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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1209487 |
審判番号 | 不服2008-18466 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-18 |
確定日 | 2010-01-04 |
事件の表示 | 特願2002-251013「信号処理方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 94319〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は,平成14年8月29日の出願であって,平成20年6月10日付けで拒絶査定がされ,これに対して平成20年7月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年8月4日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は,平成20年8月4日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。 「 【請求項1】 正方配列のうちの市松位置に実画素が配置され残りの市松位置が無画素となる固体撮像素子から得られる市松配列の画像信号に対して同時化処理及びノイズ除去処理を含む必要なフィルタ処理を,前記市松配列の画像信号を前記正方配列に変換する前に,フィルタ係数が市松配列されたフィルタを用いてフィルタ演算処理し,その後に,前記正方配列に変換することを特徴とする信号処理方法。」 第3 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-292454号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている(記載箇所は段落番号等で表示)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,単板CCDのような撮像デバイスにおいて得られた信号値を用いて,撮像デバイスの全画素位置における信号値を推定する画像処理方法および装置並びに画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体に関するものである。」 イ 「【0049】 【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように本発明の第1の実施形態による画像処理装置は,単板CCD1を構成する各光電変換素子において得られた信号値に対して補間処理を施して,全画素位置における信号値を求めるものであり,各信号値により構成される画像データS0に対して補間処理を施して,補間済み画像データS1を得る補間手段2を備える。補間手段2は,後述するようにして補間演算によりG信号QGを算出するG補間手段3と,R信号QRおよびB信号QBを算出するRB補間手段4と,G信号QG,R信号QRおよびB信号QBから後述する図3に示す空孔画素位置*の信号値を算出する市松正方補間手段5とを備える。なお,図1に示す単板CCD1においては,これを構成する光電変換素子からはアナログ信号が得られるものであるが,本実施形態における画像データS0は,アナログ信号をA/D変換したデジタル信号であり,なおかつこのデジタル信号は単板CCD1に入力する光量の0.45乗あるいは対数値となるように変換されているものとする。」 ウ 「【0052】また,図2(b)に示す画素配列は,y方向にR,Bチャンネルに対応する画素を交互に配設したラインと,y方向にGチャンネルに対応する画素を配列したラインとを,各ラインの画素の配列間隔が他のラインの画素配列に対してy方向に略1/2相対的にずれるように配列したものであり,市松状の画素配列となっている。このような市松状の画素配列としては,上記特開平10-136391号に記載されたハニカム配列(図33)が知られており,本実施形態においては図2(b)に示す画素配列をハニカム配列と称するものとする。このハニカム配列は,x方向に対して45度傾斜した方向についてみれば,R,Gチャンネルの画素を交互に配列したラインと,同様に45度傾斜した方向にG,Bチャンネルの画素を交互に配列したラインとを,この方向に直交する方向に交互に配列したものとなっている。なお,ハニカム配列は図2(a)に示すようなベイヤー配列と画素の配列を45度回転させた関係となっている。また,ハニカム配列は上述したように市松状に画素が配列されてなるものであり,信号値を有さない空孔画素位置*を用いて図3に示すように正方状に表現することも可能である。本実施形態においては,図2(b)すなわち図3に示すハニカム配列の単板CCD1において得られた画像データS0に対して処理を行うものとして説明する。」 エ 「【0056】(1)まず,RおよびB画素位置におけるG信号の算出処理について説明する。このG信号の算出はG補間手段3において行われる。RおよびB画素位置におけるG信号は,その画素位置周辺のG画素位置において得られるG信号に対してスプライン補間演算を施すことにより算出することができる。図6はスプライン補間演算を行う2次元Cubicスプライン補間フィルタの例を示す図である。図6に示す2次元Cubicスプライン補間フィルタは,G信号を算出する画素位置の近傍16画素のG画素位置におけるG信号に対して補間演算を施すものである。したがって,図7において実線で囲んだR44画素位置でのG(R44)信号は,破線で囲んだその周囲の16のG画素位置(G11,G13,G15,G17,G31,G33,G35,G37,G51,G53,G55,G57,G71,G73,G75,G77)のG信号に対して,図6に示す2次元Cubicスプライン補間フィルタによりフィルタリング処理を施すことにより算出される。一方,B46画素位置でのG(B46)信号は,破線で囲んだその周囲のG画素位置(G13,G15,G17,G19,G33,G35,G37,G39,G53,G55,G57,G59,G73,G75,G77,G79)のG信号に対して,同様にフィルタリング処理を施すことにより算出される。これにより,補間前にG信号が有する周波数成分を損なうことなく補間を行うことができ,この結果,全ての画素位置において元の周波数情報を保持したG信号を得ることができる。」 オ 「【0111】このようにして,全ての画素位置においてRGB全ての信号値QR,QG,QBが得られると,市松正方補間手段5において,図3における空孔画素位置*でのRGB信号値を補間演算により算出して,画素が正方状に配列されてなる補間済み画像データS1を得る。この補間演算は,図17に示すような空孔画素位置*周辺の4画素位置の信号値を用いた補間フィルタや,図18に示すように4×4画素についての2次元Cubicスプライン補間演算を行う補間フィルタの補間係数の配置を45度傾斜させた補間係数の配置を有する補間フィルタを用いて補間演算を行うことにより求めることができる。なお,この空孔画素位置*における信号値を算出するための補間演算を市松正方補間演算とする。また,補間演算についてはこれらに限定されるものではなく,上述したように求められた各画素位置におけるRGB信号をYCC輝度色差空間に変換し,YCC毎に異なる補間フィルタによる補間演算を施す等,空孔画素位置*における信号値を算出するための補間演算であればいかなる方法をも採用可能である。」 カ 図6には,2次元Cubicスプライン補間フィルタの例が示されており,当該フィルタにおいては0以外のフィルタ係数が市松配列されている。 以上のことから,引用例1には, 市松状に画素が配列されてなるものであり,信号値を有さない空孔画素位置*を用いて正方状に表現することも可能なハニカム配列の単板CCD1において得られた画像データS0に対して補間処理を施して,補間済み画像データS1を得るものであって, G補間手段3およびRB補間手段4において,補間演算により,全ての画素位置においてRGB全ての信号値QR,QG,QBが得られると,市松正方補間手段5において,前記信号値QG,QR,QBから空孔画素位置*でのRGB信号値を補間演算により算出して,画素が正方状に配列されてなる補間済み画像データS1を得るものであり, 前記G補間手段3の補間演算において,0以外のフィルタ係数が市松配列された2次元Cubicスプライン補間フィルタを用いる 画像処理方法 の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「CCD1」は,固体撮像素子の一種であるから,本願発明の「固体撮像素子」に含まれるものである。 また,引用発明の「CCD1」は「市松状に画素が配列されてなるものであり,信号値を有さない空孔画素位置*を用いて正方状に表現すること」が可能な「ハニカム配列」を有するものであるから,引用発明の「CCD1」と本願発明の「固体撮像素子」とは,ともに「正方配列のうちの市松位置に実画素が配置され残りの市松位置が無画素となる」点で共通する。 引用発明の「画像データS0」は,ハニカム配列の単板CCD1から得られたものであって,後述する「市松正方補間手段」によって空孔画素位置*でのRGB信号値を補間する前のものであるから,ハニカム配列,つまり市松状に画素が配列されたものであることは明らかである。 よって,引用発明の「画像データS0」は,本願発明の「市松配列の画像信号」に相当する。 引用発明における「G補間手段3およびRB補間手段4において,補間演算により,全ての画素位置においてRGB全ての信号値QR,QG,QBが得られる」処理は,本願発明の「同時化処理」に相当する。 また,この処理における「補間演算」は,その中で「2次元Cubicスプライン補間フィルタ」を用いるものであるから,引用発明の上記「G補間手段3およびRB補間手段4」における処理が,本願発明と同様,「フィルタ処理」として構成されているものといえる。 引用発明の「市松正方補間手段5において,前記信号値QG,QR,QBから空孔画素位置*でのRGB信号値を補間演算により算出して,画素が正方状に配列されてなる補間済み画像データS1を得る」処理は,「前記信号値QG,QR,QB」が当該処理前である以上,市松状に画素が配列されたものであることは当然であるから,本願発明の「市松配列の画像信号を前記正方配列に変換する」処理に相当する。 引用発明の「G補間手段3およびRB補間手段4」における処理において用いられる「2次元Cubicスプライン補間フィルタ」は,0以外のフィルタ係数が市松配列されたものであるから,引用発明の「G補間手段3およびRB補間手段4」における処理と本願発明の「フィルタ処理」とは,「フィルタ係数が市松配列されたフィルタを用いたフィルタ演算処理」である点で共通する。 引用発明の「G補間手段3およびRB補間手段4」における処理は「市松正方補間手段」における処理前に行われるものであるから,引用発明と本願発明とは「市松配列の画像信号を前記正方配列に変換する前に」フィルタ演算処理をし,「その後に,前記正方配列に変換する」点で共通する。 引用発明の「画像処理方法」における画像データは「デジタル信号」を対象とするものであるから,本願発明の「信号処理方法」に相当するものといえる。 以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。 【一致点】 正方配列のうちの市松位置に実画素が配置され残りの市松位置が無画素となる固体撮像素子から得られる市松配列の画像信号に対して同時化処理であるフィルタ処理を,前記市松配列の画像信号を前記正方配列に変換する前に,フィルタ係数が市松配列されたフィルタを用いてフィルタ演算処理し,その後に,前記正方配列に変換する信号処理方法。 【相違点】 市松配列の画像信号を正方配列に変換する前に施されるフィルタ処理が,本願発明では同時化処理及び「ノイズ除去処理を含む必要な」フィルタ処理であるのに対し,引用発明では「補間演算により,全ての画素位置においてRGB全ての信号値QR,QG,QBが得られる処理」(本願発明の「同時化処理」に相当)であって,これ以外のノイズ除去処理を含む必要なフィルタ処理については明らかではない点。 第5 当審の判断 上記相違点について検討する。 通常,補間処理やエッジ強調など各種の画像処理を行う際に,画像データにノイズが含まれていると,そのノイズを参照して処理が施されることになり,不適切な処理結果(例えば,補間処理であれば隣接画素値とはかけ離れた画素値になってしまう,エッジ強調であればノイズが強調されてしまう,など)となってしまうことから,これらの画像処理に先立ってノイズ除去のためのフィルタ処理を施すことが,画像処理の技術分野における技術常識である。このことは,例えば,特開平11-215515号公報(原査定で引用された文献)の段落【0062】の「他の種類の画像処理,例えば補間処理や色補正,エッジ強調などに先だってノイズを除去することができる。したがって,他の種類の画像処理によるノイズの副作用を効果的に除去することができるのである」との記載からも明らかである。 また,このようなことは撮像素子がハニカム配列であるか否かということとは関係がなく,またハニカム配列であるからといって,上記技術常識が否定される要因はない。 そして,引用発明の画像処理方法においても,ノイズの発生は当然予測され得るものであって,それを除去するためのフィルタ処理を補間処理を施す前に施すこと,またノイズ除去以外にもノイズ除去同様,画像処理前に処理することが必要なフィルタ処理があれば,同じく補間処理を施す前に施すことに,格別困難な点はない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び画像処理の技術分野における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-29 |
結審通知日 | 2009-11-04 |
審決日 | 2009-11-17 |
出願番号 | 特願2002-251013(P2002-251013) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 脇岡 剛、真木 健彦、松野 広一 |
特許庁審判長 |
吉村 博之 |
特許庁審判官 |
廣川 浩 千葉 輝久 |
発明の名称 | 信号処理方法及びその装置 |
代理人 | 高松 猛 |
代理人 | 矢澤 清純 |