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審決分類 |
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) C08J 審判 全部無効 2項進歩性 C08J 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 C08J |
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管理番号 | 1210161 |
審判番号 | 無効2007-800200 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-09-20 |
確定日 | 2009-12-15 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3935907号発明「連続気孔弾性体及びその製造方法、並びに吸水ローラー及びスワブ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3935907号は、平成16年12月1日に特許出願され、平成19年3月30日に特許権の設定登録が行われた。 そして、平成19年9月21日に請求項1?7に係る特許について請求人トーヨーポリマー株式会社により本件無効審判の請求がなされ、平成19年12月7日付けで被請求人株式会社伏見製薬所から答弁書が提出され、平成20年1月24日付けで請求人及び被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、同日第1回口頭審理が実施され、同日書面審理への移行が宣言された。そして、平成20年2月12日付けで請求人及び被請求人から上申書が提出され、平成20年2月19日付けで請求項6?7に係る特許について無効理由が通知され、これに対して被請求人から平成20年3月21日付けで訂正請求書及び意見書が提出された。その後、平成20年3月24日付けで請求人から意見書が提出され、平成20年4月18日付け及び平成20年5月1日付けで被請求人から上申書が提出され、平成20年5月7日付けで請求人から弁駁書が提出され、平成20年6月30日付けで請求人から上申書が提出されたものである。 2.訂正請求について 2-1.訂正請求の内容 平成20年3月21日付け訂正請求書による訂正請求が求める訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許第3935907号の特許請求の範囲の請求項1について「・・・骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し・・・」を「・・・骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し・・・」と訂正するものである。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 本件訂正は、願書に添付された明細書の段落【0014】の「本発明の連続気孔弾性体は、その網目構造を構成する骨格の太さが、ほぼ均等であることを特徴とする。具体的には、80%以上の骨格が2?20μmの範囲の太さを有する。好ましくは、80%以上の骨格が6?15μmの範囲の太さを有する。」の記載に基づき、訂正前の特許請求の範囲の請求項1にある「骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである」を「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、また、その訂正は、願書に添付された明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3.むすび よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 上記「2.訂正請求について」のとおりであるから、訂正後の本件請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、訂正された本件明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 ポリウレタンからなり、その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)であり、かつHLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする連続気孔弾性体。 【請求項2】 界面活性剤のHLB値が8?19であることを特徴とする請求項1に記載の連続気孔弾性体。 【請求項3】 ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤である塩化カルシウムを、主原料として含有する組成物を混練して粘土状相溶物にする工程、当該組成物を脱泡、成形する工程、得られた成形物を水中あるいは水溶液中に投入して凝固する工程、及び、凝固された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去しその後乾燥する工程を有することを特徴とする連続気孔弾性体の製造方法。 【請求項4】 前記組成物が、さらに、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の連続気孔弾性体の製造方法。 【請求項5】 凝固された成形物から、気孔生成剤である前記塩化カルシウムを水抽出した後、該成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の連続気孔弾性体の製造方法。 【請求項6】 請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする吸水ローラー。 【請求項7】 請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とするスワブ。 4.請求人の主張 請求人は、審判請求書、平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書、平成20年2月12日付け上申書、平成20年3月24日付け意見書、平成20年5月7日付け弁駁書及び平成20年6月30日付け上申書において、特許第3935907号の請求項1?7に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、証拠方法として以下の甲第1?27号証並びに実験証明書及び参考資料1を提出し、次の無効にすべき理由を主張している。 4-1.無効にすべき理由 4-1-1.本件発明1及び2に係る特許について無効にすべき理由 (理由1-1、2-1)本件発明1及び2は、甲第8号証に記載された発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、及び甲第9?14号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 (理由1-2、2-2)本件発明1及び2は、甲第15号証に記載された発明、及び甲第9?14、16号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 4-1-2.本件発明3に係る特許について無効にすべき理由 (理由3-1)本件発明3は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件発明3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 (理由3-2)本件発明3は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件発明3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 (理由3-3)本件発明3は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 (理由3-4)本件発明3は、甲第8号証に記載された発明、及び甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 4-1-3.本件発明4に係る特許について無効にすべき理由 (理由4)本件発明4は、甲第8号証に記載された発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、及び甲第9?14号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 4-1-4.本件発明5に係る特許について無効にすべき理由 (理由5)本件発明5は、甲第8号証に記載された発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、及び甲第9?14号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 4-1-5.本件発明6に係る特許について無効にすべき理由 (理由6)本件発明6は、甲第8号証に記載された発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、並びに甲第9?14号証及び甲第21?23号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 4-1-6.本件発明7に係る特許について無効にすべき理由 (理由7)本件発明7は、甲第8号証に記載された発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、甲第9?14号証に記載された周知技術、及び甲第17?19号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 4-2.証拠方法等 甲第1号証:特開平4-212373号公報 甲第2号証:特開平5-309793号公報 甲第3号証:特開2004-267277号公報 甲第4号証:特開昭58-185629号公報 甲第5号証:特開昭60-96443号公報 甲第6号証:特開昭58-189242号公報 甲第7号証:特公昭48-29781号公報 甲第8号証:特開2001-233987号公報 甲第9号証:特公昭36-2034号公報 甲第10号証:特開昭61-78819号公報 甲第11号証:国際公開第2002/034374号パンフレット 甲第12号証:特開平7-278343号公報 甲第13号証:特開平8-231754号公報 甲第14号証:井上圭三外7名編、生化学辞典、第3版、株式会社東京化学同人、2000年3月1日第4刷発行、955?956頁 甲第15号証:特開平10-168236号公報 甲第16号証:岩田敬治編、ポリウレタン樹脂ハンドブック、初版、日刊工業新聞社、昭和62年9月25日1刷発行、336?339頁 甲第17号証:特開平10-229871号公報 甲第18号証:特開2002-52369号公報 甲第19号証:特開2003-4605号公報 甲第20号証:特開2006-274489号公報 甲第21号証:特開平4-111387号公報 甲第22号証:特開平8-272063号公報 甲第23号証:特開平5-346657号公報 甲第24号証:新村 出編、「広辞苑(第五版)」、株式会社岩波書店、1998年11月11日第1刷発行、2849頁 甲第25号証:特開平8-73644号公報 甲第26号証:特開平8-127668号公報 甲第27号証:特開平8-283446号公報 実験証明書(2008年6月20日付けトーヨーポリマー株式会社ウレタン応用G化成品T西本敏幸作成) 参考資料1:本件特許明細書の実施例1,比較例1及び比較例2の混練組成物の比重等 なお、甲第1?19号証は審判請求書に、甲第20?23号証は平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書に、甲第24号証は平成20年2月12日付け上申書に、甲第25?27号証及び実験証明書は平成20年6月30日付け上申書に添付されたものである。参考資料1は平成20年3月24日付け意見書に添付されたものである。 5.被請求人の主張及び提出した証拠方法等 被請求人は、答弁書等において、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として参考図を平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書に添付し、以下の乙第1?8号証及び参考資料1?4を平成20年2月12日付け上申書に添付し、実験証明書を平成20年5月1日付け上申書に添付して、それぞれ提出し、請求人の主張はいずれも失当であって、本件発明1?7に係るいずれの特許も無効にすべきものではないと主張する。 乙第1号証:特開2001-129639号公報 乙第2号証:大木道則外3名編、「化学辞典」、株式会社東京化学同人、第1版第5刷、1999年6月1日発行、359頁、500頁、787頁、1279頁 乙第3号証:特開2005-89194号公報 乙第4号証:日本粘土学会編 「粘土ハンドブック 第二版」、技報堂出版株式会社、1987年4月30日2版1刷発行、830?831頁 乙第5号証:三菱マテリアル株式会社のホームページの一部、「商品案内 三菱マテリアルの純銀粘土PMC」を印字したもの 乙第6号証:「ひかりのつばさ」のホームページの一部、「エポキシパテを練る」、http://homepage.mac.com/noriakg/kowaza/neru.html から印字したもの 乙第7号証:ポリマー辞典編集委員会編、「ポリマー辞典コンサイス版」、株式会社大成社、平成15年1月20日増補7版発行、222頁 乙第8号証:新村 出編、「広辞苑(第四版)」、株式会社岩波書店、1993年10月25日第3刷発行、322頁、378頁 参考図(平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書に添付):押出性について、保形性について 実験証明書(2008年4月25日付け株式会社伏見製薬所製造技術室室長伊藤喜章作成) 参考資料1:押出性、凝固、保形性について 参考資料2:残留水分量について 参考資料3:固形分30%溶液型ポリウレタン樹脂100重量部に対する無機塩添加量について 参考資料4:気孔生成メカニズムの見掛密度への影響について 6.当審が通知した無効理由の概要 訂正前の請求項6に係る発明は、本件の出願前に国内において頒布された下記刊行物9?12及び14?16に記載された発明に基づいて、また、訂正前の請求項7に係る発明は、本件の出願前に国内において頒布された下記刊行物9?12及び14?19に記載された発明に基いて、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項6及び7に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。 刊行物9:特公昭36-2034号公報 (請求人の提出した甲第9号証に同じ。) 刊行物10:特開昭61-78819号公報 (請求人の提出した甲第10号証に同じ。) 刊行物11:国際公開2002-034374号パンフレット(請求人の提出した甲第11号証に同じ。) 刊行物12:特開平7-278343号公報 (請求人の提出した甲第12号証に同じ。) 刊行物14:井上圭三外7名編、生化学辞典、第3版、株式会社東京化学同人、2000年3月1日第4刷発行、955?956頁(請求人の提出した甲第14号証に同じ。) 刊行物15:特開平10-168236号公報 (請求人の提出した甲第15号証に同じ。) 刊行物16:岩田敬治編、ポリウレタン樹脂ハンドブック、初版、日刊工業新聞社、昭和62年9月25日1刷発行、336?339頁(請求人の提出した甲第16号証に同じ。) 刊行物17:特開平10-229871号公報 (請求人の提出した甲第17号証に同じ。) 刊行物18:特開2002-52369号公報 (請求人の提出した甲第18号証に同じ。) 刊行物19:特開2003-4605号公報 (請求人の提出した甲第19号証に同じ。) 7.当審の判断 以下に、請求人の主張する無効理由及び当審で通知した無効理由について検討する。 7-1.甲第1号証?甲第27号証の記載事項 7-1-1.甲第1号証(特開平4-212373号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、「白血球捕捉用フイルター材及びその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲1a) 「【請求項1】少なくとも1種の高分子材料よりなり、平均気孔径が1?60μm、比表面積が0.5?10m^(2)/g、空孔率が30?95%、バブルポイントが0.08?0.30kg/cm^(2)、肉厚が0.1?9.0mmであり表面開孔率が6?90%である三次元網目状連続多孔質体の層を多孔性基材の少なくとも一方の表面に形成してなる白血球捕捉用フイルター材。」(特許請求の範囲) (甲1b) 「【請求項2】高分子材料がポリウレタン、・・・からなる群から選ばれたいずれかのものである請求項1に記載の白血球捕捉用フイルタ材。」(特許請求の範囲) (甲1c) 「【請求項5】少なくとも1種の高分子材料と、該高分子材料の良溶剤と、この良溶剤と相溶性のある非溶剤に溶解ないしは膨潤する1種または2種以上の気孔形成剤とを含む原料組成物を、多孔性基材の少なくとも一方の表面にコーティングまたは含浸し、前記高分子材料に対する非溶剤および良溶剤を含有する浴中に導き浸漬させることによって凝固させ、その後気孔形成剤をその良溶剤中に溶出除去させることを特徴とする白血球捕捉用フィルター材の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲1d) 「【請求項6】高分子材料がポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ポリアミド、ポリエーテルポリアミドブロックコポリマーおよびエチレン-ビニルアルコールコポリマーからなる群から選ばれたいずれかのものである請求項5に記載の白血球捕捉用フィルター材の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲1e) 「本発明の白血球捕捉用フイルター材の三次元網目状連続多孔質体層を構成する高分子としては、高圧蒸気滅菌に耐えうる耐熱性を有するものであれば特に限定はなく、各種のものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリウレタン、・・・などが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。・・・なお、このような高分子材料として特にポリウレタンは好ましいものの1つとして挙げることができるものである。」(段落【0029】) (甲1f) 「上記のごとき特性を有する本発明の白血球捕捉用フィルター材は、例えば次のようにして製造される。すなわち、少なくとも1種の高分子材料と、該高分子材料の良溶剤と、この良溶剤と相溶性のある非溶剤に溶解ないしは膨潤する1種または2種以上の気孔形成剤とを含む原料組成物を、多孔性基材表面にコーティングし、前記高分子材料に対する非溶剤および良溶剤を含有する浴中に導き浸漬させることによって凝固させ、その後気孔形成剤をその良溶剤中に溶出除去させることにより製造されるものである。」(段落【0031】) (甲1g) 「高分子材料の良溶剤としては、用いられる高分子材料を溶解するとともに、ゲル化の際に使用される非溶剤との相溶性を示すものが用いられる。従って、用いられた高分子材料の種類によって適宜選択され得るが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジオキサン、メチルセルソルブアセテート、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、エチルアルコール、メチルアルコール、メチルエチルケトン、フェノール、ギ酸の他、芳香族炭化水素あるいは塩素化炭化水素、フッ素化アルコール等が代表的なものとして示される。」(段落【0033】) (甲1h) 「また気孔形成剤としては、使用される高分子材料および溶剤等により異なるが、上記高分子材料の良溶剤と相溶性のある非溶剤に溶解するあるいは膨潤するものが用いられる。特に、その取扱いの容易さから水溶性高分子などの水溶性化合物であることが望まれる。具体的には、例えば、一般に非溶剤として使用される水、アルコール等に溶解するジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル等を良溶剤として選択した場合、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリエーテル、多糖類、ポリアクリル酸またはその塩、ポリアクリルアミドなどが気孔形成剤として使用可能である。これらの気孔形成剤の添加量は、原料組成物中に1?60重量%、より好ましくは5?50重量%程度が適当である。すなわち、気孔形成剤の添加量が1重量%未満であると、得られる多孔質体が前記したような三次元網目状連続組織、すなわち多孔質体のマトリックスにより形成される連続開放気孔を形成しない虞れが大きく、一方、60重量%を越えるものであると、原料組成物の粘度が極度に上昇し取扱いが困難なものとなるためである。」(段落【0034】) (甲1i) 「またさらに、この原料組成物中には必要に応じて、原料組成物中の50重量%以下、好ましくは3?20重量%の配合量で、気孔径調整剤を添加することも可能である。この気孔径調整剤は、高分子材料の非溶剤に溶解し、かつ良溶剤には溶解しないもので、しかも気孔形成剤と相溶性を有するあるいは非溶解性であっても均一混和が可能なものであり、例えばアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、各種澱粉、デキストリンあるいはナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム等の塩化物、硫酸塩等の無機塩が用いられる。」(段落【0035】) (甲1j) 「これらの成分を含む原料組成物の調製は、溶剤の沸点以下、好ましくは10?80℃程度の温度で行なわれ、均一な分散体が形成されるまで十分に攪拌混合される。次にこのように調製された原料組成物は、先端部に扁平なスリットを有する適当なダイ、例えばTダイ等を有する押出機により押出されて、基材の表面にコーティングされ、前記高分子材料に対する非溶剤および良溶剤を含有する浴中に導かれ、この浴中に浸漬させることによって凝固されると同時に気孔形成剤をその良溶剤中に溶出除去される。」(段落【0036】) (甲1k) 「前記高分子材料に対する非溶剤としては、使用された良溶媒と相溶性を示すものであればよいが、前記したように通常水、アルコールあるいはその混合物などが用いられる。また、このようなゲル化を行なう浴中には、必要に応じて、前記非溶剤以外に、該高分子材料の良溶剤等を添加しておくことも可能である。また、この浴の温度は良好なゲル化を達するために、0?80℃、より好ましくは15?70℃程度の温度に保たれていることが望ましい。さらに、このような浴への浸漬のみでは気孔形成剤の溶出除去が十分とはならない場合には、必要に応じて、この浸漬処理の後に該高分子材料の非溶剤による洗浄工程を設けることも可能である。」(段落【0037】) (甲1l) 「【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例1?5および比較例1?2 ポリウレタン(商品名ミラクトランE395RNAT、日本ミラクトラン株式会社製)を、N-メチルピロリドン(三菱化成株式会社製、NMP)に15w/v%の濃度となるように50℃で溶解し、さらに表1に示す所定の割合にて孔形成剤としてのメチルセルロースを添加し、さらに気孔径調整剤としての塩化カルシウム2水和物をメチルセルロースの1/10量添加した。そして、2軸プラネタリーミキサー(株式会社井上制作所製)により50℃で1時間混練し、真空脱泡することによって、原液を調製した。」(段落【0040】) (甲1m) 「次に、上記のようにして調製された原液を、50℃の温度でコーターによりポリエステル製不織布(平均繊維径18μm、目付密度8.5×10^(-3)g/cm^(2)、厚さ0.15mm)上にコートし、不織布ごと50℃の50%NMP水溶液中に1時間浸漬し、原液を凝固させた。その後、この凝固物を流水中で洗浄することにより孔形成剤を溶出除去し、多孔質体を得た。得られた多孔質体を、60℃のオーブン中で乾燥させ、さらに121℃で20分間の高圧蒸気滅菌を施し、以下の評価実験に供した。結果を表1および表2に示す。」(段落【0041】) (甲1n) 表1には、サンプルとして比較例1?5,実施例1?10の評価実験結果が記載されており、全てのサンプルにおける多孔質体の肉厚は0.3mmであることが記載されている。(段落【0048】【表1】) 7-1-2. 甲第2号証(特開平5-309793号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証には、「透湿防水布帛の製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲2a) 「【請求項1】 ポリウレタン樹脂主体の合成重合体に,粒径20μm以下の無機塩類を1%以上添加した樹脂溶液を離型膜上に塗布し,次に,ジメチルホルムアミドおよび無機塩類を各々1%以上溶解せしめた混合水溶液中に浸漬,凝固させてフィルムを形成し,該フィルムをウレタン系接着剤を介して布帛に点接着ラミネートすることを特徴とする柔軟な風合を有する透湿防水布帛の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲2b) 「本発明では,上述のポリウレタン合成重合体の樹脂溶液に20μm以下,好ましくは10?0.1μmの粒径を有する塩化ナトリウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム,塩化カリウム等の粉末を単独で,あるいは2種類以上の混合物で少なくとも1%以上,望ましくは5?20%添加し,樹脂溶液の粘度が10000?40000(cps)になるようにジメチルホルムアミドを加え,よく攪拌する。」(段落【0010】) (甲2c) 「透湿膜の形成に際しては,表面が平滑で,かつフッ素系樹脂,シリコン系樹脂,ポリプロピレン等で溶解性パラメーターを低下させる加工を施した織物,フィルム,紙等の離型膜上に,前述の塩類を含有するポリウレタン樹脂溶液を塗布し,湿式凝固法で固化させて透湿膜を形成する。塗布に際しては,ナイフコーター,コンマコーター,リバースコーター等の公知のコーティング方法を用いて塗布し,得ようとする透湿膜の膜厚が5?50μmの範囲となるように適宜調整する。」(段落【0011】) (甲2d) 「樹脂溶液は,樹脂膜にピンホールや異物のない均一な皮膜を製造するために,50?200メッシュの濾過布による濾過および脱泡処理をしておくことが望ましい。」(段落【0012】) (甲2e) 「本発明では,湿式凝固に際し,凝固浴にジメチルホルムアミドと塩化ナトリウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム,塩化カリウムの単独あるいは混合物を各々1%以上,好ましくは5?20%溶解した5?20℃の混合水溶液中にて凝固させる。このように構成すると,樹脂の凝固と同時に樹脂溶液中に添加した無機塩類が凝固液中に溶解して消失し,このため,樹脂中の無機塩類が存在していた部位が空孔となり,微細な多孔質が形成される。」(段落【0013】) (甲2f) 「凝固に際しては,樹脂溶液を離型膜上に塗布後,凝固液中にて5?10分間浸漬,凝固し,続いて,50℃の温水で15分間洗浄する。以下,通常の方法にて乾燥する。以上の方法により,本発明で用いる透湿膜を得ることができる。」(段落【0014】) (甲2g) 「実施例1 まず,シリコン系樹脂フィルムをラミネートした離型紙を用意し,これに下記処方1に示す樹脂溶液をナイフオーバーロールコーターを使用して,乾燥後の透湿膜が30μmになるように塗布量を適宜調整して塗布した後,ジメチルホルムアミドおよび塩化カルシウムを各々10%溶解した15℃の混合水溶液中に5分間浸漬,凝固し,続いて50℃の温水中にて15分間洗浄処理を行った後,50℃の温度にて乾燥を行い,離型紙上に透湿膜を形成した。 〔処方1〕 1740-29B 100部 (ウレタン系合成樹脂,セイコー化成株式会社製品) 塩化カルシウム 20部 (平均粒径1μm) レザミンX 2部 (イソシアネート系架橋剤,大日精化工業株式会社製品) ジメチルホルムアミド 30部」 (段落【0023】) 7-1-3.甲第3号証(特開2004-267277号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証には、「化粧用スポンジとその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲3a) 「【請求項5】 水溶解性の無機微粒子とポリウレタン樹脂と溶媒とを含有する分散液を調製し混練する工程と、 混練された分散液を脱泡する工程と、 脱泡された分散液を成形し、ポリウレタン樹脂成形体を製造する工程と、 ポリウレタン樹脂成形体に含まれる溶媒を水中で脱溶媒、凝固する工程と、 凝固されたポリウレタン樹脂成形体から無機微粒子を水抽出して除去する工程とを有する化粧用スポンジの製造方法であって、 前記無機微粒子は、粒子径の異なる少なくとも2種の微粒子の混合物であることを特徴とする化粧用スポンジの製造方法。」(特許請求の範囲) (甲3b) 「この化粧用スポンジは、ポリウレタン樹脂からなるため、耐候性、耐油性、耐水性に優れる。また、この化粧用スポンジは、ポリウレタン樹脂の構造が3次元網目構造であるので、例えばこの化粧用スポンジをファンデーション用のパフとしてファンデーションと接触させた場合、ファンデーションが十分にパフ中に進入する。そして、さらにこの化粧用スポンジは、最大長さが300μm以上の網目と、300μm未満の網目とが混在して構成されているため、パフとファンデーションと接触させた際に、直ちにファンデーションを十分に含み、ケーキングが良好であり、かつ、ケーキングしたパフを肌に接触させた場合には、パフ中に含まれたファンデーションが容易に出てきて肌の上で薄くのびる、化粧ノリに優れたものとなる。また、この場合、最大長さが300μm以上の網目の部分は、ファンデーションを十分に保持、格納する作用を奏し、最大長さが300μm未満の網目の部分は、保持、格納されたファンデーションを肌の上に薄く持続的に伸ばす作用を果たすため、このようなパフは、単に化粧ノリが良好なだけでなく、「含みのある」ものとなる。また、化粧用スポンジ自体の弾力が適度で、伸び、柔軟性、ぬめり感などの肌触りも良好なものとなる。」(段落【0012】) (甲3c) 「無機微粒子としては、水溶解性であれば制限はなく、無水硫酸ナトリウム(無水亡硝)、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが使用でき、これらを1種単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。 これらの水溶解性の無機微粒子を水抽出すると、得られたポリウレタン樹脂成形体には無機微粒子の粒子径よりも大きな空隙が形成され、その結果、3次元網目構造が形成されるが、ここで無機微粒子として、無水硫酸ナトリウムを使用することにより、単に3次元網目構造を形成できるだけでなく、無機微粒子抽出後の空隙の大きさが極度に膨張し、結果、弾力が適度で、肌触りが良好で、化粧ノリにも非常に優れた化粧用スポンジを得ることができる。」(段落【0017】) (甲3d) 「分散液に使用する溶媒としては、通常、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの有機溶剤やこれらの混合物が挙げられるが、後の工程において、容易に水で脱溶媒できることからDMFが好ましく用いられる。 また、分散液は、必要に応じて着色剤やウレタン反応用触媒を含んでも良いし、さらに、劣化防止剤や公知の抗菌剤を含んだものが好ましい。」 (段落【0019】) (甲3e) 「このようにして分散液を調製し、混練した後、混練された分散液を脱泡する。 脱泡の具体的方法としては、分散液中の気泡を取り除ける方法であれば制限はなく、例えば、減圧条件下に放置する方法、遠心分離機などを使用して気泡を強制的に取り除く方法などが挙げられる。」(段落【0022】) (甲3f) 「ついで、脱泡された分散液を成形しポリウレタン樹脂成形体を製造する。 成形の具体的方法としては、押出機を使用し、その成形ダイスより押し出し賦型する方法、型を使用して所定の形状に成型する方法がある。型としては、例えば5?100mm程度の所定の深さの有底の金型や、分散液中のポリウレタン樹脂などが付着しないように表面処理された有底のプラスチック型を使用できる。」(段落【0023】 (甲3g) 「こうして成形されたポリウレタン樹脂成形体を、ついで、5?60℃程度の温度の水中に入れて、脱溶媒、凝固することによって、溶媒が水に抽出され凝固したポリウレタン樹脂成形体を得ることができる。」 (段落【0024】) (甲3h) 「その後、このポリウレタン樹脂成形体から無機微粒子を水抽出して除去することにより、最大長さが一定以上の大きな網目と、一定未満の小さな網目とが混在した3次元網目構造のポリウレタン樹脂を製造することができる。 無機微粒子を水抽出する具体的方法としては、例えば、常圧ワッシャー、液流染色機、洗濯機などにポリウレタン樹脂成形体を投入し、0?50℃の水で数10分から3時間程度、攪拌、洗浄する方法が挙げられる。このような方法によれば、ポリウレタン樹脂成形体が、いわゆる揉み洗いされ、ほぼ完全に無機微粒子を水抽出して除去することができる。」 (段落【0025】) (甲3i) 「その後、無機微粒子が除去されたポリウレタン樹脂成形体を、テンター型、シュリンク型、タンブラー型などの公知の乾燥機で130℃以下で乾燥することにより化粧用スポンジが得られる。そして、この化粧用スポンジを、所定のサイズ、例えば幅50mm、長さ80mm、厚さ20mm程度とすることにより、ファンデーション用のパフが得られるし、チップ状に切り出すことによりアイシャドー用などのチップが得られる。」 (段落【0026】) 7-1-4.甲第4号証(特開昭58-185629号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証には、「微細有孔膜の製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲4a) 「(1)合成樹脂中に発泡剤と電解質を均一分散した混合物を皮膜状に形成し、発泡させた後、水中に浸漬し、電解質を溶出させることにより合成樹脂皮膜中に微細な孔を作ることを特徴とする有孔膜の製造方法」(特許請求の範囲) (甲4b) 「本発明に述べる皮膜形成用の合成樹脂としては通常のコーティング加工やラミネート加工に用いられるウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等皮膜形成可能な樹脂であれば良く、・・・」(第2頁左下欄第6?第10行) (甲4c) 「本発明に述べる発泡剤としては炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、ヒドロキシメチルチオ尿素、又アンモニウムミョウバン等の各種含水塩物質、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスニトリル、アゾビスイソブチルニトリル様なアゾ化合物、ジニトロソペンタメチレン、テトラミンの様なN-ニトロソ化合物等通常用いられている発泡剤で良い。」(第2頁左下欄第13?第20行) (甲4d) 「本発明に述べる電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩系、各種ミョウバン等水によく溶解するものであればいずれも使用可能である。」(第2頁右下欄第1?4行) (甲4e) 「(2)次に(1)にて得られたナイロン平織布に下記する処方(ロ)からなる発泡剤と電解質を含有するウレタン系コーティング剤η=17000CPSにてWetで150g/m^(2)パーコーターにて塗布し、さらに85℃にて2分間加熱した。 (ロ)処理液 ・CRISVON 2016EL 100重量部 (大日本インキ社製 コーティング加工用ウレタン樹脂) ・CRISVON ADDITIVE No.5 5重量部 (同社製 平面平滑剤) ・CRISVON NX 2重量部 (同社製 イソシアネート系架橋剤) ・CRISVON Accel HM 1重量部 (同社製 架橋促進剤) ・炭酸アンモニウム粉末 15重量部 ・塩化カルシウム粉末 15重量部 ・メチルエチルケトン 30重量部 (炭酸アンモニウム、塩化カルシウムの粉末はあらかじめボールミルにて粉砕し平均粒径を0.1?15ミクロンの範囲とした。) このように加熱したところ、ウレタン皮膜は発泡による微細孔を有する皮膜が得られた。 (3)さらに(2)によって得られたコーティング布を40℃なる水の中に30分間浸漬し、塩化カルシウムを溶出させ、90℃にて1分間オーブン中にて乾燥したところ、独立気泡であった微細孔が連続化し、通気性、透湿性とも良好な防水性を有する皮膜を得た。」 (第3頁左上欄第3行?右上欄第10行) 7-1-5.甲第5号証(特開昭60-96443号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証には、「連通気孔を有する多孔性成形物の製法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲5a) 「酸、アルカリ水溶液または水に可溶の充填剤と、熱可塑性樹脂と、少なくとも2種の沸点の異なる分散剤と、前記樹脂の有機溶剤とを、前記樹脂の軟化点以上であり、前記分散剤の最小の沸点と最大の沸点との間の温度で開放系にて撹拌混練してなるものを成形し、この成型物を酸、アルカリ水溶液または水で処理後、水洗乾燥することを特徴とする連通気孔を有する多孔性成形物の製法」(特許請求の範囲) (甲5b) 「本発明において使用される熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン、・・・等が挙げられ、これと共に、これら熱可塑性樹脂の溶融助剤として、従来より公知のN・N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、・・・等の有機溶剤が、適宜熱可塑性樹脂との組合せをもって併用せられる。」(第2頁左下欄第12行?右下欄第3行) (甲5c) 「酸、アルカリ水溶液又は水に可溶の充填剤は、上記熱可塑性樹脂に無数の単独孔を形成する目的をもって使用せられるもので、その具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらの充填剤は上記有機溶剤に不溶性のものであるとする。」(第2頁右下欄第4行?第13行) (甲5d) 「本発明においては更に分散剤が使用されるが、この分散剤は熱可塑性樹脂と上記充填材とを均一に混合することにより上記充填材によって熱可塑性樹脂に形成された無数の各単独孔を連通せしめる、即ち、各単独孔間をつなげて連通孔とする目的をもっており、少なくとも2種以上の沸点の異なる物質を使用することが必須である。その具体例としては、エチレングリコール、・・・等の多価アルコール、またポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、・・・、ソルビタン脂肪酸エステル、・・・等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。」(第2頁右下欄第14行?第3頁左上欄第11行) (甲5e) 「本発明の連通気孔を有する多孔性成形物を実際に得るに際しては、以上説明した成分を開放型ニーダー、ヘンシルミキサー等に収納し、使用する熱可塑性樹脂の軟化点と少なくとも2種の分散剤の持つ沸点との関係から適宜温度を設定して攪拌混練を行う。尚、この温度設定にあたって、熱可塑性樹脂について軟化点ではなく融点以上とすれば、より均一な攪拌混練を行う上から好ましいものと言える。得られた混練物は、次いで射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等によって成形され、これを酸水溶液に可溶の充填剤を使用したなら酸水溶液に浸漬することにより含有されている充填剤を溶出せしめて気孔を形成し、水洗、そして乾燥した後所望の多孔性成形物を得る。」(第3頁左上欄第12行?右上欄第7行) 7-1-6.甲第6号証(特開昭58-189242号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第6号証には、「高分子多孔質体の製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲6a) 「(1)高分子材料と、当該材料の良溶剤及び当該良溶剤と相溶性のある非溶剤の両者に溶解あるいは膨潤する一種又は二種以上の気孔生成剤とを含む高分子組成物を、連続多孔質材料にて、製作される型内に充てんし、高分子材料の非溶剤あるいはその蒸気中にて、型内でゲル化させ、その後型内であるいは型外にゲル化物を取り出し、高分子材料の非溶剤あるいはその蒸気にて、気孔生成剤を抽出除去することを特徴とする高分子多孔質体の製造方法。 (2)高分子材料がポリウレタンである特許請求の範囲第1項記載の高分子多孔質体の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲6b) 「本発明は、ポリウレタン、・・・等の一種又は二種以上の高分子材料と、当該材料の良溶剤に溶解し、又は相溶性を有し、そして当該材料の非溶剤に溶解する一種又は二種以上の気孔生成剤とを含む高分子組成物溶液連続多孔質材料を一部又は全て使用され作られる型内に注入し、充てんし、その後高分子材料の非溶剤あるいはその蒸気にて高分子組成物をゲル化させ、ついて、その型内であるいは型外にゲル化物を取り出し、気孔生成物を高分子材料の非溶剤あるいはその蒸気にて抽出除去することを特徴とする高分子多孔体の製造方法である。」(第2頁左上欄第9行?右上欄第5行) (甲6c) 「さらに具体的に云えば、高分子材料の良溶剤としては、当該材料を溶解すると共に、他において使用する非溶剤と相溶性のあるものが使用され、例えばジメチルホルムアミド・・・その他の芳香族炭化水素、塩素化炭化水素等が使用され、使用される高分子材料に応じて選択される。」(第2頁右上欄第6行?第15行) (甲6d) 「又使用される気孔生成物は、使用される高分子材料、使用される溶剤等により異なるが、高分子材料の良溶剤に溶解し又は相溶性を有し、そして一般的に非溶剤に使用される水、アルコール等に溶解するジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル等を選択した場合、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、高分子多糖類が用いられ、」(第2頁右上欄第16行?左下欄第3行) (甲6e) 「さらに、本発明において気孔径調整剤として、気孔生成物と相溶性のある、または相溶性しなくとも均一混和が可能であり、そして高分子材料の非溶剤に溶解し、さらに又その良溶剤に溶解しない、例えば・・・、あるいはナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・アルミニウム等の塩化物、硫酸塩等の無機塩が組成物中50重量%以上好ましくは3?20重量%用いられる。」(第2頁左下欄第11行?右下欄第1行) (甲6f) 「実施例1?4,比較例1?2 ジメチルホルムアミドを主溶剤とする固形分30%のポリエステル、エチレングリコール、P,P’ージフェニルメタンジイソシアネート等を主原料とするポリウレタン樹脂(例えば、東洋ポリマー(株)製、商品名ハイラック1061)25%、さらにジメチルホルムアミド40%を加え、次いでポリビニルアルコール、アルギン酸、硫酸カルシウムを第1表に示されている%を加えて、高分子組成物をつくり、回転式攪拌機で30分間攪拌し、脱泡後、側面が厚さ2mmの空隙率45%のポリプロピレン焼結体にて製作された型内に前記組成物を充てんした。その後50℃の温水浴中に6時間、型を浸漬すると組成物は、溶剤が非溶剤(この場合水)で置換されゲル化する。ゲル化物を型より取り出し、多量の水にてポリビニルアルコール、アルギン酸、硫酸カルシウムを溶出させ、その後90℃にて30分間乾燥し、厚さ20mmの微細連続気孔を有するブロック状の高分子多孔質体を得た。」(第3頁右上欄第6行?左下欄第5行) 7-1-7.甲第7号証(特公昭48-29781号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第7号証には、「スポンジの製造法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲7a) 「本法は、水中で容易に沈降するスポンジボール用シートの製造法に関するものである。」 (第1頁左欄第36行?第37行) (甲7b) 「本法は、ゴムに発泡剤あるいは気体を添加して得られる発泡体あるいは、ゴムに凝固液に可溶な固形物を添加して、液固液中で添加した固形物、溶剤を抽出し、凝固して得られる発泡体のいずれにも適用できるものである。」(第1頁右欄第33行?第37行) (甲7c) 「実施例2 サンプレンLQ・XI(ポリエステル系ポリウレタンエラストマー)の30%ジメチルホルムアミド溶液(以下DMFと略す)100部に、ジルコンモールド(ジルコンニウムケイ酸200メッシュ粉末)50部、塩化カルシウム粉末(吸湿試験測定用)100部を添加し、攪拌して均一に混合する。得られる混合物を20mm厚さのシート状にし、20℃水中に浸漬する。8時間放置し、ウレタン中の塩化カルシウム及びDMFが完全に溶出されてから、再び水洗後、80℃で30分乾燥する。これにより弾力性に富んだスポンジが得られた。これから得られるスポンジボールの吸水時の比重は1.18g/cm^(3)であった。」(第2頁右欄第9行?第22行) 7-1-8.甲第8号証(特開2001-233987号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第8号証には、「ウレタン多孔質体の製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲8a) 「【請求項1】 ウレタン多孔質体を湿式凝固法で製造するに際し、ポリウレタン系樹脂をジメチルホルムアミドに溶解するとともに、水溶性高分子、界面活性剤を添加混練して混合物とし、押出機の成形ダイス部分の該混合物吐出温度を混合物が賦型し得る温度に冷却して、成形ダイスより押出なしがら賦型し、賦型された混合物を水溶液中に浸漬し、凝固させるとともに、前記水溶性高分子を溶解除去させることを特徴とするウレタン多孔質体の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲8b) 「【従来の技術】ポリウレタンなどのウレタン系樹脂を用いたウレタン多孔質体は、クッション材、化粧品用スポンジ、OA機器用ロール、導電性ロール、導線性クッション等として用いられている。」(段落【0002】) (甲8c) 「【課題を解決するための手段】これまで行われている湿式凝固法について鋭意検討を重ねたところ、ポリウレタン系樹脂の混合物は、組成物質同志の反応熱を抑えるために冷却が成されるものの、ダイスからの吐出部分における温度は常温に近く、混合物の粘度上昇はごく僅かでシート状に塗布できる状態であっても立体的な形状に賦型できる状態でなかった。」(段落【0009】) (甲8d) 「上記従来技術の有する課題を解決するため、この発明の請求項1記載のウレタン多孔質体の製造方法は、ウレタン多孔質体を湿式凝固法で製造するに際し、ポリウレタン系樹脂をジメチルホルムアミドに溶解するとともに、水溶性高分子、界面活性剤を添加混練して混合物とし、押出機の成形ダイス部分の該混合物吐出温度を混合物が賦型し得る温度に冷却して、成形ダイスより押出しながら賦型し、賦型された混合物を水溶液中に浸漬し、凝固させるとともに、前記水溶性高分子を溶解除去させることを特徴とするものである。」(段落【0011】) (甲8e) 「通常のウレタン多孔質体の製造においては、この温度が-5?5℃であることが好ましい。-5℃未満であると、吐出時の流動性が低下し、ウレタン多孔質体の表面が荒れてしまって好ましくない。また、この温度が5℃を超えると、賦型性が低下してしまうために好ましくない。」(段落【0013】) (甲8f) 「水溶性高分子材料とは、ポリウレタン系樹脂を溶解するDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解し難く、かつ水に可溶な高分子をいい、例えばPVA(ポリビニルアルコール)、ポリエチレンオキシド、水溶性ビニロン、各種セルロースとしてのHEC(ヒドロキシエチルセルロース)、MC(メチルセルロース)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)等、各種でん粉類としてのα-でん粉、デキストリン、米でん粉、トウモロコシでん粉など、高分子多糖類としてのぶどう糖、砂糖等をあげることができ、賦型凝固後、水などに溶解除去することで、均一かつ緻密な多孔質状態にするものである。 界面活性剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ヒマシ油、グリセリン・トリパルミテート、シリコンオイル等をあげることができ、これらを単独または組み合わせて使用することで、凝固速度の調整、良好な平面平滑性、微細なセル形成などに効果がある。添加量としては、樹脂や多孔質体の用途等により適宜決定される。」(段落【0025】、【0026】) (甲8g) 「この発明のウレタン多孔質体の製造方法では、ポリウレタン樹脂による湿式凝固法のように、ポリウレタン樹脂を溶媒としてのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解するとともに、この溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し難く、水には溶解する水溶性高分子を混合し、さらに界面活性剤および必要な助剤を投入して混合し、混合物を得る。 そして、この混合物を押出機のスクリューなどで押し出してダイスで賦型して吐出させるが、スクリューなどで押し出す間、冷却水等の冷却媒体を供給して混合物の反応熱の除去だけでなく、ダイスからの混合物の吐出温度が混合物を賦型できる温度となるように冷却する。 この混合物の冷却温度は、ポリウレタン樹脂や水溶性高分子の種類などによって賦型できる温度が異なるが、この場合のポリウレタン樹脂の湿式凝固法での成形条件としては、-5℃?5℃程度まで冷却する。 このような温度範囲まで冷却することで、従来の湿式凝固法での混合物の反応熱の除去を行うための冷却の場合のダイスからの吐出温度を常温、例えば15?20℃とする場合に比べ、混合物の粘度を上昇させることができ、従来、基板状に1mm程度厚さで塗布する程度シート状のものしか成形できなかったものが、ダイスの形状に沿った厚さが5?15mm程度の円筒状や平板状などの立体的な形状に賦型することができる。 こうして押出成形によってダイスの形状に賦型された混合物は、水溶液中に浸漬し、凝固させる。ここでの水溶液とは、水または他の物質の水溶液のいずれかをいい、例えば、水やジメチルホルムアミド(DMF)の水溶液が用いられ、水溶液槽中に賦型された混合物が浸漬され、凝固される。 この水溶液槽は、通常、常温とされ、例えば15?20℃程度とされる。 こうして水溶液槽中に浸漬されて凝固された賦型品は、賦型品に含まれている溶媒(DMF)が水で置換され、ゲル化する。これと同時に賦型品中の水溶性高分子も一部が水に抽出される。 この後、水に浸漬した状態を保持することで、賦型品中の水溶性高分子が溶解溶出し、賦型品に水溶性高分子に相当する微細な孔ができ、これを乾燥することによって多孔質体の製品になる。 このような工程を経てポリウレタン樹脂の湿式凝固法による製品が多孔質体として成形でき、しかもダイスによって賦型した円筒状や平板状などの形状で多孔質体の製品を得ることができる。 (段落【0029】?段落【0037】) (甲8h) 「(1) ダイス吐出部分の温度について (実施例1)ジメチルホルムアミド(DMF)を20重量%、ポリウレタン樹脂(ポリエステル系ポリウレタエラストマ(大日精化製))30重量%、水溶性高分子として、ポリビニルアルコール(PVA)を30重量%、カルボキシメチルセルロース(CMC)を18重量%、界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを2重量%添加して混練し混合物とした。 この混合物を回転式混練機で20分間混練し、冷却式単軸押出機を用いてダイス吐出部分の温度を-3℃としてダイスから厚さ15mmの板状に賦型しながら30℃の水を入れた水溶液槽に吐出し、浸漬、凝固させた。 そして、温度40℃の水を入れた水溶液槽(抽出槽)にいれ、3時間放置したのち、60℃のオーブンで4時間乾燥して賦型品を得た。 こうして得られた賦型品の表面平滑性、収縮状態、カーリング状態(反り)、形状保型性(平板状)、多孔質の状態をそれぞれ観察した。 (段落【0052】?段落【0055】) (甲8i) 「【発明の効果】以上、一実施の形態とともに具体的に説明したようにこの発明の請求項1記載のウレタン多孔質体の製造方法によれば、ウレタン多孔質体を湿式凝固法で製造するに際し、ポリウレタン系樹脂をジメチルホルムアミドに溶解するとともに、水溶性高分子、界面活性剤を添加混練して混合物とし、押出機の成形ダイス部分の該混合物吐出温度を混合物が賦型し得る温度に冷却して、成形ダイスより押出なしがら賦型し、賦型された混合物を水溶液中に浸漬し、凝固させるとともに、前記水溶性高分子を溶解除去するようにしたので、賦型できる温度まで冷却して成形ダイスから押出すことで、立体的な形状に賦型することができるとともに、湿式凝固法により賦型しながら多孔質体を得ることができる。 これにより、湿式凝固法で立体的な形状に賦型した製品が成形でき、表面の荒れもなく、均一で緻密なセルを有する多孔質体を得ることができ、ウレタン多孔質体のクッション材、化粧品用スポンジ、OA機器用ロール、導電性ロール、導線性クッション等を成形することができる。」(段落【0087】?段落【0088】) 7-1-9.甲第9号証(特公昭36-2034号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第9号証には、「スポンジ物質の親水性を改善する方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲9a) 「本発明はスポンジ物質、殊に通常疎水性であるスポンジの親水性を改善する方法及びかくして得られるスポンジに関するものである」(第1頁左欄第2行?第4行) (甲9b) 「一般に相互連絡気孔を有するタイプの有機フォームスポンジには、天然海綿、ポリウレタンスポンジ、・・・が掲げられる。・・・。 前記スポンジ類の中でポリウレタン、・・・は元来疎水性であり、・・・。 本発明はかかる有機スポンジ物質の親水性を例えかかるスポンジがポリウレタンとかラバースポンジのごとく通常疎水性のものである場合においても、改善する方法に関するものである。 一般に、本発明方法は、スポンジ物質を、陰イオン系陽イオン系又は非イオン系界面活性剤或いはそれらの混合物を・・・含有する液状担体分散液に・・・、該スポンジが充分湿り界面活性剤を乾燥時換算で少なくとも約1(重量)%望ましくは約5?20%吸着するに足る充分時間浸漬することから成るものである。」(第1頁左欄第20行?右欄第7行) (甲9c) 「得られた処理スポンジは比較的親水性で一層容易に水に浸し得ることが見出されている。このことは・・・ポリウレタンスポンジ等、従来疎水性が大きく洗浄用スポンジとして不満足なものしか作り得ぬと考えられていた様なものについても事実である。」(第1頁右欄第10行?第15行) (甲9d) 「実施例1 95%の水と5%のメタノールから作られた水溶液99%に前表の第4番の界面活性剤1%を混ぜて界面活性剤分散液を造った、但し全てのパーセンテイージは重量で示す。ポリビニルクロライドスポンジを55?60℃に保たれた浴中に10分間浸漬せしめた。次いでスポンジを水浴より取出し絞った後130°Fで約16時間乾燥せしめた。かくの如く処理せるものは、処理前水に湿潤せず水上に浮かんでいたものが約1秒で水に湿る様になった。」(第3頁左欄第16行?第24行) (甲9e) 「実施例3 本例に於てはスポンジがポリウレタンスポンジ、溶媒は水、湿潤剤が前記表の第14番を使用し、実施例1と同様操作を行なった。」(第3頁左欄第28行?第31行) (甲9f) 「実施例5 スポンジをポリビニルフオマルスポンジとし、湿潤剤を第18番として実施例1と同様操作を行った。」(第3頁左欄第35行?右欄第1行) (甲9g) 「前記実施例の何れに於ても処理スポンジは非処理スポンジより相当親水性が大であり、又比較的急速に水にて湿潤した。」(第3頁右欄第13行?第15行) 7-1-10.甲第10号証(特開昭61-78819号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第10号証には、「親水性ポリウレタンフォームの製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲10a) 「ウレタンフォームに親水性を付与する方法としては、次の1?3(審決注:○で囲まれた数字が表記できないため、通常の数字で代用した。以下同じ。)の方法が公知である。 1・・・ 2 澱粉又はセルロースのアクリル酸グラフト重合体等のいわゆる高吸水性樹脂等の親水性の物質あるいは湿潤剤(陰イオン系、陽イオン系、非イオン系湿潤剤)をポリウレタンフォームの発泡時に添加する方法。 3 下記a,b又はcの方法により、既にできあがったポリウレタンフォームを親水処理する方法(特公昭59-108040号) a・・・ b・・・ c・・湿潤剤をポリウレタンフォームマトリックスに浸漬コーティングする方法。」 (第1頁右欄第9行?第2頁左上欄第10行) 7-1-11.甲第11号証(国際公開第2002/034374号パンフレット) 本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第11号証には、「親水化膜及びその処理方法」の発明が記載されており、次の記載がある(摘記は対応する再公表特許に基づいて行った。)。 (甲11a) 「【請求項1】 疎水性多孔質膜の表面に、界面活性作用を有する物質が該膜の乾燥重量(g)あたり0.02mg?250mg吸着していることを特徴とする医療用親水化多孔質膜」(特許請求の範囲) (甲11b) 「【請求項3】 界面活性作用を有する物質が非イオン性界面活性剤である請求の範囲第1項または2項記載の親水化多孔質膜」(特許請求の範囲) (甲11c) 「【請求項4】 非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン系の界面活性剤である請求の範囲第3項記載の親水化多孔質膜」(特許請求の範囲) (甲11d) 「【請求項5】 ポリオキシエチレンソルビタン系の界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのいずれか1つ、またはその組み合わせである請求の範囲第4項記載の親水化多孔質膜」(特許請求の範囲) (甲11e) 「【請求項9】 疎水性表面を有する医療用具の親水化処理方法であって、疎水性の血液接触部位を界面活性作用を有する物質の溶液に浸漬させ、該疎水性表面に該界面活性作用を有する物質を単位乾燥重量(g)当たり0.02mg?250mg吸着せしめることを特徴とする親水化処理方法」(特許請求の範囲) (甲11f) 「【請求項10】 疎水性の血液接触部が多孔質膜である請求の範囲第9項記載の親水化処理方法」(特許請求の範囲) (甲11g) 「技術分野 本発明は疎水性膜を親水化処理することにより、血液(特に血小板)との相互作用を軽減し高い血液適合性を賦与した膜、及び親水化処理方法に関する。」(第3頁第27行?第29行) (甲11h) 「本発明においては、親水化剤として、界面活性作用を有する物質を使用する。界面活性作用を有する物質として、非イオン性の界面活性剤、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、エデト酸ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、Dーソルビトール、デヒドロコール酸、グリセリン、D-マンニトール、酒石酸、プロピレングリコール、マクロゴール、ラノリンアルコール、メチルセルロースなどが挙げられる。これらの中で特に、非イオン性の界面活性剤、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ひまし油などが静脈注射用製剤の分散剤として一般的に使用されており、血液中での毒性が特に低い点から好ましい。非イオン性の界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル系とポリオキシエチレン系とに大別される。多価アルコール脂肪酸エステル系の界面活性剤としては、ステアリン酸グリセリンエステル系、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンアシルエステルなどが挙げられる。またポリオキシエチレン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキキシエチレンアシルエステルなどが挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンアシルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどが挙げられる。これらは各々単独、または組合せで用いることができる。これら界面活性剤は、膜の親水化処理にともなう膜の目詰まりの防止や、、洗浄効率などの点で数平均分子量500?8,000が好ましい。また万一溶出しても、人体に影響を及ぼさないことが一般的に認められている低毒性のものが好ましい。そのような界面活性剤として、静脈注射用製剤に使用実績が高いポリオキシエチレン系の界面活性剤が好ましい。より好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタン系の界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが挙げられる。」(第5頁第44行?第6頁第17行) (甲11i) 「本発明に用いられる疎水性膜の形状は特に限定されず、中空糸状、管状、平膜状などが挙げられる。またその素材は、吸着した親水化剤を充分に洗浄しても、極微量安定的に吸着することが可能であるポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレートなど比較的疎水性が高い高分子が好ましい。」(第7頁第18行?第22行) (甲11j) 「実施例3 [親水化処理] 非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80,日光ケミカル(株)、分子量1,611)をRO水に1%(W/V)溶解し、三角フラスコに1000ml入れた(水溶液温度20℃)。つぎにポリスルホン製血漿分離膜(サルフラックス-08,鐘淵化学工業(株))内の水(QB側:血液流入出側、QF側:膜外側の結晶側共)を全量抜き出し、ローラーポンプを用い流速約100(ml/分)で上記Tween80溶液をアップフローでQB側に1分間流した。つぎにQB側を鉗子で止め、QF側に同様にTween80溶液を1分間流した。QB側の鉗子をはずし、QB=QF=50(ml/分)で上記Tween80溶液をさらに5分間循環した。つぎにミリポアフィルター0.22μm(型番;MCGL 40S03)を通した純水をQB側より140(ml/分)で通水(通水後ブロー)し、QF側より70(ml/分)でブローすることにより洗浄を行った。ブロー液をQB側・QF側それぞれで経時サンプリングを行いTOC測定を実施し、TOC値がゼロになるまで洗浄を続けた(表3)。洗浄終了後の血漿分離膜は、γ線滅菌(50KGy)を実施し充填液を滅菌後溶出試験用にサンプリングし、テトラチオシアナトコバルト(II)酸アンモニウムを用いた定量の改良法にて測定を行った(表3)。このときのTween80の膜への吸着量は、27(mg/膜の乾燥重量)であった。 γ線滅菌後のTween80の抽出は、上記膜2本当たり500mlの生理食塩水を用い、温度40℃にてQB側130ml/分、QF側30ml/分で2分間循環を行った。抽出液はエバポレーターにて濃縮後、テトラチオシアナトコバルト(II)酸アンモニウムを用いた定量(JIS K3363)の改良法にて測定を行った(表3)。」(第10ページ第40行?第11ページ第11行) 7-1-12.甲第12号証(特開平7-278343号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第12号証には、「ポリビニルアセタール系樹脂多孔質体及びその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲12a) 「【請求項1】 ポリビニルアセタール系樹脂に界面活性剤が含有又は付着していることを特徴とするポリビニルアセタール系樹脂多孔質体。」(特許請求の範囲) (甲12b) 「【請求項2】 ポリビニルアルコール,気孔形成材,架橋剤及び架橋触媒からなる反応液を架橋反応させたのち、気孔形成材を除去してポリビニルアセタール系樹脂多孔質体を製造するにおいて、前記反応液に界面活性剤を添加混合することを特徴とするポリビニルアセタール系樹脂多孔質体の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲12c) 「【請求項3】 ポリビニルアセタール系樹脂多孔質体に界面活性剤を含有する水溶液を施与したのち乾燥することを特徴とするポリビニルアセタール系樹脂多孔質体の製造方法。」(特許請求の範囲) (甲12d) 「【産業上の利用分野】本発明はポリビニルアセタール系樹脂多孔質体に係り、更に詳しくは吸水性能に優れたポリビニルアセタール(以下、「PVAt」と略記する)系樹脂多孔質体及びその製造方法に関する。」(段落【0001】) (甲12e) 「【発明が解決しようとする課題】本発明者等は上述の事情に鑑み鋭意研究した結果、PVAt系樹脂に界面活性剤を施与することで、PVAt系樹脂多孔質体の吸水速度が速くなることを見出し、本発明を完成したものであって、本発明の目的は乾燥状態における吸水性能に優れ、乾燥状態から速やかに湿潤状態へ移行するPVAt系樹脂多孔質体及びその製造方法を提供するにある。」 (段落【0005】) (甲12f) 「また、本発明の第1の方法は、ポリビニルアルコール,気孔形成材,架橋剤及び架橋触媒からなる反応液を架橋反応させたのち、気孔形成材を除去してPVAt系樹脂多孔質体を製造するにおいて、前記反応液に界面活性剤を添加混合することを特徴とするものである。」)段落【0007】) (甲12g) 「また本発明の第2の方法は、予め得られたポリビニルアセタール系樹脂多孔質体に界面活性剤を含有する水溶液を施与したのち乾燥することを特徴とするものである。」(段落【0008】) (甲12h) 「本発明に用いる界面活性剤としては、例えばアルキルスルホン酸塩,アルキル硫酸塩等のアニオン界面活性剤、アミン塩,第4アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤、あるいはカルボン酸型,スルホン酸型等の両性界面活性剤等を挙げることができる。」(段落【0009】) (甲12i) 「本発明の方法に用いられる反応液は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する),気孔形成材,架橋剤及び架橋触媒からなる分散水溶液に、上記界面活性剤を添加混合したものである。」(段落【0013】) (甲12j) 「また、本発明の第2の方法では、予め製造したPVAt系樹脂多孔質体に上記界面活性剤の水溶液を施与したのち乾燥し、PVAt系樹脂多孔質体に界面活性剤を付着せしめるものである。」(段落【0017】) (甲12k) 「上記方法において、界面活性剤の水溶液をPVAt系樹脂多孔質体に施与する方法は、PVAt系樹脂多孔質体に水溶液を含浸付着させる方法であれば特に限定されるものでなく、公知の適宜な方法によって行えばよい。このような方法としては、PVAt系樹脂多孔質体を水溶液中に浸漬する方法が短時間に均一に含浸付着させられる点で好ましいが、その他例えばPVAt系樹脂多孔質体の表面に水溶液をスプレー等で吹き付けて含浸させる方法、PVAt系樹脂多孔質体の表面に水溶液を塗布し含浸させる方法等であってもよい。」(段落【0018】) (甲12l) 「PVAt系樹脂に含有される界面活性剤がPVAt系樹脂の表面を改質し親水性を向上させるため、PVAt系樹脂多孔質体の吸水性能が向上し、乾燥状態における吸水速度が速くなる。」(段落【0022】) (甲12m) 「実施例1 平均重合度が1400の部分ケン化PVAを水に投入し、全量を600mlとした。次にこの液を100℃付近まで加温し、充分に攪拌してPVAを完全に溶解させた後、水を加えて全量を730mlとした。この液を攪拌しながら78℃まで冷却した後、コーンスターチ28gを水に分散せしめ全量を90mlにした澱粉分散液とアニオン界面活性剤スルホコハク酸ジオクチル・エステル(商品名:Aerosol-OT、アメリカン・サイアナミド社製)0.1gとを添加し均一に攪拌混合した。次いで、50%硫酸82mlと37%ホルムアルデヒド水溶液98mlとを連続して添加し、素早く均一に攪拌して反応液を得た。」(段落【0025】) (甲12n) 「得られた反応液を、内容積1000mlの塩化ビニル製容器に流し込み、60℃で18時間反応させた後、反応生成物を容器より取り出し、洗浄して気孔形成材や未反応の架橋剤などを抽出除去し、PVAt系樹脂多孔質体を得た。」(段落【0026】) (甲12o) 「得られたPVAt系樹脂多孔質体を乾燥させた後、2mmの厚さにスライスして、PVAt系樹脂多孔質体のシート状物を得た。得られたPVAt系樹脂多孔質体の結果は、表1に示す通りであった。」(段落【0027】) (甲12p) 「実施例5 実施例1において用いた界面活性剤に代えて、ノニオン界面活性剤ソルビタンモノオレエートのエチレンオキシド縮合物(商品名:Tween 80、アトラス・パウダー社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてPVAt系樹脂多孔質体のシート状物を得た。得られたPVAt系樹脂多孔質体の結果は、表1に示す通りであった。」(段落【0031】) 7-1-13.甲第13号証(特開平8-231754号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第13号証には、「ポリビニルアセタール系スポンジの製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲13a) 「【請求項1】 ポリビニルアルコール、澱粉、架橋剤、及び架橋触媒からなる反応液を架橋反応させた後、得られた反応生成物を洗浄して前記澱粉及び架橋触媒を除去しポリビニルアセタール系スポンジを製造するにおいて、ポリビニルアルコール水溶液に澱粉を加え該澱粉を糊化せしめたのち、該澱粉の糊化温度より低い温度にまで冷却し、次いでこの水溶液に硫酸エステル塩系アニオン界面活性剤を反応液に対し0.05?1.00重量/容量%添加混合し、然る後架橋触媒を加えて架橋反応せしめることを特徴とするポリビニルアセタール系スポンジの製造方法。」(特許請求の範囲) (甲13b) 「【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述の事情に鑑み鋭意研究した結果、反応液に特定の界面活性剤を添加混合することで、得られるPVAt系スポンジの水濡れ性及び湿潤時の弾力性が向上することを見出し本発明を完成したものであって、本発明の目的とするところは、水濡れ性が良く乾燥時における吸水性能に優れ、乾燥状態から湿潤状態へと速やかに移行し、且つ湿潤時の反発弾力性に優れたPVAt系スポンジの製造方法を提供するにある。」(段落【0008】) (甲13c) 「本発明に用いる硫酸エステル塩系アニオン界面活性剤はPVAt系樹脂に対して極めて相溶性がよく、水洗後も一部がPVAt系スポンジ中に残存する。このため、得られるPVAt系スポンジは、水濡れ性が良く吸水性が著しく向上し、乾燥状態から極めて速やかに湿潤状態へと変化するものとなる。」(段落【0028】) (甲13d) 「実施例1 重合度1700の完全ケン化PVAと重合度800の部分ケン化PVAとを重量比で7:3の割合で混合した混合PVAを温水に溶解し、濃度14%の水溶液を調製した。この加温されたPVA水溶液600mlに馬鈴薯澱粉32gを水に分散した分散液を加えて、全量を800mlに定容して攪拌混合し、澱粉を糊化せしめて、均一で粘稠な混合水溶液を得た。得られた混合水溶液を45℃まで冷却した後、濃度20%の高級アルコール硫酸エステル系アニオン界面活性剤水溶液20mlを加え攪拌混合した。これに50%硫酸70mlと37%ホルムアルデヒド水溶液60mlとを加え均一に混合した後、所定の型枠に注型し、温度55℃で16時間加熱しアセタール化反応させた。」(段落【0034】) (甲13e) 「反応終了後、得られた反応生成物を型枠から取り出し、水洗して澱粉および未反応物等を除去し、連続気孔構造のPVAt系スポンジを得た。得られたPVAt系スポンジは、平均気孔径約150μm、気孔率90%であり、その結果は、表1に示す通りであった。また、吸水速度の測定では、底部より均一に吸水して自然に沈降した。」(段落【0035】) (甲13f) 「比較例2 実施例1で加えた界面活性剤に代えて非イオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル(HLB14)を用いた以外は実施例1と同様にしてPVAt系スポンジを得た。得られたPVAt系スポンジの結果は、表1に示す通りであり、実施例1のものに比べ吸水性に劣っていた。また、吸水速度の測定では、底部より不均一に吸水して自然沈降はしなかった。」(段落【0037】) 7-1-14.甲第14号証(井上圭三外7名編、生化学辞典(第3版)、株式会社東京化学同人、2000年3月1日第4刷発行、955頁?956頁) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第14号証には、次の記載がある。 (甲14a) 「トゥイーン系界面活性剤[Tween series surfactant] 非イオン性界面活性剤の一種。ポリオキシジエチレンソルビタン脂肪酸エステル(polyoxyethylenesorbitan fatty acid ester)。・・・トゥイーンは米国Atlas Powder社が開発した商品名。・・・各種のトゥイーン系界面活性剤の性質を次ページの表に示す。」(第955頁) (甲14b) 表中に、「Tween80(市販名)」のHLBが15.0であることが示されている。(第956頁) 7-1-15.甲第15号証(特開平10-168236号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第15号証には、「ミクロ多孔質体及びその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲15a) 「【請求項1】 シンジオタクティックビニル系芳香族ポリマー1?90重量%とエラストマー状ポリマー99?10重量%とからなるポリマーブレンドに低分子材料を混合して得られるポリマー組成物から上記低分子材料を除去することによって得られ、骨格の平均径が10μm以下、セルの平均径が80μm以下の三次元連続網状骨格から構成されることを特徴とするミクロ多孔質体。」(特許請求の範囲) (甲15b) 「【請求項3】 エラストマー状ポリマーが、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、エチレン-エチレン/ブチレン-エチレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載のミクロ多孔質体。」(特許請求の範囲) (甲15c) 「このようにして得られるミクロ多孔質体は、上記低分子材料が除去されることにより、上記ポリマーブレンドから構成される三次元連続網状骨格を有し、図1に示すようなミクロ構造を有する。なお、図1において、1は上記ポリマーブレンドからなる三次元連続網状骨格、2は内部連通空間であり、この内部連通空間2はに後述する低分子材料が除去された空隙である。ここで、図1において、骨格1の平均径dは10μm以下、好ましくは1?7μmの範囲、またセルの平均径Dは80μm以下、好ましくは2?50μmの範囲であるものが望ましい。更に、空孔率は50?99%、好ましくは60?98%の範囲であり、非常に空孔率が高いものである。」(段落【0039】) 7-1-16.甲第16号証(岩田敬治編、ポリウレタン樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社、昭和62年9月25日初版第1刷発行、第336頁?第339頁) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第16号証には、次の記載がある。 (甲16a) TPUの代表的物性範囲として、比重が1.10?1.24であることが示されている。(第338ページ表8.2) 7-1-17.甲第17号証(特開平10-229871号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第17号証には、「環境微生物検査用拭き取り器具」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲17a) 「【発明の属する技術分野】 本発明は、医療機関や食品製造所及び医薬品製造所などで使用される環境微生物検査用拭き取り器具に関するものである。」(段落【0001】) (甲17b) 「培養を主体とする従来法においては、一般的に拭き取り法(スワブ法とも呼ばれている。)によって、物体表面の付着菌を綿棒などで拭き取る操作が実施されている。」(段落【0003】) (甲17c) 「【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、合成樹脂製の容器本体と、該容器本体を密封するスポイト付き蓋体とを備え、該スポイト付き蓋体の前記スポイトの前記容器本体内に挿入される管部の先端には拭き取り用含浸体が設けられていることを特徴とする。」(段落【0009】) (甲17d) 「拭き取り用含浸体4は、稀釈液5により劣化が生ぜず且つ耐摩耗性のあるを発泡ポリウレタンや発泡ポリエチレンなどのスポンジ状の発泡合成樹脂で構成されている。」(段落【0022】) 7-1-18.甲第18号証(特開2002-52369号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第18号証には、「発泡体が巻き付けられたスワブ」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲18a) 「【従来の技術】スワブは、クリーニング全般に使用される。例えば、身体の衛生と手入れとに使用されるスワブの先端に装着された汎用綿が知られている。」(段落【0002】) (甲18b) 「図、特に図1を参照すれば、本発明の原理に従った発泡体を巻き付けたスワブ10を示している。スワブは、ハンドル12と発泡体クリーニング・ヘッド14とを含む。発泡体クリーニング・ヘッド14は、図2に最も良く示すように発泡体ストリップ16から形成される。」(段落【0014】) (甲18c) 「現行の実施形態では、発泡体ストリップは、微孔質の発泡体から形成される。好ましくは、発泡体はポリウレタン材料であり、」(段落【0019】) 7-1-19.甲第19号証(特開2003-4605号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第19号証には、「唾液の前処理用具及び唾液の前処理方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲19a) 「図面中、Xは本発明に係る唾液の前処理用具の一方を構成するスワブであり、図1に示す如く把持棒1の先端に唾液を所定量以上(通常1cc以上)吸収可能な軟質合成樹脂製スポンジ2が固定されており、」(段落【0015】) (甲19b) 「軟質合成樹脂製スポンジ2は、吸収させた唾液と滴下した液との混和効果を高め得るように連続気泡スポンジであることが好ましく、その素材としては可塑剤等が溶出することがないウレタンであることが好ましく、」(段落【0017】) 7-1-20.甲第20号証(特開2006-274489号公報) 甲第20号証には、「透湿防水性布帛及ぶその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲20a) 「エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成(株)製「ラックスキン1740-29B(商品名)」固形分28質量%)」(段落【0046】) 7-1-21.甲第21号証(特開平4-111387号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第21号証には、「プリント基板の乾燥装置」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲21a) 「従来、このようなプリント基板の乾燥装置として、第4図に示すように互いに回転方向が異なり多数の組となったポリウレタン性のスポンジ状部材よりなる吸水用ロール1の間に、ガイドローラ2により搬送されてきた水洗後のプリント基板3を通過させることで水洗後のプリント基板に残留している水分を吸着除去している。」(第2ページ右上欄第2行?第8行) 7-1-22.甲第22号証(特開平8-272063号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第22号証には、「感光材料処理装置」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲22a) 「図1は本発明の実施例における感光材料処理装置の概略縦断面図である。図2は本発明の実施例における感光材料処理装置の概略縦断面の拡大図であって、図1中にAで矢示するスクイズ装置を示している。」(段落【0020】) (甲22b) 「スクイズ装置8は、第二安定槽6と乾燥室7の間に備えられ、第二安定槽6の処理液を脱したフィルム28の搬送方向を変更するターンガイド36、対に設けられたスクイズローラー37、38を有する。」(段落【0026】) (甲22c) 「スクイズローラー37、38は、吸水性に優れたポリウレタンミクロポーラススポンジを用いている。」(段落【0027】) 7-1-23.甲第23号証(特開平5-346657号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第23号証には、「自動現像処理装置」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲23a) 「【請求項1】 感光材料を搬送しながら現像液、定着液、水洗液等によって順次処理を行った後、乾燥部において乾燥処理する自動現像処理装置であって、前記各処理間のクロスオーバー部、前記水洗処理と乾燥部間のスクイズ部、または前記乾燥部内の前記感光材料搬送路に沿って設けられたローラのうち少なくとも1本をポリウレタンミクロポーラススポンジを用いた吸水ローラとしたことを特徴とする自動現像処理装置」(特許請求の範囲) 7-1-24.甲第24号証(新村出編、広辞苑(第五版)、株式会社岩波書店、1998年11月11日発行、第2849頁) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第24号証には、次の記載がある。 (甲24a) 「ローラー、1主として円筒形のころがるもの。」(第2849頁) 7-1-25.甲第25号証(特開平8-73644号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第25号証には、「ミクロ多孔質体及びその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲25a) 「攪拌速度を300rpm以上、好ましくは500rpm以上、更に好ましくは1000rpm以上として混合することが推奨される。」(段落【0017】) (甲25b) 表1中、高分子網状構造体を製造する際の攪拌条件の回転数が3000(rpm)であることが示されている。(段落【0040】表1) 7-1-26.甲第26号証(特開平8-127668号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第26号証には、「ミクロ多孔質体及びその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲26a) 「攪拌速度を300rpm以上、好ましくは500rpm以上、更に好ましくは1000rpm以上として混合することが推奨される。」(段落【0019】) (甲26b) 表1中、高分子網状構造体を製造する際の攪拌条件の回転数が3000(rpm)であることが示されている。(段落【0041】表1) 7-1-27.甲第27号証(特開平8-283446号公報) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第27号証には、「ミクロ多孔体及びその製造方法」の発明が記載されており、次の記載がある。 (甲27a) 「攪拌速度を300rpm以上、好ましくは500rpm以上、更に好ましくは1000rpm以上として混合することが推奨される。」(段落【0017】) (甲27b) 表1中、高分子状構造体を製造する際の攪拌条件の回転数が3000(rpm)であることが示されている。(段落【0036】表1) 7-2.本件発明3に係る特許についての無効理由の検討 7-2-1.理由3-1 本件発明3と上記甲第1号証記載の発明とを対比する。 上記7-1-1の摘記事項(甲1a)、(甲1l)、(甲1m)からみて、甲第1号証には、「ポリウレタンをN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、孔形成剤としてメチルセルロース、さらに気孔径調整剤としてメチルセルロースの1/10量の塩化カルシウム2水和物を添加した組成物を混練し、真空脱泡することによって原液を調製し、調整された原液をコーターにより不織布上にコートし、不織布ごとNMP水溶液中に浸漬し、原液を凝固させ、その後、流水中で洗浄することで孔形成剤を溶出除去し、多孔質体を得、更に得られた多孔質体を乾燥させることを有する三次元網目状連続多孔質体の製造方法」の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 ここで、甲第1号証記載の発明の「N-メチルピロリドン」は、上記摘記事項(甲1g)からみて、本件発明3の「溶剤」に相当し、甲第1号証記載の発明の「孔形成剤」は本件発明3の「気孔生成剤」に相当し、甲第1号証記載の発明における「不織布ごとNMP水溶液中に浸漬し」は本件発明3における「水溶液中に投入して」に相当するものであり、また、甲第1号証記載のポリウレタンからなる多孔質体が本件発明3の弾性体に相当することも明らかであることから、本件発明3と甲第1号証記載の発明とは、「ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤を主原料として含有する組成物を混練する工程、当該組成物を脱泡する工程、水中あるいは水溶液中に投入して凝固する工程、及び凝固された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去してその後乾燥する工程を有する連続気孔弾性体の製造方法」という点で一致し、(1)本件発明3では、主原料として含有する組成物を混練して「粘土状相溶物」にする工程を有するのに対して、甲第1号証記載の発明では、主原料を含有する組成物を混練する工程を有するだけであって、「粘土状相溶物」にすることが明らかではない点、(2)本件発明3では、塩化カルシウムを気孔生成剤として使用するのに対して、甲第1号証記載の発明では、塩化カルシウム2水和物を気孔径調整剤として使用している点、(3)本件発明3では、組成物を成形する工程を有しているのに対して、甲第1号証記載の発明では、コート(コーティング)工程を有している点で、両者は相違する。 そこで、まず、上記相違点(1)の「粘土状相溶物」について検討する。 請求人は、「粘土状相溶物」は学術用語ではなく、技術的意義を一義的に明確に理解することができないものであるとして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】【0025】の記載に基づき、「粘土状相溶物」とは、「混練した組成物を所望の形状に成形しうる性質(可塑性)と、成形物の凝固が完了するまでの間、成形物の形状を保ち得る性質(保形性)をもつ成形に適した混練組成物をいうもの」と解釈すべきであると主張している(平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書第4頁第2行?第5行)。 一方、被請求人は、「粘土状相溶物」はその語義からも、明細書の記載を参酌してもその意味は明確であるとして、概略、以下の趣旨を主張する。 「『粘土状』の意味についてみるに、上記乙第1号証?乙第4号証には、『粘土状』とは、可塑性がある固体の状態を意味する(液状は「粘土状」とはいわない)こと、及び型を用いずに長時間形状を保つ保形性を有することが示されており、『相溶物』の意味についてみるに、乙7号証の記載から、相互に親和性を有する2種または多種の物質からなり、均一化された溶液または混和物であり、(均一化されているので)一相から成るものであることは明らかであるとし、『粘土状相溶物』とは粘土状でありかつ相溶物であるものであることから、 a.塑性を有する固体の状態であり、液状のものは含まれない、 b.可塑成形が可能なものであり、型なしでも長時間*立体的な形状を保てる保形性を有する(*凝固や乾燥等に必要な時間の意味) c.相互に親和性を有する多成分からなり、これらが均一な一相を形成しているものである。 したがって、『粘土状相溶物』の意味は一義的に明確である。」(平成20年2月12日上申書第2頁第4行?第5頁第15行) また、被請求人は、仮に、粘土状の意味が一義的に明確でないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】【0024】【0025】の記載を参酌すれば、「粘土状相溶物」とは、混練した組成物を所望の形状に成形しうるための可塑性と、成形物の凝固が完了するまでの間、所望の形状を保ち得る保形性を有し(粘土状)、かつ各成分が親和性を有し一相を形成している(相溶性:相溶物)と解釈されるべきである、と主張する。 してみれば、上記「粘土状相溶物」の意味の内、請求人と被請求人との間で争いのないところは、「粘土状相溶物」とは、少なくとも、「混練した組成物を所望の形状に成形しうるための可塑性と、成形物の凝固が完了するまでの間、所望の形状を保ち得る保形性を有する」という「組成物自体の性質」で特徴づけられるものであると認められる。 さらに、本件発明3の「主原料として含有する組成物を混練して粘土状相溶物にする工程」において、粘土状相溶物にすることによる効果について、本特許明細書段落【0009】には、「本発明はさらに、水を瞬時に吸水することができる性質を有する連続気孔弾性体、又はこの性質を付与することが可能な連続気孔弾性体を、製造工程において材料を加熱することなく、酸、アルカリなどの劇薬を使うことなく、かつ成形型を使うことなく製造することができる、連続気孔弾性体の製造方法を提供することを課題とする。」とあり、さらに、同段落【0042】には、「本発明の連続気孔弾性体の製造方法によれば、ポリウレタンからなり、骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体であって、所望の形状を有するものを、工程中に高温に加熱することなく、酸やアルカリなどの薬品を使用することなく、高価な多孔材料を用いた成形金型を準備する必要がなく、製造することができる。」と記載されていることから、「粘土状相溶物」とする工程を経る本件発明3により、「成形型を使うことなく製造することができる」、「高価な多孔材料を用いた成形金型を準備する必要がなく」という効果を奏するものである。 そこで、甲1号証記載の発明において、上記意味を有する「粘土状相溶物にする工程」を実質的に有しているかどうかについて検討する。 甲第1号証の上記摘記事項(甲1l)及び(甲1m)は実施例に関する記載であり、「・・・1時間混練、真空脱泡することによって、原液を調製した。」(摘記事項(甲1l))、「次に、上記のようにして調製された原液を、50℃の温度でコーターによりポリエステル製不織布(平均繊維径18μm、目付密度8.5×10^(-3)g/cm^(2)、厚さ0.15mm)上にコートし、・・・」(摘記事項(甲1m))との記載からみて、調製されたものは「原液」と記載された液状のものであると考えるのが相当であり、液状のものが可塑性を有しないことは明らかである。また、表現上「原液」と記載されているが、実質上、上記意味に合致するものである可能性について更に検討すると、上記摘記事項(甲1m)のとおり、かかる原液はコーターにより不織布上にコートされるものであり、さらに、摘記事項(甲1n)のとおり成形される多孔質体の厚さは0.3mmであることから、甲第1号証において「原液」と記載されたものが、上記意味における、少なくとも、「混練した組成物を所望の形状に成形しうる可塑性を有する」という「組成物自体の性質」により特徴づけられるものであると解釈する根拠は見出せない。したがって、甲第1号証記載の発明においては、上記意味に合致した「粘土状相溶物とする工程」を有していないと考えざるを得ない。 なお、請求人は、甲第1号証の実施例の記載に基づき、「不織布面上に均一な厚みを有した形状に成形されたこと(すなわち、所望の形状に成形されたこと)、及び凝固が完了するまでの間、上記形状を保ち得たこと」が記載されていると主張するが(平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書第5頁第12行?第15行)、上記のとおり、「原液」が、不織布面上にコーターによりコートされるものであって、その厚さが0.3mmであることを考慮すれば、かかる実施例の記載をもって、甲第1号証には、可塑性、すなわち「所望の形状に成形し得る性質を有する」という「組成物の性質」により特徴づけられるものが記載されているとはいえない。したがって、甲第1号証記載の発明は、実質的にも、「粘土状相溶物にする工程」を有していない。 よって、その余の上記相違点について検討するまでもなく、本件発明3が甲第1号証に記載された発明ということはできない。 7-2-2.理由3-2 本件発明3と上記甲第2号証記載の発明とを対比する。 上記7-1-2の摘記事項(甲2a)、(甲2b)、(甲2d)、(甲2e)、(甲2f)からみて、甲第2号証には、「ポリウレタン合成重合体の樹脂溶液に塩化カルシウム等の無機塩類の粉末を望ましくは5?20%添加し、ジメチルホルムアミドを加え、攪拌し、脱泡し、離型膜上に塗布し、混合水溶液中にて浸漬することで、凝固させ、凝固と同時に無機塩類が凝固液中に溶解して消失することで、樹脂中の無機塩類が存在していた部位が空孔となることで、微細な多孔質が形成され、さらに、洗浄、乾燥せしめることによる透湿膜の製造方法」の発明(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 ここで、上記摘記事項(甲2b)からみて、甲第2号証記載の発明の「ジメチルホルムアミド」は本件発明3の「溶剤」に相当し、同摘記事項(甲2e)からみて、甲第2号証記載の発明の塩化カルシウム等の無機塩類の粉末は本件発明3の気孔生成剤に、甲第2号証記載の発明の「ポリウレタンからなる透湿膜」は本件発明3の連続気孔弾性体に相当し、また、同摘記事項(甲2a)からみて、甲第2号証記載の発明の「混合水溶液中にて浸漬すること」は本件発明3の「水中あるいは水溶液中に投入して」に相当するものであり、同摘記事項(甲2e)からみて、甲第2号証記載の発明の「無機塩類が凝固液中に溶解して消失すること」は本件発明3の「気孔生成剤を水抽出して除去し」に相当することから、甲第2号証記載の発明と本件発明3とは、「ポリウレタン、溶剤、及び気孔生成剤である塩化カルシウムをを含有する組成物を脱泡する工程、水溶液中に投入して凝固する工程、凝固された成形物から気孔生成剤を水抽出して除去し、その後乾燥する工程を有する連続気孔弾性体の製造方法」という点で一致し、(1)本件発明3では「主原料を含有する組成物を混練して粘土状相溶物にする工程」を有するのに対して、甲第2号証記載の発明では、「原料を攪拌する」ものである点、及び(2)本件発明3では「成形する工程」を有するのに対して、甲第2号証記載の発明においては「離型膜上に塗布する工程」を有する点で、両者は相違している。 甲第2号証記載の発明が「混練して粘土状相溶物にする工程」を、実質的に、有しているどうかについて検討する。 「粘土状相溶物」については、上記7-2-1において検討したとおり、 少なくとも、「 混練した組成物を所望の形状に成形しうるための可塑性と、成形物の凝固が完了するまでの間、所望の形状を保ち得る保形性を有する」という「組成物自体の性質」で特徴づけられるものであると認められる。 甲第2号証には、「【請求項1】ポリウレタン樹脂主体の合成重合体に、粒径20μm以下の無機塩類を1%以上添加した樹脂溶液を離型膜上に塗布し、・・・」(摘記事項(甲2a)、「透湿膜の形成に際しては,表面が平滑で,かつフッ素系樹脂,シリコン系樹脂,ポリプロピレン等で溶解性パラメーターを低下させる加工を施した織物,フィルム,紙等の離型膜上に,前述の塩類を含有するポリウレタン樹脂溶液を塗布し,湿式凝固法で固化させて透湿膜を形成する。塗布に際しては,ナイフコーター,コンマコーター,リバースコーター等の公知のコーティング方法を用いて塗布し,得ようとする透湿膜の膜厚が5?50μmの範囲となるように適宜調整する。」(摘記事項(甲2c)、「本発明では,湿式凝固に際し,・・・。このように構成すると,樹脂の凝固と同時に樹脂溶液中に添加した無機塩類が凝固液中に溶解して消失し,このため,樹脂中の無機塩類が存在していた部位が空孔となり,微細な多孔質が形成される。」(摘記事項(甲2e)、「凝固に際しては,樹脂溶液を離型膜上に塗布後,凝固液中にて5?10分間浸漬,凝固し,続いて,50℃の温水で15分間洗浄する。」(摘記事項(甲2f)の記載があり、これらの記載から、甲第2号証記載の発明においては、成形するために塗布されるものは樹脂溶液であり、凝固と共に消失する無機塩類は樹脂溶液から消失しているものと認められる。してみれば、甲第2号証記載の発明において、攪拌し、脱泡することにより得られるものは「樹脂溶液」と記載された液状のものであると考えるのが相当であり、液状のものが可塑性を有しないことは明らかである。また、表現上「樹脂溶液」と記載されているが、実質上、上記7-2-1において検討した性質を有するものである可能性について更に検討すると、上記摘記事項(甲2c)のとおり樹脂溶液は織物、フィルム、紙等の離型膜上に塗布するものであって、さらに、塗布に際しては,ナイフコーター,コンマコーター,リバースコーター等の公知のコーティング方法を用いて塗布し,得ようとする透湿膜の膜厚が5?50μmの範囲となるように適宜調整するものであることから、甲第2号証において「樹脂溶液」と記載されたものが、上記意味における、少なくとも、「混練した組成物を所望の形状に成形しうる可塑性を有する」という「組成物自体の性質」により特徴づけられるものであると解釈する根拠は見出せない。したがって、甲第2号証記載の発明においては、上記意味に合致した粘土状相溶物とする工程を有していないと考えざるを得ない。 なお、請求人は、甲第2号証の実施例の記載に基づき、「離型紙の面上に均一な厚みを有した形状に成形されたこと(すなわち、所望の形状に成形されたこと)、及び凝固が完了するまでの間、上記形状を保ち得たこと」が記載されていると主張するが(平成20年1月24日口頭審理陳述要領書第7頁第26行?第29行)、上記のとおり、離型膜(紙)の面上にはコーターによりコートされるものであって、その厚さが5?50μm(実施例1では30μm)であることを考慮すれば、かかる実施例の記載をもって、甲第2号証には、可塑性、すなわち「所望の形状に成形しうる性質を有する」という「組成物の性質」により特徴づけられるものが記載されているとはいえない。したがって、甲第2号証記載の発明は、実質的にも、「粘土状相溶物にする工程」を有していない。 また、請求人は、甲第20号証の記載を引用しつつ、甲第2号証の実施例1における〔処方1〕では、塩化カルシウムの添加量が本件特許明細書での塩化カルシウムの好適な添加量の範囲に入っていることは明らかであるから、当該処方で得られた樹脂溶液は、粘土状相溶物としての十分な性質を有するものであり、甲第2号証記載の発明は、「組成物を混練して粘土状相溶物にする工程」を実質的に有していると理解されると主張する(平成20年1月24日付け口頭審理陳述要領書)。 確かに、甲第2号証には、「ポリウレタン合成重合体の樹脂溶液に・・・塩化ナトリウム、塩化カルシウム・・・等の粉末を単独で、あるいは2種類以上の混合物で少なくとも1%以上、望ましくは5?20%添加し、樹脂溶液の粘度が10000?40000(cps)になるようにジメチルホルムアミドを加え、よく攪拌する。」(摘記事項(甲2b))と記載され、実施例1には、「下記処方1に示す樹脂溶液をナイフオーバーロールコーターを使用して、乾燥後の透湿膜が30μmになるように塗布量を適宜調整して塗布した後、」(摘記事項(甲2g))と記載され、〔処方1〕としては、1740-29B 100部(ウレタン合成樹脂、セイコー化成株式会社製品、固形分28質量%)、塩化カルシウム 20部、ジメチルホルムアミド 30部と記載されている((摘記事項(甲2g))。また、本件特許明細書段落【0028】には、「気孔生成剤の添加量は、固形分30重量%の溶液型ポリウレタン100重量部に対して20?100重量部が好ましい」、と記載されていることから、気孔生成剤の添加量は、固形分28質量%の溶液型ポリウレタン100重量部用いた場合には19?93重量部と換算され、甲第2号証の実施例1における塩化カルシウムの添加量は、本願特許明細書において好適な添加量とされる範囲の下限値と同程度の量となっている。しかしながら、上記実施例1の記載の樹脂溶液は「ポリウレタン樹脂溶液に塩化カルシウムを添加し、攪拌して」得られるものであって、「混練」によって得られるものではなく、しかも、その後の工程が塗布工程であることからも、かかる樹脂溶液が、「所望の形状に成形しうる可塑性を有する」という「組成物自体の性質」により特徴づけられるものであることまでは確認できない。 よって、その余の上記相違点を検討するまでもなく、本件発明3が甲第2号証に記載された発明であるということはできない。 7-2-3.理由3-3 本件発明3と甲第3号証記載の発明とを対比する。 上記7-1-3の摘記事項(甲3a)からみて、甲第3号証には、「水溶解性の無機微粒子とポリウレタン樹脂と溶媒とを含有する分散液を調製し混練する工程と、混練された分散液を脱泡する工程と、脱泡された分散液を成形し、ポリウレタン樹脂成形体を製造する工程と、ポリウレタン樹脂成形体に含まれる溶媒を水中で脱溶媒、凝固する工程と、凝固されたポリウレタン樹脂成形体から無機微粒子を水抽出して除去する工程とを有する化粧用スポンジの製造方法」の発明(以下、「甲第3号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 ここで、上記摘記事項(甲3b)(甲3c)からみて、甲第3号証記載の発明により製造される化粧用スポンジはポリウレタン樹脂からなる三次元網目構造であり、本件発明3における連続気孔弾性体に相当することから、本件発明3と甲第3号証記載の発明とは、(1)甲第3号証記載の発明は「(混練して)粘土状相溶物にする工程」を有していない点、及び(2)本件発明3では「塩化カルシウム」を用いるのに対して、甲第3号証記載の発明では「無機微粒子」を用いるとしている点で相違している。 まず、甲第3号証記載の発明が、実質的に「混練して粘土状相溶物にする工程」を有しているかどうかについて検討する。上記摘記事項(甲3e)には「このようにして分散液を調整し、混練した後、混練された分散液を脱泡する。」の記載があり、同摘記事項(甲3f)には、「ついで、脱泡された分散液を成形しポリウレタン樹脂成形体を製造する。」の記載がある。こうした記載から、混練して得られるものは「分散液」であり、さらにその後脱泡して得られるものも「分散液」であることから、混練して得られるものは液状であると考えるのが相当であり、同摘記事項(甲3f)には、脱泡された分散液の成形として「成形の具体的方法としては、押出機を使用し、その成形ダイスより押し出し賦型する方法、型を使用して所定の形状に成型する方法がある。」の記載があるとしても、甲第3号証の実施例においては型を用いる場合だけが示されており、分散液の成形として「押出機を使用し、その成形ダイスより押し出し賦型する方法」が本願出願の時点において自明であるとも認められないことから、ここでいう「分散液」が、上記7-2-1において検討したとおりの、 少なくとも、「 混練した組成物を所望の形状に成形しうるための可塑性と、成形物の凝固が完了するまでの間、所望の形状を保ち得る保形性を有する」という「組成物自体の性質」で特徴づけられるものであるとする根拠を見出すことはできない。したがって、甲第3号証記載の発明は、実質的に、「混練して粘土状相溶物にする工程」を有しておらず、また、甲第3号証にはかかる工程を示唆する記載はない。さらに、かかる工程は、請求人が理由3-3において掲げる甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術であるとも認められない。 次に、甲第3号証記載の発明の「無機微粒子」に代えて、「塩化カルシウム」を用いる点について検討する。 請求人は、「甲第1,2、4?7号証には、連続気孔弾性体の製造にあたり、ポリウレタン、溶媒及び気孔生成剤(例えば、塩化カルシウム等の無機塩類、ポリビニールアルコール等の高分子)を含有する組成物を水または水溶液に浸漬し、前記気孔生成剤を溶出させる方法が開示されている」とし、湿式凝固法によりポリウレタンの連続気孔弾性体を製造するにあたり、気孔生成剤として「塩化カルシウム」を用いることは、本件特許出願時において周知技術に過ぎないと主張する。 しかしながら、甲第1号証には、カルシウムの塩化物は気孔形成剤ではなく、気孔径調整剤の1例として、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、各種澱粉、デキストリンあるいはナトリウム、カリウム、ストロンチウム、アルミニウム等の塩化物、硫酸塩等の無機塩と共に記載されているにすぎず(摘記事項(甲1i))、甲第2号証には、塩化カルシウムが実施例で使用されているものの、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムと同等に記載されており(摘記事項(甲2g)(甲2b))、甲第4号証には、「電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩系、各種ミョウバン等の水によく溶解するものであればいずれも使用可能である。」(摘記事項(甲4d))と記載され、甲第5号証には、「酸、アルカリ水溶液又は水に可溶の充填剤は、上記熱可塑性樹脂に無数の単独孔を形成する目的をもって使用せられるもので、その具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらの充填剤は上記有機溶剤に不溶性のものであるとする。」(摘記事項(甲5c))と記載されており、甲第6号証には、「さらに、本発明において気孔径調整剤として、気孔生成物と相溶性のある、又は相溶性しなくとも均一混和が可能であり、そして高分子材料の非溶剤に溶解し、さらに又その良溶剤に溶解しない、例えばアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、各種デンプン、デキストリン、あるいはナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・アルミニウム等の塩化物、硫酸塩等の無機塩が組成物中50重量%以上好ましくは3?20重量%用いられる。」(摘記事項(甲6e))との記載があり、甲第7号証には、「スポンジボール用シートの製造において、塩化カルシウム粉末を使用すること」(摘記事項(甲7c))が記載されているが、いずれの記載からも、甲第3号証記載の発明における「無機微粒子」に代えて、数多くの気孔生成剤の内から「塩化カルシウム」を選択して、使用することについての示唆はない。 また、気孔生成剤として「塩化カルシウム」を選択した場合の、上記7-2-1において検討した粘土状相溶物が形成されることによる本件発明3の効果について検討する。 請求人は、本件特許明細書の比較例2においては、塩化カルシウムに代えて塩化ナトリウムを用いているが、塩化ナトリウムの添加量は350重量部であって、気孔生成剤の添加量として好ましい量とする「固形分30重量%の溶液型ポリウレタン100重量部に対して20?100重量部」(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0028】)を大きく逸脱した量が添加されており、かかる量では塩化カルシウムを使用した場合でも粘土状相溶物が得られず、本件発明3の効果が得られないものであり、比較例として合理的に設定されたものとは言えず、塩化カルシウムを使用した場合の優れた効果を塩化ナトリウムを使用した場合との比較により確認できないと主張している。 しかしながら、本件特許明細書において規定された気孔生成剤の添加量は塩化カルシウムを使用する場合の添加量であることは明らかである。上記のとおり、様々な気孔生成剤が存在しており、化学構造や化学的挙動の異なる化合物を気孔生成剤として用いた場合には、最適な添加量は変動すると考えるのが自然であり、塩化カルシウムを気孔生成剤として使用する場合の好適な添加量を逸脱していることだけから、そうした添加量を用いた比較例との効果の比較ができないとまではいえない。なお、被請求人の提出した参考資料3(平成20年2月12日付け上申書に添付されたもの)には、気孔生成剤としての塩化カルシウム添加量の好適な範囲において、塩化ナトリウム及び無水硫酸ナトリウムを使用した場合には「液状」となったことが記載されており、かかる点からも、本願特許明細書における比較例が不適当であるとはいえない。 さらに、請求人は、混練組成物本来の押出性と保形性については、押出機から押し出される混練組成物の比重と凝固浴中の水溶液の比重とをほぼ等しくすることで客観的に評価が可能になるが、比重1.1?1.2の水溶液に対して、実施例1の組成物の比重が1.13,比較例1の組成物の比重が1.03,比較例2の組成物の比重が1.59であり、比較例2の組成物の押出性と保形性は正しく評価できないと主張する。しかしながら、本件発明3の効果としての押出性と保形性は、組成物を混練して粘土状相溶物にする工程により得られる効果であり、上記のとおり、甲第3号証記載の発明によっては、粘土状相溶物が形成されているとする根拠が見出せない以上、仮に水溶液の比重を比較例2の組成物の比重とほぼ等しく調整して比較したとしても、本件発明3の「組成物を混練して粘土状相溶物にする工程」による効果を否定するものではない。 なお、請求人は、甲第7号証には「組成物を混練して粘土状相溶物にする工程」を実質的に有することが記載されていると主張するが、請求人が示した甲第7号証における実施例2は、サンプレンLQ・XI(ポリエステル型ポリウレタンエラストマー)の30%ジメチルホルムアミド溶液100部に、ジルコンモールド(ジルコニウムケイ酸塩200メッシュ粉末)50部、塩化カルシウム粉末(吸湿試験用)100部を添加し、攪拌して均一に混合するものであり、本件発明3における「ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤である塩化カルシウムを、主原料として含有する組成物」とはその主原料としての組成が異なるものであることから、上記実施例の記載をもって、ただちに「組成物を混練して粘土状相溶物にする工程」を実質的に有することが記載されているとはいえない。 よって、本件発明3は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 7-2-4.理由3-4 本件発明3と甲第8号証記載の発明とを対比する。 甲第8号証には、上記摘記事項(甲8a)からみて、「ポリウレタン系樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、水溶性高分子、界面活性剤と混練し、押出機の成形ダイス部分の混合物吐出温度が賦型しうる温度に冷却して、成形ダイスより押出しながら賦型し、水溶液中に浸漬し、凝固させると共に、水溶性高分子を溶解除去することからなるウレタン多孔質体の製造方法」の発明(以下、「甲第8号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 上記摘記事項(甲8g)からみて、甲第8号証記載の発明におけるジメチルホルムアミドは本件発明3における溶剤に相当し、同摘記事項(甲8f)からみて、甲第8号証記載の発明における水溶性高分子は本件発明3における気孔生成剤に相当し、また、甲第8号証記載の発明における「ウレタン多孔質体」、「賦型し」、「水溶液中に浸漬し」、「水溶性高分子を溶解除去する」はそれぞれ本件発明3における「連続気孔弾性体」、「成形する工程」、「水溶液中に投入して」、「気孔生成剤を水抽出して除去し」に相当することは明らかであることに加え、同摘記事項(甲8g)には乾燥する工程も記載されていることから、本件発明3と甲第8号証記載の発明とは、(1)甲第8号証記載の発明は「(混練して)粘土状相溶物にする工程」を有していない点、(2)甲第8号証記載の発明は「成形する工程の前に脱泡する工程」を有していない点、及び(3)本件発明3では「塩化カルシウム」を用いるのに対して甲第8号証記載の発明では「水溶性高分子」を用いるとしている点で相違している。 上記相違点(1)に関して、甲第8号証記載の発明が、実質的に、「混練して粘土状相溶物にする工程」を有しているかどうかについて検討する。上記摘記事項(甲8c)には「ポリウレタン系樹脂の混合物は、組成物質同志の反応熱を抑えるために冷却が行われるものの、ダイスからの吐出部分における温度は常温に近く、混合物の粘度上昇はごく僅かでシート上に塗布できる状態であっても立体的な形状に賦型できる状態ではなかった。」の記載があり、同(甲8d)には、「押出機の成形ダイス部分の該混合物吐出温度を混合物が賦型しうる温度に冷却して、」の記載があり、さらに同(甲8e)には、「この温度がー5?5℃であることが好ましい。・・・また、この温度が5℃を超えると、賦型性が低下してしまうために好ましくない。」との記載がある。こうした記載から、甲第8号証には、混練して得られる通常の状態では賦型し得ない性質のものを、押出機の成形ダイス部分の吐出温度を調整することにより賦型可能とすることが記載されているものと認められることから、混練することにより得られるもの自体は、上記7-2-1において検討したとおりの、「混練した組成物を所望の形状に成形しうるための可塑性と、成形物の凝固が完了するまでの間、所望の形状を保ち得る保形性を有する」という「組成物自体の性質」で特徴づけられるものであるとはいえない。したがって、甲第8号証記載の発明は、実質的に、「混練して粘土状相溶物にする工程」を有しておらず、また、甲第8号証にはかかる工程を示唆する記載はない。さらに、かかる工程は、請求人が理由3-4において掲げる甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術であるとも認められない。 甲第8号証記載の発明の「水溶性高分子」に代えて「塩化カルシウム」を用いるとしている点について検討する。 請求人は、甲第8号証には、ポリウレタンの連続気孔弾性体を製造するにあたり、湿式凝固法を採用しており、「水溶性高分子」は気孔生成剤として用いられていると主張する。しかしながら、上記7-2-3で検討したとおり、甲第1、2号証、甲第4?7号証のいずれの記載からも甲第8号証記載の発明における「水溶性高分子」に代えて、数多くの気孔生成剤の内から「塩化カルシウム」を選択して、使用することについての示唆はない。 また、気孔生成剤として「塩化カルシウム」を選択した場合に上記7-2-1において検討した粘土状相溶物が形成されることによる本件発明3の効果について、請求人は、本件特許明細書の比較例1において、どのようなポリビニルアルコールを使用したか確認できないことから、その結果の信憑性が評価できないと主張する。しかしながら、請求人の提出した甲第8号証記載の発明においては水溶性高分子としてポリビニルアルコールが使用されているものの、発明の詳細な説明、例えば段落【0025】ではPVA(ポリビニルアルコール)、実施例、例えば段落【0052】では、ポリビニルアルコール(PVA)と記載されており、特に、ポリビニルアルコールを特定して記載しておらず、こうした記載が通常の記載様式であるとも認められるところであり、本願特許明細書において特にポリビニルアルコールを特定していないことをもって、比較例1の信憑性を評価できないとまではいえない。 よって、本件発明3は、甲第8号証記載の発明、及び甲第1,2,4?7号証記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。 7-3.本件発明4に係る特許についての無効理由の検討 本件発明4は、本件発明3を引用した形式で記載された発明であって、本件発明3の組成物が、さらにHLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とするものであり、上記7-2-1?7-2-4で検討したとおり、本件発明3に係る特許についての無効理由3-1?3-4に係る主張も採用されない以上、甲第9?14号証記載の周知技術を参酌しても、本件発明4に係る特許についての無効理由4に係る主張も採用できない。 7-4.本件発明5に係る特許についての無効理由の検討 本件発明5は、本件発明3を引用した形式で記載された発明であって、本件発明3の製造方法において、凝固された成形物から、気孔生成剤である前記塩化カルシウムを水抽出した後、該成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する工程をさらに有することを特徴とするものであり、上記7-2-1?7-2-4で検討したとおり、本件発明3に係る特許についての無効理由3-1?3-4に係る主張も採用されない以上、甲第9?14号証記載の周知技術を参酌しても、本件発明5に係る特許についての無効理由5に係る主張も採用できない。 7-5.本件発明1及び2に係る特許についての無効理由の検討 7-5-1.理由1-1、2-1 理由1-1、2-1は、本件発明1及び2に係る連続気孔弾性体が本件発明4に係る製造方法によって製造されたものであるから、本件発明1及び2も、本件発明4と同様に、甲第8号証に記載された発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、及び甲第9?14号証に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるというものであるが、上記7-3のとおり、理由1-1,2-1の基礎とする本件発明4に係る特許についての無効理由4に係る主張が採用されない以上、理由1-1、2-1に係る主張も採用できない。 7-5-2.理由1-2,2-2 本件発明1と甲第15号証記載の発明とを比較する。 甲第15号証には、上記摘記事項(甲15a)(甲15c)からみて、「シンジオタクティックビニル系芳香族ポリマーとエラストマー状ポリマーとからなるポリマーブレンドにおいて、混合した低分子材料を除去することにより、骨格の平均径10μm以下、好ましくは1?7μmの範囲で、空孔率が50?99%、好ましくは60?98%の範囲にある内部連通空間を有する三次元連続網状骨格から構成されるミクロ多孔質体」の発明(以下、「甲第15号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 ここで、上記摘記事項(甲15a)(甲15b)には、ポリマーブレンドにおけるエラストマー状ポリマーは、99?10重量%の範囲であって、ウレタンゴムが例示されており、同摘記事項(甲15c)からみて、甲第15号証に記載された「内部連通空間を有する三次元連続網状骨格から構成されるミクロ多孔質体」は本件発明1における「3次元網目状の気孔構造を有する連続気孔弾性体」に相当するものであることから、本件発明1と甲第15号証記載の発明とは、「ポリウレタンを含むポリマーからなり、その骨格の平均太さが10μm以下で、三次元網目状の気孔構造を有する連続気孔弾性体」であることで一致し、(1)甲第15号証記載の発明がポリマーブレンドであること、(2)本件発明1においては骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さであること、(3)本件発明1においては見かけ密度が0.2?0.4g/cm^(3)であること、及び(4)本件発明1においてはHLB値が8以上の界面活性剤を含有すること、において相違している。 上記相違点(2)について検討する。 甲第15号証には、上記相違点(2)に関して、直接的に示唆する記載はない。請求人は、甲第15号証の【図1】を指摘しつつ、「甲第15号証の【図1】には9本の骨格1が記載されており、それらの平均径dはほぼ均等であることが理解される。したがって、上記の点を認識せずに、「甲第15号証には『L.骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである』点、すなわち骨格の太さがほぼ均等である点が記載されていない。」とする、被請求人の主張は失当である。」(平成20年1月24日口頭審理陳述要領書第21頁第16行?第20行)と主張する。さらに、「そこで、まず図1を見ると、1つのセルを囲む9本の骨格の1の太さは、多少のバラツキはあるものの、概略ほぼ均等な太さを有するものと理解される。刊行物15の【0039】には『図1において、骨格1の平均径dは10μm以下、好ましくは1?7μmの範囲、またセルの平均径Dは80μm以下、好ましくは2?50μmの範囲であるものが望ましい。』と記載されている。・・・そして、図1及び【0039】の記載と、『本発明のミクロ多孔質体は、これを構成する三次元連続網状骨格構造体が非常にミクロで均一な気孔を有する』(刊行物15の【0047】)との記載を併せて読めば、ミクロオーダーで刊行物15のミクロ多孔質体のセル径と骨格径を評価した場合、セル径Dが80μm以下(好ましくは2?50μmの範囲)で、かつ非常に均一な気孔を有し、骨格平均径dについても10μm以下(好ましくは1?7μmの範囲)でほぼ均一な骨格太さを有するものと理解されるのである。してみると、刊行物15の骨格平均径は10μ以下(好ましくは1?7μmの範囲)で、その骨格径もほぼ均一と認められるので、『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』という構成と実質的な差異はないというべきである。」(平成20年5月7日付け弁駁書第4頁第5行?第26行)と、主張する。 甲第15号証の【図1】について検討するに、甲第15号証は三次元連続網状骨格から構成されることを特徴とするミクロ多孔質体に係る発明を記載しているものであり、第6頁右欄の【図面の簡単な説明】には「【図1】本発明のミクロ多孔質体の構造を示す概略図」と記載されており、【図1】は三次元構造を有するミクロ多孔質体の構造を平面的に示した概略図であると認められる。したがって、甲第15号証の【図1】は、少なくとも骨格1に関しては、上記【0039】の記載と併せ読めば、骨格1の平均径dは10μm以下、好ましくは1?7μmの範囲であることを示す概略図と考えるのが自然であって、概略図であるとしても、例えば、電子顕微鏡による特定の解析に基づいた概略図であるといった説明があればともかく、概略図とのみ記載された図1からは、図1に描かれた骨格の太さ自体、あるいは骨格の太さの相互関係が正確に示されたものであると考えることは困難であり、しかも、甲第15号証には、骨格の一定割合以上のものの太さを一定の範囲にするという考え方自体が記載も示唆もされていないことから、【図1】に描かれた9本の骨格の太さの関係から、甲第15号証記載の発明は上記相違点(2)に関して実質的な差異はないとする結論を導き出すことはできない。 なお、請求人の提出した甲第25?27号証には、甲第15号証の【図1】と略同一の図がそれぞれ【図1】として記載されており、ポリマー組成の異なる三次元連続網状骨格からなるミクロ多孔質体が略同一の図によって表記されていることから見ても、甲第15号証の【図1】はあくまで概略図であり、構造を模式的に表現したものであると考える方が自然である。 また、上記請求人の主張のとおり、甲第15号証には、「骨格の平均径を規定すること」及び「ミクロで均一な気孔を有すること」が記載されているとしても、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さであること」は骨格の太さのバラツキに関する規定であって、平均径を規定することとは明らかに異なる規定であり、これら甲第15号証の記載は、本件発明1における「骨格の一定割合以上のものの太さを一定の範囲にすること」を示唆していない。 さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】には、「本発明の、連続気孔弾性体は、その網目構造を構成する骨格の太さが、ほぼ均等であることを特徴とする。具体的には、80%以上の骨格が2?20μmの範囲の太さを有する。・・・このように、骨格の太さがほぼ均等であることにより、水を吸収した後の連続気孔弾性体を外力で圧縮する際に、効率よく水を吐き出す性質がより優れたものとなり、吸水ローラーとしての用途に好適に用いることができる。」とあり、骨格の一定割合以上のものの太さを一定の範囲にすることによる効果が明示的に記載されており、こうした効果についても、甲第15号証には示唆するところがなく、また本願出願時点における自明の効果であったとする証拠も示されていない。 なお、甲第9?14,16号証は、多孔質体の親水性を向上させるために、該多孔質体に界面活性剤を付着ないし含有させることが本件特許の出願時において周知技術であること、トゥイーン系界面活性剤についての説明、及びポリウレタンの代表的な物性範囲を示すものであり、上記相違点(2)に関連する記載はない。 したがって、本件発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲第15号証記載の発明、及び甲第9?14,16号証に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 本件発明2は本件発明1の界面活性剤のHLB値をさらに限定したものであり、上記のとおり、本件発明1に係る特許についての無効理由1-2に係る主張が採用されない以上、本件発明2に係る特許についての無効理由2-2に係る主張も採用できない。 7-6.本件発明6に係る特許についての無効理由の検討 本件発明6に関して、請求人は、甲第8号証には、ウレタン多孔質体は、従来から「OA機器用ロール、導電性ロール」など「吸水ローラー」に相当する用途に用いられてきたことが記載されているとして、甲第8号証記載の発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、甲第9?14号証に記載された周知技術及び甲第21?23号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと主張するが、かかる主張は、審判請求書全般の記載、及び引用された甲号証から見て、実質的に、本件発明3に係る特許についての無効理由3-4に基づいてなされたものであると認められるところ、理由3-4については上記7-2-4において検討したとおりであるから、本件発明6に係る特許についての無効理由に係る主張は採用できない。 7-7.本件発明7に係る特許についての無効理由の検討 本件発明7に関して、請求人は、甲第17?19号証記載のとおり、ウレタン多孔質体をスワブとして用いることは本願特許出願前において周知技術に過ぎないものであり、甲第8号証記載のウレタン多孔質体をスワブとして用いることは当業者にとって容易であるとして、本件発明7は、甲第8号証記載の発明、甲第1,2,4?7号証に記載された周知技術、甲第9?14号証に記載された周知技術、及び甲第17?19号証に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであると主張する。しかしながら、かかる主張は、審判請求書全般の記載、及び引用された甲号証から見て、実質的に、本件発明3に係る特許についての無効理由3-4に基づいてなされたものであると認められるところ、理由3-4については上記7-2-4において検討したとおりであるから、本件発明7に係る特許についての無効理由に係る主張は採用できない。 7-8.無効理由通知について 当審では、平成20年2月19日付けで、「本件発明6は、本件の出願前に国内において頒布された刊行物9?12(請求人が提出した甲第9?12号証)及び刊行物14?16(同甲第14?16号証に記載された発明に基づいて、また、本件発明7は、本件の出願前に国内において頒布された刊行物9?12(同甲第9?12号証)及び刊行物14?19(同甲第14?19号証)に記載された発明に基づいて、いずれも、その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明6及び7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである」との無効理由を通知した。 これに対して、被請求人は、平成20年3月21日付け訂正請求書により、請求項1において「骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである」を「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」と訂正する請求を行い、当該訂正は、上記2.のとおり、認められるものである。 さらに、被請求人は、上記訂正請求書と共に、意見書を提出して、刊行物15には、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」連続気孔弾性体は記載されておらず、本件発明は優れた吐き出し性、その結果としての優れた吸水性という効果を示すものであると主張する。この点については、上記7-5-2にて検討したとおりであるから、当審の通知した無効理由は解消していると認められる。 なお、請求人は、被請求人の主張する上記効果について、本願特許明細書における【表2】における吸水性は連続気孔弾性体に含有される界面活性剤のHLB値にのみ依存することであり、残留水分量は「吸水ローラー」を特定の条件で使用してはじめて評価される試験項目であって、本件発明6,7の効果ではないと主張する。しかしながら、発明の効果を確認する実験を実施する際には、特定の条件を設定した上で実験を実施し、実施例の間での効果の差あるいは実施例と比較例との間での効果の差を確認することは通常行われることであり、特定の条件で使用して初めて評価される試験項目であったとしても、かかる特定の条件下での効果を確認することで吸水ローラーの一般的な効果を確認することに格別の問題はなく、また、吸水ローラーとしての効果を確認することでスワブとしての効果を推認することも可能であると認められる。また、【表2】における、実施例2と比較例3との吸水性の違いは、界面活性剤のHLB値の相違によるものだとしても、実施例2の示した残留水分量は、実施例3の示す残留水分量と併せて見れば、比較例3の数値と比較するまでもなく、本件発明6,7の奏する効果を示すものであると認められる。 8.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法、並びに当審で通知した無効理由によっては、本件発明1?7に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 連続気孔弾性体及びその製造方法、並びに吸水ローラー及びスワブ 【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリウレタンからなる連続気孔弾性体及びその製造方法に関する。本発明は、さらに、前記連続気孔弾性体を用いた吸水ローラー及びスワブにも関する。 【背景技術】 【0002】 ポリウレタンからなる連続多孔質体は、軽量であり、かつ液体を吸収する、液体を貯蔵する、液・気体を通過する、音を吸収する、固体を選別除去する、衝撃を吸収する等の機能を有するので、インクロール、浸透印、筆ペン、フィルター、化粧用スポンジ等に使用されている。 【0003】 ポリウレタンからなる発泡体は、主に、化学発泡法等により製造されていた。しかし、化学発泡法では化学反応等により発生するガスにより気孔生成するため、所謂セル径を平均的に200μm以下にすることは不可能であり、この発泡体によっては微細な水滴を効率良く吸い取ることが出来なかった。そこで、気孔生成剤を用いた溶出法により製造される連続多孔質体が提案されている。 【0004】 例えば、特開昭52-32971号公報(特許文献1)には、熱可塑性ポリウレタン、酸に可溶の粉末状物質である炭酸カルシウム、界面活性剤又は多価アルコール、ジメチルホルムアミド、及びアセトンからなる組成物を混練して、130℃で熱成形し、この成形物を塩酸水溶液に浸漬し水洗し乾燥して製造される多孔性成形物が開示されている。この方法では、気孔生成剤として炭酸カルシウムが添加され、成形物中に分散された炭酸カルシウムを、酸と水で抽出してから水洗することにより気孔が生成される。そして、炭酸カルシウムを水抽出しやすくする目的で、界面活性剤が添加されている。 【0005】 又、特開昭58-189242号公報(特許文献2)には、ポリウレタンをジメチルホルムアミド等の溶剤に溶解させ、これにポリビニルアルコール等の気孔生成剤を配合した組成物を攪拌し、所定の型内に充填してポリウレタンの非溶剤中で凝固させ、その後大量の水にてこの気孔生成剤を溶出させることにより製造される高分子多孔質体が開示されている。 【0006】 近年、ポリウレタンからなる連続気孔弾性体には、プリント基板、リードフレーム等の精密製品の製造において、製品を水洗した後の製品表面に付着した水滴を、清浄均一に水切りする吸水ローラーとしての用途や、精密製品に付着した水を吸取るためのスワブとしての用途が増加している。このような用途に用いられる連続気孔弾性体には、瞬時に吸水する性質が求められる。さらに吸水ローラーとしての用途では、外力で圧縮することにより効率良く水を吐き出す性質も求められる。しかし、前記の連続気孔弾性体によっては、このような性質を得ることが困難であり、吸水ローラーやスワブとしての用途には、適さないものであった。そこで瞬時に吸水する等のすぐれた性質を有する連続気孔弾性体の開発が望まれていた。 【0007】 又、このような連続気孔弾性体は、日常生活用途や工業用途において大量に使用されるようになり、連続気孔弾性体を、大量に安いコストで安定的に製造する方法の開発が望まれている。しかしながら、特許文献1に記載の前記の製造方法では、混練物を製造する工程において高温度に加熱することが必要であるので、コスト高となり又素材の劣化の原因ともなる。又、有機溶剤として低沸点溶剤を使用すれば高温下で引火の可能性もある。さらに塩酸水溶液を使用するので、使用後の廃液を中和することが必要となり、これもコスト高の原因となる。 【0008】 一方、特許文献2の方法によれば、成形物の肉厚が例えば20mmの場合、凝固完了までに1週間近くかかり、かつ製造時に高価な多孔材料からなる成形型が必要となる。特に、量産のためにはその数が大量に必要となり、結果として製造コストが高くなる。そこで、このような従来技術の問題がない連続気孔弾性体の製造方法の開発が望まれている。 【特許文献1】特開昭52-32971号公報 【特許文献2】特開昭58-189242号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、ポリウレタンからなり、精密製品等に付着した水を瞬時に吸水することができる連続気孔弾性体、並びに、それを用いて得られる吸水ローラー及びスワブを提供することを課題とする。本発明はさらに、水を瞬時に吸水することができる性質を有する連続気孔弾性体、又はこの性質を付与することが可能な連続気孔弾性体を、製造工程において材料を加熱することなく、酸、アルカリなどの劇薬を使うことなく、かつ成形型を使うことなく製造することができる、連続気孔弾性体の製造方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、3次元網目状の気孔構造を有し、その骨格の太さが細く均一であり、見掛け密度が所定の範囲内であって、かつHLB値が高い界面活性剤を含有する連続気孔弾性体が、付着水を瞬時に吸水することができることを見出した。 【0011】 本発明者はさらに、水溶性でかつ溶剤と分子化合物を形成する気孔生成剤をポリウレタンとともに混練し、成形、凝固させた後、成形物から前記気孔生成剤を水抽出する方法により、瞬時に吸水する性質を付与することが可能な連続気孔弾性体を、材料を加熱することなく、酸、アルカリなどの劇薬を使うことなく、かつ成形型を使うことなく製造することができることを見出した。本発明は、このようにして完成されたものである。 【0012】 本発明は、先ず、ポリウレタンからなり、その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)であり、かつHLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする連続気孔弾性体(請求項1)を提供する。 【0013】 3次元網目状の気孔構造とは、図1に示されるような構造であって、3次元方向に連結する網がポリウレタンの骨格からなり、その骨格間に形成される気孔が互いに連続しており、網目を塞ぐ膜がみられない構造を言う。本発明の連続気孔弾性体は、その骨格の平均太さが20μm以下であることを特徴とする。 【0014】 さらに、本発明の連続気孔弾性体は、その網目構造を構成する骨格の太さが、ほぼ均等であることを特徴とする。具体的には、80%以上の骨格が2?20μmの範囲の太さを有する。好ましくは、80%以上の骨格が6?15μmの範囲の太さを有する。このように、骨格の太さがほぼ均等であることにより、水を吸収した後の連続気孔弾性体を外力で圧縮する際に、効率良く水を吐き出す性質がより優れたものとなり、吸水ローラーとしての用途に好適に用いることができる。 【0015】 本発明の連続気孔弾性体は、さらに又、その見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)であることを特徴とする。ここで見掛け密度とは、JIS K 7222に記載の方法に従って測定された値を言う。本発明の連続気孔弾性体は、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とするが、ここでHLB値とは、界面活性剤の親水性と疎水性とのバランスを示す公知の指標であり、大木道則他編集、東京化学同人発行の化学辞典、第178頁等にその求め方が記載されている。例えば界面活性剤が脂肪酸エステルの場合は、次の式にしたがって計算される。 【0016】 HLB=20×(1-SV/NV) ここで、SVはエステルのケン化価、NVは脂肪酸の中和価である。 【0017】 本発明の連続気孔弾性体は、水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収するという優れた効果を発揮する。具体的には、後記の実施例において記載されている残存水分量の測定方法の測定値を、1g/1000cm^(2)以下とするものである。なお、界面活性剤のHLB値が8よりも小さいとこの効果を得ることは困難である。 【0018】 界面活性剤のHLB値は、19以下であることが好ましい。請求項2はこの好ましい態様に該当する。このHLB値が19を越えると、連続気孔弾性体を製造する際の凝固工程と水洗工程で界面活性剤が水抽出され、連続気孔弾性体内に残留する界面活性剤が少なくなり、吸水性能が不十分となる場合がある。 【0019】 界面活性剤の含有量は、固形分30重量%の溶剤系ポリウレタン100重量部に対して0.5?40部の範囲が好ましい。0.5重量部より小さいと水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収する性質が不十分なものとなる。また、含有量が40重量部を超えると、界面活性剤の連続気孔弾性体から外部への移行が生じるとともに、連続気孔弾性体の機械的強度も低下する場合がある。 【0020】 界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、牛脂グリセライドエトキシレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等の脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンエーテルタロエート、ポリオキシエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミドまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート等のアルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。 【0021】 本発明は、さらにポリウレタン、溶剤、及び水溶性でかつ溶剤と分子化合物を形成する気孔生成剤を、主原料として、含有する組成物を混練する工程、当該組成物を脱泡、成形する工程、得られた成形物を凝固する工程、及び、凝固された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去しその後乾燥する工程を有することを特徴とする連続気孔弾性体の製造方法(請求項3)を提供する。この製造方法により、ポリウレタンからなり、骨格の平均太さが20μm以下の3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体を製造することができる。 【0022】 本発明者は、ポリウレタン、溶剤及び水溶性でありかつ溶剤と分子化合物を形成する気孔生成剤を、主原料として含有する組成物を混練すると、粘土に類似した可塑性と保形性をもつ成形に適した混練組成物が得られることを見出した。これは、他の気孔生成剤とポリウレタンを混練した場合では見られない特異的な現象である。 【0023】 ここで分子化合物とは、2種以上の安定な分子が一定の割合で直接に結合してできる化合物で、成分分子間の結合はゆるやかで、成分分子のもとの構造や性質はあまり変化せず、また比較的容易にもとの成分に解離するものである。本発明の製造方法で使用される気孔生成剤は、溶剤分子が付加し分子化合物を形成するものである。 【0024】 この分子化合物を形成する気孔生成剤を、溶剤に攪拌しながら添加して行くと、一定量まで溶解し、この量を超えるとそれまでの溶液状態が急激に固体に近い状態を呈するようになる。そして、この固体に近い状態物を水などに接触させると再溶解する。このような気孔生成剤が溶剤中に該溶剤とゆるやかな結合をもつ状態で存在し、これに高分子材料が相溶することで、特異な粘土状の可塑性と保形性が発現するものと考えられる。 【0025】 可塑性は押出などの方法で混練した組成物を、所望の形状に成形するために重要である。また、成形加工に次ぐ凝固過程は長時間を必要とし、例えば、25℃の水中で肉厚10mmの組成物が凝固完了するまでには、12から18時間を必要とする。このため、組成物の凝固が完了するまでの間、成形型を使わずに所望の形状を保つためには、所望の形状を成形後も保つ性質すなわち成形後の保形性の良いことが重要になる。 【0026】 又粘土状の可塑性と保形性を有する混練組成物を用いることにより、その太さが細くかつ均一で3次元網目状に広がった骨格を有する成形体が得られやすい。そして、この成形体から気孔生成剤を水抽出することにより、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体を容易に得ることが出来る。 【0027】 混練組成物に粘土状の可塑性と保形性を付与する気孔生成剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩微粒子が例示される。特に塩化カルシウムが、分子化合物を作りやすく、前記の効果が大きいので好ましい。又、塩化カルシウムは、安価で容易に入手できる点でも有利である。請求項4は、この特に好ましい態様に該当する。 【0028】 気孔生成剤の添加量は、固形分30重量%の溶液型ポリウレタン100重量部に対して20?100重量部が好ましい。添加量が20重量部より少ないと、組成物の可塑性及保形性が不十分となり成形時に所望の形状を得られない場合がある。又、100重量部よりも多いと、混練時に組成物が固体に近い状態となるため成形が困難になる場合がある。 【0029】 なおこの添加量により、最終的に得られる連続気孔弾性体の見掛け密度と、3次元網目状気孔の網を構成する骨格の平均太さを調節することができる。すなわち、添加量が少ないと、見掛け密度と骨格の平均太さは増加し、添加量が多いとこの逆になる。 【0030】 前記本発明の製造方法により得られる連続気孔弾性体、すなわち骨格の平均太さが20μm以下の3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体が、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することにより、前記の本発明の連続気孔弾性体となり、水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収するとの優れた効果を発揮する。すなわち、後記の実施例において記載されている残存水分量の測定方法で測定した残留水分量を、1g/1000cm^(2)以下とすることができる。 【0031】 HLB値が8以上の界面活性剤を含有させる方法としては、ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤を主原料として含有する組成物に、さらにHLB値が8以上の界面活性剤を含有させて、請求項3又は請求項4の方法におけるその後の工程を行う方法が例示される。請求項5は、この態様に該当する連続気孔弾性体の製造方法である。 【0032】 HLB値が8以上の界面活性剤を含有させる他の方法としては、前記の請求項3又は請求項4の方法における気孔生成剤の水抽出の後、又はさらに乾燥の後、得られた成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する方法が例示される。請求項6は、この態様に該当する連続気孔弾性体の製造方法であり、請求項3又は請求項4に記載の連続気孔弾性体の製造方法であって、凝固された成形物から前記気孔生成剤を水抽出した後、又は乾燥の後に、該成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する工程を、さらに有することを特徴とする。界面活性剤を添加する方法としては、得られた成形物を、界面活性剤を含む液中に浸して含浸させ、乾燥する方法等が挙げられる。 【0033】 ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤等を含有する組成物を混練した後、混練組成物を脱泡、成形する。脱泡の目的は該組成物中の気泡を除去することである。 【0034】 成形の後、当該成形物を取り出して凝固する。凝固の方法としては、水等のポリウレタンの非溶剤でかつポリウレタンの溶剤と相溶性のある液体に成形物を漬けて脱溶剤させて凝固する湿式法等が例示される。湿式法の中でも、水中に成形物を漬けて脱溶剤させて凝固する水凝固法は、保形性が良く、又後工程の水抽出工程への移行が容易であり、均一なスポンジ構造が得られやすいので好ましい。請求項7は、この好ましい態様に該当する。 【0035】 本発明の連続気孔弾性体は、瞬時に水を吸い取る特徴を有するので、この性質が求められる吸水ローラーやスワブに好適に用いられる。請求項8は、前記本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする吸水ローラーを提供するものであり、請求項9は、前記本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とするスワブを提供するものである。 【0036】 本発明の吸水ローラーは、本発明の連続気孔弾性体を筒状に成形し、この中心孔にシャフトを装着して形成することができる。この時、シャフトと連続気孔弾性体の間に接着剤を使用して接着しても良い。次いで、ローラー表面の平滑度、真円度を高めるために、研磨加工が通常行なわれる。 【0037】 この吸水ローラーは、瞬時に水を吸水する性質を有するので、精密製品の製造において、製品を水洗した後の製品表面に付着した水滴を、清浄均一に水切りする用途等に好適に用いることができる。特に、界面活性剤のHLB値が19以下とした連続気孔弾性体を用いたものは、外力で圧縮することにより効率良く水を吐き出す性質が優れているので好ましい。 【0038】 本発明の連続気孔弾性体の、瞬時に水を吸い取るとの特徴は、電子部品、光学部品等の製造において、狭い特定部分、コーナー部、溝等の狭い局部空間のワイピングに使用されるスワブに用いる場合にも有用である。従来、清拭部に綿を用いた綿棒の他にも、ポリエステルニット布、乾式発泡ポリウレタンスポンジ、0.5デニール以下の極細フィラメント布等を清拭部とした多種多様なスワブが知られているが、いずれも水を素早く吸い取る特徴はなかった。 【0039】 電子部品、光学部品等の製造にあっては、拭き残りの少ないワイピング性能が求められ、ワイピング対象の汚れや、ワイピング時に併用される水で希釈された汚れを拭き残りなく拭き取るためには、清拭部で押し広げてしまう前に、素早く清拭部に吸い取ることが必要である。本発明の連続気孔弾性体は素早く吸い取ることが可能であるので、スワブの清拭部に、好適に用いられる。 【0040】 本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする本発明のスワブは、清拭部のサイズ、形状で穴を有する前記連続気孔弾性体を成形し、その穴にポリプロピレン等により作られた棒状物の先端を差し込むことにより得ることができる。 【発明の効果】 【0041】 本発明の連続気孔弾性体は、水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収するとの優れた効果を発揮する。具体的には、後記の実施例において記載されている残存水分量の測定値を、1g/1000cm^(2)以下とするものである。従って、瞬時に水を吸い取る性質が求められる吸水ローラーやスワブに好適に用いられる。 【0042】 本発明の連続気孔弾性体の製造方法によれば、ポリウレタンからなり、骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体であって、所望の形状を有するものを、工程中に高温に加熱することなく、酸やアルカリなどの薬品を使用することなく、高価な多孔材料を用いた成形金型を準備する必要がなく、製造することができる。このようにして、得られた連続気孔弾性体に、HLB値が8以上の界面活性剤を含有させることにより、前記のすぐれた特徴を有する本発明の連続気孔弾性体を得ることができる。 【0043】 本発明の連続気孔弾性体を用いて得られた本発明の吸水ローラーやスワブは、水を瞬時に吸収することができるものであり、精密製品を製造する工程において水洗した後、製品表面に付着した水滴を清浄均一に除去する用途や、電子部品、光学部品等の製造におけるワイピングの用途等、各種の吸液用途に好適に用いられるものである。 【発明を実施するための最良の形態】 【0044】 以下、本発明を実施するための具体的な形態、特に好ましい形態の例を説明する。 【0045】 本発明に用いられるポリウレタンは、高分子量ポリオールと鎖伸長剤からなるポリオール成分とポリイソシアネート化合物を反応させて得られるものである。 【0046】 高分子ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリマーポリオールなどのポリエーテル系ポリオール、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどがあり、望ましい分子量は500?10000である。 【0047】 また、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,5ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,3プロパンジオールなどである。 【0048】 ポリイソシアネート化合物としては、メチレンジフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネートなどの芳香族系イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環系イソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネン・ジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートなどがある。 【0049】 本発明の製造方法において用いられる溶剤とは、通常ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、N-メチルピロリドン等の有機溶剤やこれらの混合物等が挙げられるが、後工程において、容易に水で溶出できることと作業環境として溶剤臭、引火性などを考慮するとジメチルホルムアミドが好ましい。 【0050】 本発明の製造方法におけるポリウレタン、溶剤、気孔生成剤、及び場合により界面活性剤を含有する組成物は、必要に応じて着色剤や酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤、界面活性剤、各種の滑剤機能を発現する材料、難燃剤、及びカーボンブラックなどの導電材等の機能性材料を、さらに含んでもよい。 【0051】 気孔生成剤として使用される塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩微粒子には、一般に流通しているものとして、無水物と結晶水含有物があるが、組成物の安定化のためには無水物が好ましい。又、無機塩微粒子の粒径は小さいほど混練時間を短縮でき、200μm以下であることが好ましい。 【0052】 組成物の混練には、ニーダー、オーガ混練機、バンバリーミキサー、単軸、二軸のスクリュー押出機等を使用する。混練中は、組成物が均一に混ざり、分子化合物をつくる際の発熱が起きるので、水などで混練容器を冷却することが必要である。 【0053】 混練組成物の脱泡の具体的な方法としては、ベント式押出機を使用して減圧脱泡を行なう方法が挙げられる。成形の具体的方法は、上記押出機に成形口金を接続して所望の形状に賦型する方法が好ましい。 【0054】 このようにして押出された組成物は、粘土状の可塑性物であり、比重が1?2にあるものが望ましい。この時、押出された組成物の比重に対して、同等か0.5以内で小さい比重になるように水溶性無機塩等を使って調製した水溶液の入った水槽を、成形口金の先に設置しておき、ここに組成物の押出しを行ない、成形物を得る。 【0055】 その後、ポリウレタンの非溶剤でかつポリウレタンの溶剤と相溶性のある液体、例えば前記の水槽中にある水等により脱溶剤させる方法等により凝固する。 【0056】 凝固後、成形物中の気孔生成剤を水抽出して除去する。水抽出する具体的な方法は、一般的な洗濯機などに該凝固体を投入し、20?80℃の水で15分?90分ほど洗浄と数回の水交換を行なうことで、ほぼ完全に気孔生成剤を除去することが出来る。 【0057】 水抽出後、成形物を110℃以下で乾燥する。具体的には、箱型乾燥機、タンブラー型乾燥機を使用する。このようにして本発明の連続気孔弾性体が得られる。 【実施例】 【0058】 次に、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、この実施例により限定されるものではない。 【0059】 先ず、各実施例及び比較例で得られた連続気孔弾性体の評価方法を示す。 評価方法 [見掛け密度]:JIS K 7222に従い測定した。 [引張り強度及び伸長率]:JIS K 6400-5に従い測定した。 [吸水性試験]:JIS L 1907(滴下法及びバイレック法に準じ、吸水高さの測定時間を60秒後とした)に従った。 【0060】 [混練組成物の押出性(可塑性)と保形性] 外径46mm、内径20mmのチューブ成形用口金を接続したスクリュー径40φのベント式押出機から、混練組成物を、40?50℃の温度範囲で押出しした。押出し方向は下向きにし、口金先端から出る組成物を、比重1.1?1.2の塩化カルシウムあるいは塩化マグネシウム水溶液にそのまま押出して50cm長で裁断した。その水溶液温度は20?25℃、口金先端と水溶液面の距離は10cmとした。この時、口金から出る押出組成物の形状が口金外径に比例した一定の状態で押出されるか、垂れが生じて変形するかを目視確認して、押出性を評価した。垂れが生じていないものを良好とした。 【0061】 前記押出し後の状態のまま12時間放置して凝固が完了した組成物を取り出し、洗浄、乾燥した。これによってできた連続気孔弾性体チューブのほぼ中央部を押出方向と垂直にカッターで裁断した。図4に、裁断後のチューブの断面の模式図、及び最小直径a、最大直径bを示す。この断面の最小直径aと最大直径bをノギスで測定し、b/aの値を保形性とした。 【0062】 [連続気孔弾性体の多孔状態及び骨格の平均太さ] 前記の裁断後の断面の外観を、目視および走査型電子顕微鏡写真で観察して多孔状態を評価した。又、この走査型電子顕微鏡写真にみられる3次元網目構造の骨格のうち、棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした。 【0063】 [残留水分量] 下記の測定条件で、ローラー間を連続して通過するAl板(アルミニウム板)の数は50000枚/時間として運転し、運転開始後1時間以上経過した時、通過直後のAl板から100?130枚を抜き取り、Al板表面に残留した水分重量を精密天秤で測定した。この水分重量は、抜き取ったAl板の枚数に対応するものであるので、一般化のためにAl板の表面積が1000cm^(2)になるよう換算して、単位がg/1000cm^(2)で表される残留水分量を求めた。 【0064】 ちなみに、この残留水分量と手で触れた時の触感との関係は次のとおりである 0.80g/1000cm^(2)以上:明らかに濡れている。 0.20g/1000cm^(2) :僅かに濡れている。 0.10g/1000cm^(2)以下:濡れを感じない。 【0065】 ・測定条件 ローラーの寸法 外径42mm、内径19mmの筒状連続気孔弾性体の中孔に、両面テープを貼った外径22mmのシャフトを圧入し、筒状連続気孔弾性体を、外径φ40mmに研磨するとともに、長さ200mmに切断する。 ローラーの構成 上ローラーと下ローラー各2組(ローラー数は合計4本) 上下軸芯間隔 35mm 前後軸芯間隔 45mm 試験基材 Al板 φ24.9mm×1.2mm厚 ローラー通過前の吸水基材表面への水分付着量 22g/1000cm^(2) 水温 20±2℃ ローラー回転数 100?150rpm 【0066】 実施例1 下記のポリウレタン樹脂、溶剤、気孔生成剤を原料として使用した。 レザミンCUS-1500 (大日精化工業(株)製ポリカーボネート系ポリウレタン、固形分30%) 100重量部 ジメチルホルムアミド 50重量部 無水塩化カルシウム 50重量部 【0067】 これらを、ニーダーの容器に投入し、回転数15rpmで混練した。混合開始と同時に発熱するので、水循環ジャケット付き容器で冷却しながら行なった。これを、外径46mm、内径20mmのチューブ成形用口金を接続したスクリュー径40mm(40φ)のベント式押出機から押出し、凝固させ、洗濯機にて水洗、箱型乾燥機にて乾燥を行ない、切断し、外径42mm、内径19mm、長さ450mmの筒状連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表1に示した。また、この走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。 【0068】 比較例1 無水塩化カルシウムの代わりに、ポリビニルアルコール50部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物を混練した後押出し以降の各工程を行なって、連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表1に示した。また、この走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。 【0069】 比較例2 無水塩化カルシウムの代わりに、粒径が100μm未満の塩化ナトリウム350部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物を混練した後、押出し以降の各工程を行なって連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表1に示した。また、この走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。 【0070】 【表1】 ![]() 【0071】 表1及び図1に示す結果より明らかなように、実施例1(本発明)の連続気孔弾性体は、押出性、保形性に優れたものである。さらに網目を塞ぐ膜が見られない3次元網目状の気孔構造をしており、網目構造を構成する骨格はほぼ均等な太さをしている。一方、比較例1、比較例2で得られた成形物は、図2,3に示されるように、気孔構造を有するものの、網目を塞ぐ膜が見られ、骨格の太さも不均一であった。 【0072】 実施例2 実施例1の組成物原料に、さらにノニオンOT-221(日本油脂(株)製、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート HLB値15.0)の5部を追加して、混練以降の各工程を同様に行ない評価した。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表2に示した。また、この筒状成形品の中心孔にシャフトを装着しローラーを形成した。その後、ローラー表面の平滑度、真円度を高めるために研磨加工を行ない、上述の方法で残留水分量を測定した。結果を表2に示した。 【0073】 実施例3 ノニオンOT-221が1重量%含まれる40℃の水溶液に、実施例1で得られた連続気孔弾性体を浸漬し、10分間放置した後、取り出して遠心脱水を行なった。浸漬前の連続気孔弾性体の重量は111gであったが、遠心脱水後の重量は189gであった。これを100℃の箱型熱風乾燥機で乾燥した後、実施例2と同様の方法で研磨加工を行ない、残留水分量等を測定した。結果を表2に示した。 【0074】 比較例3 ノニオンOT-221の代りに、アデカエストールS-80(旭電化工業(株)製ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート HLB値4.3)の5部を使用した以外は実施例2と同様に行なった。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表2に示した。 【0075】 【表2】 ![]() 【0076】 実施例4 押出し条件を変えて、連続気孔弾性体の形状等を、内径1mm、外径5mmのチューブ状とした以外は、実施例2と同様にして連続気孔弾性体を得、その後長さ15mmに切断した。このようにして得られた連続気孔弾性体の中心の穴に、先端を尖らせた2.0mm径、長さ10cmのポリプロピレン製棒状物を差し込みスワブとした。ガラス板上の水滴を該スワブで拭いたところ、水滴は1?2秒以内に該連続気孔弾性体に吸い込まれ、ガラス板上の水滴を完全に拭き取ることが出来た。 【0077】 このスワブと同程度の大きさの、綿棒、ポリエステルニット布スワブ、乾式発泡ポリウレタンスポンジスワブ、極細フィラメント布スワブを用いて同様の実験を行ったが、いずれもガラス板上の水滴は、吸い取る前に押し広げられるため、1?2秒の間には完全に拭き取ることが出来なかった。 【図面の簡単な説明】 【0078】 【図1】実施例1得られた3次元網目連続多孔体の走査型電子顕微鏡写真。 【図2】比較例1で得られた連続多孔体の走査型電子顕微鏡写真。 【図3】比較例2で得られた連続多孔体の走査型電子顕微鏡写真。 【図4】連続気孔弾性体チューブの断面及び保形性評価におけるa、bを示す模式図。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリウレタンからなり、その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)であり、かつHLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする連続気孔弾性体。 【請求項2】 界面活性剤のHLB値が8?19であることを特徴とする請求項1に記載の連続気孔弾性体。 【請求項3】 ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤である塩化カルシウムを、主原料として含有する組成物を混練して粘土状相溶物にする工程、当該組成物を脱泡、成形する工程、得られた成形物を水中あるいは水溶液中に投入して凝固する工程、及び、凝固された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去しその後乾燥する工程を有することを特徴とする連続気孔弾性体の製造方法。 【請求項4】 前記組成物が、さらに、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の連続気孔弾性体の製造方法。 【請求項5】 凝固された成形物から、気孔生成剤である前記塩化カルシウムを水抽出した後、該成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の連続気孔弾性体の製造方法。 【請求項6】 請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする吸水ローラー。 【請求項7】 請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とするスワブ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2008-07-25 |
結審通知日 | 2008-07-30 |
審決日 | 2008-08-25 |
出願番号 | 特願2004-348452(P2004-348452) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(C08J)
P 1 113・ 832- YA (C08J) P 1 113・ 113- YA (C08J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 靖恵 |
特許庁審判長 |
渡辺 仁 |
特許庁審判官 |
野村 康秀 山本 昌広 |
登録日 | 2007-03-30 |
登録番号 | 特許第3935907号(P3935907) |
発明の名称 | 連続気孔弾性体及びその製造方法、並びに吸水ローラー及びスワブ |
代理人 | 工藤 展久 |
代理人 | 上代 哲司 |
代理人 | 小山 方宜 |
代理人 | 神野 直美 |
代理人 | 壇 俊光 |
代理人 | 松本 晶行 |
代理人 | 高崎 真行 |
代理人 | 上代 哲司 |
代理人 | 向江 正幸 |
代理人 | 神野 直美 |
代理人 | 福島 三雄 |