• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1209648
審判番号 不服2007-25499  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-18 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 平成 8年特許願第509347号「ユーザがプログラムできる触覚のフィードバックを有する仮想作業領域」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月14日国際公開、WO96/07965、平成 9年 5月27日国内公表、特表平 9-505426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,1995年8月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年9月7日,オーストリア国)を国際出願日とする出願であって,平成19年6月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,平成19年10月18日付けで手続補正がなされたが,その後,当審において平成20年9月12日付けで最初の拒絶理由が通知され,平成21年3月16日付けで手続補正がなされたが,平成21年4月8日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成21年7月7日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年7月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正の概要及び本件補正後の本願発明
本件補正は,特許請求の範囲についてするもので,本件補正前の請求項1については,
(イ)「当該システムは前記触覚レスポンスの属性のプログラミングを可能にするプログラミング手段」とあったところを「当該システムは,複数の触覚フィールドの中から前記仮想作業領域上にマッピングする1つを選択し,該触覚フィールドの1つ以上の属性を調整して前記仮想作業領域をカスタマイズすることを可能にするプログラミング手段」と補正し,
(ロ)「前記仮想作業領域内の触覚フィールドに対応する触覚レスポンスの以下の複数の属性」とあったところを「該触覚フィールドの以下の属性」と補正し,
(ハ)「前記触覚フィールド」を「該触覚フィールド」と補正し,
(ニ)「少なくとも1つのプログラミングを可能にする」を「1つ以上の調整を可能にする」と補正するものである。
そこで,上記各補正について検討すると,平成21年7月7日付け意見書「2.補正の概要(1)」に記載されているとおり,(イ),(ニ)は「プログラミング手段」の機能を限定的に減縮する補正であるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであり,(ロ),(ハ)の補正は「触覚レスポンスの以下の複数の属性:・・・」に関連する記載を明瞭にする補正であるから,特許法第17条の2第4項第4号に掲げる事項を目的とするものである。
従って,請求項1についての本件補正は,少なくとも特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで,本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か)を,請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】
仮想作業領域と対話をすることを可能にする情報処理システムであって,前記仮想作業領域のビジュアル表示のためのディスプレイと,ユーザが前記仮想作業領域を横切ってカーソルを導くことを可能にし且つ該ユーザに触覚レスポンスを提供するインターフェースデバイスとを含み,当該システムは,複数の触覚フィールドの中から前記仮想作業領域上にマッピングする1つを選択し,該触覚フィールドの1つ以上の属性を調整して前記仮想作業領域をカスタマイズすることを可能にするプログラミング手段を含み,前記プログラミング手段は,該触覚フィールドの以下の属性:
- 前記仮想作業領域に対する前記カーソルのスピード,に対する該触覚フィールドの強さ;
- 前記仮想作業領域に関する該触覚フィールドの方向性;及び
- 該触覚フィールドの動的ふるまい;
のうちの1つ以上の調整を可能にするよう機能する,ことを特徴とする情報処理システム。」

2.引用例
当審にて通知された最後の拒絶理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である欧州特許出願公開第489469号明細書(以下,「引用例1」という。なお,最後の拒絶理由通知書では「欧州特許第489469号明細書(公開日:1992年6月10日)」と記載されているが,該公開日に公開された明細書は「出願公開明細書」であるから,上記記載のとおり正しく記載した。)には,図面とともに次の技術事項が記載されている。
「Amongst other things it is an object of the present invention to increase the range of feedback functionality, so that the machine-generated force can effect a richer tactility to the data input device.」(第2欄第19?22行)(とりわけ,フィードバック機能性の範囲を増加させることが本発明の目的であり,その結果,機械的に発生される力が,このデータ入力装置に,より豊富な触覚をもたらすことができる。),
「The effective value of the acceleration can depend on where on the screen the indicium, usually the cursor, is actually located.」(第2欄第37?39行)(加速の実効値は,スクリーン上で識別印(普通はカーソル)が実際に置かれる所に依存することができる。),
「Advantageously the positive and negative accelerations derive from a potential field mapped on display means.The potential field can be mapped as a bit pattern or as a set of potential functions.This would allow to realize preferred positions or regions on the display with respect to other positions or regions.The potential may be determined for every pixel or for a subset of all pixels.In the latter case, an operator bit pattern may access the so defined pixels for on the basis of their respective potentials and positions relative to the position of the indicium, calculate an instantaneous sign and value of the acceleration.」(第3欄第6?18行)(有利には,正の加速と負の加速とは前記表示手段上に写像されたポテンシャルフィールドから得られ,このポテンシャルフィールドはビットパターンとして又はポテンシャル関数の集合として写像されることができ,このことは他の位置又は範囲に対してこの表示装置上の好適な位置又は範囲を実現することを許容するでしょう。そのポテンシャルはすべての画素に対して又は全部の画素の部分集合に対して決定されるかもしれません。後者の場合,操作者のビットパターンはそのように定義された画素に接近してよく,それぞれのポテンシャルと,識別印の位置に対する相対的な位置とに基づいて,加速の瞬間的な符号と値との計算がなされるでしょう。),
「It would be obvious that integrating the x-dependent force shown in FIG. 4 with respect to the x-coordinate produces an x-dependent potential field. Such potential field may also be two-dimensional. It may be static or time-dependent as determined by computer control. In other situations, the force cannot be described as being governed by a single potential field, for example, in that it is controlled by actual cursor velocity, or by a history of the cursor movement, hysteresis, etcetera.」(第7欄第50行?第8欄第1行)(図4に示されているようなxに依存する力をx座標に関して積分すると,xに依存したポテンシャルフィールドが生成することは明らかなことでしょう。ポテンシャルフィールドは二次元であってもよいでしょう。それはコンピュータ制御により決定されるように,静的あるいは時間依存であってもよいでしょう。その他の情況においては,力が単一のポテンシャルフィールドにより支配されているように記述することが可能ではなく,例えばその場合には,それは実際のカーソル速度,又はカーソル運動の歴史,ヒステリシス,その他により制御されます。),
「For simplicity, the force exerted on the device is determined only by the position where the cursor leaves the area 82 and then remains constant so as to push the cursor back, in either one of the +x, -x, +y, -y, directions, respectively.」(第8欄第11?16行)(単純化のため,この装置へ及ぼされる力はカーソルがその範囲82を離れた位置によってのみ決定され,且つそれぞれ+x,-x,+y,-y方向の何れか一方向にカーソルを押し戻すように一定のままである。),
「Various other layouts of preferred/undesired areas would be feasible. They could also be shown to a user by appropriate shading or colours.」(第10欄第29?32行)(その他の種々の好適な範囲及び望ましくない範囲のレイアウトが実現可能でしょう。適切な陰影あるいは色によりユーザにそれらを見せることができるかもしれません。),
「12. A data processing apparatus comprising display means and a data input device as claimed in any of Claims 1 to 10.」(第11欄第42?44行)(12.表示装置とクレーム1?10のいずれかにクレームされたデータ入力装置とを具えているデータ処理装置。)
従って,引用例1には,
「表示装置とデータ入力装置とを具えているデータ処理装置であって,フィードバック機能性の範囲を増加させ,機械的に発生される力がこのデータ入力装置により豊富な触覚をもたらすことができるように,加速の実効値は,スクリーン上で識別印(普通はカーソル)が実際に置かれる所に依存し,正の加速と負の加速とは前記表示手段上に写像されたポテンシャルフィールドから得られ,このポテンシャルフィールドはビットパターンとして又はポテンシャル関数の集合として写像されることができ,このことは他の位置又は範囲に対してこの表示装置上の好適な位置又は範囲を実現することを許容し,そのポテンシャルはすべての画素に対して又は全部の画素の部分集合に対して決定され,後者の場合,操作者のビットパターンはそのように定義された画素に接近してよく,それぞれのポテンシャルと,識別印の位置に対する相対的な位置とに基づいて,加速の瞬間的な符号と値との計算がなされ,ポテンシャルフィールドは二次元であってもよく,力はカーソルの位置によってのみ決定され,且つそれぞれ+x,-x,+y,-y方向の何れか一方向にカーソルを押し戻すように一定のままであってもよく,それはコンピュータ制御により決定されるように,静的あるいは時間依存であってもよく,その他の情況においては,力が単一のポテンシャルフィールドにより支配されているように記述することが可能ではなく,例えばその場合には,それは実際のカーソル速度,又はカーソル運動の歴史,ヒステリシス,その他により制御され,その他の種々の好適な範囲及び望ましくない範囲のレイアウトが実現可能で,適切な陰影あるいは色によりユーザにそれらを見せることができる,データ処理装置。」の発明(以下,「引用例1記載発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願補正発明を,引用例1記載発明と比較する。
引用例1記載発明の「スクリーン」及び「表示装置」が,それぞれ本願補正発明の「仮想作業領域」及び「仮想作業領域のビジュアル表示のためのディスプレイ」に相当し,引用例1記載発明の「データ入力装置により豊富な触覚をもたらすことができる」「機械的に発生される力」が本願補正発明の「触覚レスポンス」に相当し,引用例1記載発明の該「機械的に発生される力」が「フィードバック」される「データ入力装置」が本願補正発明の「ユーザに触覚レスポンスを提供するインターフェースデバイス」に相当する。 次に,引用例1記載発明は「スクリーン上で識別印(普通はカーソル)が実際に置かれる所に依存し」て「機械的に発生される力がこのデータ入力装置により豊富な触覚をもたらす」ものであるから,本願補正発明と引用例1記載発明とは「仮想作業領域と対話をすることを可能にする」ものである点で一致する。
次に,引用例1記載発明の「表示装置とデータ入力装置とを具えているデータ処理装置」が本願補正発明の「ディスプレイと」「インターフェースデバイスとを含」む「情報処理システム」に相当する。
次に,引用例1記載発明において,表示手段上に写像された「ポテンシャルフィールド」(ポテンシャルフィールドは二次元であってもよく,力はカーソルの位置によってのみ決定され,且つそれぞれ+x,-x,+y,-y方向の何れか一方向にカーソルを押し戻すように一定のままであってもよく,それはコンピュータ制御により決定されるように,静的あるいは時間依存であってもよく,その他の情況においては,力が単一のポテンシャルフィールドにより支配されているように記述することが可能ではなく,例えばその場合には,それは実際のカーソル速度,又はカーソル運動の歴史,ヒステリシス,その他により制御され,その他の種々の好適な範囲及び望ましくない範囲のレイアウトが実現可能で,適切な陰影あるいは色によりユーザにそれらを見せることができる)は,「力」を「機械的に発生」し,「データ入力装置により豊富な触覚をもたらすことができる」フィールドであるから,本願補正発明の「触覚フィールド」に相当する。
次に,引用例1記載発明において「スクリーン上で識別印(普通はカーソル)」が「データ入力装置」により「仮想作業領域を横切って」「導くこと」を可能にされていることは明らかである。
次に,引用例1記載発明の「機械的に発生される力」と本願補正発明の「触覚フィールドの属性」とを対比すると,
(a)引用例1記載発明の「力」は「カーソルの位置によってのみ決定され,且つそれぞれ+x,-x,+y,-y方向の何れか一方向にカーソルを押し戻すように一定のままであってもよ」いから,かかる「+x,-x,+y,-y方向の何れか一方向」が本願補正発明の「仮想作業領域に関する」「触覚フィールドの方向性」に相当し,
(b)引用例1記載発明の「実際のカーソル速度」「により制御され」る「力」が本願補正発明の「仮想作業領域に対する」「カーソルのスピード,に対する」「触覚フィールドの強さ」に相当し,
(c)引用例1記載発明の「時間依存」である「ポテンシャルフィールド」から得られる「力」又は「カーソル運動の歴史,ヒステリシス」により制御される「力」が,本願補正発明の「触覚フィールドの動的ふるまい」に相当する。
よって,本願補正発明と引用例1記載発明とは,「触覚フィールドの属性は:
- 前記仮想作業領域に対する前記カーソルのスピード,に対する該触覚フィールドの強さ;
- 前記仮想作業領域に関する該触覚フィールドの方向性;及び
- 該触覚フィールドの動的ふるまい;
のうちの1つ以上である」点で一致する。
次に,引用例1記載発明において「その他の種々の好適な範囲及び望ましくない範囲のレイアウト」は,「ポテンシャルフィールド」の「表示手段上」への「写像」により実現されるから,本願補正発明と引用例1記載発明とは「触覚フィールド」が「仮想作業領域上にマッピングされ」ている点で一致する。

すると,本願補正発明と引用例1記載発明とは,
「仮想作業領域と対話をすることを可能にする情報処理システムであって,前記仮想作業領域のビジュアル表示のためのディスプレイと,ユーザが前記仮想作業領域を横切ってカーソルを導くことを可能にし且つ該ユーザに触覚レスポンスを提供するインターフェースデバイスとを含み,触覚フィールドは前記仮想作業領域上にマッピングされ,
該触覚フィールドの属性は:
- 前記仮想作業領域に対する前記カーソルのスピード,に対する該触覚フィールドの強さ;
- 前記仮想作業領域に関する該触覚フィールドの方向性;及び
- 該触覚フィールドの動的ふるまい;
のうちの1つ以上である情報処理システム。」
の点で一致し,次の点で相違する。

<相違点>
情報処理システムが,本願補正発明では「複数の触覚フィールドの中から前記仮想作業領域上にマッピングする1つを選択し,該触覚フィールドの1つ以上の属性を調整して前記仮想作業領域をカスタマイズすることを可能にするプログラミング手段を含み,前記プログラミング手段は,該触覚フィールドの以下の属性:
- 前記仮想作業領域に対する前記カーソルのスピード,に対する該触覚フィールドの強さ;
- 前記仮想作業領域に関する該触覚フィールドの方向性;及び
- 該触覚フィールドの動的ふるまい;
のうちの1つ以上の調整を可能にするよう機能する」のに対し,引用例1記載発明にはかかるプログラミング手段が記載されていない点。

4.判断
そこで上記相違点について検討すると,当審にて通知された最後の拒絶理由に引用された特開平5-313820号公報(以下,「引用例2」という。)には,「【課題を解決するための手段】この発明による第1の情報入力装置は,操作可能なポインティングデバイスと,このポインティングデバイスの操作に伴い操作感を変化させるようなリアクション(例えば制動力,振動,衝撃等)を発生すべく該ポインティングデバイスに設けられたリアクション発生手段と,表示面を有する表示手段と,前記ポインティングデバイスの操作に基づいて前記表示面におけるカーソルの移動を制御するカーソル制御手段と,前記表示面に表示される複数の領域について各領域毎に任意のリアクション量を設定する設定手段と,前記複数の領域について各領域毎に前記カーソルが該領域と所定の位置関係にあるか判定する判定手段と,前記複数の領域について各領域毎に前記判定手段での判定結果に基づき且つ前記設定手段での設定リアクション量に応じて前記リアクション発生手段によるリアクション発生を制御する制御手段とをそなえたものである。」(第0006段落)と記載され,さらに引用例2図1には「プログラムメモリ20」が記載されているから,引用例2には,「表示面に表示される領域毎に任意のリアクション量を設定する」プログラミング手段により,「設定手段での設定リアクション量に応じて」「ポインティングデバイスの操作に伴い操作感を変化させるようなリアクション(例えば制動力,振動,衝撃等)」の発生を制御する発明が記載されている。
そして,画面に配置(マッピング)する部品を選択し,選択した部品の属性を設定することは,例えば,特開平6-4279号公報(第0013?0019段落,図4,図5),特開平4-95117号公報(特に,第3頁左上欄第6?11行の「この情報は,例えば表示可能な各種の部品のうちから表示すべき部品を指定し,表示画面上における部品の位置,大きさ,および表示方向(例えば水平とか垂直)等を示す値つまり該部品の属性を指定し,表示画面上における部品の削除および複写等を命令する。」参照。)に記載されているように,周知の設計手法である。
よって,引用例2に記載された発明及び上記周知の設計手法を引用例1記載発明に適用し,引用例1記載発明において,「表示装置とデータ入力装置とを具えているデータ処理装置」(情報処理システム)が,複数の「ポテンシャルフィールド」(触覚フィールド)の中から「スクリーン」(仮想作業領域)上に写像(マッピング)する1つを選択し,該「ポテンシャルフィールド」(触覚フィールド)の1つ以上の「機械的に発生される力」(属性)を任意のリアクション量に設定(調整)して前記「スクリーン」(仮想作業領域)をカスタマイズすることを可能にするプログラミング手段を含み,前記プログラミング手段は,該「ポテンシャルフィールド」(触覚フィールド)の以下の「機械的に発生される力」(属性):
- 「実際のカーソル速度」「より制御され」る「力」(前記仮想作業領域に対する前記カーソルのスピード,に対する該触覚フィールドの強さ);
- 「+x,-x,+y,-y方向の何れか一方向」の「力」(前記仮想作業領域に関する該触覚フィールドの方向性);及び
- 「時間依存」である「ポテンシャルフィールド」から得られる「力」又は「カーソル運動の歴史,ヒステリシス」により制御される「力」(該触覚フィールドの動的ふるまい);
のうちの1つ以上のリアクション量を任意のリアクション量に設定(調整)を可能にするよう機能する」ようになすことは当業者が容易になし得ることである。

以上のとおり,本願補正発明は,引用例1,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.本件補正についての結び
以上のとおり,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成21年7月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1乃至7に係る発明は,平成21年3月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
仮想作業領域と対話をすることを可能にする情報処理システムであって,前記仮想作業領域のビジュアル表示のためのディスプレイと,ユーザが前記仮想作業領域を横切ってカーソルを導くことを可能にし且つ該ユーザに触覚レスポンスを提供するインターフェースデバイスとを含み,当該システムは前記触覚レスポンスの属性のプログラミングを可能にするプログラミング手段を含み,前記プログラミング手段は,前記仮想作業領域内の触覚フィールドに対応する触覚レスポンスの以下の複数の属性:
- 前記仮想作業領域に対する前記カーソルのスピード,に対する前記触覚フィールドの強さ;
- 前記仮想作業領域に関する前記触覚フィールドの方向性;及び
- 前記該触覚フィールドの動的ふるまい;
のうちの少なくとも1つのプログラミングを可能にするよう機能する,ことを特徴とする情報処理システム。」

2.引用例
当審の最後の拒絶理由で引用された引用例及びその記載事項は,前記「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2 [理由]」で検討した本願補正発明から,
(1)「当該システムは,複数の触覚フィールドの中から前記仮想作業領域上にマッピングする1つを選択し,該触覚フィールドの1つ以上の属性を調整して前記仮想作業領域をカスタマイズすることを可能にするプログラミング手段」とあったところを「当該システムは前記触覚レスポンスの属性のプログラミングを可能にするプログラミング手段」とし,かつ,「1つ以上の調整を可能にする」を「少なくとも1つのプログラミングを可能にする」として,「プログラミング手段」についての限定を解除するとともに,
(2)「該触覚フィールドの以下の属性」とあったところを「前記仮想作業領域内の触覚フィールドに対応する触覚レスポンスの以下の複数の属性」とし,「該触覚フィールド」とあったところを「前記触覚フィールド」としたものに相当する。
そして,(2)は明りょうでない記載の釈明を目的とし,進歩性に関する判断に実質的な影響を与えない補正に関するものである。
すると,「プログラミング手段」の機能を限定的に減縮する要件を付加した本願補正発明が「第2 「理由」4.」に記載したとおり,引用例1,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,かかる「「プログラミング手段」の機能を限定的に減縮する要件」を解除し,かつ,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正箇所を補正前の記載としたものに相当する本願発明も,同様の理由により,引用例1,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
従って,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-27 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-17 
出願番号 特願平8-509347
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
P 1 8・ 575- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志山崎 慎一  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 篠塚 隆
清水 稔
発明の名称 ユーザがプログラムできる触覚のフィードバックを有する仮想作業領域  
代理人 杉村 憲司  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤原 英治  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 来間 清志  
代理人 澤田 達也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ