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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1209767
審判番号 不服2006-18225  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-21 
確定日 2010-01-06 
事件の表示 特願2003-369401「光ピックアップ用アクチュエータと光ピックアップ装置及びそれを採用した光記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日出願公開、特開2004-152472〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成15年10月29日(パリ条約による優先権主張2002年10月30日 韓国)の出願であって、平成17年10月18日付け拒絶理由通知により、平成18年5月15日付けで拒絶査定され、これに対し、平成18年8月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。
そして、平成18年10月24日付けで審査官から前置報告がなされ、平成20年12月2日付けで当審より前記前置報告の内容を利用した審尋がなされたが、回答書は提出されなかったものである。

第2 平成18年8月21日付けの手続補正について

平成18年8月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであると認める。

本件補正の特許請求の範囲についての補正は、本件補正前の請求項1、7及び13を削除し、本件補正前の請求項6、12及び18を新たに請求項1、6及び10とするとともに、請求項の項番を整理するものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項1号に掲げられた請求項の削除を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合し、かつ同条第4項第1号に掲げる事項を目的としているから、適法になされたものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
本願の請求項1乃至15に係る発明は、平成18年8月21日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載されたとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に備えられたホルダーと、
入射光をディスクに集束させる対物レンズと、球面収差補正用液晶パネルが搭載された可動部と、
前記可動部を前記ディスク半径方向及びフォーカス方向に駆動させる磁気駆動部と、
前記磁気駆動部を駆動するための信号の通電経路として利用されるものであって、少なくとも4つ以上のワイヤーよりなった第1連結部と、前記第1連結部とは電気的に独立設置されて前記液晶パネルを駆動するための信号の通電経路として利用されるものであって、複数のワイヤーよりなった第2連結部とを具備し、前記ホルダーに対して前記可動部を動き自在に支持する連結部材とを含む光ピックアップ用アクチュエータであって、
前記ワイヤーが結合される前記ホルダーと前記可動部の所定位置には前記ワイヤーの組込み位置をガイドするガイドホールが形成され、
紫外線の照射によって硬化される硬化剤を通じて前記ガイドホールに前記ワイヤーを結合することを特徴とする光ピックアップ用アクチュエータ。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-266394号公報(以下、「第1引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(a)
「【0003】上記のような対物レンズ駆動装置を含む光ディスク装置において、ディスク面に対する対物レンズの光軸の相対傾き(以下、チルトという)が生じていると、コマ収差が発生し記録再生時の信号が劣化する要因となる。
【0004】さらに、ディスクの厚みのばらつきによっても球面収差が発生し記録再生時の信号が劣化する要因となる。
【0005】とくに、CDに比べてDVD(デジタルバーサタイルディスク)などの高密度化されたディスクへの記録再生時にはチルトおよびディスク厚みばらつきに対する許容度が小さくなっており、これらが要因となって発生する収差を補正する機能が必要となる。
【0006】そこで、液晶素子を用いて収差を補正する方式が特開平10-20263号公報などによってすでに開示されている。
【0007】収差補正のための液晶素子は、制御電極が所定のパターンで複数の領域に分割されて形成されており、各領域に印可する電圧調整により透過するレーザー光の位相差を加減して収差を補正する。」

(b)
「【0009】この課題を解決するためには液晶素子を対物レンズ駆動装置の可動体に搭載して、対物レンズと一体に駆動することにより、対物レンズがトラッキング方向に移動したときでも収差補正能力が低下することはなく、記録再生信号が劣化することはない。
【0010】ところが、収差補正のための液晶素子において必要な給電線としては、制御電極の各領域に与える電圧のうち最大電圧と最小電圧および共通電極に与える電圧をそれぞれ印加するための少なくとも3本の給電線が必要である。
【0011】一方、このような対物レンズ駆動装置においては、対物レンズを保持するレンズホルダを、少なくともフォーカシング方向及びトラッキング方向の2方向に弾性移動可能に支持するための支持機構として4本の金属線を使用しており、レンズホルダに搭載されたフォーカシングコイルおよびトラッキングコイルへの給電線としてこの4本の金属線を兼用している。
【0012】従って、液晶素子のための給電線としてはリード線やFPC等を新たに設けて駆動信号を供給するか、支持機構としての金属線の本数を増やしてこの金属線を用いて駆動信号を供給する必要がある。」

(c)
「【0015】そこで、支持機構としての金属線の本数を増やして駆動信号を供給することにより信頼性を十分確保することができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、フォーカシング駆動およびトラッキング駆動の駆動信号の供給に用いる4本の金属線に液晶素子の駆動信号の供給に用いる3本を加えて合計7本となり、支持機構としての対称性を得るために金属線の本数を偶数とするため最少でも8本の金属線により支持機構を構成することとなる。」

(d)
【0009】の「液晶素子を対物レンズ駆動装置の可動体に搭載して、対物レンズと一体に駆動する」旨の記載を参照すると、【0011】に記載された「対物レンズを保持するレンズホルダ」には、「液晶素子」が搭載されているものと認められる。

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、第1引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「対物レンズと、収差補正のための液晶素子とが搭載されたレンズホルダと、
レンズホルダに搭載されたフォーカシングコイル及びトラッキングコイルと、
フォーカシング駆動及びトラッキング駆動の駆動信号の供給に用いる4本の金属線に液晶素子の駆動信号の供給に用いる3本の金属線を加えた、レンズホルダを弾性移動可能に支持するための支持機構としての金属線とを含む対物レンズ駆動装置。」

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-212826号公報(以下、「第2引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(e)
「 第3図を用いて本発明の第3の実施例について第1の実施例と異なる点について説明する。レンズホルダー32の一部に形成した容器状構造物に低分子カットシリコーンゲル材35が充填保持されており、これにワイヤー33が貫通している。またベース34の一部に形成した容器状構造物に低分子カットシリコーンゲル材35が、充填保持されており、これにも前記ワイヤー33が貫通している。レンズホルダー32が振動する時、前記低分子カットシリコーンゲル材35の中を前記ワイヤー33が動き、低分子カットシリコーンゲル材35の変形及び粘性流動によりレンズホルダー32の一次共振のダンピングを行う。低分子カットシリコーンゲル材35の充填保持は、レンズホルダー側もしくはベース側のどちらか一方でもダンピング効果を得ることができる。第1の実施例にない効果としてワイヤー33の共振も抑えることができる。」(第4頁左上欄第17行?右上欄第14行)

(f)
第3図(a)(b)及び上記摘記(e)によれば、ワイヤー33はレンズホルダー32及びベース34を貫通しているので、ワイヤー33が結合されるレンズホルダー32とベース34の所定位置に「穴」が形成されており、また、該「穴」は当然そのワイヤーの組み込み位置をガイドしていることは明らかである。してみると、第3図(a)(b)及び上記摘記(e)には、ベース34に対してレンズホルダー32を片持ちに支持するワイヤーを含む対物レンズ駆動装置であって、ワイヤー33が結合されるレンズホルダー32とベース34の所定位置にガイドホールが形成されている構造が記載されている。

3.対比
そこで、本願発明を、引用発明と比較する。

引用発明における「対物レンズ」は、入射光をディスクに集束させることは明らかなので、本願発明における「入射光をディスクに集束させる対物レンズ」に相当する。

引用発明における「収差補正のための液晶素子」は、球面収差も補正するものであるから、本願発明における「球面収差補正用液晶パネル」に相当する。

引用発明における「レンズホルダ」は、本願発明における「可動部」に相当する。
そして、「レンズホルダに搭載されたフォーカシングコイル及びトラッキングコイル」は、本願発明における「可動部を前記ディスク半径方向及びフォーカス方向に駆動させる磁気駆動部」に相当する。

引用発明における「フォーカシング駆動及びトラッキング駆動の駆動信号の供給に用いる4本の金属線」は、本願発明における「磁気駆動部を駆動するための信号の通電経路として利用されるものであって、少なくとも4つ以上のワイヤーよりなった第1連結部」に相当する。
引用発明における「液晶素子の駆動信号の供給に用いる3本の金属線」は、前記4本の金属線に加えて設けられているのであるから、電気的に独立設置されていることは明らかであるので、引用発明における「第1連結部とは電気的に独立設置されて前記液晶パネルを駆動するための信号の通電経路として利用されるものであって、複数のワイヤーよりなった第2連結部」に相当する。
そして、引用発明における「レンズホルダを弾性移動可能に支持するための支持機構としての金属線」は、本願発明の「可動部を動き自在に支持する連結部材」に相当する。

引用発明における「対物レンズ駆動装置」は、本願発明における「光ピックアップ用アクチュエータ」に相当する。

すると、本願発明と、引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
入射光をディスクに集束させる対物レンズと、球面収差補正用液晶パネルが搭載された可動部と、
前記可動部を前記ディスク半径方向及びフォーカス方向に駆動させる磁気駆動部と、
前記磁気駆動部を駆動するための信号の通電経路として利用されるものであって、少なくとも4つ以上のワイヤーよりなった第1連結部と、前記第1連結部とは電気的に独立設置されて前記液晶パネルを駆動するための信号の通電経路として利用されるものであって、複数のワイヤーよりなった第2連結部とを具備し、前記可動部を動き自在に支持する連結部材とを含む
光ピックアップ用アクチュエータ。

一方で、以下の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)本願発明は「ベース」「ベース上に備えられたホルダー」を備え、連結部材は「ホルダーに対して前記可動部を動き自在に支持する」ものであるのに対し、引用発明では特定されていない点。
(相違点2)本願発明は「ワイヤーが結合される前記ホルダーと前記可動部の所定位置には前記ワイヤーの組込み位置をガイドするガイドホールが形成され、紫外線の照射によって硬化される硬化剤を通じて前記ガイドホールに前記ワイヤーを結合する」のに対し、引用発明ではガイドホールの形成及び金属線の結合について特定されていない点。

4.判断
(相違点1について)
「ベース」上に「ホルダー」を備え、「連結部材」が「ホルダーに対して前記可動部を動き自在に支持する」光ピックアップの構造は周知技術(第1引用例【0026】?【0028】【図2】に記載された「基台10」「ワイヤーホルダー11」「可動体12」「ワイヤー3a?d」、特開2001-52357号公報(以下「周知例1」という)【0024】【0025】【図1】に記載された「ベース板114」「固定部材115」「レンズホルダ112」「サスペンションワイヤ113」、実願平5-63851号(実開平7-32711号)のCD-ROM(以下「周知例2」という)【0003】【図3】に記載された「シャーシ7」「ベース8」「レンズホルダー2」「ワイヤー10」が、それぞれ本願発明の「ベース」「ホルダー」「可動部」「連結部材」に相当する)にすぎず、引用発明にこのような周知の構造を採用して本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得るものである。

(相違点2について)
「連結部材」が「ホルダーに対して可動部を動き自在に支持する」光ピックアップの構造において、「連結部材」が結合される「ホルダー」と「可動部」の所定位置に「ガイドホール」を形成する点は、第2引用例(上記摘記事項(f)に記載された「ベース34」「レンズホルダー32」「ガイドホール」「ワイヤー33」が、本願発明の「ホルダー」「可動部」「ガイドホール」「ワイヤー」に相当する)や、前掲周知例1(【0035】【図4】に記載された「レンズホルダ112」「固定穴112d」「サスペンションワイヤ113」が、本願発明の「可動部」「ガイドホール」「ワイヤー」に相当する)、前掲周知例2(【0003】【図3】に記載された「ベース8」「孔9」「ワイヤー10」、【0012】【図1】に記載された「ベース27」「孔28」「ワイヤー29」が、本願発明の「ホルダー」「ガイドホール」「ワイヤー」に相当する)、特開平10-312558号公報(以下「周知例3」という)(【0027】【図2】【図3】に記載された「ダンパーベース4」「貫通孔4a」「サスペンションワイヤー5」が、本願発明の「ホルダー」「ガイドホール」「ワイヤー」に相当する)等に記載されているように周知技術にすぎない。
そして、「紫外線の照射によって硬化される硬化剤」を通じてガイドホールにワイヤーを結合する点も、前掲周知例1(「紫外線硬化樹脂140」)、前掲周知例2(「UV接着剤11」)、前掲周知例3(「UV樹脂7」)に記載されているように周知技術にすぎず、引用発明にこのような周知の構造を採用して本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得るものである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、第1及び第2引用例に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、第1及び第2引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-16 
結審通知日 2009-07-21 
審決日 2009-08-21 
出願番号 特願2003-369401(P2003-369401)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山澤 宏中野 浩昌  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 関谷 隆一
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 光ピックアップ用アクチュエータと光ピックアップ装置及びそれを採用した光記録再生装置  
代理人 伊東 忠彦  

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