ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G |
---|---|
管理番号 | 1209777 |
審判番号 | 不服2008-7292 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-25 |
確定日 | 2010-01-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第167243号「道路標識柱用緩衝装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月24日出願公開,特開2000-322692〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成11年5月12日の出願であって,平成20年2月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し同年3月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年12月25日付け手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて,次のとおりのものと認める。 「従前の道路標識柱と柱設置路盤面との間に配置し,道路通行車両等の道路標識柱への接触若しくは衝突の際,衝撃力により道路標識及び該柱等の破損・変形を免ずる装置であって, 前記道路標識柱の下端部に固着され内部に上部鋼製発条受材を有する上部固着部材と, 前記柱設置路盤面に固着された基礎固着受材に緊結され内部に下部鋼製発条受材を有する耐腐食金属製の下部固着部材と, 前記上部鋼製発条受材と前記下部鋼製発条受材に端部が固着された円形螺旋状鋼製発条と, 前記円形螺旋状鋼製発条の外側に設けられ該円形螺旋状鋼製発条を被覆するための円筒状の弾性護謨製カバーと, 前記円形螺旋状鋼製発条の内径寸法と同一の外形寸法を有し該円形螺旋状鋼製発条の中央に挿入された護謨円柱棒と, を含むことを特徴とする道路標識柱用緩衝装置。」 なお,上記請求項1の記載中「弾性護膜製カバー」は「弾性護謨製カバー」の誤記と認め上記のように認定した。 2.引用例 (2-1)これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-28095号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は,工事現場,イベント会場,公園,運動場,広場,空き地,庭,畑,駐車場,道路,道路沿い等様々な場所に設置される,ポール,棒,柱,竿,標識柱,旗竿など様々な支柱に係るものであり,要するところ,工事現場や標識などに用いる支柱及び支柱保持具に関するものである。」 ・「【0007】本発明は,従来の技術の有するこれらの問題点を解決するためのものであり,第一に,支柱が一定限度以上の大きな力を受けたとき,支柱としての機能を存続させるために,支柱の折損などを防ぐことのできる,また人や車両などが支柱に衝突あるいは接触した際に,人の負傷あるいは車両などの損傷を最小限に留めることのできる工事現場や標識などに用いる支柱及び支柱保持具を提供することを目的とするものである。 【0008】また第二に,上記目的に加え,支柱の設置及び撤去作業を軽微な力で容易に行うことができる工事現場や標識などに用いる支柱及び支柱保持具を提供することを目的とするものである。 【0009】また第三に,第一または第二の目的に加え,支柱の着脱や交換を容易に行うことができる工事現場や標識などに用いる支柱及び支柱保持具を提供することを目的とするものである。」 ・「【0022】 【実施例】実施例について図面を参照して説明する。 【0023】図1は,請求項1に基づく支柱の実施例を示すものであり,基体1は金属又は合成樹脂を用いて,弾性部材装着部10と地中埋込部11とで形成されており,弾性部材2は湾曲できるように,鋼線をコイル状に巻いて形成されており,支柱本体3は金属または合成樹脂または木を用いて,一端に弾性部材装着部12を形成している。弾性部材2の一端は基体1の弾性部材装着部10に,他端は支柱本体3の弾性部材装着部12に圧入などの手段により固着されている。支柱は基体1の地中埋込部11を地中に埋込み地面9に設置固定されている。」 ・「【0024】図2は,請求項2に基づく支柱保持具の実施例を示すものであり,図1に酷似しているが,支柱を保持するための器具であるから,支柱本体に代り,支柱保持体4が弾性部材2の一端に装着されている。支柱保持体4は金属又は合成樹脂を用いて,弾性部材装着部12と支柱保持部13とで形成されている。また,弾性部材2の基体1または支柱保持体4への装着は,弾性部材2の外周部を圧入,かしめ,ねじなどの手段を用いて固着されている。そして,上記と同様に地面9に設置固定されている。支柱本体3は支柱保持体4に装着される。」 ・「【0028】図6,7は,請求項4,5に基づく支柱または支柱保持具の実施例を示すものであり,図1,2と異なる要部のみを示している。図6において基体1は,外周に杭を差し込む穴を有するフランジ部16を形成している。杭部5は主として金属を用いて,基体1に係る頭部と尖鋭状になった先端を形成している。杭部5は,基体1に固着されていてもよく,分離されていてもよい。これは地面9に直接挿込まれ設置固定されている。 【0029】図7において基体1は,その中央部底に杭を差し込む穴を形成している。杭部5は上記と同様であり,同様に地面9に設置固定されている。」 これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には, 「道路の標識柱の支柱本体3と該支柱本体3を設置する地面9との間に配置し,人や車両等が前記支柱本体3に衝突あるいは接触し一定限度以上の力を受けても前記支柱本体3の折損などを防ぐ支柱保持具であって, 前記支柱本体3の下端部に装着され,上方に支柱保持部13を備え,下方内部に弾性部材装着部12とを備えた金属製の支柱保持体4と, 前記支柱本体3を設置する地面9に杭部5により固着され,上方内部に弾性部材装着部10を備えた金属製の基体1と, 前記支柱保持体4に備えられた弾性部材装着部12と前記基体1に備えられた弾性部材装着部10に端部が固着され,鋼線をコイル状に巻いて形成された弾性部材2とからなる支柱保持具。」の発明(「以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2-2)同じく,原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-7943号(実開平1-119413号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「〔課題を解決するための手段〕 標識部材aを有するパイプ製の支柱1において,この支柱1の基部寄りを切り離して基部支柱1aと上部支柱1bとに形成し,この基部支柱1aとその上部支柱1bとをコイル状バネ2で接続する。 〔実施例〕 図面の支柱1はステンレス製パイプ,鉄製パイプ,アルミニウム製パイプ,プラスチック製パイプ等を使用すると良い。 図面の支柱1の上端部には視線誘導標識板を設けた場合を図示しているが,カーブミラー,交通標識板等を取り付けても良い。 この支柱1は固定式を図示しているが,取り外し式でも良い。 コイル状バネ2は鉄線,ステンレス線等をコイル状に巻いたものを使用すると良く,このコイル状バネ2の上端部を支柱1の上部支柱1bの下端部に止着し,下端部を基部支柱1aの上端部に止着して基部支柱1aと上部支柱1bとを接続して支柱1を形成している。 このコイル状バネ2の止着手段は溶着,接着,ネジ込み等を利用すると良い。 このコイル状バネ2の内側にコイル状バネ,ゴム等のコイル状バネ2よりも強度の弱い弾性芯材3を設け,この弾性芯材3で基部支柱1aと上部支柱1bを接続してコイル状バネ2を補強している。 図中4はゴム,ビニール等のカバー,5は係止鍔である。」(明細書2頁11行?4頁7行) ・第2,3図には,コイル状バネ2の外側を被覆する円筒状のゴム製カバーを設ける態様が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例2には, 「道路標識用の支柱において,ステンレス製の支柱1の基部寄りを切り離して基部支柱1aと上部支柱1bとを形成し,両支柱間をコイルバネ2で接続するとともに,該コイルバネ2の外側を被覆する円筒状のゴム製のカバー4を設け,さらに該コイルバネ2の内部に該コイルバネよりも強度の弱いゴム製の弾性芯材3を設け,この弾性芯材3で基部支柱1aと上部支柱1bを接続してなる道路標識用支柱。」の発明が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると,以下のことが言える。 a.引用発明の「道路の標識柱の支柱本体3」は一般的に用いられる普通のものにすぎないから本願発明の「従前の道路標識柱」に相当する。 b.引用発明の「支柱本体3を設置する地面9」は本願発明の「柱設置路盤面」に相当し,以下同様に,「人や車両等が前記支柱本体3に衝突あるいは接触し一定限度以上の力を受けても前記支柱本体3の折損などを防ぐ」は「道路通行車両等の道路標識柱への接触若しくは衝突の際,衝撃力により道路標識及び該柱等の破損・変形を免ずる」に,「支柱保持具」は「装置」及び「道路標識柱用緩衝装置」に,「装着」は「固着」に,「(支柱保持体の)弾性部材装着部12」は「上部鋼製発条受材」に,「上方に支柱保持部13を備え,下方内部に弾性部材装着部12とを備えた支柱保持体4」は「内部に上部鋼製発条受材を有する上部固着部材」に,「杭部5」は「基礎固着受材」に,「支柱本体3を設置する地面9に杭部5により固着され」た態様は「柱設置路盤面に固着された基礎固着受材に緊結され」た態様に,それぞれ相当している。 c.引用発明の「(基体1の)弾性部材装着部10」は,本願発明の「下部鋼製発条受材」に相当し,「基体1」は「下部固着部材」に相当する。したがって,引用発明の「支柱本体3を設置する地面に杭部5により固着され,上方内部に弾性部材装着部10を備えた」態様は,本願発明の「柱設置路盤面に固着された基礎固着受材に緊結され内部に下部鋼製発条受材を有する」態様に相当する。 d.引用発明の「金属製の基体1」と本願発明の「耐腐食金属製の下部固着部材」とは,「金属製の下部固着部材」との概念で共通する。 e.引用発明の「支柱支持体4に備えられた弾性部材装着部12と基体1に備えられた弾性部材装着部10に端部が固着され」た態様は,本願発明の「上部鋼製発条受材と下部鋼製発条受材に端部が固着され」た態様に相当し,「鋼線をコイル状に巻いて形成された弾性部材2」は「円形螺旋状鋼製発条」に相当する。 したがって,両者は, 「従前の道路標識柱と柱設置路盤面との間に配置し,道路通行車両等の道路標識柱への接触若しくは衝突の際,衝撃力により道路標識及び該柱等の破損・変形を免ずる装置であって, 前記道路標識柱の下端部に固着され内部に上部鋼製発条受材を有する上部固着部材と, 前記柱設置路盤面に固着された基礎固着受材に緊結され内部に下部鋼製発条受材を有する金属製の下部固着部材と, 前記上部鋼製発条受材と前記下部鋼製発条受材に端部が固着された円形螺旋状鋼製発条と, を含む道路標識柱用緩衝装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。 [相違点1] 「金属製の下部固着部材」に関し,本願発明では「耐腐食」金属製であるのに対し,引用発明ではそのような特定はなされていない点。 [相違点2] 本願発明が「円形螺旋状鋼製発条の外側に設けられ該円形螺旋状鋼製発条を被覆するための円筒状の弾性護謨製カバー」を備えているのに対し,引用発明はこのようなカバーを備えていない点。 [相違点3] 本願発明が「円形螺旋状鋼製発条の内径寸法と同一の外形寸法を有し該円形螺旋状鋼製発条の中央に挿入された護謨円柱棒」を備えているのに対し,引用発明はこのようなものを備えていない点。 4.当審の判断 上記相違点について以下検討する。 ・相違点1,2について 引用例2には,道路標識用の支柱において,支柱をステンレス製とし,支柱の基部寄りを切り離して基部支柱と上部支柱とを形成し,両支柱間をコイルバネで接続するとともに,該コイルバネの外側を被覆するゴム製のカバーを設けることが記載されている。 そうすると,ステンレスが耐腐食性であることは技術常識であり,道路標識の支柱とともに,支柱を支持する部材も同様に耐腐食性のステンレスで構成することは,適宜採用し得る設計事項というべきであるから,引用発明において,引用例2に記載された事項を参酌し,下部固着部材(基体)を耐腐食金属で構成するとともに,円形螺旋状鋼製発条(弾性部材)の外側を被覆する円筒状の弾性護謨製カバーを設けて,相違点1,2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 ・相違点3について 引用例2には,「コイル状バネを補強するために,コイルバネの内部にコイルバネよりも強度の弱いゴム製の弾性芯材を設ける」ことが記載されている。そして,コイルバネの内部に弾性芯材等を設ける際,コイル状バネの内径寸法と弾性芯材の外形寸法とを同一寸法とする点は,補強効果を勘案して当業者が適宜採用し得る程度の事項に過ぎない。 したがって,引用発明において,引用例2に記載された事項を適用して,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 そして,本願発明による効果も,引用発明及び引用例2に記載された事項から予測し得る範囲のものに過ぎないと認められる。 5.むすび したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-11 |
結審通知日 | 2009-11-12 |
審決日 | 2009-11-25 |
出願番号 | 特願平11-167243 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G08G)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 恭司 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
片岡 弘之 槙原 進 |
発明の名称 | 道路標識柱用緩衝装置 |
代理人 | 石原 詔二 |
代理人 | 石原 進介 |