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審決分類 |
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 H03H 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H |
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管理番号 | 1209689 |
審判番号 | 不服2007-30959 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-15 |
確定日 | 2010-01-07 |
事件の表示 | 特願2002- 77088「弾性表面波装置及び電子部品装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月 4日出願公開、特開2003-101383〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件は、平成14年3月19日(優先権主張、平成13年7月16日)の特許出願であって、平成19年3月9日付けで拒絶理由が通知され、同年5月11日付けで手続補正書が提出され、同年10月16日付けで拒絶査定され、これに対して同年11月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされた。 2.本件発明 本件の請求項7に係る発明は、平成19年5月11日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本件発明」という)。 「【請求項7】 基板の一方に機能部を有するチップと、 前記チップの機能部と対向し前記機能部と所定間隙を保持して対向配置される対向基板と、 前記チップの背面に被着され該背面から前記対向基板に垂下して前記チップの機能部を中空に封止する封止材と、 前記封止材の上面に直接設けられた保護層としてのポリイミド層を具備し、 前記封止材は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含有する化合物からなることを特徴とする電子部品装置。」 なお、本願は、特願2001-215951号(出願日:平成13年7月16日)の出願に基づく優先権の主張をするものであるが、請求項7の「前記封止材の上面に直接設けられた保護層としてのポリイミド層を具備し、」に関する事項は、上記出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていないので、当該事項について優先権の主張の効果は認められない。 3.引用例 (1)引用例1について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-102905号公報(以下、「引用例1」という)には、下記の事項が記載されている。 (ア)「【0003】 また、図6に示すSAW装置J2において、H2はSAW素子、62は入出力電極のパッド、63はパッド62とパッド64を電気的に接続するバンプ等の接続体、64は基板67表面に形成され外部の駆動回路、共振回路、接地回路等に接続される導電パターンのパッド、65はSAW素子用の圧電基板上に形成された櫛歯状電極のIDT電極、66はSAW装置全体にモールドされた保護膜としての絶縁性樹脂、67は、セラミック、樹脂等の絶縁性材料からなる基板である。同図の構成は、IDT電極65が設けられた機能面が基板67に対面したフェースダウン構成であり、絶縁性樹脂66が機能面が存在するSAWの振動空間にまで入り込んでいる。」 (イ)図6には、絶縁性樹脂66が圧電基板上及び絶縁性材料からなる基板の圧電基板に対向した面を覆うように被着された構造が記載されている。 よって、上記(ア)乃至(イ)及び関連図面から、引用例1には実質的に、 「IDT電極が設けられた機能面を有する圧電基板と、 前記圧電基板の機能面とバンプを介して接続された絶縁性材料からなる基板と、 前記圧電基板の機能面と反対の面及び前記絶縁性材料からなる基板の前記圧電基板の機能面に対向する面を覆うように被着された絶縁性樹脂とを備える弾性表面波装置。」 の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 (2)引用例2について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-36551号公報(以下、「引用例2」という)には、下記の事項が記載されている。 (ウ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置の製造方法に係り、とくに薄型半導体装置に用いられる柔構造パッケージの構造及びこの方法により製造された半導体装置に関するものである。」 (エ)「【0011】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して発明の実施の形態を説明する。まず、図1及び図2を参照して第1の実施例を説明する。図1は、第1の実施例の断面図(図2のA-A′部分)、図2は、その平面図である。図において、半導体チップ10の第1の主面上には、その周辺に沿って電力供給用もしくは入出力信号用の複数の電極12が並べられている。この電極は、パッド電極でも良いしバンプ電極でも良い。図示はしないが半導体チップ10は、これら電極以外は保護絶縁膜で被覆されている。電極は、リード14と接続するためにこの保護絶縁膜から露出している。半導体チップ10上の例えばパッド電極などの電極12と外部引出しのリード14とは従来から知られているTAB(Tape Automated Bonding) もしくはメッキ接続MPB(Micre Plating Bonding)などの微細接続技術で接続する。TAB法では、図15に示すような整列された複数のリード14とそのチップ搭載用開口部17に半導体チップ10が搭載され樹脂フィルム16を有するフィルムキャリア1を用いる。この半導体装置は、例えば、図14に示す製造装置を用いて製造される。 【0012】ここに取付けられたリード14は、半導体チップ10の電極12にボンディグされた後その他端に形成されたアウターリード部分5をその部分の樹脂フィルムとともに切り取ってプリント板のような回路基板に取付けが容易なように整形する。リード14の、回路基板に取付けるように整形され、半導体チップ10から突出している外部端を除いて、半導体チップ10、リード14及びリード14を支持する樹脂フィルム16は、第1のフィルム18と第2のフィルム20によって挟まれる。両者は、真空中もしくは大気圧より減圧の状態で前記樹脂フィルムと共に熱的に融着し、フィルム18、20の間に挟まれている半導体チップなどを密封する。フィルム18、20には、柔軟性があり、耐湿性及び熱伝導性の高い、例えば、ポリイミドやエポキシのような絶縁材料が使用される。第1のフィルム18は、半導体チップ10の第1の主面とその上のリード14に密着しており、第2のフィルム20は、半導体チップ10の第2の主面、リード14及び樹脂フィルム16と密着している。」 (オ)「【0033】以上の実施例ではパッケージを構成するフィルムの材料にポリイミドやエポキシ樹脂を用いているが、本発明はこの材料に限定されるものではない。一般的には熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂を混合した樹脂を用いる。前実施例で用いた前記エポキシ樹脂は、熱可塑性エポキシ樹脂に熱硬化性エポキシ樹脂を混合している。この様に熱硬化性樹脂を用いるのは、パッケージを構成するフィルムの強度を向上させるためであり、熱硬化性樹脂の含有量によってその強度を適宜調整することができる。本発明に用いられる上記以外の材料としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ポリアセタール、ポリ弗化エチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニール、ポリフェニリノキサイド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレ-ト共重合体、アイオノマ-樹脂などがある。図3のようにフィルムが無機フィルム層を有している場合には、例えば、Alなどの金属箔に加熱溶融した樹脂材料を塗布し、延伸または圧延ローラで一体にラミネートする。金属箔を用いない場合は、フィルムの有機フィルム層に金属を蒸着や溶射などによって金属層を形成する。アルミナなどのセラミックを無機フィルム層に用いる場合は、材料をフィルムに溶射するか、塗布しその後過熱処理する。」 よって、上記(ウ)乃至(オ)から、引用例2には実質的に下記の事項が記載されている。 「半導体チップを封止するフィルムの材料として、一般的に熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂を混合した樹脂が使用されること。」 (3)引用例3について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-16475号公報(以下、「引用例3」という)には、下記の事項が記載されている。 (カ)「【0029】次に、図3(a)に示すように、外装樹脂層14の上面側から複数本の第2の溝15を溝15aより上の部分に形成する。第2の溝15は、溝2,3よりも外側の領域において形成される。この第2の溝15は、最終的に個々の弾性表面波装置に切断する際に利用される。従って、第2の溝15は、個々の弾性表面波装置に切断する際の切断位置に応じた位置に設けられている。従って、図3(a)における一方のSAW素子10側の溝3と、隣り合うSAW素子10A側の溝2との間に、第2の溝15が形成されている。 【0030】第2の溝15は、外装樹脂層14を貫き、ベース基板1の一部を切断する高さ位置に至るように形成されている。次に、図3(b)に示すように、外装樹脂層14の上面に耐湿性材料層16を形成する。耐湿性材料層16を形成する材料としては、外装樹脂層14を構成している樹脂よりも耐湿性に優れた適宜の材料を用いることができる。このような材料としては、ポリイミド樹脂などの耐湿性樹脂や、SiO_(2) ,金属膜のような無機材料等を挙げることができる。」 (キ)図1には、外装樹脂層14が、ベース基板上に設けられたSAW素子を被覆する柔軟性樹脂層13と、ベース基板のSAW素子と対向している面とを被覆しているので、外装樹脂層は封止材としての機能を果たしていることは明らかである。 よって、上記(カ)乃至(キ)及び関連図面から、引用例3には実質的に下記の事項が記載されている。 「封止を行う樹脂層の外側に、ポリイミド樹脂からなる耐湿性樹脂を形成すること。」 4.対比 (1)本願発明と引用発明との対応関係について 引用発明では、圧電基板のIDT電極が設けられた面が機能面とされているので、引用発明の「圧電基板」、「IDT電極」は、本願発明の「基板」、「機能部」に相当し、また、IDT電極が設けられた圧電基板をチップと見ることができるので、引用発明の「IDT電極が設けられた機能面を有する圧電基板」は本願発明の「チップ」に相当する。 引用発明では、圧電基板と絶縁性材料からなる基板とがバンプを介して接続されているので、圧電基板と絶縁性材料からなる基板とは接することなく所定間隙を保持して対向配置されていることになる。よって、引用発明の「前記圧電基板の機能面とバンプを介して接続された絶縁性材料からなる基板」は、本願発明の「前記チップの機能部と対向し前記機能部と所定間隙を保持して対向配置される対向基板」に相当する。 引用発明では、圧電基板の機能面とは反対の面と絶縁性材料からなる基板の圧電基板の機能面に対向する面とが絶縁性樹脂に覆われているので、引用発明の絶縁性樹脂は圧電基板のIDT電極を封止した構造となっており、また、圧電基板の端の絶縁性樹脂は絶縁性材料からなる基板に被着されることから、その部分では絶縁性樹脂が圧電基板の端から絶縁性材料からなる基板へ垂下していると見ることができる。よって、引用発明と本願発明は、「チップの背面に被着され該背面から前記対向基板に垂下して前記チップの機能部を封止する封止材」を有する点で共通している。 引用発明の「弾性表面波装置」は、弾性表面波を利用する電子部品に係る装置と言えるので、引用発明の「弾性表面波装置」は、本願発明の「電子部品装置」に相当する。 (2)本願発明と引用発明の一致点について 上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、 「基板の一方に機能部を有するチップと、 前記チップの機能部と対向し前記機能部と所定間隙を保持して対向配置される対向基板と、 前記チップの背面に被着され該背面から前記対向基板に垂下して前記チップの機能部を封止する封止材とを具備する電子部品装置。」 の点で一致している。 (3)本願発明と引用発明の相違点について 本願発明と引用発明は、下記の点で相違する。 (相違点A) 封止材について、本願発明は「チップの機能部を中空に封止する」ものであり、「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含有する化合物」からなるものであるのに対し、引用発明はそのような構成を有していない。 (相違点B) 本願発明は「封止材の上面に直接設けられた保護層としてのポリイミド層」を具備しているのに対し、引用発明はそのような構造とはなっていない。 5.当審の判断 (1)相違点Aについて 本願明細書の段落17には、「この封止材40は櫛歯状電極11の領域に流れ込むことなく、櫛歯状電極11下側とベース基板20の上面との間に中空部60を形成するように封止している。」と記載されているので、本願発明の「チップの機能部を中空に封止する」ことは、櫛歯状電極11の領域への封止材の流れ込みを防止することにより実現されている。 そして、樹脂の流れ込みの防止について本願明細書の段落30には、 「熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を含有する封止材を用い、加熱工程中に熱硬化性成分の架橋反応が進行することにより弾性を確保して、導電性バンプによって規制される素子とベース基板との間隙部(20μm?30μm)ひいては櫛歯状電極への樹脂の流れ込みを防止できるようにしている。」 と記載されていることから、結局、本願発明は、封止材に「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含有する化合物」からなるものを用いることで、「チップの機能部を中空に封止する」構成になっている。 次に、チップ等を封止する封止材について検討すると、引用例2に「半導体チップを封止するフィルムの材料として、一般的に熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂を混合した樹脂が使用されること。」が記載され、また、特開平7-254621号公報の段落20に「半導体素子16やリードフレーム12の一部などがエポキシ樹脂、・・・、もしくは熱硬化樹脂と熱可塑性樹脂の混合物からなる封止樹脂18により樹脂封止される」と記載されているように、半導体チップ等を封止する封止材として、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」を混合したものを用いることは、周知技術である。 してみると、引用発明の圧電基板からなるチップ等を封止する「絶縁性樹脂」として、上記周知の「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」を混合した化合物を用いることに格別の困難性は認められず、また、上記周知の「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」を混合した化合物の封止材を用いることにより、引用発明1において樹脂の流れ込みを防止する効果を有すると認められるので、引用発明1に対して、周知技術の封止材を適用することで相違点Aを構成することは、当業者が格別困難なくなし得たことである。 (2)相違点Bについて 電子部品を封止する構成では、耐湿性が求められることは自明であり、また、引用例3には、上記3.(3)に記載したように「封止を行う樹脂層の外側に、ポリイミド樹脂からなる耐湿性樹脂を形成すること。」が記載されている。 よって、引用発明の絶縁性樹脂で覆われた弾性表面波素子の耐湿性を向上させるために、引用例3のポリイミド樹脂を引用発明の絶縁性樹脂の外側に形成して相違点Bを構成することは、当業者ならば容易に想到し得たものである。 (3)本願発明の作用効果について 本願発明の作用効果も、引用発明、引用例2及び3に記載された事項、並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、引用例2及び3に記載された事項、並びに周知技術に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-06 |
結審通知日 | 2009-11-10 |
審決日 | 2009-11-24 |
出願番号 | 特願2002-77088(P2002-77088) |
審決分類 |
P
1
8・
03-
Z
(H03H)
P 1 8・ 121- Z (H03H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 聡史 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
飯田 清司 池田 聡史 |
発明の名称 | 弾性表面波装置及び電子部品装置 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 河井 将次 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 鈴江 武彦 |