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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1209531
審判番号 不服2006-19981  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-07 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 特願2001- 26433「スクリーン印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月14日出願公開、特開2002-225222〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年2月2日の出願であって、平成17年1月14日付け拒絶理由通知に対して、同年3月14日付けで手続補正がなされ、同年4月26日付けの最後の拒絶理由通知に対して、同年6月24日付けで手続補正がされたが、平成18年7月31日付けで平成17年6月24日付け手続補正が却下されるとともに、同日付で拒絶査定され、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年10月4日付けで明細書の手続補正がなされたものである。
その後、当審で審理した結果、平成21年9月7日付けで平成18年10月4日付け手続補正を却下するとともに、同日付で拒絶理由(最初)を通知したところ、同年10月5日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願発明は、平成21年10月5日付け手続補正書の請求項1に記載された、下記のとおりのものであると認められる。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態でマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージヘッドはヘッド昇降部によって昇降自在に配設されており、前記ヘッド昇降部はプレート部材上に立設され前記スキージヘッドを前記マスクプレートに対して昇降させるシリンダを備え、かつ前記シリンダのロッドの下端部には結合部材を介して前記スキージヘッドが結合され、また前記ロッドには開閉駆動されるクランパが設けられており、
前記スキージヘッドが前記マスクプレート上の基板範囲外に位置している基板入れ替え時に前記クランパによって前記ロッドを固定することにより前記スキージヘッドの上下位置を固定し、且つこの基板入れ替え時においても、スキージヘッドがマスクプレート上で摺動して加圧されたペーストを基板に印刷する印刷動作時と同様に、前記ペースト加圧手段によるペーストの加圧を維持することを特徴とするスクリーン印刷方法。」(当審で下線を付した。以下同じ。)

第3 引用刊行物に記載された発明
当審の拒絶理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-305559号公報(以下「引用文献1」という。)には、図とともに次の事項が記載されている。

ア 「印刷用スクリーン版20を被印刷体10に密着させて配置し、ディスペンサー30の開口部31をスクリーン版20上に押圧しながら往復移動させることよりなるスクリーン印刷法であり、好ましくはディスペンサー30内部のペースト状印刷液32の上に圧搾空気を導入して加圧し、かつ当該印刷液32を攪拌して常時その粘度を一定に保持することを特徴とする。」【解決方法】

イ 「このようにペースト状印刷液がマスク孔の周辺に漏洩してスクリーン版の裏面に付着すると、印刷を数回繰り返すごとにスクリーンを清掃しなければならず、余分な作業を必要とするという問題点があった。」【0004】

ウ 上記イにおいて「印刷を繰り返す」とは、被印刷体を入れ替えて印刷することであるから、引用文献1のスクリーン印刷方法は、複数の被印刷体を入れ替えながら行う行程を備えていることになる。

エ 「その際使用するディスペンサーの形状は、特に限定されるものではないが、例えば図2の斜視図に示すような構造のものが好適である。図に示す通り、このディスペンサー30の上部には、内部に貯留されたペースト状印刷液32の液面33に空気圧を付加するための圧搾空気導入口34を備えており、また、開口部31に近い下方内部空間にペースト状印刷液32を攪拌するため攪拌子35を備えている。」【0007】

オ 「この場合、開口部31を形成する両側壁36、37のうち、ディスペンサー30の進行方向側に位置する側壁36(又は37)はスクリーンを押さえる押圧板として、また進行方向反対側の側壁37(又は36)はスキージとして、それぞれ作用するものである。かくして、スクリーン版の裏面にペースト状印刷液が付着することがなくなり、清掃回数が減少して作業能率が向上する。」【0009】

カ 「さらに、ペースト状印刷液32を攪拌する攪拌子35をその内部に設置しておくときは、ゾルを形成する顔料や金属微粒子が有機樹脂から分離して不均一な分散系になることが防止でき、しかも、ゾルの粘度を常に適正なレベルに調節しておくことが可能なので、印刷開始時に別途練り直しする必要がなく、自動化が容易であり、精度の高い印刷が可能となる。」【0011】

キ 「【発明の実施の形態】つぎに、図面に基づきこの発明の実施の形態を説明する。図1(A)?(C)は、この発明に係るスクリーン印刷法の工程を示す概略図であり、印刷を開始するに当っては先ず図1(A)のようにポリエステル製スクリーン版20を被印刷体10の表面に密着させて配置すると共に、該スクリーン版20上の印刷開始位置表面にデスペンサー30の開口部31を押圧させて載置する。」【0014】

ク 「上記デイスペンサー30は、図2に示すごとく、開口部31に近い場所においてペースト状印刷液32を攪拌するための撹拌子35を内蔵しており、その攪拌効果により、通常は固化し易いチクソトロピー性印刷液の粘度が、使用中は勿論のこと、待機中といえども常に適正なレベルに維持されている。」【0015】

ケ 「デイスペンサー30の上部にある空気導入口34から圧搾空気を導入してペースト状印刷液32の液面33に空気圧を付加し、この状態で図1(B)のようにデイスペンサー30を矢印方向に走行移動させて印刷を開始する。その間、ディスペンサー30の開口部31がマスク孔21の上にくるたびに、ペースト状印刷液32が液面上の空気圧により押し出されてマスク孔21内に充填される。ディスペンサー30がスクリーン版20の他端に達し一回の印刷が終った時点で、図1(C)に示すように、被印刷体10をスクリーン版20から離隔させる。」【0016】

コ 上記ケより、ディスペンサーは、圧搾空気によりペースト状印刷液を加圧した状態でスクリーン版上を走行移動していることになる。

サ 「この方法に用いられる印刷液としては、通常の印刷用着色インキのほかソルダーレジストインキ等PWB関係に使用される各種インキ、或いは粘着剤インキや抵抗体カーボンペーストなど特殊目的インキを含む各種のインキ・ペースト類を挙げることができる。」【0018】

シ 上記サより、被印刷体として「プリント配線板」(printed wiring board)が開示されていることになる。

ス「また、ディスペンサー内部にペースト状印刷液を貯留すると共に、好ましくはその液面を加圧し、かつ印刷液を攪拌して常時その粘度を一定に保持することができるので、従来手作業を要したインキの供給や粘度調整工程の自動化が可能となり、生産性が改善される。」【0021】

上記記載から、引用文献1には次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)と認められる。

「印刷用スクリーン版をプリント配線板に密着させて配置し、内部にペースト状印刷液を貯留したディスペンサーを
圧搾空気によりペースト状印刷液を加圧した状態でディスペンサーの開口部をスクリーン版上に押圧しながら往復移動させることより、マスク孔内にペーストを充填し、
ディスペンサーがスクリーン版の他端に達し一回の印刷が終った時点で、プリント配線板をスクリーン版から離隔させてプリント配線板を入れ替える行程を備えるスクリーン印刷方法。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)引用文献1に「開口部31を形成する両側壁36、37のうち、ディ スペンサー30の進行方向側に位置する側壁36(又は37)はスクリー ンを押さえる押圧板として、また進行方向反対側の側壁37(又は36) はスキージとして、それぞれ作用するものである。」(摘記(オ)参照。 )と記載されていることから、引用文献1に記載の「ディスペンサー」は 、スキージを備えたものである。
してみれば、引用発明の「内部にペースト状印刷液を貯留したディスペ ンサー」は、本願発明の「内部にペーストを貯溜したスキージヘッド」に 相当する。
(2)引用発明の「印刷用スクリーン版」は本願発明の「マスクプレート」 に相当し、同様に「プリント配線板」は「基板」に、「圧搾空気によりペ ースト状印刷液を加圧した状態」は「ペースト加圧手段によって前記ペー ストを加圧した状態」に、「スクリーン版上に押圧しながら往復移動させ る」は「マスクプレート上で摺動させる」に、「マスク孔内にペーストを 充填し」は「マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷 する」に、それぞれ、相当する。
(3)引用発明の「ディスペンサーがスクリーン版の他端に達し一回の印刷 が終った時点で、プリント配線板をスクリーン版から離隔させてプリント 配線板を入れ替える行程を備え」と 本願発明の「スキージヘッドが前記 マスクプレート上の基板範囲外に位置している基板入れ替え時に前記スキ ージヘッドの上下位置を固定し、且つこの基板入れ替え時においても、ス キージヘッドがマスクプレート上で摺動して加圧されたペーストを基板に 印刷する印刷動作時と同様に、前記ペースト加圧手段によるペーストの加 圧を維持する」とは、
「スキージヘッドが前記マスクプレート上の基板範囲外に位置している基 板を入れ替える行程を備え」という点で共通する。

してみると、引用発明と本願発明は、以下の点で一致する。
「内部にペーストを貯溜したスキージヘッドをペースト加圧手段によって前記ペーストを加圧した状態でマスクプレート上で摺動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージヘッドが前記マスクプレート上の基板範囲外に位置している基板入れ替え行程を備えるスクリーン印刷方法。」

一方、引用発明と本願発明は、以下の点で相違している。
<相違点1>
スキージヘッドに関し
本願発明は「スキージヘッドはヘッド昇降部によって昇降自在に配設されており、前記ヘッド昇降部はプレート部材上に立設され前記スキージヘッドを前記マスクプレートに対して昇降させるシリンダを備え、かつ前記シリンダのロッドの下端部には結合部材を介して前記スキージヘッドが結合され、また前記ロッドには開閉駆動されるクランパが設けられており、」と特定されるものであるのに対して、引用発明では上記特定を有していない点。

<相違点2>
基板入れ替え行程に関し
本願発明は「基板入れ替え時に前記クランパによって前記ロッドを固定することにより前記スキージヘッドの上下位置を固定し、且つこの基板入れ替え時においても、スキージヘッドがマスクプレート上で摺動して加圧されたペーストを基板に印刷する印刷動作時と同様に、前記ペースト加圧手段によるペーストの加圧を維持する」と特定されるものであるのに対して、引用発明では上記特定を有していない点。

2 判断
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
ア 「スキージヘッドはヘッド昇降部によって昇降自在に配設されており、前記ヘッド昇降部はプレート部材上に立設され前記スキージヘッドを前記マスクプレートに対して昇降させるシリンダを備え、かつ前記シリンダのロッドの下端部には結合部材を介して前記スキージヘッドが結合され」との構成を備えたスキージヘッドの移動手段は、本願出願前に周知である(例えば、特開平07-032581号公報、特開平06-336005号公報、特開平04-284249号公報を参照。)。

イ また、油圧式のシリンダ等を利用したスキージにおいて、版離れを円滑に行うためにシリンダのロッドを位置固定する「クランパ」を設けることも本願出願前に周知である(例えば、特開2000-225685号公報、実願平02-123625号(実開平04-080085号)のマイクロフィルムを参照。)。

ウ 以上のことから、引用発明において、上記アで指摘した「周知の移動手段」を採用するとともに、版離れを円滑に行うために、上記イで指摘した「クランパ」を設けること、つまり、上記<相違点1>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について
ア 基板入れ替え時において版離れを円滑に行うために、上記<相違点1>で指摘した周知の「クランパ」により、スキージヘッドの上下位置を固定することは必要に応じて適宜なし得ることである。

イ チクソトロピー性印刷液であるペーストがパターン孔のない待機位置で静止状態に置かれると粘度の上昇することは、本願出願前に周知であり(例えば、特開2001-009346号公報、特開平02-174192号公報を参照。)、引用文献1に「通常は固化し易いチクソトロピー性印刷液の粘度が、使用中は勿論のこと、待機中といえども常に適正なレベルに維持されている。」(摘記(ク)参照。)及び「ディスペンサー内部にペースト状印刷液を貯留すると共に、好ましくはその液面を加圧し、かつ印刷液を攪拌して常時その粘度を一定に保持する・・・生産性が改善される。」(摘記(シ)参照。)と記載されていることから、ディスペンサーがパターン孔のない位置に移動する基板の入れ替え時において、チクソトロピー性印刷液が静止状態となることで粘度が上昇しないように、印刷液の液面を加圧し、かつ印刷液を攪拌すること、つまり、「印刷動作時と同様に、ペースト加圧手段によるペーストの加圧を維持する」ことは容易になし得ることである。

ウ 以上のことから、引用発明において、<相違点2>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術が奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。

第5 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-30 
結審通知日 2009-11-04 
審決日 2009-11-17 
出願番号 特願2001-26433(P2001-26433)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 藏田 敦之
星野 浩一
発明の名称 スクリーン印刷方法  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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