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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1209709
審判番号 不服2008-10365  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-24 
確定日 2010-01-07 
事件の表示 特願2002-154575「印刷方法および印刷装置並びに2値化ディザマトリクスパターン」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月20日出願公開、特開2003- 87567〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年5月28日の出願(優先権主張、平成13年6月26日)であって、平成19年5月25日付けの拒絶理由通知に対し、平成19年7月24日付けで手続補正がなされ、平成20年3月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年4月24日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成19年7月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下、本願発明という)は、以下のとおりのものである。

「多値画像の2値化に用いられる2値化ディザマトリクスパターンであって、
順次点灯される複数の画素をマトリクス状に配列した矩形パターンとして構成され、
複数箇所から互いにほぼ同一形状のドットがそれぞれ順番に成長するように、前記複数の画素のそれぞれに対して、互いに重複することがない連続する点灯順序が設定されることを特徴とする、2値化ディザマトリクスパターン。」

(2)刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平9-107473号公報(以下、刊行物1という)には、次の事項、および図面が記載されている。
ア.「【0002】
【従来の技術】情報処理装置のプリンタや各種の記録装置、表示装置等においては、白黒イメージあるいはカラーイメージをハーフトーンで表現するために、各種の方法が採用される。特に、白ドットと黒ドットを組み合せ、マトリクス状に配置し、黒ドットの密度によって階調表現するディザ法は、ドット単位で見た場合に二値でのみ表現することのできる出力媒体等を用いた装置に広く採用されている。このディザ法では、1画素を表現するためのマトリクス状の閾値を用意し、この閾値をマトリクス内でばらばらに設定することによって所定の黒ドット密度のドットパターンを得る。入力した画信号は各閾値と比較され、その閾値より大きい場合には黒ドット、小さい場合には白ドットがそのマトリクス中に配置される。黒ドットの密度や配置をどのように選定すればどの程度の階調を表現できるかは従来経験的に求められている。従って、設計者は予め表示装置や印刷装置等の画質や性能に合わせてマトリクスの大きさとその構成を決定し、閾値を選択してメモリに記憶するといった処理を必要とした。特に、同一の表示出力装置で何種類かの画質の画像を出力する場合には、その要求に応じたサイズや構成のディザパターンを各種メモリに格納しておくようにしていた。」

イ.「【0011】図2は、ディザ法の説明図である。図に示したディザパターン21は、画信号22を処理するための閾値のマトリクスから構成されている。各画信号22はこのディザパターン21を構成する各閾値と比較され、この閾値よりも大きい場合は黒ドット、小さい場合は白ドットとして表現される。これにより、例えば原画像のこの部分がほぼ一定の濃度のハーフトーンである場合には、ディザパターン21によって、丁度そのハーフトーンを表現するのに適する黒ドット密度のドットマトリクス23が得られる。原画像の濃度が上がれば出力されるドットマトリクスの黒ドット密度が増加し、濃度が下がれば黒ドット密度が低下する。」

ウ.「【0014】図5には、網点型のディザパターン説明図を示す。(a)は網点型のディザパターンの一例である。上記のように、階調表現を行うための性能についてはドット集中型が優れているが、分解能に介してはドット分散型が優れている。また、ドット集中型の中でもディザマトリクスのサイズが小さいものほど分解能は良いが、サイズを小さくすれば疑似階調数が不足するという問題がある。そこで、この網点型では集中型を基本ブロックにし、これをずらして配置する。これによって、階調表現後の性能を損なわず、ある程度の分解能を実現できる。従って、この方法は最も美しい出力を得ることができる。」

エ.【図5】には、次の図が記載されている。


以上の記載により、刊行物1には以下の発明(以下、刊行物1発明という)が記載されている。

原画像の各画信号を閾値で処理して白ドットと黒ドットのドットマトリクスで表現するための閾値のマトリクスから構成された網点型のディザパターンであって、
前記閾値が次の図のように設定されたディザパターン。


(3)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「原画像の各画信号を閾値で処理して白ドットと黒ドットのドットマトリクスで表現する」ことは、画像処理分野で「2値化」と言われる処理であり、その処理のための、刊行物1発明の「閾値のマトリクスから構成された網点型のディザパターン」は、「2値化ディザマトリクスパターン」といえる。また、刊行物1発明の「原画像」は、2値化されるのであるから「多値画像」であることは明らかである。
したがって、刊行物1発明の「原画像の各画信号を閾値で処理して白ドットと黒ドットのドットマトリクスで表現するための閾値のマトリクスから構成された網点型のディザパターン」は、本願発明の「多値画像の2値化に用いられる2値化ディザマトリクスパターン」に相当する。

刊行物1発明の「ディザパターン」は、図5(a)ないし(d)をみると、8×8(64画素)のマトリクスに0から63までの64個の閾値がそれぞれ設定されたものであり、原画像の画信号の濃度が大きくなるにしたがって、黒ドットの数が1、2、3・・・と順次増加するものであるから、「順次点灯される複数の画素をマトリクス状に配列した矩形パターンとして構成され」ていることは明らかである。
また、このディザパターンは、図5(a)の閾値の値が、中央上部付近を中心として右半分では0、6、8、10・・・、左半分では2、4、12、14・・・、右下部付近を中心として3、5、13、15・・・、左下部付近を中心として1、7、9、11・・・と、複数箇所で黒ドットがそれぞれ順番に成長するように設定されている。さらに、図5(b)をみると、中央上部付近の黒ドットの右半分は0、6、8、10の順に成長したものであり、これは、左下部の1、7、9、11の順に成長した黒ドットと同一形状で成長したものである。
また、このディザパターンの64個の閾値はいずれも互いに異なるものであるから、「前記複数の画素のそれぞれに対して、互いに重複することがない連続する点灯順序」となるように設定されていることは明らかである。
したがって、刊行物1発明の「ディザパターン」は、閾値が設定される点を除いて、順次点灯される複数の画素をマトリクス状に配列した矩形パターンとして構成され、複数箇所から互いにほぼ同一形状のドットがそれぞれ順番に成長するように、前記複数の画素のそれぞれに対して、互いに重複することがない連続する点灯順序となるように設定される点で本願発明と共通する。

以上により、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
多値画像の2値化に用いられる2値化ディザマトリクスパターンであって、
順次点灯される複数の画素をマトリクス状に配列した矩形パターンとして構成され、
複数箇所から互いにほぼ同一形状のドットがそれぞれ順番に成長するように、前記複数の画素のそれぞれに対して、互いに重複することがない連続する点灯順序となるように設定されることを特徴とする、2値化ディザマトリクスパターン。

[相違点]
2値化ディザマトリクスパターンについて、本願発明では、点灯順序が設定されるのに対し、刊行物1発明では、点灯順序ではなく点灯順序となるように閾値が設定される点。

(4)当審の判断
上記相違点について考察する。
2値化ディザマトリクスパターンとして、点灯順序を設定したものも閾値を設定したものも何れも、画像処理の分野において例を挙げるまでもなく周知のものであって、何れを用いるかは設計時の必要に応じて当業者が選択し得ることにすぎないから、刊行物1発明において、ディザパターンに閾値の代わりに点灯順序を設定することは当業者が必要に応じて適宜なし得ることであり、そのことによる格別の効果もない。
したがって、本願発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、次のように主張している。
「引用文献1の図5(a)に示す網点パターンは、例えば、その図5(c)に示すように、50%の点灯状態において、その上半分側において4×4の正方形状のドットをその左右方向における中央位置にそなえるとともに、その下半分側において2×4の長方形状のドットをその左端位置と右端位置とにそれぞれそなえています。
従って、この図5(c)に示された状態では、4×4の正方形状のドットと2×4の長方形状のドットが形成されており、「複数箇所から互いにほぼ同一形状のドット」がそれぞれ成長するものではありません。」

しかしながら、本願の【図36】の実施例をみると、○が付されて示されている点灯している画素は、例えば右下では79、87、95であり、これと同一形状のものは、点灯順序にそれぞれ1を加えた中央左上の80、88、96である、すなわち、中央で点灯している10画素のうちの一部であると考えられる。つまり、本願の請求項に記載された「複数箇所から互いにほぼ同一形状のドットがそれぞれ順番に成長する」とは、点灯している画素の集まりすべて(上記実施例の中央の10画素)を意味しているのではなく、点灯順序が1程度異なるほぼ同時に点灯する画素の集まりを意味していると考えるのが妥当であると考えられる。請求人が引用文献1に対する主張において、上半分側における4×4の正方形状のドットと下半分側における2×4の長方形状のドットを対応させているのは誤りであって、正しくは、上半分側における4×4の正方形状のドットのうちの左半分の2×4の長方形状のドット、および、下半分側の右側における2×4の長方形状のドットを対応させるべきである。その場合は、この図5(c)に示された状態は、複数箇所から互いにほぼ同一形状のドットがそれぞれ成長するものであるということができる。
したがって、請求人の主張は当を得ないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-29 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-24 
出願番号 特願2002-154575(P2002-154575)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯田 清司  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 廣川 浩
千葉 輝久
発明の名称 印刷方法および印刷装置並びに2値化ディザマトリクスパターン  
代理人 真田 有  

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