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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1210398
審判番号 不服2006-23230  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-12 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2003-415698「画像処理装置、画像再生方法、プログラムおよび記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日出願公開、特開2005-176136〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯等
1.手続
本件出願は、平成15年12月12日の出願(特願2003-415698)であって、平成18年4月25日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、平成18年7月10日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが、平成18年9月5日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成18年10月12日に請求された拒絶査定不服審判であり、平成18年11月13日付けで手続補正(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)がなされた。

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の各請求項に係る発明は、下記刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2001-94924号公報
刊行物2:特開2001-157158号公報
刊行物3:特開平11-331545号公報
刊行物4:特開2000-354228号公報
刊行物5:特開2002-125209号公報
(査定時に周知例として引用)
刊行物6:特開平10-143137号公報
(査定時に周知例として引用)

第2 平成18年11月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲についてするものを含み、特許請求の範囲についてする補正は、補正前に
「【請求項1】
画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定手段と、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際の補完画像を表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像のみの表示を行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置の画像再生方法であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定工程と、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御工程と、を備え、
前記表示制御工程では、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際の補完画像を表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像再生方法。
【請求項4】
前記表示制御工程では、前記トリミング情報が設定されている画像のみの表示を行うように制御することを特徴とする請求項3に記載の画像再生方法。
【請求項5】
画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置を制御するためのプログラムであって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定モジュールと、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御モジュールと、有し、
前記表示制御モジュールは、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際の補完画像を表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように
制御することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5記載のプログラムをコンピュータ読取可能に格納したことを特徴とする記憶媒体。」
とあったものを、
「 【請求項1】
画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定手段と、
前記トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定手段と、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を自動的に再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション画像を前記アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像のみの表示を行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置の画像再生方法であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定工程と、
前記トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定工程と、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を自動的に再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御工程と、を備え、
前記表示制御工程では、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション画像を前記アニメーション表示設定工程における設定に応じて表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像再生方法。
【請求項4】
前記表示制御工程では、前記トリミング情報が設定されている画像のみの表示を行うように制御することを特徴とする請求項3に記載の画像再生方法。
【請求項5】
画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置を制御するためのプログラムであって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定モジュールと、
前記トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定モジュールと、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を自動的に再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御モジュールと、有し、
前記表示制御モジュールは、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション画像を前記アニメーション表示設定モジュールによる設定に応じて表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5記載のプログラムをコンピュータ読取可能に格納したことを特徴とする記憶媒体。」
と補正しようとするものである。

2.補正の目的
本件補正は本件補正前の請求項1に「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定手段」を付加し、本件補正前の請求項1において「自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に」、「補完画像を表示」とあるものを、それぞれ、「自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を自動的に再生する際に」、「アニメーション画像を前記アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示」と補正するものを含む。
そして、本件補正は、発明を特定する事項にアニメーション表示設定手段を新たに付加する補正を含むものである。
しかし、本件補正前の請求項1における「補完画像を表示」することは、本件特許出願の明細書の「拡大アニメーション設定がオンである場合、システム制御回路50は、ステップS507において、トリミング枠内の画像を拡大して表示する際の補完画像をアニメーション表示し、処理をステップS509に進める。」(段落【0046】)や「拡大アニメーション設定がオンであると(ステップS506)、トリミング枠内の画像を拡大して表示する際の補完画像がアニメーション画像703として表示された(ステップS507)後に、トリミング枠内の画像が拡大されて画像704として表示される(ステップS509)」(段落【0049】)といった記載を踏まえれば、「補完画像」の「表示」はアニメーション表示によってなされるものであることは明らかである。
そして「表示」とは、「外部へあらわし示すこと」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であることを踏まえれば、本件補正前の請求項1における補完画像の「表示」の概念には、補完画像をどのようにあらわし示すのかという表示の態様も内在すると解することが適当である。すると、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定手段」を付加することは、補完画像の表示を行うか否かを設定する表示の態様に関するものであり、「アニメーション画像を前記アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示」することもやはり表示の態様に関するものであると認められるから、これらはいずれも本件補正前の請求項1における「補完画像を表示」するという概念に含まれるものであり、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項である限定的減縮を目的とするものであるといえる(同様の補正をする請求項3および5並びに請求項1,3,5を引用する請求項2,4,6についても同様。)。

3.独立特許要件
本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
(ア)刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-94924号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(A)「【発明の開示】この発明は,画像の再生時においてズーム・ボタンを押さずともズームされた画像を再生できるようにすることを目的とする。」(段落【0006】)

(B)「第1の発明によるズーム・データ記録装置は,記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示するように第1の表示装置を制御する表示制御手段,上記第1の表示装置に表示されている原画像のズーム指令を与えるズーム指令手段,上記第1の表示装置に表示されている原画像を表す画像データについて,上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令に応じたズーム処理を行うズーム処理手段,上記ズーム処理手段によりズーム処理された画像データによって表されるズーム画像を表示するように第2の表示装置を制御する第2の表示制御手段,および上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令を表すデータを,上記第1の表示装置に表示されている原画像を表す画像データに関連づけて上記記録媒体に記録する記録制御手段を備えていることを特徴とする。」(段落【0007】)
「第1の発明によると,記録媒体に記録されている画像データが読み出され,読み出された画像データによって表される原画像が上記第1の表示装置に表示される。ズーム指令が与えられると原画像がズーム処理される。ズーム処理されたズーム画像が上記第2の表示装置(上記第1の表示装置と上記第2の表示装置とは同じものであってもよいし,異なるものであってもよい)に表示される。」(段落【0010】)

(C)「第2の発明による画像再生装置は,記録媒体に画像データと,上記画像データによって表され原画像のズーム指令を表すズーム指令データとが互いに関連づけられて記録されており,上記記録媒体に記録されている上記画像データおよび上記ズーム指令データを読み取るデータ読み取り手段,上記データ読み取り手段により読み取られた画像データによって表される原画像を表示するように第1の表示装置を制御する第1の表示制御手段,上記データ読み取り手段によって読み取られた上記ズーム指令データにもとづいて上記原画像をズーム処理するズーム処理手段,ならびに上記ズーム処理手段によってズーム処理された画像を表示するように第2の表示装置を制御する第2の表示制御手段を備えていることを特徴とする。」(【0013】)
「上記第1の表示装置と上記第2の表示装置とが同じものである場合には,上記原画像を表示したあとにズーム画像が表示されることとなろう。」(【0018】)

(D)「【実施例の説明】図1は,この発明の実施例を示すもので,ディジタル・スチル・カメラを正面から見た斜視図である。」(段落【0030】)

(E)「カメラ1の全体の動作は,CPU20によって統括される。」(段落【0042】)

(F)「ディジタル・スチル・カメラ1には,駆動回路24が設けられている。この駆動回路24によってストロボ5の発光,ズーム・レンズ2の駆動,絞り21の絞り制御,シャッタ22の開閉および撮像ディバイス23の駆動がそれぞれ制御される。(段落【0045】)
「撮影モードが設定されていると,被写体像を表す光像がズーム・レンズ2によってCCDのような撮像ディバイス23上に結像する。被写体像を表す映像信号が撮像ディバイス23から出力される。撮像ディバイス23から出力された映像信号はアナログ信号処理回路31に入力し,ガンマ補正などの所定のアナログ信号処理が行われる。アナログ信号処理回路31から出力した映像信号は,アナログ/ディジタル変換回路32に入力し,ディジタル画像データに変換される。ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33に入力する。」(段落【【0046】】)
「ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33において白バランス調整などの所定のディジタル信号処理が行われる。ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34を介して表示装置36に入力する。撮像した被写体像が表示装置36の表示画面17(図2参照)に表示される。」(段落【0047】)
「シャッタ・レリーズ・ボタン3が押されると,ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34に一時的に記憶される。ディジタル画像データは,メモリ34から読み出され,圧縮伸長回路37に入力する。圧縮伸長回路37において入力した画像データについてデータ圧縮処理が行われる。圧縮画像データは,メモリ・カード38に与えられ,記録される。」(段落【0048】)
「この実施例によるディジタル・スチル・カメラ1は,画像データの再生も可能である。電源スイッチ兼モード切り替えスイッチ6により再生モードが設定されると,圧縮画像データがメモリ・カード38から読み出され,圧縮伸長回路37に入力する。圧縮画像データは,圧縮伸長回路37において,データ伸長処理が施される。データ伸長された画像データは,メモリ34を介して表示装置36に与えられる。メモリ・カード38に記録されている画像データによって表される画像が表示装置36の表示画面17に表示される。」(段落【0049】)

(G)「ディジタル・スチル・カメラ1の上面には,正面から見てその左端部にシャッタ・レリーズ・ボタン3が設けられている。カメラ1の上面においてシャッタ・レリーズ・ボタン3が設けられている一端部とは反対側の他端部には,電源スイッチ兼モード切替スイッチ6が設けられている。この電源スイッチ兼モード切替スイッチ6によりカメラ1の電源のオフ,撮影モード,再生モードおよび後述するシナリオ記録モードの切替が行われる。再生モード,撮影モードまたはシナリオ記録モードが設定されることによりカメラ1の電源がオンとなる。」(段落【0032】)

(H)「図6は,シナリオ・データの一例である。図7は,原画像の一例を示し,図8は図7の枠Fを拡大したズーム画像の一例を示している。」(段落【0058】)
「図6に示すシナリオ・データは,図7に示す原画像を再生したときに,原画像(シーン・ナンバ1)の再生につづいて図8に示すズーム画像(シーン・ナンバ2)を表示させるものである。このシナリオ・データが,図7の原画像を表す画像データが格納される画像ファイルと同じファイルに格納される。(段落【0059】)
「シナリオ・データは,所定の一駒の画像(原画像という)に付随するものである。原画像を再生する際に,その原画像にシナリオ・データに付随していると必要に応じて原画像の再生につづいて,そのシナリオ・データにしたがって原画像のズーム画像が再生される。」(段落【0060】)

(I)「「画像サイズX」は,原画像の横方向の画素数を示している。「画像サイズY」は,原画像の縦方向の画素数を示している。」(段落【0064】)
「「表示サイズX」は,画像の横方向の画素数を示している。「表示サイズY」は,画像の縦方向の画素数を示している。「表示サイズX」と「画像サイズX」と一致し,かつ「表示サイズY」と「画像サイズY」とが一致するとズームされていない原画像が表示されることとなる(たとえば「画像サイズX」および「表示サイズX」が「1600」,「画像サイズY」および「表示サイズY」が「1200」でともに一致)。「表示サイズX」と「画像サイズX」または「表示サイズY」と「画像サイズY」が不一致であるとズーム画像が表示されることとなる。「表示サイズX」が「1600」,「表示サイズY」が「1200」,「画像サイズX」が「400 」,「画像サイズY」が「300 」であるとすると横方向400 画素,縦方向300 画素の画像が横方向1600画素,縦方向1200画素の画像に拡大されて表示されることとなる。」(段落【0065】)
「「スタート・アドレスX」および「スタート・アドレスY」は,ズーム画像の原点の表示位置を示すものである。「スタート・アドレスX」および「スタート・アドレスY」がいずれも「0」であれば,ズーム画像の原点と表示画面の原点とが一致する。「スタート・アドレスX」が「450 」,「スタート・アドレスY」が「240 」であれば原画像の横方向450 画素,縦方向240 画素の位置がズーム画像の原点となる。」(段落【0066】)

(J)「図9から図11は,シナリオ・データを画像ファイルに格納するときの処理手順を示すフローチャートである。」
「図12から図21は,ディジタル・スチル・カメラ1の表示画面17に表示される画像の一例である。」(段落【0071】)
「まず,電源兼モード設定スイッチ6によりシナリオ記録モードが設定される(ステップ51)。操作スイッチ10を押して画像の駒送りを行いながら,シナリオ・データを記録すべき画像が再生される(ステップ51)。これによりディジタル・スチル・カメラ1の表示画面17には,選択された画像が表示される。」(段落【0072】)
「シーン・ナンバNの画像についての再生時の表示指令が設定される(ステップ59)。再生時にズーム画像を表示するのであれば,ズーム・アップ・ボタン11およびズーム・ダウン・ボタン12によりズーム倍率が設定される。また,シフト・スイッチ14と操作スイッチ10とを組み合わせてズーム位置が設定される。詳しくは,後述する(図21参照)。所望のズーム倍率およびズーム位置が設定されると実行スイッチ16が押される。ズーム処理させないときにはズーム・アップ・ボタン11またはズーム・ダウン・ボタン12が押されることなく実行スイッチ16が押される。」(段落【0080】)
「シナリオ・データによって表される表示が気に入れば,ユーザによってアイコンI12が選択される。一時的に記憶されたシナリオ・データがメモリ・カード38に記録される(ステップ74)。」(段落【0097】)

(K)「図23は,ディジタル・スチル・カメラ1の再生時の処理手順を示すフローチャートである。図24および図25は,表示画面に表示される画像に一例を示している。」(段落【0111】)
「電源スイッチ兼モード設定スイッチ6により再生モードが設定される。再生モードにおいて,操作スイッチ10を用いて再生すべき画像が選択される(ステップ101 )。選択された画像が表示画面17に表示される(ステップ102 )。また,その選択された画像についてのシナリオ・データが存在すれば読み取られる。」(段落【0112】)
「シナリオ・データがあれば(ステップ103 でYES),図24に示すようにシナリオ・データがあることを示すアイコンI21が再生画像に表示される。再生画像には,再生モードであることを示す文字が左上に表示され,ファイル名が右上に表示される。もっとも,シナリオ・データがあることをアイコンを用いて示さずとも図25に示すように文字で示すようにしてもよい。」(段落【0113】)
「そして,シナリオ・データにより自動再生に設定されているかどうかが判断される(ステップ104 )。自動再生が設定されていると(ステップ104 でYES),ディジタル・スチル・カメラ1が自動再生オンに設定されているかどうかが判断される(自動再生オンは,メニュー・スイッチ15により設定されるメニューにおいて設定される)。自動再生オンに設定されていると(ステップ106 でYES),つづいて,次の画像を表示するのが時間の経過によるものか実行ボタン16の押下によるものかが判断される(ステップ106 )。再生時間の経過によるものであれば,シナリオ・データによって規定されるその時間の間,画像が再生される(ステップ107 )。」(段落【0114】)
「画像の再生時において,ユーザからのズーム指令が与えられなくともズーム画像が表示されるようになる。」(段落【0117】)

(イ)引用発明の認定
(A)ディジタル・スチル・カメラ
刊行物1には、第1の発明として「ズーム・データ記録装置」を示し((2)参照。段落【0007】、【0010】)、第2の発明として「画像再生装置」を示しているが((3)参照。段落【0013】、【0018】)、実施例には当該ズーム・データ記録装置と画像再生装置の両者の機能を有する「ディジタル・スチル・カメラ」が開示されており、このディジタル・スチル・カメラを引用発明として認定する。

(B)記録機能
記録機能に関しては、段落【0046】ないし【0048】に
「撮影モードが設定されていると,被写体像を表す光像がズーム・レンズ2によってCCDのような撮像ディバイス23上に結像する。被写体像を表す映像信号が撮像ディバイス23から出力される。撮像ディバイス23から出力された映像信号はアナログ信号処理回路31に入力し,ガンマ補正などの所定のアナログ信号処理が行われる。アナログ信号処理回路31から出力した映像信号は,アナログ/ディジタル変換回路32に入力し,ディジタル画像データに変換される。ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33に入力する。」(段落【0046】)
「ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33において白バランス調整などの所定のディジタル信号処理が行われる。ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34を介して表示装置36に入力する。撮像した被写体像が表示装置36の表示画面17(図2参照)に表示される。」(段落【0047】)
「シャッタ・レリーズ・ボタン3が押されると,ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34に一時的に記憶される。ディジタル画像データは,メモリ34から読み出され,圧縮伸長回路37に入力する。圧縮伸長回路37において入力した画像データについてデータ圧縮処理が行われる。圧縮画像データは,メモリ・カード38に与えられ,記録される。」(段落【0048】)と記載されており、刊行物1に記載のディジタル・スチル・カメラは、
「被写体像を表す映像信号が撮像ディバイス23から出力され、出力された映像信号はアナログ信号処理回路31に入力し、アナログ信号処理が行われ、アナログ信号処理回路31から出力した映像信号は,アナログ/ディジタル変換回路32に入力し,ディジタル画像データに変換され、ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33に入力し、ディジタル信号処理回路33においてディジタル信号処理が行われ、ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34に一時的に記憶され、メモリ34から読み出され,圧縮伸長回路37に入力し、データ圧縮処理が行われ、圧縮画像データは,メモリ・カード38に与えられ,記録される」ようにしていると認められる。

(C)再生機能
また、再生に関しては、段落【0049】に、
「この実施例によるディジタル・スチル・カメラ1は,画像データの再生も可能である。電源スイッチ兼モード切り替えスイッチ6により再生モードが設定されると,圧縮画像データがメモリ・カード38から読み出され,圧縮伸長回路37に入力する。圧縮画像データは,圧縮伸長回路37において,データ伸長処理が施される。データ伸長された画像データは,メモリ34を介して表示装置36に与えられる。メモリ・カード38に記録されている画像データによって表される画像が表示装置36の表示画面17に表示される。」
と記載されており、段落【0007】に、
「第1の発明によるズーム・データ記録装置は,記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示するように第1の表示装置を制御する表示制御手段,上記第1の表示装置に表示されている原画像のズーム指令を与えるズーム指令手段,上記第1の表示装置に表示されている原画像を表す画像データについて,上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令に応じたズーム処理を行うズーム処理手段,上記ズーム処理手段によりズーム処理された画像データによって表されるズーム画像を表示するように第2の表示装置を制御する第2の表示制御手段,および上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令を表すデータを,上記第1の表示装置に表示されている原画像を表す画像データに関連づけて上記記録媒体に記録する記録制御手段を備えていることを特徴とする。」と記載されており、さらに段落【0010】に、
「第1の発明によると,記録媒体に記録されている画像データが読み出され,読み出された画像データによって表される原画像が上記第1の表示装置に表示される。ズーム指令が与えられると原画像がズーム処理される。ズーム処理されたズーム画像が上記第2の表示装置(上記第1の表示装置と上記第2の表示装置とは同じものであってもよいし,異なるものであってもよい)に表示される。」と記載されている。してみれば、刊行物1に記載のディジタル・スチル・カメラは、
「記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示するように表示装置を制御する表示制御手段」を有しているといえる。
そして、刊行物1においては、当該ディジタル・スチル・カメラは「メモリ・カード38に記録されている画像データによって表される画像」を「表示装置36の表示画面17に表示」するともしており、上記の記録媒体に記録されている画像を読み取り表示する旨の記載を踏まえれば、再生に関する記載である段落【0049】における「メモリ・カード38」と段落【0007】における画像データ読み取り手段が画像データを読み取る「記録媒体」は相違がないと解することができる。そして、記録に関する記載である段落【0048】における圧縮画像データが記録される「メモリ・カード38」も同様に「記録媒体」であるといえる。

(D)画像とズーム指令との対応付け
画像とズーム指令との対応付けに関しては、段落【0007】に、
「第1の発明によるズーム・データ記録装置は,記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示するように第1の表示装置を制御する表示制御手段,上記第1の表示装置に表示されている原画像のズーム指令を与えるズーム指令手段,上記第1の表示装置に表示されている原画像を表す画像データについて,上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令に応じたズーム処理を行うズーム処理手段,上記ズーム処理手段によりズーム処理された画像データによって表されるズーム画像を表示するように第2の表示装置を制御する第2の表示制御手段,および上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令を表すデータを,上記第1の表示装置に表示されている原画像を表す画像データに関連づけて上記記録媒体に記録する記録制御手段を備えていることを特徴とする。」とあり、刊行物1に記載のディジタル・スチル・カメラは、
「表示装置に表示されている原画像のズーム指令を与えるズーム指令手段,上記表示装置に表示されている原画像を表す画像データについて,上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令に応じたズーム処理を行うズーム処理手段,および上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令を表すデータを,上記表示装置に表示されている原画像を表す画像データに関連づけて上記記録媒体に記録する記録制御手段を備えている」と認められる。

(E)画像の拡大表示
画像の拡大表示に関しては、段落【0013】および【0018】に、
「第2の発明による画像再生装置は,記録媒体に画像データと,上記画像データによって表され原画像のズーム指令を表すズーム指令データとが互いに関連づけられて記録されており,上記記録媒体に記録されている上記画像データおよび上記ズーム指令データを読み取るデータ読み取り手段,上記データ読み取り手段により読み取られた画像データによって表される原画像を表示するように第1の表示装置を制御する第1の表示制御手段,上記データ読み取り手段によって読み取られた上記ズーム指令データにもとづいて上記原画像をズーム処理するズーム処理手段,ならびに上記ズーム処理手段によってズーム処理された画像を表示するように第2の表示装置を制御する第2の表示制御手段を備えていることを特徴とする。」、
「上記第1の表示装置と上記第2の表示装置とが同じものである場合には,上記原画像を表示したあとにズーム画像が表示されることとなろう。」と記載されており、実施例においても一つの表示画面17を有し、カメラ全体の動作は一つのCPU20によって行うようにしている(段落【0042】)。したがって、第1の表示装置と第2の表示装置とは同じものであり、かつ、第1の表示制御手段と第2の表示制御手段とは同じもの(CPU20)であるディジタル・スチル・カメラを認定することができ、刊行物1に記載のディジタル・スチル・カメラは、
「記録媒体に記録されている上記画像データおよび上記ズーム指令データを読み取るデータ読み取り手段,上記データ読み取り手段により読み取られた画像データによって表される原画像を表示するように表示装置を制御する表示制御手段,上記データ読み取り手段によって読み取られた上記ズーム指令データにもとづいて上記原画像をズーム処理するズーム処理手段を備え、前記表示制御手段は上記ズーム処理手段によってズーム処理された画像を表示するように表示装置を制御する」ものと認められる。

(F)表示制御手段
さらに、表示制御手段に関しても、拡大表示ではない再生に関する「記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示するように表示装置を制御する表示制御手段」での表示制御手段と、画像の拡大表示における「記録媒体に記録されている上記画像データおよび上記ズーム指令データを読み取るデータ読み取り手段,上記データ読み取り手段により読み取られた画像データによって表される原画像を表示するように表示装置を制御する表示制御手段」についても、カメラ全体の動作は一つのCPU20によって行うようにしていることにかんがみれば、同じ一つの表示制御手段であると認定することができる。

以上を踏まえ、上記刊行物1記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「被写体像を表す映像信号が撮像ディバイス23から出力され、出力された映像信号はアナログ信号処理回路31に入力し、アナログ信号処理が行われ、アナログ信号処理回路31から出力した映像信号は,アナログ/ディジタル変換回路32に入力し,ディジタル画像データに変換され、ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33に入力し、ディジタル信号処理回路33においてディジタル信号処理が行われ、ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34に一時的に記憶され、メモリ34から読み出され,圧縮伸長回路37に入力し、データ圧縮処理が行われ、圧縮画像データは,記録媒体としてのメモリ・カード38に与えられ,記録され,
記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示するように表示装置を制御する表示制御手段と、を備えるディジタル・スチル・カメラであって,
表示装置に表示されている原画像のズーム指令を与えるズーム指令手段,上記表示装置に表示されている原画像を表す画像データについて,上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令に応じたズーム処理を行うズーム処理手段,および上記ズーム指令手段から与えられたズーム指令を表すデータを,上記表示装置に表示されている原画像を表す画像データに関連づけて上記記録媒体に記録する記録制御手段と、
記録媒体に記録されている上記画像データおよび上記ズーム指令データを読み取るデータ読み取り手段を備え、前記表示制御手段により上記データ読み取り手段により読み取られた画像データによって表される原画像を表示するように表示装置を制御し,上記データ読み取り手段によって読み取られた上記ズーム指令データにもとづいて上記原画像をズーム処理するズーム処理手段を備え、前記表示手段は上記ズーム処理手段によってズーム処理された画像を表示するように表示装置を制御することを
特徴とするディジタル・スチル・カメラ。」

(2)対比
本願補正発明を引用発明と比較する。
<記録機能について>
(ア)引用発明における「被写体像を表す映像信号が撮像ディバイス23から出力され、出力された映像信号はアナログ信号処理回路31に入力し、アナログ信号処理が行われ、アナログ信号処理回路31から出力した映像信号は,アナログ/ディジタル変換回路32に入力し,ディジタル画像データに変換され、ディジタル画像データは,ディジタル信号処理回路33に入力し、ディジタル信号処理回路33においてディジタル信号処理が行われ、ディジタル信号処理回路33から出力された画像データは,メモリ34に一時的に記憶され、メモリ34から読み出され,圧縮伸長回路37に入力し、データ圧縮処理が行われ、圧縮画像データは,記録媒体としてのメモリ・カード38に与えられ,記録され」は要するに、撮像した画像を記録媒体としてのメモリ・カードに記録するようにしているものであり、本願補正発明の「画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能」と相違しない。

<自動再生機能について>
(イ)本願補正発明における「記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能」とは、明細書の段落【0001】の「記録媒体に記録された画像を順に読み出して自動的に再生する自動再生機能」との記載を踏まえれば、単に一枚の画像を再生して終了するのではなく、記録されている複数の画像を「順に」読み出して再生することであると解することが適当である。
引用発明は、「記録媒体に記録されている画像データを読み取る画像データ読み取り手段,上記画像データ読み取り手段によって読み取られた画像データにより表される原画像を表示する」ようにしており、記録媒体に記録された画像を読み出して再生する再生機能を有する点で本願補正発明と相違しない。
「自動的に」再生する点については、刊行物1の段落【0061】には、「自動再生」についての説明が記載されているが、当該自動再生は、原画像を再生したときに、原画像につづいてズーム画像を自動的にシナリオ・データにしたがって表示する機能であり、本願補正発明のように、記録媒体に記録されている画像を順に自動的に再生する機能ではなく、引用発明は、画像を「自動的」に再生するようにはしていない点で、本願補正発明と相違する。

<トリミング情報について>
(ウ) 本願補正発明における「トリミング情報」とは、本願の段落【0034】に「このトリミング情報の設定は、画像表示部28に対応する画像を表示しながら、画像操作部70に設けられているキーを操作することによって、表示されている画像に対してその一部を切り出すためのトリミング情報を設定することができる。」という記載を踏まえれば、「表示されている画像に対してその一部を切り出すための」情報であると認められる。
そして、引用発明における「ズーム指令手段から与えられたズーム指令を表すデータ」とは、3.(1)(ア)(I)を踏まえれば、原画像に対し、画像サイズX、画像サイズY、スタート・アドレスX,スタート・アドレスYで規定されるその画像の一部分を切り出し、表示サイズX、表示サイズYの画像に拡大して表示するためのデータであるから、本願補正発明における「トリミング情報」と相違しない。
更に、引用発明においても、ズーム指令を原画像を表す画像データに関連づけて記録媒体に記録するようにしており、画像と対応付けて設定しているということができ、引用発明は「記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定手段」を有しているといえる。

<トリミング情報の設定の有無と表示制御手段の動作について>
(エ)引用発明においては、図23及び段落【0111】以降の関連する説明を踏まえれば、トリミング情報としてのズーム指令データを含む「シナリオ・データがあれば」(ステップ103)ステップ104以降に進み、シナリオ・データ(トリミング情報)にしたがってズーム画像を再生する一方、ステップ103においてシナリオ・データ(トリミング情報)があると判断されなければ、シナリオ・データにしたがった再生は行わないことになる。してみれば、引用発明は本願補正発明と同様に「トリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する」ようにしているといえるものの、上記(イ)のとおり、画像を「自動的」に再生するようにはしていない点で、本願補正発明と相違する。

<表示制御手段及びアニメーション表示設定手段について>
(オ)引用発明においては、「データ読み取り手段によって読み取られた上記ズーム指令データにもとづいて上記原画像をズーム処理」し,「上記ズーム処理手段によってズーム処理された画像を表示する」ようにしている。上記(ウ)で示したとおり、ズーム指令データとは原画像から切り出された画像を拡大して表示するためのものであり、引用発明における、画像をズーム処理して表示するとは、本願補正発明でいう、画像を拡大して表示することということができる。
してみれば、引用発明は、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する」ようにしている点では本願補正発明と相違はないものの、画像の拡大に際して、アニメーション表示設定手段を有しておらず、当該アニメーション表示設定手段に応じて表示するようにもしていない点で相違する。

<表示制御手段によるトリミング枠の表示に関して>
(カ)トリミング情報が設定されている画像を拡大して表示するに際して、本願補正発明においては、画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するようにしているのに対し、引用発明は、画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するようにはしていない点で相違する。

<画像処理装置について>
(キ)引用発明は、ディジタル・スチル・カメラではあるが、画像を記録し、再生し、ズーム処理していることにかんがみれば、画像の処理を行っているものであり、「画像処理装置」ということができる。

以上によれば、本願補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して再生する再生機能とを有する画像処理装置であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定手段と、
前記再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像を表示した後、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像処理装置。」

<相違点>
<相違点1>
再生機能に関して、本願補正発明では、自動再生機能を有しているのに対し、引用発明においては、「自動」で再生するような機能を有してはいない点。

<相違点2>
トリミング情報が設定されている画像に対して、トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するに際して、本願補正発明では、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定手段」を有する構成とし、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション画像を前記アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示してから」画像を拡大して表示するのに対して、引用発明においては、アニメーション表示設定手段を有しておらず、当該アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示するようにもしていない点。

<相違点3>
トリミング情報が設定されている画像を拡大して表示するに際して、本願補正発明においては、画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するようにしているのに対し、引用発明は、画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するようにはしていない点。

(3)判断
(ア)相違点1について
(A)相違点1の克服
画像を撮像して記録媒体へ記録し、当該記録媒体に記録された画像を再生する機能に関して、引用発明において、「自動」で再生するような機能を有してはいないことに代えて、自動で再生させるような機能を有するように構成すれば相違点1は克服される。

(B)相違点1の克服の容易想到性
(a)周知技術1
画像を記録し再生するデジタルカメラにおいて、画像の自動再生機能を持たせることは周知である。

(a-1)特開2003-224752号公報
特開2003-224752号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「【発明の属する技術分野】本発明は、連写も行えてかつその連写された画像データを記録・再生可能なデジタルカメラに関する。」(段落【0001】)

「これらの撮影情報を、記録メディア140に記録されるJPEGファイルのヘッダとして記録しておく。なお、JPEGファイルは記録メディア140の先頭から順に記憶されていって、再生時に選択ダイヤルの内側に配設されている表示部107aに表示される選択メニューでAutoPlay(自動再生モード)が選択されたら記録メディア140に記録されたJPEGファイルが記録された順に再生される。詳細は後述する。」(段落【0050】)

(a-2)特開2002-209190号公報
特開2002-209190号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の記載がある。

「【従来の技術】従来、メモリカード等を記憶媒体として用いるデジタルカメラが知られている。また、近年では小型のメモリカードスロットを備えたデジタルビデオカムコーダも普及しつつある。」(段落【0002】)
「この種のメモリカード媒体を用いた装置では、メモリカードに記憶された静止画像データを所定の手順で自動的に再生するスライドショー機能を持つものがある。」(段落【0003】)
「このスライドショー機能では、全ての画像を順に再生する、あるいは、予めユーザが指定した画像のみを指定した順に再生する方法が一般的である。」(段落【0004】)

上記刊行物2及び刊行物3に示されるように、デジタルカメラにおいて、自動再生機能を設けることはよく行われている周知技術である。

(b)容易想到性
引用発明は、ディジタル・スチル・カメラであり、当該ディジタル・スチル・カメラは画像を撮影し、記録し、記録した画像を再生することができるものであ。また、引用発明は、「ズーム処理を行うためには,ユーザによってズーム・ボタンが押されなければならない」(段落【0005】)という課題を解決するために、「画像の再生時においてズーム・ボタンを押さずともズームされた画像を再生できるように」したものである。つまり、引用発明は、ズームされた画像の再生時の場合ではあるものの、それまで押す必要があったボタン(ズーム・ボタン)を押さずとも(ズームされた)画像を「自動的に再生」できるようにするという目的意識を有したしたものであると認められる。上記刊行物2,3に記載されるようなデジタルカメラにおける自動再生機能も、画像再生時に一枚ずつ画像を切り替えるための操作ボタンを押すなどの手間を省くという点で、引用発明と共通することを踏まえればこのような画像を再生することができる引用発明において、ズームされた画像の再生時のみならず、通常の画像の再生に際しても、ボタンを押すなどの操作を行うことなく自動で画像が切り替わるようにしようとすることは当業者であれば容易に想起し得たことであり、そのために刊行物2,3に記載のような周知技術1を適用することは当業者であれば容易になし得たことであり、また、これを妨げる特段の事情があるとも認められない。

(イ)相違点2について
(A)相違点2の克服
引用発明において、トリミング情報が設定されている画像に対して、トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するに際して、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定手段」を有する構成とし、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション画像を前記アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示してから」画像を拡大して表示するように構成すれば、相違点2は克服される。

(B)相違点2の克服の容易想到性
(a)周知技術2
(a-1) 平成18年9月5日付けの拒絶査定において示した特開平10-143137号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「【発明の属する技術分野】本発明は、画像ズーミング方法、装置およびその記録媒体に関し、特に、デジタル信号処理によって画像をズームイン(ズームアップ)あるいはズームアウト(ズームダウン)して表示するための手法に用いて好適なものである。」(段落【0001】)

「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の技術では、上述のようにして画像のズーミングを行う場合、画像のズーミングが指示されてからその処理を行っている間は表示画面は変化せず、指示のようにズーミングされた画像が生成された時点で表示画像がそれに切り換えられるようになっていた。」(段落【0005】)

「そのため、ズーミングを指示してからその処理が行われている間に、ズーミングの対象部分が分からなくなってしまうことがあるという問題があった。また、ズーミング処理を行っている間は画面上では何の変化も起きないので、その間ただ待っているユーザを苛々させることとなってしまう問題もあった。」(段落【0006】)

「本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、画像のズーミングを行っている対象部分を明確化できるようにするとともに、ズーミング処理の待ち時間によるユーザのストレスを軽減できるようにすることを目的としている。」(段落【0007】)

「【課題を解決するための手段】本発明の画像ズーミング方法は、表示画像をデジタル信号処理によってズーミングするための画像ズーミング方法において、画像をズーミングして表示する際に、ズーミング対象とされた領域の画像について、現在のズーム倍率と最終的なズーム倍率との間のズーム倍率の画像を生成して表示するという処理を、ズーム倍率を段階的に変えながら上記最終的なズーム倍率に達するまで繰り返し行うようにしたことを特徴とする。」(段落【0008】)

「図1(a)および図2(a)は、ズーミングを行う前の元の画像を示し、矩形の枠線Aは、ディスプレイなどの表示装置で画像が表示される表示画面全体あるいは画面中の一部に表示される表示ウィンドウを示している(以下、表示枠Aと記載する)。なお、図2(a)に示されている「あいうえお・・・」の文字は、イメージデータである。」(段落【0020】)

「上記図1(a)および図2(a)の表示画像上において、拡大して表示する領域(ズームインの対象となる画像領域)を指定すると、指定された領域内の画像がデジタル信号処理によってズームインされ、最終的に図1(d)および図2(d)のように表示枠A全体に表示される。」(段落【0021】)

「拡大する領域の指定は、図1のように、ズーミング対象としたい矩形領域(表示枠Aに相似で、相似比はあらかじめ決められているものとする)の中心点あるいは任意の一点となる位置にマウスカーソルBを移動させ、マウスのクリック操作等によって指定するようにしても良い。また、図2のように、ズーミング対象となる矩形領域として、表示枠Aに相似形の矩形領域をマウスのドラッグ操作等によって自由に指定できるようにしても良い。」(段落【0022】)

「上述のようにして拡大表示する矩形領域を指定すると、本実施形態では、指定された矩形領域内の画像について、図1(a)および図2(a)に示した現在表示中の画像から図1(d)および図2(d)に示した最終的なズーム画像へと徐々に変化していくように、ズーム倍率を段階的に変えながら複数のズーム画像を順次生成して表示するようにする。」(段落【0023】)

(a-2)特開2002-262072号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「すなわち、画像ズーミング部21は、上述のようにして指定された一部領域の画像データの読み出し・転送が行われている間に、データ記憶部18に記憶されている画像データ(拡大して表示する領域の指定が行われた現在表示中の画像データ)にデジタル信号処理を施すことによって、現在表示されている上記一部領域の画像についてズーム倍率を段階的に変えながら生成した複数段階のズーム画像を順次表示するようにする。」(段落【0051】)

「これを図3を用いて説明する。図3(a)は画像拡大を行う前の元の画像を示し、矩形の枠線Aは、画像表示部17で画像が表示される表示画面全体あるいは画面中の一部に表示される表示ウィンドウを示している(以下、表示枠Aと記載する)。なお、図3(a)に示されている「あいうえお・・・」の文字は、イメージデータである。」(段落【0052】)

「上記図3(a)の表示画像上において、拡大して表示する領域を指定すると、指定された領域内の画像がデジタル信号処理されることによって、図3(b)→(c)→(d)のように徐々にズームインされて表示される。(以下省略)」(段落【0053】)

以上のとおり、ズーミングを行う際に、トリミング枠内の画像を拡大して表示する際の補完画像をアニメーション表示することは、周知の技術である。

(b)周知技術3
(b-1)「YOMIURI PC 第8巻 第12号、めざせ!中上級者 コントロールパネル征服隊 最終回 「システム」後編、小春川 航、第94ページ?第97ページ、2003年12月01日、読売新聞東京本社」(以下、「刊行物6」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「「視覚効果」の設定項目一覧」の表において
「●ウィンドウを最大化や最小化するときにアニメーションで表示する」の項目の説明に、
「ウィンドウの最大化/最小化の際の、アニメーション効果についての設定。無効にすると描画処理の負担が減り、速度が向上する。」と記載がある。

第94ページの「視覚効果の設定」の図面には「パフォーマンスオプション」の「ウィンドウを最大化や最小化するときにアニメーションで表示する」という視覚効果の有効/無効の設定をするチェックボックスを設けるようにしたものが記載されている。

(b-2)「PCfan 第9巻 第33号、常駐・スタートアップ/操作感 インターネット設定を徹底攻略 ウィンドウズXP高速化チューン術 華やかさをとるか、シンプルをとるか。それが問題だ ルナインタフェースは大敵?、第78ページ?第79ページ、2002年12月01日、(株)毎日コミュニケーションズ」(以下、「刊行物7」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「不要なアニメーションをカット
XPではアプリケーションやフォルダなどのウインドウサイズを変更する際、アニメーションで表示する。目新しいうちはいいが、慣れてしまうと軽快な動作の足かせでしかない。「ウィンドウを最大化や最小化?」のチェックを外すことで無効にできる。」

刊行物6,7にあるように、ウィンドウのサイズ変更の際にアニメーション表示を行うものにおいて、アニメーション表示を行うか否かを選択できるようにすることは周知の技術である。

(c)容易想到性
周知技術2は、ディジタル・スチル・カメラにおけるアニメーション表示ではないものの、所望の領域を拡大表示するという点で共通しており、周知技術2を引用発明に適用する動機があるというべきである。
してみれば、引用発明において、トリミング領域の画像を拡大して表示するに際して、周知技術2を適用して、アニメーション表示をするように構成することは、当業者であれば容易になし得たことであり、また、その際に、周知技術3も併せて適用してアニメーション表示を行うか否かを設定できるようにすることも、周知技術3がアニメーション表示に関連するものであることに鑑みれば、やはり当業者であれば容易になし得たことであり、これらを妨げる特段の事情があるとも認められない。

(ウ)相違点3について
(A)相違点3の克服
トリミング情報が設定されている画像を拡大して表示するに際して、引用発明において、画像に当該トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するように構成すれば、相違点3は克服される。

(B)相違点3の克服の容易想到性
(a)刊行物に記載の技術
平成18年4月25日付け拒絶理由通知において引用文献2として示した刊行物である特開2001-157158号公報(以下、「刊行物8」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「【発明の属する技術分野】本発明は、被写体像を撮像して得られた画像データを例えばインスタントフィルムや感光紙などの画像形成媒体に形成するプリンタ一体型の電子カメラに関する。」(【0001】)

「このモード切換制御手段59は、具体的に以下の各機能を有している。すなわち、モード切換制御手段59は、再生モードにおいて画像表示LCD8の画面上に表示される画像が所望の画像データの所定領域を拡大表示枠によって拡大表示したものであれば、プリントモードにおいて画像表示LCD8の画面上に表示される画像上に、再生モードで拡大表示した拡大表示枠に対応したトリミング領域を指定するためのトリミング枠を重ねて表示するように制御する機能を有している。」(段落【0042】)

「次に、第3の再生モードはプリントモードからの移行の動作で、図13に第3の再生モードフローチャートを示す。」(【0067】)

「この第3の再生モードは、プリントモードから移行されると、モード切換制御手段59は、ステップ#40において再生モードに切り換る前のプリントモードでの状態をチェックする。この状態チェックは、インデックス表示か否か、トリミングされていたか否か、日付表示を行っていたか否かをチェックする。このうちトリミングではトリミング倍率、トリミング枠の座標をチェックし、日付表示では年月日の文字タイプなどをチェックする。」(【0068】)
(中略)
「又、上記ステップ#41での判断の結果、プリントモード時にプリント用インデックス表示されていなければ、モード切換制御手段59は、ステップ#43に移り、上記ステップ#40での状態チェック結果に基づいてトリミング枠Q1、Q2又はQ3を画像表示LCD8に表示していたか否かを判断する。」(【0072】)

「この判断の結果、プリントモード時にトリミング枠Q1、Q2又はQ3を表示していれば、モード切換制御手段59は、ステップ#44に移り、トリミング枠Q1、Q2又はQ3のうちいずれのトリミング枠を表示していたかを判断し、次のステップ#45において表示していたトリミング枠のトリミング倍率を拡大倍率として引き継ぎ、かつトリミング枠内の画像データを読み出して拡大処理し、画像表示LCD8に表示する。」(【0073】)

以上を踏まえれば、刊行物8には、電子カメラにおいて、トリミング領域を示す枠を再生画像に重ねて表示する技術が記載されており、プリントモードから再生モードへ移行する際に、移行後の再生モードにおいて拡大表示されるべきトリミング領域に関して、再生モード移行前のプリントモードにおいて当該トリミング領域を示す枠を表示するようにすることも記載されていると認められる。

(b)容易想到性
刊行物8に記載のものは、引用発明と同様に電子カメラに関するものであり、引用発明と同様にトリミング領域を拡大表示する際の技術であり、引用発明と共通する技術分野のものである。そして、刊行物1には、刊行物1の上記記載(1)(ア)(K)にあるように、画像再生時において、当該画像に関するトリミング情報を含むシナリオ・データが存在すれば、シナリオ・データがあることを示すアイコンや文字を再生画像に表示することが記載されており、トリミングに関する情報を再生画像に追加して表示して利便性を高めるようにする目的意識があると認められる。してみれば、引用発明においても、刊行物8に記載のようにトリミング枠を表示して、どの部分が拡大されることになるのかを分かるようにして利便性を向上させてみようとすることは当業者であれば容易になし得たことと認められる。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物8に記載の技術、並びに、周知技術1、2、及び、3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年11月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年7月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して自動的に再生する自動再生機能とを有する画像処理装置であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定手段と、
前記自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示した後に、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際の補完画像を表示してから、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像処理装置。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物(刊行物1、刊行物8)、および、周知技術に関する刊行物(刊行物2,刊行物3、刊行物4,刊行物5,刊行物6、刊行物7)のうち、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1、および、刊行物8、並びに周知技術に関する刊行物である刊行物2,刊行物3,刊行物4、および、刊行物5を引用する。
そして、それらの記載事項は、前記「第2 [理由]3.(1)」、および、「第2 [理由]3.(3)」に記載したとおりである。(周知技術に関する刊行物である刊行物6及び刊行物7は、以下3.に示すとおり、本願補正発明に存在するものの、本願発明においては省かれている構成である、アニメーション表示設定手段に関するものであるため、本願発明の検討においては引用しない。)
そして、「第2 [理由]3.(1)(イ)」のとおり、引用発明を認定する。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明において、記録媒体に記録された画像の表示に関して、
(ア)「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際のアニメーション表示を行うか否かを設定するアニメーション表示設定手段」との構成を省き、
(イ)「自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を自動的に再生する際に」とあったところを、「自動再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に」と、限定を解除し、
(ウ)「アニメーション画像を前記アニメーション表示設定手段による設定に応じて表示」とあったところを、「補完画像を表示」と、限定を解除したものである。

したがって、本願発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「画像を撮像して記録媒体へ記録する記録機能と、前記記録媒体に記録された画像を読み出して再生する再生機能とを有する画像処理装置であって、
前記記録媒体に記録された画像に対してその一部分を切り出すためのトリミング情報を該画像と対応付けて設定するトリミング情報設定手段と、
前記再生機能により前記記録媒体に記録された画像を再生する際に、前記記録媒体から読み出された画像毎にトリミング情報が設定されているか否かに応じてその画像の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記トリミング情報が設定されている画像に対しては、該画像を表示した後、該トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するように制御することを特徴とする画像処理装置。」

<相違点>
<相違点1>
再生機能に関して、本願発明では、自動再生機能を有しているのに対し、引用発明においては、「自動」で再生するような機能を有してはいない点。

<相違点2>
トリミング情報が設定されている画像に対して、トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するに際して、本願発明では、「トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際の補完画像を表示してから」画像を拡大して表示するのに対して、引用発明においては、トリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示する際の補完画像を表示してからトリミング情報により切り出される領域の画像を拡大して表示するようにはしていない点。

<相違点3>
トリミング情報が設定されている画像を拡大して表示するに際して、本願発明においては、画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するようにしているのに対し、引用発明は、画像に前記トリミング情報により切り出される領域を表す枠を重ね合わせて表示するようにはしていない点。

3.判断
(1)相違点1について
相違点1については、上記「第2 [理由]3.(3)(ア)」の相違点1に関する検討と同様であり、引用発明に、刊行物2,3に記載のような周知技術1を適用して、自動再生機能を設けることは当業者であれば容易になし得たことである。

(2)相違点2について
本願発明は本願補正発明が有する「アニメーション表示設定手段」を有していない構成であるため、上記「第2 [理由]3.(3)(イ)」の相違点2に関する検討のうち、アニメーション表示設定手段に関する検討をする必要はなく、アニメーション表示設定手段に関する周知技術である刊行物6及び刊行物7を引用せず、アニメーション表示設定手段に関する検討を行わない点を除いて、上記「第2 [理由]3.(3)(イ)」の相違点2に関する検討と同様な理由により、引用発明において、トリミング領域の画像を拡大して表示するに際して、刊行物4に記載のような周知技術2を適用して、補完画像の表示をするように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(3)相違点3について
相違点3については、上記「第2 [理由]3.(3)(ウ)」の相違点3に関する検討と同様であり、引用発明に、刊行物8に記載の技術を適用して、拡大表示に際してトリミング枠を表示するようにすることは当業者であれば容易になし得たことである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物8に記載された発明、並びに、周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-30 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2003-415698(P2003-415698)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 恵一  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 夏目 健一郎
奥村 元宏
発明の名称 画像処理装置、画像再生方法、プログラムおよび記憶媒体  
代理人 別役 重尚  

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