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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10L
管理番号 1209652
審判番号 不服2006-4559  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-10 
確定日 2010-01-07 
事件の表示 平成 8年特許願第332609号「個人からの音声および映像データを認証のために利用する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月11日出願公開、特開平 9-179583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年12月13日(米国優先権主張1995年12月15日)の出願であって、平成17年1月21日付け拒絶理由通知に対して平成17年4月26日付けで手続補正書が提出されたものであり、これに対して平成17年12月8日に拒絶査定がされ、これに対して平成18年3月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年4月10日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明の認定

平成18年4月10日付け手続補正は、補正前の請求項4を限定的減縮して新たな請求項4とするものである。
よって、当該補正は適法なものである。

したがって、本願の発明は、平成18年4月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項23までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。

【請求項1】 ある個人の認証を判定する方法であって、
少なくともひとつの選択されたフレーズを話す個人の音声データを取得するステップと、
該少なくともひとつの選択されたフレーズを話す個人の映像データを取得するステップと、
該音声データと映像データとからそれぞれ識別用音声特徴と識別用映像特徴とを抽出するステップと、
該識別用音声特徴と該識別用映像特徴とを合体させた特徴ベクトルを1つのみ形成するステップとを含み、該特徴ベクトルは、後に実行する比較のために使用することが可能であり、抽出された該識別用音声特徴と該識別用映像特徴の双方のパラメータを含んでおり、該方法はさらに、
該少なくともひとつの選択されたフレーズを話す許可されたユーザの記憶された特徴ベクトルと該特徴ベクトルとを比較するステップと、
該特徴ベクトルと該記憶された特徴ベクトルとが規定の閾値内の整合を形成するときには、該個人を認証するステップとを含む方法。
(以下、これを「本願発明」という。)

3.引用刊行物記載の発明

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(特開昭58-102300号公報)には、その特許請求の範囲に第1発明として、次の発明が記載されている。

(ア)
「1)音声認識および顔認識の組み合わせにより個人を同定するための方法にお いて、
a)同定されるべき個人による特定のキーワードの発声に応答して、そ の特性を示す一連の音声特徴を抽出する過程と、
b)キーワードの発生中のキーイベントの生起時に前記個人の顔面の発 声に伴い変化する部分の瞬間像を形成する過程と、
c)前記個人が本人であるか否かを判定するために前記の抽出された一 連の音声特徴および前記瞬間像の双方を使用する過程と
を含んでいることを特徴とする個人同定方法。」

なお、刊行物1には、発明の詳細な説明に実施例が記載されており、その概要は、次の如きものである。

同定されるべき個人の特定のキーワードの発声に応答して、その特性を示す一連の音声特徴が抽出される。
キーワードの発生中のキーイベントの生起時に、その個人の顔面の発声に伴い変化する部分の瞬間像が形成される。
その後、個人による特定のキーワードの発生に応答して抽出されその特徴を示す一連の音声特徴と、その個人の同一のキーワードの発声から前もって取得され記憶されている一連の参照音声特徴とをパターンマッチャーによって比較して、第1の類似度が計算される。
その後、段階的な方法で、そのキーワードの発生の際のキーイベントの生起の瞬間に対応する個人の顔面の音声の発声に伴い変化する部分の瞬間的な画像特徴と、既知の個人によるキーワードの発生の際のキーイベントに対応する記憶されている参照用の瞬間的な画像特徴とを第2のパターンマッチャーによって比較して、第2の類似度を算出する。
第1の類似度と第2の類似度の双方が予め選択されている一致閾値を超えている場合には、既知の個人と認証されている個人とが同一人物であると判定される。
(これは、審判請求書(平成18年6月1日付け手続補正)において、審判請求人が主張しているとおりである。)

したがって、これらを総合すれば、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1には、次の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

[引用発明」
(イ)音声認識および顔認識の組合せにより個人を同定するための方法であって、
特定のキーワードを話す個人の音声データを取得するステップと、
特定のキーワードを話す個人の発声に伴う映像データを取得するステップと、
該音声データと映像データとからそれぞれ識別用音声特徴と識別用映像特徴とを抽出するステップと、
前記個人が本人であるか否かを判定するために前記の抽出された音声特徴および映像特徴について、抽出された音声特徴と前もって取得され記憶されている参照音声特徴とをパターンマッチャーによって比較し、その後、抽出された映像特徴と参照映像特徴とをパターンマッチャーによって比較し、それぞれが閾値内で整合するときに、既知の個人と認証されている個人とが同一人物であると判定するステップと、
を含んでいる個人同定方法。

4.本願発明と引用発明との対比

本願発明における構成要件と引用発明における構成要件を対比すると、何れも、認証時に抽出した識別用音声特徴と識別用映像特徴を用いて個人認証を実行する方法の発明であり、両者は、次の(ウ)の点において一致し、(エ)の点で相違する。

[一致点]
(ウ)ある個人の認証を判定する方法であって、
少なくともひとつの選択されたフレーズを話す個人の音声データを取得するステップと、
該少なくともひとつの選択されたフレーズを話す個人の映像データを取得するステップと、
該音声データと映像データとからそれぞれ識別用音声特徴と識別用映像特徴とを抽出するステップと、
少なくともひとつの選択されたフレーズを話す許可されたユーザの記憶された音声特徴と識別用映像特徴、抽出された識別用音声特徴と識別用映像特徴とを比較するステップと、
該抽出された識別用音声特徴と識別用映像特徴と、該記憶された識別用音声特徴と識別用映像特徴とが、規定の閾値内の整合を形成するときには、該個人を認証するステップとを含む方法。

[相違点]
(エ)本願発明が、
「該識別用音声特徴と該識別用映像特徴とを合体させた特徴ベクトルを1つのみ形成するステップとを含み、該特徴ベクトルは、後に実行する比較のために使用することが可能であり、抽出された該識別用音声特徴と該識別用映像特徴の双方のパラメータを含んでおり、該方法はさらに、
該少なくともひとつの選択されたフレーズを話す許可されたユーザの記憶された特徴ベクトルと該特徴ベクトルとを比較するステップと、
該特徴ベクトルと該記憶された特徴ベクトルとが規定の閾値内の整合を形成するときには、該個人を認証するステップ」
により認証を行っているのに対し、引用発明は、
“抽出された音声特徴および映像特徴について、抽出された音声特徴と前もって取得され記憶されている参照音声特徴とをパターンマッチャーによって比較し、その後、抽出された映像特徴と参照映像特徴とをパターンマッチャーによって比較し、それぞれが閾値内で整合するときに、既知の個人と認証されている個人とが同一人物であると判定する”ことにより該個人を認証する”
ものである点。

5.相違点の判断

まず、本願発明における「該識別用音声特徴と該識別用映像特徴とを合体させた特徴ベクトル」とはどういうベクトルであるかについて検討する。

本願明細書には、その段落0010に「識別用の音声及び映像の特徴が抽出されると、段階105で単一のベクトルが作成される。ベクトルは、フレーズが話されている時間にわたって変化するものであり、段階103で抽出された音声と映像両方の特徴のパラメータを含む。」と記載され、図1に、そのステップを含むフローチャートが記載されている。
しかしながら、音声と映像両方の特徴のパラメータを含む単一のベクトルとはどういうものであるかは全く説明がされてはいない。

数学上、「ベクトル」とは、方向と大きさをもった量のことであり、方向をもたないスカラーと対比されて定義される。
ベクトルは、3次元のものまでは角度と長さの値で表現されることもあるが、通常、ベクトルは、該ベクトルの多次元座標における座標位置を示す数値で構成される数列で表現される。多次元の数値、換言すれば、独立した事象に対する複数の数値で構成される集合が1つのベクトルである。

そうすると、本願発明における「単一のベクトル」とは、ベクトルとしては1つであるが、多次元の数値からなる1つの集合であって、多次元のいくつかの値は識別用音声特徴を示すパラメータであって、他のいくつかの次元の数が該識別用映像特徴を示すパラメータであると解される。

そして、識別用音声特徴パラメータがn種類、識別用映像特徴パラメータがm種類であったとすれば、識別用音声特徴パラメータがn次元ベクトルであって、識別用映像特徴パラメータがm次元ベクトルであったときに、「合体させた特徴ベクトル」はm+n次元のベクトルとなる。
また、「記憶された特徴ベクトル」もm+n次元のベクトルであって、両ベクトルを比較するとは、1、2・・・m+nの各次元における数値を比較することを意味する。

してみれば、本願発明において「合体させた特徴ベクトル」とは称されているものの、この1つのベクトルは、単に種々のパラメータを意味する複数の数値列である1つの集合という意味でしかない。

なお、拒絶理由通知で引用した刊行物2である特開平6-043897号公報には、音声特徴や視覚特徴をベクトル表現して処理に用いる装置の発明が記載されているが、当該刊行物の記載におけるベクトルも、種々のパラメータを意味する複数の数値列である1つの集合を意味している。
また、本願発明において、1回の判定で認証を決定するものとはされているが、複数のパラメータについて、総合してどのように扱い、閾値をどのように設定するかについては何ら特定されておらず、具体的手法について、発明の詳細な説明には何らの記載もない。
本願においては、「特徴ベクトルを1つのみ形成」することは、1回で判定をすることをそのように表現しているのであって、1つの特徴ベクトルと1つの記憶されているベクトルについて、どのように対比を行っているかは本願発明の要旨ではない。

そうすると、本願発明と引用発明とは、同じ種類のパラメータの値の比較をし、複数のパラメータの値の夫々が規定の閾値内の整合を形成するときに当該個人を認証をしている点で実質的に相違せず、本願発明における「合体させた特徴ベクトル」とは単に呼称の問題にすぎないことになる。

したがって、両者の実質的な違いは、引用発明が“抽出された音声特徴および映像特徴について、抽出された音声特徴と前もって取得され記憶されている参照音声特徴とをパターンマッチャーによって比較し、その後、抽出された映像特徴と参照映像特徴とをパターンマッチャーによって比較し、それぞれが閾値内で整合するときに、既知の個人と認証されている個人とが同一人物であると判定する”というように、音声特徴による判定と映像情報による判定を段階的に行っているのに対し、本願発明は1回の判定により行っていることの違いということになる。

一方、複数の項目について閾値判断し、総合的な合否を判定する場合に、個別に段階的に行うか、一括して判定するかは、その何れも周知の手法であって、何れを採用するかは設計的事項にすぎない。
例えば、複数の試験科目の点数(独立した事象における数値の集合である)で合否判定をする場合に、科目別得点で順次足切りをして1つの科目での採点が足切り点に達しなければ不合格とする手法もあれば、全科目の科目別得点が採点されてから全ての科目において閾値を超えていなければ合格としない手法もあり、何れの手法も汎用されている。

してみれば、音声特徴および映像特徴という複数の項目についての数値情報を閾値判断し、総合的な合否を判定する引用発明において、その判断を段階的に行っている構成に代えて、一括して1回の判断で認証を決定する構成とすることは、容易に想到し得ることである。
また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。

したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび

以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2から請求項23に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、原審における拒絶査定は正当なものであり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-12 
結審通知日 2009-08-17 
審決日 2009-08-28 
出願番号 特願平8-332609
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 剛史  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 畑中 高行
吉村 博之
発明の名称 個人からの音声および映像データを認証のために利用する方法および装置  
代理人 朝日 伸光  
代理人 岡部 正夫  
代理人 越智 隆夫  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 臼井 伸一  
代理人 岡部 讓  
代理人 本宮 照久  

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