• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1210208
審判番号 不服2008-7734  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-28 
確定日 2010-01-13 
事件の表示 特願2002- 40516「難燃性電磁波シールド用ガスケット」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月29日出願公開、特開2003-243873〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成14年2月18日に出願されたものであって、その願書に添付した明細書又は図面についての平成20年1月7日付け手続補正がなされた後、平成20年2月12日付けで拒絶査定されたものである。
この拒絶査定を不服として、平成20年3月28日付けで本件審判請求がなされた。

第二 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、上記手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「難燃性を有する合成樹脂発泡体から成る芯材の外側を、少なくともリン系化合物難燃剤と未膨張の熱膨張性黒鉛を含む樹脂層が積層された金属被覆布帛で回捲して成る電磁波シールド用ガスケットであって、該金属被覆布帛の重量に対して、リン系化合物難燃剤が40?300%、未膨張の熱膨張性黒鉛が20?160%含まれており、燃焼時に人体に有害なガスを発生することのない電磁波シールド用ガスケット。」

2.原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

この出願の下記の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第99/44406号
2.特開2001-111285号公報
3.特開平6-25476号公報
4.特開平9-227716号公報

3.当審の判断
(1)引用文献の記載事項
引用文献1?4には、以下の事項が記載されている(以下、明瞭化のため下線を付す。)。
なお、引用文献1の記載事項としては、その内容を国内公表した公表特許公報である特表2002-505528号公報の該当部分を訳文として用い、引用文献1の該当する記載箇所を、各末尾に併記した。

引用文献1
「 【0014】
好適な態様では、本発明の導電性で難燃性のEMI遮蔽材料に、ニッケルもしくは銀メッキしたナイロン、ポリエステルなどの織り生地を含め、それの一つの側に、難燃性のアクリル樹脂ラテックスエマルジョン・・・または他の流動性樹脂組成物の層を湿式被覆する。」(英文5頁5?8行)

「 【0019】
・・・図1に、本発明に従う難燃性EMI遮蔽材料を、発泡コアガスケット構造物に含める被覆材として用いるに一般に適合するとして、一般的に10で示す。・・材料10は、上方の一般的に平らで多孔性の生地部材12と下方の難燃性コーティング部材14を包含する。
【0020】
生地部材は、少なくとも、導電性の1番目の側16と導電性もしくは非導電性の2番目の側18を有し、・・・「導電性」は、・・・非導電性繊維がメッキまたはスパッタリングの如き処理を受けていてそれの上に導電性層が与えられていることが理由で、生地が導電性を示し得る・・・
【0021】
ワイヤーメッシュ、ニット、そして不織布およびウエブの如き生地を用いることも可能であるが、部材12に好適な生地構造は、ナイロンまたはポリエステルの平織り布であり、これに銀、ニッケル-銀または銀-ニッケル被覆銅メッキを・・・行うことで導電性にする。」(英文7頁下から3?8頁下から4行)

「 【0024】
前記難燃性組成物を、好適には、アクリル樹脂ラテックスエマルジョンを・・・調整した水エマルジョンとして配合する。前記エマルジョンに1種以上の通常の難燃添加剤、例えば水化アルミニウム、三酸化アンチモン、燐酸エステル・・・で充填することを通して、それに難燃性を与えてもよい。」
(英文10頁6?12行)

「 【0027】
・・・コア部材52は発泡した弾性熱可塑性プラスチック(elastomeric thermoplastic)、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン-EPDMブレンド物、ブタジエン、スチレン-ブタジエン、ニトリル、クロロスルホネート、または発泡ネオプレン、ウレタンまたはシリコンなどで作られていてもよい。・・・
【0028】
コア部材52は、押出し加工もしくは成形した発泡プロファイル(foam profile)として準備可能であり、これの上を遮蔽材料10で被覆物として覆うが、この被覆物の縁を56で示すように重ね合わせる。・・・図4の拡大図(図5に60で示す)を参照する・・・」(英文11頁15?26行)

引用文献2
「【0012】本発明の好適な実施例に係る電磁波シールド用ガスケットは、図1に示す如く、メラミン樹脂の多孔質弾性体からなる芯材10と、該芯材10の全体または所要部位を被覆する導電性被覆層12とから基本的に構成される。・・・
【0013】前記芯材10としては、極めて高い難燃性を有するメラミン樹脂を原料として発泡させた多孔質弾性体(以下「メラミン弾性体」という)が使用される。」

引用文献3
「【0002】
【従来の技術】・・・電気、電子機器のエンクロージャ・・・など、難燃化が義務付けられたプラスチック材料が非常に多く、要求される難燃性能も高まりつつある。・・・
【0003】しかしながら、ハロゲン系難燃剤を配合したものは燃焼時に発煙量が多いことや、ハロゲン化水素などの腐食性ガスの発生が問題となっている。すなわち、ハロゲン系難燃剤を含有する樹脂組成物の、燃焼時に発生する腐食性ガスに起因する機器、装置の損傷や、火災事故の際に避難する人々が煙のために逃げ道を失うおそれがある。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、最近では・・・さらに難燃性を付与する目的で加熱膨張性黒鉛を配合する試み等がなされている。」

「【0005】
【課題を解決するための手段】このような現状にあたり本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂組成物において、特定の膨張性をもちかつ特定の粒子形状を有する加熱膨張性黒鉛と、赤燐または燐化合物とを配合することにより著しい難燃効果を発揮することを見い出だし、上記特許請求の範囲に記載した本発明に至った。」

「【0008】本発明で用いられる燐化合物として以下に例示するが、・・・該燐化合物の配合量は、・・・燐化合物が燐酸金属塩類及び/又はそれら金属塩類の水和物の場合は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し1?150重量部の配合であることが好ましい。1重量部未満では難燃化効果が不十分であり、150重量部を越えると樹脂組成物の機械的特性が大きく損なわれるからである。・・・
【0009】本発明に用いられる加熱膨張性黒鉛は・・・該加熱膨張性黒鉛の配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し1?30重量部の配合であることが必要である。1重量部未満では難燃化効果は不十分であり、30重量部を越えると樹脂組成物の機械的特性が大きく損なわれるからである。」

引用文献4
「【0004】特開平6-25476号公報には、ポリオレフィン樹脂に赤リン又はリン化合物と熱膨張性黒鉛とを用いる技術が開示されている。このものは難燃性については充分である」

「【0013】本発明で用いられる熱可塑性樹脂には、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤が含有される。本発明の耐火性樹脂組成物の耐火性能は、これら3成分がそれぞれの性質を発揮することにより発現する。具体的には、加熱時に熱膨張性黒鉛が膨張断熱層を形成して熱の伝達を阻止する。」
段落0037の表1には、熱可塑性樹脂100重量部に対して、少なくとも、リン化合物と熱膨張性黒鉛とを所定重量部含むことが記載されている。

(2)引用発明の認定
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(ア)難燃性EMI遮蔽材料10を、発泡コアガスケット構造物の被覆材として用いること(段落0019)、

(イ)コア部材52は発泡した弾性熱可塑性プラスチックであること(段落0027)、

(ウ)コア部材52の外側を被覆する難燃性EMI遮蔽材料10は、多孔性のポリエステルの平織り布等の生地部材12と難燃性コーティング部材14からなること(段落0028及び引用された「図4」、0019、0021)、

(エ) 生地部材12には、金属メッキまたはスパッタリングの如き処理を受けていてそれの上に導電性層が与えられていること(段落0020、0021)、

(オ)難燃性コーティング部材14は、燐酸エステル難燃添加剤を含む樹脂層であること(段落0024)、

(カ)上記(ウ)のように、難燃性コーティング部材14である樹脂層がコーティングされた多孔性のポリエステルの平織り布等の生地部材12が、コア部材52の外側を被覆し巻回することにより、(ア)の発泡コアガスケット構造物と成ること。

したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「発泡した弾性熱可塑性プラスチックから成るコア部材の外側を、少なくとも燐酸エステルからなる難燃添加剤を含む樹脂層よりなる難燃性コーティング部材がコーティングされた、金属メッキまたはスパッタリング済みのポリエステルの平織り布で巻回して成るEMI遮蔽ガスケット構造物」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
引用発明の、
「発泡した弾性熱可塑性プラスチックから成るコア部材」、
「少なくとも燐酸エステルからなる難燃添加剤を含む樹脂層よりなる難燃 性コーティング部材がコーティングがされた、金属メッキまたはスパッ タリング済みのポリエステルの平織り布」、
「EMI遮蔽ガスケット構造物」は、それぞれ、
本願発明の、
「合成樹脂発泡体から成る芯材」、
「少なくともリン系化合物難燃剤を含む樹脂層が積層された金属被覆布帛 」、
「電磁波シールド用ガスケット」に相当する。

そこで、本願発明と引用発明との対比すると、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「合成樹脂発泡体から成る芯材の外側を、少なくともリン系化合物難燃剤を含む樹脂層が積層された金属被覆布帛で回捲して成る電磁波シールド用ガスケット。」

(相違点1)
本願発明では、「難燃性を有する」芯材であるのに対して、
引用発明では、難燃性を有するコア部材か不明である点。

(相違点2)
本願発明では、金属被覆布帛に積層する樹脂層が「未膨張の熱膨張性黒鉛」を含み、該金属被覆布帛の重量に対して、リン系化合物難燃剤が40?300%、未膨張の熱膨張性黒鉛が20?160%含まれて」いるのに対して、
引用発明では、当該樹脂層が「未膨張の熱膨張性黒鉛」を含まず、上記の配合割合も不明である点

(相違点3)
本願発明では、「燃焼時に人体に有害なガスを発生することのない」電磁波シールド用ガスケットであるのに対して、
引用発明では、上記の点が、不明である点

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用文献2には、芯材10としては、極めて高い難燃性を有するメラミン樹脂を原料として発泡させた多孔質弾性体が記載されている。
そして、引用発明も難燃性を要するものであるから、引用発明においても、必要に応じて、同様に、難燃性を有するコア部材とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(相違点2について)
引用文献3の段落0002?0004には、難燃性を要求される電気機器等のエンクロージャ等において、さらに難燃性を付与する目的で加熱膨張性黒鉛を樹脂に配合する試み等がなされていると記載されている。

引用文献4にも、ポリオレフィン樹脂にリン化合物と熱膨張性黒鉛とを用いると、難燃性については充分であること、加熱時に熱膨張性黒鉛が膨張断熱層を形成して熱の伝達を阻止することが記載されている。

引用発明も難燃性を目的とするものであるから、燐酸エステルからなる難燃添加剤を含む樹脂層からなる難燃性コーティング部材に、さらに、上記熱膨張性黒鉛の難燃性の作用効果を得るため、これを配合することは、特に阻害要因は認められず、当業者が適宜なし得た設計事項と言える。

そして、引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(i)燐化合物の配合量は、燐酸金属塩類の場合1?150重量部、
(ii)加熱膨張性黒鉛の配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し1?30重量部とすること。

上記(i)、(ii)を換算すると、以下の配合%になる。
(ia)燐化合物の配合量は、配合物全体の約1?60%、
(iia)加熱膨張性黒鉛の配合量は、配合物全体の約1?23%。

引用文献4の段落0037の表1のデータを換算すると、配合物全体に対して、少なくとも、以下の配合%が記載されている。
(ib)リン系化合物難燃剤が約15?50%、
(iib)未膨張の熱膨張性黒鉛が約4.5?50%

上記(ia)?(iib)の配合%は、本願発明の配合%と重複する範囲で、ほぼ一致していると解されるし、本願発明において、より難燃性を高める必要に応じて、配合%を高めることは、適宜なし得ることであるから、相違点2の本願発明の配合%とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(相違点3)
引用文献3には、プラスチック材料に難燃性を付与する技術として、ハロゲン系難燃剤を配合したものは燃焼時に発煙量が多いことや、ハロゲン化水素などの腐食性ガスの発生が問題となって、火災事故の際に避難する人々が煙のために逃げ道を失うことが記載されている。
そして、上記発煙ガスや、腐食性ガスは、一般的に、人体に有害なガスと解されるから、できるだけ「人体に有害なガスを発生することのない」ように、使用する化合物の選択等考慮しなければならないことは自明である。

引用発明の「EMI遮蔽ガスケット構造物」においても、同様であり、単に「燃焼時に人体に有害なガスを発生することのない」ようにと想到することは、当業者が適宜なし得たことである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-29 
結審通知日 2009-10-20 
審決日 2009-11-06 
出願番号 特願2002-40516(P2002-40516)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 植前 充司
山本 一正
発明の名称 難燃性電磁波シールド用ガスケット  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ