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審決分類 審判 査定不服 判示事項別分類コード:565 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1210249
審判番号 不服2007-24816  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-10 
確定日 2010-01-12 
事件の表示 特願2003-348398「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 8816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
本願は、平成15年10月7日(原出願:平成11年7月8日)の出願であって、平成19年1月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成19年2月14日付けで手続補正がされ、平成19年4月3日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成19年5月24日付けで手続補正がされ、平成19年8月10日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成19年9月10日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年9月18日付けで手続補正がされたものである。当審において、平成21年5月29日付で、平成19年9月18日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、これに対し平成21年7月9日付けで手続補正がされた。

2.補正後の本願発明
平成21年7月9日付け手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「パチンコ機の前面下部の前面パネルに前方に突出するように設けられた球皿内にパチンコ球を受け入れ、そのパチンコ球を球皿底面の下り傾斜によって球皿出口に向かって流下させるパチンコ機において、
パチンコ機の左側下部からパチンコ球をほぼ垂直上向きに発射する球発射装置を設けると共に、前記球皿出口を前記球皿の左側に配置して前記球皿の底面を左側に下り傾斜するように形成し、
前記球皿内に供給されるパチンコ球を前記球皿の左側で受け入れて前記球皿の上流側である右側に導く球導入路を備え、
前記球導入路は、前記前面パネルより前方に位置し且つ前記球皿の左側で前記球皿出口の上方部から前記球皿の前面部に沿って右側に下り傾斜するように形成され、前記パチンコ球を前記球導入路によって前記球皿内におけるパチンコ球の前記球皿出口へ向かう左方向の流れとは分離して前記球皿の左側から前記球皿の前面部に沿って前記球皿の右側へ流し、該球導入路を流れるパチンコ球を該球導入路の最下流から前記球皿内で前後方向の幅が最も広い場所に流れ込ませるように構成されていることを特徴とするパチンコ機。」(以下、「本願発明」という。)と補正された。

3.引用文献について

当審の拒絶の理由に引用された特開平11-9795号公報(以下、「引用文献」という。)(公開日:平成11年1月19日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図2に基づいてパチンコ機全体の概略構成を説明する。パチンコ機本体を構成するプラスチック製の機枠11に遊技盤12が取り付けられ、例えば、この遊技盤12の中央よりやや上方部に、大型ディスプレイ13が設けられ、その下方に、始動入賞口14と可変入賞装置15が設けられ、これ以外の遊技領域の複数箇所に通常の入賞口16や通常の入賞装置17が設けられている。また、遊技盤12の左側部には、パチンコ機の左側下部に設けられた球発射装置(図示せず)からほぼ垂直上方に打ち上げられたパチンコ球を遊技盤12の上部へ案内するガイドレール18が設けられている。」(段落【0012】)

・記載事項2
「遊技盤12内に打ち込まれたパチンコ球が始動入賞口14に入賞すると、例えば、大型ディスプレイ13の画面19に表示されている文字や絵柄の動作が開始され、それが停止した時の文字や絵柄の組み合わせによって“大当り”か否かが決められ、その結果に応じて可変入賞装置15の開放時間や開放回数が決められる。また、機枠11の前面下部には、前面パネル20が設けられ、この前面パネル20には、1皿化された大容量の球皿21が設けられ、この球皿21の右側に球発射装置(図示せず)の操作ハンドル22が設けられている。」(段落【0013】)

・記載事項3
「次に、図1及び図3?図5に基づいて球皿21の構成を説明する。図1に示すように、球皿21は、前面パネル20から前方に突出した前皿部23と、この前皿部23の真後ろに位置し前面パネル20より後方でパチンコ機後部側に広がる後皿部24とから構成され、これら前皿部23と後皿部24とは、前面パネル20に一体成形された仕切壁25により前後に仕切られている。前面パネル20の裏面側をカバーするプラスチック枠26は、機枠11に一体成形され、後皿部24の後方への広がり形状に合わせて後方側に窪むように形成されている。」(段落【0014】)

・記載事項4
「前述した前皿部23の左側部には、パチンコ球を球発射装置(図示せず)側に向けて1列に流下させる案内流路27が形成されている。この案内流路27に向かってパチンコ球が整列しながら流下するように、前皿部23は、左側部分の流路が下流に向かうにつれて狭められていると共に、図3に示すように、底面23aが左方に向かって下り傾斜するように形成されている。」(段落【0016】)

・記載事項5
「一方、後皿部24は、前皿部23とは反対方向にパチンコ球が流下するように底面24aが右方に向かって下り傾斜するように形成されていると共に、底面24aの下流側には、パチンコ球を前皿部23側へ案内する案内底面部24bが前方に向かって下り傾斜するように形成されている。この案内底面部24b前方で仕切壁25に連通口28が形成され、この連通口28によって後皿部24の下流側と前皿部23の上流側とが連通状態になっており、後皿部24内のパチンコ球がスムーズに前皿部23内に移動できるようになっている。また、後皿部24は、案内底面部24bの右側にも拡大され、この部分の底面24cが案内底面部24bに向かって左側に下り傾斜している。尚、後皿部24の左端部(上流部)の上方には賞球口29が設けられ、賞球排出装置(図示せず)から排出される賞球が賞球口29から後皿部24内に流入するようになっている。」(段落【0017】)

・記載事項6
「以上のように構成されたパチンコ機では、遊技盤12内に打ち込まれたパチンコ球が、例えば、始動入賞口14、可変入賞装置15、入賞口16及び入賞装置17のいずれかに入賞すると、その入賞価値に応じた数のパチンコ球が賞球として賞球排出装置から排出され、賞球口29から後皿部24の左端部に流入する。これらのパチンコ球は、後皿部24の底面24aの傾斜に沿って右方に流下した後に、案内底面部24bの傾斜により前方の前皿部23側に流下し、仕切壁25の連通口28を通って前皿部23の上流部に流入する。そして、前皿部23内では、パチンコ球は、底面23aの傾斜に沿って左方(後皿部24内のパチンコ球の流下方向とは反対方向)に流下し、該パチンコ球が案内流路27内を1列に整列しながら球発射装置側に向って流下する。」(段落【0020】)

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「パチンコ機の機枠11の前面下部の前面パネル20から前方に突出した前皿部23にパチンコ球を受け入れ、前皿部23内でパチンコ球は底面23aの傾斜に沿って左方に流下し、案内流路27内を球発射装置に向かって流下するパチンコ機において、
パチンコ球をほぼ垂直上方に打ち上げる球発射装置をパチンコ機の左側下部に設けると共に、前皿部23の底面23aは左方に向かって下り傾斜するように形成し、パチンコ球が案内流路27内を1列に整列しながら球発射装置に向かって流下させるパチンコ機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「前面パネル20」は本願発明の「前面パネル」に相当し、以下同様に「前皿部23」は「球皿」に、「底面23aの傾斜に沿って」は「球皿底面の下り傾斜によって」にそれぞれ相当する。

引用発明について、以下の(1)?(2)のことが言える。
(1)引用発明の「前皿部23」は、「パチンコ球が案内流路27内を1列に整列しながら球発射装置側に向って流下する」という構成を具備しているので、当然発射装置に対する出口を有していることは自明であり、本願発明と同様の「球皿出口に向かって流下させる」なる構成、及び「球皿出口を前記球皿の左側に配置して」なる構成を実質的に具備している。

(2)引用発明は「球発射装置」を左側下部に設け、パチンコ球をほぼ垂直上方に打ち上げており、本願発明の「パチンコ機の左側下部からパチンコ球をほぼ垂直上向きに発射する球発射装置を設ける」に相当する構成を有している。

そうすると、両者は、
「パチンコ機の前面下部の前面パネルに前方に突出するように設けられた球皿内にパチンコ球を受け入れ、そのパチンコ球を球皿底面の下り傾斜によって球皿出口に向かって流下させるパチンコ機において、
パチンコ機の左側下部からパチンコ球をほぼ垂直上向きに発射する球発射装置を設けると共に、前記球皿出口を前記球皿の左側に配置して前記球皿の底面を左側に下り傾斜するように形成しているパチンコ機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
相違点1
本願発明において、球導入路は「球皿内に供給されるパチンコ球を前記球皿の左側で受け入れて前記球皿の上流側である右側に導く球導入路を備え、
前記球導入路は、前記前面パネルより前方に位置し且つ前記球皿の左側で前記球皿出口の上方部から前記球皿の前面部に沿って右側に下り傾斜するように形成され、前記パチンコ球を前記球導入路によって前記球皿内におけるパチンコ球の前記球皿出口へ向かう左方向の流れとは分離して前記球皿の左側から前記球皿の前面部に沿って前記球皿の右側へ流し」という構成を有するのに対し、引用発明では球導入路の存在が明確でない点。

相違点2
本願発明では「球導入路を流れるパチンコ球を該球導入路の最下流から前記球皿内で前後方向の幅が最も広い場所に流れ込ませるように構成されている」のに対し、引用発明ではパチンコ球を流れ込ませる位置についての特定がなされていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
平成21年5月29日付の拒絶理由通知で引用した特開平9-155039号公報(以下、「引用文献2」という。)には以下の記載がある。

・記載事項A
「開閉パネル15には、発射前の遊技球を一時保持して前面枠11の下側に設けられた発射装置(図示省略)に供給可能な上皿22(遊技球貯留皿)が設けられている。」(段落【0016】)

・記載事項B
「またこの上皿22の内部には、図3乃至図4に示すように、左右両側から遊技球が円滑に流入可能となり、また内部の遊技球が両側から円滑に流れ落ちて下皿28側に抜き出されるように、左右両側に傾斜面22b,22cが形成されている。そして、この場合右側の傾斜面22cの奥側下方には、図4に示すように、左側の傾斜面22bの延長方向に傾斜して、図示省略した発射装置の発射部に遊技球を一列状態にして案内する導入路22dが形成され、右側の傾斜面22cに沿って上皿22の中央部に流れ落ちる遊技球が、図4の矢印に示すように向きを変えて、左側の傾斜面22bに沿って流れ落ちる遊技球と混ざりあってこの導入路22dに流入する構成となっている。なおこの場合には、図8に示すように、右側の傾斜面22cの下流奥側の端縁に沿って斜め又は鉛直方向に立設された案内リブ22eを形成し、遊技球が上皿22の中央部に流れ落ちる前に横方向に流れて直接導入路22d上に落下する流れ(いわゆるショートパス)を確実に阻止する構成とするのが好ましい。このようにすれば、前記ショートパスにより、右側の傾斜面22cから流れ落ちる遊技球と、左側の傾斜面22bから流れ落ちる遊技球とが、導入路22dにおいて対向状態に衝突して、複数の遊技球が押しあって流路を閉塞するいわゆるブリッジ現象が起こるのを、確実に防止できる。」(段落【0017】)

・記載事項C
「(6)しかも、左右の傾斜面22b,22cの一方側(傾斜面22c)から流入した遊技球が、他方側(傾斜面22b)から流入して発射装置への導入路22dを流れる遊技球と対向状態で衝突しないように、前記一方側(傾斜面22c)から流入した遊技球を案内する案内リブ22eが設けられているため、左右両側から流れ落ちる遊技球が対向状態に衝突して、複数の遊技球が押しあって流路を閉塞するいわゆるブリッジ現象が起こるのを、確実に防止できる。このため、左右両側から投入が可能な使い易い上皿22でありながら、円滑な遊技球の流れが実現され、遊技球が上皿22に残っているのに発射装置に供給されないという不具合が信頼性高く防止される。」(段落【0065】)

そして図4、図8を参照すれば、以下のことが言える。
「左右両側から遊技貯留皿に遊技球の投入が可能な」との記載からみて、引用文献2の上皿22は左右両側からの遊技球を供給可能としたものであり、傾斜面22cは上皿22の右側に供給された遊技球を中央部すなわち右側に対し、相対的に左側に流れ落ちさせるものであるから「球導入路」ということができるから、本願発明の対応する用語を用いると、引用文献2には「球皿内に供給されるパチンコ球を前記球皿の右側で受け入れて前記球皿の上流側である左側に導く球導入路を備え」との技術事項が実質的に記載されているということがいえる。
また、開閉パネル15は本願発明の「前面パネル」に相当するものであり、上記傾斜面22cは、開閉パネル15より前方に位置し、且つ上皿22の右側で導入路22dの下流端すなわち上皿22の出口上方部から上皿22の前面部に沿って左側に傾斜するように形成されたものである。そして、パチンコ球は、傾斜面22cによって上皿22内におけるパチンコ球の上皿22の出口へ向かう右方向の流れとは分離して上皿22の右側から上皿22の前面部に沿って上皿22の左側へ流れるものである。そうすると、本願発明の対応する用語を用いると引用文献2には「球導入路は、前記前面パネルより前方に位置し且つ前記球皿の右側で前記球皿出口の上方部から前記球皿の前面部に沿って左側に下り傾斜するように形成され、前記パチンコ球を前記導入路によって球皿内におけるパチンコ球の前記球皿出口へ向かう右方向の流れと分離して前記球皿の右側から前記球皿の前面部に沿って前記球皿の左側へ流し」との技術事項が実質的に記載されているということができる。

球発射装置をパチンコ機の左側に配置した引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用しようとすれば、球皿出口が左側にあることから、引用文献2に記載された技術事項における構成の左右関係は逆にならざるを得ない。しかし、そもそも引用文献2に記載された技術事項は、「左右両側から投入が可能」との記載などから分かるように、左右の配置関係を問題としないものであるから、上記のような適用に困難性はない。
そして、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項は、いずれもパチンコ球の円滑な流れを課題としているので、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用文献1には、記載事項1として「パチンコ球の荷重で球皿の底板が傾動して下り勾配を小さくし、下流側のパチンコ球に加わる背圧を適正レベルに抑える」とあり、後皿部24から前皿部23にパチンコ球を流し込む際に、どの部分に流し込めばパチンコ球に掛かる圧力減らすことができるかを考慮することは当然であり、幅が広い部分に流し込めば圧力を抑えられることは技術常識といえ、「前後方向の幅が最も広い場所に流れ込ませること」は設計事項といわざるをえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2009-11-09 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-12-01 
出願番号 特願2003-348398(P2003-348398)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 565- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 森 雅之
深田 高義
発明の名称 パチンコ機  
代理人 加古 宗男  

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