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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1209592
審判番号 不服2007-34313  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-20 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 平成10年特許願第 40503号「綿包装体および綿包装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月31日出願公開、特開平11-236008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年2月23日の出願であって、その請求項1乃至4に係る発明は、特許法第17条の2の規定によって平成20年1月21日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定される通りのものと認められるところ請求項1の記載は以下のとおりである(以下、これによって特定される発明を「本願発明」という。)。
「平板状の原綿の単位集積体を複数層に積層して形成された原綿積層体を積層方向に圧縮梱包して得られる綿包装体であって、上記原綿積層体は、合成樹脂製フィルムにより包装される前に予め2枚のプレス板間で圧縮処理が施されつつ積層頂面と積層底面を通る経線方向への結束部材による巻回締結によって結束され、この結束された状態の原綿積層体の外周面が、合成樹脂製フィルムによって包装され、上記フィルムは、帯状の第1フィルムと帯状の第2フィルムとが用いられ、第1フィルムおよび第2フィルムは、原綿積層体を互いに交差する方向に巻回することによって六面を全面被覆するとともに、それらの巻回方向は、原綿積層体の積層頂面および積層底面を通る経線方向であって、上記頂面および底面で交差する方向に巻回されたものであることを特徴とする綿包装体。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-221420号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「原綿緊縛鋼線の切断装置」に係る発明の従来技術として以下の事項が記載されている。
「原綿が紡績工場に送られて来る場合は、ブロツク状に圧縮成形されるとともに、その外周面の間隔をおいた複数箇所を鋼線で緊縛されて布製の袋内に詰められた状態、あるいは、袋の外から鋼線で緊縛された状態で送られて来るのが一般的である。」(段落番号【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】の記載参照)
上記の記載から、引用文献1には、圧縮形成され、外周面を結束部材で結束された原綿を布製の袋内に詰めた、すなわち被包された綿包装体が記載されているということができる。
同じく原査定の拒絶の理由に引用された実願昭50-122731号(実開昭52-37058号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、「梱包装置」として、被包装体の第1の周囲と、これと直交する第2の周囲とに、それぞれ帯状の粘着性フィルムを巻き付ける装置(実用新案登録請求の範囲の記載参照)が記載されており、実施例として、第5図には、並列状態に重ね合わせられた複数の被包装体の頂面と底面を通る(A-A)方向の第1の周囲とこれと直交し同じく頂面と底面を通り、第1の周囲の(A-A)方向と上記頂面および底面で交差する(B-B)方向の第2の周囲に帯状のフィルムを巻回し、六面体をなす被包装体の六面を全面被覆する態様が記載され、さらに第1の周囲に巻き付けたフィルムと第2の周囲に巻き付けたフィルムとが熱接着されること(第2頁第8?12行及び第3頁第6?10行の記載参照)も記載されている。

3.対比
本願発明と上記引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1に記載された「原綿」は、圧縮形成すなわち圧縮処理され、結束部材(鋼線)を原綿の外周面を巻回締結して結束されるものと認められ、該結束された原綿を詰める袋は、圧縮した原綿を被包する包装材である点で本願発明の原綿積層体を被覆する合成樹脂フィルムと共通するので、両者は、「圧縮処理が施され、包装材による包装前に結束部材による巻回締結によって結束され、この結束された状態の原綿の外周面が包装材によって包装されている綿包装体」である点で一致しており、以下の点で相違するものである。
[相違点1]本願発明は「平板状の原綿の単位集積体を複数層に積層して形成された原綿積層体を積層方向に圧縮梱包」するものであり、「積層頂面と積層底面を通る経線方向への結束部材による巻回締結によって結束」されるのに対し、引用文献1に記載された原綿は、本願発明で規定するような原綿積層体とはされておらず、積層方向に圧縮して、積層頂面と積層底面を通る経線方向への結束部材による巻回締結によって結束するともされていない点。
[相違点2]本願発明の原綿積層体は、「2枚のプレス板間で圧縮処理が施されつつ」結束部材で結束されているのに対し、引用文献1に記載された原綿の包装前の結束部材による巻回締結が、「2枚のプレス板間で圧縮処理が施されつつ」結束されるとはされていない点。
[相違点3]本願発明の外周面の包装は、「合成樹脂製フィルムによって包装され、上記フィルムは帯状の第1フィルムと帯状の第2フィルムとが用いられ、第1フィルムおよび第2フィルムは、原綿積層体を互いに交差する方向に巻回することによって六面を全面被覆するとともに、それらの巻回方向は、原綿積層体の積層頂面および積層底面を通る経線方向であって、上記頂面および底面で交差する方向に巻回されたものである」のに対し、引用文献1に記載された包装は「布製の袋」によるものである点。

4.判断
そこで、上記の相違点について検討する。
[相違点1]について
紡績原料としての原綿の形態として、平板状の原綿の単位集積体を複数層に積層して形成された原綿積層体は、例えば、特公昭45-17376号公報(原査定時に周知文献として提示)及び特開平1-226511号公報等にも示されているように本願出願前一般的に知られており、引用文献1に記載されたもののように包装前に圧縮、結束される原綿として該本願出願前周知の形態のものを採用することは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
また、その際、積層方向に圧縮すること、巻回結束の方向を、本願発明でいう「積層頂面と積層底面を通る経線方向」とすることは、技術常識からみて当業者が適宜行う程度のことである。
[相違点2]について
圧縮原綿の結束部材による巻回締結を、2枚のプレス板間で圧縮処理を施しつつ行うことは、例えば、特開昭62-251330号公報(原審の拒絶理由で提示)及び特開昭60-58313号公報等にも示されているように本願出願前周知慣用の手段であり、上記引用文献1に記載された包装前の結束部材による巻回締結を、2枚のプレス板間で圧縮処理を施しつつ行うことは、当業者が本願出願前周知の技術的事項に基づいて適宜なし得る事項である。
[相違点3]について
圧縮原綿の包装を、合成樹脂製フィルムによって行うことは、例えば上記特開昭62-251330号公報及び特開平1-226511号公報等にも示されているように、本願出願前周知の技術的事項であり、特に上記特開昭62-251330号公報には、結束された圧縮原綿を(結束の上から)フィルムで巻回することも示されているところ、上記引用文献2には、重ね合わされて六面体をなす被包装体(本願発明の「原綿積層体」に相当)を互いに直交する方向に2つの帯状のフィルムで巻回し、その六面を全面被覆し、その巻回方向が重ね合わされた被包装体の頂面および底面を通る方向(本願発明でいう「原綿積層体の積層頂面および積層底面を通る経線方向」)であって、上記頂面および底面で交差する方向に巻回されたものである包装体が記載されており、さらに、引用文献2に記載された帯状のフィルムは「熱接着」可能であることからしても「合成樹脂製フィルム」であることは容易に推認できる。
してみれば、結束された状態の原綿の外周面を包装を、引用文献1に記載された「袋」の使用に代えて、引用文献2に記載されたような、合成樹脂製の2つの帯状フィルムを用いて、引用文献2に記載されたように、原綿の頂面および底面を通る経線方向であって、上記頂面および底面で互いに交差する方向に巻回して、六面を全面被覆するようにすることは、前記本願前周知の技術的事項に照らしても当業者が容易になし得る事項である。
以上のとおりであるから、本願発明は、本願出願前周知の技術的事項を勘案すれば、上記引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
上記のように、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-28 
結審通知日 2009-11-04 
審決日 2009-11-19 
出願番号 特願平10-40503
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 豊島 ひろみ
熊倉 強
発明の名称 綿包装体および綿包装装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  

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