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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1210207
審判番号 不服2008-4883  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-28 
確定日 2010-01-13 
事件の表示 特願2002-171836「自動塗抹標本作製装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月19日出願公開、特開2003-83856〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年6月12日の特許出願であって、平成20年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月28日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す。)
「【請求項1】
引きガラスを使用してスライドガラス上に血液を塗抹する試料塗抹部と、
使用された引きガラスを洗浄するための洗浄液を収容し、開口を有する洗浄槽と、
洗浄槽に超音波を印加する超音波発生部と、
洗浄槽の開口の上方に配置され、洗浄された引きガラスの両面に乾燥用の空気を吐出するノズル部とを備え、
ノズル部が第1ノズルと第2ノズルとを含み、第1ノズルが、洗浄された引きガラスの片面側に配置され、第2ノズルが前記引きガラスの他の片面側に配置されている自動塗抹標本作製装置。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「生体試料」を「血液」と限定し、「洗浄槽」について、「開口を有する」との限定を付加し、「乾燥用の空気を吐出するノズル部」について、「洗浄槽の開口の上方に配置され」との限定を付加すると共に、「ノズル部が第1ノズルと第2ノズルとを含み、第1ノズルが、洗浄された引きガラスの片面側に配置され、第2ノズルが前記引きガラスの他の片面側に配置されている」との限定を付加する補正であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物1ないし4には、以下の事項がそれぞれ記載されている。

(1)刊行物1:特開平8-271390号公報の記載事項
(1a)「【請求項5】標本用スライドガラスに血液の塗抹を施すための塗抹部と、
請求項1?4のいずれか1つに記載のスライドガラス収納用カセットまたは請求項1?3のいずれか1つに記載の収納部を備えてなる収納体を1個もしくは複数個、着脱可能にセットして搬送するための搬送部と、
標本用スライドガラスを前記カセットまたは前記収納体に1枚ずつ収納するための収納操作部と、
前記カセットまたは前記収納体に染色液を供給して塗抹済みスライドガラスに染色を施すための染色部とを備えてなる自動標本作製装置。」
(1b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スライドガラス収納用カセットおよび自動標本作製装置に関するものであり、さらに詳しくは、標本用スライドガラスを搬送や染色作業などの目的で収納するためのカセットに関するとともに、スライドガラスに血液の塗抹を自動的に施して標本を作製しあるいは血液の塗抹が施されたスライドガラスに染色を自動的に施して標本を作製する自動標本作製装置に関するものである。」
(1c)「【0047】取り出されたスライドガラス10には、ピペット47bにより吸引された試料が約5マイクロリットル滴下される。このピペット47bはその後、ピペット洗浄槽48で洗浄される。
【0048】次いで、試料の滴下されたスライドガラス10は、塗抹部1の前記第1所定位置においてウェッジ法に基づく塗抹機構49によって塗抹に付される。すなわち、第1所定位置に配された引きガラス50がスライドガラス10に当接した状態でその長手方向に移動されて塗抹が行われる。塗抹が終わると引きガラス50は、油分やタンパク質を取り除くための洗浄液が入った引きガラス洗浄槽51に一定時間浸けられた後に引き上げられてノズルで洗浄される。」
(1d)図1の部分構成を示す図2には、「引きガラス50」と「引きガラス洗浄槽51」が備えられていることが図示され、また図13のフローチャートには、引きガラスを移動させて試料を塗抹後、引きガラスの洗浄が行われることが記載されている。(第14頁【図2】、第16頁【図13】)

(2)刊行物2:特開2001-99847号公報の記載事項
(2a)「【0004】ところで上記マイクロアレイチップは、上述したように極めて多数のcDNA等の特異的結合物質がメンブレンフィルタやスライドガラス等のチップ上に高密度にスポットされたものであるが、このスポットは図3に示すように、マイクロアレイチップ製造装置(スポッターまたはアレイヤー)によってなされている。」
(2b)「【0008】次に最初の特異的結合物質孔10aの右隣の4個・・・の各特異的結合物質孔10aに貯留された特異的結合物質11を採取するが、各特異的結合物質孔10aに貯留されている特異的結合物質11は通常それぞれ異なるため、採取ピン31に付着している前の試料が混ざらないように、次の採取に先だって採取ピン31を超音波洗浄、乾燥させる必要がある。そしてこの洗浄・乾燥の後に上記右隣の4個の特異的結合物質孔10aに各採取ピン31を入れて特異的結合物質11を採取し、チップ20上において、先にスポットした特異的結合物質11とのピッチが採取ピン31のピッチPよりも小さく(例えば、P/6)なるように、ヘッド30を移動してチップ20に特異的結合物質11をスポットする。」

(3)刊行物3:特開2001-50959号公報の記載事項
「【0018】図1に示すように、各区画10A,10Bには、多数の基板がマトリクス状に載置される作業台としての基板載置部11と、例えばDNA断片を含む溶液等が貯えられる多数の凹部が配列して形成された溶液貯留部としてのタイタープレート12と、アレイングヘッド3が具備する液溜め部材(後述)を超音波を付与した水により外側から洗浄するための超音波洗浄機13と、該液溜め部材をすすぎ洗浄するためのすすぎ洗浄部14と、洗浄した液溜め部材を乾燥させるための乾燥部15と、試験的にマイクロアレイを作製するための2枚の基板またはダミー基板が載置されるテスト台16と、がそれぞれ設けられる。」

(4)刊行物4:特開平4-9670号公報の記載事項
(4a)「液体試料を吸入保持し、吐出するノズルと、
洗浄液が供給される洗浄部と、
ノズルまたは洗浄部に連結され、洗浄液中に超音波を照射する超音波振動発生部とを備える分析装置。」(特許請求の範囲)
(4b)「[発明の効果]
この発明によれば、洗浄水の対流に加えて、洗浄水中に超音波振動が発生されることによって、ラテックス等の洗浄しにくい試薬や試料が完全に除去されるようになる。これにより、キャリーオーバーなどによる分析データの不良、及びノズルの付着物による試料の劣化がなくなり、分析性能が向上されるとともに分析時間が短縮される。また、機器管理者の定期的なメンテナンスの回数が低減され、その負担が軽減される。」(4頁右下欄12行?5頁左上欄3行)
(4c)第1図には、洗浄水で満たされた開口部を有する洗浄槽の下方にランジュバン型の超音波振動発生部16が配置されて、分注ノズル46が洗浄水に浸けられ、洗浄される実施例が図示されている。(2頁右上欄8行?3頁左上欄16行)

3 対比・判断
上記刊行物1の記載事項(上記(1a)(1c))から、刊行物1には、
「標本用スライドガラスに血液の塗抹するために、引きガラスがスライドガラスに当接した状態でその長手方向に移動されて塗抹を行う塗抹部と、塗抹が終わった引きガラスの油分やタンパク質を取り除くための洗浄液が入った引きガラス洗浄槽と、一定時間洗浄槽に浸けられた後に引き上げられた引きガラスを洗浄するノズルとを備えてなる自動標本作製装置」の発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「標本用スライドガラス」、「塗抹部」、「自動標本作製装置」は、本願補正発明の「スライドガラス」、「試料塗抹部」、「自動塗抹標本作製装置」にそれぞれ相当する。
(イ)刊行物1発明の「引きガラス洗浄槽」に、引きガラスは一定時間浸けられた後引き上げられてノズルで洗浄されることから、洗浄槽の上部には引きガラスを出し入れするための開口が設けられているといえる。

したがって、両者の間には以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
引きガラスを使用してスライドガラス上に血液を塗抹する試料塗抹部と、使用された引きガラスを洗浄するための洗浄液を収容し、開口を有する洗浄槽とを備えた自動塗抹標本作製装置である点。

(相違点1)
本願補正発明は、洗浄槽に超音波を印加する超音波発生部を備えているのに、刊行物1発明は、超音波発生部を備えていない点。

(相違点2)
本願補正発明が、洗浄槽の開口の上方に配置され、洗浄された引きガラスの両面に乾燥用の空気を吐出するノズル部とを備え、ノズル部が第1ノズルと第2ノズルとを含み、第1ノズルが、洗浄された引きガラスの片面側に配置され、第2ノズルが前記引きガラスの他の片面側に配置されているのに対し、刊行物1発明は、洗浄用のノズルを備えているものの、乾燥用のノズルは備えていない点。

そこで、上記各相違点について検討する
(相違点1について)
生体試料を取り扱う装置や部材を洗浄する際に、付着したタンパク質等を除去するために洗浄液に超音波を印加することは、例えば、刊行物2ないし4にも記載されるとおり本願出願前の周知技術であるから、刊行物1発明において、引きガラスに付着したタンパク質等を除去するために用いる洗浄槽に超音波を印加する超音波発生部を設けることに、格別の困難性があるとはいえない。

(相違点2について)
生体試料を取り扱う装置や部材を洗浄後、乾燥する必要があることは、刊行物2、3、特開昭62-242858号公報(特許請求の範囲、第1図?第4図)、特開平8-248035号公報(【請求項1】)にも記載されるように、本願出願前の周知技術であり、洗浄及び乾燥は、部材の表面だけでなく内面や裏側についても行われる必要があることは当然のことである。そして、刊行物1発明は、洗浄槽から引き上げた引きガラスの洗浄をノズルで行うものであるが、洗浄だけでなく乾燥もノズルから空気を吹き付けて迅速に行うことは、例えば、特開昭62-242858号公報(特許請求の範囲、第1図?第4図)及び特開昭57-57261号公報(特許請求の範囲、第4頁右下欄9行?15行、図4)にも記載されるとおり周知技術である。
そうすると、刊行物1発明において、洗浄槽から引き上げられた引きガラスを洗浄槽の開口の上方でノズルで洗浄することに引き続き、乾燥用の空気を吐出するノズルを設けて乾燥するようにし、その際、引きガラスは平板状のガラス板であるから、ガラス板の両側にノズルを設けて洗浄及び乾燥を行うように構成し、洗浄槽の開口の上方で、ノズル部が第1ノズルと第2ノズルとを含み、第1ノズルが、洗浄された引きガラスの片面側に配置され、第2ノズルが前記引きガラスの他の片面側に配置されたものとすることは、当業者が容易になし得たものといえる。

(本願補正発明の効果について)
本願補正発明の、迅速な洗浄及び乾燥で、次の血液の塗抹処理に迅速に移行できる自動塗抹標本作製装置が提供されるという効果は、刊行物1の記載事項、及び刊行物2ないし4等の周知技術から予測し得るのものであり、格別顕著なものとはいえない。

したがって、補正発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2ないし4等の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされてる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年3月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成19年12月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1は次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】引きガラスを使用してスライドガラス上に生体試料を塗抹する試料塗抹部と、使用された引きガラスを洗浄するための洗浄液を収容する洗浄槽と、洗浄槽に超音波を印加する超音波発生部と、洗浄された引きガラスの両面に乾燥用の空気を吐出するノズル部とを備える自動塗抹標本作製装置。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1ないし4の記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1」において検討した本願補正発明について、「血液」を「生体試料」と上位概念化し、「洗浄槽」の限定事項である「開口を有する」との構成、及び「乾燥用の空気を吐出するノズル部」の限定事項である「洗浄槽の開口の上方に配置され」及び「ノズル部が第1ノズルと第2ノズルとを含み、第1ノズルが、洗浄された引きガラスの片面側に配置され、第2ノズルが前記引きガラスの他の片面側に配置されている」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、構成を限定、及び他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2ないし4等の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2ないし4等の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2ないし4等の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-11 
結審通知日 2009-11-17 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2002-171836(P2002-171836)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順森 竜介  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 岡田 孝博
宮澤 浩
発明の名称 自動塗抹標本作製装置  
代理人 西野 卓嗣  

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