる。 認識部107は、登録情報保存部108に蓄えられた認識データ(部分空間)と特徴量抽出部106で得られた特徴量とを照合(比較)することにより、カメラ101に写っている認識対象者100が誰であるかを認識、あるいは、該当人物であるかどうかを同定する。人物を認識するためには、どの人物のデータに最も類似しているかを求めればよく、最大類似度をとるデータに対応する人物を認識結果とすればよい。」(7頁段落【0030】ないし8頁段落【0043】) (ウ) 「登録情報保存部108は、1人の人物、または、あるIDコードに対応して、1つまたは複数の認識データを保持する。部分空間は、その取得された時間などの付帯情報とともに記憶される。複数を保持する理由として、ある1人の人物に対応した複数の部分空間を同時に、認識部107に渡して認識を行なうことが挙げられる。」(9頁段落【0055】) (エ) 「図10は、本発明の第3の実施の形態に係る顔画像認識装置の構成を概略的に示すものである。この顔画像認識装置は、カメラ101、第1の照明部102、第2の照明部103、画像処理部104、および、撮像されている認識対象者100の顔画像を表示する表示手段としての表示部110から構成されている。 なお、カメラ101、第1の照明部102、第2の照明部103、および、画像処理部104は、前述した第1の実施の形態におけるそれと同一構成であり、動作も同一であるため、その説明は省略し、以下では表示部110について説明する。 表示部110は、図11に示すように、撮影されている人物の顔の動画像を表示して、正確に撮影されているか否かを認識対象者100に確認をとらせるためのものである。また、登録された認識対象者100の顔画像を用いて、登録時のカメラ101からの位置を算出することで、図12に示すように、登録時の顔画像の大きさを例えば四角の枠100bで表示する。これにより、認識対象者100の立ち位置の経年変化・経時変化による認識率の低下を抑制することが可能となる。すなわち、登録情報保持部108には、登録時の顔画像の大きさ情報も保持されており、その情報を用いることにより行なえる。 なお、音声案内によって、たとえば、「もう少し顔をカメラから遠ざけて下さい。」とか、「もう少し顔をカメラに近づけて下さい」というようにガイダンスしても、その効果は何ら変わりない。」(9頁段落【0065】ないし段落【0068】、図10) してみると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 「認識対象者100の顔画像を撮像して入力する画像入力手段としてのカメラ101、カメラ101の右上方あるいは左上方から認識対象者100の顔に向けて一定の照度で光を照射する第1の照明手段としての第1の照明部102、カメラ101の下方から認識対象者100の顔に向けて一定の照度で光を照射する第2の照明手段としての第2の照明部103、および、カメラ101から入力された顔画像を処理して認識処理などを行なう画像処理部104から構成される顔画像認識装置であって、 画像処理部104は、画像入力手段としての画像入力部105、特徴量抽出手段としての特徴量抽出部106、認識手段としての認識部107、および、基準の特徴量があらかじめ登録(記憶)されている記憶手段としての登録情報保存部108から構成され、 画像入力部105は、カメラ101から顔画像を入力し、A/D変換してデジタル化した後、特徴量抽出部106に送り、 特徴量抽出部106は、画像入力部105から得られた認識対象者100の顔画像を用いて、濃淡情報あるいは部分空間情報などの特徴量を抽出するものであって、顔領域検出部106A、顔部品検出部106B、および、特徴量生成部106Cからなり、 顔領域検出部106Aは、カメラ101で入力された顔画像から顔の領域を検出し、 顔部品検出部106Bは、検出された顔領域の部分の中から、目、鼻の位置を検出し、 特徴量生成部106Cは、検出された顔部品の位置を基に、顔領域を一定の大きさ、形状に切り出し、特徴量を生成し、認識方法として相互部分空間法を用いたときの特徴量である部分空間計算結果は、認識部107および登録情報保存部108に送られ、この部分空間は、人物の同定を行なうための認識辞書として利用するものであり、 認識部107は、登録情報保存部108に蓄えられた認識データ(部分空間)と特徴量抽出部106で得られた特徴量とを照合(比較)することにより、カメラ101に写っている認識対象者100が誰であるかを認識、あるいは、該当人物であるかどうかを同定し、人物を認識するために、どの人物のデータに最も類似しているかを求め、最大類似度をとるデータに対応する人物を認識結果とし、 登録情報保存部108に、1人の人物、または、あるIDコードに対応して、1つまたは複数の認識データ、すなわち特徴量である部分空間計算結果が登録され、 表示部110は、撮影されている人物の顔の動画像を表示して、正確に撮影されているか否かを認識対象者100に確認をとらせるためのものであって、登録された認識対象者100の顔画像を用いて、登録時のカメラ101からの位置を算出することで、登録時の顔画像の大きさを例えば四角の枠100bで表示するか、音声案内によって人物の立ち位置をガイダンスする、 顔画像認識装置。」 イ また、本願の出願日前である平成4年9月21日に頒布された「特開平4-264985号公報」(以下、「刊行物2」という。)は、「画像認識システム」に関するものであって、その公報には、次の事項が記載されている。 (ア) 「上記のようなプロファイル作成の結果、姿勢が正しくないことが検出されると、アナウンス送出部13では、短く断続するトーンデータを発生して送出し、入出力制御9でトーン信号とされて、例えばピィ、ピィ、ピィ・・・というようなトーンがスピーカ5から発せられる。このトーンを聞いて、被検者1は頭部を動かして正しい顔の姿勢を作ることができる。各プロファイルで極小値のアドレスが一致すると顔の姿勢が正しいので、アナウンス送出部13では長く連続するトーンデータを発生して送出し、入出力制御部9でトーン信号とされて、例えばピィーというトーンがスピーカ5から発生される。これを聞いて、被害検者<原文のまま>1はキーボード入出力装置4のフリーズボタン17を再操作し、図6のS27で説明したように入力確定とする。 入力確定のキー操作があると、入出力制御部9より抽出部12に対し、顔の全体と各部分についての抽出指示を与える。(中略)抽出部12は抽出した画像データを学習・認識部14へ与える。抽出部12には、図7を用いて説明したプロファイルを作成する機能が備えてられており<原文のまま>、上記抽出に先立って、(中略)プロファイルの作成を行う。作成の結果、顔の姿勢が正しければ、そのまま画像データの抽出を行うが、作成が正しくなければ、次のようにして画像データの傾き修正を行う。 (中略) 以上の傾き修正により得た画像データについて、図8に示すように全体及び各部分のマスクを用いて抽出を行い、全体パターン(画像データ)、眉パターン、目パターン、鼻パターン、口パターンを得て、学習・認識部14へ送出する。(中略) 上記のようにして、システムに登録される被検者は次々に撮像を行い、入力処理がなされる(S42)。フリーズボタン17の再操作により入力画像データの確定が行われ、画像データが所定メモリエリアに登録される(S43)。そして、前述のように抽出部12によって画像データの全体及び所定部分の抽出がなされ(S44)、抽出された画像データが学習・認識部14を構成するニューラルネットワークに送出される。」(4頁段落【0016】ないし段落【0021】、図) してみると、刊行物2には、以下の発明(以下、「刊行物2発明」という)が記載されている。 「システムに登録される被検者が撮像を行い、確定が行われた画像データが所定メモリエリアに登録されるものであって、姿勢が正しくないことが検出されると、正しい姿勢を促す音を発し、姿勢が正しいと入力確定操作を促す音を発し、入力確定とされると、抽出部に抽出指示がなされ、抽出部12は抽出した画像データを学習・認識部14へ与える装置。」 ウ また、本願の出願日前である平成12年11月2日に頒布された「特開2000-306095号公報」(以下、「刊行物3」という)は、「画像照合・検索システム」に関するものであって、その公報には、次の事項が記載されている。 (ア) 「画像照合処理部50は、照合画像生成処理部30により生成した照合画像と登録画像を比較照合し、一致度を計算する。(中略)この例では登録画像として複数の角度から撮影したものを用意し、利用者ごとに複数の投影点を求め、その投影点を連続的に結んでいる。この例によれば、入力画像の調整は、一番近似する対象状態パラメータを持つ登録画像を目標としてパラメータ調整し、固有空間上での投影点間の距離を求めれば良いこととなる。」(6頁段落【0030】、図3) (イ) 「まず、あらかじめ利用者ごとに認証用の基本画像となる登録画像を登録画像データベース40に登録、格納しておく(ステップS201)。精度の高い画像照合処理を行なうために正面画像のほか、様々な方向から写した顔画像を用意しておくことが好ましい。これは前処理、後方処理として個人認証を伴うアプリケーションの管理者側が行なう。」(6頁段落【0034】) (ウ) 「図9に示すように、3次元顔画像登録フェーズでは、(中略)シングルビュー構成(1台のカメラ構成)であっても、例えば、被登録者の座る方向を少しずつ変えつつ撮影することにより、多視点顔画像を取得することが可能である。」(9頁段落【0065】、図9) してみると、刊行物3には、以下の発明(以下、「刊行物3発明」という。)が記載されている。 「画像照合処理部50は、照合画像生成処理部30により生成した照合画像と登録画像を比較照合し、一致度を計算するものであって、登録画像として複数の角度から撮影したものを用意し、利用者ごとに複数の投影点を求め、その投影点を連続的に結び、入力画像の調整は、一番近似する対象状態パラメータを持つ登録画像を目標としてパラメータ調整し、固有空間上での投影点間の距離を求めることによりなされ、 あらかじめ利用者ごとに認証用の基本画像となる登録画像を登録画像データベース40に登録、格納しておくものであって、画像は、正面画像のほか、様々な方向から写した顔画像を用意しておき、3次元顔画像登録フェーズでは、シングルビュー構成(1台のカメラ構成)であっても、被登録者の座る方向を少しずつ変えつつ撮影することにより、多視点顔画像を取得することが可能である装置。」 (3)対比・判断 ア 本願補正発明と刊行物1発明との対比 刊行物1発明は、顔領域検出部106Aが、カメラ101で入力された顔画像から顔領域を検出し、顔部品検出部106Bが、検出された顔領域の部分の中から、目、鼻の位置を検出し、特徴量生成部106Cが、検出された顔部品の位置を基に、顔領域を一定の大きさ、形状に切り出し、特徴量を生成しているので、刊行物1発明は、本願補正発明でいう、「撮像入力手段から得られた人物の顔領域の画像を抽出する顔領域抽出手段」及び「顔領域抽出手段によって抽出された上記顔領域の画像から顔の特徴量を抽出する特徴量抽出手段」に相当する手段を備えている。 刊行物1発明は、特徴量生成部106Cが生成した特徴量を、登録情報保存部108に送り、登録情報保存部108が、1人の人物、または、あるIDコードに対応して、1つまたは複数の認識データ、すなわち特徴量である部分空間計算結果を保持するものであり、この部分空間は、人物の同定を行なうための認識辞書として利用するものであるから、刊行物1発明は、本願補正発明でいう、「顔の特徴量を登録する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した顔の特徴量を当該人物の特徴量として登録するための辞書登録手段」に相当する手段、及び「人物の顔の特徴量を前記特徴量抽出手段によって抽出し、所定数の特徴量を当該人物を特定可能な情報に対応付けて前記辞書登録手段へ登録する」点に相当する手段を備えている。 刊行物1発明は、認識部107が、登録情報保存部108に蓄えられた認識データ(部分空間)と特徴量抽出部106で得られた特徴量とを照合(比較)することにより、カメラ101に写っている認識対象者100が誰であるかを認識、あるいは、該当人物であるかどうかを同定し、人物を認識するために、どの人物のデータに最も類似しているかを求め、最大類似度をとるデータに対応する人物を認識結果とするものであるから、刊行物1発明は、本願補正発明でいう、「顔の特徴量を認証する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した特徴量と前記辞書登録手段により登録された特徴量との類似度に応じて当該人物を認証する人物認証手段」に相当する手段を備えている。 刊行物1発明は、表示部110が、撮影されている人物の顔の動画像を表示して、正確に撮影されているか否かを認識対象者100に確認をとらせ、登録された認識対象者100の顔画像を用いて、登録時のカメラ101からの位置を算出することで、登録時の顔画像の大きさを例えば四角の枠100bで表示するか、音声案内によって人物の立ち位置をガイダンスするものであるから、本願補正発明でいう、「人物の動きを誘導する誘導手段」に相当する手段を備えている。 刊行物1発明の「顔画像認識装置」との表記と、本願補正発明の「人物認証装置」との表記とは、表記上の差異にすぎず、共に人物認証装置である点で共通する。 したがって、両者は 「撮像入力手段から得られた人物の顔領域の画像を抽出する顔領域抽出手段と、前記顔領域抽出手段によって抽出された上記顔領域の画像から顔の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、顔の特徴量を登録する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した顔の特徴量を当該人物の特徴量として登録するための辞書登録手段と、顔の特徴量を認証する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した特徴量と前記辞書登録手段により登録された特徴量との類似度に応じて当該人物を認証する人物認証手段と、当該人物の動きを誘導する誘導手段とを具備し、当該人物の顔の特徴量を、前記特徴量抽出手段によって抽出し、所定数の特徴量を当該人物を特定可能な情報に対応付けて前記辞書登録手段へ登録することを特徴とする人物認証装置。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。 <相違点> 本願補正発明は、顔の特徴量を登録する際に人物の動きを誘導するものであり、当該誘導手段により誘導された状況の下で当該人物の顔の特徴量を所定数、前記特徴量抽出手段によって抽出し、所定数の特徴量を当該人物を特定可能な情報に対応付けて前記辞書登録手段へ登録するものであるのに対し、刊行物1発明は、顔の認証の際に、人物の動きを誘導するものであり、顔の特徴量を登録する際に人物の動きを誘導するものではない点。 イ 相違点についての検討 対象となる人物の動きを誘導しながら人物の特徴量を得る点については、刊行物1発明自体もそうであり、さらに、刊行物2、特開平11-316836号公報もそうであるように周知・慣用技術といえるところ、特に、刊行物2発明は、登録時に人物の動きを誘導をしているものであるから、刊行物1発明において、認証時ではなく、登録時に人物の動きを誘導することは、当業者が適宜なし得ることである。 また、刊行物1発明は、1または複数の認識データ(特徴量)が登録情報保持部に登録されているものであるものの、どのように登録されるかは明らかではないが、刊行物3発明は、認証用の登録画像を登録する際に、1台のカメラ構成で被登録者の座る方向を少しずつ変えつつ多視点(本願発明の「所定数」に対応する。)の顔画像からそれぞれ特徴量を抽出して登録しているものであるから、刊行物1発明において、認証用の登録画像を登録する際に、刊行物3発明の技術を採用し、所定数の特徴量を登録することは、当業者が容易になし得たことである。 してみれば、1つまたは複数の特徴量を登録する刊行物1発明において、所定数の顔の特徴量を登録する際に、当該人物の動きを誘導する誘導手段を具備し、当該人物の顔の特徴量を所定数、当該誘導手段により誘導された状況の下で抽出するようにすることは、当業者にとって容易に推考できたものであり、また本願補正発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2発明、刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成20年4月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成20年1月31日付け手続補正書において補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「撮像入力手段から得られた人物の顔領域の画像を抽出する顔領域抽出手段と、前記顔領域抽出手段によって抽出された上記顔領域の画像から顔の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、顔の特徴量を登録する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した顔の特徴量を当該人物の特徴量として登録するための辞書登録手段と、顔の特徴量を認証する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した特徴量と前記辞書登録手段により登録された特徴量との類似度に応じて当該人物を認証する人物認証手段と、顔の特徴量を登録する際に、当該人物の動きを誘導する誘導手段とを具備し、当該誘導手段により誘導された状況の下で当該人物の顔の特徴量を前記特徴量抽出手段によって抽出し、前記辞書登録手段へ登録することを特徴とする人物認証装置。」 (2)刊行物 原審拒絶理由に引用された刊行物1、刊行物2および、それらの記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明について、前記「2.(3)」において検討したことを勘案すれば、本願発明と刊行物1発明とは、 「撮像入力手段から得られた人物の顔領域の画像を抽出する顔領域抽出手段と、前記顔領域抽出手段によって抽出された上記顔領域の画像から顔の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、顔の特徴量を登録する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した顔の特徴量を当該人物の特徴量として登録するための辞書登録手段と、顔の特徴量を認証する際に、前記特徴量抽出手段が抽出した特徴量と前記辞書登録手段により登録された特徴量との類似度に応じて当該人物を認証する人物認証手段と、当該人物の動きを誘導する誘導手段とを具備し、当該人物の顔の特徴量を前記特徴量抽出手段によって抽出し、前記辞書登録手段へ登録することを特徴とする人物認証装置。」で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 <相違点> 本願補正発明は、顔の特徴量を登録する際に人物の動きを誘導するものであり、当該誘導手段により誘導された状況の下で当該人物の顔の特徴量を前記特徴量抽出手段によって抽出し、前記辞書登録手段へ登録するものであるのに対し、刊行物1発明は、顔の認証の際に、人物の動きを誘導するものであり、顔の特徴量を登録する際に人物の動きを誘導するものではない点。 イ 相違点についての検討 対象となる人物の動きを誘導しながら人物の特徴量を得る点については、刊行物1発明自体もそうであり、さらに、刊行物2、特開平11-316836号公報もそうであるように周知・慣用技術といえるところ、特に、刊行物2発明は、登録時に人物の動きを誘導をしているものであるから、刊行物1発明において、認証時ではなく、登録時に人物の動きを誘導することは、当業者が適宜なし得ることである。 してみれば、刊行物1発明において、所定数の顔の特徴量を登録する際に、当該人物の動きを誘導する誘導手段を具備し、当該人物の顔の特徴量を当該誘導手段により誘導された状況の下で抽出するようにすることは、当業者にとって容易に推考できたものであり、また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 (4)むすび したがって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-05 |
結審通知日 | 2009-11-06 |
審決日 | 2009-11-17 |
出願番号 | 特願2002-282443(P2002-282443) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 飯田 清司、新井 則和 |
特許庁審判長 |
吉村 博之 |
特許庁審判官 |
畑中 高行 千葉 輝久 |
発明の名称 | 人物認証装置および人物認証方法 |
代理人 | 堀口 浩 |