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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F27B
管理番号 1209690
審判番号 不服2007-31461  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-22 
確定日 2010-01-07 
事件の表示 特願2002-321113「製錬炉及び炉況検知方法、操業方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-156807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 経緯
本件審判に係る出願は、平成14年11月5日に出願されたものであって、平成19年10月17日付けで拒絶査定され、この拒絶査定を不服として、平成19年11月22日付けで本件審判請求がなされ、当審において、平成20年10月3日付けで、平成19年12月15日付け手続補正の補正の却下の決定と拒絶理由通知がなされ、平成20年12月5日付けで手続補正がなされたものである。

第二 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成21年2月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「製錬する原料を加熱溶融させてなる溶湯を処理するとともに、この処理過程において炉本体の内壁面にマグネタイトからなる鋳付きが生じる製錬炉であって、炉本体において前記溶湯と接する領域、あるいは前記溶湯と接する耐火物の冷却を行うジャケットと、該ジャケットに前記冷媒を供給する冷媒供給装置と、前記ジャケットに供給される前記冷媒の温度を測定する供給側温度測定器と、前記ジャケットから排出される前記冷媒の温度を測定する排出側温度測定器と、前記供給側温度測定器及び前記排出側温度測定器からその測定値を信号として受け、これらの測定値から、前記ジャケットに供給される冷媒と前記ジャケットから排出される冷媒との温度差、もしくは前記ジャケットにおける抜熱量を求める演算装置と、この温度差、もしくは抜熱量から前記炉本体の内壁面に生じたマグネタイトの鋳付き量を検知する検知手段と、前記溶湯の温度を測定する溶湯温度測定装置と、を有することを特徴とする製錬炉。」

2.当審の拒絶理由の概要
当審の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物A?Dに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

A.特開2000-129369号公報(原審の前置報告書で引用) B.特開昭 52-127410号公報(原審の拒絶理由の引用例1)
(C、Dは、省略。)

3.刊行物に記載された事項および引用発明の認定(以下、明瞭化のため適宜下線を引いた。)。
引用文献A
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自溶炉が備えたシャフトの頂部から精鉱バーナを用いて銅精鉱、コークス、フラックスその他の装入物を酸素富化空気と一緒に供給する銅製錬自溶炉における炉内還元度の制御方法に関するものである。」

「【0006】セットラ内のスラグ層に滞留するコークスは、炉内還元度に影響し、例えばマグネタイト(Fe_(3)O_(4))を還元し、スラグ中への銅損失量を低下させるとともに敷上がりを改善する。また、このコークスはスラグ層で燃焼してスラグを広範囲に加熱し、その下にあるマット層を保温・加熱する作用がある。しかしながら、装入されたコークスのシャフト内での燃焼率は、使用する原料鉱石の種類、装入量、酸素富化空気中の酸素濃度等、さまざまなパラメータに影響され、一定量のコークスをシャフトに装入しても、スラグ層までたどり着いてスラグの還元に寄与するコークスの量にはばらつきが大きい。このため、例えばコークス不足によりマグネタイトが還元されず、マット層が接する炉床へのマグネタイト堆積による敷上がりによってセットラ部に蓄積できるマット量、すなわちマットプールの容量が減少するという問題が生じていた。また逆に、コークス過剰により敷上がりが解消し、炉底レンガを保護してきたコーティングが無くなって炉底レンガの損耗などのトラブルの原因になっていた。このようにコークスは炉内還元度に大きな影響を及ぼし、一定量のコークスをシャフトに装入することよりもセットラ内の溶融スラグ層に滞留するコークス量を一定に維持することの方が重要である。」

「【0011】そこで、本発明では、シャフト3での熱バランスおよび酸素バランスから適合するマットの銅品位とコークス燃焼率の収束計算を行い、コークス燃焼率に基づいて得られたコークス量を精鉱バーナ9からのコークス供給量にフィードバックし、セットラ3内の溶融スラグ6層に滞留するコークス量が一定になるようにシャフト2内に装入するコークス量を制御する。」

「【0014】2・CuFeS_(2)=Cu_(2)S+FeS+FeS_(2)
FeS_(2)+O_(2)=FeS+SO_(2)
2FeS+3O_(2)+SiO_(2)=2FeO・SiO_(2)+2SO_(2)
3FeS+5O_(2)=Fe_(3)O_(4)+3SO_(2 )
・・・なお、シャフト2の反応終了位置におけるマットやスラグの反応生成物温度は1350℃で、一般にセットラ部の目標マット温度より150℃程度高いと想定される。シャフト2の反応温度を維持するのに必要で、かつ、溶融スラグ6層に滞留させるに必要なコークス量を、原料鉱石の反応熱、コークス燃焼熱、送風空気その他の顕熱から定まる入熱量をもとに出熱との熱バランスがとれるように計算により求める。出熱量については、溶融マット5や溶融スラグ6の顕熱、輻射熱、放散熱(主に炉壁水冷ジャケットの冷却水による)、排ガスやダストの顕熱などを計算により求める。」

「【0024】炉内還元度の制御不足に起因したマグネタイト増加によるセットラ3の炉底部の敷上がりは、従来、0?30cmの範囲でばらついていたのに対し、本発明の還元度制御後には、還元過不足が修正されたために10cm程度に低減かつ安定した。」

引用文献B
「炉底の中央部に直径方向に埋設されている冷却パイプ6・・・についてパイプ1本当りの熱負荷Qと炉底侵蝕指標としての第2耐火レンガ層22の中央部の残存高さlとの関係を計算し、その結果を第5図に示す。
従つて、冷却水の熱負荷を測定することによつて、第5図により炉底侵蝕状況を推定する。」(2頁左下欄5?12行)

4.引用発明の認定
引用文献Aには、銅精鉱とコークスを供給する銅製錬自溶炉における炉内還元度の制御方法(段落0001)に関して、以下の事項が記載されているといえる。

(1)セットラ内のスラグ層に滞留するコークスは、炉内還元度に影響し、コークス不足では、マグネタイトが還元されず、マグネタイト堆積による敷上がりが生じて、マットプールの容量が減少し、コークス過剰では、敷上がりが解消し、炉底レンガの保護コーティングが無くなり、炉底レンガが損耗する。したがって、セットラ内の溶融スラグ層に滞留するコークス量を一定に維持することが重要である(段落0006)。

(2)シャフトでの熱バランスおよび酸素バランスから、適合するコークス燃焼率を計算し、コークス燃焼率に基づいて得られたコークス量をコークス供給量にフィードバックし、セットラ内の溶融スラグ層に滞留するコークス量が一定になるようにシャフト内に装入するコークス量を制御する(段落0011)。

(3)セットラ内のマット温度を含むシャフトの反応温度を維持し、かつ
溶融スラグ層に滞留させるに必要なコークス量は、入熱量と出熱量との熱バランスがとれるように計算により求める。出熱量については、炉壁水冷ジャケットの冷却水による放散熱等を計算して求める(段落0014)。

(4)炉内還元度の制御不足によりマグネタイト増加によるセットラの炉底部の敷上がりは従来ばらついていたが、炉内還元度を制御すると、還元過不足が修正され、10cm程度に低減かつ安定した(段落0024)。

そうすると、引用文献Aに記載された銅精錬自溶炉は、
(1)によると、精錬する原料である銅精鉱とコークスを供給し、加熱溶融させてなる溶湯を処理するとともに、この処理過程において炉底にマグネタイトの敷上がりが生じる精錬炉であって、セットラ内の溶融スラグ層に滞留するコークス量(以下「滞留コークス量」という。)を一定に維持することにより、マグネタイトの敷上がりに影響する炉内還元度を一定に保つ制御を行うものであるといえ、
(2)によると、当該制御は、シャフト内での熱バランス及び酸素バランスから収束計算して得られたコークス燃焼率及びそれから得られたコークス量をコークス供給量にフィードバックして、コークス供給量を制御することにより行うものといえ、
(3)によると、セットラ内のマット温度等の反応温度を維持するための熱バランスのうちの出熱量は、炉壁に設けた水冷ジャケット内に供給される冷却水による放散熱等を計算装置により計算して求められるといえ、
(4)によると、当該制御により炉内還元度が制御されて、マグネタイトの敷上がりが一定の値に低減かつ安定するものといえる。

そして、引用文献A記載の精錬炉は、セットラ部のマット温度等を維持する制御を行うものであるから、溶湯の温度を測定する測定手段を備えるものといえるし、マグネタイトの敷上がりを一定の値に維持する制御も行うものであり、マグネタイトの敷上がり量を検知しているから(段落0024)、その検知手段を備えるものといえる。

したがって、引用文献Aには、以下の発明が記載されている。
「コークスと銅製錬する原料を供給し、原料を加熱溶融させてなる溶湯を処理するとともに、この処理過程において炉底にマグネタイトからなる敷上がりが生じる銅製錬自溶炉であって、炉壁の冷却を行う水冷ジャケットと、該ジャケットに冷却水を供給する冷却水供給装置と、前記ジャケットにおける放散熱を求める計算装置と、前記炉底へのマグネタイト堆積による敷上がり量を検知する検知手段と、前記溶湯の温度を測定する測定手段と、を有する銅製錬自溶炉。」(以下「引用発明」という。)

5.対比
本願発明1(前者)と、引用発明(後者)とを対比すると
後者の「炉底にマグネタイトからなる敷上がりが生じる」、
「前記炉底へのマグネタイト堆積による敷上がり量」は、それぞれ、
前者の「炉本体の内壁面にマグネタイトからなる鋳付きが生じる」、
「炉本体の内壁面に生じたマグネタイトの鋳付き量」に相当し、

後者の「炉壁の冷却を行う水冷ジャケット」、
「該ジャケットに冷却水を供給する冷却水供給装置」及び
「前記ジャケットにおける放散熱を求める計算装置」は、それぞれ、
前者の「炉本体において前記溶湯と接する領域、あるいは前記溶湯と接する
耐火物の冷却を行うジャケット」、
「該ジャケットに前記冷媒を供給する冷媒供給装置」及び
「前記ジャケットにおける抜熱量を求める演算装置」に相当し、

後者の「前記溶湯の温度を測定する測定手段」は、
前者の「溶湯の温度を測定する溶湯温度測定装置」に相当する。

したがって、本願発明と、引用発明とは以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「製錬する原料を加熱溶融させてなる溶湯を処理するとともに、この処理過程において炉本体の内壁面にマグネタイトからなる鋳付きが生じる製錬炉であって、炉本体において前記溶湯と接する領域、あるいは前記溶湯と接する耐火物の冷却を行うジャケットと、該ジャケットに前記冷媒を供給する冷媒供給装置と、前記ジャケットにおける抜熱量を求める演算装置と、前記炉本体の内壁面に生じたマグネタイトの鋳付き量を検知する検知手段と、前記溶湯の温度を測定する溶湯温度測定装置と、を有する製錬炉。」

(相違点)
相違点1:
本願発明は、ジャケットにおける抜熱量が、
「前記ジャケットに供給される前記冷媒の温度を測定する供給側温度測定器と、前記ジャケットから排出される前記冷媒の温度を測定する排出側温度測定器と、前記供給側温度測定器及び前記排出側温度測定器からその測定値を信号として受け、これらの測定値から」演算して求められるのに対して、
引用発明は、ジャケットにおける抜熱量が、何から演算して求められるのか不明である点。

相違点2:
本願発明は、炉本体の内壁面に生じたマグネタイトの鋳付き量が、「(ジャケットにおける)抜熱量から」検知されるのに対して、
引用発明は、マグネタイト堆積による敷上がり量が、何から検知されるのか不明である点。

6.当審の判断
(1)相違点1について
冷媒による抜熱量は、冷媒の流量、熱容量と熱交換前後の温度変化との積であるから、引用発明において、ジャケットにおける抜熱量を求めるために、冷却水の供給側及び排出側にそれぞれ温度測定器を設け、炉壁との熱交換前後の温度変化を測定し、これらの測定値から、演算して求めるとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項といえる。

(2)相違点2について
引用文献Bにおいて、炉底レンガは、断熱材として作用し、溶湯から炉本体への熱伝導を抑える効果を奏していると言える。
そして、単位時間あたりの冷媒の供給量を一定にした状態では、冷却パイプ1本当りの熱負荷は、耐火レンガの残存厚と第5図のような相関関係を有しているから、高炉の炉底冷却用パイプ内に流れる冷却流体の受ける熱負荷と炉底浸食状況との関係を予め計算し、上記冷却流体の熱負荷値を計測して炉底浸食状況を推定することが記載されている。

これに対して、引用文献Aの段落0006の記載によると、マグネタイト堆積による敷上がり(鋳付き)は、炉底レンガを保護するコーティングとして機能するものであるから、鋳付きも、断熱材として作用し、溶湯から炉本体への熱伝導を抑える効果を奏していると言える。

そうすると、引用発明における鋳付き量の減少は、引用文献Bにおける炉底浸食状況と同様の状況を示し、水冷ジャケットの冷却水による抜熱量の増加により検知され(るとともに、鋳付き量の増加は、前記抜熱量の減少により検知され)ることは、当業者が容易に理解することができる事項と認められるから、引用発明において、マグネタイトの鋳付き量を、ジャケットにおける抜熱量から検知するとすることは、引用文献Bの記載に基いて当業者が容易に想到し得る事項といえる。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献A、Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-02 
結審通知日 2009-11-04 
審決日 2009-11-25 
出願番号 特願2002-321113(P2002-321113)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F27B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 植前 充司
山本 一正
発明の名称 製錬炉及び炉況検知方法、操業方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
代理人 柳井 則子  
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