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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1209570
審判番号 不服2007-22369  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-13 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 平成 9年特許願第285105号「試験片を読み取る自動化された方法及びそれに用いる試験片」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月22日出願公開,特開平10-132734〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成9年10月17日の特許出願(パリ条約に基づく優先権主張平成8年10月21日,米国)であって,平成19年5月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年9月11日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年9月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の目的について
本件補正により,出願当初の特許請求の範囲の請求項10は,以下のとおり補正された(下線部は補正箇所を示す)。

「流体試料中の1種以上の分析対象物を分析するための試験片において,
a)吸収性材料のキャリヤと,
b)分析対象物に対して反応性を示し,かつスペクトル検出可能な応答を提供することができる,少なくとも1種の試験フィールド材料を含む,キャリヤの一方の表面にある少なくとも一つの試験フィールドと,
c)キャリヤの一方の表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールドであって,互いに異なる特定のスペクトル領域の光をそれぞれが反射することができ,反射された光のみでスペクトル的に検出できる応答を与えるマーカフィールドであり,特定のスペクトル領域が,スペクトル領域の,試験片の識別に関する情報に相関するコード化シーケンスを形成するように事前に決定されているマーカフィールドと,を含むことを特徴とする試験片。」

上記補正は,請求項10に係る発明を特定するために必要な事項である「キャリヤの表面にある少なくとも一つの試験フィールド」と「キャリヤの表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールド」について,それぞれキャリヤの一方の表面にあることを明りょうにするために,「キャリヤの一方の表面にある少なくとも一つの試験フィールド」および「キャリヤの一方の表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールド」とし,同じく「互いに異なるスペクトル領域」について,「互いに異なる特定のスペクトル領域」との限定を付加し,同じく「マーカフィールド」について「反射された光のみでスペクトル的に検出できる応答を与えるマーカフィールド」との限定を付加し,同じく「試験片に関する情報」について,「試験片の識別に関する情報」との限定を付加するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号及び第3号の特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件について
本件補正後の前記請求項10に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって,優先日前に頒布された刊行物である特開平7-5110号公報(以下,「引用例」という。)には,「試験片を用いる分析方法及び試験片の認識方法」について,図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【請求項8】 カラーイメージセンサ,或いはモノクロイメージセンサと透過波長の異なる複数のフィルタや複数の波長の異なる光源を組合せたもの,又はモノクロイメージセンサと単色光を用いて,試験片の試薬部以外の位置に設けたバーコード,文字や図形,色,切欠その他の表示を読み取り,試験片の種類やロット番号,検量線等を判別することを特徴とする試験片の認識方法。」

(1-イ)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,試験片の試薬部の呈色の度合によって流体試料中の一種或いは複数種の成分濃度を定性的,定量的に測定するものであって,呈色の度合の観測をイメージセンサを用いて行なう新規な方法に関する。」

(1-ウ)
「【0009】本発明で試験片とは,流体試料中の成分濃度を呈色反応により測定するための用具を言い,支持体の一部に試薬部を備えたもの,或いは試験片全体が試薬部で構成されたものでもよい。後者の場合,呈色するのは,その特定の一部を試薬部として利用するのが普通である。試薬部は,平板状(細長いスティックや方形・矩形状のシート等)の支持体の上に塗布や貼着したものでもよいし,ケース状になっている支持体の中に試薬部を収納した形式のものなど,あらゆる形式のものを含む。一方,試薬部は,呈色反応試薬を濾紙やフィルムその他の担体に塗布,印刷,含浸或いは練り混み等により一体化させたものである。試薬部は通常は全体が呈色するようになっているが,試薬層を試薬部の一部に帯状等に設けて,呈色状態が試薬層の無い部分との比較で見やすいようにしたものも対象に含む。」

(1-エ)
「【0010】・・・前記した試薬層を帯状に設けたものでは,試験片の種類(測定項目や検査対象疾患)の認識等のために,試験片の試薬部が無い部分(全体が試薬部の場合は,その一部)に,バーコード文字や図形,色,切り欠け(試験片の載置台の色が見える)等を設けるとよい。」

(1-オ)
【図1】には,支持体の一方の表面にある少なくとも1つの試薬部が記載されている。

そうすると,これら(1-ア)?(1-オ)の記載と図面とを総合すると,引用例には,次の発明が記載されている。

「流体試料中の一種或いは複数種の成分濃度を定性的,定量的に測定するための試験片において,
支持体と,呈色試薬を含む,支持体の一方の表面にある少なくとも1つの試薬部と,試験片の種類やロット番号,検量線等を判別するための,試験片の試薬部以外の位置に設けたバーコード,文字や図形,色,切欠その他の表示を備えた,試験片。」(以下,「引用発明」という。)

(2)対比・判断
補正発明と引用発明とを対比すると,その機能・構造からみて,引用発明の「流体試料中の一種或いは複数種の成分」,「定性的,定量的に測定」,「支持体」は,それぞれ本願発明の「流体試料中の1種以上の分析対象物」,「分析」,「キャリヤ」に相当するのは明らかである。
また,引用発明の「呈色試薬」は(1-イ),(1-ウ)の記載から,「流体試料中の一種或いは複数種の成分濃度」に反応して呈色するものであるといえ,これは補正発明の「分析対象物に対して反応性を示し,かつスペクトル検出可能な応答」に相当し,そうすると引用発明の「試薬部」も補正発明の「試験フィールド」に相当するといえる。
そして,引用発明の「試験片の種類やロット番号,検量線等を判別するための,試験片の試薬部以外の位置に設けたバーコード,文字や図形,色,切欠その他の表示」と,補正発明の「キャリヤの一方の表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールドであって,互いに異なる特定のスペクトル領域の光をそれぞれが反射することができ,反射された光のみでスペクトル的に検出できる応答を与えるマーカフィールドであり,特定のスペクトル領域が,スペクトル領域の,試験片の識別に関する情報に相関するコード化シーケンスを形成するように事前に決定されているマーカフィールド」とは,「試験片の識別用フィールド」である点で共通するといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「流体試料中の1種以上の分析対象物を分析するための試験片において,
a)吸収性材料のキャリヤと,
b)分析対象物に対して反応性を示し,かつスペクトル検出可能な応答を提供することができる,少なくとも1種の試験フィールド材料を含むキャリヤの一方の表面にある少なくとも一つの試験フィールドと,試験片の識別用フィールドと,を含む試験片。」である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点)
「試験片の識別用フィールド」について,補正発明では「キャリヤの一方の表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールドであって,互いに異なる特定のスペクトル領域の光をそれぞれが反射することができ,反射された光のみでスペクトル的に検出できる応答を与えるマーカフィールドであり,特定のスペクトル領域が,スペクトル領域の,試験片の識別に関する情報に相関するコード化シーケンスを形成するように事前に決定されているマーカフィールド」という構成をとるのに対し,引用発明においては「試験片の種類やロット番号,検量線等を判別するための,試験片の試薬部以外の位置に設けたバーコード,文字や図形,色,切欠その他の表示」という構成をとる点。

相違点について検討するに,「少なくとも二つの別個のマーカフィールドであって,互いに異なる特定のスペクトル領域の光をそれぞれが反射することができ,反射された光のみでスペクトル的に検出できる応答を与えるマーカフィールド」については,優先日前に周知であるといえる。
例えば,先の拒絶査定の理由においても引用された特開平6-111040号公報には,「カラーコード」の発明について,
「【請求項1】複数の色相を配置するカラーコードにおいて,複数の桁マーク(2)およびこの桁マーク(2)の周囲の所定の点を基準とした所定範囲内に色相マーク(3)を配置して構成したことを特徴とするカラーコード。」
「【0017】色相マーク3は,コード(データ)に対応する組合せの色相の色を,基点から所定距離R離れ,基線から角度Θの点を中心に所定範囲内に配置する色相であって,ここでは,カラーコードテーブル11に設定したコード(データ)に対応する2つの色相(同一色相の組合せを含む)をペアとしたものである。」と記載されている。
そして,引用発明においても,試験片の識別用フィールドの構成として「バーコード」や「色」を使うことが示唆されていることから,上記周知事項を適用して,補正発明における相違点の構成とすることは,当業者なら何ら困難性はなく,容易に想到する事項であるといえる。
また,本願明細書に記載された効果も,引用発明および上記周知事項から,当業者が予想しうる範囲のものであり,格別顕著なものであるといえない。
したがって,補正発明は,引用発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をできたというべきである。

なお,出願人は,平成21年2月17日付けの回答書において,さらに「試験フィールドとマーカフィールドとが1つの読み取り手段で反射を検出可能なように互いに十分に近接して配置され,マーカフィールドが細長の試験片の長手方向に沿って一次元パターンで配置されている」点を補正する旨主張しているが,「試験フィールド」と「マーカフィールド」をどのような位置に設けるかについては,当業者が適宜実施する程度のものであり,設計事項であるといわざるをえない。よって,請求人の主張は採用できない。

(3)まとめ
したがって,補正発明は,引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成19年9月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1ないし21に係る発明は,出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ,その請求項10は次のとおりのものである。
「【請求項10】 流体試料中の1種以上の分析対象物を分析するための試験片において,
a)吸収性材料のキャリヤと,
b)分析対象物に対して反応性を示し,かつスペクトル検出可能な応答を提供することができる,少なくとも1種の試験フィールド材料を含む,キャリヤの表面にある少なくとも一つの試験フィールドと,
c)スペクトル領域の,試験片に関する情報に相関するコード化シーケンスを形成するように事前に決定されている互いに異なるスペクトル領域の光をそれぞれが反射することができる,キャリヤの表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールドと,
を含むことを特徴とする試験片。」(以下,「本願発明」という。)

2.引用刊行物およびその記載事項
原査定の理由に引用した刊行物およびその記載事項は,前記「第2.2.(1)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,前記「第2.2.」において検討した補正発明から,「キャリヤの表面にある少なくとも一つの試験フィールド」と「キャリヤの表面にある少なくとも二つの別個のマーカフィールド」との限定事項である「キャリヤの一方の表面にある」との構成を省き,同じく「互いに異なるスペクトル領域」の限定事項である「互いに異なる特定のスペクトル領域」との構成を省き,同じく「マーカフィールド」の限定事項である「反射された光のみでスペクトル的に検出できる応答を与えるマーカフィールド」との構成を省き,同じく「試験片に関する情報」の限定事項である「試験片の識別に関する情報」との構成を省くものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,前記「第2.2.(3)」に記載したとおり,引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用刊行物に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-01 
結審通知日 2009-07-07 
審決日 2009-08-18 
出願番号 特願平9-285105
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦横尾 雅一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
竹中 靖典
発明の名称 試験片を読み取る自動化された方法及びそれに用いる試験片  
復代理人 柳橋 泰雄  
代理人 津国 肇  

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